大笑い。もう、跳ねっ返りまくり。電気エフェクターを通した音を採用し、ブーンブーンぶいぶい弾きまくるクラークにつられ(?)、他の二者もごんごん突っ走る(あ、ドラムはマイペースだったか)。コクはなし、妙なぶっちぎり感とバカバカしさあり。60歳近いクラークではあるが、その歳をものともしないというか、デビュー時の分別のなさをの失わない、暴走の様には笑うしかないではないか。ぼくは、このアコースティック編成によるピアノ・トリオの実演を純ジャズとしては聞けませんったら。

 電気/アコースティック両刀の大御所ベーシスト(2008年9月8日)、アルバムがそうであったように、上原ひろみ(2009年9月5日、他)とレニー・ホワイト(2010年9月1日)を伴った編成によるショウ。スターターはセロニアス・モンク曲、なり。レニーはスネアやハイハットを通常とは逆サイドにおくのだな。

 そんなわけで、グランド・ピアノに専念する上原も終始弾ける。興が乗ればこれまでもやってきたのだろうが、肘や拳でがんがん鍵盤を叩く姿、ぼくは初めて見たような。終盤、かなり滅茶苦茶というか、Pe’z(2009年10月29日、他)のヒイズミ(2008年4月6日)のような弾き口を見せたが、ミストーンが一切ないように聞こえ、あっち側を行く場合でも完全に全ての音を掌握していると思わせるところが彼女らしい。リズム感の良さも改めて認識させられもしたけど、本当に彼女は見る者に働きかけ、感情移入をべらぼうに誘う美点を有していると思わずにはいられず。書き遅れたが、ソロを取る割合は当然、上原がダントツで長い。ある意味、このトリオはアコースティック・ピアノにおける“やんちゃ上原”を受け取るにはおおいに吉と言えるはず。

 本編最後の2曲(うち、1曲はクラークも参画していたリターン・トゥ・フォーエヴァーの「ノー・ミステリー」)は4人の日本人管奏者も加わり、セクション音/ソロもつける。アンコールで初めて、クラークは電気ベースを手にし、まさに力づくの演奏を披露。今回のパフォーマンス、別にずっと電気を弾いていてもそんなに落差はないはずで、そうしたほうがより押し出しは強くなり、よかったのでは。ジャズ表現におけるエレクトリック・ベース使用をおおいに嫌うぼくではありますが、そうしっかり感じた。あ、それは、先に書いたように、純ジャズとしてはこのトリオを聞けなかったからかもしれない。渋谷・オーチャードホール。