QUOLOFUNE

2016年6月13日 音楽
 ヴァイブラフォンの山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日、2015年5月28日、2015年6月15日、2015年9月13日、2016年5月22日)、ピアノの中島さち子、パーカッションの相川瞳からなる、女性3人組。日本語表記だと、黒船となるらしい。四谷三丁目・茶会記。

 へえ、こんなトリオ表現もあるのか? ヴァイブ、ピアノ、打楽器という編成はそれほど奇なものではないだろう。それにダブル・ベースを加えれば、ジョン・ルイスらのモダン・ジャズ・カルット的な単位にもなる。面々はちゃんと曲を出し合っていて、演奏はテーマの後にインプロヴィゼーションに流れるという図もいたってジャズ的だと言えるだろう。

 だけど、即興は存分にあるんだけど、ちゃんとコンセプトが吟味されているからか、この3人の持っている才覚が変であるからか、QUOLOFUNE表現は普通のジャズという着地点にはおりず、ジャズとつながる今様なインストゥメンタルという大地に着地すると、書きたくなる。それ、どれぐらい意図的であるのか。
 
 テーマ部提示が終わると、ヴァイブとピアノは猛烈にじゃれ合う。どちらかというと山田が前に立ってインプロヴァイズする局面のほうが多いのかもしれないが、絶妙の補完関係でソロと伴奏が一体になったようなことを2人は続けていく。そして、相川が要所でメロディ楽器のやり取りをしめたり、変化を与えたりする。ふむ、何気な実力者かもしれぬ。彼女のキットは、パっと見た目はコンガを組み込んだキック・ドラム抜きのドラム・セットのよう。それを相川は手を主に、スティックらで操る。

 この日は中島の誕生日で他の2人はプレゼントの曲を持ち寄ったようだが、一つは今朝できた曲と紹介されていた。でも、テーマ部/ソロ部のある種のモードには満ちており、かなりこの3人が重なるからこその機微はありそう。山田がリーダーを勤めるnouon(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日、2016年3月14日)の曲も二つやったが、そのときとはかなり手触りは異なる。こっちのほうが生理的に奔放。そこから、いろんな色や風景がもたらされる。そこらあたりはメンバー同士の忌憚のなさゆえの部分はあるはずで、それは同性で組むこその理が働いていると言えるか。

 山田と中島はアルト・サックスの林栄一(2004年10月10日。2005年12月20日。2009年7月19日、2011年6月23日)のバンドで一緒になったのが縁で仲良しになったようだが、林作曲の渋さヴァージョンでも知られる「ナーダム」も演奏。慈しみあるいい曲だと思うが(器楽奏者としてとともに、作曲者やサウンド・スタイリストとして、ヴェテランの彼は注目されるべきだと感ずる)強い味ががあるからこそ、ぼくはこの曲を聞くのに飽きている。関係ないけど、3人の演奏に触れていて、ザ・ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を取り上げるといい感じになるのではと、なぜかぼくは思った。
 
 中島はパっと両手で鍵盤を押さえた際、その一瞬における音数が多い、浮かび上がるものが多彩と思わせられた。そんな彼女は、OTOTOYからリーダー作『Time, Space, Existence』を配信しだしたばかり。そちらは、中島、山田、ドラムの外山明(2004年8月20日、2005 年12月20日、2006年10月25日、2007年1月27日、2011年6月23日、2011年12月14日)、バリトン・サックスの吉田隆一(2004年8月20日、2004年10月10日、2006年7月3 日、2012年12月11日、2014年7月22日、2015年2月8日、2015年4月14日、2015年6月21日)の4人でレコーディングされている。

▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/
▶︎過去の、外山明
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/?day=20051220
http://43142.diarynote.jp/?day=20061025
http://43142.diarynote.jp/?day=20070127
http://43142.diarynote.jp/201107020946473690/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111214
▶過去の、吉田隆一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
http://43142.diarynote.jp/201504151353356530/
http://43142.diarynote.jp/201506251045578258/

<今日の、個展>
 荒木町・ゑいじうというギャラリーで、せきねちかの<眼鏡をかけたまま見た夢>という個展を見る。淡い、でも不思議な引きを持つドロウイングが10点強。それらに、夢という言葉を用いるのはよくわかる。遠近、濃淡、精緩などのパラドックスがそこにはあるから。18日まで持たれるものの、オープニング日。主役とつながりがあると思わなかった知人に会ったりもし、人と人のつながりの妙を知る事が出来るのも、こういう催しの一興……。
 そのゑいじうと茶会記は近い。で、その間にSAシューズがあってびっくり。前にもこの欄で書いたことがあるが、学生時代にお世話になったブーツのオーダーメイドのお店。ぼくは渋谷の東急本店通りにあった支店のほうを使っていたが、まだちゃんとあるのか! うれしくなって、大昔の友達に電話しちゃった。また、かつて渋谷にあったブルースのお店のブルー・ヒートも近くにあってへえとなる。茶会記の前後には知人が近所でやっているディープ(昔はジャズ・バー、今はソウル・バー。いい店です!)にも顔を出せて、なかなか意義深い一日であった。