昨年に続いて来日、今回は六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)。TM・スティーヴンス(2001年10月31日、他。日本語のかけ声、ベース、歌)らを含むパフォーマンス、前回(2011年8月12 日)のノリを引き継ぐ感じ、と言えそう。ステージ上には、総勢15人ぐらいいたのか。無駄にいる感じのあるスタッフも含め、ご一行は何人でやってきたのだろう。御大はドバっとやってはステージから下がり、その他の人たちにステージをまかせ、そしてまたお召替えして奥さん(派手な持ち上げ役)と出て来てまたやって、またまたひっこんで、さらにピカピカ服を着替えて出て来て……という、様式はこれまでどおり。サウンドは前より、ちょいまとまっている感じはあったか。それは、近くでやっている姿を見ることができたからか。やはり、それだと情報量はより直接的、かつもっと濃く膨大なものになる。

 そう、すぐ側で見れた幸福につきる。そして、ブーツィのちょっとした声の張り上げでも、滅茶苦茶なベースの一撃でも、ちょっとした仕草でも、この人はブラック・ミュージック街道を彩るファンク異才/偉人なのだと感激できる。でもって、その様が手に取るような感じで見れるというほは、何ものでもない幸せじゃあという感激を引き出すのだ。ああ、僥倖。

 主役がいないとき、TMはフィーチャーされもするが、歌うのがスライ・ストーンの「アイ・ワナ・テイク・ユー・ハイアー」ってのは??? 昨年も、それを歌ったけか? P-ファンクの曲をやらないんだったら、TMのオリジナルをやってほしかった。いいぢゃん、それぐらい。でなきゃ、ロック派たる彼にあわせて、ファンカデリックの「フー・セズ・ア・ファンク・バンド・キャント・プレイ・ロック?!」を! ブラックバード・マックナイト(ハービー・ハンコックのヘッドハンターズに入っていたことあり。cf.ライヴ盤『洪水』)をフィーチャーするヘヴィなギター・インスト「コズミック・スロップ」もやっていたわけだし。バンド員はみんな黄色いT-シャツを着用。TMもそれに従っていたが、お洒落な彼、本当はそれには抵抗があるのではないか。

 最後のほう、ブーツィはフロアにおり、ときに客席の椅子の上に立ったりし、客をあおる。だけでけでなく、動き、沢山の人と厚い包容をかわし続ける。それ、女性だけなく、男性ともきっちり。うわー、すんごい<ファンク博愛主義者>! その様に接すると、それをすること、求められることがなんらおかしくないリジェンダリーな男性であるともスカっと痛感させられる。その様、上階横の客席から俯瞰していたら、すごい光景だったろうな。

 そして、南青山・ブルーノート東京に移り、リーダー作をそれぞれに出す名手/個性派たちが集まったカルテット、ジェイムズ・ファームを見る。テナー・サックスやソプラノ・サックスのジョシュア・レッドマン(2010年9月5日、他)、ピアノのアーロン・パークス(2008年11月22日、2009年2月3日)、ウッド・ベースのマット・ペンマン(2011 年7月4日、他)、ドラムのエリック・ハーランド(2008年4月6日、他)という内訳で、昨年1枚リーダー作を出している。そこには、各人が思いとワザを凝らした、それぞれの単独オリジナル曲が10曲収められていたが、この日演奏した曲もそうだったろう。ファースト・シィウとセカンド・ショウは完全に曲を変えているという。

 詩的だったり美的だったりする仕掛けや構成をこらした“器”のもと、それぞれが趣向をこらしたソロを開く。けっこう抑制の美学をいつも出すレッドマンだが、この晩の演奏はこれまで見たなかで一番熱を放つ局面もあったか。とにかく、我々は大志と能力と広い視野を持つ現代ジャズ・マンであり、我々はそれをすべからく行使したいという気持ち渦巻く演奏が繰り広げられたのは間違いない。


<今日のブーツィ、来月のプー>
 そういえば、日本人で一番神憑った才を持つジャズ・マン〜その『ススト』(CBSコロムビア、81年)はプリンスの調子いいときの表現とまったく同じレヴェルに達した逸品であった〜である、菊地雅章(2004年11月3日、他。愛称は、プーさん)はブーツィ・コリンズのことをありゃ天才と言っていたことがある。彼の駄作『ドリーマシン』(パイオニアLDC、91年)は制作者であったビル・ラズウェル(2011年3月7日、他)流れでブーツィやバーニー・ウォレル(2007年8月3日、他)が入っており、そのセッションを受けての発言だった。その前から、ラズウェルは菊地に接近していたが、彼は「あいつは好きじゃない」とインタヴュー時に言っていたことがある。なのに『ドリーマシン』で絡んだので、それを指摘したら、「事情があんだよ」と一言。そんなプーさんをぼくは大好き。今年、新作(2009年録音)がついにECMからリリース。彼はここのところ体調を崩しているとも言われているが、なんと来月下旬にブルーノート東京での公演予定が発表されている。トリオだが、いつものピアノ、ベース、ドラムではなく、ベースとギターを伴う編成でのショウ。彼、アコースティック・セットでギターを入れるというのはとても珍しい。ECM盤も当然、普通のピアノ・トリオによるものだ。でも、そこでも叩いていた長年の相棒であるドラマーのポール・モーシャンが亡くなってしまったから、もうドラマーはいい、ギターでも入れておくかとなったのか。話はとぶが、今年の東京ジャズにはオーネット・コールマン(2006年3月27日)が出演、今年の東京ジャズは何かと興味ひかれる出演者が少なくない。ジャガ・ジャジストが無料ステージにでたりもするし。ルーファスとシガスカオとタワー・オブ・パワーのホーン隊が一緒にやっちゃうって?