佐藤タイジ(2000年7月29日、2001年12月9日、2001年12月22日、2002年7月21日、2002年11月15日、2003年6月22日、2004年1月16日、2004年1月30日、2005年2月15日、2010年2月25日、2011年5月18日、2011年8月15日)が震災後に見せるようになった反原発アクションが大きな形として実を結んだのが、2012年師走に日本武道館で持たれた、ソーラー・エネルギーを用いるフェス。そして、2013 年からは岐阜県中津川市の公園で毎9月下旬にソーラー・パワーによる音楽フェスが2日間持たれるようになっている。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。この晩もソーラー・パワーを用いているという。

 前年のそれは、ハウス・バンドを佐藤率いるシアターブルック(中条卓、エマーソン北村、沼澤尚)がつとめ、そこにゲストが入って行ったというが、今回はゲストが2曲づつフォーキーなパフォーマンスをそれぞれ単独で披露し、最後の30分はシアターブルック単体の演奏だった。

 東京カランコロンのいちろー(歌、ギター)とせんせい(歌、キーボード)、生ギターを弾きながら歌うラッパーのGAKU-MC(キードードとドラムがつく)、 the band aprtの荒井岳史(歌、ギター)がTakeshi Arai(ギター、歌)を伴ったもの、ぼくは初めて接する3組が順に出る。彼らは中津川 の本ッフェスに出演した人たちだそう。

 久しぶりに見たシアターブルックは接していて、うれしさを覚える。あ、4人に加え、ショウ前のDJを務めていた旧メンバーのDJ吉沢dynamite.jpも全面的に加わった。昔の曲「ドレッドライダー」をやり、かなり高揚。ずっと洋楽中心に仕事をやってきたけど、あのころ(沼澤尚が入る前)、無理なく洋楽の耳で楽しめた彼らには何度か取材したんだよなー。佐藤タイジは、次の参院選の重要性などにも言及。そこは”ロック・スター”、説教臭さがない、あっけらかんとものであるのが、いい。最後に、出演者全員で、佐藤タイジの曲(ぼくは初めて聞く)を「ウィ・アー・ザ・ワールド」のりで披露した。

▶過去の、佐藤タイジ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm シアターブルック(7月29日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm マルコス・スザーノ+沼澤セッション(12月9日、12月22日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm パウリーニョ・モスカ+スザーノ+沼澤 セッション(7月21日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm シアターブルック(6月22日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm サンパウロ(11月15日)
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/ 勝井、鬼怒、佐藤、沼澤セッション
http://43142.diarynote.jp/200402051858240000/ サンパウロ
http://43142.diarynote.jp/200502161844550000/ マルコス・スザーノ+沼澤 セッション
http://43142.diarynote.jp/?day=20100225 マイア・バルー
http://43142.diarynote.jp/201105191057129864/ ソロ
http://43142.diarynote.jp/?day=20110815 佐藤、高野、うつみ

<今日の、ジャッジ>
 ライヴ後に流れた飲み屋で、ラグビーのワールドカップの日本戦のTV放映を流している。今回のとっても快挙な成績をサッカーのワールドカップで日本代表チームがやったなら、見ていて有頂天モノだろうな。ラグビー・ファンが、うらやましい。ぼくはサッカー好きだが、客観的に判断すると、なんも知らないで見るなら、サッカーよりもラグビーのほうが展開や見所がはっきりしていて、オトコのロマンや野生も見えやすいし、楽しめるのではないか。ラグビー、いいな。だが、ラグビーはサッカーほど広い人気を得ていない。翌日、スポーツ・チャンネルで、件の対サモア戦を見たが、少ししみじみ〜。

タンブッコ

2015年10月4日 音楽
 この妙な名前を名乗る4人組は、メキシコのパーカッション・アンサンブル。1993年の結成で、芸術監督を務めるリカルド・ガヤルド、アルフレッド・ブリンガス(一番じじい)、ミゲル・ゴンザレス(一応、青年)、ラウル・ドゥトンというのが構成員。リーダーはユル・ブリンナーみたいだし、黒髪を後で結んでいるドゥトンの他は、外見はあまりメキやんぽくない。二部構成で前後4曲づつ、そしてアンコールには2曲応対した。東京文化会館 小ホール。

 一応クラシック/現代音楽畑のグループというぐらいの知識しかなかったのだが、けっこう下世話なエンターテインメント性も持ち、門外漢に向けたくだけた表現をやっていると言えるか。そこがぼくには臭く感じてしまう部分もあったのだが、それは上から目線のものではく、素直に多くの人と打楽器音の楽しさやポリリズムの面白さをシェアしたいという気持ちがあるのは良く分った。ゆえに、音を出すだけでなく、けっこうパフォーマンス性を重視していると思わせるところも見受けられた。

 ステージ上には、バスドラを下においたマリンバが4台おいてあるが、意外にそれを弾く曲は少なかったか。1曲目はスティーヴ・ライヒ曲だったようだが、これはクラベス(拍子木)だけを用いてパフォーマンスする。一方、メキシコのエクロル・インファソンというピアニストの曲は全員ボディ・パーカッションにて披露。その曲名は「痣のできる音楽」だそう。

 オリジナルも2曲披露して、うち一つはアフリカのカリンバをそれぞれが弾くとともに、最後のほうは4人が1台のマリンバを手で奏でるというもの。ぼくの、好み。もう一つのメンバーのオリジナルはリーダーが生ギターを弾くとともに、4人はカホンを叩く。これはペルーのリズムを下敷きにしているとか。また、彼らはウルグアイの作曲家や南メキシコのトラッドを取り上げてもいた。

 といったように、中南米的属性も意識的に出しつつ、彼らがもう一つの音大出身者派生のインストゥメンタルをやらんとしてたのは間違いない。

<今日の、いだだきもの>
 会場で会った知人に、亀の子たわしブランドのスポンジをいただく。会場に来る前に、谷中で散歩/買い物をしてきたそうで、そのおすそわけだ。谷中には亀の子たわしの直営店もあるのだとか。絶対に普通のスポンジよりもいいからと言われる。それがいれられた袋は昔のデザインを持って来た、いかにも老舗ふうのそれ。そこには、<東京都北區瀧野川町 西野商店>の旧表記も。

 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。キューバ人ピアニストのロベルト・フォンセカ(2003年10月14日、2010年1月26日、2013年1月12日、2014年3月19日)の今回の来日公演はトリオにて。縦を中心に電気も曲によっては弾くベーシストのヤンディ・マルティネスとドラムのラムセス・ロドリゲス、彼らはフォンセカの前回公演にも同行しているリズム隊だ。アフリカ勢とエールを交換するようなプロジェクト期を過ぎて(2015 年新作はマリ人歌手のフォトマタ・ジャワラとの双頭作だ)、もう一度、自らの核にあるジャズとラテンに、ピアノ・トリオという単位で向き合いたくなったのか? そうすると、随所からフォンセカの達者なピアノ技量(ハービー・ハンコック〜2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日〜好きもこぼれ出る)やピアノ美意識が明快にあふれる。彼はシンセや歌も(歌詞なし。非裏声)少し使う。それは、通り一遍の形式や片苦しさから逃れ、彼のしなやかさを強調するだろう。それからうならされるのは、トリオの自在な重なり。フォンセカはリズム隊にかなり念をおくっていて、それをリズム隊は読みとり、サウンド総体にいろいろ出入りしていく。そこらへん、妙があり、音楽の素敵や快感があり。フォンセカはこのトリオ表現をもっと煮詰めて行こうとしている感もありのような。彼の次作はどうなるのだろうか? 

▶過去の、ロベルト・フォンセカ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201001291746252351/
http://43142.diarynote.jp/201301161544336447/
http://43142.diarynote.jp/201403240917556171/
http://43142.diarynote.jp/201509291629428595/ (最後のほう、ロベルト・フォンセカへのインタヴュー)
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/

<今日の、情報>
 会場で、ドラマーのラムセス・ロドリゲスにドラムを習っていたという女性と会う。知人の知人。スペイン語の仕事をなさっている方で、学生時代に言葉のほうを入り口に音楽のほうもやるようになったという。彼女曰く、ロドリゲスさんはエルナン・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、参照)、チューチョ・バルデス(2009年9月14日、2010年3月25日、2012年5月1日、2013年2月28日、2013年11月27日)、ロベルト・カルカセス(2005年11月4日)などのサポートでも来ているのではないかとのこと。
▶過去の、チューチョ・バルデス
http://43142.diarynote.jp/200909181205563624/
http://43142.diarynote.jp/201003271334102896/
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/
http://43142.diarynote.jp/201303070813066769/
http://43142.diarynote.jp/201311281342196399/
▶過去の、ロベルト・カルカセス
http://43142.diarynote.jp/200511130412510000/
▶過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/

 まず、南青山・ブルーノート東京で、ニューオーリンズ出身のオレ様くんトランペッター、クリスチャン・スコット(2008年7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日、2009年9月15日、2010年9月3日、2011年12月17日)の久しぶりの自己グループ公演を見る。

 スコット大将、中堅の域にさしかかりつつも、もろにヤンキーな格好。あらあら。バンド員はピアノのローレンス・フィールズ(2009年6月15日、2010年7月24日)、アルト・サックスのブラクストン・クック、紅一点フルートのエレーナ・ビンターヒューズ(非アフリカ系。まだ、二十歳とか)、アコースティック・ベースのクリス・ファン、バンドに入ったばかりの21歳ギタリストのドミニク・ミニックス、スコットの叔父のドナルド・ハリソン(2015年8月22日)の愛弟子であるドラマーのジョー・ダイソン(2011年7月4日 、2014年8月25日、2015年7月2日、2015年8月22日)。なにげに、ダイソンは売れっ子だな。1曲目で彼はドラムンベース調のビートを繰り出す。彼は日本のドラム・メイカーのカノウプスのセットを用いていたが、過去の来日時とは全然異なる、ある種人工的とも言える叩き音でバンド音総体を支えているのが印象的であり、スコットの求めるものも顕われる。シンバル音もかなりプログラム調の音色を持つ場合があったな。彼を紹介するさい、スコットはダイソンのセットをドラムとアフリカン・ドラムと電気ドラムを合わせているみたいな言い方をしていたな。

 新作『ストレッチ・ミュージック』を彼の同世代ジャズ・マン作のなかではトップ級に評価しているが、やはりロックやヒップホップなども見渡した末の、オイラの前を見たジャズを、彼は胸を張って送出。一時期のレイディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)味偏愛を少しすぎ、よりいろんな興味や気持ちを抱えた、なんか得体の知れない所も持つオルタナ・ジャズは醍醐味アリ。とともに、彼みたいに、文句あっか的なオラオラ感を持つ人物は30代ジャズ・マンのなかでは貴重な存在であるとも思わされる。でありつつ、一方では自分だけの突出をさけ、ちゃんと横の構成員とも繋がった集団表現を浮き上がらせているのは、なるほどニューオーリンズ属性が出ていると思えるか。

 レディオヘッド命だった時代から、そのトランペット演奏のライヴでの吹き口だけはトム・ヨークではなく、ポール・ロジャース(だと、コテコテすぎるか。ロバート・パーマーぐらいにしておこうか)の部分もあった彼だが、ストレートな吹き方をするんだから、もう少し素直な音色で勝負したほうが、バンド音との対比もあってより大きな訴求力が出ると思うが、どうだろう。ここの人名記載、ロック・リスナーじゃないと、分らないだろうな。

 アンコールはハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日)の、V.S.O.P.の当たり曲でもあった「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」。これは比較的ストレートな設定で披露され、各人のソロ・パートもたっぷり取られる。そこからは、彼らなりのジャズ愛も放たれていた。

▶過去の、クリスチャン・スコット
http://43142.diarynote.jp/200807241546500000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080910
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/201112201159168538/
▶過去の、ローレンス・フィールズ
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
▶過去の、ドナルド・ハリソン
http://43142.diarynote.jp/201408260930269988/
http://43142.diarynote.jp/201508231007506736/
▶過去の、ジョー・ダイソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20110704 渡辺貞夫(!)
http://43142.diarynote.jp/201408260930269988/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150702
http://43142.diarynote.jp/201508231007506736/
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/

 その後は、スウェーデンのジプシー・ミュージック効果的応用の賑やかし雑食バンドであるレーヴェンのショウを途中から見る。渋谷・クラブクアトロ。ライヴの魅力だけで2009年以降、日本でも口コミで支持者を増やしているストリート派生集団だが、今年はフジ・ロックと朝霧ジャムの両方に出演。ライヴ・バンドの誉れ? これは、かなり例外なことではないだろうか。

 8人組。ギター、ヴァイオリン、サックス、タンブラ(東欧の弦楽器)、アコーディオン、トロンボーン、ダブル・ベース、ドラムという構成なり。その編成の妙を効果的に用いた、インスト主体の活劇的表現をこれでもかと繰り出す。セットリストには30曲ほど載っていました。手作り感覚、人間がやっている感覚、気持ちをこめている感覚が120%ぐらい出て、渦を巻いているような表現は訴求力ばつぐん。客との一体化した盛り上がりには、すごいな。そこにはポップ・ミュージックとして大切なものが横たわっていると、思わずにはいられず。

 途中に、若い日本人女性のアコーディオン奏者とシンガーが混ざった(アンコールでは、日本人男性トランペッターも)がそれも良し。また、何曲かは渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日)の持ち曲とおおいに重なるとも思う。渋さもジプシー音楽妙味を用いるし、皆で気持ちでGO! みたいなところも重なるか。最終曲はコーラスも入る、いかにも渋さのレパートリーにありそうな曲で、歌のコール&レスポンスを経て、最後は観客の歌う声だけが残された。

▶過去の、渋さ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
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http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
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http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
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http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/
http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp60923241736//2013052
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/

<昨日の、レーヴェン>
 代表者4人(英語の得意な人が応じたのかな)が親身に質問に答えてくれる。インタヴューが始まるやいなや、新作『よみがえれ!キツネザウスス〜Bring Back The Dinos』の感想を求めて来て、へ〜えと思う。面々、ぼくの返事(CDレヴューも書いたし、ちゃんと聞いていたからな)に納得し、以後話は良好に進む。って、良好に進まないことはまずないけれど……。彼らは白いシャツとジャケットをちゃんと着る服飾感覚を表に出しているが、それはオフも同様。結成1年後の2004年後からそうしているそうで、今はノルウェーのデザイナーから服飾提供を受けているそうな。とはいえ、真心100%のステージ、すぐに汗だくになってしまい、実演中盤のころにはメンバーの半数は上半身裸になっていたが。彼らには吹っ切れた暴れんぼう、任侠100%みたいなイメージもあるが、60分面と向かった感じでは、情に厚いのは当然ひしひしと伝わってくる一方、けっこう知的だなと思える部分も。新作には、アンチ・レイシズムの意を込めている。そういえば、ぼくが最初にきいたとき、ザ・ポーグス(2005年7月29日)のスウェーデン版みたいな印象も持ったと伝えたら、彼らは喜んでいた。そこらが根にあえるものではないか。
▶過去の、ザ・ポーグス
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/

nouon

2015年10月9日 音楽
 日本人女性のヴァイブラフォン(山田あずさ)、米国人男性のエレクトリック・ピアノ(ケヴィン・マキュー)、英国人男性コントラバス・クラリネット(ヒュー・ロイド)、日本人男性ドラム(山本淳平)からなるnouon(2015年4月17日、2015年9月13日)の、デビュー作『KUU』の発売記念ライヴ。代官山・晴れたら空に豆まいて。なんと、即売のCDを観客の半数以上が購入したという。

 アルバム収録曲に、アルバムには曲を提供していなかったロイド(2015年9月13日)の曲2曲と、山田(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日、2015年5月28日、2015年6月15日、2015年9月13日)とマキューの新曲も一つづつ披露する。楽器編成も普通じゃないが、顕われる音も一聴平穏かつメロウながら、一皮めくれば変と言うか、かなり野心的。かつて(1950年代から四半世紀。その後、人気グループゆえ、再結成されたりも)モダン・ジャズ・カルテットという名オルタナティヴ&ソフィスティケイテッドなグループがいたが、その21世紀版と思えばしっくり来るナと思えもしました。

▶過去の、uouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
▶過去の、ヒュー・ロイド“The Jazz Meditation Suite”
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/

<今日の、CD>
 コントラバス・クラリネット奏者のヒュー・ロイドから、ビリー・スパングルズ・グループ名義の『The Ballad of Cloudy Bongwater( and other songs)』(no number)というCDをもらう。ロイドがまだ純クラリネット奏者だったころ、2007年に録音したもので、彼に加えてテナー/ソプラノ・サックス、ギター、コントラバスを弾く3人の日本人とのカルテット録音。枠を外れる方向も持つ室内楽的情緒を持つもので、なにげに諦観キブンというか淡いブルージー感覚が光る一作。ファースト・セットでやったロイド作の曲はここからのものだった。もう少し音質が良ければと思うが、視点ありの、ゆったりした、美味しい不可解な上澄みを持つ1枚。なお、nouonのCD『KUU』を家で聞いたら、ちと驚いた。とっても、低音が入っていて。これ、PCで聞いていてはわからない。ええええ、と言う感じ。

 アイルランドの大御所シンガー・ソングライター(2002年9月3日)の公演を、丸の内・コットンクラブで見る。ファースト・ショウ。

 完全弾き語り。アコースティック・ギター(創意工夫のもと、すべてピックで弾く)を主に、ピアノを弾きながら歌う曲も、アンコールを含めてそれは3曲。もうちょいピアノ曲比率が高くても良かったか。

 現在、68歳。まっすぐ、朗々、堂々。すごいな、風格はあるが、衰えなし。だって、相当にマイクから離れて歌っていて殆ど地声が聞こえてくるような気がするし、ギター音も当然そう。正面に立てられたマイクで歌声とギター音を拾っており、PAからはその音が聞こえてきているらしいが、生理としては“生の力”で場内の空気を揺らしているような感じがあった。熟達者は会場を無理なく、自分を共鳴させる器にしてしまうのだ。そして、その様子は、音楽と向き合っている人、確かな才とともに音楽を生業にしている人がここにいることを、教えた。

 彼は不思議なステップを踏みながら、ギター弾き語りをしたりもする。それはオールドなロックンローラー的な何かと繋がっている……?

▶過去の、ポール・ブレイディ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm

<今日の、メール>
 なんかハース・マルティネス(1999年4月21日)が亡くなってしまったようですとの連絡が入る。オレぐらいの年代の少しヒネたロック愛好者にとって1970年代中期のワーナー発の2枚は必須作みたいな感じもあったよな。実はハースというと、ぼくはセッション・ベーシストのチャック・ドメニコの名を思い出す。ファースト作とかの彼のアコースティック・ベースに何故かひかれて、エレクトリック・ベースでコピーしたりしたんだよなー。
▶過去の、ハース・マルティネス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm

 代官山・晴れたら空に豆まいて で、アルメルア系アメリカ人ギタリストであるバハグニ・トゥルグチアンの公演を見る。CDを聞いてもその真価は伝わるが、いろいろと感心するところありました。

 スペインに渡りフラメンコ・ギターの研鑽にあたったという経歴もすんなり納得できる、ガット・ギターを手にしてのフラメンコ・ギター表現がパフォーマンスの柱にある。が、そこは30歳のイケ面くん、年齢相応のいろんな差し込みがナチュラルになされ、結果として、繊細にして大胆な、パッション性にも富むスケールの大きなギター・インスト表現という像を結ぶのだからこっくりさせられる。

 何気にハーモニックス音を効果的に用い、機を見るに敏といった感じで、エフェクター音やループ音も用い、現代的濃淡や光彩を抱えたギター表現を提出する様は鮮やかにして、クール。それに接すると、とてもアンダーレイテットな人であるとも思わされるわけで……。いやはや、実力者でありました。

 単身の来日であるが、LAではバンドでの活動が主となるようで、ヴァイオリン奏者の定村史朗と打楽器奏者のヤヒロトモヒロ(2007年11月14日、2009年2月8日、2009年10月12日、2010年7月22日、2011年10月26日、2012年6月13日、2014年2月9日、2014年2月22日、2014年6月16日、2015年8月31日)が曲によっては加わる。その協調も無理がなかった。

 システム・オブ・ア・ダウンがオルタナ・ロック界の天下をとっていたころ、彼らがLAのアルメニア・コミュニティの出身であることもけっこう報じられた。そのため、同地にアルメニア系の人々が集まる地区があるのは知っていたが、彼のような人に触れると、LAのアルメニア地区にいかばかりかの幻想を持ちたくなるな。現在はアルメニアに居住している(んだよな?)才人ティグラン・ハマシアン(2014年9月26日)もそこの育ちで、トゥルグチアンとは一緒に音を出し合う関係にあったという。
 
▶過去の、ヤヒロトモヒロ
http://43142.diarynote.jp/?day=20071114
http://43142.diarynote.jp/200902102121513506/
http://43142.diarynote.jp/200910141731349364/
http://43142.diarynote.jp/201007241308021448/
http://43142.diarynote.jp/201111141210356758/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201402111029354181/
http://43142.diarynote.jp/201402240940377749/
http://43142.diarynote.jp/201406180852131370/
http://43142.diarynote.jp/201509021103292742/
▶過去の、ティグラン・ハマシアン
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/

<今日の、湘南>
 辻堂に葬式に来ていた、大阪在住の大学時代の友達に会うために鎌倉に出かける。渋谷から1本で鎌倉駅まで行ける湘南新宿ラインに乗ったつもりだったが、事故の影響で大船(だったかな?)止まりになってしまい、ぎゃふん。なんか、そういうこと少なくなさそうで、毎日使っている人はストレスたまりそう。三連休の最後の昼さがり。にぎわっていたな。海の見えるところで、歓談。なるほど、一度うるさいバイクの集団が通ったのがいやだったのと、休日や夏場に人が多そうなのはナンだが、ゆったりと時間が流れているような気がして、東京に出るのに時間がかかっても、こっちに住む人がいるのも分るような気がしたかも。そして、東横線で戻って来て、代官山で下車して、ライヴを見た。
 池袋・アブソルート・ブルーで、オーストリア人/スイス人合体ユニットであるロム・シェラー・エベレのギグを見る。その内訳は、ギターのペーター・ロム、ヴォーカルとヒューマン・ボート・ボックスのアンドレアス・シェラー、トランペットのマーティン・エベレ。ロムとエベレがオーストリア人で、シェラーがスイス人。今、欧州ではけっこう大きな場でライヴを持てているようだが、当然各者はそれぞれのプロジェクトも持っている。

 その3人名義のCDを聞いて、これは風通しのいい、各人の個性の出し方にも存分に留意したEUインプロヴァイズド・ミュージック、欧州ジャズ基調表現だと思ったが、実演を聞いてもそう。そして、まず耳奪われるのは、シェラーのヴォーカル技量の高さと自由さだろう。それは、まさにボビー・マクフェリン(2004年2月3日、2012年3月2日、2015年3月23日)のごとし。ヒューマン・ビート・ボックスやトランペット模写などの器楽的歌唱が確かすぎるし、それが一人のなかから自在に出てくる様はなかなかインパクトがある。他の2人も、シェラーの力量に見合うジャズ/即興技法をしっかりと身につけつつ、それを様々な曲調を介して自在に繰り出す、幅の広さを抱える。結果、その総体は、おもちゃ箱をお洒落にひっくり返したよう。残念ながら、途中で出て、渋谷に向かう。

▶過去の、ボビー・マクフェリン
http://43142.diarynote.jp/200402051853580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
http://43142.diarynote.jp/201503241654351156/

 そして、渋谷・セヴンスフロアーで、フランスのポップ・バンドであるオーウェルを見る。2000年にEPデビューし、これまで5枚のフル・アルバムを出している彼らは、絵に描いたようなメロディアスなポップ・ミュージックを送り出す、隠れた逸材。タヒチ80(2011年6月30日、2014年12月9日)との交遊から、その流れで紹介されることのある彼らだが、ポール・マッカートニーやブライアン・ウィルソンを起点とするメロディ・メイカーの系譜にずっぽりと入れるべきグループと思う。ニュー・ウェイヴ期表現のオマージュのためもあり英語で歌った2011年作『Continental』はぜひスクイーズのファンにも聞いてほしいな。オーウェルは間違いなくインターナショナル上位に位置する珠玉のポップ・ロックを作っていると、ぼくは太鼓判を押したい。

 片肺編成によるギグで、ヴォーカル/ギター、ギター/ベース、キーボード/フルートという編成。どこかくつろいだ情緒はラウンジ気分にも通ずるという感じで、ドラムレスでもそりゃ魅力は伝わるが、彼らの歌はヴァイブラフォンが効いているものがあり、その奏者やドラマーは同行してほしかった。前座で出たバンドなのだろうか、日本人の女性シンガーと男性ギタリストが最後のほう加わった。

▶過去の、タヒチ80
http://43142.diarynote.jp/201107081123376582/
http://43142.diarynote.jp/201412221528566282/

<今日の、リハーサルとインタヴュー>
 この日ライヴを見たアーティストの代表者にそれぞれ、リハのあとにインタヴューをし、ライヴも見るという日。
 まず、セヴンス・フロアに行くと、オーウェルがリハーサルをやっている。インタヴューに答えてくれたのは、曲を作り歌うジェホム・ディドロ。とっても謙虚な人だったな。そういえばリハが押し、その途中でそれを中断してインタヴューをやりましょうかと、彼は聞いてきたりもした。もちろん、リハに触れるのも一興(というか、ぼくは本編のときより引き込まれた)、ビール片手に楽しく待っていればいいわけで、全部すませることをフレンドリーに求めましたが。ディドロがリハの合間に遊びでボサノヴァっぽいことをちらりとやったので、インタヴューの際にボサノヴァは好きと彼に尋ねたら、コードの宝庫として見逃せないとの返事だった。あ、グループ名は英国人作家のジョージ・オーウェルから来ているそう。
 インタヴューを終えて池袋のヴェニュー(東京芸術劇場の向かいで、駅に近い)に急いで向かったが、今日沖縄から東京入りするロム・シェラー・エベレの面々の到着がおくれている。開場時間を過ぎてから面々は会場入り、先にリハをすすめるオーストリア勢のなか、シェラーが質疑応答に悠々と答えてくれた。現在38歳で、最初はロック小僧で、大学では専門的に音楽を学び、現在はクラシック方面にも活動は広がっているそう。そういえば、ロム・シェラー・エベレの曲にはアフリカっぽいものもあり、それだとシェラーの歌はリチャード・ボナ(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月19日、2002年12月14日、2004年12月15日、2006年2月16日、2008年10月19日、2010年2月5日、2010年6月6日、2011年1月25日、2012年5月14日、2012年12月15日、2013年12月2日、2015年1月9日、2015年1月11日)を想起させる味もだす。お、ピーター・バラカンさんの<マクフェリンとボナ、近い説>(http://43142.diarynote.jp/201501131648401181/ の最後のほうを参照)を実証するような事実ですね。
 その後、また渋谷に戻ったわけだが、オーウェル実演終了後、なじみのバーに寄ったら、偶然サッカー日本代表チームのイランとのテスト・マッチをやっている。家で地上波放送が映らない身としては、久しぶりに日本代表のサッカー試合をTVで見たな。この日は少し先発を代えていたが、代表戦を他者と見ると話題に登らざるをえないのは、メンバー固定化の味気なさ。それ、歴代監督すべてに当てはまることではあるのだが……。それが代表強化の近道/王道なのかもしれないが、固定選手がケガしたり、出場停止になることもあるわけで。また、日本選手のフィレキシビリティに欠ける試合運びは先発固定主義とつながっているところがあるのではないか。

 マルチン・ボシレフスキ・トリオ(2015年9月24日)、ザ・タイム・イズ・ア・ブラインド・ガイド(2015年9月28日)、そして彼らと、ここのところECM所属アーティストの来日が重なっているなー。

 2006年以降、自己クインテットのローニンの4枚のアルバムをECM(一番新しい作品となるライヴ・アルバムは2枚組だ)から出しているスイス人ピアニストのニック・ベルチュ(2006年10月26日、2008年4月27日、2012年12月23日)のリーダー・グループのショウを、代官山・晴れたら空に豆まいて で見る。長目の曲を4曲やった。

 バス・クラリネットと小さなサックスを吹いたシャー(2012年12月23日)、ドラムのカスパー・ラスト、エレクトリック・ベースのトミー・ヨルディ。新加入となるベーシストは日本在住とか。ベルチェもかつて神戸や京都に住んでいたことがあるので〜その流れで、いまも僧侶くずれのような妙な格好をしていますね〜、そのベーシストの件にもあまり疑問は感じないか。今回はサウンドと照明担当の両名も同行。彼らはこの後、中国8カ所でライヴを持つ。

 演奏を聞いてまず感じたのは音がいい、ということ。相変わらずピアノは弦をいじって色んな音を出すが、それをはじめそれぞれの楽器音がちゃんと聞こえるし、とくにドラムの音には感激。1曲目はちょいドラムの音が大きいかとも思えたが、あの複雑なリズム・テクスチャーを支える楽器の音がこれだけ明瞭に聞きとれるんだもの、これは至福というしかないではないではないか。リム・ショット音に1拍目だけエコーをかけるとか、細かい処理がなされていた。

 リフ、反復の妙がモザイクのように、ときに騙し絵のようにつらねられ、確固としたうねりや色彩感や刺を作り、流れて行く。それらは変拍子の見本会のようなものでもあるわけだが、かつて禅にかぶれた(?)ベルチュの指針はわざとらしさや過度の負荷を排する方向を持つ、集合演奏として完結する。そこらへんのバンドの意志の統一の取りかたは見事だし、ほんと皆さん頼もしい奏者たち。

 一言で言えば、プログ・ジャズ。曲にしても、各人の演奏にしても所謂ジャズの様式からは離れるが、とてもスリリングで、力と美意識をを持っていて、ジャズを通過した奏者の今がここにある。これを現代ジャズの一つの秀逸なカタチというにやぶさかではないし、そういう彼らを送り出すことが似合うECMはやはり秀逸なレーベルなのだと思う。

▶過去の、マルチン・ボシレフスキ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/
▶過去の、ザ・タイム・イズ・ア・ブラインド・ガイド
http://43142.diarynote.jp/201510021143165760/
▶過去の、ニック・ベルチェ
http://43142.diarynote.jp/200611020835110000/
http://43142.diarynote.jp/200805031359390000/
http://43142.diarynote.jp/201212240918419016/
▶過去の、シャー
http://43142.diarynote.jp/201212240918419016/

<今日の、真心>
 この日は、ステージ上にはフェンダー・ローズも置かれ、ベルチュはそれも一部で演奏した。実は一昨日、この会場(晴れたら空に豆まいて)にバハグニ・トゥルグチアンを見に来た際、その上階にある山羊にきく? の方に、ローニンは出演していた。トゥルグチアンのライヴ休憩時にのぞいたら、まだ実演開始前。それで、頭の1曲だけ聞いたのだが、この日の演奏と比較すると、けっこうサウンドの噛み合い方に差異があり、生理的な“立ち”の感覚の違いを感じた。やはり、ローニンとしてのちゃんとした公式や流儀はあるものの、実演では即興〜気分で噛み合っていく部分もおおいにアリということなのだろう。まっとうにジャズを知るミュージシャンがやる実演は臨機応変にしてヴィヴィッド、事情が許すなら複数回ライヴを見たほうが有意義なのかと実感した次第。ということを書いていると、ベルチェは尖った気難しい人のように感じる方もいるかもしれないが、12日に少し立ち話したぶんには、柔和ないい人(日本に住んだことも納得できるような、とも書けるか)。この日も、知人のミュージシャンが彼にCDを渡したら、彼女にサインをねだり、もらうと面々の笑み。なんか、音楽に対する純真を垣間みたような気持ちにもなりました。でも、それって、大切かも。で、誘われて、ぼくも一緒に写真を撮ってしまったYO。

 NYに住む(今もマンハッタン音楽院に通っているのかな?)、作編曲家/ピアニスト(2014年7月10日)の2作目『タイム・リヴァー』(ユニバーサル)リリースをフォロウするライヴ。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 m_unitと名付けられたラージ・アンサンブルの指揮をする(1曲ではピアノも弾いた)彼女と、構成員13人。アルト/フルート、テナー/ソプラノ、バリトン/バスクラ、トランペット、ホルン、ヴァイオリン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ヴァイブラフォン、ピアノ、ベース、ドラム。という編成を見ても、通常のジャズ・ビッグ・バンドから離れた私の音を求めるという強い意志は出ていますね。なんて軽く書いちゃったが、ここに至るまでの試行錯誤や生理的な闘争は相当のものだったのではないだろうか。

 NY録音の新作に入っていた曲を中心に、デビュー作収録の曲も。やはり、4人の弦のサウンドは良いし、彼女の編曲の冴えは実感できる。それに比べると管奏者たちはもう少し気張ってほしかったという恨みは残る。とくに、ソロ。お行儀よすぎない? なんか、日本の管奏者の弱点に触れた思い……。アルバムで引き立つ使われ方をしていたヴァイブラフォンのパートは香取良彦(2012年11月9日、2015年9月27日)が叩いていたが、ぼくの耳には玉虫色演奏に聞こえてしまった。ともあれ、弦セクションは彼女の国立音大時代の友達を含むクラシック側の奏者のようだが、質が高いなあ。ピアノはソロとしても活動している宮川純、趣味の良い指さばきをしていると思った。彼と狭間は、小学校高学年の頃からコンクールで顔見知りだったという。

 めくるめく総体の土台を支える、40歳近くに見えるベース奏者のサム・アニングとドラマーのジェイク・ゴールドバスは彼女のアルバムにも入っていて、挾間がわざわざNYから連れてきた奏者たち。土台さえしっかりすれば一期一会の大型表現も何とかなるサというのは、この前のパット・メセニーとブルーノート東京オールスターズ・ジャズ・オーケストラ(2015年9月27日)の実演設定を思い出させるか。事実、その外国人2人による、細かい楽器音の“綾”の間に自在に入り込んで、サウンドの変化の起点を作ったり、強度を高めたりする演奏は立派。こりゃ、わざわざ連れてくる意義があるとも痛感。あの両者の演奏、どのぐらいまで譜面化されているのだろう? なんでも、彼女は米国でライヴもやるときもこの2人はかならず同行させるのだとか。アニングはオーストラリア出身、ゴールドバスはロイ・アサフの来日公演(2014年9月7日)で来ているそう。

 前途洋々の輝く才の発露に触れ、肌が5歳ほど若返る。な〜んて。1986年生まれだから、まだ20代だものなー。後は持続、様々な経験や周りの人たちとのやりとりが、もっともっと彼女の音楽をアトラクティヴなものにしていくに違いない。もし一つ望むとすれば、才気走った色づけをより引き出すような素材〜印象的なメロディをもっと書いてほしいこと。ぼくがこの晩の演奏曲で一番印象に残ったのは。トゥール(2007年2月9日)のメイナード・キーガンやジェイムス・イハ(2012年9月26日)らが組んだロック・バンドであるア・パーフェクト・サークルのカヴァー曲だったもの。

 しかし、確かな弦音の存在って、いいなー。山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日)は<ウィズ・ストリングス>のアルバムを作らないか。で、弟子筋/同じメネージメントに所属する狭間が腕によりをかけた弦アレンジをそこに提供する。マッコイ・タイナーの『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド』の山下/挾間版のようなもの、ぜひとも聞いてみたい。

▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
▶過去の、香取良彦
http://43142.diarynote.jp/201211170926496101/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
▶過去の、パット・メセニー&ブルーノート東京オールスターズ・ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
▶過去の、ロイ・アサフ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶過去の、トゥール
http://43142.diarynote.jp/200702122332570000/
▶過去の、ジェイムス・イハ
http://43142.diarynote.jp/201209281128386373/
▶過去の、山下洋輔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/

<今日の、感心>
 あらららあ、と思ったのは、彼女のMC。けっこう舌足らずな感じでしゃべっていて、出光音楽賞を受けた際に持たれたフォーマルな公演のときの凛とした喋り口とは印象が違う。おそらくこっちのほうが素に近いのだろうけど、見事にTPOを使い分けていることに驚く。そういえば、会場チェックインのときに彼女の手書きのカードを受け取ったが、入場者全員に配られたカードの文面は違っているらしい! あなた、一体何枚のカードを、考えを巡らせ書いたの? すごい、まっとうな営業努力している。とかなんとか、才に見合う努力や気配りもできる人であり。それは彼女が大きな評価を得る助けるに違いない。

 まず、広尾・ノルウェー大使館のオーロラ・ホールで、ピッキデーを見る。完全生音、による。同デュオは、竪琴(膝のうえにちょこんと乗せていて、小さなハープのよう)を弾きながら歌うシグルン・タラ・エヴァランと、カップ付きトランペット、ミュートしたピアノ(普段はシンセサイザーを用いるそう)、カリンバ、バック・コーラスなどを担当するエイリック・デルスダールからなる。

 曲調は澄んだ感触からトラッドっぽいと思わせるが、英語で歌っていてオリジナル。そして、具体的な根拠を出せないのは心苦しいが、北欧的な何かを孕んでいるのは間違いない。清楚で透明感に溢れたエヴァラン嬢の歌にどこかウィットに富んだ感じで付加音を付けるデルスタールの様もまたなんらかのノルウェー的な感触を引き出すのか。北の国の空気下にある形而上との対話が根底にあるデュオ表現と書いてしまうと、勇み足にはなるだろうけど。

 その後は、デイヴィッド・サンボーン(2000年3月21日、2003年7月18日、2010年12月1日、2012年3月3日、2013年9月3日、2014年11月6日)を見る。南青山ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 キーボードのリッキー・ピーターソン(2000年3月21日、2003年7月18日、2012年3月3日、2013年5月10日、2014年4月23日、2014年11月6日)、ギターのニック・モロック(2012年3月3日、2014年11月6日)、ベースのアンドレ・ペリー、ドラムのクリス・コールマンに加え、パーカッションの岡部洋一(2000年7月29日、2000年9月14日、2004年5月28日、2004年6月2~3日、2004年6月9日、2004年11月19日、2005年2月19日、2006年7月7日、2006年8月27日、2006年12月3日、2008年1月31日、2011年2月10日、2010年12月28日、2011年8月22日、2013年2月11日、2013年2月19日、2014年2月9日、2015年4月24日、2015年6月17日)が加わった編成なり。初お手合わせとなるリハは1時間半ぐらいしかなかったようだが、パっと接する分には堂々、なんの問題もない。どうにでも対応できるように、多めの打楽器セッティングだったかな。外見共々、普通に溶け込んでいて、うれしくなっちゃう。←この項について、翌日の欄外にも少し触れてマス。

 サンボーンは間違いなく。前より音色が直線的と言うか、金属的になっている。それはアルバムでも少し感じられるところだが、なんにせよ、“ソウル・シンガーのように歌うサックス”たるアドヴァンテージはいまだあり。アンコール曲は新作『タイム・アンド・ザ・リヴァー』に入っていた、ディアンジェロ(2015年8月18日)の「スパニッシュ・ジョイント」なり。

▶過去の、デイヴィッド・サンボーン
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130903
http://43142.diarynote.jp/201411101737513509/
▶過去の、リッキー・ピーターソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201305131335092387/
http://43142.diarynote.jp/201404260900117482/
http://43142.diarynote.jp/201411101737513509/
▶過去の、ニック・モロック
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201411101737513509/
▶過去の、岡部洋一
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm 29日ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040608
http://43142.diarynote.jp/200406111859060000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20040609
http://43142.diarynote.jp/200411231717590000/
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http://43142.diarynote.jp/200607100307170000/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20101228
http://43142.diarynote.jp/201102121001091213/
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http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
http://43142.diarynote.jp/201402111029354181/
http://43142.diarynote.jp/201504271015006453/
http://43142.diarynote.jp/201506181125125625/
▶過去の、ディアンジェロ
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/

<今日の、赤ちゃん>
 シグルン・タラ・エヴァランは、生後4ヶ月の赤ちゃんと旦那さんも同行。ノルウェーでは子供が生まれると男性も半年間休職でき、旦那さんはそれを利用しての来日とか。
 まず、アントニ・ガウディ(1852〜1926年)の著名未完の大規模宗教施設を題材とするドキュメンタリー映画を見る。2007年10月28日〜http://43142.diarynote.jp/200711080728570000/〜の項にちらり記しているように、8年前にバルセロナに行ったのはFCバルセロナの試合を見ることとガウディ関連の諸建造物に触れることにあったのだが、ぼくがガウディ関連で一番楽しめたのはグエル公園。建設中であるサグラダ・ファミリアはいまいち全貌が掴みきれずという思いを持っていたので、試写の案内が来て、これ幸いと新橋・TCC試写室に行った次第。

 1961年生まれのスイス人であるステファン・ハウプトが監督した、2012年映画。感じとしては、音楽偉人ものドキュメンタリー映画の主題をミュージジシャンからガウディ〜サグラダ・ファミリアに代えるとこうなる、と説明できそう。ガウディの他の建造物に対するネタには触れず、彼の大まかな生涯を紹介しつつ、多くは関係者の証言により1882年着工のサグラダ・ファミリアの昔〜今〜(少しだけだが)これからが語られる。普通の観光客が見ることができない内部映像も出てくるが、それとともにぼくは俯瞰映像をもっと出してほしかった。そういう空撮シーンはあるので、マテリアルはいろいろあったと思われるが。

 驚いたのは、日本人が重要な証言者として出てくること。現在、主たる建造者である彫刻家の外尾悦郎さん。TV-CFなんかにも過去出ていて、外で活躍する日本人としてよく知られる人のようだが、地上波TVが見ることができないぼくは初めて、その存在を知る。彼をはじめ、多くの証言はスペイン語だが、英語も出てくるし、監督の意を伝えるナレーションはドイツ語だ。なお、劇中用いられる音楽は宗教歌ぽくもあるクラシック。オーケストラ演奏シーンも、少し出てくる。

 完成不可能なんて言われるのも納得できるかもしれない、山ほどの凝り具合の建造物。改めて痛感させられたのは、サグラダ・ファミリアは教会を核に置くカトリックの宗教施設であるということ。かつ、見る者は、宗教の力の底知れなさを思い知らされるだろう。昔、バチカン市国に行ったときも、宗教の恐ろしいまでの巨大さに頭の中がぐわんぐわんとなったが、先に書いたようにサグラダ・ファミリアは一般観光客にはその概観がなかなか掴みにくいので、ぼくはこの映画を見て、それを直截に感じた。しかし、ものすごく先だったサグラダ・ファミリアの完成が現在は2026年(ガウディ没後100年に設定しているのか)に予定されているというのは本当? ロマンがなくなるような気がして少し残念な気がするのは、ぼくだけだろうか。なんか、結局完成が間に合わないような気もするが、完成するころ、独立派優勢と伝えられるバルセロナがあるカタルーニャ地方はスペインに留まっているのだろうか。

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)で、スレイヴに1970年後半から1980年代前半の4作品でリード・ヴォーカルを務めたスティーヴ・アーリントンを見る。オハイオ・プレイヤーズ(2010年6月4日)、ザップ(2010年2月11日、2011年4月24日、2013年1月18日)/ロジャー/ザ・ヒューマン・ボディ、デイトンをはじめ、オハイオ州はファンクの好産地として一時名をはせたが、スレイヴもその名声を支えた好ファンク・バンドだった。

 リーダー作も何作も持つアーリントンだが、突然の来日(初来日のよう)という感じもあり。それはストーン・スロウ所属のディム・ファンク表現に2年前に担ぎ出されたこととは関係アリか。来月には、ディム・ファンクもやってくるな。

 もう少し見栄えのする格好をしてほしかった59歳となる当人に加え、バンドはアフリカ系による5人。電気ギター(けっこうロッキシュで、ソロは特にそう)、6弦電気ベース、ドラムは50歳がらみの奏者で、キーボードと女性バックグラウンド・ヴォーカルは20代か。なんかかつてはベイエリアでラテンをやっていたこともあるという彼はときにティンバレスも叩いたが、叩かなくても良かったか。

 しっとり目に流れず、思った以上に腰のあるファンク〜ミディアム系を披露したのはうれしい。アーリントンは音程はずれないが、声量は過剰にない。ただ、ファルセットと地声が入り交じる歌い方は個性があるし、ファルセットで崩れて歌うときはどこかブーツィ・コリンズ(2011年8月12日、2012年5月31日)ぽくもあり、また女性コーラスはP-ファンクぽいところもあり。やっぱり、いろいろとうれしいやね。

▶過去の、シュガーフットズ・オハイオ・プレイヤーズ
http://43142.diarynote.jp/201006071817447501/
▶過去の、ザップ
http://43142.diarynote.jp/201002150514277396/
http://43142.diarynote.jp/201104270528378826/
http://43142.diarynote.jp/201301211143292478/
http://43142.diarynote.jp/201508140947547631/
▶過去の、ブーツィ・コリンズ
http://43142.diarynote.jp/201108131129381378/
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/

<今日の、リッキー・P>
 昼下がり、デイヴィッド・サンボーン・バンドで来日しているリッキー・ピーターソンに約20年ぶりにインタヴューする。サンボーン・バンドに加わった岡部洋一のこと、すごすぎ、だそうです。1958年ミネアポリス生まれで今も同地に居住/スタジオを所有する彼(ただし、極寒の冬場はハワイで過ごしたりもするそう)はプリンス(2002年11月19日)と同い年で、そのデビュー作『フォー・ユー』のころからの付き合い。実はザ・レヴォルーション結成の際、誘われたそう。ピーターソンはプリンス作品録音に関連する場合、リッキー・Pとクレジットされることもありますね。彼がプロデュース関与したペイズリー・パーク発のメイヴィス・ステイプルやザ・スティールズ作は好盤。さらにはニュー・パワー・ジェネレイションにいたロージー・ゲインズの1995年モータウン盤もピーターソンはプロデュースしている。なお、彼の弟は、ペイズリー・パークからアルバムを出したザ・ファミリーのシンガー/マルチ奏者のセイント・ポール(2010年1月10日)であります。
▶過去の、リッキー・ピーターソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201305131335092387/
http://43142.diarynote.jp/201404260900117482/
http://43142.diarynote.jp/201411101737513509/
http://43142.diarynote.jp/201510231145525391/
▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm 2002年11月19日
▶過去の、セイント・ポール・ピータソン
http://43142.diarynote.jp/201001111143532596/

MONSTER大陸

2015年10月23日 音楽
 ブルース・ビヨンドという音楽性を持つイナセな4人組バンド(2014年10月25日)を、渋谷・La. mamaで見る。30本弱のツアーの最終日となり、ワンマンにて。

 ヴォーカル/ギター、ブルース・ハープ/ヴォーカル、ベース、ドラム(左利きのセッティング)という編成。面々の力量は問題なし、それががっつり重なるのだから、あまりファンキーな行き方には留意していないかもしれないが、グルーヴィな部分も出てくるし、鼓舞される。たとえば、ギタリストが使っている種類はとかすぐに気になるんだから(ギブソンのセミアコとSG系のやつ、いい塩梅に塗装がはげたストラト)、やっぱりちゃんとした技量を持っていると思う。リトル・バーリー(2005年6月6日、2006年12月11日)のバリー・ギャドガンがプライマル・スクリーム(2000年2月11日、2002年11月16日、2005年7月31日、2009年1月28日、2011年8月12日、2013年11月6日)に入ってしまったように、ここのフロント・マンが有名ロック・バンドに入ってしまったとしても、ぼくは驚かない。

 基本、ブルースやR&Bから発展した日本語のオリジナルをやるのだが、その咀嚼はうまくこなしていて、いい日本人バンドであると思わされる。逆に英語のカヴァーをやると、バンド・サウンドの濁りの感覚やヴォーカルの質感(日本語で歌っているときはなんの不満も感じないのに、カヴァーだと軽く感じてしまう)の不足を感じてしまう。この感想、本人たちにしてみればかなりイヤなものであるだろうけど、より広い層を狙えるオリジナル曲表現のほうが光っているなんて、ぼくは素敵なことと思う。

▶過去の、MONSTER大陸
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/
▶過去の、リトル・バーリー
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http://43142.diarynote.jp/200612151846560000/
▶プライマル・スクリーム
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20050731
http://43142.diarynote.jp/200901290803429732/ これ以降、ガャドガン加入
http://43142.diarynote.jp/201108131129381378/
http://43142.diarynote.jp/201311071343585896/

<今日の、巡回>
 会場近くの1軒目のお店では、ぼくもラ・ママにいましたという人あり。けっこう、入りはあったもんな。2軒目に移ると、なんとソー・バッド・レヴューのリード・シンガーだった故砂川正和さんの娘さんと会う。21歳、彼女も歌を歌っているそう。これから、ルームに行くとニッコリ。ソー・バッド・レヴューは1970年代半ばにちょい活動した関西性を前に出した伝説的ソウル/ファンク・バンドで、プロダクツはLA録音のスタジオ作とライヴ盤を1枚づつリリース。レコーディングの際のLA滞在の種が、メンバーの山岸潤史(1999年8月5日、2000年12月7日、2001年7月16日、2004年3月30日、2005年7月30日、2005年7月31日、2007年2月3日、2007年2月4日、2007年2月5日、2008年9月11日、2009年5月19日、2009年7月27日、2010年8月4日、2011年5月17日、2012年9月8日、2013年6月13日、2014年7月29日、2015年1月29日)の後の米国居住を導いたのではないか。2014年夏に少し再結成ライヴがなされたが、今年メンバーの石田長生(2009年7月27日)がお亡くなりになった。なお、まだ渋谷には橙色の野外喧噪はなし。いつから?
▶過去の、山岸潤史
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040330
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http://43142.diarynote.jp/201306171646424744/
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http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
▶過去の、石田長生
http://43142.diarynote.jp/200908071452433928/
 下北沢・Com.Cafe音倉。休憩を入れて、ゆったり3時間弱に渡る出し物、なり。終わった後には、いやはや傑物をぼくは知ってしまった、日本は広い……という、思いなり。

 主役の盛島貴男は、65歳の奄美の漢。普段は椎茸栽培もしているという。高校卒業後に東京で就職したこともあった。その後、1998年、奄美竪琴の演奏を耳にし、なんか自分でもできそうと演奏、だけでなく竪琴製作も見よう見まねではじめてしまう。なんか、その流れ、マンガみたいじゃないか。作った竪琴は70ほどで、それはいろんな地に散っているらしい。この晩のライヴは、盛島65歳のデビュー作『奄美竪琴』リリースを祝うものだ。

 まずは、やはり盛島製竪琴を用いる里アンナ(2015年6月3日)が打楽器の山本恭久(彼が、『奄美竪琴』を奄美で録音している)とともにパフォーマンス。途中で、盛島が呼び込まれ(白い半袖下着ふうシャツとスラックス姿)、同じ曲をそれぞれに披露するという場面も。おもしろいおもしろい。最後は、よく奄美に行っていて、盛島とも懇意にしていて、この晩のライヴ企画者である元PINKのスティーヴ・エトウもジャンベで加わる。

 その後は、よいよいスーダラの、森島独演会。まず、おいら節で自在に流れる話だけで、わーい、なんなんこのおっさんと思わされるところ大アリ。彼の竪琴弾き語りの歌声はハード・ブルースもびっくりのうなり声の感覚を持つのだが、それは喋っているときもほぼ同様。そしてそれに触れると、浪曲とか詩吟とも繋がるかもという感想も持つ。そして、一方ではスラスラと響く弦音をくりだしたりもし、それらは不思議なマリアージュとともに得がたい滋味表現となる。しぶとさのなかに輝きや、一徹さのなかにしなやかさも、見え隠れする。また、それを支えるのはお酒であると思わせるところもあって、それがお酒が大好きなぼくにとってはすこぶる心地よい。

 うわー、うひー、どひゃー。強い印象的な音楽は、規格外の個から生まれるもの。そんなことを、思い知らされたりもするか。無敵。起爆力抜群。繰り出される曲は島唄に限らず、島根県の民謡、「リンゴの花びら」、加藤登紀子や長谷川きよしのヴァージョンで知られるらしい「黒の舟歌」など、いろいろ。<奄美に軸足を置きつつ、思うまま広がる盛島貴男、オイラの表現>、大炸裂の晩でありました。

 アンコールはみんな出て来て、ヴォーカルは三線を弾きながら里アンナが取り、御大はダンサーに専念。ヒャハハハ。彼はスティーヴ・エトーのことをスティーヴィー・ワンダー、山本恭久は山本譲二と呼んでいた(笑い)。

@25日16時、渋谷タワーレコードで、彼のインストア・ライヴあり!

▶里アンナ
http://43142.diarynote.jp/201506070801066234/

<今日の、残念っ>
 実は、本日から3日間、丸の内・コットンクラブで持たれる米国人女性サックス奏者のミンディ・エイベアのショウを見たかった。歌も歌いキャディ・ダルファーのフォロワーというスタンスも持つ彼女のレギュラー・バンドの顔ぶれが、なんとも興味深いのだ。ヴォーカリストはワズ(ノット)・ワズの看板シンガーであったスウィート・ピー・アトキンソン! 彼はドン・ワズの制作でアイランドから『Don’t Walk Away』(1982年)というアルバムを出していますね。とともに、ギタリストもワズ(ノット)・ワズのバンド員だったランディ・ジェイコブズ。ちなみに、アトキンソンにしろジェイコブズにしろボニー・レイット、ライル・ラヴィット、ウィリー・ネルソンとかのアルバムに名前が見られる。ちょっとでいいから、やっぱり見たかった。明日は、ピーター・バラカンズ・ライヴ・マジックだし、明後日はアル・マクドゥウェルらのショウがクアトロであるし、あ〜あ。

 来日後長年のココロある音楽紹介作業を集大成するような、ピーター・バラカンがキュレイトする音楽フェス、今年が2回目となる。ぼくは、2日目を見た。基本、昨年と同じ設定。恵比寿・ガーデンホール、ガーデンルームの二つのハコに加え、今年は映像作品放映会場として、ガーデンプレイス内の映画館も会場として用意されていた。実演の合間にそのガーデン・シネマにちょい行ったら(そのときは、デレク・トラックス〜2004年5月20日、2006年11月20日、2014年2月11日〜のライヴを放映)、マジな映画館なのでフクフカの椅子。オヤジには、休憩用にアリかもしれぬ。

 ルーツと繋がる感覚を持ち、手作り感覚やアーシーな部分を抱えるアーティスト群がいろいろと登場。とともに、彼らはいろんな国籍の担い手でもあった。米国の清新ルーツ女性3人組のアイム・ウィズ・ハー、濱口祐自(2014年4月11日)らとブルース調セッションで渡り合ったりもしたモンゴルのデリヒ、豪州アボリジニのシンガー/ギタリストのグルムル(ちゃんと、バンドを従えていた)、アイヌの伝承歌“ウポポ”の再生や伝承を求める女性4人組のマレウレウ(なんか、ブルガリガン・ヴィオスみたいと思わせるところも)、細野晴臣(2009年10月12日、2010年4月15日、2010年11月21日、2011年8月7日ち2012年8月12日、2012年9月5日、2013年1月29日、2013年8月7日、2013年8月11日)と鈴木茂(2013年8月11日、2010年11月21日)と林立夫(2009年1月16日)がそろったTIM PAN、キューバのスピリチャアルでもある若手女性シンガーのダイモ・アロセナ……。ほんと様々で、けっこう体験の場という感じがあったか。女性陣のパフォーマンスが好印象、なり。

 TIN PANは当初、リトル・フィートのポール・バレルとフレッド・タケットのバンドとして用意されたものの、ポール・バレルが病気になってしまったため、TIN PAN名義の出し物となり、シンガーとして小坂忠(2001年12月16日2013年8月11日)と久保田麻琴(2004年5月7日、2009年10月12日、2010年12月4日、2013年2月5日、2013年9月20日、2014年9月16日)を加えた形で持たれたそう。ピアノ/キーボード奏者は、小島良喜(2000年11月16日、2004年7月27日)。鈴木茂が歌った曲はザ・バンドの「チェスト・フィーヴァー」を日本語のロックにしたみたいな曲だった。また、リトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の「ディキシー・チキン」のカヴァーもあり、それは久保田がリード・ボーカルを取った。

▶過去の、デレク・トラックス
http://43142.diarynote.jp/200405200442460000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
▶過去の、濱口祐自
http://43142.diarynote.jp/201404141032338019/
▶過去の、鈴木茂
http://43142.diarynote.jp/?day=20101121
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
▶過去の、林立夫
http://43142.diarynote.jp/200901171017206901/
▶過去の、小坂忠
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http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
▶過去の、久保田麻琴
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http://43142.diarynote.jp/200910141731349364/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101204
http://43142.diarynote.jp/201302091324078636/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130920
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
▶過去の、小島良喜
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/

<今日の、会場>
 誰もが頷くのは、客年齢の高いことか。まさに一番音楽にお金を落とす世代が集まっているように思えたし、会場前にヴォルヴォが宣伝用に2台停められていたのにも、納得。飲食販売のブースが模擬店と言いたくなるものなためもあってか、“親父の文化祭”って感じがあるナと思わされました。というのはまったく関係ないけど、なんか去年以上に楽しんだという所感あり。よかった良かった。毎日新聞11月12日夕刊に、この日の模様を書く予定。。

 アルト・サックスのスーン・キム、ギターのヴァーノン・リード(2000年8月13日、2008年12月16日)、ベースのアル・マクドゥウェル、ドラムのグラント・カルヴィン・ウェストン(2014年7月28日)というのがその布陣。“皆オーネット・コールマンが好きだった“という副題付けがなされていたが、いちおう今年亡くなったオーネット・コールマン(2006年3月27日)・トリビュート・バンドと言っていいのかな。かつてコーマンにNYで教えを乞うたというスーン・キムが発案し、現在は日本に住む彼と在米のアフリカ系奏者3人が重なるという設定のものを2セットにわたりたっぷり披露する。マクドウェルとウェストンは実際、コールマンのザ・プライムタイムのメンバーであった人たちですね。渋谷・クラブクアトロ。

 どうなるか事前にあまり想像できなかったのだが、ずっと立ちっぱなしでグヒヒヒと見ちゃったな。とにかく、米国勢3人の重なりが強力にして、秀逸。それ、“先進都市の民俗音楽”なんてノリもあったコールマンのエレクトリック・ファンク表現のもやもやを再提出している部分もあったか。それなりの仕掛けや決めを持ちながら流れて行く様は一発モノではなく、リハを持っているとも思わせた 。

 元リヴィング・カラーのヴァーノン・リードは老けた感じがなく、存在感あり。けっこう、彼がリーダーシップをとって流れて行くと感じさせるもし、その過剰なソロとあいまって、ほんといいギター奏者であると再認識。前で見ていた人によると、ウェストンも変化のサインを出すときがあったそうだが、2バス・ドラムで叩く彼のビートが昨年来日時より遥かにいいのには少し驚く。そのときのベーシストはジャマラディーン・タクーマ(2014年7月28日)。うーむ、そしたらタクーマがいけなかったと判断するしかないじゃないか。
 
 NY芸術高校を出てすぐに1980年代にコールマン・バンド入りをしたという輝かしい経歴を持つアル・マクドゥエルは今そんなに名前を見るわけではないが、臨機応変な余裕たっぷりの演奏を示してマル。やっぱ、コールマンの目に叶った人は実力あったのだなと思わずにはいられず。彼が1989年と1990年にグラマヴィジョンから出したリーダー作はフュージョンぽいところもあって、そんなに好きではなく、他者に勧めようとは思わないが。

 その3人にキムも加わるわけだが、3人だけの演奏のほうが良いのではないかと思ったのは確か。確かにキムはオーネット流れのフレーズを絞り出すのだが、残念ながら質感がコールマンのように“羽が生えた”ものではないので、なんか聞いていて疲れちゃう。とともに、物腰がファンキー じゃないのがまずい。代わりに、日本でもっともオーネットのフレイジングや諧謔を知っている泉邦宏(2006年7月3日、2011年7月10日、2012年4月21日)が加わったのならとも思う。ごめんなさい、キムさん。

 そしたら、セカンドの終盤には、梅津和時(2001年9月2日、2001年9月21日、2004年10月10日、2005年7月29日、2006年1月21日、2008年11月14日、2009年2月8日、2009年6月5日、2010年3月20日、2011年4月1日、2012年2月10日、2012年11月21日、2012年12月8日、2013年11月20日、2014年9月16日)が加わる。それは、オーネットの有名曲「テーマ・フロム・ア・シンフォニー」とパーラメントの「ギヴ・アップ・ザ・ファンク(ティアー・ザ・ルーフ・オフ・ザ・サッカー)」の改変曲。うひょひょ。もう梅津大王、自分の流儀〜非コールマン・マナーでブっとぶ。イエイ。とかなんとか、かなり満足度が高かった。

▶過去の、ヴァーノン・リード
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm 8/13
http://43142.diarynote.jp/?day=20081216
▶過去の、グラント・カルヴィン・ウェストン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
▶過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶過去の、ジャマラディーン・タクーマ
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
▶過去の、泉邦宏
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/201107111327576732/
http://43142.diarynote.jp/201204221307297965/
▶過去の、梅津和時
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm タラフ+コチャニ(2日)、エスマ(21日)
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200902102121513506/
http://43142.diarynote.jp/201003221028556158/
http://43142.diarynote.jp/201104041101543361/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120210
http://43142.diarynote.jp/201211231437358985/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121208
http://43142.diarynote.jp/201311230757159421/
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/

<今日の、懸念>
 なんかメイラーの反応が遅くなっているのと、マイ・ナンバー通知を受け取るか否か、ということ。小せえ、な。

 オーストラリア出身の女性シンガー・ソングライターの初来日公演は良かった。今、見るべき最たるロック系アクトと思っていたけど、想像していた以上。ロックっていいナとも、きっちり思った。恵比寿・リキッドルーム。

 ベースとドラムを従えた最小単位のバンドにて。バーネットはエレクトリック・ギターを爪弾きながら歌い始めたんだが、歌の感じに覚えた所感は、クリッシー・ハインド(ザ・プリテンダーズ)。言葉を崩し気味に投げ出す感じが似ている。とともに、その曲がニュー・ウェイヴ期ポップ・ロックのような曲調であったためもあったろう。崩しの感覚はもっと強く出る場合もあり、つきるところルー・リードにたどり着くと指摘できる? 曲はオルタナ・ロック調もあり。

 ギターのコード弾きも浮遊気味に弾く場合もある(←難しいはず)が、これがかなりイケる。びっくりしたのは、真正ブルース・マンのようにピックを使わずに、多様な弾き方をしていたこと。コード・カッティングと複音弾きで、いろんな局面を出す。単音弾きゼロで、それがとっても個人的にマル。なかには、ソニック・ユース( 2001年2月20日、2007年4月20日)を想起させるような局面もあり。左利きの彼女だが、ジミ・ヘンドリックス風の演奏も求められればかなり上等にこなすのではないかと思わせられた。

 ちょい浮いた歌とギターのコンビネーションが誰かに似ていると思い、ムズムズ。そしたら、それはジャン・ポール・ブレリーぢゃん。うわー。あのNYの地下ジャズ界のはみ出し表現も彼女は聞いているんじゃないかなあ(すると、ソニック・ユースにも出会いますよね。逆かもしれないけど)。男性のリズム隊は最低限のことをやっていたがOK。素直にやりたいことをやっているだけとも思わせるのに(ビートも凝っていないのに)、今の輝きを持っていて、それにも拍手。素敵でした。

▶過去の、ソニック・ユース
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200704251225580000/

<今日の、光景>
 午前中打ち合わせで外に出たら、うちの前の遊歩道を、保育所だ託児所だかの幼児とお姉さんたちがほほえましく散歩中。両者とも、ハロウィーンを意識した簡単な仮装をしている。こんな小さなころからハロウィーンというならわしに触れていると、そりゃ思春期のころはバクハツするだろうなーと思うことしきり。で、夜はもう……。肌を一杯出している皆、風邪ひくなよ〜。

 LAきってのジャズ希望の星的存在(2014年5月28日)の公演、ブルーノート東京(ファースト・ショウ)。見事な入り、でした。で、ブリブリ本格的に吹けて、サウンド作りに対する野心も持つ。ということで、こりゃ高揚させられた。
 
 テナー・サックスを吹く本人に加え、トロンボーンのライアン・ポーター、キーボードのブランドン・コールマン、ダブル・ベースのマイルス・モズレー、ツイン・ドラムとしてロナルド・ブルーナーJr.(2009年9月15日、2014年9月10日)とトニー・オースティン、ヴォーカルのパトリス・クインという陣容にて。で、まず、そのサウンドが興味深い。巧者が重なり合う二つのドラムの作法(時には、片方だけが叩いてもう一人は休んでいるときも。ブルーナーJr.の叩き方が一部マイク・クラーク〜2002年3月12日〜ぽくてありゃ)が面白くないはずがないし、縦ベースもまた得体の知れぬ実力者。けっこう足元にエフェクターを置いていて、アルコ弾きも多用し、エフェクトを噛ませる。が、それなのに、ぼくはジャンプ/ジャイヴ期のスター・ベーシストのスラム・スチュアートの演奏を思い出したりもしたんだよなー。でも、それもワシントン一派の幅の広さゆえだと思う。

 ノード・エレクトロを弾いていたコールマンは1曲目、ものすごーくとっちらかった演奏をしていた。さすがに張っちゃけすぎでしょと思ったが、1曲ショルダー・キーボード(モウグ社製だったような)を下げて演奏した際には頷く。ショルダー・キーボードなんて音的にはどうでもいい楽器だと思っていたが、ぼくがこれまで接したショルダー・キーボード演奏の中で一番聞き所を感じさせるものであった。へーえ。管楽器と対等な位置にいるという感じで、時に声をだしていたクイン嬢は力量はたいしたことはないが、スリムかついい人そうなのでマル。彼女は一部で渋さ知らズと感じがかなり似ているコーラスを入れるときもあるのと、クリフォード・ブラウンの演奏でまず知られるジャズ・スタンダードの「チェロキー」では大々的にフィーチャーされる。トロンボーンはもう少しフィーチャーされてもよかったのではないか。なお、純ツイン・ドラム編成はジャズだとオーネット・コールマン(2006年3月27日)は何度も試みていますね。

 で、リーダーのワシントンはといえば、威風堂々。もうぶっとく、野卑においらを噴出させていて、気持ちいい。とともに、その吹き口はまったくもってジャズ。音程が少し甘いのも、往年の吹き手の香りを感じさせる? 途中から、痩身のリード奏者(ソプラノ・サックス、クラリネット)が出て来て加わる。それは、カマシの父のリッキー・ワシントン。カマシはいろんな意味で、父を超えていますね。

 年齢(1981年生まれ)相応の好奇心に支えられた、雑食性の強い、私の考えるスピリチュアル度と祭祀性の強いジャズの、確かな開示。彼らはみんな仲間のようであり、ある種のコミュニティ感覚を持っていると感じさせるところが、ドキドキさせる。そかから、B.A.G.でもA.A.C.M.でもストラタ・イーストでも、かつての進歩的ジャズ・マンの互助団体のあり方を思い出す事も可能だろう。こういう中堅層の台頭の様に触れ、この前のスタンリー・クラーク(2015年9月30日)は負けちゃ行けねえと、気がふれてしまったのかな。

▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
▶過去の、ロナルド・ブルーナーJr.
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201409111424501752/
▶過去の、マイク・クラーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
▶過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶過去の、スタンリー・クラーク
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
http://43142.diarynote.jp/201012051906481605/
http://43142.diarynote.jp/201212131141531884/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/

<今日の、帽子>
 上に触れたこと以外でも、ワシントンの表現は今のジャズであることを感じさせつつ、そのもろもろは1960年代の流儀をいろいろと感じさせる。たとえば、彼がカマシというアフリカ名やアフリカ調と言えなくもない衣装を身に付けていること。で、そうしたワシントンの示唆に富む音楽に触れていると、ジャズ〜もといアフリカン・アメリカン・ミュージックは一日にしてならず、興味深い芽はすべからく過去の種との連続線の先にあると思いたくなる。ある人から、ワシントンの頭はピグモンみたいですとメールがあったが、それはライヴ中ニットの帽子を被っていたので分らなかった。