30年前に、アメリカーナと言えることをやって異彩を放った、カナダの個性派バンドの公演を見る。六本木・ビルボードライブ、セカンド・ショウ。その大出世作『ザ・トリニティ・セッション』(RCA、1988年)は日本でもかなり話題になったし、その後に来日公演も彼らはした。

 カウボーイ・ジャンキーズは解散したことはなくアルバム・リリースも続けていて、27年ぶりとなるような今回の来日も紅一点のシンガーのマーゴ・ティミンズをはじめ当時のメンバー4人は全員残っていて、うちマーゴら3人は兄弟だ、そこにハーモニカやマンドリンを担当する人物を加えて、彼女たちはライヴを持った。

 演奏が始まりすぐに、わあ演奏がちゃんとしている、香り立つ風情ありと頷く。さすが、ずっとやっていることもあるな。マーゴのどこか物憂げな歌も確か。MCも漂う口調でしていた。渋く、墨絵みたいと思わせる一方、結構ヴァイタルに突き進む時もあり。また、ハーモニカがサウンド総体の表情を規定する曲も散見され、ぼくが感じていた以上にブルースを根に置くバンドだったのだなとも痛感。ギター奏者はエフェクターを通してオルタナぽい音を出す場合もあり、今のロック好きリスナーが聞いてもいろいろ要点を感じるパフォーマンスだったのではないか。もちろん、『ザ・トリニティ・セッション』でカヴァーしていた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「スウィート・ジェーン」もやりました。

<今日の、やっちまった>
 来月頭までの原稿締め切りが今週バカみたいに増えてしまい、実はけっこうプレッシャーを感じている。月内締め切り原稿は断ろうと思っていたのに、これは書きたいという渋味ロック系アーティストのライナー・ノーツ仕事を思わず受けてしまい、オレはマゾかとほんのすこし感じている。なので、精進(?)気味で行こうと思っていたのに、悪魔の誘いとともに、“朝までコース”をやっちまう。懲りない男であります。でも、最後の店で、25年前にとってもよく仕事をし、一緒のサッカー・チームに入っていた編集者と同じ会社の若い後輩と偶然会った。かつて、彼の下で働いたこともあり尊敬しているみたいなことを言っておったな。なによりじゃ。
 ダイアナ・クラール(1999年5月21日)他のアレンジャーを務めるとともに、自己オーケストラを率いてやってきたこともあった、1952年生まれのベーシストのジョン・クレイトン(2011年12月21日)とスタジオ奏者もやっている1954年生まれアルト・サックスのジェフ・クレイトン(2011年12月21日)の兄弟が中心となる、長年ゆったりと活動してきているコンボがザ・クレイトン・ブラザースだ。二菅クインテットでフロントに立つもう1人は、キャンディドやマックスジャズなどから10作ほどのリーダー作を出している1966年生まれトランペッターのテレル・スタッフォード。彼、老けて見えるなあ。その熟達組の3人に加え、1984年生まれのジョンの息子のジェラルド・クレイトン(ピアノ。2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日)、1980年生まれドラマーのケンドリック・スコット((2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日)が入った興味深い編成で実演は持たれた。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。
 
 堂々の、アコースティックな正調ジャズを堪能。ただし、曲はオリジナルで、無理のないアレンジ設定も施されている。どの曲でも、二管の線のしっかりしたソロがまずうれしい。やっぱり、ちゃんと道を歩んできているプレイヤーの演奏は聞かせる。余裕のMCも担当するジェフ・クレイトンはアルコ弾きも用いる。そして、ジェラルドとケンドリック・スコットという働き盛りの30代奏者が入ってこその若い跳ねも、その総体にはある。いいんじゃないでしょうか。

 多少流し気味とも思える軽い指さばきを見せるジェラルドはそのぐらいがお父さん世代との折り合いはいいだろうし、4ビートという枠の中で妙味を出しまくりつつタイトに叩くスコッドは見ていて本当に楽しい。旧来のジャズはどう今輝くことができるか。そういう、答えの一つになっていたはずだ。

 ジェラルド・クレイトンは当初クラウド・ファウンディングで資金を集めて制作し、それをコンコードが流通にのせた2013年作『ライフ・フォーラム』以降、リーダー作を出していない。だが、やっと春には『Tributary Tales』という新作を出す。ベン・ウェンデル(ジェラルドも入る昨年作は最良質現代ジャズ作だ。2013年8月22日、2015年4月16日)他周辺の逸材をいろいろと起用した末広がり作で、かなり聞き応えがあり。そんな彼にインタヴューしたら、想像していた以上に真面目な人で驚いた。あのドレッド調の頭は高校の頃から続けているそう。ジャズを聞かないのに髪型に惹かれてあなたのアルバムを買った人がいますと伝えると、「音楽だったら、それでもいいだろう。でも、政治家は見た目や気分で選んではいけない」と、彼は穏やかに答えた。

▶︎過去の、ジョン・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶︎過去の、ジェフ・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶︎過去の、テレス・スタッフォード
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
▶過去の、ベン・ウェンデル
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150416

 その後は六本木・ビルボードライブで、ミシェル・ンデゲオチェロ(2002年6月18日、2003年11月18日、2003年11月22日、2008年5月7日、2009年5月15日、2013年11月18日、2014年7月14日。歌と電気ベース)を見る。ギターのクリス・ブルース、キーボードのジェビン・ブルーニ、ドラムのエイブ・ラウンズがサポート。ドラムのみ新しい人(外見は、E.W.&F.の『地球最後の日』のジャケに並んでいそう)だ。やはり腕が立つ彼は、ンデゲオチェロ2014年作にも参加していたドイル・ブラムホールⅡ(2006年11月20日、2014年2月11日)のところで叩いていたようだ。あのアルバムはンデゲオチェロがあまりベースを弾いていないアルバムで、アンプ・フィドラー(2004年9月25日、2005年7月30日、2012年12月9日、2016年11月29日)もシンセ・ベースで入っていた。

 全曲、ヴォーカルもの、つまりここのところの通常路線を行く。少しスピリチュアルな感触を増しているような気もしたが、ロックから少し距離を置き、ファンクやジャズからはかなりな距離を置く表現を悠然と披露する。視野の広い、いろんな含蓄を持つ、陰影と流動感に富むアダルト・ポップとそれを書いたら、いけない? 終盤にやった近作に入っていた「グッド・デイ・バッド」はけっこうブラインド・フェイスの「キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム」に似ている、諦観ぽいなかに一条の希望をにじませるような内容を持つ曲で、こういう歌詞を歌わせるとンデゲオチェロはうまい。

 風情と持ち味あり。ただし、ずうっと彼女を注視し続けてきている者としては、少し新しい路線に踏み出して欲しいとは思えたか。プロデューサーとしてはジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)の2014年作やマーカス・ストリックランド(2007年12月18日、2012年1月13日、2013年9月28日)の2016年盤などでいい仕事をしている彼女だが、それらはともにブルーノート・レコード物件。2014年以来ずっとリーダー作を出していない彼女だが、ブルーノート社長/A&Rのドン・ワズ(2013年2月15日)が彼女の新作リリースを決断しないものか。ンデゲオチェロはこの3月に来日する女傑アフロ・スパニッシュ歌手であるブイカの2015年作にもベースで部分参加するなど、ある傾向にある逸材に対しての威光はいまだ朽ちていないことも付記しておきたい。

▶過去の、ミシェル・ンデゲオチェロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200805090836380000/
http://43142.diarynote.jp/200905161026033788/
http://43142.diarynote.jp/201311191050581790/
http://43142.diarynote.jp/201407151135353688/
▶過去の、ドイル・ブラムホールⅡ
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
▶︎過去の、アンプ・フィドラー
http://43142.diarynote.jp/200409280745560000/
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161129
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶︎過去の、マーカス・ストリックランド
http://43142.diarynote.jp/200712190953140000/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
▶過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130215

<今日の、残念>
 今、ビルボードライブが入っているミッドタウンは店子入れ替え期のよう。そしたら、ライヴの前後にちらりと入る飲む場として使っていた2店がともにクローズになっていた。わあああ。これは、痛い。

TNT

2017年1月17日 音楽
 ずんちゃずんちゃ、って、もうロックですよ。そう聞いていたのだが、ほぼロックじゃなかった。マジ、ジャズだった。新宿・ピットイン。14時半からの、昼の部。

 ギターの斎藤“社長”良一(2004年1月21日) と電気ベースの高橋保行(2006年7月3日、2010年1月9日、2012年7月1日、2017年1月9日)、ドラムの山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日、2015年5月28日、2015年6月15日、2015年9月13日、2015年11月11日、2016年5月22日、2016年6月13日、2016年9月7日)からなるトリオが、TNT。で、山田は昨年夏でやめたが、渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日)で狼藉し合ってきた仲間たちで組んでいるグループだ。実は、高橋の本業はトロンボーンであり、まれにピアノも弾く山田の主楽器はマリンバやヴァイブですね。リーダーは、本業の楽器を持つ斉藤が務める。彼も洒落で小さなシンセを触った時がほんの少しあり。なお、彼がするMCは謙虚さや韜晦の裏返しだろうが、よくもまあ曲間ごとにあんな楽屋落地的なグダグダ話をするものだと閉口。素晴らしい音楽家なんだから、黙って演奏すればいいのに。

 演奏は、望外に良かった。長ーく演奏される素材はセロニアス・モンクやウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)曲、斉藤のちょいオーネット・コールマン(2006年3月27日)的なメロディ使いもある曲や山田のちょいブルージーな変拍子曲など。ココロに嵐を持つ者たちの、自由なインタープレイ表現が繰り広げられる。

 渋さでの演奏だと大人数による音の洪水もあり埋もれてしまうが、こういう素の編成で聞くと、枠を縦横にカっとぶような斉藤のギター演奏の真価が山ほど味わえる。接していて、この人はどんなギター人生を歩んできたのかとすぐに思いは巡る。ソニー・シャーロックのようなかき鳴らし奏法も颯爽と見せる彼は、数回弦を切っていた。木のブリッジのギターを用いた渋さのライヴでは切れないんだけど(通常の)金属製ブリッジのギターを弾くと弦が切れるというようなことを、彼は言っていた。あ、伝えていいことも、MCで言っているか。

 とにかく3人の信頼具合がよく分かる、じゃれあい演奏。この日で3度目のギグとなるようだが、一発モノではない起伏もいろいろとあり、その流れにウキウキと身を任せてしまう。高橋の指弾きによるエレクトリック・ベースは強い腰に欠けるかもと思わせられる場合もあるが、フレイジングに関してはきっちりと美味しく、発展を促す音を十全に送り続ける。山田は2人のはみ出し方向にある演奏に反射して叩いていくわけだが、リム・ショットなども用いるそれは完全にジャズが基調。なるほど、音大時代に学校外で3年間もジャズ・ドラマーの小山太郎のレッスンを受けていたという話にも納得がいく。彼女はマレットを2本づつ(つまり、両手で4本)持って、ドラムを叩く曲もあり。これは鍵盤打楽器奏者じゃないと発想しないよな。そういう奏法を見せるドラマーには初めて会ったし、見た目にもアトラクティヴ。ともあれ、多芸は善であり、吉である。

 本来の持ち楽器ではないという新鮮さは、高橋にしても山田にしてもそこに間違いなくある。何より、やっている本人たちが事新しいだろう。そして、オーネット・コールマンが自らの表現に新風を吹かせるために当時10歳になったばかりのデナード・コールマン(2006年3月27日)を『The Empty Foxhole』(ブルーノート、1966年)で起用したことがあったという逸話を、ふと思い出したりして。山田の演奏に関しては、それが当てはまるか。当時のデナードと比べたら、山田の方がうまいけど。『The Empty Foxhole』はオーネット親子のほかはベーシストのチャーリー・ヘイデン(2001年11月20日、2005年3月16日、2009年9月10日)が入ったトリオで録られていて、オーネットはアルトだけでなくトランペットやヴァイオリンも手にしていた。多芸は善であり、吉である。

 広がる、動いていく自分を出すという意思が溢れる。ロックが出てきて以降のジャズが持つべき回路の、少し乱暴ながら、なんとも澄んだ情緒を介する確かなカタチが、そこにはあった。TNTの次のライヴは、3日間の帯で吉祥寺でもたれる“冬の底なしジャズ”の最終日(2月3日)とのこと。

▶︎過去の、斎藤“社長”良一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040121
▶︎過去の、高橋保行
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ 藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201207031354584120/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170109 藤井オーケストラ東京
▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/ 渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/ WUJA BIN BIN
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/ 蝉丸
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/ ダモ鈴木
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/  Down’s Workshop
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/ アトラス
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/ w.パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/ MoMo
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/ タクシー・サウダージ
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/ 渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/ ヒュー・ロイド
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/ タクシー・サウダージ
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/ w.パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160613 QUOLOFUNE
http://43142.diarynote.jp/201609201648546159/ WUJA BIN BIN
▶過去の、渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
http://43142.diarynote.jp/200612060135390000/
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
http://43142.diarynote.jp/200706162321180000/
http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/
http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶︎過去の、オーネット/デナード・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶過去の、チャーリー・ヘイデン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200909120650273142/

<今日の、前後>
 新宿・オリンパスサロンに、Mitch Ikeda写真展「Rocks」を見にいく。平日のお昼だというのに、けっこう見に来ている人がいて、ロック支持層はちゃんといるなあと思った。ミッチ・イケダは、ぼくと同い年のカメラマン。付き合いはそんなになかったけど、お互いフリーでバリバリやり始めた頃が重なっていた。彼は1990年代にロンドンに居住していたことがあり、取材出張の際にそのフラットに行って、和んだこともあった。いろいろ並んだロッカーたちの写真(アジアン・カンフー・ジェネレーションなど、日本人を撮っているのは今回初めて知った)を見て、一葉でストーリーを語る写真を撮っていると感じる。ぼくはジェフ・バックリーの写真が印象深かったかな。一番写真点数が多いのは、とっても懇意にしていたマニック・ストリート・プリーチャーズ。中にはメンバーとフィデル・カストロの写真もあったが、それはマニックスの15年前のキューバ公演(同国でライヴをした、初の西側ロック・バンドと言われる)に彼が同行した際の一コマだ。
「今はあまり音楽の写真は撮っていないんですよ。ファッション・カメラマンをやってる」
「広告の仕事とか?(頷くのを見て)じゃあ、稼いでいるね」
 彼は微笑む。いい感じだった。
 ライヴを見た後は、赤ら顔をして、ピットイン近くの喫茶店で、雑誌の特集の打ち合わせに臨む。今はメールで済ませちゃうことが多いが、こういう旧式なのもいいな。ま、ページ数が多い場合、それはまだ不可欠ではあるが。意気に燃え、企画を説明してくれる二人の編集者の様に触れつつ、新卒時に出版社に入った自分のことを思い出す。閃きには長けていたかもしれないが、いい編集者ではなかったかもしれないな。今となってみれば……。
 2004年にボストンで結成され、2016年新作『サイド・ポニー』はノンサッチからリリースされている、男女混合の白人ポップ・ロック・バンドを南青山・ブルーノート東京で見る。とても声が伸びる女性シンガー、男性ギタリスト(一切ソロを取らないが、3曲ではギターを置いてトランペットを演奏する)、女性ダブル・ベース奏者(音色はけっこう変える)、男性ドラマーという、男女二人づつのグループだ。

 <大人のクールなバブルガム・ポップ>、<レトロな手触りもうまく用いた、末広がりビート・ポップ>、そんな言い方もできる? いろいろな音楽知識の蓄積を(ジャニス・ジョプリンの「ピース・オブ・マイ・ハート」をうまくは部分的にはめ込んだような曲もあり)散りばめた、大人の思慮とポップ・ミュージックの敷居の低さを共に抱えるような表現の数々を和気藹々と披露。コーラスが何気に効いていて、いい感じ。初来日のようで、初々しさが溢れ、それは接していて心和む。

 移動して、丸の内・コットンクラブへ。出演者は先日、マーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日)のグループで来日したばかりのトランペッターのマーキス・ヒル(2016年9月17日、2017年1月7日)。で、別に舐めていたわけではないのだが(いや御免なさい、舐めていたんだろうな)、当方の想像するところをはるかに超える現代ジャズ表現(フュージョン臭、ゼロ)を提出し、驚いた。これは、今の米国人若手のジャズを云々するならチェックするべきアクトであると、ぼくは痛感してしまった。

 ブラックテットと名付けるコンボを率いてのもので、アルト・サックスのジョシュ・ジョンソン、キーボードのジェイムス・フランシース、アコースティック・ベースのジェレミアー・ハント、ドラムのジョン・デイヴィス、という面々。ドラマーを除いては、ヒルが生まれて今も住むシカゴのシーンの奏者のよう。ぼくは彼らの名前を初めて知る。ヒルはファースト・ネームにジャズのJが付く人を擁したかったようだ←嘘。ヒルのコンコード発の2016作『The Way We Play』参加者との顔ぶれは重なっていない。同作はピアノレス編成でジャスティン・トーマスというヴァイブラフォン・プレイヤーがコード楽器の奏者として入っていたが、こちらは一応、通常の二菅のカルテットという編成を取っている。

 実のところ『The Way We Play』は日本制作かと思ってしまうようなジャズ・スタンダード集であったが、ステージで彼は3曲ジャズ先達曲(ホレス・シルヴァー、ジジ・グライス、ハービー・ハンコック)を飛躍を盛り込む方で、そして(多分)オリジナルを3曲披露した。

 オープナーは、なんかウディ・ショウの1979年人気盤『Stepping Stones : Live at Village Vanguerd』(Columbia)に入っていてもおかしくないような創意と意気が溶け合った曲。おお格好いいじゃねえかと、すぐに身を乗り出す。で、驚いたのは、21歳という鍵盤奏者がずっと(全ての曲で)エレクトリック・ピアノを弾いたこと。ピアノはステージの横に片付けられ、フェンダー・ローズしかステージ上に置いていない。そのフランシースの指さばきは電気ピアノの音を効果的に介するもので、ふむと頷く。これは、実力者。一つはっきりと分かったのは、ヒルはアコースティック・ピアノが規定するジャズの表情から逃れようとしているということ。新作では古臭い主題を取りつつスポークン・ワードを入れたりもしていたが、マジ一筋縄ではいかない人だな。

 リズム・セクションは、旧来のアコースティックな音色をばっちり取る。そして、そこにアコースティック・ピアノでなくエレピ音(ときに、エフェクターもかまされる)が乗ると、どこかいつもと違うジャズの表情が間違いなく浮き上がる。ベース奏者やドラマーもちゃんと今の揺れや立ちをしかと持つジャズ・ビートを送り出していて高揚。皆、20代だろうけど、いやはや米国には確かな若いジャズの担い手が育っていると思わずにはいられなかった。ジャズ、全然死んでいないよなあ。

 フロントの二菅については、テーマ部におけるハーモニーがクールで、それだけで間違いなくジャズたる深みと輝きを出す。まず、それに感心。そして、ヒルのソロに触れてときにぼくが感じたのは、なぜかフレディ・ハバード。ドナルド・バードの純ジャズ時代の曲「フライ・リトル・バード・フライ」を新作で取り上げていたのでバードも好きなのは間違いないだろうけど。一方、アルト・サックス奏者は結構控えめなノリで演奏するのだが、間違いなく他者と差別化できるようななソロをとっていて○。二人とも、どこか全開にしていないように感じる部分をぼくは得た。だが、その一歩前で踏みとどまっているような風情にも、ぼくは今っぽくも好ましい老成感を感じてしまったんだよなあ。とかなんとか、皆んな良かったし、何よりその総体が才気たっぷり。拍手っ。”我々の演奏流儀”に満ちていた!


▶︎過去の、マーキス・ヒル
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http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
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<今日の、朗報?>
 知人から、セレッソ大阪のオフィシャル・ルマガジン「12th」付録のJ1昇格記念ポスターに、送った我々の写真が採用されました、との連絡あり。昨年11月に試合を見に行った際〜http://43142.diarynote.jp/?day=20161114〜の集合写真。なんか、うれしい。セレッソのサポーターじゃないけど、オレやっぱりサッカー好きなんだな。
 昼下がりから試写に二つ行き、日が暮れるとライヴ2本をハシゴ。体力と根気がないのでけっこう困ぱいするかと思ったら、そんなことまるでなく。夜も元気だった。ま、誰に強制されるわけでもない、娯楽享受だものなー。

 まず、渋谷・ユーロライヴで、2016年米国映画「ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ」を見る。ドキュメンタリーだが、これはその内容情報を知ったら、多くの人が興味を持つのではないか。

 素材となるのは、ユダヤ系で1964年ブロンクス生まれのアンソニー・ウィーナー。民主党上院議員秘書(1985年〜)〜NY市会議員(1991年〜)〜民主党下院議員(1999年〜)と順調にのし上がった彼が、2011 年にセックス・スキャンダルで議員辞職を余儀なくされたあたりから、このドキュメンタリーは始まる。下院議員時代に彼はエネルギッシュな颯爽行動派として評価を高め、下院当選の翌年にはヒラリー・クリントンの側近秘書として知られるフーマ・アベディン(カラードぽいが、セレブ臭あり。クリントンは、彼女を第2の娘とも言っていたよう)と結婚するなど順風満帆だった。

 猥褻な文書や写真を携帯電話で送ることを指す“セクスティング”という言葉があるのは初めて知ったが、ウィーナーの場合は淫らな写真を女性に送る趣味を持っていた。最初にバレた際、自分は無関係でハッキングされた可能性があると嘘をついたのが致命傷だったよう。辞職後に、フーマとの間に子供が生まれもした。その後、9年間続いたマイケル・ブルーバーグの後任を決める2013 年ニューヨーク市長選に、ウィーナーは政界返り咲きを求めて立候補する。彼は知名度のある妻や子供を前に出した戦略も取って選挙戦を戦い、当初の世論調査では支持率1位の候補となった。映画は、ウィーナーが中南米系とかのマイノリティ米国人やゲイにも両手を広げる選挙戦をしていたことも伝える。

 監督をしているのは、かつてウィーナーを含む政治コンサルトの経験も持つジョシュ・クリーグマンと映像畑をずっと歩んできたエリース・スタインバーグ。多くの材料は、その市長選挙選に密着して撮った映像だ。おそらくクリーグマンはもう一度政界に返り咲くサクセス・ストーリーを求めて撮影を申し出て、ウィーナーの方もまた表舞台に戻ることができると踏んで撮影をOKしたのではなかったか。だから、本当に近い位置で収めた映像が映画にはある。

 だが、選挙活動中に、下院議員辞職後も彼がセクスティングをやっていたことが暴かれ、支持を失い、彼は落選してしまう。その顛末をTV報道映像なども交えて綴るのだが、とても見ていて辛い。後味が悪く、笑えない。その理由の大きな一つは、ウィーナーが人の上に立つには不適切かもしれない結構頭の悪い、直情的な人間であることが露見するから。よくぞ、ウィーナーはこれを映画化することを認めたな。そして、所詮政治家は皆んなそうであり、決定的な悪事が表に出ない限りはそいつらが調子よく振る舞って当選していると、思わせられる。あーあ、政治家って、選挙って…。そう、悲しい気持ちにならないはずがないじゃないか。また、ウィーナーの懲りない嗜好を通して、人間の性(さが)ってなんなのかという虚無感にもとらわれる。

 落選した時点で映画は終わるが、その後もウィーナーのトホホな性癖は複数回暴かれたよう。そして、今回の大統領選でヒラリー・クリントンが公務で私用メール・サーヴァーを使っていたことが大問題となったが、それはもともとウィーナーのメールが精査される段階で、発覚したようだ。トランプ次期大統領の数々のオレさま所作はセクスティングを超えるものではなかったのか。

 暗い気持ちのもと移動し、東銀座・松竹試写室でイタリア人巨匠監督のルキノ・ヴィスコンティ(1906~1976年)の晩年にあたる1974年の人気映画「家族の肖像」を見る。ファッション・メイカーのフェンディがお金を出してデジタル復刻した結果、2月からの公開となるようだ。

 これは、もう一度見てみたかった。別に映画ファンでも、もちろんヴィスコンティ監督好きでもないのに、「家族の肖像」だけは大昔に見たことがあった。当時、お洒落な意識高い系の友達に誘われたわけですね。見たら、つまらなかった。でも、ええ格好して気に入られたくて、その時は持ち上げた感想を言ったと思う。

 しかし、舞台となるアパートの重厚な部屋の様に欧州文化、貴族というシステムの流れを感じたりもし、未知のものと出会う喜びは得た。また、当時のぼくはこの映画に描かれる主人公の老人と彼の周りにいる人たちとの軋轢に、キューブリックの映画「時計仕掛けのオレンジ」(ロック的な感覚を持つとの見解〜ブリティッシュ・ロックを理解する手助けとなる〜から、この映画は見ておりました)との親和性を感じてしまったりもした。ようは常識と不道徳とかいった旧と新の対立が欧州空間のもと描かれるということで……。

 今回見ても、最後の方はよくわからなくなってしまったし、示唆はいろいろと受けたが、心からは楽しめなかった。また、ローマのアパートメントの中だけで完結する映画(ヴィスコンティが病で下半身不随となり車椅子の生活を余儀なくされた結果の設定であったが、それはそれで、技ありだろう)であるのに、台詞がすべて英語で通される違和感は、言葉に敏感になっているだろう今の方が増した。一部カンツォーネもかかるし、エンド・ロールのクレジットもイタリア語なのに。主人公のバート・ランカスターは米国人だが、他の非英語圏生まれの役者たち、よく英語をこなしている。ヴィスコンティの他の映画も英語劇なの? 当然、他はちゃんと見たことがない。無責任なことを書いていて、すみません。

 その後は、南青山・ブルーノート東京へ行き、昨日に続きチャールス・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日)御一行を見る。前日の感慨を受け、そして絶対に違うことをやるはずだという確信のため、当初の予定を変更した。出演者の皆さん、服装が違っていますね。昨日はヤンキーのノリだったハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日)は、カジュアルながらジャケットを着ていた。

 そしたら、演奏も違っていた。まず、曲が全部違う。このショウはブルースを二つもやる。やはり、新鮮。とともに、サウンドの傾向も違っていた。ギザギザしていた、どこか異物感をはらんでいたのは昨日の方。この日はもっと純ジャズっぽい、スペースを作り飛び込み会う感じがよりあった。ボサっぽいビートで始まる曲もあったか。どこか、ふくよかでもあった。それゆえ、昨日のセカンド・ショウを見た際には欲しいと思った新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』のりのスティール・ギターの音が、不要であるとも感じた。もっと極端な書き方をするなら、この2日目のファースト・ショウはロイド、ピアノのジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)、ロジャース、ハーランドという旧カルテットのモランの代わりにビル・フリゼールがきっちり入った姿を持つ、とも説明できるんじゃないか。ゆえに、昨日のようにフルゼールにガボール・サボの影を見る局面もなかった。

 しかし、なんにせよ、なにから何まで面白い。フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日、2017年1月12日)は好調、とともに彼にはファンが付いていて、彼を見に来た人もいるはず。フリゼールのソロのショウとか、企画しても良かったのではないか。もしくは、このリズム・セクションと(つまり、ロイド抜きのトリオで)やっても超おもしろかったはずだ。レコーディングするのも、大ありだと思う。

 そのフリゼールのソロのとき(たっぷり、与えられます)のロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日、2017年1月12日)の演奏は素敵すぎ。アクションも、今日の方が大きくなかったか。もう、フリゼールの変化に沿いニュアンスに富む指さばきを見せ、ときに的確に変化をうながすフレイズも出し、といった具合で。もうドキドキ、彼はぼくにとってトップ級のエレクトリック・ベース奏者となった。

 もしかして、ぼくは楽に聞けた、この日の方がやっている曲調が好みであったためもあり、昨日のショウより良いと思えたかもしれぬ。絶対、最初に聞いたとき方が新鮮で好印象を持ちがちなのに、これはどうしたことか。でも、それこそがリアル・ジャズのすごさであり、ロイドの力なのだと思う。あー、明日も見たいが用事がある。あ、このセットは80分強だったかな。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
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▶過去の、ビル・フリゼール
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▶過去の、ルーベン・ロジャース
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▶過去の、エリック・ハーランド
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▶過去の、ジェイソン・モラン
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 その後は、品川・ステラボールに行く。サンブランシスコの穏やかエレクトロニカの担い手であるTychoの公演。これまでティコと日本語では表記されてきたが、タイコーとステージで言っていたか。

 会場入りしたときは、ちょうど前座が終わっていてインターミッション中。缶を提供しているだけなのに、販売カウンターの前にはすごい列。毎度、使えない。プリンス・ホテルの付属施設のくせに、あんな客に迷惑をかけていて恥ずかしくないのか。ともあれ、ぼくの中では大箱に分類されている会場はほぼ満員。近年、フェスとかで何度か来ているはずだが、人気あるな。

 スコット・ハンセンのソロ・プロジェクト。ながら、今回の実演では、キーボードやギターを弾く当人に加え、さらにギター/ベース、ギター/ベース/キーボード、ドラムという3人がサポートで加わる。ドラマーのロリー・オコナーが四つ打ち、プログラム的なビートをしゃきりと軽やかに叩く。いい感じ。実は、前座の出演者は彼のユニットだったようで、どんなことをやったのか。ま、チャールス・ロイド欲には勝てるはずもないんだが。

 彼のしっかりした、タイトでもあるドラミングを下敷きに、そこに鍵盤音や弦楽器の音がある種の抑制美のもと重なるのだが、なんかPC同期音を使っていないような気がした。鍵盤の音数が多いかと思える時もなくはなかったが、ドラマーはヘッドフォンをしていないし、別に奏者間にインタープレイが存在するわけではないのだが(それはロイドを見た後だと、よけいに感じる)、そこにはバンドとしてのクリーンさ〜姿勢の正しさがあるような気がし、これはバンド音っぽいと思えちゃう。彼らのサクっとした終わり方も何気に印象的。下敷きガイド音がないとしたら、合図を出し会うわけでもなく、少し不思議。きっちり、小節数が決まっていて、それを皆んな把握していたりして。

 そんな生演奏的なパフォーマンスは全インストで、いろいろな感想を導く。ギターがよりリアルに聞こえるためにときにシューゲイザーやポスト・ロックと言ってもいいような。というか、もともとある種のロック的な感覚を持っており、それが好評価に繋がっているとも指摘できるか。曲はどれも短め。延々と1曲を続け、それでトランスぽいのりを出すということもアリに思えるが、ハンセンたちは楽曲を大切にしていることを示すかのように、そういうことはしない。ある意味潔いし、ハッタリや虚勢をかましておらず、それもいいな。そういえば、彼らの曲名は初期を除き、どれも簡素にワン・ワードの単語なんだよな。

 背後のバカでかいスクリーンには、自然を撮ったものやグラフィクス映像が終始流されていた。それ、邪魔に感じる時もぼくはあったが、それは小数派なのかな。映像も、ハンセンが作っているよう。2階席から見る彼はとても育ちが良さそうに見えた。

<今日の、雲行き>
 午後3時ごろ、試写場から試写場に移動の最中、濃い灰色の空(でも、雨は降りそうでない)に半分なっていて、うわあ。スコットランドの空みたいと一瞬思った? というのは嘘だが、これは北国の空の感じだと思わせるには十分なもの。明日、明後日は有数の冷え込みとなる予報が出ているのに納得した。まだまだ、寒さはこれからかあ。。。
 76歳と高齢ながら、現在もトップ・リード奏者であり続けているロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日)の新バンドの実演を、南青山・ブルーノートで見る。セカンド・ショウ。

 1時間50分ものパフォーマンスを繰り広げた。ぼくがここで見たここのライヴにおいてもトップ級に時間が長いものであったか。過去の彼のショウも過剰に演奏時間は長くなかった(はず)。最後の方でファースト・ショウはジェット・ラグでいまいちだった……とか言っていたが、あんたすごかったじゃない。どこか、その後味が良くなかったので、セカンドはがんばちゃった?

 本人はテナー・サックスを構え、曲によってはアルト・フルートを吹く。彼に加え、ギターのビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日)、ベースのルーベン・ロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日)、ドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日)という、新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』(ブルーノート、2016年)参加者の布陣でことに当たる。1曲はどれも20分を超えていたか。

 御大は、とても機嫌が良さそう。もとい、楽しそう。特にフリゼールの演奏にはイエイという感じで、掛け声を横からかけたりもしていたな。ルーベン・ロジャースがすべてエレクトリック・ベース(4弦のフレッテッドであったはず)を弾いていたのには驚く。でも、違和感はなし。
 
 とにもかくにも、悠然。その佇まいにも、滅茶しびれる。ものすごい圧倒的にして崇高なジャズ・マン像を仁王立させる一方で、ヒッピー・ムーヴメント/ニュー・エイジ思想にかぶれた1970年前後のロック・ミュージシャンとのいろいろな交友をおおらかに肯定しているところも透けさせていて、ぼくはなんかグっと来た。

 ビル・フリゼールらを配し、黒人霊歌やディラン曲などを取り上げた『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』はロイドのアメリカーナ作品という言い方で説明もできるが、その長尺開陳と言える実演は、マイク・ラヴ(2014年3月28日)やカール・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)、ロジャー・マッギン(ザ・バーズ。彼は歌ではなく12弦ギターでの参加)らが入った『Waves』(A&M,1972年)のとぎすまされた今様版とも言える聞き味を絶対に持っていた。あのアルバムにはトッド・ラングレン(2001年11月9日、2002年9月19日、2002年9月28日、2008年4月7日、2010年10月10日)の「アイ・ソウ・ザ・ライト」の出だしを繰りかえしているみたいな曲も入っていた(両曲、発表は同時期となるのかな?)。聞き応えある演奏を繰り広げたフリゼールも、そこでのガボール・サボの演奏を蘇らせている部分が間違いなくあったものなあ。それゆえ、新作でいかにも今っぽい飛躍を加えていたスティール・ギター奏者のグレッグ・リーズが来日メンバーには入っていなかったのはとても残念。本国のライヴには入っていたりもする。そういえば、ヴォーカル曲も入っていた『Waves』の行き方をなぞるかのように『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』にはウィリー・ネルソンやノラ・ジョーンズ(2002年5月30日、2002年9月14日、2007年3月21日、2010年1月20日)が歌う曲もあったが、この春の米国のロイドたちのライヴにはルシンダ・ウィリアムスが入る日もある!

 脱帽。とんでもない、ジャズ・ジャイアンツであることを皮膚感覚で存分に感じさせる存在は、しなやかに呼吸し、なんとも味と飛躍のあるリヴィング・ミュージックをこれでもかと送り出してくれた。こんな僥倖ってあるかい!

▶︎過去の、チャールス・ロイド
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▶過去の、ビル・フリゼール
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▶過去の、ルーベン・ロジャース
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▶過去の、エリック・ハーランド
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▶︎過去の、マイク・ラヴ/ザ・ビーチ・ボーイズ 
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▶過去の、トッド・ラングレン
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200804081929500000/
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▶過去の、ノラ・ジョーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm 5.30
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 2.09
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<今日の、感慨>
 ロイドという音楽家がいてよかった! ジャズという表現があってよかった! と、心底思わせられた。会場にはいつも以上に、ミュージシャンが散見されました。本文中には触れていないが、ずっとロイドが重用している、どこかパサパサした手触りを持つエリック・ハーランドの演奏ももちろん良かった。ハーランドとロバート・グラスパーはヒューストンの芸術高校の同級生。それほど二人の相性は重なるわけではないが、グラスパーの2007年初リーダー公演の際にダミアン・リードが急遽来れなくなって、ハーランドが同トリオに加わるために遅れて来日したことがあった(http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/)。ハーランド〜ケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日)〜ジャマイア・ウィリアムス(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)と続く、同高校卒の新世代ジャズ・ドラマーの長男と言えそうなハーランドは、3月中旬に自己バンドでコットンクラブに出演する。また、ケンドリック・スコットもこの18日から始まるザ・クレイトン・ブラザースのブルーノート東京公演に同行するとともに、23日からは自己バンド公演をコットンクラブで持つ。ピアニストのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日)はその両方のギグに出演しますね。アイグスティとデュオ・ライヴを持ったこともある心に嵐と諧謔を持つ清新ギタリストであるジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日)の自己トリオ公演は、やはりコットンクラブでこの31日からだ。

▶過去の、ロバート・グラスパー
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http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
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▶︎過去の、ダミアン・リード
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▶過去の、ケンドリック・スコット
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http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/

 昨年暮にこんなこと(下部の項)を書いている〜http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/ 〜が、ぼくのアリ・ジャクソン(2012年6月8日、2014年4月24日)に対する期待は存分に満たされた。極論すれば、やっぱり昔流儀のジャズはシンバルのチーチキだけで、伴奏が成り立つんだよなあ。ショウが終わると、彼のセットをチェックする人が散見され、注目している人(ドラムをやっている人だろう)はちゃんといるんだなあと思う。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。

 スーツに蝶ネクタイをつけたジャクソンはステージに上がると、お行儀よく靴を脱いでドラムの前に座る。アンコールの際は、靴を履いたまま叩いたが。ドラムのセットは、まさしくジャズ。小口径のベース・ドラム(アタマに必ず入れるなどリズムの屋台骨を担うものではなく、アクセントを付けるためのそれだから、小さなものの方が音質的に適する)、スネア、ハイハット、タム2、フロア・タム1、シンバル2、カウベル(タムの間に置き、意外に用いる)というもの。そして、彼はレギュラー・グリップのもと(97%、そう)、ジャズ流儀に沿った4ビートのドラミングを展開。冒頭の2曲はブラシを用いた。

 とはいえ、細心にリストの強弱や、シンバルやスネアやタムの叩く位置(で、音色が変わる)を精緻にコントロールする、その瞬発力にも富む演奏はいろんな今様奏法も見渡したうえでのオールド・スクールな行き方であるのがよく分かる。いやあ、注視しながら聞いていて、面白くてしょうがなかった。

 トリオによる演奏で、ピアノはまだ20代だろうエメット・コーエン(モンク・コンペのウィナーで、過去クリスチャン・マクブラド公演で来日したことがあるよう)で、ベースは中村恭士(2009年10月15日、2015年9月5日)。彼らの演奏もまた今のヴァイヴを受けつつ大好きなジャズに邁進するんだという意思を放つ。何気に多才な奏法を繰り出していた中村は間違いなくトリオ表現に広がりを与えていたし、中村と比すともう少しコンサヴァ傾向の演奏にあるもののコーエンの粒立ちの良い闊達な指さばきも相当に魅力的。彼はちょっとしたところで、他の二人に笑みを送るのだが、それもチャーミングであった。

 演目は、「ブルー・モンク」をはじめ、スタンダード中心。何気にブルージーな曲調はトリオのノリにあっていて、「プリンス・ブルース」と紹介した曲もあったが、そのブルース曲(正調ブルースではないが)はジャクソンの叩き方もより生き生きとして、たいそう良かった。ジャクソンが最初タンバリンを叩きながら(足で、キックとハイハットを入れる)やる曲もウキウキできたなあ。そういえば、ディズニー・ソングながらマイルスの曲とMC紹介された「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」や『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』の「ジョシュア」(こちらは、ちゃんとヴィクター・フェルドマン作と紹介)を演奏。ジャクソンは1960年代前半のマイルス表現が特に好きなのだろうか。

▶︎過去の、アリ・ジャクソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120608
http://43142.diarynote.jp/201404260901127573/
▶過去の、中村恭士
http://43142.diarynote.jp/200910161214535124/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/

<今日の、アフター>
 流れで、在海外の今旬の人気ミュージシャンの持つパーティに行っちゃう。おしゃれなところ、その地下でセッションが繰り広げられ、うわーい。あんな人もこんな人も来ていて(ネットワーク、あるんだなあ)、笑顔で音を重ね合う。これはNYみたいとも思えたか。

 新宿・ピットイン。「あれもこれも」と題された公演で、同所の<昼の部>と<夜の部>通しで持たれ(入れ替えあり)、トランペッターの田村夏樹(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2010年8月6日、2012年7月1日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2016年1月28日)とピアニストの藤井郷子(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日)夫妻が持つ5つの単位が出演した。二人は今、ベルリンを拠点に、世界中を回っているんだっけっか。

▶過去の田村夏樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820 板橋オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
▶過去の、藤井郷子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201008261616172628/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120701
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE

 まずは、Quartet Maho。Mahoとは、魔法だそう。田村と藤井に加え、 ギターの加藤崇之(2005年11月28日、2005年12月11日、2012年11月24日)とドラムの井谷享志からなるカルテット。藤井のMCによれば、他は一応譜面があるそうだが、これのみ完全インプロであるそう。だが、過去のギグ経験がモノを言っているのだろう、噛み合いの確かな妙はいろいろと。終わりもスパっといくしね。大体の尺(曲の長さ)と曲数やテンポぐらいは、一応話して入っていると思うが。このカルテットの肝は、あっち側を飄々と奏でる加藤のギター演奏。素敵というしかない。そういえば、藤井はウィルコ(2003年2月9日、2004年9月19日、2010年4月23日、2013年4月13日)のネルス・クライン(2010年1月9日、2010年4月23日、2013年4月13日、2014年8月14日、2015年6月2日)と仲良しで、彼を迎えたギグ(2010年1月9日)をピットインでやったことがある。

▶︎ギターの、加藤崇之
http://43142.diarynote.jp/amp/200512020244540000/
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/
http://43142.diarynote.jp/201211261639115632
▶過去の、ウィルコ
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
▶過去の、ネルス・クライン
http://43142.diarynote.jp/?day=20100109
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
http://43142.diarynote.jp/201506070750376864/

 次は、 Satoko Fujii Orchestra Tokyo。構成員は、アルト・サックスの早坂紗知 (2003年6月30日) と泉邦宏(2006年7月3日、2011年7月10日、2012年4月21日)、テナー・サックスの松本健一(2004年10月10日、2005年11月28日、2012年12月11日)と木村昌哉 (2005年11月28日) 、バリトン・サックスの吉田隆一 (2004年8月20日、2004年10月10日、2006年7月3 日、2012年12月11日、2014年7月22日、2015年2月8日、2015年4月14日、2015年6月21日、2016年9月27日)、トランペットの田村夏樹と福本佳仁と渡辺隆雄(2010年12月28日、2013年2月19日)と城谷雄策、トロンボーンの はぐれ雲永松と高橋保行(2012年7月1日)と古池寿浩 、縦ベースの永田利樹 (2003年6月30日)とドラムの堀越彰 (2010年1月9日)と井谷享志。ピアノレスで2ドラムという編成、なり。

 長尺の曲を2つ演奏。多分、新曲だ。1曲は藤井曲で藤井が指揮をし、2曲目は田村の曲を田村本人が指揮し、その際藤井はステージを降りてお休み。ともあれ、久しぶりに藤井オーケストラを聞いたが、やっぱしこれはいいな。いいないいな。聖なる響きとゾクゾクする不協的アンサンブルとのブラス音と創意工夫に富んだ音色とフレイジングを持つイケまくっているソロが絡み合う様には、ため息。今のビッグ・バンド表現を持ち上げるなら、マリア・シュナイダー(2012年12月17日、2013年12月17日)ではなく、もっともっとカっとぶ創意に満ちた彼女たちじゃと確信する。学生のビッグ・バンドで、藤井のスコアを使おうとする血気盛んな集団はいないのだろうか。

▶︎過去の、早坂沙知
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
▶過去の、泉邦宏
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/201107111327576732/
http://43142.diarynote.jp/201204221307297965/
▶︎過去の、松本健一
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/amp/200512020244540000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
▶︎過去の、 木村昌哉
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/
▶過去の、吉田隆一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
http://43142.diarynote.jp/201504151353356530/
http://43142.diarynote.jp/201506251045578258/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160927
▶︎過去の、渡辺隆雄
http://43142.diarynote.jp/201101061048518045/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130219
▶︎過去の、高橋保行
http://43142.diarynote.jp/201207031354584120/
▶︎過去の、永田利樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
▶︎過去の、堀越彰
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/
▶過去の、マリア・シュナイダー・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201212190844487864/
http://43142.diarynote.jp/201312181034409673/

 夜の部の最初となる3番目の出演者は、田村夏樹 と藤井郷子 と井谷享志 (ドラム)というトリオのTobira—one(トビラ・マイナス・ワン)。本来はそこにダブル・ベース奏者のトッド・ニコルソンが入っていたが、現在米国に帰国しているので、マイナス・ワンだそう。ぼくは過去に井谷享志の演奏を聞いたことがないように思うのだが、とても幅の広い人だと思った。たとえば、このグループの冒頭曲で彼は手でドラムを叩き、また鳴り物を手にしたりもするが、それはカホン奏者がいるように聞こえたし、一方では瞬発力に長けたフリー流儀のドラム演奏も悠々聞かせる。また、藤井のピアノにせよ、田村のトランペットにせよ、その演奏自体が好調。特に藤井についてはバンド・リーダー/作曲家としてまず見てしまいピアニストとしての面への注視が少し後回しになってしまうが、今回の演奏を聞いて、線の太い、しっかりとエッジに立とうとする意志を持ついいピアニストであると痛感した。田村もまた、言わずもがな。

 その次は、藤井郷子とドラムの 吉田達也(2006年1月21日、2013年2月11日)とのデュオ。これは。もう笑う。ロック感覚ありというか、これはプログ・ロック感性に貫かれた丁々発止表現ではないか。藤井は少女時代にプログ・ロック好きだったんだよね。1時間ぐらいのものを、山あり谷ありで一発。両者のしょうもないヴォイス合戦もあり。ああ、これも込みのデュオ表現であるのね。吉田は本日、56歳の誕生日であるそう。お元気で、何より。

▶︎過去の、吉田達也
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/

 そして、最後は Satoko Fujii Quartet。それは、田村夏樹 と藤井郷子 とエレクトリック・ベースの早川岳晴 (2010年3月20日)と吉田達也 からなる。過去、何作もアルバムを出しているはずだが、一時やめていて、今回久しぶりにやるらしい。で、ええええ。こんなだったっけ? 前のデュオよりもっとロックっぽくも、乱暴。音も超デカいし、もうアラウンド60ミュージシャンのバカ丸出し回春インストなんて形容も、それには用いたくなる。とにもかくにも、ソロ・パートもたっぷり与えられる早川岳晴の荒い電気ベース演奏が大活躍。これをアコースティック・ベースでやったなら、ぼくはホっとすると思った。もし、エレベで行くのなら、藤井は電気キーボードを、田村は電気エフェクトを用いたほうがいいのではないか、とも。テーマ部は凝っている(独りよがり的にとも、一部言いたくなる)が、ロックもジャズも好きなぼくとしてはなんか先が一番読めちゃう部分もあり、リズムの設定にも心奪われず、5つの出し物の中では一番これが好みではなかった。ただ、上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日、2016年11月16日)のザ・トリオ・プロジェクトのファンなら、これを気にいる人はいるだろう。

▶︎過去の、早川岳晴
http://43142.diarynote.jp/201003221028556158/
▶過去の、上原ひろみ
http://43142.diarynote.jp/200411292356580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050731
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101203
http://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201207310933428147/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160915
http://43142.diarynote.jp/?day=20161116

<今日の、記憶>
 若い知人から、<本日は、成人式に行ってきます!>というメールがあったが、そっかー今日は成人の日の祭日であったか。1月15日が成人の日と刷り込まれている世代はどんどん減ってきているのだなー。本日は14時半開始のライヴに合わせて明るいうちから出かけたが、あまりそういう風体の人とは出会わず。ヒネていたぼくは、高校の卒業式も成人式も出ていない。両親はかなりスクエアな方であったと思うが、それについては何も言わなかったな。どこか、卒業式を仲間たちと祝わなかったという負い目があったためか、大学のときは卒業式にも学科の謝恩会にもちゃんと出た。ロック的な崩し満載の格好で……。あれは楽しかったなあという写真がいっぱい、家のどこかにある。
 マイルス・デヴィスが電気バンド全盛時にあった1970年6月のスタジオ・セッションに参加し、“電波”な声や口笛やキーボード音を自分流に垂れ流し、なんなんじゃコイツはと御大がさじを投げた感じが『ライヴ・イヴィル』に記録されている天衣無縫ブラジル人音楽家(2004年11月6日)の公演は、渋谷・WWW Xにて。ぼくは早い方の回を見たが、スタンディングで満場の入りであった。しかし、もう80歳なんだよなあ。見た目には元気そうでありました。あ、外見はガース・ハドソン(2013年8月2日)と故リオン・ラッセル(2005年11月24日)を重ねた感じもあるか。

 キーボードや笛や小物を操る本人に加え、ソプラノやテナーやフルートや横笛や縦笛のショータ・P、ピアノのアンドレ・マルケス、5弦電気ベースのイチベレ・ツヴァルギ、ドラムのアジュリナ・ツヴァルギ、パーカッションのファビオ・パスコアールという面々がサポートでつく。

 皆腕が立つが、演奏が始まっていささか驚く。かなりジャズ・フュージョンに寄りかかった演奏(ソロ回しも、律儀にやっておりました)をしていて。そりゃ、リズムをはじめブラジル属性がきっち入ったものではあるのだが、ぼくの耳にはもっと無勝手流においらなパフォーマンスをしてほしいと思ってしまった。この晩の実演だと、パスコアールという惑星の住人によるものというより、ジャズ・フュージョンという範疇の中でやんちゃする人物のライヴという感想を持ってしまうから。やっぱり、彼はジャズ好きなのか。ぼくにとってのパスコアールはもっと規格外の自由人であるのだと、ショウに触れながら、ぼくは自らのパスコアール像を反芻した。

 とはいえ、奇声をあげたり、ソロのパートが終わるとその演奏者の名前をがなったりとか、随所にとっちらかった側面を出して、ウヒョヒョヒョとなれたのは確かだし、オレはパスコアールのライヴを見ているというれしさを得たのは確か。バンド・メンバー全員が鳴り物を手にしてお茶目に前に集まる場合もあったが、そういうところは全面的に頷いてしまう。それから、途中に飲み物を買いに出て再び場内に戻ったら日本人がステージでフイーチャーされていた。打楽器を叩いていたのは、ケペル木村(2016年9月7日)だった。ミュージック・ラヴァーに国境なしというような、お高くとまらぬしなやかさも、またいいやね。なお、今回の公演は昨年1月に亡くなったブラジル人リード奏者/ピアニストの、ヴィニシウス・ドラン(1962〜2016年)に捧げられたもののよう。

▶︎過去の、エルメート・パスコアール
http://43142.diarynote.jp/200411071407550000/
▶過去の、ガース・ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/
▶過去の、リオン・ラッセル
http://43142.diarynote.jp/200511281322500000/
▶︎過去の、ケペル木村
http://43142.diarynote.jp/201609201648546159/

<今日は、高湿度>
 年末年始と風が冷たい日もあったが、昼間は陽光注ぐ晴天で気持ちが良かった。が、本日は雨が降り出し、けっこう激しい。乾燥が緩和されるので、気持ちは曇らない、な。しかし、以前は加湿器を神経質と言えるほど活発に使っていたが、今は個人的には使用しなくなったなー。人間、歳をとると杜撰になる? 昔の加湿器は使用していると、ビニール袋やアナログ盤に白い粉がついたりもした。
 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。名古屋や大阪でライヴをこなした後の東京入りで、5日間もの帯で面々はショウをこなす。

 マーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日)は2015年秋ごろからアルト・サックスのアレックス・ハン(2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日)以外のバンド陣容を一新。現在ストレート・アヘッドな奏者としてコンコードと契約しているトランペットのマーキス・ヒル(2016年9月17日)、ピアノ弾き語り演奏も得意なキーボードのカレブ・マッキャンベル(2016年9月17日)、マーカスが自分よりも俺の曲を覚えていると全面の信頼を寄せていたルイス・ケイトの後を受けたドラムのアレックス・ベイリー(2016年9月17日)という面々は、皆20代だ。

 今に始まったことではないが、おいらがMr.エレクトリック・ベースと言わんばかりに、ミラーがステージ中央に立ち、ぶいぶいとスラッピングを柱に置くベース演奏をかまし、ソロもたっぷり取る。また、彼の周りを回る衛星の様な感じで、サイド・メンのソロ・パートも長めに用意される。近作『アフロディア』からの曲を中心に演奏、間口が広く粘着質なビート・フュージョン表現が弧を描く様を実感し、“ミラー・フォーミュラ”とも言うべきぶっとい様式があるナとも痛感。

 昔ミラーのLAの自宅で会ったことがある彼の子供たちもすでに成人になっているはずで、今は何をしているんだろう……。なんてことを、ぼくはふいに思ってしまった。それは、やはりミラーのベース演奏やリーダーとしての才覚に年輪を覚えてしまったからか。

▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
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▶︎過去の、アレックス・ハン
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▶︎過去の、マーキス・ヒル、カレブ・マッキャンベル、アレックス・ベイリー
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<今日の、所感>
 2017年の、初ライヴでした。無理をして(?)風邪をひいてしまい、外出もせず2日間お酒を飲んでいなかったが、この晩はイケイケ。友達と2軒目に流れたお店では20年ぶりぐらいの知人と遭遇し、楽しく飲む。酒も好きだけど、酒を飲む場が好きなんだろうな。だから、家では基本ぼくは飲まないもの。昔カルチャー誌の編集者をしていた彼はげんざい靴の雑誌の編集長になっていたのだが、習字がバカみたいにうまいのでびっくり。そのお店、昼間に習字会をやっていて、その流れでお習字コーナーがあったのだ。高校生まで習っていたというから、かなり本格的にやっていたのは間違いない。ぼくが書いた後に勧め、Sさんはしょうがないなという感じでおっとり筆を取ったわけで、“能ある鷹は爪を隠す”という格言を目の当たりにした思い。昨年、謙虚、人に気をつかうよねえという指摘を複数の人からされたので、今年はもっとオレ様で行こうと思っていた(いやバチ当たりなもので、新年にあたっての抱負とかを考えるタイプでなく、昨年の11月ぐらいにふとそう思ったんだよなあ)が、やっぱり控えめなのは格好いいと思えました。ほんと我ながら、コロコロだなあ。

 マイルス・デイヴィスを扱った実写映画(2015年、米国映画)を見る。日比谷・TOHOシネマズシャンテ。2004年映画「ホテル・ルワンダ」の主演で名をあげたドン・チードルがデイヴィス役を担うだけでなく、監督も務める。
 
 こんな映画だったのかいっ。全然、想像していたものと違っていた。チードルが着目したのは、デイヴィスがライヴからもアルバム作りからも離れていた1975年から5年間の時期。チードルはそのあまり公になっていない隠匿期に着目し、事実と虚構がないまぜになった変てこなストーリーをこさえている。また、主舞台となる1970年代後期と1950年代の過去を何度も交錯させる。その昔の映像部で取り上げられるのは、『サムバデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』(1961年)や『ESP』(1965年)のジャケットにも写し出されている奥さんだったフランシス・テイラーとのいろんな場面、さらには有名な1959年の白人警官によるバードランド・クラブ前での殴打不当逮捕事件、ギル・エヴァンスとの『ポーギー&ペス』(1958年)のレコーディングの場など……。

 現在と過去の場面、さらには真実と嘘が交錯しまくるため、それなりにデイヴィスの歩みや逸話を知っていないと、けっこう分かりづらい映画になっているか。また、生真面目なデイヴィス・エンスージアストであるなら怒ってしまうかもしれない。だって、一言で言うならこの妄想ストーリーが描くのは、デイヴィスがいかに女と薬に汚く、フランシス・テイラーへの思いを断ち切れない女々しい男であったかということなのだから。いや、チードルさん、デイヴィスのファンではあったのだろうけど、何を描きたかったのか。5年間をネタにする自分の発想の飛躍を問いたかったのか? そうすることで、マイルスを自分だけの存在にしたかったのか? しかし、当初は自主制作的に始まったらしいこの映画を、デイヴィスのカタログを主に持つソニー、その映画部門がよくぞ配給することに決めたよなと、変なところにも感心してしまう。

 ミュージシャンを素材とする実写映画って最初は似ていなくても役者がうまく対象の癖をモノにしているためか途中からはなかなか似ているなあと感心するものだが、この映画の場合は最後までチードルの演じるデイヴィスがそれほどデイヴィスに見えなかった。チードルってフェラ・クティの役をやったら似ているかもと思わせる顔つきなんだが、眼光の鋭さとかお相撲さん声の喋り(やはり、マイルスのそれには途方もない虚無感というか、ブラックホールがあった)とか、違うなあと思ってしまう。そういう意味において、この映画はデイヴィスの個性の立ち方を再確認させるとは間違いなく言えるはず。でもって、ディヴィスは相当なハンサム君であった事実を、この映画は伝えていない。ボブ・ディランもそうだが(両者ともCBSコロムビアの最たるアーティストですね)、彼らは音楽的才能を持つとともにルックスが良かった! やはり、それは商業音楽の成功には基本不可欠なことなのだと思う。

 空白の時期、彼は徐々にプライヴェイトなリハーサルを始めもしていて、その事実は映画の虚構の最たるプロットとなるセッション録音テープの盗難に結びつくわけだ。だったら、菊地雅章(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日、2015年7月8日、2016年6月11日)やT.M.スティーヴンス(2001年10月31日、2011年8月12日、2012年5月31日)らも参加していたその模様も実写化して欲しかった。いや、もっと書いてしまえば、映画でこのストーリーを展開するなら隠匿期のセッション・テープを発掘しなければならなかった。それは、いまだ一切表に出ていない。もし、それが叶ったなら、この映画の持つ話題性と評価は大幅に変わったはずだ。

 劇中には、1950年代から70年代上半期にかけての、マイルスの音楽が使われるとともに、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日)が関与したトラックもいろいろ用いられる。最後のシーンは、スペシャル編成によるライヴ映像が登場。キーボードはロバート・グラスパーとハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日)、リードはウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)、ギターはゲイリー・クラーク・ジュニア(2013年3月18日)、電気ベースはエスペランサ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日、2016年5月31日)、ドラムはアントニオ・サンチェス(2011年7月20日、2013年5月21日、2015年4月16日)という面々。そこにチードルが演じるデイヴィスがいるわけだが、トランペット音はキーヨン・ハロルド(2014年1月10日、2016年1月25日)が担った。

▶過去の、菊地雅章
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
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http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611
▶︎過去の、T.M.スティーヴンス
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▶過去の、ロバート・グラスパー
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▶過去の、ハービー・ハンコック
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http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
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▶過去の、ウェイン・ショーター
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▶過去の、ゲイリー・クラーク・ジュニア
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▶過去の、エスペランサ・スポルディング
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http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/
▶過去の、アントニオ・サンチェス
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201504180959027600/
▶過去の、キーヨン・ハロルド
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/

 その後、旧スタックス発のファンク・バンド、バーケイズ(2006年10月18日、2008年7月29日)のショウを見る。サポートを務めていたオーティス・レディングのツアー中の飛行機事故の際、事故った飛行機に乗っていなかったベーシストのジェイムズ・アレキサンダーや1973〜4年ごろから所属するシンガーのラリー・ドットソンやキーボード奏者のウィンストン・スチュワートを含む編成で実演に臨む。他の構成員は二人のバックグラウンド・ヴォーカル、ギター(メンフィス周辺の録音に色々参加しているアンジェロ・アール)、ドラマーがつく。コーラス担当の1/2アーチー・ラヴは元ソウル・ヴルドレンの名シンガーの故J.ブラックフット(2001年3月18日)と仲良しだった人物。とかなんとか、メンフィスR&B界のかけらのようなものを運ぶ公演と指摘できなくもない? 六本木・ビルボードライブ、ファースト・ショウ。

 開演時刻2分前に面々は登場するが、その際の満場のお客の反応は薄い。だが、演奏が始まって間もなく下部フロアは総立ち。パフォーマンスの力あり、だ。実のところ、ドットソンの歌はそれほどディープではなく、二人のバックグラウンド・ヴォーカリストたちも薄口。だが、猛烈に叩くドラマーの演奏を下敷きにする演奏はなんともファンクで、聞く者を鼓舞する。イエイ。往々にしてバンドでちゃんと演奏する担い手でも時にプリセット音を併用しているのかと思わせる部分があったりもするのだが、彼らの場合は100%人力による表現だと徹底徹尾思わせる。アレキサンダーは一切イフェクターをつなぐことなく、シールドをアンプにつなぐ。

 ときにやったスロウもよし。オーディエンスへの働きかけもよし。メンバーの出で立ちもかなりよし。熟達した名人芸を、ぼくは堪能。アレキサンダーは赤基調で、他の面々は白基調の服を着ていた。それぞれに、デザインやアクセントとなる模様が少し異なっている。それ、確かな現役感も醸し出すものでもあったな。そういえば、皆んな同じ格好ではなく、統一性を持たせつつ少しづつ変化を出す衣装でステージに立つのは、この手のグループのステイタスなんだと聞いたことがある。我々はちゃんと手の込んだオーダーメイドのコスチュームを発注できる金回りのいいグループなんですよということを誇示するのに、それはつながるのだそう。

 そんな彼らは、少し前に“ザ・マスターズ・オブ・ファンク”ツアーというのをやっているはず。それには、他にキャミオ(2010年9月17日)、ワン・ウェイ、ザ・ダズ・バンド(2006年7月24日、2007年11月9日、2013年5月16日)、ザ・メアリー・ジェーン・ガールズ、ミッドナイト・スター(2009年1月31日)が参加している。

▶︎過去の、バーケイズ
http://43142.diarynote.jp/200610211631360000/
http://43142.diarynote.jp/200807311115150000/
▶︎過去の、J.ブラックフット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
▶︎過去の、キャミオ
http://43142.diarynote.jp/201009231551043308/
▶︎過去の、ザ・ダズ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200607281033420000/
http://43142.diarynote.jp/200711101237270000/
http://43142.diarynote.jp/201305260917114078/
▶︎過去の、ミッドナイト・スター
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/

<今日は、珍しい>
 映画館はすいていた。それ、大晦日だからなのか、映画の評判がいまいちなのかは判断がつかない。もともと映画をそれほど見る人ではないんだけど、ぼくが大晦日に映画館に行くのは初めてではないか? なんか大昔、ストーンズ(2003年3月15日)の映画「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」(1983年)をオールナイト上映にて見たことがあって、一瞬それは年末年始の時期ではないかと思ったが、違っているかな。そのとき行った渋谷の映画館は今のビック・カメラがある場所にあり、夜中に車で行き明治通りに止めたのは覚えている。まだ、駐禁取り締まりは過剰にキビしくなかった。あのとき乗っていたのは古いスカイラインだったか、シヴィックであったか。そういえば、ストーンズは今年行った南米ツアー(チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、ペルー、コロンビア、メキシコ、キューバ)を行っていて、その模様は『The Rolling Stones Olé Olé Olé! : A Trip Across Latin America』という映画に、ポール・ダグテールの手によってまとめられている。そのダグデールはストーンズの2013年ハイド・パーク公演のドキュメンタリーを撮った人物。また、今南米ツアーのハバナ公演に特化した『Havana Moon – The Rolling Stones Live in Cuba』というのもあって、それも彼が作っていると報じられている。それらの、日本公開はいつになるのだろう。ミック・ジャガーが初ソロ・アルバム『シーズ・ザ・ボス』(コロムビア、1984年)を作った際に、同作収録曲をフィーチャーするために作った映画「ラニング・アウト・オブ・ザ・ラック」(監督は、ジュリアン・テンプル。ジャガーは脚本にも関与)はブラジルを舞台にしたものだったが、その頃からミック“クール”ジャガーには南米興味があったということか。
 また、少なくても1999年から<ライヴ三昧>を書くようになって以降、大晦日にライヴを見るのは初めてだろう。もしかして、2016年は例年以上にライヴに行ったかもしれない。ライヴ後に飲み屋に流れると、今日は何と何のライヴだったのと聞かれたりとか、ぼくがライヴをハシゴするのが当然と思っている人もいるしなー。ま、元気でけっこうけっこう。
▶︎過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 
追記:スペースシャワーから出ている隔月刊誌”BLUES & SOUL RECORDS”の最新刊No.133(表紙はストーンズ)の雑誌付録CDは、彼らの新作『ブルー&ロンサム』収録曲のオリジナルを12曲収録。その原盤は、チェス、デルマーク、ヴィージェイ、他。ぼくの、ザ・たこさん のインタヴューも読めます。

朝日美穂

2016年12月29日 音楽
 十条・soto。十条駅下車初体験、駅前ローターリーに面したところにあるハコで、行くのは楽。渋谷からだと埼京線で4駅で着くし。ステージとなった部分の背後にはちゃんとしたデカい映写機が置いてあり、映画放映もできるようだ。

 朝日(2013年3月23日)にとって、1年ぶりとなる単独のライヴとか。ただ、子供を得たこととつながると推測されるが、今は子供を対象とするパフォーマンスを時々やっているらしい。サポートはギターの高橋健太郎、ベースの千ヶ崎学、ドラムの楠均、キーボードのエマーソン北村(2003年3月11日、2005年2月15日、2006年8月24日、2010年9月19日、2015年7月27日、2015年10月3日)という面々。皆、長い付き合いを持っており、ほんわかファミリアなサポート具合。キーボードを弾きながら歌う彼女はエマーソン北村が入るときはキーボードを弾かずに、マイクを持って歌う。弾き語りも1曲披露したっけ?(この後、3軒ハシゴして、もう忘れてしまった)

 デビュー20周年を祝う公演で1996年リリースのミニ・アルバム『Apeiron』から2013年作『ひつじ雲』収録曲まで、いろんなものを喜々として歌う。朝日が仕切ったいろんな人が入った岡村靖幸(2012年8月12日)トリビュード作『どんなものでも君にかないやしない』(bounce、2002年)で彼女が歌っていた「だいすき」も軽やかに歌う。どの曲も“ピアノ⇆歌う”みずみずしい才覚がしなやかに表れるもので、ニコニコ接せる。難を言えば、音程が不安程に感じる部分もあり、ヴォイス・トレーニングを受けるなどしてもいいか。

 新曲もやったが、それは途中でプリンス曲(「コントラヴァシー」だったっけ?)のリフが入るような曲。最後の方のリフレインの歌詞は聞き取れたが、それはサッカーの曲? 現在ダンス・モードにあるということで、新しい曲はダンサブルなものが多いみたいだ。

 そういえば、子供に童話を音読したり、子供たちの前で歌う機会を持っていることで、ラップに目覚める〜自分としてのラップができるんじゃないかと今感じているそうで、彼女はバック・トラックを流しながら、子供の前で披露することを前提とするラップ曲を1人で、コール&レスポンスすることを客に求めつつ披露する。一部、ピコ太郎「ペンパイナッポーペン」の一節挿入もあり。へえ、声も出ていて、何気に堂に入っているし、楽しい。そして、そのお茶目な肉声使いに触れて、なぜか矢野顕子(2004年7月20日、2008年8月3日、2008年12月14日、2009年8月19日、2009年9月4日、2009年12月13日、2010年12月12日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年8月21日、2013年8月11日、2013年11月30日、2014年8月7日、2015年8月20日)と上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日)を思い出した。普通の曲を聞いた時には全然、想起したことはなかったのに。とかなんとか、次のアルバムが楽しみになった。

▶︎過去の、朝日美穂、高橋健太郎、千ヶ崎学、楠均
http://43142.diarynote.jp/201303260919193369/
▶過去の、エマーソン北村
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▶︎過去の、岡村靖幸
http://43142.diarynote.jp/amp/201208201258419318/
▶過去の、矢野顕子
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http://43142.diarynote.jp/201012131714372906/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20160915

<今日の、訃報>
 わわ、フランスの粋を体現し続けたピエール・バルー(2010年7月11日、2016年10月27日)が12月28日にパリの病院で心臓発作お亡くなりになったという報道が飛び込んできた。ぼくとしてはそんなに入り込んだアーティストではなかったが、その雄姿を10月下旬にトリビュート公演で拝見できて本当によかった。ブラジル滞在から得たその魔法の形而上を介して飛躍した創作物を作り出した、フランスの最たる人でもあったか。……同年代の母を、気持ちだけでももっと大切にしよう。1人で実家を処分して、東京に出てきた彼女に正月に会うと問うたら昨年も今年も、別にいいんじゃないとのこと。佐藤家は妙なところクールであります。
▶︎過去の、ピエール・バルー
http://43142.diarynote.jp/201007130731368326/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161027
 良かった。いろんな意味で、ちょっと驚きもした。渋谷・O-east。生理的にきらびやかで豪華、尺も長かったし、これはこのシーズンにふさわしい出し物であり、これで今年のライヴが打ち止めになるのも美しいゾとも思う。まだ、ライヴを見に行く予定は入っているものの。。。

 DJミュージック時代のMFSB(⇨サルソウル・オーケストラ)やバリー・ホワイトのラヴ・アンリミテッド・オーケストラなるものを求めていると書けそうな、DJ YOKUが仕切る大阪ベースの大所帯集団の結成20周年を祝うスペシャル・ライヴ。おお、弦や菅奏者がずらり。コーラスや打楽器奏者もいろいろ、40人ほどステージにいたんじゃないか。ドラマーは2人いて、うち1人は沼澤尚(1999年8月11日、2000年2月14日、2000年7月29日、2001年2月18日、2001年6月29日、2001年12月9日、2001年12月22日、2002年7月21日、2002年11月15日、2003年2月11日、2003年3月13日、2003年6月22日、 2004年1月16日、2004年1月30日、2004年2月21日、2005年2月15日、2005年4月11日、2005年7月30日、2005年9月14日、2005年10月30日、2006年4月17日、2006年5月30日、2006年8月11日、2006年8月24日、2006年12月28日、2007年1月26日,2007年6月3日、2008年1月30日、2008年1月31日、2010年1月12日、2011年10月8日、2012年10月10日、2013年1月6、2013年1月7日、2014年9月2日、2015年10月3日、2016年9月27日、2016年11月18日)。ドラマーは交互に叩く、という様式を取っていた。

 まず、大きく頷いたのは確かなアンサンブル音。頭の方は不揃いな部分もあるかと思えたが、すぐにその印象も消え、頷く。大阪でショウをやった後の東京公演だったようだが、どのぐらいリハをやっているのか。うわーすげえなと思えたのは、DJミュージックのように大所帯生演奏が延々とつなげられていること。1曲ごとに途切れると、仕切り直しができて、気持ちを新たにすることもでき演奏しやすいだろうが、ノンストップでずっと行くのは相当な鍛錬と技が必要とされよう。曲の構成や流れもちゃんと覚えなきゃいけないよな。途中、ヴァイオリン奏者がクラシック曲のソロを披露したのだが、門外漢ながら上手いと思えた。また、演奏や重なりがいいと思えたのは、音の良さもあったろう。こんなに人数がいたら絶対に埋もれそうなヴァイブラフォンの音も随時ちゃんと聞こえたのだから。マイクの置き方から、モニター音までいろいろと大変だったろうが、これは拍手だ。そして、それをちゃんとできていたという事実は、ア・ハンドレッド・バーズは(音質/音像が重要なファクターとなる)今を生きるオーケストラであるということも示唆していたろう。また、これまでの活動で培った経験もいろいろと活かされているだろう。

 4人のシンガーや1人のラッパーも、出たり入ったり。そして、途中には30分ぐらい歌手が入らない演奏陣だけのパートもあり。やはり、面白いことを、ちゃんと実演でやっている。弦のアレンジとかは誰がやっているのか。DJ感覚に沿ってザクッと弦音が差し込まれる箇所とか本当に格好いい。そうした生音群に重なるシンセサイザー音やDJ音も気持ちいい。過剰に即興性を持ってはいない(というか、即興性を軸に置くことを志向していない、と書いた方が適切だろう)が、ぼくは過去見たどのジャズのビッグ・バンドよりもドキドキできたか。筆が滑っているかもしれないが、ぼくは本当に高揚を覚えた。

 最後に、NYのハウス・ミュージック・ディーヴァであるバーバラ・タッカー(10年ほど前に、ポニーキャニオンが彼女のアルバムを出したような)が登場。うわー。鉄砲喉、歌える。大きなサウンドにぐい乗りし、その上にきっちり歌のエンパイアを築ける卓越したR&Bシンガーと言うしかないな。髪型、格好もちゃんと決めた彼女、これは無敵じゃないか。彼女が歌うときだけは、サウンドはメドレー調を取らなかったが、それは名シンガーに対する敬意と取れる。NYにもこんなオーケストラはいないわ、という彼女のMCもお世辞ではないだろう。

▶︎過去の、バリー・ホワイト・ショウ&ザ・プレジャー・アンリミッテッド・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶︎過去の、沼澤尚
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm wマルコス・スザーノ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm ナッシン・バット・ザ・ファンク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm シアターブルック 7.29フジ・ロック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm スガシカオ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm ナッシン・バット・ザ・ファンク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm wマルコス・スザーノ 12/9
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm シアターブルック+マルコス・スザーノ12/22
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm W.パウリーニョ・モスカ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm サンパウロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm ナッシン・バット・ザ・ファンク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm  バーナード・ファウラー、ブロンディ・チャップリン、リサ・フィッシャー、ダリル・ジョーンズ、奥田民生、小原礼
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm シアターブルック
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/ w.勝井、怒怒、佐藤
http://43142.diarynote.jp/200402051858240000/ サンパウロ
http://43142.diarynote.jp/200402211239510000/ アズ・ウィー・スピーク
http://43142.diarynote.jp/?day=20050215 wマルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/200504151004040000/ w勝井
http://43142.diarynote.jp/?day=20050730 ザ・ブルース・パワー
http://43142.diarynote.jp/200509161722260000/ 大貫妙子
http://43142.diarynote.jp/200511130013450000/ wマルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060417 ビッグ・ホーンズ・ビー
http://43142.diarynote.jp/200606071931300000/ w.勝井
http://43142.diarynote.jp/?day=20060811 wマルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/200608271342350000/ wマルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/200612291257400000/ wマルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20070126 OKI DUB AINU BAND
http://43142.diarynote.jp/200706061351450000/ ナスノ、不破、他
http://43142.diarynote.jp/200802051634040000/ w.勝井
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/ TOYONO
http://43142.diarynote.jp/201001131101085950/ blues.the-butcher-590213
http://43142.diarynote.jp/201110091300039780/ ナッシン・バット・ザ・ファンク
http://43142.diarynote.jp/201210111837516874/ OKI DUB AINU BAND
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/ ナッシン・バット・ザ・ファンク
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/ w.マルコス・スザーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20140902 blues.the-butcher-590213
http://43142.diarynote.jp/201510051403147675/ シアターブルック
http://43142.diarynote.jp/?day=20160927 大貫妙子
http://43142.diarynote.jp/?day=20161118 OKI AINU DUB BAND

<今日の、所感>
 昼下がり、矢野顕子と上原ひろみのインタヴューに出かける。お二人、本当に仲がいいなあ。今年、最後の取材なり。原稿仕事は年内は粛粛とこなし(来年早々の締め切り物件も片付け)、明けてからははできるだけPCに向かわないでいたいと思っている。12日仕事始めとしたいが、無理かな? 今日の取材地は銀座だったが、いろんな外国人で溢れていた。また、師走感も流れる。
 さあ原稿を書くゾと道草せずに家に戻ると、ドアにビニール袋が掛けてある。隣りの家もそう。その中には、缶入りのお粥や真空パックのビスケットが入っている。マンションの管理組合が配布した、来年期限切れになる防災用食品のおすそ分けだった。少し災害のリアリティを感じる。夜のライヴの後に寄ったなじみのお店で、何度も行ったことがある食事にも力を入れていた飲み屋が25日深夜に火事になったことを、店主から聞かされる。ええっ。本当、火事にも気をつけなきゃ。
追記;矢野顕子のデビュー40周年のオールタイム・ベスト盤『矢野山脈』(ビクター)、もう聞いていてうれしくなっちゃってしょうがない。彼女のデビュー作『ジャパニーズ・ガール』は僕の邦楽アルバムのベスト3に入るんじゃないかなと思ってしまう大好き盤だが、あの頃から矢野は歌のスタイルやピアノの流儀は確立されていた。日本トラッドの奔放カヴァーの「丘を越えて」も入っているしね。その天衣無縫さも含め、最初から完成〜突き抜けた場所に立っていた彼女の40年間、美しく、壮絶でもある。
 昨年の東京ジャズに出演時における、このポーランド人シンガー(2015年9月5日)の才気表出の様に触れてびっくり、これは単独公演も見なきゃ、と向かう。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 ピアノ/キーボード/フルート/リコーダー/親指ピアノを担当するクシシュトフ・ヘルジン、アコースティック・ギター型の6弦ベースをいろんな感じで弾くロベルト・クビシン、ドラムやパーカッション(カホンやタブラ、など)のパヴェウ・ドブロヴォスルキからなるトリオを率いる。一応、ピアノ・トリオという形を取るが、その伴奏は、ジャズという様式を知らないと現れえないものだが、ジャズをしなやかに、大幅に超える様相を出す。

 それは、主役のヨペックも同様。ポーランド語で歌う(MCは英語)彼女の味も、ジャズやフォークロアやポップスなどとのつながりを色々と持つ。主ヴォーカルとハーモナイザーを介しコーラス調の歌声が出る2種のマイクを用い、もう一つの、でも絶対アリの私の表現を、彼女は悠々と開く。シンプルなシークエンス伴奏にのって日本語による謝辞やメンバー紹介をするのは、とても彼女らしい、ただし、前回見た時のような手元で装置をいじって声質を変えるという場面はなし。今回はもっと歌心を持って、整合感の高い表現を送り出したいという気持ちが前に出ていたは間違いない。

 私情も滋味もある、そんなパフォーマンスに接して、僕は往年のスティング(その新作『57th & 9th』は一回目と二回目とで印象が異なり、評価保留なり〜)表現の手作りに満ちた発展系という所感を得ずにはいられず。と、思ったら、ここのところ、彼女はスティングと交流を持っているらしい。ピアノを弾く場合、クシシュトフ・ヘルジンはブリリアントな指さばきを見せてオっとなってしまう好奏者だが、そう思うと、彼の演奏からザ・ブルー・タートル・バンドのケニー・カークランドを思い浮かべずにはいられなかった。

▶︎過去の、アンナ・マリア・ヨペック
http://43142.diarynote.jp/?day=20150905

<今日の、思い出し>
 スティングの活動というと、1980年台半ば、ザ・ポリスをやめてソロとなって作ったザ・ブルー・タートル・バンドのことが鮮烈だ。ザ・ブルー・タートル・バンドとは、スティング(2000年10月16日)がジャズ・ミュージシャンを使いスケールの大きな大人ロックを作り上げたと多大な評判を呼んだ『ブルー・タートルの夢』(A&M、1985年)の際に起用した面々のことで、リードのブランフォード・マルサリス、ピアノの故ケニー・カークランド、ストーンズ加入前の電気ベースのダリル・ジョーンズ(2003年3月13日、2003 年3月15日、2013年3月8日)、ドラムのオマー・ハキム(2006年4月16日、2010年9月1日、2010年9月5日、2013年3月8日)。皆、アフリカ系ですね。同作をフォロウするツアーはライヴ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』(A&M、1986年)にもまとめられたが、あのアルバムのカークランドのピアノ演奏に影響を受けたジャズ・ピアニストは少なからずいたはず。それにしても、その頃のスティングの人気は凄まじかった。1987年1月の同バンドを率いての東京公演は東京ドーム(確か、キリンのビールのTV-CFにも出ていました)、開演前に楽屋にてイクスクルーシヴのインタヴューしたので、よく覚えている。スティングには2度目の取材となったのだけど、その環境も含め本当にいろんなことが新鮮だった。マッサージ担当の人もいたし、バックグラウンド・コーラスのジャニス・ペンダーヴィスはありゃあという格好で歩っていたな。
 蛇足だが、スティングの“ザ・ドリーム・オブ・ブルー・タートル”路線はロックの範疇を超える影響をいろいろな人々に与えたが、それを元に置く最良の流動性あるアダルト音楽を作ったのが、NYダウンタウン系チェロ奏者のハンク・ロバーツだと、ぼくは思っている。D.K.ダイソンをシンガーに起用した、彼の1991年作『Birds of Prey』(JMT)はその証拠品だ。あ、ザ・ブルー・タートル・バンドでブランフォード・マルサリスの後に入ったのは、スティーヴ・コールマン。スティングは自分のレーベル”パンジア”から、コールマンのグループ作を出したりもしました。
▶過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
▶過去の、ブランフォード・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201003101340038868/
http://43142.diarynote.jp/201010221631583852/
▶︎過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 
▶過去の、ダリル・ジョーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 13日、バーナード・ファウラー他のセッション。15日、ストーンズ
http://43142.diarynote.jp/201303110415585115/
▶過去の、オマー・ハキム
http://43142.diarynote.jp/200604141318090000/
http://43142.diarynote.jp/201009030955539620/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/201303110415585115/
 丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。ジョン・ダヴァーサというトランペット奏者(1972年カリフォルニア州生まれ)については、米国では大手ジャズ系メネージメントに所属しているらしいものの寡聞にして何も知らなかった。だが、知人に誘われて見に行く。アレンジャーとしての技量もアピールせんとしている人のようで、普段はその才も活かす大きな編成で活動しているよう。それゆえ、コンボで実演に当たる今回はスモール・バンドと名乗っているようだ。スタジオ仕事もしている彼、どういう流れか知らないが、ムーンチャイルド(2016年7月22日)の菅音にも関与している。

 EWI(エレクトリック・ウィンド・インストゥルメント)ならぬEVI(エレクトリック・ヴァルブ・インヅトゥルメント。やはり、全面却下と言いたくなるとほほな音)も多様する本人に加え、西海岸のスタジオ界で活躍するテナー・サックス/フルートのカティッセ・バッキンガム、ピアノ・キーボードのジョシュ・ケリー、1980年代から西海岸フュージョン/スタジオ界で活躍するベースのジェリー・ワッツJr.(昔、ウィッシュフル・シンキングのメンバーでもあった)、ネルス・クライン(2010年1月9日、2010年4月23日、2013年4月13日、2014年8月14日、2015年6月2日)とも懇意にするアルト・サックス奏者のギャヴィン・テンプルトンやフライング・ロータス(2014年12月5日)などLA進歩派の作品にも名前が見られるドラマーのジーン・コイという陣容にてことに当たる。

 ディヴァーサ自身おいらは作編曲の能力に長けているという自負があるためだろう、時に聞き手を置いていくような才気走ったパートも持ちつつ、ショウは進む。とはいえ、基本にあるのは、例えばゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・バンド(2008年2月5日)にあるようなちゃらさを感じさせる、時に聞き手に媚びた所も持つエンターテインメント性。だから、リード奏者はソツなくラップも担当していた。何をやるにせよ、構成員たちの腕が立つのはすぐに了解でき、とくにアフリカ系ドラマーの腕の立つ具合にはびっくり。もー、ほんとあちこちに名手はいるなあ。

 途中から、サンタさん帽子をかぶったレネー・オルステッドが出てきて、華を添える。北欧名を持つが1989年ヒューストン生まれのジャズ・シンガーで、当初は女優として活躍していたという痩身のお綺麗さん。2004年と2009年にデイヴィッド・フォスター(2011年10月19日)のプロデュースでワーナー系列からリーダー作を出してもいる彼女は地声もデカく、問題なく歌えた。

▶︎過去の、ムーンチャイルド
http://43142.diarynote.jp/201607251308054775/
▶︎過去の、ゴードン・グッドウィンズ・ビッグバンド
http://43142.diarynote.jp/200802100022540000/
▶過去の、ネルス・クライン
http://43142.diarynote.jp/?day=20100109
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
http://43142.diarynote.jp/201506070750376864/
▶︎過去の、フライング・ロータス
http://43142.diarynote.jp/201412151251045801/
▶︎過去の、デイヴィッド・フォスター
http://43142.diarynote.jp/201111141208525234/

<今日は、10月の気候?>
 ここ数日、けっこう暖かい。今日は特にという感じで、外テラスで飲むことも可能だったのではないか。もう、各所で汗ばみました。昼下がりにはフィンランド人にインタヴューしたのだが、日本は暖かいと喜んでおった。でも、夜半の降雨はかなりのもので、靴がびしょびしょ也。さすが、タクシーも拾いにくかった。
 ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日)に加え、ダブル・ベースのヴィセンテ・アーチャー(2007年10月3日、2009年4月13日、2010年7月24日、2013年2月2日、2013年6月4日)とドラムのダミアン・リード。同名義の新作『カヴァード』と同じ顔ぶれだが、それってグラスパーの『イン・マイ・エレメント』以来の同じ奏者がそろったトリオ作となる。ジャズ・ピアノとヒップホップ・ビートの鮮烈な相乗表現を具現したあのアルバムはグラスパーにとって最後のリアル・ジャズ・アルバムとなり、それ以降のグラスパー作品はポスト・ソウルの作り手として出したブツだと、ぼくは思っている。同エキスペリメントの2016年最新作『アート・サイエンス』の1部では見事な現代ジャズ曲を開陳しているものの。

 その3人に、ターンテーブルのDJシャヒ・サンダンス(2003年11月18、同22 日)が付いた4人で演奏。シャヒ・サンダンスはジャズ奏者との絡みを持ってきたヴェテランのDJで、2003年のミシェル・ンデゲオチェロ(2002年6月18日、2003年11月18日、2003年11月22日、2008年5月7日、2009年5月15日、2013年11月18日、2014年7月14日)公演に同行したことがる。今回、どんな様を繰り出すのかと思えば、かなり抑制されたノリで今様効果音をあっさり入れていた。

 オープナーは、プリンス(2002年11月19日)の「サイン・オブ・タイムス」。ひたひたという感じで、20分ぐらいは演奏したのではないか。その曲にも多大に現れていたように、ベースはエレクトリック・ベース的なフレイズを刻み(でも、音がアコースティックのそれで、縦を使う意義が出る)、ドラムはヒップホップ的なビートを通常のドラム・セットで叩き出す。クリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日)やマーク・ジュリアナ(2006年5月17日、2015年3月13日、2016年1月4日)らに代表される現代ジャズ・ドラマーのように二つのビートを並置して叩くようなねじれはなく、彼はひたすらタイトに人力ヒップホップ・ビートを連ねていく。そして、そこにグラスパーはアコースティック・ピアノ音をのせる。

 10年前のジャズ・ピアニスト時代と異なり、彼はエネルギッシュになったり、アウトする方向に出たりはしない。それは、技術を出すことに興味はなくなりより歌うように弾きたい、R&Bの聞き手に明快にジャズ様式を知らせたい(2015年にインタヴューした際、そういうことを言っていた)という思惑が働いての行き方だ。そんな彼の生の演奏を見てへえと思ったのは、大半を鍵盤の左半分、つまり低い方を弾いていたこと。そんなに極端なピアニストは稀のような気がする。

 ピアノをソロ演奏で披露する場面もあり、その際は「かつては右手と左手、違うフレイズを弾く練習をよくした」片鱗も出たか。もうちょい鮮烈に飛び出してと思う部分はなくはなかったが、それこそは彼の考えるクールネスの発露だろう。各曲は長め、今のおいらのピアノ美学を出すぞという気持ちは解き放たれていた。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
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http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
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▶過去の、ヴィセンテ・アーチャー
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▶︎過去の、シャヒ・サンダンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm 18日と22日。18日の方にオリヴァー・レイクの息子と記しているが、ジーン・レイクの息子のよう。
▶過去の、ミシェル・ンデゲオチェロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
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http://43142.diarynote.jp/200905161026033788/
http://43142.diarynote.jp/201311191050581790/
http://43142.diarynote.jp/201407151135353688/
▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm 2002年11月19日
▶過去の、クリス・デイヴ
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▶過去の、マーク・ジュリアナ
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http://43142.diarynote.jp/201503150906115048/
http://43142.diarynote.jp/?month=201601

<今日の、期待>
 そういえば、昨日の飲みの席で、バークリー音楽大学はボストンという地理的な不利さもあり、今後は苦戦するのではないか。。。。という、余計なお世話な話題が出た。やはり、NYこそが音楽享受&活動に最大級に優れた都市であるから。その伏線となるのが、ロバート・グラスパーが出ているNYのニュー・スクール大学の躍進。ジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)、ホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日、2015年2月15日、2016年2月16日)、ベッカ・スティーヴンス(2015年1月29日、2016年3月27日)、黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日、2015年1月30日、2015年2月15日、2016年9月17日、2016年12月16日)とコーリー・キング(2013年2月15日、2013年6月4日、2014年5月25日、2014年8月7日、2016年5月31日)、ローガン・リチャードソン(2016年2月3日)など、現在シーンで名を出している人物を同大は輩出している。キングなんて、進学のために音大めぐりをした際にその自由な雰囲気に触れ、進学先はそこしかないと思ったなんて、インタヴューで言っていたものな。⇨http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/corey-king/1000001221
 大雑把に見るとニュー・スクールの方が今のNYの新しい動きを担う奏者を出しているという印象もあるが、もちろん同大卒のメインストリーム系のミュージシャンもいる。その代表格が、新年早々にコットンクラブで自己トリオ(そのベース奏者は、大林武司〜2014年5月25日、2015年9月5日、2016年2月16日、2016年9月4日、2016年12月16日〜や黒田と仲良しの在NYの中村恭士〜2009年10月15日、2015年9月5日〜)の公演を持つドラマーのアリ・ジャクソン(2012年6月8日、2014年4月24日)。1976年デトロイト生まれの彼は2歳年下のグラスパーとは顔見知りだったわけだが、ジャクソンの場合は基本メインストリーム・ジャズの道を歩んでいる御仁。米国ジャズ界大御所のウィントン・マルサリス(2000年3月9日)の信頼が厚く、ジェフ・テイン・ワッツ(2007年12月18日、2010年10月21日、2012年1月13日、2015年3月10日、2016年9月3日)の席を受けるようにマルサリス・ファミリー入りし、当然のことならマルサリスが仕切るリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラの主任ドラマーにも収まっている。そんなわけなので、ジャクソンはエリック・クラプトン(2006年11月20日)とマルサリスの協調作『プレイ・ザ・ブルース』(ライノ)やリンカーン・オーケスラが入ったサッチェル・ジャズ・アンサンブル(2016年9月3日)の映画『ソング・オブ・ラホール』にも入っているわけだ。“ジャズは4ビート”という言い方は今や過去の話で、非4ビートの現代的な跳ねのもとインプロヴィゼーションや脈々と受け継がれてきたジャズの飛躍感覚を露わにするというのが、今の前線にあるジャズの図式とも言える。先日の黒田卓也や今日のグラスパー・トリオもそうした線上にある。そうしたなか、ジャクソンにはちゃんとした4ビートを今のジャズ表現として成り立たせる方策を示すことを期待したい。基本はコンサヴァ路線だろうが、アルト奏者を擁するカルテットにて15年前に出した彼のライヴ盤『Groove at Jazz Entete』(Blue Geodesics)の最終曲「Groove for Clermont-Ferrand」はパンデイロも(ブラジル的ではなく)用いた、かなり面白い構造を持つグルーヴィな曲だった。
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
▶過去の、ベッカ・スティーヴンス
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160327
▶過去の、黒田卓也
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201501310942048841/
http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
http://43142.diarynote.jp/201612181010384754/
▶過去の、コリー・キング
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/
▶過去の、ローガン・リチャードソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶︎過去の、アリ・ジャクソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120608
http://43142.diarynote.jp/201404260901127573/
▶過去の大林武司
http://43142.diarynote.jp/?day=20140525
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160216
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/201612181010384754/
▶過去の、中村恭士
http://43142.diarynote.jp/200910161214535124/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
▶過去の、ウィントン・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
▶過去の、ジャフ・テイン・ワッツ
http://43142.diarynote.jp/200712190953140000/
http://43142.diarynote.jp/201010221631583852/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150310
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
▶過去の、エリック・クラプトン
http://43142.diarynote.jp/200611221236140000/
▶︎過去の、サッチャル・ジャズ・アンサンブル
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903

平安隆。黒田卓也

2016年12月16日 音楽
 1952年沖縄生まれ、洋楽系音楽の造詣も深いギタリスト/シンガーのタワーレコード渋谷店でのインストア・ライヴを見る。喜納昌吉&チャンプルーズのメンバーだったこともある彼の18年ぶりのソロ『悠』(coco←musika)をフォロウするもので、同作のプロデュースを務めた広角型三味線奏者のゲレン大島もサポートに入った。その新作は沖縄民謡曲を題材に、しなやかな広がりを持たせたディレクションを取る。

 平安がギターを弾きながら歌い、大島が三線を手にする曲もあったが、多くの曲で平安は三線を手にし人懐こく歌い、大島がギターを弾く。基本は沖縄民謡ながら重なるギターがハワイアン・スラック・キー・ギター調であるなど、もう一つの伸長をそれらは持っていた。

 続いて、南青山・ブルーノート東京のセカンド・ショウ。在NYのトランペッターの黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日、2015年1月30日、2015年2月15日、2016年9月17日)の実演を見るが、2年前のリーダー公演よりもずっと良い。新作『ジグザガー』はブルーノートからコンコードに移籍してのリリースとなったが、そのリーダー作の進化を裏付ける実演だったと言えるだろう。

 テナー・サックスのクレイグ・ヒル(2016年9月17日)、キーボードとピアノの大林武司(2014年5月25日、2015年9月5日、2016年2月16日、2016年9月4日)、エレクトリック・ベースのラシャーン・カーター(2014年5月25日、2015年6月16日、2016年9月17日)、ドラムのアダム・ジャクソン(2014年5月25日、2016年9月17日)という、現在のワーキング・バンドににてパフォーマンス。まず、黒田にせよカーターにせよ、ソロ力あり。ジャズ愛も大いに溢れる。カーターは時に電気効果をかますが、それも妙味あり。でもって、その二管の重なりもとてもグルーヴィで、ジャズたる醍醐味を感じさせる。一方、二人を支えるビートは今の立った前線R&B経由の伸縮性を持つ立ったもの。そして、それらフロント管音とバッキング音の重なりは、とっても雄々しいくもエネルギッシュなものになっていて、これは今のジャズの見事なあり方だと思わされちゃう。

 また、今回驚いたのは、大林の鍵盤さばき。これまで主に彼のアコースティック・ピアノ演奏に触れてきたが、こんなに素晴らしい電気キーボードの使い手だったのか。今回はよりキーボードを主に弾き、しかもその際に左右で別のキーボードを弾く場合が多かったのが、音色設定の妙も介してのその演奏は実にヒップにして、クール。彼がキーボードを弾けば、前線にあるNYサウンドが現れる! という手応えも、ぼくは得てしまった。また、カーターの重さと流動性を併せ持つ演奏には、今回ポール・ジャクソン(2002 年3月12日、2008年6月12日)的と思える部分も感じた。

 1時間半はやったかな。意欲と精気、あり。いいライヴだった。

▶過去の、黒田卓也
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
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http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
▶過去の大林武司
http://43142.diarynote.jp/?day=20140525
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
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▶過去の、ラシャーン・カーター
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079
http://43142.diarynote.jp/201506180954176007/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
▶︎過去の、アダム・ジャクソン
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
▶過去の、ポール・ジャクソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20080612

<今日の、ネタ>
 よく進んだなー、鹿島アントラーズ。浦和だったら、無理だったろう。クラブ・ワールド・カップの決勝がレアル・マドリードと鹿島、か。何気に、昨日からこの話題が会話に上がる。試合のある日曜まで、ほんのわずかな幻想を見ようか。蛇足だが、ぼくは本田が現役だったころのアントラーズが嫌いだった。

ザ・ネックス

2016年12月14日 音楽
 クリス・エイブラハムズ(ピアノ)、トニー・バック(ドラム)、ロイド・スワントン(ベース)からなるザ・ネックスはシドニーで結成されたオーストラリア人のトリオ。すでに30年近いキャリアを重ねる特殊ジャズ・バンドだが、まさかここに来て彼らを聞くことができるようになるとは。NHKが、彼らのことを招聘した。

 最小限のフレイズ〜シークエンスを延々と重ねあっていく。そんな1時間弱の尺の曲を、休憩を挟み2曲。超然と、我が道を行く。いやー、こりゃすごいな。墨絵のよう、粛々と流れると書くこともできるかもしれないが、内在するテンションや動的呼応感覚は高い。そういえば、この前に見たメラニー・デ・ビラシオ(2016年10月8日)の様式は、ザ・ネックスのひたひた盛り上げ回路と重なる部分があるかもしれない。ポスト・ロック的な流れ方を、純ピアノ・トリオ編成でやっているという言い方もできよう。なら、ポスト・ジャズという言い方も可能か。彼らのやっていることは最新のジャズ・モードとは言い難いかもしれないが、十二分に独創的であり、訴求力は大きい。会場は、渋谷・WWW X。

▶︎過去の、メラニー・デ・ビラシオ
http://43142.diarynote.jp/201610140945007657/

<今日の、会場>
 この9月に開いた、このハコにやっと来た。映画施設を元とするビルの地下にできたWWWの、2階にできた2号店。1号店と異なり、フラットな床を持ち、広さはこちらの方が少し上か。天井はそれなりに高く、この日は折りたたみ椅子を並べていたが、スタンディングの会場だ。WWWのように斜めの段差がついているより、フラットな床の方が落ち着くなと思えたかも。この晩、聞いた限り、音響は良好なように思えた。ところで、WWWと同様、なんかバーの感じは気に入らない。こんなもんだろって感じで、お酒好きの人が関与している感じ、美味しいお酒を提供しようという感じがしないんだよなあ。収入源の一つだろうし、もう少し企業努力をしてもいいのではないか。ま、他の多くのハコも不十分きわまりないんだが。こういうノリのバーを作るなら、既存の缶を売る(専用コインを用いる)自動販売機を置いた方が人件費の節約になるし、いいと思う。



 1979年ポーランド生まれのジャズ・ピアニストを、目黒・ポーランド大使館で見る。ソロで、ゆったりと美意識溢れる、サウンド・スケープのようなものを描く。1時間20分ほどの尺の中で、何曲演奏したろうか。30年前だったら、ニュー・エイジ・ミュージックというカテゴリーに入れられたであろうタイプの音楽とも指摘できよう。だが、当時のその手の担い手と異なるのは、雰囲気に流れたところで表現を作っていた彼らと異なり、ヤスクウケの表現にはまず厳格として秀でたピアノ流儀が存在すること。それ、生で触れると、余計に手に取るように分かる。うまい、かゆいところに手が届くといった感じの指さばき、響きには唸らされた。そんな彼はきっちりと譜面を置いて、演奏していた。空で弾けないはずはない。だが、それは作曲家であるという強いこだわりから発する所作であるように思わされた。

<ここのところの、話題>
 夜の社交の場で話題に出るのが、車あぶねーということ。高齢者の操作ミスやタクシーのあっと驚く事故が相次いでいて、要はのうのうと歩道を歩いていても危ないゾ、と。特にオレなんか、ほんと無防備にポカーンと歩いているもの。知っている人と会っても気づかず、ほんと知らんふりだもんなー。

 レイラ・ハサウェイ(1999年7月14日、2002年5月13日、2003年8月19日、2004年5月10日、2008年5月13日、2010年7月13日、2012年1月5日、2013年1月25日)のショウを、南青山・ブルーノート東京で見る。セカンド・ショウ、フル・ハウス。

 キーボードのリネット・ウィリアムス、ギターのアイザイア・シャーキー(2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日)、ベースのエリック・スミス、ドラムのチャールズ・ストリーター、バックグラウンド・ヴォーカルのジェイソン・モラレス(2010年7月13日)とデニス・クラークという面々がサポートをつける。

 悠々と、ジャジーな大人ソウルを開く。歌のラインをかなり崩し、自在にスキャットもかますためか、なんかチャカ・カーンに近づいている部分もあるか。とともに、低音が出ることを再認識。二人の男性コーラスより低い声が出るもの。と、思えば高い方にも行くわけで、唸る。ふふふ。彼女の場合、カヴァーが大半だが、これだけ歌唱が自分であれば、何の疑問も抱かせない。ジャズ・ヴォーカルとソウル・シンギングの幸福な出会いがここにはあった、とも書けるか。最後はTOKU(2000年2月25日、2001年9月6日、2004年3月10日、2006年2月16日、2008年8月19日、2011年3月16日、2012年6月19日、2013年9月22日、 2014年2月5日、2015年3月19日、2015年3月28日、2016年3月1日)が出てきて、スキャット合戦。TOKUもグッド・ジョブ!

▶過去の、レイラ・ハサウェイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/julylive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm マーカス・ミラー
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://43142.diarynote.jp/200805181145040000/
http://43142.diarynote.jp/201007141512402845/
http://43142.diarynote.jp/201201131544153279/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
▶過去の、アイザイア・シャーキー
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
▶︎︎過去の、ジェイソン・モラレス
http://43142.diarynote.jp/201007141512402845/
▶過去の、TOKU
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm ロニー・プラキシコ
http://43142.diarynote.jp/200403101442170000/
http://43142.diarynote.jp/200602171950040000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080819
http://43142.diarynote.jp/201103171354125352/
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130922
http://43142.diarynote.jp/201503211741478728/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150328
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301

<今日の、うわあ>
 なんと、ステージに登場したハサウェイは着物を着ていた。それなりに着つけてあって、歌い難いんじゃないかと思ったら、平然と着物姿のままショウをこなす。1部は普通の服装だったようで、これは最終日最終セットのサプライズであったようだ。しかし、アフリカン・アメリカンが着物を着ていること、そしてその着物姿の女性が超然と堂にいったR&Bを歌っている図はなかなかシュール。なんか、脳みそとろけそいうな感覚を覚えた。おう、着物の持つイメージって強いんだなあ。なお、彼女は足袋を履き、それだけですたすた歩き、テージに上がっていました。

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