ノルウェーのポスト・ジャズの担い手(純ジャズではないので、ここではそう書いてしまおうか)3組を見る。どれも、北欧を中心に欧州アーティストをいろいろ招いているOffice Ohsawaが呼んだアーティストだ。広尾・ノルウェー王国大使館のオーロラホール。
トップに出てきたヴィルデ & インガはヴァイオリンとコントラバスの、女性デュオ。クラシック出身であるのは明らかな二人は共に小柄で、まだ20代か。とはいえ、彼女たちはECMから2014年に『Makrofauna』といアルバムをリリースしている事を知れば、がぜん興味はひかれるか。メガネっ娘でもあるお二人はかなりアブストラクトな協調即興演奏を披露。共に弓弾き演奏を多用し、紋様を描いていく。ヴァイオリン奏者は一部で小鳥のさえずりを模したような音を出し続けた。小鳥のさえずりを楽器音で出すというとすぐにシャソール(2015年5月30日、2016年8月29日)のことを思い浮かべるが、楽器と個人の感覚によって現れる音はだいぶ違うなあ。
▶︎過去の、シャソール
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/
http://43142.diarynote.jp/201609200921301045/
2番目に出てきた、端正な顔つきのホーコン・コルンスタはアコーディオン奏者とコントラバス奏者を従えてパフォーマンスをする。おお、テナー・サックスを悠々と吹く彼は、ブッゲ・ベッセルトフト(2001年5月27日、2002年5月8日、2008年9月21日、2010年1月24日、2012年4月29日、2016年10月4日)のジャズランド・レーベルの所属アーティストの中でぼくが一番好きだったウィブティー(2002年5月8日)のメンバーではないか。ウィブティー解散後もジャズランドからリーダー作を出している彼だが、そのキャリアの大きな要点は2009年NY滞在中にオペラに触れて方向修正、ノルウェー・オペラ音楽院で学び直して修士学位も取り、オペラ歌手としての活動も始めたこと。当然それは彼のジャズ活動にも跳ね返らないわけがなく、『Symphonies in My Head』(Jazzland、2011年)、『Tenor Battle』(Jazzland、2011年)はジャズと彼のオペラ歌唱が同居する内容となっている。
また、ECMから15作ほどアルバムを出しているノルウェー人のピアニストであるケティル・ビヨルンスタ(彼は作家としても活動している)の『A Passion for John Donne』(ECM、2014年)にもコルンスタのテナーやフルートや歌がフィーチャーされている。そして、ここでも生真面目に涼しい顔をして、いい音のテナーを吹き、朗々とテノール歌唱をする表現を開示。うわあ、変な人……、でもそういうことを否定するの音楽の面白さやその可能性の扉をいくつも閉ざしてしまうことになるは間違いなく、なんかコックリしながらぼくは聞き入った。
▶︎過去の、ブッゲ・ベッセルトフト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200809231132339668/
http://43142.diarynote.jp/201001251710004302/
http://43142.diarynote.jp/201205080620235237/
http://43142.diarynote.jp/201610110957506440/
▶︎過去の、ウィブティー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
三つ目に出てきたのは、アコースティック・ギターのクリスチャン・スコール・ヴィンター、エレクトリック・ベースのマグヌス・スカーヴハウグ・ネルガール、ドラムのヤン・マーティン・ギスメルヴィークからなる3人組のモンキー・プロット。
そして、彼らが淡々と演奏し始めると、すぐにぼくの耳は惹きつけられる。おう、もろなシカゴの担い手流れのポスト・ロック表現を聞かせるではないか。トータス(2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日、2014年5月7日)とかいくつかの在シカゴのグループ群(1999年6月6日、2000年3月25日、2000年10月15日、2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日)の実演以上に、ぼくの耳には示唆に満ちた演奏であるように思えた。電気ギター的な音を出したりもするがギターはすべて生ギター演奏で通し、ドラムもベース、ハイハット、スネア、タム、シンバルが一つづつという超シンプルなキットを叩いていたにもかかわらず(それは、会場の都合によるものだろう)、3人が絶妙に重なり流れていく映像的なサウンドはほぼ完璧。すばらしい。
実演後話したら、事実、彼らはポスト・ロック志向であり、シカゴの表現も好きであるとのこと。彼らは2年前にも日本に来ているそうで、それは知らなかった。曲は3人で共作し、ギタリストは変則チューニングを用いているそう。
▶過去の、トータス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/
▶過去の、シカゴのあの周辺の人たち
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm パパM、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm シー・アンド・ケイク
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/201204091014019131/ シー・アンド・ケイク
その後、六本木のビルボード東京に回り、ロンドンをベースとする若手英国人トリオである、プレストン・グラスゴウ・ロウを見る。彼らのツイッター頁にはロニー・スコッツ出演時の写真が掲げられている。
ギターのデイヴィッド・プレストン、6弦ベースのケヴィン・グラスゴウ、ドラムのロウリー・ロウが一体になって繰り広げる演奏は往年の真摯系フュージョンそのもの。わわ、こんな音楽が今の英国で需要があるのかと訝しがってしまうが、面々はコレがやりたいと生真面目に邁進しているのはすぐに分かる。各人は腕は立つが一般的には無名、普段は何をしているのかとも思わずにいられないが、知人の見解は学校とかで教えているんじゃないか。なるほど、それはありえる。
そこにある透明感やひんやりした触感はUKジャズ・ロックの流れもやんわり感じさせ、1980年代のLAの腕利き奏者と絡んでいたアラン・ホールワース表現とかを思い出させるところもあるか。曲調はどこか幾何学的とも言えそう。
<今日の、CD>
昨日新譜を紹介した泉邦宏は藤井郷子の東京オーケストラのメンバーでもあるが(今もそうだような?)、藤井(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日)の新作CDも手元にある。今年の4月28日に水戸のCORTEZというハコで録られた『Invisible Hand』というピアノ・ソロの2枚組。細心の心配りや冒険心の元、彼女は思うまま指を踊らせ、ある種のジャズ・ピアノ様式や美学がくっきりと浮かび上がっている。発売元は、Cortez Sound。ライヴを持ったお店が主宰する第一弾であるという。素晴らしいな。地方のお店や聞き手の情熱と趣味の良さが作る、音楽に対するリスペクトがにじみ出る作品。これを聞いていると、こうした地方の真摯な力が今の音楽を伸張させる一助になると思わずにはいられない。とともに、水戸の茨城近代美術館は尖った出し物で知られる(金沢の20世紀美術館が開館した際は、水戸から人材が流れたなんて話も聞いた)が、水戸はアートを育てる気運があるとのではないかなどと妄想も広がる。
関係ないけど、水戸市出身の敏腕ドラマーである山本淳平(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日、2016年3月14日)が組んでいるロック・バンドのLOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTSの初のフル・アルバム『CREOLES』(Sonic)が11月5日に発売になる。音楽的野心と歌心が高次元で綱引きする様には惚れ惚れ。なかには、生ロック・バンド回路のコーネリアスといった感じの曲もあるし、XTCのファンにも聞いてほしいな。この土曜にライヴがあるが、週末は東京にいないので見ることができない。きっと、いいだろうなあ。
▶過去の、山本淳平/nouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
トップに出てきたヴィルデ & インガはヴァイオリンとコントラバスの、女性デュオ。クラシック出身であるのは明らかな二人は共に小柄で、まだ20代か。とはいえ、彼女たちはECMから2014年に『Makrofauna』といアルバムをリリースしている事を知れば、がぜん興味はひかれるか。メガネっ娘でもあるお二人はかなりアブストラクトな協調即興演奏を披露。共に弓弾き演奏を多用し、紋様を描いていく。ヴァイオリン奏者は一部で小鳥のさえずりを模したような音を出し続けた。小鳥のさえずりを楽器音で出すというとすぐにシャソール(2015年5月30日、2016年8月29日)のことを思い浮かべるが、楽器と個人の感覚によって現れる音はだいぶ違うなあ。
▶︎過去の、シャソール
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/
http://43142.diarynote.jp/201609200921301045/
2番目に出てきた、端正な顔つきのホーコン・コルンスタはアコーディオン奏者とコントラバス奏者を従えてパフォーマンスをする。おお、テナー・サックスを悠々と吹く彼は、ブッゲ・ベッセルトフト(2001年5月27日、2002年5月8日、2008年9月21日、2010年1月24日、2012年4月29日、2016年10月4日)のジャズランド・レーベルの所属アーティストの中でぼくが一番好きだったウィブティー(2002年5月8日)のメンバーではないか。ウィブティー解散後もジャズランドからリーダー作を出している彼だが、そのキャリアの大きな要点は2009年NY滞在中にオペラに触れて方向修正、ノルウェー・オペラ音楽院で学び直して修士学位も取り、オペラ歌手としての活動も始めたこと。当然それは彼のジャズ活動にも跳ね返らないわけがなく、『Symphonies in My Head』(Jazzland、2011年)、『Tenor Battle』(Jazzland、2011年)はジャズと彼のオペラ歌唱が同居する内容となっている。
また、ECMから15作ほどアルバムを出しているノルウェー人のピアニストであるケティル・ビヨルンスタ(彼は作家としても活動している)の『A Passion for John Donne』(ECM、2014年)にもコルンスタのテナーやフルートや歌がフィーチャーされている。そして、ここでも生真面目に涼しい顔をして、いい音のテナーを吹き、朗々とテノール歌唱をする表現を開示。うわあ、変な人……、でもそういうことを否定するの音楽の面白さやその可能性の扉をいくつも閉ざしてしまうことになるは間違いなく、なんかコックリしながらぼくは聞き入った。
▶︎過去の、ブッゲ・ベッセルトフト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200809231132339668/
http://43142.diarynote.jp/201001251710004302/
http://43142.diarynote.jp/201205080620235237/
http://43142.diarynote.jp/201610110957506440/
▶︎過去の、ウィブティー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
三つ目に出てきたのは、アコースティック・ギターのクリスチャン・スコール・ヴィンター、エレクトリック・ベースのマグヌス・スカーヴハウグ・ネルガール、ドラムのヤン・マーティン・ギスメルヴィークからなる3人組のモンキー・プロット。
そして、彼らが淡々と演奏し始めると、すぐにぼくの耳は惹きつけられる。おう、もろなシカゴの担い手流れのポスト・ロック表現を聞かせるではないか。トータス(2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日、2014年5月7日)とかいくつかの在シカゴのグループ群(1999年6月6日、2000年3月25日、2000年10月15日、2001年11月7日、2003年1月30日、2004年1月20日、2012年4月7日)の実演以上に、ぼくの耳には示唆に満ちた演奏であるように思えた。電気ギター的な音を出したりもするがギターはすべて生ギター演奏で通し、ドラムもベース、ハイハット、スネア、タム、シンバルが一つづつという超シンプルなキットを叩いていたにもかかわらず(それは、会場の都合によるものだろう)、3人が絶妙に重なり流れていく映像的なサウンドはほぼ完璧。すばらしい。
実演後話したら、事実、彼らはポスト・ロック志向であり、シカゴの表現も好きであるとのこと。彼らは2年前にも日本に来ているそうで、それは知らなかった。曲は3人で共作し、ギタリストは変則チューニングを用いているそう。
▶過去の、トータス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/
▶過去の、シカゴのあの周辺の人たち
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm パパM、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm シー・アンド・ケイク
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/201204091014019131/ シー・アンド・ケイク
その後、六本木のビルボード東京に回り、ロンドンをベースとする若手英国人トリオである、プレストン・グラスゴウ・ロウを見る。彼らのツイッター頁にはロニー・スコッツ出演時の写真が掲げられている。
ギターのデイヴィッド・プレストン、6弦ベースのケヴィン・グラスゴウ、ドラムのロウリー・ロウが一体になって繰り広げる演奏は往年の真摯系フュージョンそのもの。わわ、こんな音楽が今の英国で需要があるのかと訝しがってしまうが、面々はコレがやりたいと生真面目に邁進しているのはすぐに分かる。各人は腕は立つが一般的には無名、普段は何をしているのかとも思わずにいられないが、知人の見解は学校とかで教えているんじゃないか。なるほど、それはありえる。
そこにある透明感やひんやりした触感はUKジャズ・ロックの流れもやんわり感じさせ、1980年代のLAの腕利き奏者と絡んでいたアラン・ホールワース表現とかを思い出させるところもあるか。曲調はどこか幾何学的とも言えそう。
<今日の、CD>
昨日新譜を紹介した泉邦宏は藤井郷子の東京オーケストラのメンバーでもあるが(今もそうだような?)、藤井(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日)の新作CDも手元にある。今年の4月28日に水戸のCORTEZというハコで録られた『Invisible Hand』というピアノ・ソロの2枚組。細心の心配りや冒険心の元、彼女は思うまま指を踊らせ、ある種のジャズ・ピアノ様式や美学がくっきりと浮かび上がっている。発売元は、Cortez Sound。ライヴを持ったお店が主宰する第一弾であるという。素晴らしいな。地方のお店や聞き手の情熱と趣味の良さが作る、音楽に対するリスペクトがにじみ出る作品。これを聞いていると、こうした地方の真摯な力が今の音楽を伸張させる一助になると思わずにはいられない。とともに、水戸の茨城近代美術館は尖った出し物で知られる(金沢の20世紀美術館が開館した際は、水戸から人材が流れたなんて話も聞いた)が、水戸はアートを育てる気運があるとのではないかなどと妄想も広がる。
関係ないけど、水戸市出身の敏腕ドラマーである山本淳平(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日、2016年3月14日)が組んでいるロック・バンドのLOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTSの初のフル・アルバム『CREOLES』(Sonic)が11月5日に発売になる。音楽的野心と歌心が高次元で綱引きする様には惚れ惚れ。なかには、生ロック・バンド回路のコーネリアスといった感じの曲もあるし、XTCのファンにも聞いてほしいな。この土曜にライヴがあるが、週末は東京にいないので見ることができない。きっと、いいだろうなあ。
▶過去の、山本淳平/nouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
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http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/