5月30日(日)、31日(月)/メルス・ニュー・ジャズ・フェスティヴァル
2004年6月10日 (30日の項からの続き)そして、この晩(30日)は公園内ながら20分離れ
た場所にある大きなスケート場で、“アフリカン・ダンス・ナイト”と称さ
れたオールナイトの催しも行われる。やはり近年、同祭で毎年開かれている
ものらしく、今年はボンゴ・マフィン(南ア)、グナワ・ディフュージョン
(アルジェリア)、エムゼクゼク(南ア)、アフリカン・レゲエの有名担い
手のラッキー・デューベ(南アフリカ)という4組が出演。ちんたら会場に
着いたときには、一番手のボンゴ・マフィンはすでに終わっていて、暫くす
ると大所帯のグナワ・ディフュージョンが登場。おお、レゲエを中心にヒッ
プホップやその他の混合表現をやるバンド。ときにプリミティヴな民族弦楽
器を用いるときも。音楽性が曲ごとに開きすぎの感じはあるが、アルジェリ
アのマヌー・チャオ・バンドてな趣もあって、にっこり聞けちゃう。続く、
エムゼクゼクにゃ大笑い。パンフに載ってた写真があまりにバカバカしくて
見たいと思ったのだが、想像を超えるナンセンス具合。3人組で、力のない
2人のシンガーと盛り上げMC役がその構成員で、音は20年前のプリセット
のディスコ・トラックのようなカラオケのみ。とにかく、その覆面を被った
MCが超トホホな馬鹿キャラ。爆笑あるのみ。よくこんなのメルス、呼んだ
な。3曲聞いて(それ以上はあまり触れてもしょうがないと、感じさせもし
たか)満足して帰りました。それから、本会場のほうはほとんどアフリカ系
の人は見かけなかったが、こちらはさすがにそれなりにいました。
最終日となる4日目。
11時から、セッションを見る。いろんな出演バンドの選抜プレイヤーが出
るなか、この日はいろんな人達に混ざりROVOの山本精一、芳垣安洋(1月
21日、他) が参加。オーガナイザーのほうから、誰と誰でやってと言われる
だけで、あとはぶっつけ本番であるという。二人はそれぞれ4回ぐらいはス
テージに登場したか(うち、2回は二人一緒の組だったかな)。飄々と、逞
しかったです。
そして、本ステージ。まずは、編曲者/指揮のコリン・タウンズ率いるド
イツのNDRビッグ・バンド。“フランク・ザッパズ・ホット・リックス(
アンド・ファニー・スメルズ)”と題された出し物。ようは、ザッパの曲を
やるジャズ・ビッグ・バンド。期待したほどではなかった。
続いて、ECMからアルバムを出しているノルウェー人のピアニスト、ケ
ティル・ビョルンスタド率いるグループ。ノルウェーといえば、我々のよう
な人間にとってはまずはジャズランドとなるが、この人はまったく別の室内
楽的な道を行く人。ぼくはほとんど聞かなかったが、女性ヴォーカル他を用
いてのパフォーマンスをやっていたようだ。
3番手はビル・ブルーフォードのシャズ・バンド、アースワークス。ブラフ
ォードは英国人的に興味深い人だし(2回やったことがあるが、インタヴュ
ーしてもかなり面白い)、いいドラマーだと思うが、ここのところのアース
ワークスはアルバムを聞いてもぼくは全然楽しめない。凝った、いろいろと
ワザの効いてる曲をやっているのかもしれないが、いまいち心に響かない。
それは、ライヴ演奏を聞いてもぼくには同様。だが、山本精一さんは、ここ
に出た他のバンドには混ざれそうだけど、彼らの場合はすごい曲をやってい
て加わるのは無理、というような言い方で絶賛してました。
ブルーフォードの演奏が終わると、ダーク・テントで勝井祐二のソロ(2004
年1月21日)。なのだが……、そのテントの横の方にある出演者控えのスペ
ースでこの日のトリのブラス・バンドがぶうぶうと延々、練習を始めてしま
う。主催者側はそれを止めず、彼はその音がばんばん聞こえるなかでのソロ
・パフォーマンスを強いられてしまった。これじゃ瞑想的な場での利点もク
ソもあったものではない。とっても気の毒。聞くほうにとっても、ストレス
の掛かりまくり。でも、プロな彼は最善を尽くそうとする。繊細にしてスマ
ートな彼だが、雑草の強さを垣間見たような気がした?
メイン・テントでウェイン・クレイマーもメンバーに入っているエクスマ
ーズエクス(と読むのかな? XmarsX)。これは、ある種のロック感
覚も持つ、ストロングなパンク・ジャズを展開。無条件に胸がすく。途中か
ら、先出“ソウル・ソニック・サーカス”のような曲芸が加わる。加わらな
くても良かったとは思うが、“ソウル・ソニック・サーカス”はこれをラフ
にセッション化し、曲芸を主役にしたということも出来るかな。そして、最
後の曲では、病院を抜け出てきたらしい片腕を吊ったマーズ・ウィリアムス
が登場しブロウ。本来なら、この出し物も彼が主役となるものだった(後か
ら調べたら、ちゃんとこのグループ名でアルバムを出していた)。
再び、ダーク・ステージ。当初は、NYアンダーグラウンド・シーンの名
リード奏者ネッド・ローゼンバーグがソロで吹く予定だった。だが、お昼の
セッションのときに声をかけたそうで、芳垣安洋が入ってのデュオ演奏とな
る。そういう鷹揚さ、臨機応変さはジャズである。ふむふむ。力量拮抗、渡
り合う。醒めた、つっぱりアリ。
そして、最後は、ぶっちゃけブラス音が大饗宴しての、大ダンス大会(出
し物によっては、アリーナ部の椅子は取り払われ、スタンディングになる)
。まずは、ザ・ニッティング・ファクトリー・ワークスやジョン・ゾーンの
ツァディックから10枚ぐらいは平気にアルバムを出しているトランペット奏
者フランク・ロンドンのクレツマー・ブラス・オールスターズ(7人組)が
出てきて演奏し、途中から入れ代わって、セルビアのボバン・マルコヴィッ
チ・オーケスター(11人)の演奏になる。基本的に、ともに血沸き踊るジプ
シー&バルカン風味の哀愁ブラス表現と言えるか。ぼくは来日公演を行って
いる、ルーマニアのタラフ・ハイドゥークス(2000年5月21日、2001年9月
2日)やマケドニアのコチャニ・オーケスター(2001年9月2日)らの実演
を思い出した(蛇足だが、ルーマニアの同系ブラス・バンドのファンファー
レ・チャカリーアを扱った、ドイツ制作のドキュメンタリー映画『炎のジプ
シー・プラス 地図にない村から』がこの夏に公開されます)。似たような
バックグラウンドを持つだろうボバン・マルコヴィチ・オーケスターは、タ
ラフたちと比べるとそれなりに洗練された印象を与える(リハのとき、彼ら
は確かクラフトワークの曲を練習していた! 本編では披露しなかったが)
。なんか打楽器の(ドラムを)分散させた使い方はニューオリンズのブラス
・バンドを思い出させたりもするし。最後のほうは両バンドが一緒にブカブ
カと演奏。このセット、“ブラスの隣人”というタイトルも付けられていた
ようだ。
た場所にある大きなスケート場で、“アフリカン・ダンス・ナイト”と称さ
れたオールナイトの催しも行われる。やはり近年、同祭で毎年開かれている
ものらしく、今年はボンゴ・マフィン(南ア)、グナワ・ディフュージョン
(アルジェリア)、エムゼクゼク(南ア)、アフリカン・レゲエの有名担い
手のラッキー・デューベ(南アフリカ)という4組が出演。ちんたら会場に
着いたときには、一番手のボンゴ・マフィンはすでに終わっていて、暫くす
ると大所帯のグナワ・ディフュージョンが登場。おお、レゲエを中心にヒッ
プホップやその他の混合表現をやるバンド。ときにプリミティヴな民族弦楽
器を用いるときも。音楽性が曲ごとに開きすぎの感じはあるが、アルジェリ
アのマヌー・チャオ・バンドてな趣もあって、にっこり聞けちゃう。続く、
エムゼクゼクにゃ大笑い。パンフに載ってた写真があまりにバカバカしくて
見たいと思ったのだが、想像を超えるナンセンス具合。3人組で、力のない
2人のシンガーと盛り上げMC役がその構成員で、音は20年前のプリセット
のディスコ・トラックのようなカラオケのみ。とにかく、その覆面を被った
MCが超トホホな馬鹿キャラ。爆笑あるのみ。よくこんなのメルス、呼んだ
な。3曲聞いて(それ以上はあまり触れてもしょうがないと、感じさせもし
たか)満足して帰りました。それから、本会場のほうはほとんどアフリカ系
の人は見かけなかったが、こちらはさすがにそれなりにいました。
最終日となる4日目。
11時から、セッションを見る。いろんな出演バンドの選抜プレイヤーが出
るなか、この日はいろんな人達に混ざりROVOの山本精一、芳垣安洋(1月
21日、他) が参加。オーガナイザーのほうから、誰と誰でやってと言われる
だけで、あとはぶっつけ本番であるという。二人はそれぞれ4回ぐらいはス
テージに登場したか(うち、2回は二人一緒の組だったかな)。飄々と、逞
しかったです。
そして、本ステージ。まずは、編曲者/指揮のコリン・タウンズ率いるド
イツのNDRビッグ・バンド。“フランク・ザッパズ・ホット・リックス(
アンド・ファニー・スメルズ)”と題された出し物。ようは、ザッパの曲を
やるジャズ・ビッグ・バンド。期待したほどではなかった。
続いて、ECMからアルバムを出しているノルウェー人のピアニスト、ケ
ティル・ビョルンスタド率いるグループ。ノルウェーといえば、我々のよう
な人間にとってはまずはジャズランドとなるが、この人はまったく別の室内
楽的な道を行く人。ぼくはほとんど聞かなかったが、女性ヴォーカル他を用
いてのパフォーマンスをやっていたようだ。
3番手はビル・ブルーフォードのシャズ・バンド、アースワークス。ブラフ
ォードは英国人的に興味深い人だし(2回やったことがあるが、インタヴュ
ーしてもかなり面白い)、いいドラマーだと思うが、ここのところのアース
ワークスはアルバムを聞いてもぼくは全然楽しめない。凝った、いろいろと
ワザの効いてる曲をやっているのかもしれないが、いまいち心に響かない。
それは、ライヴ演奏を聞いてもぼくには同様。だが、山本精一さんは、ここ
に出た他のバンドには混ざれそうだけど、彼らの場合はすごい曲をやってい
て加わるのは無理、というような言い方で絶賛してました。
ブルーフォードの演奏が終わると、ダーク・テントで勝井祐二のソロ(2004
年1月21日)。なのだが……、そのテントの横の方にある出演者控えのスペ
ースでこの日のトリのブラス・バンドがぶうぶうと延々、練習を始めてしま
う。主催者側はそれを止めず、彼はその音がばんばん聞こえるなかでのソロ
・パフォーマンスを強いられてしまった。これじゃ瞑想的な場での利点もク
ソもあったものではない。とっても気の毒。聞くほうにとっても、ストレス
の掛かりまくり。でも、プロな彼は最善を尽くそうとする。繊細にしてスマ
ートな彼だが、雑草の強さを垣間見たような気がした?
メイン・テントでウェイン・クレイマーもメンバーに入っているエクスマ
ーズエクス(と読むのかな? XmarsX)。これは、ある種のロック感
覚も持つ、ストロングなパンク・ジャズを展開。無条件に胸がすく。途中か
ら、先出“ソウル・ソニック・サーカス”のような曲芸が加わる。加わらな
くても良かったとは思うが、“ソウル・ソニック・サーカス”はこれをラフ
にセッション化し、曲芸を主役にしたということも出来るかな。そして、最
後の曲では、病院を抜け出てきたらしい片腕を吊ったマーズ・ウィリアムス
が登場しブロウ。本来なら、この出し物も彼が主役となるものだった(後か
ら調べたら、ちゃんとこのグループ名でアルバムを出していた)。
再び、ダーク・ステージ。当初は、NYアンダーグラウンド・シーンの名
リード奏者ネッド・ローゼンバーグがソロで吹く予定だった。だが、お昼の
セッションのときに声をかけたそうで、芳垣安洋が入ってのデュオ演奏とな
る。そういう鷹揚さ、臨機応変さはジャズである。ふむふむ。力量拮抗、渡
り合う。醒めた、つっぱりアリ。
そして、最後は、ぶっちゃけブラス音が大饗宴しての、大ダンス大会(出
し物によっては、アリーナ部の椅子は取り払われ、スタンディングになる)
。まずは、ザ・ニッティング・ファクトリー・ワークスやジョン・ゾーンの
ツァディックから10枚ぐらいは平気にアルバムを出しているトランペット奏
者フランク・ロンドンのクレツマー・ブラス・オールスターズ(7人組)が
出てきて演奏し、途中から入れ代わって、セルビアのボバン・マルコヴィッ
チ・オーケスター(11人)の演奏になる。基本的に、ともに血沸き踊るジプ
シー&バルカン風味の哀愁ブラス表現と言えるか。ぼくは来日公演を行って
いる、ルーマニアのタラフ・ハイドゥークス(2000年5月21日、2001年9月
2日)やマケドニアのコチャニ・オーケスター(2001年9月2日)らの実演
を思い出した(蛇足だが、ルーマニアの同系ブラス・バンドのファンファー
レ・チャカリーアを扱った、ドイツ制作のドキュメンタリー映画『炎のジプ
シー・プラス 地図にない村から』がこの夏に公開されます)。似たような
バックグラウンドを持つだろうボバン・マルコヴィチ・オーケスターは、タ
ラフたちと比べるとそれなりに洗練された印象を与える(リハのとき、彼ら
は確かクラフトワークの曲を練習していた! 本編では披露しなかったが)
。なんか打楽器の(ドラムを)分散させた使い方はニューオリンズのブラス
・バンドを思い出させたりもするし。最後のほうは両バンドが一緒にブカブ
カと演奏。このセット、“ブラスの隣人”というタイトルも付けられていた
ようだ。