76歳と高齢ながら、現在もトップ・リード奏者であり続けているロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日)の新バンドの実演を、南青山・ブルーノートで見る。セカンド・ショウ。

 1時間50分ものパフォーマンスを繰り広げた。ぼくがここで見たここのライヴにおいてもトップ級に時間が長いものであったか。過去の彼のショウも過剰に演奏時間は長くなかった(はず)。最後の方でファースト・ショウはジェット・ラグでいまいちだった……とか言っていたが、あんたすごかったじゃない。どこか、その後味が良くなかったので、セカンドはがんばちゃった?

 本人はテナー・サックスを構え、曲によってはアルト・フルートを吹く。彼に加え、ギターのビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日)、ベースのルーベン・ロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日)、ドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日)という、新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』(ブルーノート、2016年)参加者の布陣でことに当たる。1曲はどれも20分を超えていたか。

 御大は、とても機嫌が良さそう。もとい、楽しそう。特にフリゼールの演奏にはイエイという感じで、掛け声を横からかけたりもしていたな。ルーベン・ロジャースがすべてエレクトリック・ベース(4弦のフレッテッドであったはず)を弾いていたのには驚く。でも、違和感はなし。
 
 とにもかくにも、悠然。その佇まいにも、滅茶しびれる。ものすごい圧倒的にして崇高なジャズ・マン像を仁王立させる一方で、ヒッピー・ムーヴメント/ニュー・エイジ思想にかぶれた1970年前後のロック・ミュージシャンとのいろいろな交友をおおらかに肯定しているところも透けさせていて、ぼくはなんかグっと来た。

 ビル・フリゼールらを配し、黒人霊歌やディラン曲などを取り上げた『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』はロイドのアメリカーナ作品という言い方で説明もできるが、その長尺開陳と言える実演は、マイク・ラヴ(2014年3月28日)やカール・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)、ロジャー・マッギン(ザ・バーズ。彼は歌ではなく12弦ギターでの参加)らが入った『Waves』(A&M,1972年)のとぎすまされた今様版とも言える聞き味を絶対に持っていた。あのアルバムにはトッド・ラングレン(2001年11月9日、2002年9月19日、2002年9月28日、2008年4月7日、2010年10月10日)の「アイ・ソウ・ザ・ライト」の出だしを繰りかえしているみたいな曲も入っていた(両曲、発表は同時期となるのかな?)。聞き応えある演奏を繰り広げたフリゼールも、そこでのガボール・サボの演奏を蘇らせている部分が間違いなくあったものなあ。それゆえ、新作でいかにも今っぽい飛躍を加えていたスティール・ギター奏者のグレッグ・リーズが来日メンバーには入っていなかったのはとても残念。本国のライヴには入っていたりもする。そういえば、ヴォーカル曲も入っていた『Waves』の行き方をなぞるかのように『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』にはウィリー・ネルソンやノラ・ジョーンズ(2002年5月30日、2002年9月14日、2007年3月21日、2010年1月20日)が歌う曲もあったが、この春の米国のロイドたちのライヴにはルシンダ・ウィリアムスが入る日もある!

 脱帽。とんでもない、ジャズ・ジャイアンツであることを皮膚感覚で存分に感じさせる存在は、しなやかに呼吸し、なんとも味と飛躍のあるリヴィング・ミュージックをこれでもかと送り出してくれた。こんな僥倖ってあるかい!

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
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▶︎過去の、マイク・ラヴ/ザ・ビーチ・ボーイズ 
http://43142.diarynote.jp/201403291149242320/
▶過去の、トッド・ラングレン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200804081929500000/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
▶過去の、ノラ・ジョーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm 5.30
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 2.09
http://43142.diarynote.jp/200703241326090000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
http://43142.diarynote.jp/201211151032395193/

<今日の、感慨>
 ロイドという音楽家がいてよかった! ジャズという表現があってよかった! と、心底思わせられた。会場にはいつも以上に、ミュージシャンが散見されました。本文中には触れていないが、ずっとロイドが重用している、どこかパサパサした手触りを持つエリック・ハーランドの演奏ももちろん良かった。ハーランドとロバート・グラスパーはヒューストンの芸術高校の同級生。それほど二人の相性は重なるわけではないが、グラスパーの2007年初リーダー公演の際にダミアン・リードが急遽来れなくなって、ハーランドが同トリオに加わるために遅れて来日したことがあった(http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/)。ハーランド〜ケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日)〜ジャマイア・ウィリアムス(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)と続く、同高校卒の新世代ジャズ・ドラマーの長男と言えそうなハーランドは、3月中旬に自己バンドでコットンクラブに出演する。また、ケンドリック・スコットもこの18日から始まるザ・クレイトン・ブラザースのブルーノート東京公演に同行するとともに、23日からは自己バンド公演をコットンクラブで持つ。ピアニストのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日)はその両方のギグに出演しますね。アイグスティとデュオ・ライヴを持ったこともある心に嵐と諧謔を持つ清新ギタリストであるジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日)の自己トリオ公演は、やはりコットンクラブでこの31日からだ。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶︎過去の、ダミアン・リード
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/