フレッド・ハーシュ・トリオ。クリスチャン・スコット
2016年11月1日 音楽 過去公演がソロで持たれたフレッド・ハーシュ(2013年4月18日、2015年11月26日)の今回のショウはトリオにて。ダブル・ベースのジョン・ヘバートとドラムのエリック・マクファーソンを擁するもので、2010年代に入り、このトリオで複数のアルバムを録音している。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。
そうなのだ、な。確かなインタープレイを持つピアノ・トリオ演奏に触れ、過去2回のハーシュのソロ演奏公演を受けておぼろげに頭のなかにあったハーシュ観が固まった。……彼、ぼくのココロをノックする度合いが強くはないとはどこか感じていた。ストレートには書いていないが、そのある種のわだかまりのようなものは、過去の文章にも表れているはず。そして、押しの強さやダイナミクスを効果的に補強するはずである今回のトリオ編成での演奏を聞いても、完全に感情移入できない自分を感じてしまったのだ。ウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)からザ・ビートルズまで、原曲を知っている曲を素材とするものが披露されると、彼のジャズ発展〜美意識あり方はよく分かると改めて感じたのにもかかわらず。結局、ぼくの好みとハーシュのピアノ流儀は完全な合致を見ないということなのだろう。音楽の好みとは、そういうもの(のときもあるの)だ。
ともあれ、ハーシュはかつての危機説が嘘のように元気そう。インタヴューの席でも饒舌で、ぽろっといい言葉を散りばめもするという。
サイド・マンの腕や感性は確か。与えられたソロ・パートの作法に触れても、ジャズの積み重ねをちゃんと纏いつつ、旧来の流れに埋もれない演奏を飄々出していて、頼もしい弾き手だと思わずにはいられない。ヘバートとマクファーソンはかつて異才大偉人ピアニストであるアンドリュー・ヒルのグループに一緒に参画していたとこともあり、ヘバートは現在メアリー・ハルヴォーソン(2014年7月28日)と懇意にしていたりもする。彼の2015年作『Rambling Confessions』(Sunnyside)はスティーヴ・コールマンの覚えも愛でたいシンガーのジェン・シュウを前面的にフィーチャーした内容を持つ。
▶過去の、フレッド・ハーシュ
http://43142.diarynote.jp/201304211110267820/
http://43142.diarynote.jp/201511270902563984/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶︎メアリー・ハルヴォーソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
続いては、南青山・ブルーノート東京で、NOLA出身トランペッター(2008年7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日、2009年9月15日、2010年9月3日、2011年12月17日、2015年10月8日)の実演を見る。
その音作りの様からレイディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日、2016年8月21日)好きなんですかと問うと、大きくうなづいて拳を突き出してぼくの拳とくっつけ、「レイディオヘッドがロックの文脈でやっていることを、僕はジャズの文脈でやりたい」と言ったのが、カトリーナ被害を受けて作った2007年作『アンセム』(コンコード)を出した少し後にやったインタヴューの際。そんな彼は必ず自分のバンドに“響き”傾向にあるギタリストを入れていたが、今回は鍵盤とリズム・セクションという。これまでのものと比べるなら簡素な編成でショウは持たれた。
本人に加えて、スコットの側近的ピアニストのローレンス・フィールズ(2009年6月15日、2010年7月24日、2015年10月8日)、24歳の白人ベーシスト(エレクトリックを主に弾いた)アレックス・クラフィー、スコットの2015年作『ストレッチ・ミュージック』にも入っていた29歳ドラマーのコーリー・フォンヴィル。そんな4人で、90分を超える長めの演奏を披露した。彼、ノっていたのかな。
途中で、マイルズ・デイヴィスの名前を出してデイヴィスが過去複数アルバムで取り上げたロレンツォ/ロジャースのミュージカル用1940年曲「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」をしっとり気味から徐々に発展する形で披露。おお、純ジャズのファーマットやデイヴィスへの思い、そこからから逃れられないアンビバレントなもやもやが広がり、わわわとぼくはなった。ジャズというニューオーリンズを起点に置く20世紀アフリカン・アメリカンの最たるアート・フォームへの思慕とそこから鮮やかに(他の文化に根ざした表現をも参照しつつ)飛翔したいという純な駆け引きがこんなに露わになった、彼の公演は過去なかった。
そうした思いが完全に身を結ばないもどかしさがあり、また過剰にトランペットはうまくないかもと思わす部分を出すのをはじめ、不十分に感じるところはあった。だが、いろいろなストラグルを露わに出したショウが尊くないわけがないではないか。
生音で勝負できないランディ・ブレッカー(2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日、2016年2月19日、2016年9月29日)ではないのだから、やはりトランペットの音色はもう少し電気的ではない肉感的なもので行って欲しい。ただ、ノー・マイクで吹いた音もけっこうエコーがかかったような音となっていたのは謎。彼は普通の姿勢で鳴らす場合と身をかがめて吹いた場合の2パターン用に2本のマイクをステージに立てていた。ただし、出音は同じで、出したい音色によって拾うマイクを選ぶということはなかったと思う。そこらへんは、今個人的に一押ししたいテナー・サックス奏者のケビー・ウィリアムスの実演での3本マイク並べ(2016年10月11日)とは違いますね。あと、曲はどれも暗い、陰鬱傾向にあるもの。かつてはレディオヘッド傾倒からそういう曲を作るのかと思っていたが、元々の持ち味でもあるのか。
とても目立つ髪型をしていたドラマーのフォンヴィルは、やはりニューオーリンズ出身トランペッターであるニコラス・ペイトン(2010年7月24日)もレコーディングに使ったことがあるヴァージニア州リッチモンド拠点のメロウ・ファンク・カルテットであるブッチャー・ブラウンのメンバーでもある。彼は電気パッドを置いて、プログラム・ビートぽい乗りも出していた。ま、その作法の凄さや飛躍の具合は先日の大西順子でのテリオン・ガリー(2016年10月28日)の演奏が上。それ以上に感心したのは、ときに綺麗にレギュラー・グリップも用いる素の作法で、それはブラシ使いも含めて、しなやか柔らか。その正確なパラディドルの様を見て、ちゃんとクラシックを学んでいるじゃないかと指摘する音大生もいました。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
http://43142.diarynote.jp/201608241301049887/
▶過去の、クリスチャン・スコット
http://43142.diarynote.jp/200807241546500000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080910
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/201112201159168538/
http://43142.diarynote.jp/201510091112494150/
▶過去の、ローレンス・フィールズ
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201510091112494150/
▶過去の、ランディ・ブレッカー
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219
http://43142.diarynote.jp/?day=20160929
▶︎過去の、ニコラス・ペイトン
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
▶︎過去の、3本マイク使い分けケビー・ウィリアムス
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
▶︎過去の、電気パッドを併用したテリオン・ガリー
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
<今日の、どーでもいい話>
エスペランサ・スポルディングとバークリー音大に通っていた際に付き合っていたという話がクリチャン・スコットにはあったので、彼へ2度目にインタヴューしたときに確認したことがあった。ちょうど、エスペランサに注目が集まらんとしていた頃。そしたら、あっさりと肯定。その様、“金持ち喧嘩せず”といった風情であったか。オレ、誰が誰と付き合おうがどーでもいいぢゃんと思うクチだが、さすがそれは確認をとりたくなった(苦笑)。そんな彼らと同級だったのが、今月20日にブルーノート東京で公演を持つ日本人鍵盤奏者のBIG YUKIだ。
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/
そうなのだ、な。確かなインタープレイを持つピアノ・トリオ演奏に触れ、過去2回のハーシュのソロ演奏公演を受けておぼろげに頭のなかにあったハーシュ観が固まった。……彼、ぼくのココロをノックする度合いが強くはないとはどこか感じていた。ストレートには書いていないが、そのある種のわだかまりのようなものは、過去の文章にも表れているはず。そして、押しの強さやダイナミクスを効果的に補強するはずである今回のトリオ編成での演奏を聞いても、完全に感情移入できない自分を感じてしまったのだ。ウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)からザ・ビートルズまで、原曲を知っている曲を素材とするものが披露されると、彼のジャズ発展〜美意識あり方はよく分かると改めて感じたのにもかかわらず。結局、ぼくの好みとハーシュのピアノ流儀は完全な合致を見ないということなのだろう。音楽の好みとは、そういうもの(のときもあるの)だ。
ともあれ、ハーシュはかつての危機説が嘘のように元気そう。インタヴューの席でも饒舌で、ぽろっといい言葉を散りばめもするという。
サイド・マンの腕や感性は確か。与えられたソロ・パートの作法に触れても、ジャズの積み重ねをちゃんと纏いつつ、旧来の流れに埋もれない演奏を飄々出していて、頼もしい弾き手だと思わずにはいられない。ヘバートとマクファーソンはかつて異才大偉人ピアニストであるアンドリュー・ヒルのグループに一緒に参画していたとこともあり、ヘバートは現在メアリー・ハルヴォーソン(2014年7月28日)と懇意にしていたりもする。彼の2015年作『Rambling Confessions』(Sunnyside)はスティーヴ・コールマンの覚えも愛でたいシンガーのジェン・シュウを前面的にフィーチャーした内容を持つ。
▶過去の、フレッド・ハーシュ
http://43142.diarynote.jp/201304211110267820/
http://43142.diarynote.jp/201511270902563984/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶︎メアリー・ハルヴォーソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
続いては、南青山・ブルーノート東京で、NOLA出身トランペッター(2008年7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日、2009年9月15日、2010年9月3日、2011年12月17日、2015年10月8日)の実演を見る。
その音作りの様からレイディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日、2016年8月21日)好きなんですかと問うと、大きくうなづいて拳を突き出してぼくの拳とくっつけ、「レイディオヘッドがロックの文脈でやっていることを、僕はジャズの文脈でやりたい」と言ったのが、カトリーナ被害を受けて作った2007年作『アンセム』(コンコード)を出した少し後にやったインタヴューの際。そんな彼は必ず自分のバンドに“響き”傾向にあるギタリストを入れていたが、今回は鍵盤とリズム・セクションという。これまでのものと比べるなら簡素な編成でショウは持たれた。
本人に加えて、スコットの側近的ピアニストのローレンス・フィールズ(2009年6月15日、2010年7月24日、2015年10月8日)、24歳の白人ベーシスト(エレクトリックを主に弾いた)アレックス・クラフィー、スコットの2015年作『ストレッチ・ミュージック』にも入っていた29歳ドラマーのコーリー・フォンヴィル。そんな4人で、90分を超える長めの演奏を披露した。彼、ノっていたのかな。
途中で、マイルズ・デイヴィスの名前を出してデイヴィスが過去複数アルバムで取り上げたロレンツォ/ロジャースのミュージカル用1940年曲「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」をしっとり気味から徐々に発展する形で披露。おお、純ジャズのファーマットやデイヴィスへの思い、そこからから逃れられないアンビバレントなもやもやが広がり、わわわとぼくはなった。ジャズというニューオーリンズを起点に置く20世紀アフリカン・アメリカンの最たるアート・フォームへの思慕とそこから鮮やかに(他の文化に根ざした表現をも参照しつつ)飛翔したいという純な駆け引きがこんなに露わになった、彼の公演は過去なかった。
そうした思いが完全に身を結ばないもどかしさがあり、また過剰にトランペットはうまくないかもと思わす部分を出すのをはじめ、不十分に感じるところはあった。だが、いろいろなストラグルを露わに出したショウが尊くないわけがないではないか。
生音で勝負できないランディ・ブレッカー(2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日、2016年2月19日、2016年9月29日)ではないのだから、やはりトランペットの音色はもう少し電気的ではない肉感的なもので行って欲しい。ただ、ノー・マイクで吹いた音もけっこうエコーがかかったような音となっていたのは謎。彼は普通の姿勢で鳴らす場合と身をかがめて吹いた場合の2パターン用に2本のマイクをステージに立てていた。ただし、出音は同じで、出したい音色によって拾うマイクを選ぶということはなかったと思う。そこらへんは、今個人的に一押ししたいテナー・サックス奏者のケビー・ウィリアムスの実演での3本マイク並べ(2016年10月11日)とは違いますね。あと、曲はどれも暗い、陰鬱傾向にあるもの。かつてはレディオヘッド傾倒からそういう曲を作るのかと思っていたが、元々の持ち味でもあるのか。
とても目立つ髪型をしていたドラマーのフォンヴィルは、やはりニューオーリンズ出身トランペッターであるニコラス・ペイトン(2010年7月24日)もレコーディングに使ったことがあるヴァージニア州リッチモンド拠点のメロウ・ファンク・カルテットであるブッチャー・ブラウンのメンバーでもある。彼は電気パッドを置いて、プログラム・ビートぽい乗りも出していた。ま、その作法の凄さや飛躍の具合は先日の大西順子でのテリオン・ガリー(2016年10月28日)の演奏が上。それ以上に感心したのは、ときに綺麗にレギュラー・グリップも用いる素の作法で、それはブラシ使いも含めて、しなやか柔らか。その正確なパラディドルの様を見て、ちゃんとクラシックを学んでいるじゃないかと指摘する音大生もいました。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
http://43142.diarynote.jp/201608241301049887/
▶過去の、クリスチャン・スコット
http://43142.diarynote.jp/200807241546500000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080910
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/201112201159168538/
http://43142.diarynote.jp/201510091112494150/
▶過去の、ローレンス・フィールズ
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201510091112494150/
▶過去の、ランディ・ブレッカー
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219
http://43142.diarynote.jp/?day=20160929
▶︎過去の、ニコラス・ペイトン
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
▶︎過去の、3本マイク使い分けケビー・ウィリアムス
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
▶︎過去の、電気パッドを併用したテリオン・ガリー
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
<今日の、どーでもいい話>
エスペランサ・スポルディングとバークリー音大に通っていた際に付き合っていたという話がクリチャン・スコットにはあったので、彼へ2度目にインタヴューしたときに確認したことがあった。ちょうど、エスペランサに注目が集まらんとしていた頃。そしたら、あっさりと肯定。その様、“金持ち喧嘩せず”といった風情であったか。オレ、誰が誰と付き合おうがどーでもいいぢゃんと思うクチだが、さすがそれは確認をとりたくなった(苦笑)。そんな彼らと同級だったのが、今月20日にブルーノート東京で公演を持つ日本人鍵盤奏者のBIG YUKIだ。
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
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http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/