今日は、ドラマーの日?

 まず、赤坂・カナダ大使館のオスカー・ピータソン・シアターで、ドラム奏者を扱った2010年映画を見る。カナダ人ドキュメンタリー映画監督のジョン・ウォーカーの作品、なんでも現在カナダの映画の作り手は世界的に脚光を浴びているらしい。

 映画の素材/成り立ちは、わりとシンプル。かつてディジー・ガレスピーのバンドに入っていたことがあり、今はドラム講師を生業にしているカナダ人ドラマーであるナシル・アブダル・アルカビールが主宰する、カナダの自然豊かな田舎で1週間持たれたドラマーを志す青少年対象のサマー・キャンプの様を追っている。出てくるドラマー(講師)は、要塞のようなセットを採用するドリーム・シアターのマイク・マンジーニ、キューバン・ニューヨーカーのオラシオ”エル・ネグロ”エルナンデス(2000年1月12日、2001年5月15日、2002年10月3日、2003年8月9日、2004年4月5日、2009年11月12日、2011年12月8日、2014年1月10日)、今年エルナンデスと一緒に来日もしているラテン・パーカッションの匠であるプエルトリコ出身のジョヴァンニ・イダルゴ(2012年5月11日、2014年1月10日)、現在サンタナ・バンドでの同僚でもあるドラマーのデニス・チェンバース(2013年3月12日。元は、P-ファンク出身)と打楽器奏者のラウル・リコウ(2013年3月12日。見た目は“ぽい”が、フィリピンとアメリカ南部の両親を持ち、ラテンの血は入っていないと発言)、NYジャズ・フュージョン界で活動するケンウッド・デナードという面々。

 基本、彼らの生徒を前にするソロ演奏が映され、インタヴュー発言が並んでいる。また、同業奏者間のやりとりや、少し生徒の様や発言も入れられる。みんな純度の高いソロを披露するが、ケンウッド・デナードは片手でキーボードも扱い、またラップをしながら叩く。へえ、そんなことする人なのか。自然のもとでのゆったりした環境も手伝って、皆伸び伸び、発言は何気に金言もあり。最後は講師陣全員による合同演奏だが、その際はキーボード奏者やベース奏者やサックス奏者が入るのは残念。最後まで、ドラマーとパーカッション奏者だけの演奏で通してほしかった。

 見た後のキブンは、すこぶる良し。というのも、そこには、いい意味で“きれいごと”しか、ないから。ショーバイや打算抜きのドラム愛やパーカッション愛、またその楽器の素敵が、ここには明解に切り取られている。本作は2011年の東京映画祭での<エコ部門>で上映されたというが、ふむ、人間力は何にも負けぬエコでもあるか。監督のジョン・ウォーカーは青年期にカメラマン修行をするとともに、バンドでドラムを叩いたことがあったのだとか。この映画、海外ではDVD化もされているようだ。

▶過去の、エル・ネグロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm キップ・ハンラハン
http://43142.diarynote.jp/200404050925340000/
http://43142.diarynote.jp/200911141111322146/
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140110
▶過去の、イダルゴ
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140110
▶過去の、チェンバースとリコウ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130312

 そして、南青山・ブルーノート東京に向かい、敏腕ドラマーであるハーヴィ・メイソンのリーダー・バンドの実演(セカンド・ショウ)を見る。

 多くの人の記憶に焼き付けられた印象深い曲「カメレオン」が入っていたハービ−・ハンコックの『ヘッドハンターズ』(コロムビア、1973年)に新進ドラマーとして加わり、同作の大ヒットもあり、その後スター・ドラマーの道を歩んだメイソンの“カメレオン”を名乗る公演(2010年7月9日)はこれで2度目のもの。この間に彼は「カメレオン」をタイトルに据えたリーダー・アルバムを作り、前回とは電気ベースのジミー・ハスリップ(2004年3月24日、2004年12月17日、2010年7月9日、2010年10月1日)以外はすべて異なる顔ぶれのもと、今回のショウを持った。

 とはいえ、レコーディング参加し得難い今っぽい浮遊感/情緒を与えていたクリス・バワーズやマーク・ド・クライヴ-ロウ(2006年3月9日)ら鍵盤奏者が未同行なのは少し残念。ながら、アルバムにも参加していた新進メロウR&B歌手のクリス・ターナーは一緒にやってきた。クリス・バワーズやエリマージ(2013年6月4日)のアルバムなどでもフィーチャーされている、このしなやか歌手にまず触れるのが今公演のぼくの目的なり。クインシー・ジョーンズ/リオン・ウェアの「イフ・アイ・エヴァー・ルーズ・ディス・ヘヴン」、ドナルド・バード/ザ・マイゼル・ブラザースの「プレイセズ・アンド・スペイセズ」、チャーリー・チャップリンの「スマイル」の3曲で彼は美声を聞かせる。

 他に奏者は、ピアノ/キーボードのジョン・ビーズリー(2011年12月8日)、キーボードのフィリップ・ウー(2007年6月6日、2009年5月26日、2012年9月9日)、リード奏者のカマシ・ワシントン。アルバム『カメレオン』にも参加していた、なかなか迫力のある外見を持つワシントン(1981年、LA生まれ)は青筋たてた真面ジャズからヒップホップ系レコーディングまでいろいろと臨機応変に吹いている人物だが、そのブロウはヘヴィにして、滅茶本格派。彼の威風堂々なソロは今回の設定の場合、浮き気味とも感じる。

 90分ぐらいはやったろう公演、なんとアンコールはメイソン一人が出て来て、ドラム・ソロを披露する。一瞬ロバート・グラスパーもライヴでよく披露しているハンコック曲「アクチャル・プルーフ」の印象的なリズム・パターンを叩いたりもしたが、基本的に哲学的すぎて、その面白さがぼくにはいまいち分らなかった。

▶過去の、メイソン
http://43142.diarynote.jp/201007110625087085/
▶過去の、ハスリップ
http://43142.diarynote.jp/?day=20040324
http://43142.diarynote.jp/?day=20041217
http://43142.diarynote.jp/?day=20100709
http://43142.diarynote.jp/201010030954188035/
▶過去の、ビースリー
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
▶過去の、ウー
http://43142.diarynote.jp/200706131357530000/
http://43142.diarynote.jp/200905271738046764/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120909
▶過去の、クライヴ・ロウ
http://43142.diarynote.jp/200603100922500000/
▶過去の、エリマージ
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224/

<今日の、新聞>
 夕刊一面に、キューバが自国野球選手の米国球団以外のプロ選手化容認する由の記事がのせられていた。すでに、東京ジャイアンツにはセペダという打者が加入しているのか。へえ。記事では、彼らがキューバの新たな外貨獲得手段になっているとも指摘されている。野球選手と比較にならないぐらい、キューバ在住でも国外に出ている音楽家は多いが、彼らの場合も同様なのだろうか。