南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。名古屋や大阪でライヴをこなした後の東京入りで、5日間もの帯で面々はショウをこなす。

 マーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日)は2015年秋ごろからアルト・サックスのアレックス・ハン(2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日)以外のバンド陣容を一新。現在ストレート・アヘッドな奏者としてコンコードと契約しているトランペットのマーキス・ヒル(2016年9月17日)、ピアノ弾き語り演奏も得意なキーボードのカレブ・マッキャンベル(2016年9月17日)、マーカスが自分よりも俺の曲を覚えていると全面の信頼を寄せていたルイス・ケイトの後を受けたドラムのアレックス・ベイリー(2016年9月17日)という面々は、皆20代だ。

 今に始まったことではないが、おいらがMr.エレクトリック・ベースと言わんばかりに、ミラーがステージ中央に立ち、ぶいぶいとスラッピングを柱に置くベース演奏をかまし、ソロもたっぷり取る。また、彼の周りを回る衛星の様な感じで、サイド・メンのソロ・パートも長めに用意される。近作『アフロディア』からの曲を中心に演奏、間口が広く粘着質なビート・フュージョン表現が弧を描く様を実感し、“ミラー・フォーミュラ”とも言うべきぶっとい様式があるナとも痛感。

 昔ミラーのLAの自宅で会ったことがある彼の子供たちもすでに成人になっているはずで、今は何をしているんだろう……。なんてことを、ぼくはふいに思ってしまった。それは、やはりミラーのベース演奏やリーダーとしての才覚に年輪を覚えてしまったからか。

▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
▶︎過去の、アレックス・ハン
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
▶︎過去の、マーキス・ヒル、カレブ・マッキャンベル、アレックス・ベイリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917

<今日の、所感>
 2017年の、初ライヴでした。無理をして(?)風邪をひいてしまい、外出もせず2日間お酒を飲んでいなかったが、この晩はイケイケ。友達と2軒目に流れたお店では20年ぶりぐらいの知人と遭遇し、楽しく飲む。酒も好きだけど、酒を飲む場が好きなんだろうな。だから、家では基本ぼくは飲まないもの。昔カルチャー誌の編集者をしていた彼はげんざい靴の雑誌の編集長になっていたのだが、習字がバカみたいにうまいのでびっくり。そのお店、昼間に習字会をやっていて、その流れでお習字コーナーがあったのだ。高校生まで習っていたというから、かなり本格的にやっていたのは間違いない。ぼくが書いた後に勧め、Sさんはしょうがないなという感じでおっとり筆を取ったわけで、“能ある鷹は爪を隠す”という格言を目の当たりにした思い。昨年、謙虚、人に気をつかうよねえという指摘を複数の人からされたので、今年はもっとオレ様で行こうと思っていた(いやバチ当たりなもので、新年にあたっての抱負とかを考えるタイプでなく、昨年の11月ぐらいにふとそう思ったんだよなあ)が、やっぱり控えめなのは格好いいと思えました。ほんと我ながら、コロコロだなあ。

 マイルス・デヴィスが電気バンド全盛時にあった1970年6月のスタジオ・セッションに参加し、“電波”な声や口笛やキーボード音を自分流に垂れ流し、なんなんじゃコイツはと御大がさじを投げた感じが『ライヴ・イヴィル』に記録されている天衣無縫ブラジル人音楽家(2004年11月6日)の公演は、渋谷・WWW Xにて。ぼくは早い方の回を見たが、スタンディングで満場の入りであった。しかし、もう80歳なんだよなあ。見た目には元気そうでありました。あ、外見はガース・ハドソン(2013年8月2日)と故リオン・ラッセル(2005年11月24日)を重ねた感じもあるか。

 キーボードや笛や小物を操る本人に加え、ソプラノやテナーやフルートや横笛や縦笛のショータ・P、ピアノのアンドレ・マルケス、5弦電気ベースのイチベレ・ツヴァルギ、ドラムのアジュリナ・ツヴァルギ、パーカッションのファビオ・パスコアールという面々がサポートでつく。

 皆腕が立つが、演奏が始まっていささか驚く。かなりジャズ・フュージョンに寄りかかった演奏(ソロ回しも、律儀にやっておりました)をしていて。そりゃ、リズムをはじめブラジル属性がきっち入ったものではあるのだが、ぼくの耳にはもっと無勝手流においらなパフォーマンスをしてほしいと思ってしまった。この晩の実演だと、パスコアールという惑星の住人によるものというより、ジャズ・フュージョンという範疇の中でやんちゃする人物のライヴという感想を持ってしまうから。やっぱり、彼はジャズ好きなのか。ぼくにとってのパスコアールはもっと規格外の自由人であるのだと、ショウに触れながら、ぼくは自らのパスコアール像を反芻した。

 とはいえ、奇声をあげたり、ソロのパートが終わるとその演奏者の名前をがなったりとか、随所にとっちらかった側面を出して、ウヒョヒョヒョとなれたのは確かだし、オレはパスコアールのライヴを見ているというれしさを得たのは確か。バンド・メンバー全員が鳴り物を手にしてお茶目に前に集まる場合もあったが、そういうところは全面的に頷いてしまう。それから、途中に飲み物を買いに出て再び場内に戻ったら日本人がステージでフイーチャーされていた。打楽器を叩いていたのは、ケペル木村(2016年9月7日)だった。ミュージック・ラヴァーに国境なしというような、お高くとまらぬしなやかさも、またいいやね。なお、今回の公演は昨年1月に亡くなったブラジル人リード奏者/ピアニストの、ヴィニシウス・ドラン(1962〜2016年)に捧げられたもののよう。

▶︎過去の、エルメート・パスコアール
http://43142.diarynote.jp/200411071407550000/
▶過去の、ガース・ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/
▶過去の、リオン・ラッセル
http://43142.diarynote.jp/200511281322500000/
▶︎過去の、ケペル木村
http://43142.diarynote.jp/201609201648546159/

<今日は、高湿度>
 年末年始と風が冷たい日もあったが、昼間は陽光注ぐ晴天で気持ちが良かった。が、本日は雨が降り出し、けっこう激しい。乾燥が緩和されるので、気持ちは曇らない、な。しかし、以前は加湿器を神経質と言えるほど活発に使っていたが、今は個人的には使用しなくなったなー。人間、歳をとると杜撰になる? 昔の加湿器は使用していると、ビニール袋やアナログ盤に白い粉がついたりもした。
 新宿・ピットイン。「あれもこれも」と題された公演で、同所の<昼の部>と<夜の部>通しで持たれ(入れ替えあり)、トランペッターの田村夏樹(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2010年8月6日、2012年7月1日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2016年1月28日)とピアニストの藤井郷子(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日)夫妻が持つ5つの単位が出演した。二人は今、ベルリンを拠点に、世界中を回っているんだっけっか。

▶過去の田村夏樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820 板橋オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
▶過去の、藤井郷子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201008261616172628/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120701
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE

 まずは、Quartet Maho。Mahoとは、魔法だそう。田村と藤井に加え、 ギターの加藤崇之(2005年11月28日、2005年12月11日、2012年11月24日)とドラムの井谷享志からなるカルテット。藤井のMCによれば、他は一応譜面があるそうだが、これのみ完全インプロであるそう。だが、過去のギグ経験がモノを言っているのだろう、噛み合いの確かな妙はいろいろと。終わりもスパっといくしね。大体の尺(曲の長さ)と曲数やテンポぐらいは、一応話して入っていると思うが。このカルテットの肝は、あっち側を飄々と奏でる加藤のギター演奏。素敵というしかない。そういえば、藤井はウィルコ(2003年2月9日、2004年9月19日、2010年4月23日、2013年4月13日)のネルス・クライン(2010年1月9日、2010年4月23日、2013年4月13日、2014年8月14日、2015年6月2日)と仲良しで、彼を迎えたギグ(2010年1月9日)をピットインでやったことがある。

▶︎ギターの、加藤崇之
http://43142.diarynote.jp/amp/200512020244540000/
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/
http://43142.diarynote.jp/201211261639115632
▶過去の、ウィルコ
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
▶過去の、ネルス・クライン
http://43142.diarynote.jp/?day=20100109
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
http://43142.diarynote.jp/201506070750376864/

 次は、 Satoko Fujii Orchestra Tokyo。構成員は、アルト・サックスの早坂紗知 (2003年6月30日) と泉邦宏(2006年7月3日、2011年7月10日、2012年4月21日)、テナー・サックスの松本健一(2004年10月10日、2005年11月28日、2012年12月11日)と木村昌哉 (2005年11月28日) 、バリトン・サックスの吉田隆一 (2004年8月20日、2004年10月10日、2006年7月3 日、2012年12月11日、2014年7月22日、2015年2月8日、2015年4月14日、2015年6月21日、2016年9月27日)、トランペットの田村夏樹と福本佳仁と渡辺隆雄(2010年12月28日、2013年2月19日)と城谷雄策、トロンボーンの はぐれ雲永松と高橋保行(2012年7月1日)と古池寿浩 、縦ベースの永田利樹 (2003年6月30日)とドラムの堀越彰 (2010年1月9日)と井谷享志。ピアノレスで2ドラムという編成、なり。

 長尺の曲を2つ演奏。多分、新曲だ。1曲は藤井曲で藤井が指揮をし、2曲目は田村の曲を田村本人が指揮し、その際藤井はステージを降りてお休み。ともあれ、久しぶりに藤井オーケストラを聞いたが、やっぱしこれはいいな。いいないいな。聖なる響きとゾクゾクする不協的アンサンブルとのブラス音と創意工夫に富んだ音色とフレイジングを持つイケまくっているソロが絡み合う様には、ため息。今のビッグ・バンド表現を持ち上げるなら、マリア・シュナイダー(2012年12月17日、2013年12月17日)ではなく、もっともっとカっとぶ創意に満ちた彼女たちじゃと確信する。学生のビッグ・バンドで、藤井のスコアを使おうとする血気盛んな集団はいないのだろうか。

▶︎過去の、早坂沙知
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
▶過去の、泉邦宏
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/201107111327576732/
http://43142.diarynote.jp/201204221307297965/
▶︎過去の、松本健一
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/amp/200512020244540000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
▶︎過去の、 木村昌哉
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/
▶過去の、吉田隆一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
http://43142.diarynote.jp/201504151353356530/
http://43142.diarynote.jp/201506251045578258/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160927
▶︎過去の、渡辺隆雄
http://43142.diarynote.jp/201101061048518045/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130219
▶︎過去の、高橋保行
http://43142.diarynote.jp/201207031354584120/
▶︎過去の、永田利樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
▶︎過去の、堀越彰
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/
▶過去の、マリア・シュナイダー・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201212190844487864/
http://43142.diarynote.jp/201312181034409673/

 夜の部の最初となる3番目の出演者は、田村夏樹 と藤井郷子 と井谷享志 (ドラム)というトリオのTobira—one(トビラ・マイナス・ワン)。本来はそこにダブル・ベース奏者のトッド・ニコルソンが入っていたが、現在米国に帰国しているので、マイナス・ワンだそう。ぼくは過去に井谷享志の演奏を聞いたことがないように思うのだが、とても幅の広い人だと思った。たとえば、このグループの冒頭曲で彼は手でドラムを叩き、また鳴り物を手にしたりもするが、それはカホン奏者がいるように聞こえたし、一方では瞬発力に長けたフリー流儀のドラム演奏も悠々聞かせる。また、藤井のピアノにせよ、田村のトランペットにせよ、その演奏自体が好調。特に藤井についてはバンド・リーダー/作曲家としてまず見てしまいピアニストとしての面への注視が少し後回しになってしまうが、今回の演奏を聞いて、線の太い、しっかりとエッジに立とうとする意志を持ついいピアニストであると痛感した。田村もまた、言わずもがな。

 その次は、藤井郷子とドラムの 吉田達也(2006年1月21日、2013年2月11日)とのデュオ。これは。もう笑う。ロック感覚ありというか、これはプログ・ロック感性に貫かれた丁々発止表現ではないか。藤井は少女時代にプログ・ロック好きだったんだよね。1時間ぐらいのものを、山あり谷ありで一発。両者のしょうもないヴォイス合戦もあり。ああ、これも込みのデュオ表現であるのね。吉田は本日、56歳の誕生日であるそう。お元気で、何より。

▶︎過去の、吉田達也
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/

 そして、最後は Satoko Fujii Quartet。それは、田村夏樹 と藤井郷子 とエレクトリック・ベースの早川岳晴 (2010年3月20日)と吉田達也 からなる。過去、何作もアルバムを出しているはずだが、一時やめていて、今回久しぶりにやるらしい。で、ええええ。こんなだったっけ? 前のデュオよりもっとロックっぽくも、乱暴。音も超デカいし、もうアラウンド60ミュージシャンのバカ丸出し回春インストなんて形容も、それには用いたくなる。とにもかくにも、ソロ・パートもたっぷり与えられる早川岳晴の荒い電気ベース演奏が大活躍。これをアコースティック・ベースでやったなら、ぼくはホっとすると思った。もし、エレベで行くのなら、藤井は電気キーボードを、田村は電気エフェクトを用いたほうがいいのではないか、とも。テーマ部は凝っている(独りよがり的にとも、一部言いたくなる)が、ロックもジャズも好きなぼくとしてはなんか先が一番読めちゃう部分もあり、リズムの設定にも心奪われず、5つの出し物の中では一番これが好みではなかった。ただ、上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日、2016年11月16日)のザ・トリオ・プロジェクトのファンなら、これを気にいる人はいるだろう。

▶︎過去の、早川岳晴
http://43142.diarynote.jp/201003221028556158/
▶過去の、上原ひろみ
http://43142.diarynote.jp/200411292356580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050731
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101203
http://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201207310933428147/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160915
http://43142.diarynote.jp/?day=20161116

<今日の、記憶>
 若い知人から、<本日は、成人式に行ってきます!>というメールがあったが、そっかー今日は成人の日の祭日であったか。1月15日が成人の日と刷り込まれている世代はどんどん減ってきているのだなー。本日は14時半開始のライヴに合わせて明るいうちから出かけたが、あまりそういう風体の人とは出会わず。ヒネていたぼくは、高校の卒業式も成人式も出ていない。両親はかなりスクエアな方であったと思うが、それについては何も言わなかったな。どこか、卒業式を仲間たちと祝わなかったという負い目があったためか、大学のときは卒業式にも学科の謝恩会にもちゃんと出た。ロック的な崩し満載の格好で……。あれは楽しかったなあという写真がいっぱい、家のどこかにある。
 昨年暮にこんなこと(下部の項)を書いている〜http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/ 〜が、ぼくのアリ・ジャクソン(2012年6月8日、2014年4月24日)に対する期待は存分に満たされた。極論すれば、やっぱり昔流儀のジャズはシンバルのチーチキだけで、伴奏が成り立つんだよなあ。ショウが終わると、彼のセットをチェックする人が散見され、注目している人(ドラムをやっている人だろう)はちゃんといるんだなあと思う。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。

 スーツに蝶ネクタイをつけたジャクソンはステージに上がると、お行儀よく靴を脱いでドラムの前に座る。アンコールの際は、靴を履いたまま叩いたが。ドラムのセットは、まさしくジャズ。小口径のベース・ドラム(アタマに必ず入れるなどリズムの屋台骨を担うものではなく、アクセントを付けるためのそれだから、小さなものの方が音質的に適する)、スネア、ハイハット、タム2、フロア・タム1、シンバル2、カウベル(タムの間に置き、意外に用いる)というもの。そして、彼はレギュラー・グリップのもと(97%、そう)、ジャズ流儀に沿った4ビートのドラミングを展開。冒頭の2曲はブラシを用いた。

 とはいえ、細心にリストの強弱や、シンバルやスネアやタムの叩く位置(で、音色が変わる)を精緻にコントロールする、その瞬発力にも富む演奏はいろんな今様奏法も見渡したうえでのオールド・スクールな行き方であるのがよく分かる。いやあ、注視しながら聞いていて、面白くてしょうがなかった。

 トリオによる演奏で、ピアノはまだ20代だろうエメット・コーエン(モンク・コンペのウィナーで、過去クリスチャン・マクブラド公演で来日したことがあるよう)で、ベースは中村恭士(2009年10月15日、2015年9月5日)。彼らの演奏もまた今のヴァイヴを受けつつ大好きなジャズに邁進するんだという意思を放つ。何気に多才な奏法を繰り出していた中村は間違いなくトリオ表現に広がりを与えていたし、中村と比すともう少しコンサヴァ傾向の演奏にあるもののコーエンの粒立ちの良い闊達な指さばきも相当に魅力的。彼はちょっとしたところで、他の二人に笑みを送るのだが、それもチャーミングであった。

 演目は、「ブルー・モンク」をはじめ、スタンダード中心。何気にブルージーな曲調はトリオのノリにあっていて、「プリンス・ブルース」と紹介した曲もあったが、そのブルース曲(正調ブルースではないが)はジャクソンの叩き方もより生き生きとして、たいそう良かった。ジャクソンが最初タンバリンを叩きながら(足で、キックとハイハットを入れる)やる曲もウキウキできたなあ。そういえば、ディズニー・ソングながらマイルスの曲とMC紹介された「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」や『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』の「ジョシュア」(こちらは、ちゃんとヴィクター・フェルドマン作と紹介)を演奏。ジャクソンは1960年代前半のマイルス表現が特に好きなのだろうか。

▶︎過去の、アリ・ジャクソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120608
http://43142.diarynote.jp/201404260901127573/
▶過去の、中村恭士
http://43142.diarynote.jp/200910161214535124/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/

<今日の、アフター>
 流れで、在海外の今旬の人気ミュージシャンの持つパーティに行っちゃう。おしゃれなところ、その地下でセッションが繰り広げられ、うわーい。あんな人もこんな人も来ていて(ネットワーク、あるんだなあ)、笑顔で音を重ね合う。これはNYみたいとも思えたか。

 76歳と高齢ながら、現在もトップ・リード奏者であり続けているロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日)の新バンドの実演を、南青山・ブルーノートで見る。セカンド・ショウ。

 1時間50分ものパフォーマンスを繰り広げた。ぼくがここで見たここのライヴにおいてもトップ級に時間が長いものであったか。過去の彼のショウも過剰に演奏時間は長くなかった(はず)。最後の方でファースト・ショウはジェット・ラグでいまいちだった……とか言っていたが、あんたすごかったじゃない。どこか、その後味が良くなかったので、セカンドはがんばちゃった?

 本人はテナー・サックスを構え、曲によってはアルト・フルートを吹く。彼に加え、ギターのビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日)、ベースのルーベン・ロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日)、ドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日)という、新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』(ブルーノート、2016年)参加者の布陣でことに当たる。1曲はどれも20分を超えていたか。

 御大は、とても機嫌が良さそう。もとい、楽しそう。特にフリゼールの演奏にはイエイという感じで、掛け声を横からかけたりもしていたな。ルーベン・ロジャースがすべてエレクトリック・ベース(4弦のフレッテッドであったはず)を弾いていたのには驚く。でも、違和感はなし。
 
 とにもかくにも、悠然。その佇まいにも、滅茶しびれる。ものすごい圧倒的にして崇高なジャズ・マン像を仁王立させる一方で、ヒッピー・ムーヴメント/ニュー・エイジ思想にかぶれた1970年前後のロック・ミュージシャンとのいろいろな交友をおおらかに肯定しているところも透けさせていて、ぼくはなんかグっと来た。

 ビル・フリゼールらを配し、黒人霊歌やディラン曲などを取り上げた『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』はロイドのアメリカーナ作品という言い方で説明もできるが、その長尺開陳と言える実演は、マイク・ラヴ(2014年3月28日)やカール・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)、ロジャー・マッギン(ザ・バーズ。彼は歌ではなく12弦ギターでの参加)らが入った『Waves』(A&M,1972年)のとぎすまされた今様版とも言える聞き味を絶対に持っていた。あのアルバムにはトッド・ラングレン(2001年11月9日、2002年9月19日、2002年9月28日、2008年4月7日、2010年10月10日)の「アイ・ソウ・ザ・ライト」の出だしを繰りかえしているみたいな曲も入っていた(両曲、発表は同時期となるのかな?)。聞き応えある演奏を繰り広げたフリゼールも、そこでのガボール・サボの演奏を蘇らせている部分が間違いなくあったものなあ。それゆえ、新作でいかにも今っぽい飛躍を加えていたスティール・ギター奏者のグレッグ・リーズが来日メンバーには入っていなかったのはとても残念。本国のライヴには入っていたりもする。そういえば、ヴォーカル曲も入っていた『Waves』の行き方をなぞるかのように『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』にはウィリー・ネルソンやノラ・ジョーンズ(2002年5月30日、2002年9月14日、2007年3月21日、2010年1月20日)が歌う曲もあったが、この春の米国のロイドたちのライヴにはルシンダ・ウィリアムスが入る日もある!

 脱帽。とんでもない、ジャズ・ジャイアンツであることを皮膚感覚で存分に感じさせる存在は、しなやかに呼吸し、なんとも味と飛躍のあるリヴィング・ミュージックをこれでもかと送り出してくれた。こんな僥倖ってあるかい!

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
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http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
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▶︎過去の、マイク・ラヴ/ザ・ビーチ・ボーイズ 
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▶過去の、トッド・ラングレン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200804081929500000/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
▶過去の、ノラ・ジョーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm 5.30
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 2.09
http://43142.diarynote.jp/200703241326090000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
http://43142.diarynote.jp/201211151032395193/

<今日の、感慨>
 ロイドという音楽家がいてよかった! ジャズという表現があってよかった! と、心底思わせられた。会場にはいつも以上に、ミュージシャンが散見されました。本文中には触れていないが、ずっとロイドが重用している、どこかパサパサした手触りを持つエリック・ハーランドの演奏ももちろん良かった。ハーランドとロバート・グラスパーはヒューストンの芸術高校の同級生。それほど二人の相性は重なるわけではないが、グラスパーの2007年初リーダー公演の際にダミアン・リードが急遽来れなくなって、ハーランドが同トリオに加わるために遅れて来日したことがあった(http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/)。ハーランド〜ケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日)〜ジャマイア・ウィリアムス(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)と続く、同高校卒の新世代ジャズ・ドラマーの長男と言えそうなハーランドは、3月中旬に自己バンドでコットンクラブに出演する。また、ケンドリック・スコットもこの18日から始まるザ・クレイトン・ブラザースのブルーノート東京公演に同行するとともに、23日からは自己バンド公演をコットンクラブで持つ。ピアニストのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日)はその両方のギグに出演しますね。アイグスティとデュオ・ライヴを持ったこともある心に嵐と諧謔を持つ清新ギタリストであるジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日)の自己トリオ公演は、やはりコットンクラブでこの31日からだ。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶︎過去の、ダミアン・リード
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
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http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
▶過去の、テイラー・アイグスティ
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http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
▶過去の、ジュリアン・ラージ
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http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/

 昼下がりから試写に二つ行き、日が暮れるとライヴ2本をハシゴ。体力と根気がないのでけっこう困ぱいするかと思ったら、そんなことまるでなく。夜も元気だった。ま、誰に強制されるわけでもない、娯楽享受だものなー。

 まず、渋谷・ユーロライヴで、2016年米国映画「ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ」を見る。ドキュメンタリーだが、これはその内容情報を知ったら、多くの人が興味を持つのではないか。

 素材となるのは、ユダヤ系で1964年ブロンクス生まれのアンソニー・ウィーナー。民主党上院議員秘書(1985年〜)〜NY市会議員(1991年〜)〜民主党下院議員(1999年〜)と順調にのし上がった彼が、2011 年にセックス・スキャンダルで議員辞職を余儀なくされたあたりから、このドキュメンタリーは始まる。下院議員時代に彼はエネルギッシュな颯爽行動派として評価を高め、下院当選の翌年にはヒラリー・クリントンの側近秘書として知られるフーマ・アベディン(カラードぽいが、セレブ臭あり。クリントンは、彼女を第2の娘とも言っていたよう)と結婚するなど順風満帆だった。

 猥褻な文書や写真を携帯電話で送ることを指す“セクスティング”という言葉があるのは初めて知ったが、ウィーナーの場合は淫らな写真を女性に送る趣味を持っていた。最初にバレた際、自分は無関係でハッキングされた可能性があると嘘をついたのが致命傷だったよう。辞職後に、フーマとの間に子供が生まれもした。その後、9年間続いたマイケル・ブルーバーグの後任を決める2013 年ニューヨーク市長選に、ウィーナーは政界返り咲きを求めて立候補する。彼は知名度のある妻や子供を前に出した戦略も取って選挙戦を戦い、当初の世論調査では支持率1位の候補となった。映画は、ウィーナーが中南米系とかのマイノリティ米国人やゲイにも両手を広げる選挙戦をしていたことも伝える。

 監督をしているのは、かつてウィーナーを含む政治コンサルトの経験も持つジョシュ・クリーグマンと映像畑をずっと歩んできたエリース・スタインバーグ。多くの材料は、その市長選挙選に密着して撮った映像だ。おそらくクリーグマンはもう一度政界に返り咲くサクセス・ストーリーを求めて撮影を申し出て、ウィーナーの方もまた表舞台に戻ることができると踏んで撮影をOKしたのではなかったか。だから、本当に近い位置で収めた映像が映画にはある。

 だが、選挙活動中に、下院議員辞職後も彼がセクスティングをやっていたことが暴かれ、支持を失い、彼は落選してしまう。その顛末をTV報道映像なども交えて綴るのだが、とても見ていて辛い。後味が悪く、笑えない。その理由の大きな一つは、ウィーナーが人の上に立つには不適切かもしれない結構頭の悪い、直情的な人間であることが露見するから。よくぞ、ウィーナーはこれを映画化することを認めたな。そして、所詮政治家は皆んなそうであり、決定的な悪事が表に出ない限りはそいつらが調子よく振る舞って当選していると、思わせられる。あーあ、政治家って、選挙って…。そう、悲しい気持ちにならないはずがないじゃないか。また、ウィーナーの懲りない嗜好を通して、人間の性(さが)ってなんなのかという虚無感にもとらわれる。

 落選した時点で映画は終わるが、その後もウィーナーのトホホな性癖は複数回暴かれたよう。そして、今回の大統領選でヒラリー・クリントンが公務で私用メール・サーヴァーを使っていたことが大問題となったが、それはもともとウィーナーのメールが精査される段階で、発覚したようだ。トランプ次期大統領の数々のオレさま所作はセクスティングを超えるものではなかったのか。

 暗い気持ちのもと移動し、東銀座・松竹試写室でイタリア人巨匠監督のルキノ・ヴィスコンティ(1906~1976年)の晩年にあたる1974年の人気映画「家族の肖像」を見る。ファッション・メイカーのフェンディがお金を出してデジタル復刻した結果、2月からの公開となるようだ。

 これは、もう一度見てみたかった。別に映画ファンでも、もちろんヴィスコンティ監督好きでもないのに、「家族の肖像」だけは大昔に見たことがあった。当時、お洒落な意識高い系の友達に誘われたわけですね。見たら、つまらなかった。でも、ええ格好して気に入られたくて、その時は持ち上げた感想を言ったと思う。

 しかし、舞台となるアパートの重厚な部屋の様に欧州文化、貴族というシステムの流れを感じたりもし、未知のものと出会う喜びは得た。また、当時のぼくはこの映画に描かれる主人公の老人と彼の周りにいる人たちとの軋轢に、キューブリックの映画「時計仕掛けのオレンジ」(ロック的な感覚を持つとの見解〜ブリティッシュ・ロックを理解する手助けとなる〜から、この映画は見ておりました)との親和性を感じてしまったりもした。ようは常識と不道徳とかいった旧と新の対立が欧州空間のもと描かれるということで……。

 今回見ても、最後の方はよくわからなくなってしまったし、示唆はいろいろと受けたが、心からは楽しめなかった。また、ローマのアパートメントの中だけで完結する映画(ヴィスコンティが病で下半身不随となり車椅子の生活を余儀なくされた結果の設定であったが、それはそれで、技ありだろう)であるのに、台詞がすべて英語で通される違和感は、言葉に敏感になっているだろう今の方が増した。一部カンツォーネもかかるし、エンド・ロールのクレジットもイタリア語なのに。主人公のバート・ランカスターは米国人だが、他の非英語圏生まれの役者たち、よく英語をこなしている。ヴィスコンティの他の映画も英語劇なの? 当然、他はちゃんと見たことがない。無責任なことを書いていて、すみません。

 その後は、南青山・ブルーノート東京へ行き、昨日に続きチャールス・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日)御一行を見る。前日の感慨を受け、そして絶対に違うことをやるはずだという確信のため、当初の予定を変更した。出演者の皆さん、服装が違っていますね。昨日はヤンキーのノリだったハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日)は、カジュアルながらジャケットを着ていた。

 そしたら、演奏も違っていた。まず、曲が全部違う。このショウはブルースを二つもやる。やはり、新鮮。とともに、サウンドの傾向も違っていた。ギザギザしていた、どこか異物感をはらんでいたのは昨日の方。この日はもっと純ジャズっぽい、スペースを作り飛び込み会う感じがよりあった。ボサっぽいビートで始まる曲もあったか。どこか、ふくよかでもあった。それゆえ、昨日のセカンド・ショウを見た際には欲しいと思った新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』のりのスティール・ギターの音が、不要であるとも感じた。もっと極端な書き方をするなら、この2日目のファースト・ショウはロイド、ピアノのジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)、ロジャース、ハーランドという旧カルテットのモランの代わりにビル・フリゼールがきっちり入った姿を持つ、とも説明できるんじゃないか。ゆえに、昨日のようにフルゼールにガボール・サボの影を見る局面もなかった。

 しかし、なんにせよ、なにから何まで面白い。フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日、2017年1月12日)は好調、とともに彼にはファンが付いていて、彼を見に来た人もいるはず。フリゼールのソロのショウとか、企画しても良かったのではないか。もしくは、このリズム・セクションと(つまり、ロイド抜きのトリオで)やっても超おもしろかったはずだ。レコーディングするのも、大ありだと思う。

 そのフリゼールのソロのとき(たっぷり、与えられます)のロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日、2017年1月12日)の演奏は素敵すぎ。アクションも、今日の方が大きくなかったか。もう、フリゼールの変化に沿いニュアンスに富む指さばきを見せ、ときに的確に変化をうながすフレイズも出し、といった具合で。もうドキドキ、彼はぼくにとってトップ級のエレクトリック・ベース奏者となった。

 もしかして、ぼくは楽に聞けた、この日の方がやっている曲調が好みであったためもあり、昨日のショウより良いと思えたかもしれぬ。絶対、最初に聞いたとき方が新鮮で好印象を持ちがちなのに、これはどうしたことか。でも、それこそがリアル・ジャズのすごさであり、ロイドの力なのだと思う。あー、明日も見たいが用事がある。あ、このセットは80分強だったかな。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
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▶過去の、ビル・フリゼール
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▶過去の、ルーベン・ロジャース
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▶過去の、エリック・ハーランド
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▶過去の、ジェイソン・モラン
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 その後は、品川・ステラボールに行く。サンブランシスコの穏やかエレクトロニカの担い手であるTychoの公演。これまでティコと日本語では表記されてきたが、タイコーとステージで言っていたか。

 会場入りしたときは、ちょうど前座が終わっていてインターミッション中。缶を提供しているだけなのに、販売カウンターの前にはすごい列。毎度、使えない。プリンス・ホテルの付属施設のくせに、あんな客に迷惑をかけていて恥ずかしくないのか。ともあれ、ぼくの中では大箱に分類されている会場はほぼ満員。近年、フェスとかで何度か来ているはずだが、人気あるな。

 スコット・ハンセンのソロ・プロジェクト。ながら、今回の実演では、キーボードやギターを弾く当人に加え、さらにギター/ベース、ギター/ベース/キーボード、ドラムという3人がサポートで加わる。ドラマーのロリー・オコナーが四つ打ち、プログラム的なビートをしゃきりと軽やかに叩く。いい感じ。実は、前座の出演者は彼のユニットだったようで、どんなことをやったのか。ま、チャールス・ロイド欲には勝てるはずもないんだが。

 彼のしっかりした、タイトでもあるドラミングを下敷きに、そこに鍵盤音や弦楽器の音がある種の抑制美のもと重なるのだが、なんかPC同期音を使っていないような気がした。鍵盤の音数が多いかと思える時もなくはなかったが、ドラマーはヘッドフォンをしていないし、別に奏者間にインタープレイが存在するわけではないのだが(それはロイドを見た後だと、よけいに感じる)、そこにはバンドとしてのクリーンさ〜姿勢の正しさがあるような気がし、これはバンド音っぽいと思えちゃう。彼らのサクっとした終わり方も何気に印象的。下敷きガイド音がないとしたら、合図を出し会うわけでもなく、少し不思議。きっちり、小節数が決まっていて、それを皆んな把握していたりして。

 そんな生演奏的なパフォーマンスは全インストで、いろいろな感想を導く。ギターがよりリアルに聞こえるためにときにシューゲイザーやポスト・ロックと言ってもいいような。というか、もともとある種のロック的な感覚を持っており、それが好評価に繋がっているとも指摘できるか。曲はどれも短め。延々と1曲を続け、それでトランスぽいのりを出すということもアリに思えるが、ハンセンたちは楽曲を大切にしていることを示すかのように、そういうことはしない。ある意味潔いし、ハッタリや虚勢をかましておらず、それもいいな。そういえば、彼らの曲名は初期を除き、どれも簡素にワン・ワードの単語なんだよな。

 背後のバカでかいスクリーンには、自然を撮ったものやグラフィクス映像が終始流されていた。それ、邪魔に感じる時もぼくはあったが、それは小数派なのかな。映像も、ハンセンが作っているよう。2階席から見る彼はとても育ちが良さそうに見えた。

<今日の、雲行き>
 午後3時ごろ、試写場から試写場に移動の最中、濃い灰色の空(でも、雨は降りそうでない)に半分なっていて、うわあ。スコットランドの空みたいと一瞬思った? というのは嘘だが、これは北国の空の感じだと思わせるには十分なもの。明日、明後日は有数の冷え込みとなる予報が出ているのに納得した。まだまだ、寒さはこれからかあ。。。
 2004年にボストンで結成され、2016年新作『サイド・ポニー』はノンサッチからリリースされている、男女混合の白人ポップ・ロック・バンドを南青山・ブルーノート東京で見る。とても声が伸びる女性シンガー、男性ギタリスト(一切ソロを取らないが、3曲ではギターを置いてトランペットを演奏する)、女性ダブル・ベース奏者(音色はけっこう変える)、男性ドラマーという、男女二人づつのグループだ。

 <大人のクールなバブルガム・ポップ>、<レトロな手触りもうまく用いた、末広がりビート・ポップ>、そんな言い方もできる? いろいろな音楽知識の蓄積を(ジャニス・ジョプリンの「ピース・オブ・マイ・ハート」をうまくは部分的にはめ込んだような曲もあり)散りばめた、大人の思慮とポップ・ミュージックの敷居の低さを共に抱えるような表現の数々を和気藹々と披露。コーラスが何気に効いていて、いい感じ。初来日のようで、初々しさが溢れ、それは接していて心和む。

 移動して、丸の内・コットンクラブへ。出演者は先日、マーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日)のグループで来日したばかりのトランペッターのマーキス・ヒル(2016年9月17日、2017年1月7日)。で、別に舐めていたわけではないのだが(いや御免なさい、舐めていたんだろうな)、当方の想像するところをはるかに超える現代ジャズ表現(フュージョン臭、ゼロ)を提出し、驚いた。これは、今の米国人若手のジャズを云々するならチェックするべきアクトであると、ぼくは痛感してしまった。

 ブラックテットと名付けるコンボを率いてのもので、アルト・サックスのジョシュ・ジョンソン、キーボードのジェイムス・フランシース、アコースティック・ベースのジェレミアー・ハント、ドラムのジョン・デイヴィス、という面々。ドラマーを除いては、ヒルが生まれて今も住むシカゴのシーンの奏者のよう。ぼくは彼らの名前を初めて知る。ヒルはファースト・ネームにジャズのJが付く人を擁したかったようだ←嘘。ヒルのコンコード発の2016作『The Way We Play』参加者との顔ぶれは重なっていない。同作はピアノレス編成でジャスティン・トーマスというヴァイブラフォン・プレイヤーがコード楽器の奏者として入っていたが、こちらは一応、通常の二菅のカルテットという編成を取っている。

 実のところ『The Way We Play』は日本制作かと思ってしまうようなジャズ・スタンダード集であったが、ステージで彼は3曲ジャズ先達曲(ホレス・シルヴァー、ジジ・グライス、ハービー・ハンコック)を飛躍を盛り込む方で、そして(多分)オリジナルを3曲披露した。

 オープナーは、なんかウディ・ショウの1979年人気盤『Stepping Stones : Live at Village Vanguerd』(Columbia)に入っていてもおかしくないような創意と意気が溶け合った曲。おお格好いいじゃねえかと、すぐに身を乗り出す。で、驚いたのは、21歳という鍵盤奏者がずっと(全ての曲で)エレクトリック・ピアノを弾いたこと。ピアノはステージの横に片付けられ、フェンダー・ローズしかステージ上に置いていない。そのフランシースの指さばきは電気ピアノの音を効果的に介するもので、ふむと頷く。これは、実力者。一つはっきりと分かったのは、ヒルはアコースティック・ピアノが規定するジャズの表情から逃れようとしているということ。新作では古臭い主題を取りつつスポークン・ワードを入れたりもしていたが、マジ一筋縄ではいかない人だな。

 リズム・セクションは、旧来のアコースティックな音色をばっちり取る。そして、そこにアコースティック・ピアノでなくエレピ音(ときに、エフェクターもかまされる)が乗ると、どこかいつもと違うジャズの表情が間違いなく浮き上がる。ベース奏者やドラマーもちゃんと今の揺れや立ちをしかと持つジャズ・ビートを送り出していて高揚。皆、20代だろうけど、いやはや米国には確かな若いジャズの担い手が育っていると思わずにはいられなかった。ジャズ、全然死んでいないよなあ。

 フロントの二菅については、テーマ部におけるハーモニーがクールで、それだけで間違いなくジャズたる深みと輝きを出す。まず、それに感心。そして、ヒルのソロに触れてときにぼくが感じたのは、なぜかフレディ・ハバード。ドナルド・バードの純ジャズ時代の曲「フライ・リトル・バード・フライ」を新作で取り上げていたのでバードも好きなのは間違いないだろうけど。一方、アルト・サックス奏者は結構控えめなノリで演奏するのだが、間違いなく他者と差別化できるようななソロをとっていて○。二人とも、どこか全開にしていないように感じる部分をぼくは得た。だが、その一歩前で踏みとどまっているような風情にも、ぼくは今っぽくも好ましい老成感を感じてしまったんだよなあ。とかなんとか、皆んな良かったし、何よりその総体が才気たっぷり。拍手っ。”我々の演奏流儀”に満ちていた!


▶︎過去の、マーキス・ヒル
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/

<今日の、朗報?>
 知人から、セレッソ大阪のオフィシャル・ルマガジン「12th」付録のJ1昇格記念ポスターに、送った我々の写真が採用されました、との連絡あり。昨年11月に試合を見に行った際〜http://43142.diarynote.jp/?day=20161114〜の集合写真。なんか、うれしい。セレッソのサポーターじゃないけど、オレやっぱりサッカー好きなんだな。

TNT

2017年1月17日 音楽
 ずんちゃずんちゃ、って、もうロックですよ。そう聞いていたのだが、ほぼロックじゃなかった。マジ、ジャズだった。新宿・ピットイン。14時半からの、昼の部。

 ギターの斎藤“社長”良一(2004年1月21日) と電気ベースの高橋保行(2006年7月3日、2010年1月9日、2012年7月1日、2017年1月9日)、ドラムの山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日、2015年5月28日、2015年6月15日、2015年9月13日、2015年11月11日、2016年5月22日、2016年6月13日、2016年9月7日)からなるトリオが、TNT。で、山田は昨年夏でやめたが、渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日)で狼藉し合ってきた仲間たちで組んでいるグループだ。実は、高橋の本業はトロンボーンであり、まれにピアノも弾く山田の主楽器はマリンバやヴァイブですね。リーダーは、本業の楽器を持つ斉藤が務める。彼も洒落で小さなシンセを触った時がほんの少しあり。なお、彼がするMCは謙虚さや韜晦の裏返しだろうが、よくもまあ曲間ごとにあんな楽屋落地的なグダグダ話をするものだと閉口。素晴らしい音楽家なんだから、黙って演奏すればいいのに。

 演奏は、望外に良かった。長ーく演奏される素材はセロニアス・モンクやウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)曲、斉藤のちょいオーネット・コールマン(2006年3月27日)的なメロディ使いもある曲や山田のちょいブルージーな変拍子曲など。ココロに嵐を持つ者たちの、自由なインタープレイ表現が繰り広げられる。

 渋さでの演奏だと大人数による音の洪水もあり埋もれてしまうが、こういう素の編成で聞くと、枠を縦横にカっとぶような斉藤のギター演奏の真価が山ほど味わえる。接していて、この人はどんなギター人生を歩んできたのかとすぐに思いは巡る。ソニー・シャーロックのようなかき鳴らし奏法も颯爽と見せる彼は、数回弦を切っていた。木のブリッジのギターを用いた渋さのライヴでは切れないんだけど(通常の)金属製ブリッジのギターを弾くと弦が切れるというようなことを、彼は言っていた。あ、伝えていいことも、MCで言っているか。

 とにかく3人の信頼具合がよく分かる、じゃれあい演奏。この日で3度目のギグとなるようだが、一発モノではない起伏もいろいろとあり、その流れにウキウキと身を任せてしまう。高橋の指弾きによるエレクトリック・ベースは強い腰に欠けるかもと思わせられる場合もあるが、フレイジングに関してはきっちりと美味しく、発展を促す音を十全に送り続ける。山田は2人のはみ出し方向にある演奏に反射して叩いていくわけだが、リム・ショットなども用いるそれは完全にジャズが基調。なるほど、音大時代に学校外で3年間もジャズ・ドラマーの小山太郎のレッスンを受けていたという話にも納得がいく。彼女はマレットを2本づつ(つまり、両手で4本)持って、ドラムを叩く曲もあり。これは鍵盤打楽器奏者じゃないと発想しないよな。そういう奏法を見せるドラマーには初めて会ったし、見た目にもアトラクティヴ。ともあれ、多芸は善であり、吉である。

 本来の持ち楽器ではないという新鮮さは、高橋にしても山田にしてもそこに間違いなくある。何より、やっている本人たちが事新しいだろう。そして、オーネット・コールマンが自らの表現に新風を吹かせるために当時10歳になったばかりのデナード・コールマン(2006年3月27日)を『The Empty Foxhole』(ブルーノート、1966年)で起用したことがあったという逸話を、ふと思い出したりして。山田の演奏に関しては、それが当てはまるか。当時のデナードと比べたら、山田の方がうまいけど。『The Empty Foxhole』はオーネット親子のほかはベーシストのチャーリー・ヘイデン(2001年11月20日、2005年3月16日、2009年9月10日)が入ったトリオで録られていて、オーネットはアルトだけでなくトランペットやヴァイオリンも手にしていた。多芸は善であり、吉である。

 広がる、動いていく自分を出すという意思が溢れる。ロックが出てきて以降のジャズが持つべき回路の、少し乱暴ながら、なんとも澄んだ情緒を介する確かなカタチが、そこにはあった。TNTの次のライヴは、3日間の帯で吉祥寺でもたれる“冬の底なしジャズ”の最終日(2月3日)とのこと。

▶︎過去の、斎藤“社長”良一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040121
▶︎過去の、高橋保行
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ 藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201207031354584120/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170109 藤井オーケストラ東京
▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/ 渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/ WUJA BIN BIN
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/ 蝉丸
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/ ダモ鈴木
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/  Down’s Workshop
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/ アトラス
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/ w.パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/ MoMo
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/ タクシー・サウダージ
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/ 渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/ ヒュー・ロイド
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/ タクシー・サウダージ
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/ nouon
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/ w.パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160613 QUOLOFUNE
http://43142.diarynote.jp/201609201648546159/ WUJA BIN BIN
▶過去の、渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
http://43142.diarynote.jp/200612060135390000/
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
http://43142.diarynote.jp/200706162321180000/
http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/
http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶︎過去の、オーネット/デナード・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶過去の、チャーリー・ヘイデン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200909120650273142/

<今日の、前後>
 新宿・オリンパスサロンに、Mitch Ikeda写真展「Rocks」を見にいく。平日のお昼だというのに、けっこう見に来ている人がいて、ロック支持層はちゃんといるなあと思った。ミッチ・イケダは、ぼくと同い年のカメラマン。付き合いはそんなになかったけど、お互いフリーでバリバリやり始めた頃が重なっていた。彼は1990年代にロンドンに居住していたことがあり、取材出張の際にそのフラットに行って、和んだこともあった。いろいろ並んだロッカーたちの写真(アジアン・カンフー・ジェネレーションなど、日本人を撮っているのは今回初めて知った)を見て、一葉でストーリーを語る写真を撮っていると感じる。ぼくはジェフ・バックリーの写真が印象深かったかな。一番写真点数が多いのは、とっても懇意にしていたマニック・ストリート・プリーチャーズ。中にはメンバーとフィデル・カストロの写真もあったが、それはマニックスの15年前のキューバ公演(同国でライヴをした、初の西側ロック・バンドと言われる)に彼が同行した際の一コマだ。
「今はあまり音楽の写真は撮っていないんですよ。ファッション・カメラマンをやってる」
「広告の仕事とか?(頷くのを見て)じゃあ、稼いでいるね」
 彼は微笑む。いい感じだった。
 ライヴを見た後は、赤ら顔をして、ピットイン近くの喫茶店で、雑誌の特集の打ち合わせに臨む。今はメールで済ませちゃうことが多いが、こういう旧式なのもいいな。ま、ページ数が多い場合、それはまだ不可欠ではあるが。意気に燃え、企画を説明してくれる二人の編集者の様に触れつつ、新卒時に出版社に入った自分のことを思い出す。閃きには長けていたかもしれないが、いい編集者ではなかったかもしれないな。今となってみれば……。
 ダイアナ・クラール(1999年5月21日)他のアレンジャーを務めるとともに、自己オーケストラを率いてやってきたこともあった、1952年生まれのベーシストのジョン・クレイトン(2011年12月21日)とスタジオ奏者もやっている1954年生まれアルト・サックスのジェフ・クレイトン(2011年12月21日)の兄弟が中心となる、長年ゆったりと活動してきているコンボがザ・クレイトン・ブラザースだ。二菅クインテットでフロントに立つもう1人は、キャンディドやマックスジャズなどから10作ほどのリーダー作を出している1966年生まれトランペッターのテレル・スタッフォード。彼、老けて見えるなあ。その熟達組の3人に加え、1984年生まれのジョンの息子のジェラルド・クレイトン(ピアノ。2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日)、1980年生まれドラマーのケンドリック・スコット((2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日)が入った興味深い編成で実演は持たれた。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。
 
 堂々の、アコースティックな正調ジャズを堪能。ただし、曲はオリジナルで、無理のないアレンジ設定も施されている。どの曲でも、二管の線のしっかりしたソロがまずうれしい。やっぱり、ちゃんと道を歩んできているプレイヤーの演奏は聞かせる。余裕のMCも担当するジェフ・クレイトンはアルコ弾きも用いる。そして、ジェラルドとケンドリック・スコットという働き盛りの30代奏者が入ってこその若い跳ねも、その総体にはある。いいんじゃないでしょうか。

 多少流し気味とも思える軽い指さばきを見せるジェラルドはそのぐらいがお父さん世代との折り合いはいいだろうし、4ビートという枠の中で妙味を出しまくりつつタイトに叩くスコッドは見ていて本当に楽しい。旧来のジャズはどう今輝くことができるか。そういう、答えの一つになっていたはずだ。

 ジェラルド・クレイトンは当初クラウド・ファウンディングで資金を集めて制作し、それをコンコードが流通にのせた2013年作『ライフ・フォーラム』以降、リーダー作を出していない。だが、やっと春には『Tributary Tales』という新作を出す。ベン・ウェンデル(ジェラルドも入る昨年作は最良質現代ジャズ作だ。2013年8月22日、2015年4月16日)他周辺の逸材をいろいろと起用した末広がり作で、かなり聞き応えがあり。そんな彼にインタヴューしたら、想像していた以上に真面目な人で驚いた。あのドレッド調の頭は高校の頃から続けているそう。ジャズを聞かないのに髪型に惹かれてあなたのアルバムを買った人がいますと伝えると、「音楽だったら、それでもいいだろう。でも、政治家は見た目や気分で選んではいけない」と、彼は穏やかに答えた。

▶︎過去の、ジョン・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶︎過去の、ジェフ・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶︎過去の、テレス・スタッフォード
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
▶過去の、ベン・ウェンデル
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150416

 その後は六本木・ビルボードライブで、ミシェル・ンデゲオチェロ(2002年6月18日、2003年11月18日、2003年11月22日、2008年5月7日、2009年5月15日、2013年11月18日、2014年7月14日。歌と電気ベース)を見る。ギターのクリス・ブルース、キーボードのジェビン・ブルーニ、ドラムのエイブ・ラウンズがサポート。ドラムのみ新しい人(外見は、E.W.&F.の『地球最後の日』のジャケに並んでいそう)だ。やはり腕が立つ彼は、ンデゲオチェロ2014年作にも参加していたドイル・ブラムホールⅡ(2006年11月20日、2014年2月11日)のところで叩いていたようだ。あのアルバムはンデゲオチェロがあまりベースを弾いていないアルバムで、アンプ・フィドラー(2004年9月25日、2005年7月30日、2012年12月9日、2016年11月29日)もシンセ・ベースで入っていた。

 全曲、ヴォーカルもの、つまりここのところの通常路線を行く。少しスピリチュアルな感触を増しているような気もしたが、ロックから少し距離を置き、ファンクやジャズからはかなりな距離を置く表現を悠然と披露する。視野の広い、いろんな含蓄を持つ、陰影と流動感に富むアダルト・ポップとそれを書いたら、いけない? 終盤にやった近作に入っていた「グッド・デイ・バッド」はけっこうブラインド・フェイスの「キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム」に似ている、諦観ぽいなかに一条の希望をにじませるような内容を持つ曲で、こういう歌詞を歌わせるとンデゲオチェロはうまい。

 風情と持ち味あり。ただし、ずうっと彼女を注視し続けてきている者としては、少し新しい路線に踏み出して欲しいとは思えたか。プロデューサーとしてはジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)の2014年作やマーカス・ストリックランド(2007年12月18日、2012年1月13日、2013年9月28日)の2016年盤などでいい仕事をしている彼女だが、それらはともにブルーノート・レコード物件。2014年以来ずっとリーダー作を出していない彼女だが、ブルーノート社長/A&Rのドン・ワズ(2013年2月15日)が彼女の新作リリースを決断しないものか。ンデゲオチェロはこの3月に来日する女傑アフロ・スパニッシュ歌手であるブイカの2015年作にもベースで部分参加するなど、ある傾向にある逸材に対しての威光はいまだ朽ちていないことも付記しておきたい。

▶過去の、ミシェル・ンデゲオチェロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200805090836380000/
http://43142.diarynote.jp/200905161026033788/
http://43142.diarynote.jp/201311191050581790/
http://43142.diarynote.jp/201407151135353688/
▶過去の、ドイル・ブラムホールⅡ
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
▶︎過去の、アンプ・フィドラー
http://43142.diarynote.jp/200409280745560000/
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161129
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶︎過去の、マーカス・ストリックランド
http://43142.diarynote.jp/200712190953140000/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
▶過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130215

<今日の、残念>
 今、ビルボードライブが入っているミッドタウンは店子入れ替え期のよう。そしたら、ライヴの前後にちらりと入る飲む場として使っていた2店がともにクローズになっていた。わあああ。これは、痛い。
  30年前に、アメリカーナと言えることをやって異彩を放った、カナダの個性派バンドの公演を見る。六本木・ビルボードライブ、セカンド・ショウ。その大出世作『ザ・トリニティ・セッション』(RCA、1988年)は日本でもかなり話題になったし、その後に来日公演も彼らはした。

 カウボーイ・ジャンキーズは解散したことはなくアルバム・リリースも続けていて、27年ぶりとなるような今回の来日も紅一点のシンガーのマーゴ・ティミンズをはじめ当時のメンバー4人は全員残っていて、うちマーゴら3人は兄弟だ、そこにハーモニカやマンドリンを担当する人物を加えて、彼女たちはライヴを持った。

 演奏が始まりすぐに、わあ演奏がちゃんとしている、香り立つ風情ありと頷く。さすが、ずっとやっていることもあるな。マーゴのどこか物憂げな歌も確か。MCも漂う口調でしていた。渋く、墨絵みたいと思わせる一方、結構ヴァイタルに突き進む時もあり。また、ハーモニカがサウンド総体の表情を規定する曲も散見され、ぼくが感じていた以上にブルースを根に置くバンドだったのだなとも痛感。ギター奏者はエフェクターを通してオルタナぽい音を出す場合もあり、今のロック好きリスナーが聞いてもいろいろ要点を感じるパフォーマンスだったのではないか。もちろん、『ザ・トリニティ・セッション』でカヴァーしていた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「スウィート・ジェーン」もやりました。

<今日の、やっちまった>
 来月頭までの原稿締め切りが今週バカみたいに増えてしまい、実はけっこうプレッシャーを感じている。月内締め切り原稿は断ろうと思っていたのに、これは書きたいという渋味ロック系アーティストのライナー・ノーツ仕事を思わず受けてしまい、オレはマゾかとほんのすこし感じている。なので、精進(?)気味で行こうと思っていたのに、悪魔の誘いとともに、“朝までコース”をやっちまう。懲りない男であります。でも、最後の店で、25年前にとってもよく仕事をし、一緒のサッカー・チームに入っていた編集者と同じ会社の若い後輩と偶然会った。かつて、彼の下で働いたこともあり尊敬しているみたいなことを言っておったな。なによりじゃ。
 自己グループ=オラクルでの活動の傍ら、サイド・マンとしてもいろいろ来日もするケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日、2017年1月18日)については、先日飲んでいるときに、もしかして家庭がうまくいってなくて、家にいたくなくていろんなツアーに参加しちゃうんじゃないかという話が出た。余計なお世話ですね。でも、ブライアン・ブレイド(2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2008年9月4日、2009年7月20日、2011年5月12日、2012年1月16日、2012年3月15日 、2012年5月22日、2014年2月12日、2014年4月14日、2015年5月27日、2016年5月18日)も次の来日は貞夫さんサポートのようだし、本当に活動が活発。彼らって音楽のムシなんだろうけど、曲の構成や流れを覚えれば最低限はOKとなるドラマーは他流活動がしやすいとは言える?

 それにしても、ケンドリック・スコットの今回の実演は、前向きに静かに怒っておったなあ。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 ドラム/リーダーの当人に加え、テナー・サックスのベン・ウェンデル(2013年8月22日、2015年4月16日)、ピアノのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日、2016年2月3日)、ギターのマイク・モレーノ(2008年11月22日、2013年9月11日、2015年11月10日、2016年2月3日)、ベースのジョー・サンダース(2013年9月11日)という面々による。ジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日)と高校時代の同級生であるサンダースは現在パリに住んでいる。

 先週叩いたザ・クレイトン・ブラザース(2017年1月18日)のときのドラム・セットとは異なるものを、スコットは用いる。大きなスネアみたいなのをフロアに配置しツイン・ベース・ドラムのようなキットで、シンバルもでかい。で、当然のことながら、叩き方/叩き味も、過去のオラクル公演と比しても変わった。おお、動いている。それが顕著に表れたのは1曲目のアタマでやったドラム・ソロ。PCを横に起き、イアフォン式のモニターを使っているナと思ったら、なんとドラム演奏と同期してうっすら電気音も出るという設定で彼は叩く。ぼくはそんなスコット演奏に初めて触れた。また、前よりももっと饒舌になっていて、エルヴィン・ジョーンズが入っているぢゃんと思わせる局面も後にはあった。

 本編で演奏したのは、5曲。おもしろいことに、そのスコットのソロが冒頭に入ったオープナーに続き、2曲目はサンダース、3曲目はウェンデル、4曲目はモレーノ、5曲目はアイグスティといった具合に、各メンバーのソロが曲のアタマに配される。ならせば1曲は10分強の尺を持つものの、各人がその中でソロをたっぷりと披露したという印象が薄いのは、十二分にグループ表現のあり方が練られていた証左でもあったろう。起承転結に富む各曲はたっぷり構成が練られ、テーマ〜ソロ回し〜テーマという単純な図式に当てはまるものではなかったから。

 途中にもう1つ、スコットはドラム・ソロを披露したが、それはなんと相次ぐ米国の警官によるアフリカン・アメリカンへの殺傷問題を前置きに言ってのもので、ドラム演奏は、その溝の深い軋轢を示唆するプリセット音を流しながらのものだった。わあ。

 そして、アンコール曲はキング牧師の名セリフを曲名に冠したハービー・ハンコックがマイルズ・デイヴィス・クインテット時代に書いた「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」。これ、もともとスコット・オラクルの2013年作『コンヴィクション』(コンコード)で取り上げていた曲だが、スコットはちゃんとマーティン・ルーサー・キングJr.の名前を出してから、毅然とこの曲を演奏した。

▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/
▶過去の、ブライアン・ブレイド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200809071429250000/
http://43142.diarynote.jp/200908061810483865/
http://43142.diarynote.jp/201105140859559227/
http://43142.diarynote.jp/201201171011033219/
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140212
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201505281537538677/
http://43142.diarynote.jp/201605240831421865/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160803
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/
▶過去の、ベン・ウェンデル
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150416
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶過去の、マイク・モレーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20081122
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶︎過去の、ジョー・サンダース
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
▶︎過去の、ザ・ブラザース・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/

<今日の、所感>
 過去スコットには来日時に2度インタヴューをしていて、とても思慮深い音楽家であることは認知していたつもりであったが、この晩にやったドラム・ソロとアンコール曲にはびっくり。とともに、先週のジェラルド・クレイトンの発言(http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/ 参照)も思い出したりして、考えることができるアフリカン・アメリカンはドナルド・トランプ大統領時代となって、大きな焦燥を覚えつつ、希望を捨てないようにしているのだなと思うことしきり。そういえば、大統領選挙の結果を受けてゴードン・チェンバース(2016年11月14日)は、すんごくリベラル&ヒューマンな曲を日本公演で披露したっけ。なんか、鼓舞されました。
▶︎過去の、ゴードン・チェンバース
http://43142.diarynote.jp/201611151250035493/

ビラル

2017年1月24日 音楽
 以下の抜粋は、ビラルが初来日した2001年サマーソニック初日(2001年8月18日)における<ライヴ三昧>のもの。ニュー・スクール大学時代の友達だったアルバム・デビュー前のロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日)の初来日もこのときだったわけですね。


 
 初日のお目当ては、ビラル。他の好きなアーティストはすでに単独で見ちゃっているから。あ、ラッセル・シミンズのステージは昨年出たアルバムがとっても好きだったので見たかったが、早出するのがイヤで最初から諦めた。
 ともあれ、ビラルは今年デビューした黒人アーティストのなかでは一番いいゾと思わせる存在。歌と曲と伴奏のバランスがよろしい。ソウル・クエリアンズ一派とも言えるだろう、彼のステージは10人ものバンド/コーラスを引き連れてのもの。その髪形一つをとっても、普通の黒人からは離れていると思わせるもんだナと再確認。アルバムで感じさせるほどの粘着感覚と隣り合わせのヘンてこさを味わえたわけではないが、満足。後半ジミ・ヘンドリックス曲のカヴァーをやる。



 そしたら、今回のビラルはもっと捉えどころがなく、十分に変だった。ま、それは彼の『In Another Life』(eOne,2015)で繰り広げられているものであるが、なんか実演の方が不整合な感じがあって、やはり変わっているなあと思わされた。そして、それが変だけに終わらずいいなと頷いてしまうのは、そこに米国黒人音楽の積み重ねの才気ある応用、アフリカン・アメリカン音楽家としての生理的に澄んだ闘争の様が見えるからだと思う。

 おでこの広いビラルは髪型もあり、なんか少しごっついモウリス・ホワイトという外見を持つか。彼は地声とファルセットを駆使するが、比率はファルセットの方が高い。ちょい、マーヴィン・ゲイの影を感じるときもあり。

 そんな彼に加え、サイド・ヴォーカルのマイカー・ロビンソン、キーボードのデヴォン・ディクソンJr.、ギターのランディ・ラニオン(2016年11月20日)、ベースのコンリー“ドーン”ウィットフィールド、ドラムのジョー・ブラックスという面々がサポート。うち、ベーシストのウィットフィールドはプロデューシングやエンジニアリングにも長ける御仁で、ビラル作やキンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル作ではそちらの方でもクレジットされている。そのバンドは部分的には、プリセット音も併用。のらりくらりとした捉えどころのない曲(伸縮性にも長けていたのだと思う)を譜面なしでちゃんと演奏、何気に面々が腕が立つのは分かるし、今のワーキング・バンドなのだろう。

 やっていることは別に新しいものではないが、先に触れたように、妙に聞き手に訴求する部分を持つ。新作『In Another Life』は肉声でケンドリック・ラマーが入ると共に、プロデュースや各種楽器でエイドリアン・ヤング(2016年3月21日)が関与していたが、その捉えどころのなさは、彼の昨年の来日公演に近い。それから、ソウルクエリアンズ制作でビラルやプリンス(2002年11月19日)も参加したコモン(2004年6月11日、2005年9月15日、2015年9月23日)の『Electric Circus』(MCA,2002年)の取り止めのなさも思い出させる。あ、あとは聞いていて、どこかロックぽさも持つそれは、はるか昔のウェストバウンド時代のファンカデリックをもっとメロウにした手触りもあると思えたか。なんか『ヘアー』(2013年5月29日)や『ジーザズ・クライスト・スーパー・スター』などのロック・ミュージカル調にも聞こえる部分はあったかも。それは、ビラルにどこかシアトリカルな部分を感じたからか。

 楽曲はけっこう切れ目なしに届けられ、アンコールなしで80分はやった。最後の曲はキーボードやギターにもソロのパートを回し、すると彼らはジャズの造詣も持つ奏者であることが分かる。鍵盤ソロの中盤までは、セロニアス・モンクの癖をデフォルメしたみたいなことをやっていて笑った。それに続き、ビラルとマイカー・ロビンソンはスキャットの掛け合いを聞かせる。その際、リズムが4ビートぽくなって、ドラマーのジョー・ブラックスはスティックの握りをそれまでのマッチドからレギュラー・グリップに変えた。

 とかなんとか、視点と含蓄あり。それが、なんか正体不明な個の鮮やかな主張となっていた。六本木・ビルボードライブ、ファースト・ショウ。

▶︎過去の、ビラル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm サマーソニック
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶過去の、ランディ・ルニオン
http://43142.diarynote.jp/?day=20161120
▶︎過去の、エイドリアン・ヤング
http://43142.diarynote.jp/201603230835051084/
▶︎過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶過去の、コモン
http://43142.diarynote.jp/200406130120280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509241127563839/
▶︎過去の、ミュージカル「ヘアー」
http://43142.diarynote.jp/201305300943356937/

<今日の、会合>
 ライヴを見た後、かつてレコード会社にいた方のお別れの会に行く。彼のお姉さんは著名なスター音楽編集者だった。ブルース・ギタリストでもあったので、彼流れの大御所もいろいろ演奏。そのあと、彼も行っていたバーに流れ、思いを重ねる。とってもお酒が好きで、けっこう年齢は離れていたけど、普段からちゃんづけか呼び捨てをぼくの周りではしており、それでニコニコしていた気安い人だったなあ。

 豪華と言うか、逸材ずらり。ノルウェーのジャズに注目している人なら、これはこたえられない顔ぶれのカルテットだろう。実際、客はきっちりはいっていた。新宿・ピットイン。

 リーダーは、マヌ・カッチェ(2011年1月28日、2012年1月13日、2016年4月13日)のバンドに入っていたこともあり、一般的にはECMから数枚のアルバムを出しているマスカレロでその存在を知られることになった、テナー・サックス奏者のトーレ・ブルンボルグ(1960年生まれ。2011年1月28日、2011年9月3日、2012年1月13日)。“スロウ・スノウ”というのは、彼が今回の来日メンバーとまったく同じ顔ぶれで録った『スロウ・スノウ』(アクト、2015年)から来ている。

 同行者は、ギターのアイヴィン・オールセット(1961年生まれ。2001年9月28日、2003年6月28日、2008年11月13日、2010年9月5日)、コントラバスのスタイナー・ラクネス(1975年生まれ。2003年11月17日、2004年11月16日、2016年10月22日)。ドラムのペール・オッドヴァール・ ヨハンセン(1968年生まれ。2013年9月8日)という面々。

 オープナーとアンコール曲で、ブルンボルグはピアノも弾く。まあ、コードを軽く押さえる感じのものだが、広がりは出る。オールセットはPCやエフェクターなどをきっちり組み込んだキットをドカンと置いていて、いろんな音を出す。リズム隊は着実に(?)アコースティックだと思っていたら、ラクネスはアルコ弾きの際にエフェクターを用いてシンセサイザーみたいな音を出していた。そしてブルンボルグのテナー演奏は悠然。本人も影響を受けたと言っているが、やはりヤン・ガルバレク(2002年2月13日、2004年2月25日)を感じさせるところはある。

 曲はどれもブルンボルグのオリジナル曲であったはずだが、基本は北を想起させもするゆったりしたメロディをひたひたとなぞっていく(アルバムも基本そういう感じ)ような演奏が繰り広げられる。米国ジャズへの愛着や知識を、見事にノルウェー人ならではの表現としてきっちりも押し出していた。

▶過去の、マヌ・カチェ
http://43142.diarynote.jp/201102081259129769/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160413
▶︎過去の、トゥーレ・ブルンボルグ
http://43142.diarynote.jp/201102081259129769/
http://43142.diarynote.jp/201109121452527893/ トルド・グスタフセン・アンサンブル
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
▶︎過去の、アイヴィン・オールセット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm 2001年9月28日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm 2003年6月28日
http://43142.diarynote.jp/200811141532429331/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
▶︎過去の、スタイナー・ラクネス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm アーバン・コネクション
http://43142.diarynote.jp/200411170828460000/ アーヴァン・コネクション
http://43142.diarynote.jp/?day=20161022 アルヴァス
http://43142.diarynote.jp/?day=20130908 ヘルゲ・リエン・トリオ
▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/

<今日の、リーダー>
 ライヴの前に、ブルンボルグにインタヴューをする。録音メンバーと同じメンバーでよくぞ来日できた、よくもまあスケジュールがあったなとのこと。落ち着いたオトナで、マスカレロは転機となったバンドとか。ジャズランド主宰のブッゲ・ベッセルトフト(2001年5月27日、2002年5月8日、2008年9月21日、2010年1月24日、2012年4月29日、2016年10月4日)とは自らのリーダー作でピアノを弾いてもらうなど、昔から親しい。ベッセルトフトが昨年女性バンドを率いて来日したことを伝えると、あのドラマーは娘なんだよと彼は言う。わあ。後から調べたら、ファミリ−・ネームが全然違うけど(結婚しているのかな?)、近い人間が言うのだから間違いないよな。彼女は、確か金髪の綺麗な人だった。昨年、韓国のジャズ・フェスティヴァルにベッセルトフト・バンドと彼が入ったカチェ・バンドが1日違いで出演したこともあったそう。それから、彼は意外なところでマイケル・ブレッカー(2000年3月2日、2004年2月13日)も好きなんだそうだが、その好みの片鱗が珍しくわりと激し目にブロウする曲の際に、現れていた。ま、世代的にはやはり一度はハマるか。
▶︎過去の、ブッゲ・ベッセルトフト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200809231132339668/
http://43142.diarynote.jp/201001251710004302/
http://43142.diarynote.jp/201205080620235237/
http://43142.diarynote.jp/201610110957506440/
▶過去の、マイケル・ブレッカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/
 友人の下町兄弟(2005年12月8日、2006年12月21日、2014年10月9日、2015年12月15日)が音楽を共同担当する演劇を見に行く。小池博史(2005年12月8日、2006年12月21日、2014年10月9日、2015年12月15日)の作/演出、彼の新しいシリーズの第一弾となるもの。吉祥寺・吉祥寺シアター。

 7人(うち、女性2人)のパフォーマーによる出し物。どんどん言葉や事象の連想が連ねられ、TVチャンネルをどんどんザッピングしていくように、劇の流れは飛んでいく。そこに、舞台美術や役者が身につける小物、そして踊りや動きが、饒舌に様々な形で干渉し、ある種の動的でエクレクティックなモードが浮き上がる。そして、それこそが小池色なのだろう。

 見ていて、どういう台本があるのかと、気になってしょうがない。だって、言葉以上に演者の動きが主体となるこの出し物は文字に置き換えることは不可能であるだろうから。とにかく、途方もなくリハを重ね、紆余曲折の末に、こういうスペクタルな物が出来上がるんだろうなあと想像する。そして、完成したものを覚えるのも、また大変だろうなあ。

 そして、そのプロットの構成や変化の骨組みとなるのが、音楽だ。実際、音楽の方を先に作ったとも聞く。それは、打楽器やドラムやラップの下町兄弟、笛やアルト・サックスや電気ギターの太田豊、口琴や肉声の徳久ウィリアムス、ステージ両側に位置する3人が、リアルタイムで担当。ときに、PC音も用いる場合もあるが、3人がいろいろな形で重なり、伴奏音は送り出される。ストップ・ウォッチを見ながらの演奏のようだが、3人ともスキルも感性も豊か、ちゃんとしている。太田は普段は能の音楽家だそう。また、一番年配の出演者だろう清水寛二は能楽師であるという。

▶過去の、小池博史
http://43142.diarynote.jp/?day=20051208
http://43142.diarynote.jp/200612270253390000/
http://43142.diarynote.jp/201410160819402945/
http://43142.diarynote.jp/?day=20151215
▶過去の、下町兄弟
http://43142.diarynote.jp/?day=20051208
http://43142.diarynote.jp/200612270253390000/
http://43142.diarynote.jp/201410160819402945/
http://43142.diarynote.jp/?day=20151215
▶︎過去の、清水寛二
http://43142.diarynote.jp/201410160819402945/
http://43142.diarynote.jp/?day=20151215

<今日の昼間は、ポカポカ>
 筋に関しては、能書きはあるようだが、よく分からない。小池による短い口上的文章を見ても、ぼくには意味不明だ。だが、発想の飛躍、その具現の仕方を感じ取り、楽しめばいいのダ。そんなことは、当事者たちだけが分かっていればよろしい。しかし、完成されたことを、その場の機微とともに見事に表現する出演者たちの様を見ながら偉いなあと思いつつ、この季節、誰かがインフルエンザで倒れたらどうするのだろうと、余計な心配をふとする。新年明けて割と陽光注ぐ日が続いていると思うが、夜は昨年より寒さを感じる日が続いていた。だが、ここ数日はわりと楽。今日は日中20度を超え、4月をだいぶ回ってからの気温とか。その流れで、少し軽めのコートを着て出かけたら、夜は寒い〜。