池袋・アブソルート・ブルーで、オーストリア人/スイス人合体ユニットであるロム・シェラー・エベレのギグを見る。その内訳は、ギターのペーター・ロム、ヴォーカルとヒューマン・ボート・ボックスのアンドレアス・シェラー、トランペットのマーティン・エベレ。ロムとエベレがオーストリア人で、シェラーがスイス人。今、欧州ではけっこう大きな場でライヴを持てているようだが、当然各者はそれぞれのプロジェクトも持っている。

 その3人名義のCDを聞いて、これは風通しのいい、各人の個性の出し方にも存分に留意したEUインプロヴァイズド・ミュージック、欧州ジャズ基調表現だと思ったが、実演を聞いてもそう。そして、まず耳奪われるのは、シェラーのヴォーカル技量の高さと自由さだろう。それは、まさにボビー・マクフェリン(2004年2月3日、2012年3月2日、2015年3月23日)のごとし。ヒューマン・ビート・ボックスやトランペット模写などの器楽的歌唱が確かすぎるし、それが一人のなかから自在に出てくる様はなかなかインパクトがある。他の2人も、シェラーの力量に見合うジャズ/即興技法をしっかりと身につけつつ、それを様々な曲調を介して自在に繰り出す、幅の広さを抱える。結果、その総体は、おもちゃ箱をお洒落にひっくり返したよう。残念ながら、途中で出て、渋谷に向かう。

▶過去の、ボビー・マクフェリン
http://43142.diarynote.jp/200402051853580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
http://43142.diarynote.jp/201503241654351156/

 そして、渋谷・セヴンスフロアーで、フランスのポップ・バンドであるオーウェルを見る。2000年にEPデビューし、これまで5枚のフル・アルバムを出している彼らは、絵に描いたようなメロディアスなポップ・ミュージックを送り出す、隠れた逸材。タヒチ80(2011年6月30日、2014年12月9日)との交遊から、その流れで紹介されることのある彼らだが、ポール・マッカートニーやブライアン・ウィルソンを起点とするメロディ・メイカーの系譜にずっぽりと入れるべきグループと思う。ニュー・ウェイヴ期表現のオマージュのためもあり英語で歌った2011年作『Continental』はぜひスクイーズのファンにも聞いてほしいな。オーウェルは間違いなくインターナショナル上位に位置する珠玉のポップ・ロックを作っていると、ぼくは太鼓判を押したい。

 片肺編成によるギグで、ヴォーカル/ギター、ギター/ベース、キーボード/フルートという編成。どこかくつろいだ情緒はラウンジ気分にも通ずるという感じで、ドラムレスでもそりゃ魅力は伝わるが、彼らの歌はヴァイブラフォンが効いているものがあり、その奏者やドラマーは同行してほしかった。前座で出たバンドなのだろうか、日本人の女性シンガーと男性ギタリストが最後のほう加わった。

▶過去の、タヒチ80
http://43142.diarynote.jp/201107081123376582/
http://43142.diarynote.jp/201412221528566282/

<今日の、リハーサルとインタヴュー>
 この日ライヴを見たアーティストの代表者にそれぞれ、リハのあとにインタヴューをし、ライヴも見るという日。
 まず、セヴンス・フロアに行くと、オーウェルがリハーサルをやっている。インタヴューに答えてくれたのは、曲を作り歌うジェホム・ディドロ。とっても謙虚な人だったな。そういえばリハが押し、その途中でそれを中断してインタヴューをやりましょうかと、彼は聞いてきたりもした。もちろん、リハに触れるのも一興(というか、ぼくは本編のときより引き込まれた)、ビール片手に楽しく待っていればいいわけで、全部すませることをフレンドリーに求めましたが。ディドロがリハの合間に遊びでボサノヴァっぽいことをちらりとやったので、インタヴューの際にボサノヴァは好きと彼に尋ねたら、コードの宝庫として見逃せないとの返事だった。あ、グループ名は英国人作家のジョージ・オーウェルから来ているそう。
 インタヴューを終えて池袋のヴェニュー(東京芸術劇場の向かいで、駅に近い)に急いで向かったが、今日沖縄から東京入りするロム・シェラー・エベレの面々の到着がおくれている。開場時間を過ぎてから面々は会場入り、先にリハをすすめるオーストリア勢のなか、シェラーが質疑応答に悠々と答えてくれた。現在38歳で、最初はロック小僧で、大学では専門的に音楽を学び、現在はクラシック方面にも活動は広がっているそう。そういえば、ロム・シェラー・エベレの曲にはアフリカっぽいものもあり、それだとシェラーの歌はリチャード・ボナ(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月19日、2002年12月14日、2004年12月15日、2006年2月16日、2008年10月19日、2010年2月5日、2010年6月6日、2011年1月25日、2012年5月14日、2012年12月15日、2013年12月2日、2015年1月9日、2015年1月11日)を想起させる味もだす。お、ピーター・バラカンさんの<マクフェリンとボナ、近い説>(http://43142.diarynote.jp/201501131648401181/ の最後のほうを参照)を実証するような事実ですね。
 その後、また渋谷に戻ったわけだが、オーウェル実演終了後、なじみのバーに寄ったら、偶然サッカー日本代表チームのイランとのテスト・マッチをやっている。家で地上波放送が映らない身としては、久しぶりに日本代表のサッカー試合をTVで見たな。この日は少し先発を代えていたが、代表戦を他者と見ると話題に登らざるをえないのは、メンバー固定化の味気なさ。それ、歴代監督すべてに当てはまることではあるのだが……。それが代表強化の近道/王道なのかもしれないが、固定選手がケガしたり、出場停止になることもあるわけで。また、日本選手のフィレキシビリティに欠ける試合運びは先発固定主義とつながっているところがあるのではないか。