ドクター・ロニー・スミス・トリオ
2015年7月2日 音楽 うわー、驚いた。ドクター・ロニー・スミスのことをなめていたわけではない。何人もいるブルーノート・レーベル育ちのオルガン奏者のなかでは、妙にカっとんだ持ち味の人。という、印象は持っていた。だが、そんな彼も1942年生まれだから、70歳超え。今回の公演もオルガン、ギター、ドラムという普通のオルガン・ジャズ・トリオ編成であるし、割と驚きのないブルース・コード基調のソウル味ありのジャズを聞かせるのではないかと思っても不思議はないではないか。そしたら、あの人は、やっぱり規格外の鬼才。どーにも、こーにも。
ターバン(風の、帽子だったかな)をまいた格好は、異様。それ、オマール・ソーサ(001年8月24日、2002年7月22日2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日2010年8月3日、2013年9月17日、2014年3月10日)を思わせるか。が、どこかお洒落な感じを彼は持っていて、もしかして日替わりで衣装を変えているのかもと思わせるのが要点。まあ、彼はターバンを頭に巻く前(単に、ロニー・スミスと名乗っていたころ)のブルーノート期からお洒落で、『Live at Club Mozambique』(1970年)のジャケット写真はダニー・ハサウェイみたいだったもんな。そんな彼は、杖をついてステージに登場する。とても元気そうで、歩行も達者なのにといぶかっていたら、その理由は終盤に明らかになった。なんにせよ、強い個があるからこその異物感があって、それはドクター・ジョン(2000年5月24日、2002年3月23日、2005年9月20日、2012年2月15日、2013年10月1日)を彷彿とさせる、とも書きたくなるか。
1曲目でぼくは、どっひゃー。やりはじめたのは、ソウルフルでもブルースぽくもない、なんかスピリチュアルな曲。あたまのほうはずっと電波系の音を出していて、なんかそれはサン・ラー(サン・ラー死後の、同アーケストラ;2000年8月14日、2002年9月7日、2003年7月25日、2014年7月4日)なるものを想起させる。ええええ、あんた変すぎると、冒頭の5分で、ぼくは頭をたれました。
彼はオルガンの横にパーカッション・パッドを置いていて、それを右手でけっこう鳴らしたりもする。また、脚のペダルの一つもパーカッション音を仕込んでいたように、ぼくは思った。また、足元がちゃんと見えなかったので断言はできないが、ベース音はたぶん足でやっていたのではないか。指はちゃんと動くし、ときにぐわ〜って音量を倍加させたりするダイナミクスは、これぞオルガンの利点じゃと思わせられることしきり。オルガンはゴスペル/教会流れの楽器であるとともに、シンセサイザーと同じような未知の効果を得られる電気楽器として、昔それを採用するジャズ・マンもいたのではないかとその様は思わせるか。スミスさん、いろいろと示唆するところはあったな。
サイド・マンは、クリス・クロス他から何枚もリーダー作を出している白人中年ギタリストのジョナサン・クライスバーグと、ドナルド・ハリソン(2014年8月25日)の教え子で彼の昨年来日公演にも同行していたニューオーリンズ・ネイティヴのドラマーであるジョー・ダイソン。彼の肌の色と比べると、スミスの顔色はだいぶ薄い。クライスバーグはセミ・アコースティックの電気ギターを手にするが、曲によってはエフェクター経由の音色をあっけらかんと用いる。それは、スミスの指示だろう。蛇足だが、スミスのアルバムにはジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)が叩いているものもあった。
2曲目と3曲目はオープナーと比すならブルース・コード崩しっぽい、オルガン・ジャズのイメージに近い曲。ではあるのだが、うまく説明できないが、達人はよくあるような手あかにまみれたオルガン演奏には陥らず。ふむふむ。また終盤には、静かなバラードをフツーに演奏したが、そこにはジャズ・マンの成熟〜年輪が横たわっていたな。
1曲はドラマーの演奏から始められたのだが、それがちょいセカンド・ラインぽい叩き口。どんな曲をやるのかと思えば、なんとポール・サイモンの有名曲「恋人と別れる50の方法」。おお、そんなん持ってきますか。まあ、ブルーノートの1968 年デビュー作『Think!』でヒュー・マセケラ(2005年7月20日)やアリサ・フランクリン楽曲(タイトル・トラックですね)を取り上げている御仁だから、驚かない。先に触れた1970年ライヴ盤ではコルトレーンやマイルズ曲を取り上げる一方、スライの曲も彼はやっていた。
そして、最後、彼は前に出て来て例の杖を持ち、ギターの様に持つ。いつのまにか杖のかかとからシールドが出ていて、それはスミスが腰に付けた発信器に繋げられている。杖には弦が1本張ってあるようで、彼は自在に指をスライドさせてペンペンと弾いて音程を操るとともに、音色も自在に変える。杖型の音程操作が容易なテルミンみたいな音の出るカスタム楽器、なんて説明もできようか。もしくは、ゲンブリみたいな民俗楽器の21世紀版? 彼はそれを演奏しながら、ユーモラスに場内を一周。なんじゃ、コレ。もう、最高だな。
で、そのままファンキー曲に突入。ときに出すうなり声もいい感じで、グルーヴィ。なんか何から何まで、理にかなっているという書き方は変だが、スミスはなんとも腑に落ちるところあり過ぎダと痛感。ちゃんとした音楽家であるところをきっちり持ちつつ、エンターテイナー/トリック・スターたりえたという説明もできるか。こりゃ、スケールの大きな才人。ひいては、米国ジャズの恐ろしさを、ぼくは再確認しました。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。
▶過去の、ソーサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200408021925240000/
http://43142.diarynote.jp/200510030021170000/
http://43142.diarynote.jp/200611020835550000/
http://43142.diarynote.jp/200803201207150000/
http://43142.diarynote.jp/200905131200576485/
http://43142.diarynote.jp/201008251432447574/
http://43142.diarynote.jp/201309201840164499/
http://43142.diarynote.jp/201403131302032810/
▶過去の、ドクター・ジョン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200510030016390000/
http://43142.diarynote.jp/201202161725143619/
http://43142.diarynote.jp/201310050709459564/
▶過去の、サン・ラー・アーケストラ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/201407051336285619/
▶過去の、ドナルド・ハリソンとジョー・ダイソン
http://43142.diarynote.jp/201408260930269988/
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
▶過去の、ヒュー・マセケラ
http://43142.diarynote.jp/200507220552110000/
<直近の、ロニー>
繰り返すが、最高。ぼくはまた一人、米国黒人音楽のカっとび傑物を知ってしまったという思いがありあり。うれしいなー。このライヴの後、イケイケになりそうな飲み会が控えていたので、パイント1杯で我慢しようと思ったが、良すぎて、それではオトコがすたるとジャック・ダニエルを追加する……。やっぱ、ライヴは見なきゃ分らないという真理も、いたく再確認。実は彼の出演は明日までの3日間であったが、その後に予定されていた88歳のルー・ドナルドソン(2012年3月7日)の公演が健康上の理由でキャンセルになってしまい、他のオルガン奏者3人と共演するという出し物で、スミオはさらに2日間ブルーノート東京にトリオごと出演する。そのハモンド・オルガン幕の内弁当的企画で、この異才はどうふるまうのか。涼しい顔して我が道を行くか? それとも、他者にあわせていい人になる? どっちも見物ではあるなあ。土日に予定がずっぽり入っていて、それを見るのを考慮に入れてなかったが、うーむこりゃ……。
▶過去の、ルー・ドナルドソン
http://43142.diarynote.jp/201203081803354395/
ターバン(風の、帽子だったかな)をまいた格好は、異様。それ、オマール・ソーサ(001年8月24日、2002年7月22日2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日2010年8月3日、2013年9月17日、2014年3月10日)を思わせるか。が、どこかお洒落な感じを彼は持っていて、もしかして日替わりで衣装を変えているのかもと思わせるのが要点。まあ、彼はターバンを頭に巻く前(単に、ロニー・スミスと名乗っていたころ)のブルーノート期からお洒落で、『Live at Club Mozambique』(1970年)のジャケット写真はダニー・ハサウェイみたいだったもんな。そんな彼は、杖をついてステージに登場する。とても元気そうで、歩行も達者なのにといぶかっていたら、その理由は終盤に明らかになった。なんにせよ、強い個があるからこその異物感があって、それはドクター・ジョン(2000年5月24日、2002年3月23日、2005年9月20日、2012年2月15日、2013年10月1日)を彷彿とさせる、とも書きたくなるか。
1曲目でぼくは、どっひゃー。やりはじめたのは、ソウルフルでもブルースぽくもない、なんかスピリチュアルな曲。あたまのほうはずっと電波系の音を出していて、なんかそれはサン・ラー(サン・ラー死後の、同アーケストラ;2000年8月14日、2002年9月7日、2003年7月25日、2014年7月4日)なるものを想起させる。ええええ、あんた変すぎると、冒頭の5分で、ぼくは頭をたれました。
彼はオルガンの横にパーカッション・パッドを置いていて、それを右手でけっこう鳴らしたりもする。また、脚のペダルの一つもパーカッション音を仕込んでいたように、ぼくは思った。また、足元がちゃんと見えなかったので断言はできないが、ベース音はたぶん足でやっていたのではないか。指はちゃんと動くし、ときにぐわ〜って音量を倍加させたりするダイナミクスは、これぞオルガンの利点じゃと思わせられることしきり。オルガンはゴスペル/教会流れの楽器であるとともに、シンセサイザーと同じような未知の効果を得られる電気楽器として、昔それを採用するジャズ・マンもいたのではないかとその様は思わせるか。スミスさん、いろいろと示唆するところはあったな。
サイド・マンは、クリス・クロス他から何枚もリーダー作を出している白人中年ギタリストのジョナサン・クライスバーグと、ドナルド・ハリソン(2014年8月25日)の教え子で彼の昨年来日公演にも同行していたニューオーリンズ・ネイティヴのドラマーであるジョー・ダイソン。彼の肌の色と比べると、スミスの顔色はだいぶ薄い。クライスバーグはセミ・アコースティックの電気ギターを手にするが、曲によってはエフェクター経由の音色をあっけらかんと用いる。それは、スミスの指示だろう。蛇足だが、スミスのアルバムにはジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)が叩いているものもあった。
2曲目と3曲目はオープナーと比すならブルース・コード崩しっぽい、オルガン・ジャズのイメージに近い曲。ではあるのだが、うまく説明できないが、達人はよくあるような手あかにまみれたオルガン演奏には陥らず。ふむふむ。また終盤には、静かなバラードをフツーに演奏したが、そこにはジャズ・マンの成熟〜年輪が横たわっていたな。
1曲はドラマーの演奏から始められたのだが、それがちょいセカンド・ラインぽい叩き口。どんな曲をやるのかと思えば、なんとポール・サイモンの有名曲「恋人と別れる50の方法」。おお、そんなん持ってきますか。まあ、ブルーノートの1968 年デビュー作『Think!』でヒュー・マセケラ(2005年7月20日)やアリサ・フランクリン楽曲(タイトル・トラックですね)を取り上げている御仁だから、驚かない。先に触れた1970年ライヴ盤ではコルトレーンやマイルズ曲を取り上げる一方、スライの曲も彼はやっていた。
そして、最後、彼は前に出て来て例の杖を持ち、ギターの様に持つ。いつのまにか杖のかかとからシールドが出ていて、それはスミスが腰に付けた発信器に繋げられている。杖には弦が1本張ってあるようで、彼は自在に指をスライドさせてペンペンと弾いて音程を操るとともに、音色も自在に変える。杖型の音程操作が容易なテルミンみたいな音の出るカスタム楽器、なんて説明もできようか。もしくは、ゲンブリみたいな民俗楽器の21世紀版? 彼はそれを演奏しながら、ユーモラスに場内を一周。なんじゃ、コレ。もう、最高だな。
で、そのままファンキー曲に突入。ときに出すうなり声もいい感じで、グルーヴィ。なんか何から何まで、理にかなっているという書き方は変だが、スミスはなんとも腑に落ちるところあり過ぎダと痛感。ちゃんとした音楽家であるところをきっちり持ちつつ、エンターテイナー/トリック・スターたりえたという説明もできるか。こりゃ、スケールの大きな才人。ひいては、米国ジャズの恐ろしさを、ぼくは再確認しました。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。
▶過去の、ソーサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200408021925240000/
http://43142.diarynote.jp/200510030021170000/
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▶過去の、ドクター・ジョン
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200510030016390000/
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▶過去の、サン・ラー・アーケストラ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/201407051336285619/
▶過去の、ドナルド・ハリソンとジョー・ダイソン
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▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
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http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
▶過去の、ヒュー・マセケラ
http://43142.diarynote.jp/200507220552110000/
<直近の、ロニー>
繰り返すが、最高。ぼくはまた一人、米国黒人音楽のカっとび傑物を知ってしまったという思いがありあり。うれしいなー。このライヴの後、イケイケになりそうな飲み会が控えていたので、パイント1杯で我慢しようと思ったが、良すぎて、それではオトコがすたるとジャック・ダニエルを追加する……。やっぱ、ライヴは見なきゃ分らないという真理も、いたく再確認。実は彼の出演は明日までの3日間であったが、その後に予定されていた88歳のルー・ドナルドソン(2012年3月7日)の公演が健康上の理由でキャンセルになってしまい、他のオルガン奏者3人と共演するという出し物で、スミオはさらに2日間ブルーノート東京にトリオごと出演する。そのハモンド・オルガン幕の内弁当的企画で、この異才はどうふるまうのか。涼しい顔して我が道を行くか? それとも、他者にあわせていい人になる? どっちも見物ではあるなあ。土日に予定がずっぽり入っていて、それを見るのを考慮に入れてなかったが、うーむこりゃ……。
▶過去の、ルー・ドナルドソン
http://43142.diarynote.jp/201203081803354395/