自己グループ=オラクルでの活動の傍ら、サイド・マンとしてもいろいろ来日もするケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日、2016年3月1日、2017年1月18日)については、先日飲んでいるときに、もしかして家庭がうまくいってなくて、家にいたくなくていろんなツアーに参加しちゃうんじゃないかという話が出た。余計なお世話ですね。でも、ブライアン・ブレイド(2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2008年9月4日、2009年7月20日、2011年5月12日、2012年1月16日、2012年3月15日 、2012年5月22日、2014年2月12日、2014年4月14日、2015年5月27日、2016年5月18日)も次の来日は貞夫さんサポートのようだし、本当に活動が活発。彼らって音楽のムシなんだろうけど、曲の構成や流れを覚えれば最低限はOKとなるドラマーは他流活動がしやすいとは言える?

 それにしても、ケンドリック・スコットの今回の実演は、前向きに静かに怒っておったなあ。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 ドラム/リーダーの当人に加え、テナー・サックスのベン・ウェンデル(2013年8月22日、2015年4月16日)、ピアノのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日、2016年2月3日)、ギターのマイク・モレーノ(2008年11月22日、2013年9月11日、2015年11月10日、2016年2月3日)、ベースのジョー・サンダース(2013年9月11日)という面々による。ジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日)と高校時代の同級生であるサンダースは現在パリに住んでいる。

 先週叩いたザ・クレイトン・ブラザース(2017年1月18日)のときのドラム・セットとは異なるものを、スコットは用いる。大きなスネアみたいなのをフロアに配置しツイン・ベース・ドラムのようなキットで、シンバルもでかい。で、当然のことながら、叩き方/叩き味も、過去のオラクル公演と比しても変わった。おお、動いている。それが顕著に表れたのは1曲目のアタマでやったドラム・ソロ。PCを横に起き、イアフォン式のモニターを使っているナと思ったら、なんとドラム演奏と同期してうっすら電気音も出るという設定で彼は叩く。ぼくはそんなスコット演奏に初めて触れた。また、前よりももっと饒舌になっていて、エルヴィン・ジョーンズが入っているぢゃんと思わせる局面も後にはあった。

 本編で演奏したのは、5曲。おもしろいことに、そのスコットのソロが冒頭に入ったオープナーに続き、2曲目はサンダース、3曲目はウェンデル、4曲目はモレーノ、5曲目はアイグスティといった具合に、各メンバーのソロが曲のアタマに配される。ならせば1曲は10分強の尺を持つものの、各人がその中でソロをたっぷりと披露したという印象が薄いのは、十二分にグループ表現のあり方が練られていた証左でもあったろう。起承転結に富む各曲はたっぷり構成が練られ、テーマ〜ソロ回し〜テーマという単純な図式に当てはまるものではなかったから。

 途中にもう1つ、スコットはドラム・ソロを披露したが、それはなんと相次ぐ米国の警官によるアフリカン・アメリカンへの殺傷問題を前置きに言ってのもので、ドラム演奏は、その溝の深い軋轢を示唆するプリセット音を流しながらのものだった。わあ。

 そして、アンコール曲はキング牧師の名セリフを曲名に冠したハービー・ハンコックがマイルズ・デイヴィス・クインテット時代に書いた「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」。これ、もともとスコット・オラクルの2013年作『コンヴィクション』(コンコード)で取り上げていた曲だが、スコットはちゃんとマーティン・ルーサー・キングJr.の名前を出してから、毅然とこの曲を演奏した。

▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20160301
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/
▶過去の、ブライアン・ブレイド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200809071429250000/
http://43142.diarynote.jp/200908061810483865/
http://43142.diarynote.jp/201105140859559227/
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http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20160803
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/
▶過去の、ベン・ウェンデル
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150416
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶過去の、マイク・モレーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20081122
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶︎過去の、ジョー・サンダース
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
▶︎過去の、ザ・ブラザース・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/

<今日の、所感>
 過去スコットには来日時に2度インタヴューをしていて、とても思慮深い音楽家であることは認知していたつもりであったが、この晩にやったドラム・ソロとアンコール曲にはびっくり。とともに、先週のジェラルド・クレイトンの発言(http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/ 参照)も思い出したりして、考えることができるアフリカン・アメリカンはドナルド・トランプ大統領時代となって、大きな焦燥を覚えつつ、希望を捨てないようにしているのだなと思うことしきり。そういえば、大統領選挙の結果を受けてゴードン・チェンバース(2016年11月14日)は、すんごくリベラル&ヒューマンな曲を日本公演で披露したっけ。なんか、鼓舞されました。
▶︎過去の、ゴードン・チェンバース
http://43142.diarynote.jp/201611151250035493/