スイスからやってきたリード奏者(この晩は、ソプラノ・サックスとクラリネットを演奏)のハンス・コッホ(2014年10月30日)とエレクトロニクスのガウデンツ・バドルットが蜂谷真紀(2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日、2015年5月20日、2015年6月15日)と重なるインプロ帯公演、この晩は蜂谷と双頭アルバムを制作中というターンテーブルの村田直哉が加わる。神保町・試聴室。初めてこのハコに行ったが、天井がけっこう高い。かつては、印刷所であったそう。

 A.蜂谷×コッホ、B.バドルット×村田、C.4人一緒。という、3つの組み合わせが披露された。A.は基本、アコースティックなお手合わせ。発想と瞬発力、そして思慮や歌心の絶え間のない交錯。ときに、幽玄と言える部分も持つ。

 B.はともに工夫を凝らした装置をいろいろ用いる。かつては現代音楽のピアノを弾いていたというバドルットはいろんな小物機材(小さなマレットを用い音を発信したりとか、かなりアナログ、人間的なオペレーションを介する。本人もそれを意識しているとのこと)やPC(アップルが嫌いだそうで、背の林檎のマークを黒いテープで隠していた)などを用いる。一方、村田はターンテーブル1台とエディット系機器を床に置き、その横には何十枚もの裸のアナログ・レコードを無造作に散りばめる。レコードの中にはデコレーションが施されているもの(つまり、音出しには用いられない。飾りですね)もあり、見た目の感興にも留意、ある種パフォーミング・アート的な部分もそれは持つか。ターンテーブリストと言っても村田の所作はクラブ・ミュージックのそれとはだいぶ異なり、ヘッドフォンもしない。オーケストラ音など具体的な音を拾って出す場合もなくはないが、もっと偶発的にアナログ盤やレコード針が生むノイズやファジーな音を媒介音として出していくという感じ。なんか、ターンテーブルのアート・リンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2016年9月1日)なるものともぼくは少し思った。このパート、バドルット主導のサクっとした終わり方が格好良かった。

 C.は蜂谷も2本のマイク、ミキサー他機材(サンプラーもあった?)、カリンバなどなどの小物が置かれたテーブルに座り、素ではない肉声使いを存分に繰り出し、他の3者と渡り合う。こちらは声色や音程、響きなども思いつきで自由自在、まっとうな画家がPCでカラフルな立体画を嬉々として描いているという感じもあったか。確固とした才が羽を得て飛び回る感じもあって、これは面白いと思うことしきり。当人も自らのイマジネーションを飛躍させるさらなる手段を得て、楽しくてしょうがなのではないか。そんな彼女に合わせて、アヴァンギャルド・ジャズ一徹といった感じのコッホも簡素なエフェクターを用いて電波音を繰り出す。愉快。実は面々、自分の行き方に邁進するようでいて、他者の音を十分に聞いて50の行き方の中から一つの音を出しているという感じもあって、一筋縄ではいかないゾという嬉しさは山ほど。まったく飽きない。ダラダラやられるのをきらうタチながら、もっとやってェと思ってしまった。横浜エアジン(3日)と早稲田茶箱(4日)でも、実演はもたれる。

▶過去の、蜂谷真紀
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/
http://43142.diarynote.jp/201410310931316189/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
▶︎過去の、ハンス・コッホ
http://43142.diarynote.jp/201410310931316189/
▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/

<今日の、ぺこり>
 示唆を受けた。端的に書けば、オレはのうのうと普通の文章を書いていていいのかと思わされた。まあ、雑誌や新聞やライナーノーツという商業媒体に書く限りはちゃんと音楽の内容を明快に書き留めた普通の文章が要求されるわけで、書き方の冒険はそれほどできない。とはいえ、文体は無限であり、そちらで遊ぶことはできるはずなのだが。漢字、平仮名、片仮名の視覚的な効果については、実は普段から留意はしているところはある。
このブログだったら、完全に好き勝手できるのでもうちょっとカッ飛ぶことも不可能ではないはすだが。。。。。。ネット原稿だと、文字の色や大きさや絵文字で変化をつけるという作法もなくはないだろう。だが、写真は当然のこと(普段、携帯で写真も撮らないしな)、ぼくはPCでのそのやり方がわからない。実は写真なし、純粋文章だけで勝負しているからこそ<ライヴ三昧>は素晴らしいというお褒めの言葉をいただいたことがあって、なるほどそうだヨナ、文章を書くことを生業としている以上、余計なものは用いず文字だけで完結するものにしようと思っているのは確かではあるのだが。でも、もうちょっと冒険や実験的な書き方をしてもいいのではないかと思った次第。解き放たれていた4人の方々、ありがとう。