いやあ、世界は広いし、文化の差異って本当に素敵、というか面白い。スアール・アグンに接した人は誰もがそう思ったのはないか。都立大学・めぐろパーシモンホール。

 スアール・アグン(2002年8月24日)はバリ島のジェゴグ・アンサンブルのグループで、竹製の大きな鍵盤打楽器が広いステージ上にずらり。それだけで、壮観。イヴェンターのカンバセーション社があったときは毎年のように彼らの来日公演をしていて、楽器がずっと日本に置かれていて、当初はそれを用いる予定であったという。だが、経年劣化のため使えないことがわかり、一式をインドネシアから船便で送り、最初の公演が持たれたいわきで数日かけてそれらは組み立てられたそう。

 演奏者たちと何人かの舞踏者、合わせて20人強。ダンサーが出ない演奏だけの曲の方が多いが、竹楽器群の響きの重なりがすごい。とともに、プリミティヴな楽器構造上出せる音階は少なく、それゆえのメロディ〜反復感覚もまた独自の手触りとともに、聞く者の身体の奥底にある何かを刺激する。会場に竹の音が満ち、大げさに言えば、会場全体が巨大な音響装置として化す……。そこらへん、適切に説明するのが難しいが、バリ島〜ガムランすげえと、子供のようにうなってしまう。とともに、視覚的な効果もあって、冒頭に書いた感興を得てしまうのだ。リーダーのおじさんの奥さんは日本人とかで、割と流暢な日本語でコミュニケーションをするが。

 メロディの発展が限られた現況、倍音や響きやスケールの取り方がこれからもモダン・ミュージックの鍵になる……。とともに、エレクトロ/機械経由の表現がリードする今、もう一度、生音/生楽器が新鮮さを導く手段となりえてもおかしくないのではないか。

▶︎過去の、スアール・アグン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm

<今日の、マント・ショウ>
 竹のオーケストラの表現に接していると、宗教と結びついた音楽であるということも思わずにはいられない。音楽的行為を介して神に近づくという側面もそこにはあるだろう。だって、ある意味トランス・ミュージックでもあり、最後の方に入神状態となり倒れた奏者がいたから。で、その失神者をスタッフたちがステージ袖に動かす。その様は、なんかジェイムズ・ブラウンのマント・ショウの如し。いかにもの、エンターテインメント性も持つ。ショウの最後に坊さんのような人からお清めを受けるという図も、同様。だが、ツアーを一緒に回っていた人によると、もっと多くの人数が倒れる公演もあったし、横で見ていると目元が怪しくなり、これは倒れると分かるのだそう。聖なるものと笑いの感覚が繋がる、ふむそれもいいではないか。

 ノルウェーの電気効果経由の今様ジャズの実力者であるブッゲ・ベッセルトフト(2001年5月27日、2002年5月8日、2008年9月21日、2010年1月24日、2012年4月29日)の公演を、南青山・ブルーノート東京で見る。

 <“ニュー・コンセプション・オブ・ジャズ” 2016>という名目を、今回の来日公演は持つ。“ニュー・コンセプション・オブ・ジャズ”というのは彼が1996年にリリースしたアルバムの表題であり、リアル・ジャズ要素とエレクロニクスやダンス・ビート、を交錯させる彼の指向は“ニュー・コンセプション・オブ・ジャズ”というキャッチのもと一世を風靡。彼が主宰するジャズランド・レーベルはユニヴァーサルがインターナショナルに配給をした。

 ステージに登場したミュージシャンは5人。キーボード、ピアノ、PCを担当するベッセルトフト以外は全員女性。テナー・サックス、ギター、タブラ、ドラムという布陣で、彼女たちは皆20代。タブラ奏者はインドの血が入っているか。そのサンシュリィティ・シュレッサはタブラを叩きながら口タブラを披露する場面も。また、ドラマーのシヴ・ウン・ジェンスタが歌う曲もあった。

 基本、プリセット音も併用しつつ、楽器音を重ね合う。女性陣は力量やイマジネーションが追いついていない部分もあったが、汚いオトコでないのというのはステージ上ではやはり武器。“普通の設定や見てくれではない”というのは、見る方にしてもやる方にしても新鮮な所感を導き、けっこう意味のあるポイントだと思う。ベッセルトフトは淡いピアノ・ソロを披露する場合もあり。ビートもので繰り出す彼の鍵盤演奏は瞬発力を持つとともにキャッチー。それは昔からで、ハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日)調な指使いを鷲掴みにしてグワっと出す傾向がある。

▶︎過去の、ブッゲ・ベッセルトフト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200809231132339668/
http://43142.diarynote.jp/201001251710004302/
http://43142.diarynote.jp/201205080620235237/
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京で、リッキー・リー・ジョーンズ(2004年3月26日、2005年12月31日、2010年5月23日、2012年9月27日、2013年8月7日)公演を見る。前回の来日公演はチェロ奏者とのデュオだったが、今回は一時ジャム・バンドとして名を鳴らしたクリターズ・バギン(2004年6月13日、2000年7月19日)の怪人的と言いたくなる打楽器奏者でもあったマイク・ディロンとのデュオだ。

 もう気まま、手癖100パーセントのパフォーマンス。荒すぎ、ワタクシ度溢れすぎという見方もできるかもしれないが、米国シンガー・ソングライター100人という選に間違いなく入るだろう逸材の持ち味は、無防備に出される。アコースティック・ギター弾き語りだけでなく、例により中盤以降にはピアノを弾きながら歌う場面もあり。彼女は昨年3年ぶりとなるアルバム『The Other Side of Desire』(好盤。ニューオーリンズ録音で、ジョン・クリアリー〜2007年4月6日、2008年10月15日、2009年9月5日、2013年5月20日、2013年10月14日、2014年10月25日〜も参加)を自主リリースしたが、そこからの曲はやったかな? 過去曲主体の選曲だった。

 ヴァイブラフォン、簡素なドラム・キット、グロッケンシュピール(よりも、小さいものだったか)などを扱うディロンは軽い伴奏という感じのサポート。右手はシンバルやスネアを叩き、左手はヴァイブラフォンを叩くという曲もあった。彼は『The Other Side of Desire』に入っていない。

▶過去の、リッキー・リー・ジョーンズ
http://43142.diarynote.jp/200403261054430000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20051231
http://43142.diarynote.jp/201006031536173725/
http://43142.diarynote.jp/201210021332368431/
http://43142.diarynote.jp/201308110827534904/
▶︎過去の、クリッタ−ズ・バギン/マイク・ディロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200406140713270000/
▶︎過去の、ジョン・クリアリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20070406
http://43142.diarynote.jp/200810170628196746/
http://43142.diarynote.jp/200909120648439512/
http://43142.diarynote.jp/201305260926059486/
http://43142.diarynote.jp/201310150811404538/
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/

<今日の、電気>
 泉邦宏(2006年7月3日、2011年7月10日、2012年4月21日)の新作『solo live IN TUBO』(KITAKARA K-27)が届く。今年2作目となるアルバム(前作は、http://43142.diarynote.jp/?day=20160404 参照)で、今年8月27日のソロ・ライヴの実況盤だ。内ジャケ˜に<おれの音楽にエレクトロニクスがやっと融合した夜であった。>と記しているが、なるほどもともと電波な泉が電気でもあるパフォーマンスを収めた一作と言えるか。ベッセルトフトのようにプリセット音は使用せず、その場の人間力で賄う1作。一部、口タブラみたいなのも出てくるな。
▶過去の、泉邦宏
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/201107111327576732/
http://43142.diarynote.jp/201204221307297965/

 ノルウェーのポスト・ジャズの担い手(純ジャズではないので、ここではそう書いてしまおうか)3組を見る。どれも、北欧を中心に欧州アーティストをいろいろ招いているOffice Ohsawaが呼んだアーティストだ。広尾・ノルウェー王国大使館のオーロラホール。

 トップに出てきたヴィルデ & インガはヴァイオリンとコントラバスの、女性デュオ。クラシック出身であるのは明らかな二人は共に小柄で、まだ20代か。とはいえ、彼女たちはECMから2014年に『Makrofauna』といアルバムをリリースしている事を知れば、がぜん興味はひかれるか。メガネっ娘でもあるお二人はかなりアブストラクトな協調即興演奏を披露。共に弓弾き演奏を多用し、紋様を描いていく。ヴァイオリン奏者は一部で小鳥のさえずりを模したような音を出し続けた。小鳥のさえずりを楽器音で出すというとすぐにシャソール(2015年5月30日、2016年8月29日)のことを思い浮かべるが、楽器と個人の感覚によって現れる音はだいぶ違うなあ。
▶︎過去の、シャソール
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/
http://43142.diarynote.jp/201609200921301045/

 2番目に出てきた、端正な顔つきのホーコン・コルンスタはアコーディオン奏者とコントラバス奏者を従えてパフォーマンスをする。おお、テナー・サックスを悠々と吹く彼は、ブッゲ・ベッセルトフト(2001年5月27日、2002年5月8日、2008年9月21日、2010年1月24日、2012年4月29日、2016年10月4日)のジャズランド・レーベルの所属アーティストの中でぼくが一番好きだったウィブティー(2002年5月8日)のメンバーではないか。ウィブティー解散後もジャズランドからリーダー作を出している彼だが、そのキャリアの大きな要点は2009年NY滞在中にオペラに触れて方向修正、ノルウェー・オペラ音楽院で学び直して修士学位も取り、オペラ歌手としての活動も始めたこと。当然それは彼のジャズ活動にも跳ね返らないわけがなく、『Symphonies in My Head』(Jazzland、2011年)、『Tenor Battle』(Jazzland、2011年)はジャズと彼のオペラ歌唱が同居する内容となっている。
 
 また、ECMから15作ほどアルバムを出しているノルウェー人のピアニストであるケティル・ビヨルンスタ(彼は作家としても活動している)の『A Passion for John Donne』(ECM、2014年)にもコルンスタのテナーやフルートや歌がフィーチャーされている。そして、ここでも生真面目に涼しい顔をして、いい音のテナーを吹き、朗々とテノール歌唱をする表現を開示。うわあ、変な人……、でもそういうことを否定するの音楽の面白さやその可能性の扉をいくつも閉ざしてしまうことになるは間違いなく、なんかコックリしながらぼくは聞き入った。

▶︎過去の、ブッゲ・ベッセルトフト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200809231132339668/
http://43142.diarynote.jp/201001251710004302/
http://43142.diarynote.jp/201205080620235237/
http://43142.diarynote.jp/201610110957506440/
▶︎過去の、ウィブティー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm

 三つ目に出てきたのは、アコースティック・ギターのクリスチャン・スコール・ヴィンター、エレクトリック・ベースのマグヌス・スカーヴハウグ・ネルガール、ドラムのヤン・マーティン・ギスメルヴィークからなる3人組のモンキー・プロット。
 
 そして、彼らが淡々と演奏し始めると、すぐにぼくの耳は惹きつけられる。おう、もろなシカゴの担い手流れのポスト・ロック表現を聞かせるではないか。トータス(2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日、2014年5月7日)とかいくつかの在シカゴのグループ群(1999年6月6日、2000年3月25日、2000年10月15日、2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日)の実演以上に、ぼくの耳には示唆に満ちた演奏であるように思えた。電気ギター的な音を出したりもするがギターはすべて生ギター演奏で通し、ドラムもベース、ハイハット、スネア、タム、シンバルが一つづつという超シンプルなキットを叩いていたにもかかわらず(それは、会場の都合によるものだろう)、3人が絶妙に重なり流れていく映像的なサウンドはほぼ完璧。すばらしい。

 実演後話したら、事実、彼らはポスト・ロック志向であり、シカゴの表現も好きであるとのこと。彼らは2年前にも日本に来ているそうで、それは知らなかった。曲は3人で共作し、ギタリストは変則チューニングを用いているそう。

▶過去の、トータス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/
▶過去の、シカゴのあの周辺の人たち
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm  パパM、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm シー・アンド・ケイク
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/201204091014019131/ シー・アンド・ケイク

 その後、六本木のビルボード東京に回り、ロンドンをベースとする若手英国人トリオである、プレストン・グラスゴウ・ロウを見る。彼らのツイッター頁にはロニー・スコッツ出演時の写真が掲げられている。

 ギターのデイヴィッド・プレストン、6弦ベースのケヴィン・グラスゴウ、ドラムのロウリー・ロウが一体になって繰り広げる演奏は往年の真摯系フュージョンそのもの。わわ、こんな音楽が今の英国で需要があるのかと訝しがってしまうが、面々はコレがやりたいと生真面目に邁進しているのはすぐに分かる。各人は腕は立つが一般的には無名、普段は何をしているのかとも思わずにいられないが、知人の見解は学校とかで教えているんじゃないか。なるほど、それはありえる。

 そこにある透明感やひんやりした触感はUKジャズ・ロックの流れもやんわり感じさせ、1980年代のLAの腕利き奏者と絡んでいたアラン・ホールワース表現とかを思い出させるところもあるか。曲調はどこか幾何学的とも言えそう。

<今日の、CD>
 昨日新譜を紹介した泉邦宏は藤井郷子の東京オーケストラのメンバーでもあるが(今もそうだような?)、藤井(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日)の新作CDも手元にある。今年の4月28日に水戸のCORTEZというハコで録られた『Invisible Hand』というピアノ・ソロの2枚組。細心の心配りや冒険心の元、彼女は思うまま指を踊らせ、ある種のジャズ・ピアノ様式や美学がくっきりと浮かび上がっている。発売元は、Cortez Sound。ライヴを持ったお店が主宰する第一弾であるという。素晴らしいな。地方のお店や聞き手の情熱と趣味の良さが作る、音楽に対するリスペクトがにじみ出る作品。これを聞いていると、こうした地方の真摯な力が今の音楽を伸張させる一助になると思わずにはいられない。とともに、水戸の茨城近代美術館は尖った出し物で知られる(金沢の20世紀美術館が開館した際は、水戸から人材が流れたなんて話も聞いた)が、水戸はアートを育てる気運があるとのではないかなどと妄想も広がる。
 関係ないけど、水戸市出身の敏腕ドラマーである山本淳平(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日、2016年3月14日)が組んでいるロック・バンドのLOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTSの初のフル・アルバム『CREOLES』(Sonic)が11月5日に発売になる。音楽的野心と歌心が高次元で綱引きする様には惚れ惚れ。なかには、生ロック・バンド回路のコーネリアスといった感じの曲もあるし、XTCのファンにも聞いてほしいな。この土曜にライヴがあるが、週末は東京にいないので見ることができない。きっと、いいだろうなあ。
▶過去の、山本淳平/nouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
 最初に渋谷・wwwに行って、ハモニカクリームズという、ハーモニカ、フィドル、生ギターからなる、3人組を見る。本人たち曰く、“ケルト・ブルース・バンド”。それは中心人物がハーモニカ奏者(=一応、ブルースのイメージもある楽器です)である事とも関係あるんだろうが、ぼくはパっと聞いてあまりブルージィさは感じない。でも一方、ケルト〜アイリッシュ・ミュージック的な曲想はけっこう経由していて、それらが持つ反復回路が導く扇情性をうまく介しドラマティックなインストゥメンタルを作っていると思った。そんな彼らは欧州にも進出していて、リーダーのハーモニカ奏者は現在フランス在住だそうだ。

 会場に入ってすぐに了解できたのは、観客の反応が熱いということ。それは固定のファンがちゃんとついているとも了解させられるわけだが、お客は他にどういう音楽を聞く層であるのか。そして、出音がデカい。この日はエレクトロニクス担当物、キーボード奏者、ドラマーがサポートで入っており、より重厚にして、仕掛けにも富む音を出していたと推測される。ファースト・セットを見て、次の場に向かう。

 次は、北青山のプラッサ・オンゼで、“渋谷系”ブラジル人シンガーのフェルナンダ・タカイのアコースティック・ライヴのショウをセカンド・セットから見る。ミナス・ジェライス出身の同国超人気ポップ・ロック・バンドであるポト・フのシンガーであり、その傍らソロ活動もしている日系3世の歌手。8年ぶりの来日公演となるそうで、MCはけっこう日本語でこなす。前回はほとんど日本語ができなかったそうだ。

 満場の客で、外国人比率高し。あちらから同行したギター奏者とキーボード奏者のサポートのもと、ふんわかしたノリでショウは進む。パっと聞く分には言葉を除くと、ブラジル色はそれほど強くないが、そんな彼女がブラジルでスターとなったのはブラジル人の異文化好きが集約したものと指摘できる? ともあれ、ブラジル発のキッチュが山ほど味わえるのは間違いない。

 パト・フの日本語曲「Made in Japan」、彼女がザ・ポリスのアンディ・サマーズと作ったアルバム、そして野宮真貴との双頭作からの曲も披露。後者の方は見にきいていた野宮本人も計2曲で加わる。彼女が出ていたとたん、多くの客が写真に収めようと携帯を構える。やっぱりピチカート・ファイヴの人気もすごいな。

<今日の、考察>
 フェルナンドだと男性で、フェルナンダだと女性になるんですね? 終演後、そうポル語に堪能な知人に尋ねてしまう。a で終わるのは女性なのだとか。サンバも最後はaだが、それは男なんだよなあ、とのこと。昔、日本語には男性名詞、女性名詞がなくて楽だなあと思ったことがあった。それって、日本は男女平等的な考え方があったということ? それとも、オトコ天下で物事はすべからく男性のものであったという証左?

 以前は川崎、昨年から東京で持たれているスイスの有名音楽フェスの日本版の二日目に行く。恵比寿・ガーデンホール。

 メラニー・デ・ビラシオのショウはとんでもなく素晴らしかった。感銘。こういう欧州で通受けしている人物をサクっと持ってこれるのは、欧州に根をはる音楽フェスティヴァルの利点をとても感じさせる。彼女たちのパフォーマンスに触れることができて、本当に良かった。

 ベルギーの自作派、歌手。もう、含みと雰囲気がありまくり(照明は、ぼくには暗すぎと感じる)、そしてその奥から秀でた美意識や確かな才が浮き上がる。乱暴に書くなら、ニーナ・シモンあたりを耽美側に滅茶振り切らせた詠唱路線とレディオヘッド的音響現代ポップの間を行ったり来たり。シャーデーの次なるものを求めたい人にも勧めたい。曲はどれも10〜15分ほどありそうな感じで、潮の満ち引きのような流動性の高い表現であるとも、まちがいなく指摘できる。サポートは鍵盤やギター、鍵盤、ギター、ドラム。このドラマーが4ビートを叩くわけではないが、完全にジャズの間(ま)と奥行きを出す人物で実に効いている。本人はときにフルートを淡々と吹いた。
 
 ジャイルズ・ピーターソン(1999年5月21日、2002年11月7日、2004年1月16日、2008年9月18日、2012年9月13日、2013年11月1日)がDJ(フロア後方に、祭壇のようにDJブースが作られていた)をやった後は、彼のブラジル音楽財産探訪プロジェクト『ソンゼイラ』のライヴ・プロジェクトが始まる。昼間には野外無料ステージで彼が仕切る日本人主体セッションも持たれたはずで、ある意味7日の同フェスは“ピーターソンの日”と言えたのかもしれぬ。

 セッション参加者は、歌のマリア・フレイタス(少し鍵盤も弾いた。マルチーニョ・ダ・ヴィラの娘で、リオ五輪開会式にも登場)、ヴォーカルとギターのガブリエル・モウラ(元ファロファ・カリオカのリーダーにして、セウ・ジョウジ〜2005年9月1日〜の親友)、英国トリップ・ホップ・トリオのスモーク・シティにいたニーナ・ミランダ(ブラジル出身、ロンドン在住)、キーボードのダニーロ・アンドラーヂ(ソロ・パートの際、とっても分かりやくすアウトするフレーズを連発していて笑った)、音楽監督も務めたベースのカシン(2001年5月18日、2006年6月27日、2007年7月25日)、カシン他参加のフランス語で歌うリーダー作も出しているドラマーのステファン・サンソン(フランス生まれで、現在はリオに住む)、パーカッションのゼロ、元ガリアーノ~トゥ・バンクス・オブ・フォー(2004年1月16日、2008年5月9日)のロバート・ガリアーノ(電気効果を担当)という面々。フレイタスとモウラは歌声がデカい。

 そして、中盤を回った後に、スペシャル・ゲストという触れ込みで、歌とエレクトリック・ピアノでマルコス・ヴァーリ(2002年11月7日、2003年10月24日、2008年4月28日、2010年5月25日、2014年4月22日)も登場。奥さんのパトリシア・アルヴィも一緒に出てきたコーラスをつける。

 曲間にはジャイルズの弾けたMCもいろいろあり。お祭りの中の、カラフルな、娯楽性にも満ちた確かな出し物。コンゴロトニクvsロッカーズ(2011年8月1日)とか、そういうものとの親和性も感じたか。

▶過去の、ジャイルズ・ピーターソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live2.htm 1999年5月21日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201311021703148497/
▶過去の、カシン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200607041834300000/
http://43142.diarynote.jp/200708051738450000/
▶︎過去の、ロバート・ギャラガー
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/
http://43142.diarynote.jp/200805110825440000/
http://43142.diarynote.jp/201311021703148497/
▶︎過去の、セウ・ジョルジ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050901 (今となっては、奇跡の日本公演となる?)
▶過去の、マルコス・ヴァーリ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm  11月7日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm 10 月24日
http://43142.diarynote.jp/200805031401060000/
http://43142.diarynote.jp/201006031537221581/
http://43142.diarynote.jp/201404260858553785/
▶︎過去の、コンゴロトニクvsロッカーズ
http://43142.diarynote.jp/201108101626258730/

<一昨日の、ヴァーリ>
 ヴァーリには久しぶりにインタヴューした。リオの海岸近くのペントハウス(3階)に住み、海岸散歩が趣味。悠々と軽く、とっても素敵な73歳。あやかりたい。彼はジャズ歌手のステイシー・ケント(2012年3月12日、2014年4月22日)とのDVD2枚/CD1枚からなる『Live at Birdland』(Sony、米国盤にも日本語字幕が付いている)を出して間もないが、次作はコンテンポラリー傾向の作品になるそう。カシンとは翌日、少し話したが、真面目だな。なんか若い時のチャーリー・ヘイデン(2001年11月20日、2005年3月16日、2009年9月10日)に似てると伝たら、困惑していた。この週末は、横浜ジャズプロムナード、朝霧ジャムなんかもやっているんだよなあ。
▶過去の、ステイシー・ケント
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201404260858553785/
▶過去の、チャーリー・ヘイデン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200909120650273142/
 恵比寿・ガーデンホール。2番目の出演者の、八代亜紀(2012年11月9日、2014年3月13日)から見る。

  クリヤ・マコト( 2010年2月17日、2010年4月15日、2013年7月12日、2015年7月23日)。アルト・サックスの本田雅人(2011年3月28日、2015年7月23日)、トランペットの中村恵介(2015年7月23日)。ウッド・ベースの塩田哲嗣(2015年9月20日)、ドラムの松山修(2010年3月26日)という面々が、八代亜紀をサポート。彼女の持ち歌なども含め、クリヤは新たにアレンジし直したのかな。サウンドは前のブルーノート東京公演よりも、ジャズぽい。そこに、八代節がヌメッとのる様は一興。じっさい客受けもよく、外国人も興味深く見れたのではないか。

▶︎過去の、八代亜紀
http://43142.diarynote.jp/201211170926496101/
http://43142.diarynote.jp/201403151023031434/
▶過去の、クリヤマコト
http://43142.diarynote.jp/201002191112552825/
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201307160734103127/
http://43142.diarynote.jp/201507251003319800/
▶過去の、本田雅人
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201507251003319800/
▶︎過去の、中村恵介
http://43142.diarynote.jp/201507251003319800/
▶︎過去の、塩田哲嗣
http://43142.diarynote.jp/201509231114291174/
▶︎過去の、松山修
http://43142.diarynote.jp/201003280551094942/

 そして、その後はまさに真打ちの出し物、なり。まず、テレーザ・クリスチーナが出てきて、生ギター奏者のカルリーニョス・セッチ・コルダスをバックに、堂々凛として歌う。現代サンバ界に彼女ありという存在だが(って、そんなにくわしいわけではないが)、歌い方のマナー、歌を超えた感情表出がとにかく豊か。そんな彼女の情に富む歌唱に触れて、ここにブラジルの美空ひばりがいるとぼくは唐突に思ってしまったもの。フレキシブリティに富み、いろんな設定のアルバムを出している彼女、新作はサンバ表現のV.I.P.であるカルトーラ・トリビューション盤だが、カルトーラ曲もめっぽう味わい深い。

 そんなクリスティーナの30分ばかしのパフォーマンスが終わると、切れ目なしにカエターノ・ヴェローゾ(2005年5月23日)がステージに出てくる。そして、ギター弾き狩りを悠々と繰りひろげる。メロウと言うしかない歌声もよく出ているし、やはりちょっとした仕草がチャーミング。74歳だが衰えていると感じるところは皆無で、ブラジルというコアとつながった現代ポップ・ミュージックの最たる至宝の一挙一動に引き込まれる。まあ、座ってパフォーマンスしていたので、下半身はあまり見えなかったが、本当夢のような時間を享受。さすが熱心なファンが来ているようで、曲が始まると拍手やどよめきなどが起こる。また、カエターノの求めに従って、シング・アロングとなる曲もあり。場内が、普通じゃない音楽空間になっていたのは間違いない。アンコールではクリスチーナたちも出てきて、和気藹々と共演。ヴェローゾは90分ほどステージ上にいて、言葉をこえた素敵を開示。うーん、もうこんな人はこの後、出てくることか。

▶︎過去の、カエターノ・ヴェローゾ
http://43142.diarynote.jp/200506021846130000/

<今日の、会場>
 カエターノ人気で、この日のチケットは売り切れ。当日券発売もなしということで、場内はどんだけ混むんだかと戦々恐々。そしたら、なにげにギチギチという感じではなく、主催者側の良識を感じた。ま、根本的なことを言えば、スタンディングで提供される催しながら、基本出演者はスタンディング向きではないのではあるが。でも、着席スタイルだと端の席に座っていない限り、容易に飲み物を買いには行けなくなるわけで……。お酒については、プラコップではなくちゃんとグラスでサーヴしているのは、値段は少し高めだが、うれしかった。ただし、ヴェローゾの最中に買おうとしたさいは赤ワインはすでに売れ切れ。代わりに購入した白ワインは注ぎ置きしたもので、温ぬる。それには、大バツを。
 ところで、約1ヶ月前にスイス大使館でこの音楽フェスに向けてのパーティがあったのだが、新任のスイス大使は、このフェスのことを語るのに、その創始者のクロード・ノブの名前も織り込まれるディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の歌詞を引用。彼、ぼくと同じような世代なのかな。その際、大使公邸にしつらえられたDJセットはトーレンスのターン・テーブルをはじめハイエンド・オーディオで組まれていて、笑った。それで回す須永辰緒は、敏感すぎると言っていた。司会をしていたのは、ブライアン・バートン・ルイス。ものすごく久しぶりに言葉をかわす。
 少し前にクリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日)の調べ物をしていて、この現代ドラミングの匠がD.C.の名門黒人大学であるハワード大学出と記しているものがあって驚いた。見た目は、只の兄ちゃんだものなあ。その後、彼はNYに出るわけだが、彼がR&Bバンドのミント・コンディション(2006年6月25日、2008年7月26日、2009年7月10日)のメンバーであったことも記されていた。なるほど、かつてデイヴが参画したロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日)のエキペリエンスの2010年暮れの来日公演にはミント・コンディションのシンガーのストークリーが参加したのにも合点がいった。

 今年2度目の、自己バンド公演。でも、今回も構成員は変えていて、これはチェックしておこうと思わせる。前回公演からザ・ドラムヘッズに関わったキーボードのボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日)、ベースのニック・マナック(2013年9月28日、2016年1月25日)と打楽器のフランク・モカ(2016年1月25日)は留任。そして、新たにグループに加わったのが、テナー・サックスのケビー・ウィリアムスとヴォーカル(!)のジャーメイン・ホームズ。おお、シンガーがデイヴのライヴ表現に関与するのは初めてだ。ウィリアムズはアーバン系のレコーディングに関わるとともに、テデスキ・トラックス・バンド(2014年2月11日、2016年4月1日)に結成時から参加しホーン・アレンジなんかもやっている奏者だ。その今年の来日公演の項で、カマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日)よりソロが独創的かも書いた身としては我が意を得たり、だな。

 結論から言うと、ぼくはこれまでのデイヴのソロ公演のなか一番楽しめた。それは今までで一番サウンド変化に富むと共に、デイヴのドラミングのリーダーシップの取り方の妙を直裁に感じることができたから。ドラミングでサウンドの流れのサインを鮮やかに出しまくる様を、こんなに明快に受けたのは初めて。チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、ジミ・ヘンドリックス、フェラ・クティなどの有名曲断片をつなげるという方策は過去のあり方を継ぐものであるが、かなり目鼻立ちが立っていて新鮮。かつ、随所でシンガーがR&B調の歌を入れるのも親しみやすさやサウンドのとっつきやすさをもたらす。それから、ホームズのサックス演奏はやはり耳を引っ張る。彼、なんと3つのマイクを立て、それを使い分けて違う音をPAから出すということをしていた。

▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
▶︎過去の、ミント・コンディション
http://43142.diarynote.jp/200606270004200000/
http://43142.diarynote.jp/200807281305320000/
http://43142.diarynote.jp/200907131202486925/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
▶過去の、ニック・マナック
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
▶︎過去の、フランク・モカ
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
▶過去の、テデスキ・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
http://43142.diarynote.jp/201604020743314542/
▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/

 その後は、丸の内・コットンクラブに。渡辺貞夫(2002年12月14日、2003年5月6日、2004年12月17日、2005年12月18日、2006年8月8日、2006年9月3日、2006年10月4日、2007年12月16日、2008年12月14日、2009年7月22日、2009年9月3日、2011年7月4日、2012年6月29日、2012年12月15日、2013年4月1日、2013年7月27日、2013年9月29日、2014年7月8日、2014年10月5日、2014年12月14日、2015年12月12日、2016年7月3日)とリチャード・ボナ(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月19日、2002年12月14日、2004年12月15日、2006年2月16日、2008年10月19日、2010年2月5日、2010年6月6日、2011年1月25日、2012年5月14日、2012年12月15日、2013年12月2日、2015年1月9日、2015年1月11日、2016年7月31日)の双頭名義ライヴを見る。

 サイド・マンの米国人イサム・マクレガー(ピアノ、キーボード)とキューバ生まれで2歳から米国で育ったドラマーのルドィング・アフォンソはボナが連れてきて、長年日本に住んでいるセネガル人パーカッション奏者のンジャセ・ニャンは渡辺の側近奏者だ。歳の差や文化の差異を超えて信頼しあう、二人の関係が軸。弾力とある種のポップネスを持つ演奏や歌がおおらかに飛び出す。それから、驚いたのは、渡辺貞夫がソプラニーノを吹いた曲が2つあったこと。ここ10年ほどはアルト・サックスに専念していたはずだが、これは年末にデイヴ・グルーシン(2015年11月4日)を呼んで持つ『ハウズ・エヴリシング』再現ライヴに備えてのものと見た。

▶過去の、渡辺貞夫
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm
http://43142.diarynote.jp/20041221210502000
http://43142.diarynote.jp/200512231955480000/
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200610080946310000/
http://43142.diarynote.jp/200712171350530000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200907310048137248/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201107111008176019/
http://43142.diarynote.jp/201207031353196616/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201310050701201281/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
http://43142.diarynote.jp/201410061850124929/
http://43142.diarynote.jp/201412281017371613/
http://43142.diarynote.jp/201512151504068292/
http://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
▶過去の、リチャード・ボナ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200412212102130000/
http://43142.diarynote.jp/200602171950040000/
http://43142.diarynote.jp/200810211839169096/
http://43142.diarynote.jp/201002072246423695/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201102081256565179/
http://43142.diarynote.jp/201205221056242128/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201312171132096072/
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201501131648401181/
http://43142.diarynote.jp/201608020805158759/
▶︎過去の、デイヴ・グルーシン
http://43142.diarynote.jp/201511060854338289/

<今日の、気温>
 急に寒くなった。移動のさい、震えまくり。
 ビアンカ・ヂスモンチ(2014年6月29日)は、父親であるエグベルト・ジスモンチのことを頭に置かないほうが楽しめると思った。だって、まさに天賦の才を持つ父親のことを横におくと、それは物たりなく感じてしまうもの。それよりもまっさらな状態で、この美形ピアニスト/シンガーに触れたほうがいいだろう。ブラジル音楽やジャズにコネクションを持ちつつ、そこからどうワープするかという彼女の作法を、そのほうがストレスなしに享受できる。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 前回感じた楽曲のデイヴ・グルーシン(2015年11月4日)ぽさはアンコール曲以外はなし。でも、マラカトゥ要素を入れたらしい曲では立ってトライアングルを持って奏でたり、ソロでパフォーマンスしたり(ジョビンの「ラメント」。自身、クレイジー・アレンジで、と紹介していた)と、表現の出し方はいろいろと広がった。低音の歌声の持ち主でときにスキャットも嚙ますが音程は、全般的に甘い。中央に位置する電気ベーシストも結構スキャットを嚙ますが、前回よりは頻度は減ったか? 彼のスキャットは真っ当だが、なんかヨガり声っぽく感じられてしまい、ぼくには気色悪い。年齢が一回り上の旦那であるドラマーは、今回の演奏のほうがずっと興味深かった。やっぱり随所にブラジル的因子が感じられるものであったよなあ。

▶︎過去の、ビアンカ・ヂスモンチ
http://43142.diarynote.jp/201407030943343160/
▶過去の、エグベルト・ジスモンチ
http://43142.diarynote.jp/200807041128510000/
http://43142.diarynote.jp/201303290753133066/
▶︎過去の、デイヴ・グルーシン
http://43142.diarynote.jp/201511060854338289/

 次は渋谷の7th.Floorに行き、ポーランドのシンガー・ソングライターのマルツェリナのライヴを見る。生ギターを弾く二人の男性を従えてのショウ。男性陣はバスドラを踏んだり、足に鳴り物をつけていたりし、マルツェリナもピアニカを吹くときもあった。

 英語でMCした彼女は、曲も基本英語で歌う。で、これが普通に質を持ち、普通に米英のロックに触れて育ってきたことがわかる。また、ヴォーカルが印象的な声質のもと訴求力を持つもので、これが普通にアメリカに住む女性で、強いマネイジメントと契約を交わせたなら、キャラも快活だし、それなりの人気が出そうと思った。カントリーぽいのをやるわと言って披露した曲は、ブルージーな曲だった。

 その後、近くのファンキー・ヤキトリ・バーの もりげん に寄ったら、なんとライヴをやっている。ぼくが入ったときは終盤だったが、元ヒューマン・ソウルのシンガーのJay公山のショウ。自らキーボードを弾いて歌ったり、カラオケを流して歌ったり。横にはコーラスをつける若者がいて、そちらはファルセット主体。聞けば、24歳の彼は息子さんなのだとか。なんかいい図ではあったな。

<今日の、RIP>
 二人のミュージシャンの死を聞く。享年、47 歳と60歳。ともに一度だけ、インタヴューしたことがある方々で、印象が良いんだよなあ。
 ブンブンサテライツ(2002年11月16日、2005年2月6日、2008年8月10日)の川島道行さんはバルセロナから戻った翌日午後の早い時間の取材というしびれるシチュエーションだった。知人のハンサムな旦那さんに似ていて、なんか既知感をたんまり持ってしまったっけ。それから、バリトン・サックスをメインとするリードやドラム/打楽器を見目麗しく扱っていた宮本大路さん(2011年2月10日、2011年3月28日、2011年8月6日 、2012年6月30日、2013年2月22日、2014年9月7日、2015年1月9日)。この5月には「職質楽師 夢追い日記」(杉原書店)という自著をお出しになった。

▶︎過去の、ブンブンサテライツ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200502101615560000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080810
▶過去の、宮本大路
http://43142.diarynote.jp/201102121001091213/ 守谷純子オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201104041100266528/ ブルーノート東京オールスター・ビッグ・バンド・
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201207031354181031/ 三宅純
http://43142.diarynote.jp/201302281046506238/ 守谷純子オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/ ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ

ザ・たこさん

2016年10月13日 音楽
 やったあ! やっと見れたあ。ぼく、大阪のファンク・バンドであるザ・タコさんの大ファン。少なくても、CDにおいては。ライヴも見たくて見たくてしょうがなかったんだけど、やっと見ることができた! 

 渋谷・クラブクアトロ。前座で、交流のある京都の4人組、騒音寺がパフォーマンス。いろものロックンロール・バンドね。その後、主役が出てくるまでの間にかかった、JBの下品な日本語カヴァーが最高で笑い転げる。どうやら、王様のヴァージョンのよう。すごいな。

 そして、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムという編成のザ・たこさんのライヴが始まる。ブルース、ファンク、ゴスペル……といった米国黒人音楽要素をわしづかみにして、輝きまくった自分たちの表現として出す様には惚れ惚れ。ヴォーカルの安藤八主博はとっても声がデカく、キャラにも富む。3人の演奏陣も過不足なく良い。とともに、彼らは日本語の歌詞の乗せ方が最高。コレはすごい。まったくもって、音楽的偏差値の高いバンドであると思う。もう終始ドキドキし、ケラケラ。これだけ、立って見ているのがつらくないバンドも珍しいっ。

 後半にはオオサカズと名乗る菅2、鍵盤2、ギター1、打楽器奏者が加わり、厚みを加えた。

<今日の、喜び>
 ライヴ前に、ザ・たこさんの取材をやった。うれしいというしかないな。皆さん、素敵でした。ギターの山口しんじからは、彼が別にやっているTHE FAMILYTONEというバンドの『南部の掟』(GRAND TANIYON、2015)をいただく。ちょいチル・アウト傾向にある、アーシー表現と言えるか。曲によっては、ザ・ミーターズ要素も入る。彼らは、オーサカ=モノレールのシャウト・プロダクションの所属。この日は、6作目『カイロプラティック・ファンクNo.1』のレコ発を兼ねるものだが、彼らを出すオーサカ=モノレールも偉いっ。

 ブルージィ&ジャジーな米国人シンガー・ソングライター(2009年4月13日、2009年9月5日)と洒脱なブラジル人シンガー・ソングライターの双頭名義公演を、六本木・ビルボードライブ東京で見る。初日のファースト・ショウ。

 一見???な組み合わせだが、両者の間を取り持ったのは、ソング・ライターとしてこの二人は合うんじゃないかと考えたジェシー・ハリス(2002年12 月21日、2005年9月7日、2006年1月23日、2006年4月22日、2007年3月11日、2009年3月31日、2010年10月10日、2011年8月6日、2012年7月16日、2013年5月26日、2016年4月27日、2016年9月8日)。なるほど、ハリスのブラジル録音作『サブ・ローザ』にはともに入っているし、ガルドーはアルデニのアルバムに関与している。ちなみにアルデニはリスボン在住で、ガルドーも欧州にいることが多いという。

 まずは、そういう密かなミュージシャン・サークルがあったわけだが、それを軸とするライヴに加わった奏者たちにも興味惹かれる。ベーシストはブラジリアン・ポップ音楽界No.1ベーシストのダヂ(2013年5月26日、2014年7月21日、2014年7月23日。彼もハリスと仲良し)だし、ピアノとキーボードはブラジル人巨匠ギタリスト/作曲家の息子であるフィリッペ・バーデン・パウエル。そして、さらには主任ギタリストとして、ここに加わった米国人のミッチェル・ロングはガルドー・バンドの一員だ。

 そんな5人によるアコースティックなパフォーマンスは、実に肩の力が抜けたもの。6割の力(それは、後半ガルドーが声を大き目に声を出した場面があり、それで強弱の幅がありすぎるのを実感する)で繊細に歌声や楽器音を重ね合う様は墨絵のごとく。うーむ、名人芸だ。少し驚いたのは、ガルドーとアルデニがほぼデュエットという形で歌っていたこと。ガルドーは結構ポルトガル語もできると聞いたが、なるほどポル語で歌われる曲が多かったか。

 楽器音のぶつかりを極力避けようとするためか、ガルドーは一切ギターを持たず、アルデニもあまりギターを手にしなかった。ようは、主ギタリストは一部カヴァキーニョも手にしたロングが担う。その代わり、ガルドーやアルデニは膝や身体をパーカッションのように叩いたりもし、ほのかな打楽器的な音を出す。結構、そこらあたりのシンプルにして、間がある設定は偶然かもしれぬが、高いミュージシャン力あってこそのものだろう。

 溢れる哀愁。ながら、様々なものが自然に織り込まれた総体は時にどこかシャンソンぽかったり、ファドのような手触りを感じさせる時も。なるほど、これは現代都会生活者のフォーク・ミュージックなのだと、ぼくは思った。

▶︎過去の、メロディ・ガルドー
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/200909120648439512/
▶過去の、ダヂ
http://43142.diarynote.jp/201305280925006733/
http://43142.diarynote.jp/201407221737554384/
http://43142.diarynote.jp/201407261219061857/
▶過去の、ジェシー・ハリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130315380000/
http://43142.diarynote.jp/200601271859050000/
http://43142.diarynote.jp/200604251252010000/
http://43142.diarynote.jp/200703130418360000/
http://43142.diarynote.jp/200904040640421651/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201305280925006733/
http://43142.diarynote.jp/201605141103337291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160908

<あららの、ブラジリアン・ウィーク>
 10月7日、10月8日、10月9日、10月12日、そして、本日。と、ブラジル人が出演する公演が、8日の間に5つも続いた。なんか、すごい。MCは皆さん、英語でしていましたね。

デ・ラ・ソウル

2016年10月17日 音楽
 デ・ラ・ソウル(2010年1月28日)の11年強ぶりのスタジオ新作『And The Anonymous Nobody…』はやっぱりいい感じだ。クラウド・ファウンディングにかけたら設定額の4倍が集まったという話題もうれしい、感覚しなやかポップ派ヒップホップの面目躍如盤。スタジオ録音/作業の放蕩の限りを尽くした結果の肉声と音の万華鏡には、笑みを浮かべてしまう。

 六本木・ビルボードライヴ東京、ファースト・ショウ。メンバー3人だけによるショウ。どんなふうになるのかと思ったら、前回来日公演を継ぐような、オールドスクールとも言える、肉体派路線で突っ走る。それは、見た目の体格や格好の方もまったくもってそう。確かにあの精緻かつ華やかな内容を3人で生の場で出すのは不可能なわけで、それをクールに認める本人たちもスタジオとライヴを完全に分けて考えているんだろう。そのあまりの落差には、逆に愛おしくもなってくるかな。

 面々、冒頭で客を強制的に立たせる。ハハハ。そして、2曲目だか終わったあたりでも、まだ立ってねえ奴がいる&手をステージにかざしていない奴がいると、ダメだし。ただし、それは陰険な感じではなく、少しお茶目な感じであった。そう、力こぶ路線で行くぶん、観客とのやりとりに力点を置いている感じは大いにあり。そして、サンプリング系ビートに乗る肉声の様々な感興はこれでもかと受け取れた。そして、それこそはヒップホップの基本の魅力であるとも、パフォーマンスは示していたろう。

<今日の、忘れ物>
 面々は、携帯電話の写真撮影用のライトをかざさせる場面もあり。そういえば、久しぶりに携帯電話を家に置いたまま、出かけてしまった。別に外でネットをひく趣味はないのでそんなに支障はないのだが、外出時は完全に時計として使っているので、時間を知りたいときに即それが分からないのはつらい。原稿の締め切りを含め、ぼくはかなり時間に正確なほうだと思うが、けっこう時刻は日々マメにチェックしているのかもしれぬ。

 渋谷・映画美学校試写室で、2015年スイス/キューバ映画の「ホライズン」(原題は、Horizontes)を見る。キューバと同国に一般文化として息づくバレエの関係を切り取ろうとしたドキュメンタリー映画で、1975年生まれのスイス人女性であるアイリーン・ホーファーが監督している。

 キューバにおいてバレエが盛んであるというのは、寡聞にして知らなかった。だが、同国の様々な教育水準の高さを伝えきく分には、そうであってもなんら不思議はない。映画は、3人のキューバに住む女性バレエ・ダンサーを題材に用いる。

 一人は、世界のバレエ界のトップにいたアリシア・アロンゾ(1921年、ハバナ生まれ。彼女は20歳になる頃から網膜剥離が進み、手術を繰り返すものの視力をかなり失ったが、踊り続けた)。金持ち軍人の娘で10代から米国や英国に出てバレエを学び、1948年に母国に帰国して以降は、バレエ学校も作り、キューバにおけるバレエ普及に務めた偉人。95歳になった今も、後進の指導に務めている。さらには、現在のキューバ・バレエ界のスターのヴィエングセイ・ヴァルデス(1976年、ハヴァナ生まれ。昨年も東京に踊りに来ている)と、14歳のバレエ学校の生徒であるアマンダ・デ・ヘスス・ペレス・ドゥアルデ。かような年齢違いの3人のダンサーを扱うことで映画はキューバにおけるバレエの位置、同国のバレエ界におけるアロンゾの大きさを語ろうとする。別に荒かったりするわけではないのだが、その構成/編集はぼくには分かりにくい部分もあった。

 アロンソは旧体制の恩恵を受けて国外に出てバレエの才能を開花させた人物であるが、帰国後はずっとキューバに拠点を置いたことが示すように革命支持者であったよう。映画では、アロンゾとフィデル・カストロとの仲良し交友を示す昔の写真が何葉も紹介される。カストロの覚えもめでたかったことは、キューバにおけるバレエ普及につながっただろう。カストロは野球好きでそのため同国で野球が盛んになったわけだが、もしサッカー好きだったら、中南米のサッカー地図はどうなっていただろうか。片腕のチェ・ゲバラはアルゼンチン生まれらしくサッカー好きとも伝えられるが、“革命家”はそちらの趣味をゴリ押しすることはなかった(、たぶん)。

 とかなんとか、20年前に行ったハバナ(嫌米を取りつつ、確か観光客はドルしか使えなかった)の風景を覚醒させつつ、映画に散りばめられたパズルの断片を拾い上げ、いろんなことを思い浮かべてしまうな。今年、キューバと米国の国交が復活したわけだが、それはキューバの人々の生活、芸術/芸能の営みにはどういう変化をもたらすのか。この9月あたまにインタヴューした在ハバナのピアニストであるアロルド・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、2016年9月3日)は何も変わんないと言っていたけど……。映画は11月上旬から公開される。

▶︎過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/

<今日の、映画音楽>
 その音楽には疑問を感じてしまった。いわゆる効果音的な劇伴(一方、バレエを踊るシーンでは、ダンス伴奏たるクラシックが用いられる)でジュリアン・パイノとレディスラフ・アガベコフというスイス人クリエイターを使っているのは別に問題はない。だが、劇中やエンド・ロールで、スイス人女性シンガーのハイジ・ハッピーの英語による響きの感覚も持つ内省フォーキー曲を大々的に使っているのはどうしたことか。映画中ではスペイン語が使われ、すべて舞台はキューバであるのに、何故にまったく位相の異なる欧州英語曲(それ自体は悪くない)を意味ありげに持ってくる? なんか、音楽好きのぼくは居心地の悪さを覚えずにはいられなかった。

 ピーター・バラカンがキュレイトする音楽フェスティヴァル、今年で3年目。やはり、いろんな人と会ったなあ。恵比寿・ガーデンホール。

 13時からのサニー・ランドレス(2003年5月25日、2012年5月27日)に合わせて、会場入りする。お、なんか昨年よりも混んでいるような……。で、客の年齢層の高さをすぐに感じ、これぞライヴ・マジックなんだよなあなぞとも感じる。今回、小さなお子さんづれもがこれまでよりいたかもしれない。ま、どっちしろ、音楽好きシニア層のくつろいだ文化祭という感じですね。→だからこそ、もう少し知り合いと座って話をできるスペースがあればと思うけど。

 ランドレスは、ベーシストとドラマーを擁するトリオにて。そのパフォーマンスに接して、すぐにククククとなってしまう。もうバカみたいなスライド奏法の名手。小指にはめたバーが魔法の杖のように見えた。なんちって。もうキレを伴う音程の正確さ、フレーズの豊富さはこりゃ他の追随を許さない。とともに、それはブルースの枠を遥かに超えるもので、前回来日時にも似たようなことを指摘しているが、その総体は米国のプログ・ロックなるものと言いたくなる。ランドレスの歌は弱いので、そういう行き方は正解。ちょっとでもスライド奏法をやろうとしたことがある人なら分かるだろうが、まさしくスペシャル・タレント。お金がとれるよなあ。
▶︎過去の、サニー・ランドレス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20120527

 小ホールに登場したジャック・ブロードベントはアーシー&剛毅な英国人シンガー/ギタリストでソロでの演奏。座ってやっていたので、その様は後方からはほぼ見えなかった。カヴァーも披露していて、リトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の「ウィーリン」が始まったさいには歓声があがる。お客さんは、そういう愛好層が多いんだろうな。
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/

 大ホールに登場したバンバンバザールは意気揚々。いろんな米国ルーツ・ミュージックを下敷きにするグッド・タイムな、手作り洒脱表現を悠々展開。彼らには粋な印象を持っていたが、MCは無粋と感じさせる邦楽のノリのそれでがっかり。オレ、本当ペラペラ喋るMCが苦手でしょうがない。でも、彼らが主催する酔狂(?)フェス<勝手にウッドストック>には一度行ってみたい。ライヴ・マジックの小ホールやラウンジに出るような人たちが、そこにはいろいろ集まると書けるかもしれない。

 1960年代下半期ラテン・ソウルの逸人、ジョー・バターンも大ホールに登場。歌とキーボードの当人とコーラスの奥様を、10人強の日本人奏者たちがサポート。南条レオがベースを弾いていたので、彼がひきいるサルサ・バンドのセントラルの面々が中心だったのかな。晴れやかなショウで、浮き浮きできた。ラテンとR&Bが交錯し合う闊達なストリート感も持つ表現の誘いや広がりの感覚は今も色褪せず。というか、ソウル流れなのかお洒落なコード使いを感じさせるところもあり、クラブ・ミュージック期以降だからこそアピールする部分もあるか。彼は「ハイアー」と連呼をするときもあるのだが、なぜかスライ・ストーン(2008年8月31日、2008年9月2日、2010年1月20日)との親和性を感じさせるところに、彼の吹っ切れ具合や折衷性が現れていると言いたくなる。「お父さんはアフリカン・アメリカン、お母さんはフィリピ―ノ。そして、心はラティーノ。だけど、今日はジャパニーズ」というMCもうまいっ。
▶過去の、スライ・ストーン
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/200809071428140000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/

 今年は英語圏以外のアーティストが少ないような気がしたが、そうしたなかワールド系興味を集めたかもしれないのが、ノルウェーから来たアルヴァス(小ホール)。女性シンガーのサラ・マリエル・ガウプとウッド・ベース/歌のスタイナー・ラクネスからなるデュオだ。女性の方はサーミ族の血を引き、その民族音楽のヨイクの歌唱を露わにしたりもする。一方、ラクネスはかつてノルウェーの清新ジャズ・トリオとしてぼくが注目していたアーバン・コネクション(2003年11月17日、2004年11月16日)のベーシストだが、ここでの演奏にジャズっぽさはあまりなし。米国渋味表現を思わす骨太リフをずんずん弾き、こちらはアクの強い声で歌う。
 
 そんな両者が絡み合う表現はヨイクと渋味ロック流儀がマッシュ・アップしたものと説明できるか。けっこう重層的というか、構成の妙で先が読めないと思わせる部分もあり。ベース音にはエフェクターをかけたり、弓弾き音を淡くループさせるときもある。北の国の、傾向外の大人のおとぎ話的ポップスという所感を受けた。
▶︎過去の、アーバン・コネクション
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200411170828460000/

 トリで大ホールに出たのは、吾妻光良(2007年7月22日、2010年5月29日、2010年11月20日)&スウィンギン・バッパーズ。ははは、手慣れているな。もう、客席わきっぱなし。そろそろリタイアしているメンバーもいるはずだし、とっとと海外楽旅に出てください。
▶︎過去の、吾妻光良
http://43142.diarynote.jp/200707232253550000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100529
http://43142.diarynote.jp/201011250546335197/

<今日の、サーヴィス>
 途中、がっつり食事タイムを取る。都内でやるフェスはそれができるのでありがたい。別に美食家でもなんでもないが、ザワついた中で半端に食事をするのが少しイヤ。それについては、歳をとったのかなあと思う。今回フェスにはマスター・カードがスポンサーとして、新たについていた。そして、カード保有者が5,000円以上のカード使用履歴を提示すると、フリー・ドリンク/フリー・マッサージを享受できるというサーヴィスをしていた。マスターがメインで使っているカードではないが、月に2、3万は使っているよな。だけど、普段そんな記録持ち歩いているわけないじゃん。HPにもそんなことは告知されていなかったよな? 知人は携帯に取引履歴が入っていて、それを見せてサーヴィスを受けていた。今、皆んなそうなの? 側のモールで買い物をして、5000円分飲むということも一瞬考えたが、却下。後から考えると、そうしてもよかったかも……。
 丸の内・コットンクラブ(入場時に同店の名前入りのピックを配っていた)で、1960年代にぶいぶい言わせたブリティッシュ・ビートのバンドを見る。エリック・クラプトン(2006年11月20日)、ジェフ・ベック(2009年2月6日、2015年9月27日)、ジミー・ペイジという3人の著名ギタリストが在籍したことでも知られるリジェンダリーなグループで、現在はドラマーのジム・マカーティを中心に活動している。現在オリジナル・メンバーは彼だけで、他の4人は全員アメリカ人。歌/ギター、ギター、ハーモニカ/パーカッション、ベースという布陣で、うちぼくが一番興味ひかれたのは、ギタリストのジョニー・A。ボストン出身で自らアーシー傾向にあるギター・インストのリーダー作も出している彼は、元J.ガイルズ・バンドの看板シンガーであるピーター・ウルフの1990年代の2作品をプロデュースしている人物であるから。まあ、それっぽい佇まいを出しつつ(アンプやマイクの拾い方には気をつかっていたよう)、わりとフツーだったのには少し拍子抜けしたが。

 1943年生まれのマッカーティは年齢より若く見え、かなり元気。リード・ヴォーカルをとった曲も1曲あったが、それも確かだった。披露した曲はUKのブループ・サウンズと言いたくなる曲調のものと、ブルース基調曲の2パターン。それ、大雑把に言ってしまうのなら。本編最後の曲は、レッド・ツッペリンのデビュー作にも収められていた同バンドの十八番サイケ・ブルース曲「幻惑されて」。これ、ジミー・ペイジがヤードバーズ時代に書いた(シスコ生まれのシンガー・ソングライターのジェイク・ホームズの同名曲をパクったという言い方のほうが適切か)。末期ヤードバーズのライヴにはロバート・プラントも関わり、それがレッド・ツッペリンに移行したという経緯がある。

▶過去の、エリック・クラプトン
http://43142.diarynote.jp/200611221236140000/
▶過去の、ジェフ・ベック
http://43142.diarynote.jp/200902080200527638/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/

 その後は、六本木・ビルボードライブで才気走ったNYのロック・トリオであるブロンド・レッドヘッド(2002年1月27日)を見る。日本人女性のカズ・マキノとイタリア人男性双子のアメデオ(キター、歌)とシモーネ(ドラム)のパーチェ兄弟からなる。すげえな、20年以上変わらず同じメンバーでやっているというのは。

 そして、実演に触れ、才能を持つ人たちがじっくり腹をくくって(?)やっている表現はやはり傾聴に価すると痛感してしまった。かつての棘やひしゃげた感覚を取りばめていた頃と比べると、だいぶメロウになり(奥行きや風情は増した)、マキノはギターだけでなくキーボードを弾く曲も増えていたし、楽器を弾かずに歌に専念する場合もあった。どっちにしろ、視点とクリエイティヴィティを抱えた我が道を行く都市型ロックを作り出しているのは疑いがないわけで、うんうんと頷きながら実演に接する。照明はかなり暗く、MCも全然しないので、事前に知らないとマキノは日本人と分からないかもしれない。けっこうレギュラー・グリップで叩いていたシモーネ・パーチェはグルーヴを持つ人ではないが、かなり秀でた叩き口を持っていておおいに魅了された。

▶︎過去の、ブロンド・レッドヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm

<今日の、情報>
 上でちらりと触れているピーター・ウルフの6年ぶりの新作『A Cure for loneliness』がこの夏にコンコードから出た。枯れた訥々方向を基本追求した1作でやはり、ぼくは大きく頷く。共同プロデューサーはウルフの近作3枚を制作しているケニー・ホワイトで、スティーヴ・ウィンウッド(2003年7月27日)の作詞パートナーであるウィル・ジェニングスとのコンビで書いた自作曲が4曲入っていたりもする。また、J.ガイルズ・バンド時代の1980年曲「ラヴ・スティンクス」のブルーグラス味再演もあり。うーぬ、数年前にJ.ガイルズ・バンドのマジック・ディック(2013年11月22日)も来ているし、ウルフも久しぶりに来日しないものか。
▶︎過去の、スティーヴ・ウィンウッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm フジ・ロック
▶︎過去の、マジック・ディック
http://43142.diarynote.jp/201311230759577101/

オーウェル

2016年10月25日 音楽
 今、世界でトップ級にポップなメロディを提供しているフランスの珠玉のポップ・ユニット(2015年10月13日)が昨年に続いて来日した。代官山・晴れたら空に豆まいて。

 今回はシンガーでありソング・ライターであるジェホム・ディドロが単身来日し、日本人ミュージシャンたちがサポートする。両者の間にはちゃんと敬愛を基に置く“つながり”が見られて、接していて気持ちいい。アンコールは、仏有名曲の「オー・シャンゼリゼ」を歌う。お、テテ(2005年3月18日、2007年9月24日、2011年10月10日、2013年11月21日)とトリヨ(2013年11月21日)一緒の公演のアンコール以来、聞く。ベタだけど、ココロ温まる曲であるのは間違いない、

▶︎過去の、オーウェル
http://43142.diarynote.jp/201510180818151387/
▶︎過去の、テテ
http://43142.diarynote.jp/200503240455360000/
http://43142.diarynote.jp/200709261218590000/
http://43142.diarynote.jp/201110141216048509/
http://43142.diarynote.jp/?day=20131121
▶︎過去の、トリヨ
http://43142.diarynote.jp/?day=20131121

<今日の、いい人>
 http://43142.diarynote.jp/201602040957261258/ の欄外に書いたようなやりとりもある彼、一緒に来ていたガールフレンドと小さい長男をフレンドリーに紹介してくれる。ステージでは奥さんと紹介していたが、フランス人は籍を入れないカップルも多いからな。

 ミナス・ジェライス州出身のブラジル人ギタリスト、トニーニョ・オルタ(2010年10月7日)の関便ソロ・パフォーマンスをブラジル大使館で見る。旧友ミルトン・ナシメント(2003年9月23日)の「トラヴェシア」、その他ではコーラスもほのかに観客から湧く。熱心なファンが集まっていたんだろうな。ちゃんとした技量の先にある出身地に根ざしたアンビエンンスが大きな魅力であるオルタだが、ショウに接していて、彼自身から浮き上がる人間的な魅力もまた不可欠なものなのだと実感した。

▶過去の、トニーニョ・オルタ
http://43142.diarynote.jp/201010110934082197/
▶過去の、ミルトン・ナシメント
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm

 その後、渋谷・O-Eastに向かい、フランスが生んだ異才著名文化人ピエール・バルー(2010年7月11日)のサラヴァ・レーベルの設立半世紀を祝う公演を見る。

 途中から見た1部は、おおくぼけいと薔薇色シャンソン楽団(ピアノのおおくぼけい 、サックスやフルートの山口宗真 、ベースのうのしょうじ 、ドラムの中島肇 )の伴奏のもと、優河と戸川純が歌った。ぼくはそれほどサラヴァ・レーベルには明るくないが、披露された曲は、きっとバルー/サラヴァ関連曲であるのだろう。結構、日本語歌詞がついたものもあるのかな。ロリータ・ファッションに身を包む戸川はフランス語で歌っていた。あれ、ルイス・フューレイの英語曲「ハスラーズ・タンゴ」を歌っていたのは、彼女だったっけ?

 休憩を挟むと、サポートをするバンドが変わって、大友良英が率いるバンドがつく。ギターの大友良英(2002年3月17日、2003年6月28日、2004年2月6日、2004年10月10日、2004年11月7日、2005年4月26日、2006年1月21日、2006年4月18日、2007年4月21日、2009年5月31日、2011年6月8日、2012年3月21日、2013年7月13日、2016年9月4日)、キーボードの江藤直子(2013年7月13日、2013年11月27日) 、キーボードやアコーディオンの近藤達郎、縦ベースの水谷浩章(2002年3月17日、2004年1月21日、2004年2月6日、2004年10月10日、2005年2月19日、2006年1月21日、2006年10月25日)、ドラムや打楽器の芳垣安洋(2004年2月6日、2004年10月10日、2004年11月7日、2005年4月26日、2006年1月21日、2006年4月18日、2007年4月21日、2009年5月31日、2011年6月8日、2012年3月21日、2013年7月13日、2016年9月4日)という面々なり。

 そして、ナナ・ヴァスコンセロス役となるビリンバウの渡辺亮(2012年5月15日、2015年11月18日)、それから娘のマイア・バルー(2009年7月26日、2010年2月25日、2010年7月11日、2015年4月2日)、中村中、エゴ・ラッピンの中納良恵(2004年2月5日、2005年7月31日、2005年8月17日、2006年11月17日、2006年12月13日、2009年8月8日、2009年11月1日、2010年8月4日、2011年5月21日、2013年11月1日)の3人のシンガーが絡み、さらには優河も入り、バルーの奥さんのアツコ・バルーも通訳としてステージに上がる。

 締めで出てきたパルーも3、4曲ほど歌う。82歳、猫背で老けたなという感じはあるがほんわかしつつお元気そうで、ヴォーカルも疑問なく味あり。彼の名前を広めた映画「男と女」の主題歌は一人歩きしすぎて封印していたそうだが、それも披露。最後は全員でフィナーレ、フロアに降りたりもした。

 伴奏陣の顔ぶれが示唆もするように、音楽的な奥行きは多彩。ある種、ノリが歌謡ショウみたいだとは思ったが、往年のフランス文化の不思議な広がりや含み、それに憧れる日本人感性の在り処(女性客が多く、休憩時トイレには長蛇の列)が随所で示されていた出し物であったのは間違いない。バルーが抱えた許容性やしなやかさも、また同様に。

▶︎過去の、ピエール・バルー
http://43142.diarynote.jp/201007130731368326/
▶︎過去の、大友良英
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200402061359140000/
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20041107
http://43142.diarynote.jp/200504301042210000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
http://43142.diarynote.jp/200704251227010000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090531
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201203260805006088/
http://43142.diarynote.jp/201307160735048974/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
▶過去の、芳垣安洋
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm 29日、ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm オーガニック・グルーヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm ONJQ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm ONJQ
http://43142.diarynote.jp/?day=20040121
http://43142.diarynote.jp/?day=20040206
http://43142.diarynote.jp/?day=20040610
http://43142.diarynote.jp/?day=20040611
http://43142.diarynote.jp/200411141142200000/
http://43142.diarynote.jp/200411231717590000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050219
http://43142.diarynote.jp/?day=20050906
http://43142.diarynote.jp/?day=20050729
http://43142.diarynote.jp/200510030014590000/
http://43142.diarynote.jp/200511221816310000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060707
http://43142.diarynote.jp/?day=20060827
http://43142.diarynote.jp/200612060136540000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070127
http://43142.diarynote.jp/?day=20090726
http://43142.diarynote.jp/200710181835010000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20091008
http://43142.diarynote.jp/201103040841482385/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
http://43142.diarynote.jp/201602030848199962/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
▶過去の、江藤直子
http://43142.diarynote.jp/?day=20131127 大友良英あまちゃんバンド
http://43142.diarynote.jp/201307160735048974/
▶︎過去の、水谷浩章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040121
http://43142.diarynote.jp/200402061359140000/
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/200502232040290000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200611020833520000/
▶過去の、渡辺亮
http://43142.diarynote.jp/?day=20120515
http://43142.diarynote.jp/201511191454294398/
▶過去の、マイア・バルー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090726
http://43142.diarynote.jp/201002280942269300/
http://43142.diarynote.jp/201007130731368326/
http://43142.diarynote.jp/201504041111279689/
▶過去の、マイア・バルー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090726
http://43142.diarynote.jp/201002280942269300/
http://43142.diarynote.jp/201007130731368326/
http://43142.diarynote.jp/201504041111279689/
▶︎過去の、中納良恵
http://43142.diarynote.jp/200402052323250000/
http://43142.diarynote.jp/200508060622480000/
http://43142.diarynote.jp/200508230542360000/
http://43142.diarynote.jp/200611190321510000/
http://43142.diarynote.jp/200612151848180000/
http://43142.diarynote.jp/200908181435528052/
http://43142.diarynote.jp/?day=20091101
http://43142.diarynote.jp/?day=20100804
http://43142.diarynote.jp/201105230925539578/
http://43142.diarynote.jp/?day=20131101

<今日の、ルーティン>
 その後流れた店(店主、広島県出身の好漢)で、日本シリーズの話になる。カープ、崖っぷちなのか。カープの日本シリーズ進出が決まったとき、実は広島にいて、昼間TV試合放映に群がる人々を見て同地のカープの存在の大きさを目の当たりにしたのだが、そのときはサンフレッチェも同様でありますようにとしか思わなかった。サッカー的なノリで、広島にやってきたファイターズの面々にいかに実力を出せないようにちょっかいを出すかというのを適当にしゃべったら感心され、お勘定をまけてくれた。その後に行ったお店は関東出身のくせにセレッソ大阪サポが店主を務める。こちらでは、とうぜん野球の話は出なかった。

大西順子

2016年10月28日 音楽
 ジャズ・ピアニストの大西順子(1999年10月9日、2007年9月7日、2010年9月30日、2010年12月22日、2011年2月25日、2011年8月6日、2015年9月6日)の新作『Tee Times』(Taboo)をフォロウする公演。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 梅雨どきに出された新作は菊地成孔(2001年9月22日、2002年1月5日、2002年11月30日、2004年7月6日、2004年8月12日、2005年6月9日、2006年1月21日、2007年11月7日、2009年7月19日、2010年3月26日、2011年4月22日、2011年5月5日、2011年7月31日、2013年3月26日、2013年7月27日、2014年2月20日、2014年4月3日、2014年9月7日)のプロデュースによるもので、このショウも彼が十全に見てのものだろう。『Tee Times』と同様に、現代的な歪みを持つトリオ表現(3曲)、ホーン・セクション群がついたもの(3曲)、ラップ付き(1曲)の3種が披露された。

 基本となるのは、アルバムと同じ顔ぶれであるウッド・ベースのジュニオール・テリー(2007年11月21日、2010年5月30日、2010年8月22日、2011年12月8日、)とドラムのテリオン・ガリー(2006年9月17日、2010年3月23日、2012年6月19日)というリズムを擁するトリオによる演奏。まず、これが破格。テリーとガリオンのヒップホップ〜サンプリング感覚を自在にジャズ流儀生演奏に持ってきたようなリズム・セクション音が格好良くも気持ちよすぎるし(⇦本当に、すごっ)︎、そこに乗る大西のピアノも獰猛にして、エモーショナル。ある種のうれしすぎるブラックスネスを介するその癖あるフレージングは日本人唯一であり、アンドリュー・ヒルとかそういうアフリカン・アメリカン逸材を思い浮かべたくなるものではないか。そして、それを引き出す、菊地作の楽曲も冴えている。このトリオだけでやる日もあったら、ぼくは生理的に失禁するかもしれない。

 サックスの庵原良司と近藤和彦と鈴木圭と高橋弥歩、トロンボーンの半田信英と笹栗良太と山城純子、トランペットの中野勇介と菅坡雅彦と菅家隆介という10人の菅奏者がつく曲は、トリッキーさも散りばめた菅音がトリオ音に差し込まれる。うち、2曲はアレンジをした挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日)が指揮し、もう1曲は菊地成孔が司る。ジョージ・ラッセルの難曲「クロマティック・ユニバース」の際に、菊地は指揮したんだっけ? なかなか日程/金銭的に困難とは思うが、鋭敏に綻びた現代ピアノ・トリオと非日常に悠々たゆとうような菅セクション音(弦セクション音も)が縦横に全面的に渡り合うものも聞いてみたいと切に思う。また、日本語ラップ付き曲では、SIM LABのOMSB (2013年3月26日、2014年2月20日)と菊地が入って広がりを加える。アルバムを聞いたときも思ったが、日本語でも何語でもいいんだけど、もっとクール(もしくは、無意味)なリリックでもっとダイナミックなものでないと大西の世界には合わないと、ぼくは思う。

▶過去の、大西順子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200709131138020000/
http://43142.diarynote.jp/201010030952428017/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/201102261254532443/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110806
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶過去の、菊地成孔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.ht
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200407062149440000/
http://43142.diarynote.jp/200408120238330000/
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200711101236210000/
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100326
http://43142.diarynote.jp/?day=20110422
http://43142.diarynote.jp/?day=20110505
http://43142.diarynote.jp/?day=20110731
http://43142.diarynote.jp/201303290751204240/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130727
http://43142.diarynote.jp/201402210802184994/
http://43142.diarynote.jp/201404050818444425/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶︎過去の、ジュニオール・テリー
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111208
▶︎過去の、テリオン・ガリー
http://43142.diarynote.jp/200609190457510000/
http://43142.diarynote.jp/201006071814015815/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100323
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
▶︎過去の、OMSB
http://43142.diarynote.jp/?day=20130326
http://43142.diarynote.jp/?day=20140220

<今日の、主役>
 大西は、とってもうれしそうにピアノに向かっていた。MCも軽やかだった。休養/引退〜復帰をエキセントリックに繰り返しているということで、ぼくのなかでは大西とヴァン・モリソンの姿をほんのすこし重ねたくなってしまう。選ばれた表現者の業の深さとは、そういうもの。それは致し方ない。気分がノったときは人前に出て颯爽と演奏してほしい、そう願うだけだ。ところで、彼女の生理的に重く、のたうつ指さばきに触れながら、1903年生まれのジャズ初期重要ピアニストであるアール・ハインズのこともちょい頭に浮かんだ。俺、ずっと前からハインズのことをきっちり聞かなきゃいけないと思っていて、それを果していない……。

 ナカマ、ノルウェーのグループだが、仲間という日本語であるよう。代官山・晴れたら空に豆まいて のマチネー公演を見る。 

 コントラバスのクリスティアン・メオス・スヴェンセン、ピアノの田中鮎美、ヴァイオリンのアドリアン・ルース・フォーダ、ドラムのアンドレアス・ウィルドハーゲンからなるカルテット。昨年結成のようだがすでに2枚のリーダー作を持ち、スヴェンセンと田中は今年2度目の来日となるようだ。MCはすべて、スヴェンセンが日本語でする。たどたどしかったりする部分もあるが、ちゃんと勉強しているそれですね。

 演奏が始まり、すぐにヒャヒャヒャとなる。ものすごく散文的な楽器音が、我が道を行く感じで連ねられるから。前衛的という言葉も用いることができるが、全員きっちり譜面を置いて音を重ね合う。ある種の決まりごとに基づくもの、皆である種の線や構図を見据えての会話であるのか。長尺な1曲目はかなりストロングで、音がでかい。繊細さも存分に持つが、線が太いとも、面々の所作は捉えたくなる。

 普通の人たちが、かなり変人ぽい音を繰り出して行く様は、繰り返すが愉快。自由があるともそれは思わせるし、表現者をサポートするノルウェーという国のアドヴァンテイジも見すかすか。ピアにストは弦をこすっている場合も多く、ちゃんとしたジャズ流儀で弾くことは少ないが、まっとうな弾き手と思わせる。それは、他のメンバーも同じだ。

 夕方は、NY在住ジャズ・ギタリストのウェイン・クランツ(2010年2月19日)、エレクトリック・ベースのネイト・ウッド((2013年8月22日、2015年9月30日)、ドラムのザック・ダンジガーという顔ぶれのトリオ演奏を、丸の内・コットンクラブで観る。ファースト・ショウ。

 クランツの新作『Good Piranha-Bad Piranha』(Abstract Logix、2014年)はポップ曲のカヴァー集。今回はすべてその手のカヴァーで通したと思われるが、基本曲リフを部分抽出し、あとは手癖で流れるみたいな作法を取るので、原曲がよくわからない。ウッドが特徴的なベース・リフを繰り返すので、トーキング・ヘッズの「ワンス・イン・ア・ライフタイム」だけは良く分かったが。総じては、インタープレイを柱に置くけっこうハード目で風通しの良いロック・インストという感じもあったか。

▶︎過去の、ウェイン・クランツ
http://43142.diarynote.jp/201002211122268480/
▶︎過去の、ネイト・ウッド
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/

<今日の、ウッド>
 えええ、ニーボディの辣腕ドラマーであるはずのネイト・ウッドがベースを弾くのかと驚く人もいるかもしれぬ。彼はソロ作を3枚出していて、それはXTC的なしなやかさを持つシンガー・ソングライター盤であるし、また一方ではミックスやマスタリング・エンジニアとしてNY現代ジャズ界で滅茶売れっ子。佐藤浩一もわざわざ日本録音リーダー作の『Melancholy of a Journey』(Song X Jazz、2016年)で、ウッドを起用している。こりゃ、話を聞いてみたいと取材をしたら、音大ではドラムを専攻したものの、思っていた以上にバックグラウンドが豊かな、かつ腰がとても低い人だった。両親は共にミュージシャンで、父のスティーヴ・ウッドは1990年ごろからケニー・ロギンス表現に関与している、シンガー/キーボード奏者/コンポーザー。スタジオ・ミュージシャンをするとともに、映像に付ける音楽も作っていて、その手のリーダー作も出している。実は、卓いじりは父親の作業を見て覚えたのだとか。一方、母親はシンガー・ソングライターのベス・フィシェイ・ウッドで、数枚のリーダー作を出している。また、フー・ファイターズ(2002年9月12日)のドラマーのテイラー・ホーキンスは高校時代の友達で、彼のバンドでフジ・ロックにギタリストとして出たことがあると言う(それは勘違いで、2006年に富士スピート・ウェイであったウドー・フェスのことだと思われる)。なお、今回彼だけ奥さん(綺麗ぽかった)を同伴していたようだが、彼女ともユニットを組んでいる。そんな八面六臂な活動をしているウッドが同様のスタンスを持っていると感じる人は? そのうち、CDジャーナルで記事が出ます。
▶︎過去の、フー・ファイターズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/