自由の、枠越えギタリスト(2010年1月9日、2010年4月23日、2013年4月13日、2014年8月14日)のワーキング・バンドの公演、インストゥメンタルのバンドであるのに、”シンガーズ”と名乗っているのは洒落か、俺たちは歌うように演奏しているんだという意思表示か。南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)。長身で、飄々とした人。俗事から解き放たれている、というか、音楽と真っすぐ向き合い続けているからこそだろう、澱がついている感じがしない人だなあ。彼は最小限だが、日本語でMCをする。奥様(2009年1月21日、2014年3月31日、2014年8月14日)に、習ったのか。

 おもしろい顔ぶれを集めたもので、コントラバスとエレクトリック・ベース両方をちゃんと演奏するトレヴァー・ダン(2005年9月5日)、ドラムのスコット・アルメンデラ(2015年2月18日)、打楽器奏者のシロ・パティスタ(2000年3月14日、2004年9月5日、2004年9月16日、2004年11月6日)という面々を擁する。

 最初の曲は、いくつかの曲をくっつけたものを40分切れ目なしに演奏。その後、4、5曲やって、全部で85分ものパフォーマンス。本編最後でクラインはギターを弾きながら少し詠唱し、その後に顔の前にギターを持って行った。それ、ギターのピックアップで声を拾わせていたのか、歯で弦を弾こうとしたのかは不明。ちょうどトイレに行ったときにそれをやり始めたようで、戻って来た途端、その仕草をやめたのでなんとも判断がつかない。彼は足元にエフェクターを置くほかに、手元にも置き、そっちをいじりいろいろと音を作っていた。チューニングはどうであったのか。

 1曲すごいジョン・スコフィールド(1999年5月11日、2001年1月11日、2002年1月24日、2004年3月11日、2006年3月1日、2007年5月10日、2008年10月8日、2009年9月5日、2012年10月10日、2013年10月21日、2015年5月26日)みたいな曲調で、彼みたいなソロを取る曲もあり。それを聞くと、いかにスコフィールドが歌心と昇天感覚を併せ持つエモーショナルな演奏ができるかが良くわかる。まあ、スコが強い色調の画材でダイナミックに具象画を描くとしたら、クラインは淡い画材で抽象画を描いていることが多いわけで、比較するのは無理があるかもしれないが。アンコールがカーラ・ブレイ(1999年4月13日、2000年3月25日)の初期曲「A.I.R」。なんか、渋いな。

 バティスタ(スペルだと、バプティスタと読みたくなり、ぼくは過去そう記してきたが、バティスタなのか)はブラジル人らしく、ビリンバウやパンデイロも扱う。また、肉声も出す→ほんと、この前のサム・ベネット(2015年4月17日)の演奏はバティスタと近いスタンスがあったと思わずにはいられず。あ、ルックスも似ていると、ぼくは思う。スコーンと抜けたバティスタがいるためどんな曲調のものをやっても、わりと統一感が出て、笑顔のライヴ・ミュージックになる部分はあったはずだ。

▶過去の、ネルス・クライン
http://43142.diarynote.jp/?day=20100109
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http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
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▶過去の、本田ゆか
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http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
▶過去の、トレヴァー・ダン
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▶過去の。スコット・アルメンデラ
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▶過去の、シロ・バティスタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/200409050916440000/
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
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▶過去の、カーラ・ブレイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm
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▶過去の、ジョン・スコフィールド
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-1.htm 1.11
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm 1.24
http://43142.diarynote.jp/200403111821250000/
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▶過去の、サム・ベネット
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<今日の、目線>
 ずっと天気のいい日が続いていて、昼間はけっこう暑い。夜はそれなりに涼しく、寒暖差はあり。ぼくの周りで風邪をひいている人が散見されるが、それはかような気候のためもあるか。今朝起きたら、とても身体の冷えを感じて、ヤバっと思った。でも、風邪はひいてなかった。なんか今日、街中を歩いていて、歩道が混んでいないときはけっこう上を見上げながらゆっくり歩いた。新鮮、それ間違いなく新たな都市の表情を見させてくれる。でも、端からだと、ぼくは危ない人に見えるのかもしれない。

 アルゼンチンの肉声と打楽器が一緒になった個性派アーティスト(2010年8月24日、2013年8月29日)の2年弱ぶりの来日公演。ピカピカの新作『バジスタ〜谷に住む女』をフォロウするもので、それは数年前にブエノスアイレスから北西部のサルタに引っ越したことでもたらされたものが投影されていると言えそう。そのサルタはフォルクローレが盛んな土地で、今回の彼女はアルゼンチンの深層とより繋がったところで、自らの“鼓動を持つ肉声表現”を作ろうとしている。そこには、アルゼンチンにある男性優位主義に対するアンチの意志も投影されているが、今回ほぼ一人で音を作り上げているのはその意志と繋がるものか。

 2部に分けて持たれたショウを見て、あらと思ったのは、けっこうサンプラー機器を用いていたこと。歌や打楽器音を組み上げ、そのうえにまた肉声を投げ出す。機械使いは少しぎこちない所はあるものの、前はほんの一部でしか機材を使っていなかったことを考えると、健闘していたのではないか。また、チャランガを弾く比率も上がっていた。凛とした女性が瑞々しさとともに、立っているという佇まいは、まさに彼女なり。

 1部も2部も、部分的に奄美のシンガー、里アンナが加わる。民謡だけでなく、ミュージカルにも主演していたりする人のようだが、何気に声が通り、デカい。いや、それに関しては、バラフを凌駕していた? 彼女は三味線や竪琴もこなしつつ、無理なくバラフとお互いの曲で重なる。また、2部のほうでは9年間日本に住んでいるというペルー人女性も加わり、ケチュア語でルーツと繋がる喉と旋律を1曲披露。なるほど、イスマ・オルノ(2014年5月24日)と共通するものがあるな。それもまた、うれしい共演だった。

 里アンナと一緒にやっていた2部の終わりと、その後のアンコールの終了時、バラフはともにボロボロと涙を流す。えっ。過去の公演でそんなことはなかったはずで、今回のパフォーマンスはそんなに本人にとってこみ上げてくるものがあったのか。それは、美しい自然な涙だった。

▶過去の、マリアナ・バラフ
http://43142.diarynote.jp/201008270911539087/
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
▶過去の、イスマ・オルノ
http://43142.diarynote.jp/201405271717357738/

<月曜の、バラフ>
 2日前にインタヴューした。竹を割ったような気っ風のいい女性という印象を持っていたが、情熱的ながら、実は女の子っぽい部分も持つ人ではないかと、接して思えました。マネージャーを務める年下の旦那さんには結構めろめろで、かなり彼に頼っているが分る。実は近年居住しているサルタは、彼の故郷であるという。その私生活を含めた記事は7月売り号のソトコト誌に出る予定。ところで、今回バラフのツアーは21公演も組まれているのだとか(東京公演が1つ目)。でも、頼れる旦那さんが横でサポートするなら、ストレスをそれほど感じることなくこなしていけるのではないか。今回、彼女は紙片に書かれたものを見ながら英語MCをするようにしていたが、それも英語ができる彼が横にいるから可能になったはず。

 代官山・晴れたら空に豆まいて で、同店の新しいPAスピーカーやピアノ入れ替えをお披露目するイヴェントをまず覗く。ライヴを見せてくれたのは、ジョアン・リラ&ジョアン・カマレーロというブラジルのアコースティック・ギターのデュオ。一時日本にも住んでいたこともあるというリラはエリゼッチ・カルドーゾやシヴーカ他、そうそうたるブラジル人アーティストとやってきた人のようだが、一発聞いてこりゃ質の高いギタリストと納得。きっちりと正統な音楽教育を受けている人であるのもすぐに分る端正さと、ブラジル北東部出身ゆえの癖や揺れの隠し味的在り処がおいしい。見かけは大分若いもう一人のギタリストであるカマレーロも精緻な演奏をする人で、ちゃんと音楽教育を修めているのが分る人。確かな技量と意志統一から来る、無駄のないギター音の重なり、静かな相乗がおもしろくてしょうかない。この後、彼らは11公演を日本各所でやるようだ。

 その後、しばらしくして、ミキサカタ(2014年9月30日)がピアノ・ソロを披露する。音の粒が上品に舞い上がっていると、思わせる演奏。指の鍵盤との向かい方の様や、背筋がピんと立っている弾き姿の綺麗さを、その演奏する様を見ながら再確認。多くはオリジナルをやったと思われるが、さりげない演奏のなかに聞き手の記憶にある何かをノックするような物語性を抱えていたか。彼女、秋吉敏子(2013年4月30日)やマリアリー・パチェーコ(2013年5月13日)なども出しているティートック・レコードからアルバムを出すそう。

▶過去の、ミキサカタ
http://43142.diarynote.jp/201410011259136103/
▶過去の、秋吉敏子
http://43142.diarynote.jp/201305071422511328/
▶過去の、マリアリー・パチェーコ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130513

 そして、六本木・ビルボードライブ 東京で、少し太ったロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日)のショウを見る。

 2009 年以降ずっと維持しているワーキング・バンド、エキスペリメントによるパフォーマンス。リード楽器やエレクトロニクス/ヴォコーダーのケイシー・ベンジャミン(2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月4日)、ベースのバーニス・アール・トラヴィス二世(2013年2月8日、2013年3月19日、2014年5月11日、2014年8月20日)、ドラムのマーク・コレンバーグ(2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日)というサイドの面々。

 編集を介したヴォーカル入り現代R&B作が2枚続いた反動か、グラスパーの2015年新作『カヴァード』(ブルーノート)はアコースティック・ピアノを用いたトリオによるスタジオ・ライヴ作品(リズム・セクションは今回奏者と重ならない。2007年ピアノ・トリオ傑作『イン・マイ・エレメント』ほどピアノを鳴らしたりはせず、基本ピアノに対する考えを変えたと思わせる仕上がり)であったが、今回も旧来のエクスペリメントのライヴ内容を引き継ぐ。グラスパーは両手で両方を弾く場合もあるが、やはりピアノより電気キーボードを弾く時間のほうが長かったろう。

 場内は満場にして、大受け。最後のほう、ベンジャミンが勢いつけてソプラノ・サックスのソロを取ったが、そこからはジョン・コルトレーン愛好の様が透けた? なんてことはないが、彼はヤンキーな髪型以外にも、一筋縄で行かない変な人だよな。ベーシストのトラヴィスはソロのとき、手癖だけで流れる演奏を披露してげんなり。他の場面ではいい感じで演奏していたし、いい奏者なはずなんだけど。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
▶過去の、バーニス・トラヴィス
http://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201405121521477969/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
▶過去の、ケイシーベンジャミン
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
▶過去の、マーク・コレンバーグ
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
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<今日の、嫌いなもの>
 嫌いなものは? かつて、そう聞かれると、<待たされること、タバコ、格闘技>の3つ挙げていた。<帽子、指輪、ネックレス&ブレスレッド>という、身につける類のものも嫌いだナ。

 快活きわまりないキャラクターであるギタリストのマイク・スターン(2009年3月23日、2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日)のリーダー・グループの公演。彼にくわえて構成員は、ドラムのウィル・カルホーン(2008年8月6日)、エレクトリック・ベースのヴィクター・ウッテン(2000年8月12日、2004年3月24日、2008年9月8日)、テナー・サックスのボブ・フランチェスチーニ。ソロは各人しっかり、取る。丸の内・コットンクラブ。ファースト・ショウ。観客の歓声がとってもデカかった。

 20分ほどの尺だった1曲目は、ヴァイタルなビートのジャンプ曲ながら、ブレイクした後は4ビートになり、その後は倍テンポに移行し、また立ったビートに戻ったりという、ビートや曲種がいろいろと変わる、聞いていて興味ひかれる曲。それに続く曲群はオープナーほどに身体が揺れるものはなかったが、ヌルくないがちんこフュージョンという質は持っていたはず。

 ひえ〜と驚いてしまったのは、4弦のショート・スケールのモデルを手に質量感ありの演奏に終始したヴィクター・ウッテン。ええ、こんなにいい感じの電気ベーシストだったの? もっとペラペラ弾き倒す空虚な奏者だと思っていたが、これは考えを改めなくてはならない。最後のほうの長いベース・ソロにもびっくり。途中までは多彩な弾き方のもと多様で雄弁な演奏を披露し、途中からはサンプラーを駆使してのものになったのだが、こんな豊かな多重音ソロが聞けるとは思わなかった。才、あるな。

 一世を風靡したブラック・ロック・バンドのリヴィング・カラーのドラマーとしてまず知られるカルホーンは、バスドラを2つ置いたセッッティングで演奏。レギュラーとマッチド・グリップ併用にて、けっこう場合によっては叩きまくる。彼の近作『Life in This World』(Motema、2013年)はタックヘッド/リヴィング・カラーのダグ・ウィンブッシュ(2000年4月9日)とロン・カーター(2001年6月7日、2004年1月14日、2010年5月6日、2011年1月30日、2012年3月3日、2012年12月11日、2014年1月19日、2014年9月7日)をベース奏者に据えた、”私の考えるジャズ”・アルバムだ。

 スターンやウッテンのアルバムに参加しているフランチェスチーニ(NYサルサ大御所のウィリー・コロンのアレンジャーも務めているとか)は、へえこんな奏者なの? スタジオ仕事では各種リードを吹くようだが、ここではテナー・サックスを吹く。で、近年の奏者だとカマシ・ワシントン(2014年5月28日)を思わせるような濁った質感のブっとびブレイズを連発したりもし、また一方では時々ブレッカー兄弟(2000年3月2日;弟、2004年2月13日;弟、2009年6月18日;兄、2010年6月6日;兄、2012年6月13日;兄)の作法を思い出させるような電気エフェクトを吹き音にかましたりもする。

 主役のスターンは、もうやんちゃかつ小僧的音楽愛好ココロ剥き出しに(それが、彼の美点なり)ロックぽくある流動的ギター演奏を繰り出す。それに触れつつ、1980年代初頭に音楽界に復帰した際のマイルス・デイヴィスにスターンが抜擢された理由の一つが分ったような気にもなった。

▶過去の、スターン
http://43142.diarynote.jp/200903260425159549/
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196
▶過去の、ヴィクター・ウッテン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm バークシャー・フェスティヴァル 8/12
http://43142.diarynote.jp/200403241554160000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
▶過去の、ウィル・カルホーン
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/
▶過去の、ダグ・ウィンブッシュ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-4.htm ポーラ・コール・バンド
▶過去の、ロン・カーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200401140000000000/
http://43142.diarynote.jp/201005071023536171/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201212141028575543/ 
http://43142.diarynote.jp/201401221302405299/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
▶過去の、ランディ・ブレッカー
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
▶過去の、マイケル ・ブレッカー
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/

 その後は、南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)で、ボブ・ドロウ(2013年6月28日)とネリー・マッケイのショウを見る。ドロウの方には前回と同じ、ギターのスティーヴ・バーガーとウッド・ベースのパット・オリアリーが付く。その内容は、
http://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2015/06/04/bob-dorough-nellie-mckay.html

▶過去の、ドロウ
http://43142.diarynote.jp/201307010908249319/

<今日の、雨>
 17時ごろ。家を出る少し前に、どっひゃーという豪雨。やだなあ。だが、家を出るときには小降りに。雀も、鳴いていた。今年、最初のゲリラ豪雨? 夏が亜熱帯化しつつある日本の近年、部分的な雨無茶降りが決して珍しいことではなくなったが、今夏はどうだろう。それに会わない幸運を願いたい。夜半の返り道も、降雨量はそれなり。雨の日用の、なかなか中まで濡れてこない靴を梅雨前に用意したほうがいいかもなあ。大雨で外出し、靴の内側まで濡れるのってほんとヤ。ニュー・バランスのとっても防水するようなヘヴィー仕様のスニーカーを今日は履いたが、それ以外にも長靴じゃないものを用意しておきたい。

 なんと、グラスパーのグループがクラッシックのオーケストラと共演する公演。池袋・東京芸術劇場コンサートホール。なんでも、昨年ノース・シー・ジャズでグラスパーとオーケストラとが一緒にやるプログラムがあったことが引き金になっているよう。

 クラシックには全面的にうといもので、西本智美という指揮者のことはまったく知らなかった。クラシックを知る人によると、海外での指揮者活動歴も長い人で、宝塚の男優みたいな感じで人気を得ている人なんだそう。写真を見ると、YOSHIKIみたいだ。なるほど、グラスパーのファンととももに、彼女のファンも客席にはけっこういたように見受けられた。ぼくは女性の指揮者に初めて触れる。

 西本が芸術監督兼首席指揮者を務める2012年設立のイルミナートフィルハーモニーオーケストラを用いてのもので、壇上には70人ぐらいいたか。コンサート・ミストレス、ようはオーケストランのリーダーも女性が務める。最初の曲はグラスパー抜きのオーケストラ演奏。ロシア人作曲家リムスキー・コサルコフの「スペイン奇想曲」というものをやったが、何人かのソロ演奏をフィーチャーする曲だった。その際のコンミスのヴァイオリン演奏は少しジプシー調と言えた? 

 20分弱のオーケストラ演奏後、まったく普段着のグラスパー(サングラス付き)が出て来て、『ブラック・レイディオ2』(2013年)収録のレイラ・ハサウェイが歌っていた「ジーザス・チルドレン」を一緒に演奏する。グラスパーのピアノは生音にて。作曲者を迎えての、イルミナートフィル・プレイズ・グラスパーといった塩梅のもの。15分ぐらいやり、その後休憩。西本は分りやすい指揮をする人だと思った。

 そして、以下はわりと通常のバンド演奏(4人の音はすべてアンプリファイドされる。ベースのバーニス・トラヴィス〜2013年2月8日、2013年3月19日、2014年5月11日、2014年8月20日、2015年6月4日〜は1曲以外エレクトリック・ベースを使用)とオーケストラが一緒に重なるパフォーマンスに入る。エキスペリメントの面々は皆ラフな格好だが、前のほうで見ている人によると、けっこう緊張している感じもあったそうな。また、グラスパーと西本のアイ・コンタクトや、マーク・コレンバーグ(2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2005年6月4日)が指揮棒を注視していたりとか、いろいろ指揮者とグループの間には共有されるものがあったようだ。また、かなり歌ったという印象を受けたケイシー・ベンジャミン(2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月4日)はそうでもなかったように見えたけど、他の奏者はけっこう譜面と向き合ってもいたな。それは、通常の公演ではない。

 オーケストレイションは、山下康介、萩森英明、石川洋光、岩城直也という4人がやっている。昨年のオランダでの実演はヴィンス・メンドーサがやっていたというので、書き下ろしアレンジをやったのだと思う。1部の共演曲1曲はオーケストラが主でグラスパーが従気味という感じだったが、ハービー・ハンコックの「処女航海」で始まった1時間ちょいの2部は、エクスペリエンスの演奏のもと、そこここにオーケストラ音がいろいろと差し込まれるといいうもの。そこらへんの噛み合いは編曲も実践もうまくやっていて、おそらく演奏の小節数はちゃんと定まったなかでの協調ではなかったかと思われる。おもしろいのは、オーケストラ音のサンプリング音が入るような聞き味を持つ箇所もあったこと。うーん、そこらへんはなかなかグラスパー表現らしいと言えると思う。

 明日に、グラスパーにはインタヴュー。今日のことをどう言うだろう?

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、バーニス・トラヴィス
http://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201405121521477969/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、ケイシー・ベンジャミン
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、マーク・コレンバーグ
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/

<今日の、まとめ>
 編成のデカいクラシックのオーケストラの表現はやはりいろいろと興味を喚起される。いろいろ進歩改善しているところもあるのだろうけど、大昔からこういう様式が確立されちゃっていたのはすごい、すごすぎる。まあ、変なことをやろうとして潰されたり、黙殺されたりした人もいろいろいたと思う。そして、人との繋がりという部分において、かなり気の遠くなるロマンを覚えたりも。
以下のものは、過去見ている、クラシックのオーケストラがついた非クラシック公演……。

http://43142.diarynote.jp/200606101341360000/ コステロ
http://43142.diarynote.jp/200807041128510000/ シスモンチ
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/ エルダー
http://43142.diarynote.jp/201001051626133581/ MONO
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/ ミラー
http://43142.diarynote.jp/201210060944303925/ ルグラン
http://43142.diarynote.jp/?day=20121130 チーフタンズ
http://43142.diarynote.jp/201310280755386500/ 小曽根、デリベラ
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/ 狭間

 いやあ。なんかほんわか、ほっこりしていたなあ。

 今日〜明日と、南青山・ブルーノート東京で、アート・リンジー(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日)のグループ公演。今日は小山田圭吾(2009年1月21日、2009年10月31日、2011年8月7日、2012年8月12日、2013年8月7日、2013年8月11日、2014年3月31日、2014年10月26日)がゲスト・ギタリストで、翌日は じむお(2000年3月25日、2001年2月21日、2006年4月18日、2006年10月22日、2007年4月20日、2008年8月24日、2010年4月15日、2010年11月17日、2011年1月8日、2013年4月21日、2013年5月24日、2014年10月11日、2015年4月9日)君。小山田入りのリンゼイの実演は昨年に見ているので、旧NYと旧シカゴの冒険ギタリストの邂逅を見たいと思ったが、故あり小山田出演日(セカンド・ショウ)を見る。そしたら、知り合いといろいろ会い、目が回りそう。かつて日本盤がぽんぽん出ていた頃より、ある意味、今のほうが注目度が高い? たまたまだろうけど、リンジーもなんかそう感じ、もっとばりばり音楽活動に邁進しないかなー。

 レストレス・サンバと名乗り、ブラジル人ギタリストと打楽器奏者を連れて来ている。7弦アコースティック・ギターを淡々もくもくと弾くルイス・フィリップ・ヂ・マリは新旧の名のあるブラジル人と絡んでいる名手。パーカッションのマリヴァウド・パイム(2014年10月26日)は昨年のリンジー公演にも同行したバイーアの達人。昨年はヤケになって(?)スルドをずらり並べていたが、今回はわりと常識的な楽器並べで、的をいた余裕のサポートぶり。

 中盤までは、その3人によるパフォーマンス。とうぜん、グループ名にもあるように、多大にブラジル音楽に負った流れ(ブラジル曲もいくつか披露)で、リンジーの味は開かれる。アコースティック・ギターと打楽器が形作るもろなブラジル系空間のなかで、リンジーはゆったりと歌い、調子外れなノー・チューニングのギターの刻みを入れる。とくに、その歌の優しく、テンダーな味にはウフフとなる。こんなに、包容力があったっけ? 歌が良かった。

 そして、途中からは小山田とベースを弾くバッファロー・ドーターの大野由美子(2002年1月13日、2003年11月8日、2004年12月12日、2006年6月22日、2011年9月16日、2012年6月1日)が加わり、柔和なアンビシャス・ラヴァーズ、もしくはグート・レーベル時代のリンジー表現となる。ここでの小山田役をジム・オルークが務めるのなら、オルークもそんなに飛躍したギター演奏はしなかったと推測される。

 やっぱり、リンジーは年を取った。あっち側を提出するのではなく、あっち側を知っているこっち側の自分をより出すようになった、とも書けるか。でも、そんな、歌心に満ちた、穏健なリンジー表現が心地よい。無理して狼藉しなくなった(そういう設定のギグが組まれたら、まだまだ行けるとは思うが。この晩も少し、そういう方向のソロ・パフォーマンスも披露)ためもあるかもしれないが、とても表現全体が隙間を伴う整合感がある。それは、小さな時から高校生までブラジルで親しんだ種を無理なく活用しているからこそとも言えるかもれないが、今の時勢には合っているし、正解ではないか。DNA、ザ・ラウンジ・リザーズ時代から彼の素っ頓狂な振る舞いに胸を焦がし、見守ってきた(つもりの)人間としては、そう思う。そして、そういう大人な(ある意味、成熟した)行き方のなかから、現代越境ポップ・ミュージックのヒントや新たなサウダーヂの感覚が出てくるのではないか。それは、皮膚感覚で、彼のプロデューサー能力、ある種の人材把握能力は衰えていないと思わされるからだ。

▶過去の、アート・リンジー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
▶過去の、マリヴァウド・パイム
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
▶過去の、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061022
http://43142.diarynote.jp/?day=20070420
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824
http://43142.diarynote.jp/?day=20090531
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201011181757468769/
http://43142.diarynote.jp/201101111201402329/
http://43142.diarynote.jp/201304230829016302/
http://43142.diarynote.jp/201305280923275394/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201504131107563912/
▶過去の、小山田圭吾
http://43142.diarynote.jp/?day=20090121
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110807
http://43142.diarynote.jp/?day=20120812
http://43142.diarynote.jp/?day=20130807
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
http://43142.diarynote.jp/201404031700136483/
http://43142.diarynote.jp/?page=2&month=201410
▶過去の、バッファロー・ドーター/大野由美子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200606270001320000/
http://43142.diarynote.jp/200412212058580000/
http://43142.diarynote.jp/201109171049342536/
http://43142.diarynote.jp/?month=201206

<今日の、表記>
 これまで、アート・リンゼイと表記してきたが、本人が間違いなくリンジーと言っているので、今回はそう書きまーす。

渋さ知らズ

2015年6月15日 音楽
 わー。オレ、もしかして、渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日)って、野外フェスか大きめのホールにおける公演しか見た事がないのかー。新宿・ピットインでの公演を見ながら、そう思った。

 約30人のミュージシャン、ダンサーがステージにあがる。場内、満員。お客はなにげに中年以上の男性が多い。休憩なしで、切れ目を入れず伸縮性に富みつつ2時間強をパフォーマンス。曲は、どれも耳馴染みの渋さ曲なり。

 小さな場でのその公演を見ていて、はっきりと分ったことが一つ。大きな会場で見ていたこれまでは、視覚的にもスペクタクルなショウを俯瞰するかのように“面”で接していたところ、今回は“点”、もしくは“線”を追うように実演を見る感じになるということ。その違いにより、よりジャズ〜即興表現として渋さ知らズの実演に接するスタンスが強くなったのは間違いない。そして、そうすると、代わり映えのしないレパートリーだからこそ、その場のもろもろで演奏がどうにでも動いていく(本当に、そう!)様が手に取るように分るわけで……。総体やソロを自在にコントロールする不破(2005年12月22日、2007年6月3日)のダンドリスト手腕と無頼漢的な佇まいの中からにじみ出る“いい人”っぽさもリアルに感じることができた。

 笑えたのは、なんかの曲で引っ張っているとき、不破がケルトっぽく行きたいみたいなデイレクションを発したのだが、演奏陣が誰も対応できず、仕切り直しになってしまったところ。そういうのも含め、超臨機応変なジャズ・ビッグ ・バンドとしての渋さ知らズ表現を堪能したナ。そうした部分を楽しむためには楽曲が固定されるのもまるでスタンダードを独創的に料理しているかのようになり、マイナスにならないと思った。実は渋さは、こことかエアジンとかジャズ・クラブでも公演も持っているが、そいうときに集まる客はこういう部分に着目する人が多いんだろうなとも思えた。

 驚いたのは、肉声担当者は渡部真一の参加はなし(彼は大会場限定なのかな?)で、器楽的歌唱〜自在インプロヴィゼーション性に富む女性シンガー2人で事にあたり、大活躍していたこと。玉井夕海と、なんと蜂谷真紀((2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日、2015年5月20日)。2人は掛け合いの、じゃれ合いのようなパートもぐいぐい持った。ずっとやっているように入っていた蜂谷、近年ピットインみたいなところでやるときはたまに参加しているらしい。それから、肝硬変で入院し冥土の土産のつもり(?)で快ソロ作『HAPPY HOPUR』(パンク・ジャズ的な行き方をする曲もあり)を出したテナー・サックスの片山広明(2004年8月20日、2004年10月10日、2005年7月29日、2008年11月14日)はやはりとてもやせていた。彼は飲んでいなかったかもしれないが、パフォーマンスの最中にカウンターにお酒を買いに行ったり、トイレに行くメンバーは散見されました。って、そんなライヴ、滅多にねえ。

▶過去の、渋さ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
http://43142.diarynote.jp/200612060135390000/
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
http://43142.diarynote.jp/200706162321180000/
http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
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http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
▶過去の、不破大輔
http://43142.diarynote.jp/200512231
http://43142.diarynote.jp/200706061351450000/
▶過去の、蜂谷真紀
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/
http://43142.diarynote.jp/201410310931316189/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
▶過去の、片山広明(渋さ以外)
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081114

<今日の、新譜>
 何でもアリの渋さ知らズは、市民ワークショップをやることもある。それをもとにしたいわき公演はhttp://43142.diarynote.jp60923241736//2013052 で、触れているが、それに端を発する、いわき市の市民グループである十中八九のデビュー作が8月20日に、渋さ関連作リリースでお馴染みの地底レコードからリリースされる。全てオリジナル曲だが、渋さの好奇心や混沌を受け継ぐような楽曲の質の高さにはびっくり。もちろん、不破大輔が制作/段取りしていて、彼の愛の人ぶりも明解に伝わる。
 2つの会場で、ピアニスト/キーボーディスト、三者を見る。

 まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、ベルギー人ピアニスト(1977年生まれ)であるジェフ・ニーヴ(2010年11月11日、2014年3月11日)のソロ・パフォーマンス。彼の新作『One』(Universal Belgium、2014年)は英国アビー・ロード・スタジオ録音主体のソロ・ピアノ作で、今回のパフォーマンスはそれに準ずる。クラシック流れの高尚さとジャズ経験で磨いただろう閃きや揺れが共存……。その幅あるピアノ作は好き嫌いは別としても(クラシック流れの指裁きは気取りや衒学を聞き手に与える部分はあるかもしれない)、個を求める達者なピアニストがいるとは了解させられるだろう。

 かなり情緒が改変されたとも書ける、ビリー・ストレイホーン「ラッシュ・ライフ」(新作にも収録)がオープナー。近年ピアノ・コンチェルト作も出すなどクラシックのほうにも進んでいる彼だが、やはり弾き口はクラシック素養をいかんなく出す。実は彼、そんなに手のひらが大きな人ではなく、すらすらと弾く様の奥には相当な研鑽があったと思わされる。その一方で、彼は新作には入っていないセロニアス・モンク曲(「ストレイト、ノー・チェイサー」だったかな)を披露したりもしたのだが、モンクは自分にとってとても重要なジャズ・ピアニトだか作曲者みたいな発言もあり。そういえば、彼はMC/曲説明を丁寧に行う御仁であるのだが、ジョニ・ミッチェル「ア・クロース・オブ・ユー」を演奏するさいは得々とその歌詞を空で言ってみせたりもする。前日に彼にインタヴューしたとき、ジョニ・ミッチェルはまず歌詞が大好きなんだと言っていたが、なるほど事前に歌詞を延々と説かれると、この曲は歌詞を本当に丁寧に追っていると思わせられるな。

 ジャズ・ピアニストとしていずれは出したくはあったが、「ピアノ・ソロ作を録音するのは本当に清水から飛び降りる思い」(もちろん、意訳ですね)であったそう。裸になる気持ちもあったそうで、『One』の裏ジャケにはニーヴの横に裸の男性が立っている。ペダルも多用する彼だが、ショウが終わると、すぐに調律師が出て来てセカンド・ショウに向けて作業を始めた。

▶過去の、ジェフ・ニーヴ
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201403131302543532/

 そして、南青山・ブルーノート東京に行く。LAとNY、それぞれをベースとするアフリカ系鍵盤奏者のそれぞれのトリオが実演をシェアするという内容のショウ。マネージメントが同じだったりして、この変則的な興行が組まれたのかな? 電気ベース奏者は両トリオとも、ラシャーン・カーター(2014年5月25日。前見たときほど、今回はグツグツ無骨には弾かず。いい奏者であるのは間違いないが)が務める。

 ダニエル・クロウフォードはけっこうアーバン(R&B〜ヒップホップ)系セッション参加が多い奏者で、ネットでファレル・ウィリアムスやデイヴィッド・ボウイ他の有名曲のヴォーカル・トラックを抜き出したものに自らのエレクトリック・ピアノ音が活きたトラックをさしかえたものを発表していたりもする。この晩は、レッド・ツェッペリン「カシミール」やプリンス「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」のカヴァーもあり。

 まず、ドラマーのステイシー・ラモント・シドナーの演奏に驚く。ボンゴやコンガなどラテン・パーカッションをドラム・キットのなかに組み込んでいて、ときに左手のほうはそれらパーカッションを手で叩いて、まさにドラマーとパーカッション奏者が2人いるような音を出す。おお。主役はコルグの同機種二段重ねで、下はエレピ音限定。だったら、もっと鍵数を持つキーボードを使えばいいのに(リクエストを出せば、いくらでも応じてもらえるはず)、彼はそれでことを成す。両手でジャカジャカ複音を面ねていくような奏法は演奏の幅が広いと言えないが、現代マナーとしてはあり。ヴォコーダー使用曲もあったりして、やはりロバート・グラスパーぽいと思わせ、またグラスパーのファンにすすめるに足るとも思わせる。

 40分ほどやって、マーク・キャリー(2008年8月6日)のエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)のトリオと交代。ほう、対比的にこちらのほうが奏者間のインタープレイが密で成熟していると思わされる。とともに、キャリーはやはりジャズの人、指さばきが流麗達者。なるほどこのトリオはピアノ・トリオの方法論を柱に置きつつ、音色やビートを非純ジャズのほうに持ってこようとする指針を持つグループなのだと納得させられる。キャリーは部分的に単音系シンセサイザーも弾く。自作曲にまじえ、ジャッキー・マクリーン「マイナー・マーチ」とカーティス・メイフィールド「ステアー・アンド・ステアー」を弾いたりもしたが、そこらあたりの選曲にも彼の奥にあるものは透けて見えるか。そういえば、彼の2013年作は、なんとアビー・リンカーン曲集(! そんなの作った人を、ぼくは他に知らない)なんだよな。

▶過去の、ラシャーン・カーター
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079
▶過去の、マーク・キャリー
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/

<今日の、はじめて>
 ジェフ・ニーヴは、ある欧州ブランドから衣服の提供を受けていて、生地と仕立てのよいシャツ、ベスト、ジャケット、パンツをいつもきちっと身につけている。で、それは色男のマネージャーも同様。オフにインタヴューを受けるときも同じような格好をしていて、こんなにステージとオフの出で立ちが変わらない人も珍しい。思わず、いつもこういう格好をしているの?と彼に聞いてしまった。飛行機から降りて来たときもまた同様の決め具合であると、お付きの日本人が言っていたナ。ぼくはかつてニーヴのピアノ表現の響きの奥にレディオヘッドを見ると書いたことがあるが。『One』にはレディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)曲リフから触発され書いた曲もあるそう。それ、4曲目デス。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/

TOYONO

2015年6月17日 音楽
「TOYONOアクースチコ」と表題付けされたショウで、ヴォーカルのTOYONO (1999年6月3日、2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日)、ギターの竹中俊二(2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日)、ピアノと歌の光田健一、エレクトリック・ベースの竹下欣伸、パーカッションの岡部洋一(2000年7月29日、2000年9月14日、2004年5月28日、2004年6月2~3日、2004年6月9日、2004年11月19日、2005年2月19日、2006年7月7日、2006年8月27日、2006年12月3日、2008年1月31日、2011年2月10日、2010年12月28日、2011年8月22日、2013年2月11日、2013年2月19日、2014年2月9日、2015年4月24日)、ヴァイオリンのmaiko、チェロの柏木広樹という面々で、パーフォーマンスをする。

 渋谷・JZ-brat。セカンド・ショウから見る。すげえ、混んでいる。アコースティック傾向サウンド主体で、2弦音が入ると、そのサウンド設定は説明できるか。とともに、普段は歌わない曲をポルトガル語で提供したいという意図もあったようで、椎名林檎の「月夜の肖像」や、チック・コリアの「スペイン」なども歌う。白のドレスを身につけたTOYONOはポル語で歌うにせよ日本語で歌うにせよ、余裕の歌い口。前者は椎名自身から頼まれて、彼女がポルトガル語歌詞を提供したものとか。パっと聞く分には、メランコリックなしっとり曲。後者の有名曲は、ブラジル人がポル語詞をつけたものを偶然見つけ、歌詞をおこして、歌ってみたそう。なぜ、スペインがポルトガル語にというツっこみはともかく、それらはポルトガル語の不思議な味わい、ワープする効用を伝えるものでなかったか。そうしたことに、彼女は長けている。自分が出来ないことをする人をぼくは素直に敬うが、ポルトガル語ができることって、本当に素敵なことだなと思わされたかな。ま、サッカー好きだと余計にそうはなるか。

 1曲ごとに、丁寧にMCが入る。それ、達者でいやらしかったりトホホではないけど、時に奏者たちも加わるそれは長い。お客さんは、喜んでお話に接していたと見受けられた。だが、洋楽ライヴで価値観を作った人間にとっては、それらは長過ぎる。終演後、Aurora Keep Coolerという名称のブラジル産ワイン・クーラーの小瓶を配っていた。へえ、こういう飲み物もあるのか。場内にはブラジル産ワインのチラシも置いてあったが、チリやアルゼンチン産ワインには親しんできているが、ブラジルのワインは飲んだことあるかな。プラッサ・オンゼであるか?

▶過去の、TOYONO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm エスピリト
http://43142.diarynote.jp/200708270314500000/
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
http://43142.diarynote.jp/201001051624161036/
http://43142.diarynote.jp/201002280940361567/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140723
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
▶過去の、竹中俊二
http://43142.diarynote.jp/200708270314500000/
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
http://43142.diarynote.jp/201001051624161036/
http://43142.diarynote.jp/201002280940361567/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20140723
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
▶過去の、岡部洋一
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm 29日ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040608
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<今日の、コンヴェンション>
 昼間、飯田橋・アンスティチェ・ブランスで持たれた、東京フランス音楽産業コンヴェンというものに参加。ナイーヴ、ノー・フォーマ他、パリ周辺の10社の面々が来日し、自己宣伝。コースの食事つき(途中から、ワインもサーヴ)というのは、フランスらしい? メイカーやイヴェンターなどは明日、明後日と個別商談も重ねるよう。また、金曜と土曜はその参加レーベルに所属する3グループが代官山ユニットとアンティスチェ・フランス(野外のフリー・ライヴ)で公演を行う。
 代官山・ユニットで、フランスと米国と英国の、それぞれ女性が入ったバンドを見る。<ダムダムパーティ2015>というイヴェント、なり。

 まず、パブロ・パドヴァーニという26歳の青年(彼は、メロディーズ・エコー・チェンバーというユニットでギターを弾いていた)が率いるムードイド。バンド名はふわふわして形のないものといった意味合いの造語で、それはバンドの捉えどころのない音楽性から来る。簡潔に言えば、サイケかつ幻想的なロックを標榜し、それがなんとも暖簾に腕おし的な風情で多様に繰り広げられる。パドヴァーニは映像を作る仕事に最初ついたそうで、自分たちのヴィデオ・クリップは自ら作っている。

 12弦と9弦のエレクトリック・ギターを弾きながらリード・ヴォーカルをとるパドヴァーニに加え、キーボード、ベース、ドラムは女性。女性の奏者を見つけるのは大変だったそうだが、なるほど腕はちゃんとしている。ドラム音はしっかりしていて、CDよりバンド音は線が太く聞こえるゾ。また、ときに入る女性声も魅力的。4人は皆、デイヴィッド・ボウイ『アラジン・セイン』を思い出させるようなラメのメイクを顔にしている。それと似たものは、ヴィデオ・クリップでも確認できますね。妙にクセになる聞き味を持つデビュー作『Le Monde Moo』は、仏ソニーからのリリース。テンプルズ(2014年5月12日)の横に置いてもいいのかなという感じもあるが、彼らはテンプルズとは何度も一緒にショウをやっているという。

▶過去の、テンプルズ
http://43142.diarynote.jp/201405131310541050/

 次は、ラ・セラ。ブルックリン拠点のガールズ・バンドであったヴィヴィアン・ガールズのケイティ・グッドマンがバンド在籍中から持っていたソロ・プロジェクト。ベースを単純に弾きながら歌うグッドマン嬢に加え、男性のギター(少し、響く系の弾き方)とドラム(平板なビートしか叩かない)が付いてのパフォーマンス。彼女、後から見るぶんには可愛い感じで、キャット・パワー(2003年1月9日、2010年1月17日)を想起させる? 曲は、ぼくにとっては興味ひくものではなかった。

▶過去の、キャット・パワー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm
http://43142.diarynote.jp/201001181042244374/

 そして、その後に出て来たのは、ザ・スリッツとともに英国ニュー・ウェイヴの自由なスタンスや閃きを体現したガールズ・バンドであるザ・レインコーツ。ステージには、太目の、くだけた雰囲気たっぷりの、若い時分にはそれなりにモテたろうとも思わすおあばさんが3人。で、リード・ヴォーカルや楽器を3人のなかで代えたりもするのだが、基本はギター、ベース、フィドルという編成で、ドラムレス。『The Kitchen Tapes』(Roir、1983年)のジャケで仲良しそうに写っている3人と、今日のもろなおばさんたちは同じなのかな。あのアルバムでも、フィドル音は入っていたしにゃ(男性によるドラム音も入っていた)。なんにせよ、3人はわきあいあいと、とても脱力感のあるストレンジ・ポップ・ロック曲を、ときに杜撰さを伴いつつ開いていく。

 コレデイイノダ観、満載。気負わず、偉そぶらず(もう一つの公演の会場は、下北沢のシェルター)。私たちが良しとすることを自分たちなりにやればいい、という気持ちが横溢。で、そこからは我が道を行く感覚、野放し感覚、自分を無邪気に出すことの素敵が表われる。基本の曲がいろんな示唆に富むことも大きいのだそうが、いいなー、おばさんたち。20年後もこのメンバーでしょぼしょぼやっていそうなところもいいい。こういうポップ・ミュージックがあってもいいと、深く頷かされました。

<今日の、好青年>
 ムードイドのパブロ君には、ライヴ前にインタヴューしたのだが、ステージの化粧や格好、クリップでの変てこさとは距離を置く、物静かな好青年。彼の父親、ジャン・マーク・パヴァドーニははみだす方向も知っているジャズ・サックス奏者。実はデビュー作にはイケているサックス音がいっぱい入っていると思っていたのだが、それは父親に吹いてもらったのだそう(デビューCDはデザインと色の使い方で、クレジットが読めなかった)。おお、素晴らしい親子協調だあ。ゆえに、当人もジャズはいろいろ聞いていたそうで、好きな人はと聞けば、「エリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、オーネット・コールマン。(今月11日の)コールマンの死去の報を聞いて、ヘコんだ」とのお答え。お父さんは民俗音楽の方にも興味を持つ活動もしており、バブロもいろんな民俗音楽にも親しんで来ているそう。アルバムには東南アジアっぽいと思わせる部分もある。

新垣隆+吉田隆一

2015年6月21日 音楽
 函館・カフェベルラ。観光名所で有名なケーブルカー乗り場の横にある、ステージ背面は大きくガラス張りになっている展望性抜群の会場。夕方から始まり、日が暮れ、夜景が広がっていくなか、ピアノとバリトン・サックスのデュオは2部制でなされた。空港に着陸する飛行機も見えたな。

 新垣隆(2015年2月8日)と吉田隆一(2004年8月20日、2004年10月10日、2006年7月3 日、2012年12月11日、2014年7月22日、2015年2月8日、2015年4月14日)のデュオ作『N/Y』をフォロウするツアーの一環。と言いつつ、2部のほうは函館入りする時に出来た新曲とか、アルバムに入っていない曲も演奏。それはこのデュオが成長していることを示唆するだろう。アルバム収録曲も阿吽の呼吸のもと、いろんな創意やウィットの交換が盛り込まれて披露される。部分部分を抽出すればけっこう難しい部分もあるデュオ演奏だが、それを普通に両手を広げるように聞かせてしまう2人の振る舞いはプロにして、人徳のなせるワザと見た。

▶過去の、新垣隆
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
▶過去の、吉田隆一
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
http://43142.diarynote.jp/201504151353356530/

<今日の、バス>
 初、函館。札幌バスはデザインや色使いが、もろに渋谷拠点の東急バスだった。最初みたとき、東急バスのお下がりが走っているのかと思ったほど……。完全に日が暮れるのは20時ごろ。おお、北に来たのだなと思わせられる。これがもっと北に行くと白夜になるのか。トラムが走る、街の風情はどこも良い。

トム・ハレル

2015年6月23日 音楽
 ハレルは、1946年生まれの熟達白人トランペット/フュリューゲルホーン奏者。ジャズの美点がすうっと浮かび上がる(それはテーマ部の提示の仕方にもさりげなく盛られる)ような自作曲を素材に、まろやかにして、どこか発展の種を持つソロが悠々と乗せるアルバムをいろいろと発表している名士だ。今回の同行者はECM発アルバムも持つテナー・サックスのマーク・ターナー、アコースティック・ベースのウゴンナ・オケゴォ、ドラムのアダム・クルーズ(2015年4月28日)という、アフリカ系かラテン系の有色の奏者。その二管を擁するピアノレス・カルテットは、ハレルの新作『Trip』(High Note、2014 年)と同一だ。

 悠々、ひたひた。それほど凝っていないようで含みのある、淡々としているようでどこか広がりも持つ演奏が繰り広げられる。そして、その端々から、美意識や野心もこぼれ出る。言葉を超えた部分で、これは良い純ジャズのありかただと思わせられるな。ブルース崩しの曲も2曲やる(1曲はシャッフル・ビート)が、グルーヴィさはあるがブルースではないところもこの場合はなんかくすぐる。

 ターナーの吹き口は抑え気味であるのに、雄弁。なるほど、いい吹き手であると思わされる。そういえばこの前にロイ・ヘインズ(2015年5月18日)のバンドに同行して、その聞き味の良さでぼくを驚かせたアルト・サックスのジャリール・ショウもハレルの2013年作『Colors of Dream』(High Note。そのリズム隊はエスペランサ・スポルディング〜2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日〜とジョナサン・ブレイク〜2009年9月3日、2011年5月5日〜が勤めた。スポルディングは肉声も多用)に起用されていたことがあり、逆引き的にショウもまた秀でた奏者であると同業者から評価を受けていると再認識したりもする。

▶過去の、アダム・クルーズ
http://43142.diarynote.jp/201504291258084057/
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
▶過去の、ジョナサン・ブレイク
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http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/

<今日の、驚き>
 おお、ハレルのステージ上の様はすごい。まず、動きがとってもゆっくり。それはなんか、ザ・バンドのガース・ハドソン(2013年8月2日)のステージ上でのスピード感と重ねたくなるかも。そして、譜面をめくるスピードも遅い。ただし、ハレルの場合はハドソン同様に立派な白い髭は蓄えているものの、頭髪は青年のようにフサフサで、太ってもいないわけであるが。そして、ここからが真骨頂なのだが、彼はずっとうつむいてステージ上に立ち、顔をあげて客のことは一切見ない。だけでなく、メンバーと顔を見合わせることもない! アンコール曲以外は曲目も決まっていたのだろう、曲を一切伝えることもなく、控え目にテンポを出し、それにバンド員が戸惑うこともなくついてくる。MCも本編最後に、サンキューと言って、簡素にメンバー紹介をしただけ。こんな人は初めてだあ。彼はビートとともに身体を揺らすこともないし、顔は見えないが表情も一切変わることはなかったのではないか。でも、クルーズは先のカルデラッツォ公演のときよりうれしそうに演奏していた。
▶過去の、ガース・ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/
 在NYのギタリストであるカーキ・キング(2004年8月3日、2005年3月26日、2007年4月6日)の久しぶりの来日公演は、過去の彼女のパフォーマンスとは一線を画す設定によるもの。“プロジェクション・マッピング”という映像/PCテクノロジーを活用し、映像効果と渾然一体となったなかでショウは遂行される。この前に見たダンス・ショウ“DOOODLIN‘”(2015年4月8日)もプロジェクション・マッピングをおおいに活用したものと言われていたが、設定がシンプルな今回のショウを見て、それがどういう技術か分った気になった。ようは、特定の場所だけに鮮やかな映像を照射する装置/技術のことをさすのではないか。

 過去、ジョン・マッキンタイア(2001年11月7日、2005年1月7日、2006年10月22日、2007年12月2日、2011年11月21日、2012年4月7日、2014年5月7日)やマルコム・バーンなどをプロデューサーに据えるなどしてバスキング乗りインスト派アコースティック・ギター奏者という姿を拡大しようとしていた、彼女のフィジカルとしては一番新しい2012年作『Glow』(Velor)は素のギタリストとしての姿を出す初期に戻ったようななアルバム。だっただけに、逆に新しい方向に出る転機にはなったのかもしれない。蛇足だが、その『Glow』のプロデュース/エンジニアをしていたD・ジェイムス・グッドウィンは、デイヴィッド・トーン(2000年8月16日)の“響く”ギター/ウード・ソロ作『Only Sky』(ECM、2015)の録音を担当している。

 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。ステージ中央に白いギターが固定して置いてある。それは椅子に座って弾くと吉と出る高さに設置されていて、ようはその白いギターが映写スクリーンとなる。脱色刈り上げ→サイバーな外見になったキングは白い衣服に身を固め、彼女自身に映像があたる場面もあった。また、ステージ背後のスクリーンには常時映像が流され、それはギターに写るものと関連する場面もある。映像のオペレートは、外国人女性が横にいて、やっていた。

 バック・トラックあり。それを基調に映像は展開され、カーキによるギター音も重ねられる。我を持つギタリストとしては、ある意味思い切った行き方と指摘できる。だって、演奏の尺はきっちり決められたなかでのパフォーマンスとなる(ようは、発展がかなり制限される)し、元々それほど押し出しの強い人ではないが、彼女のタッピング多用のギター技巧の個性を奥にしまう方向に、その設定はあるから。でも、ギタリストとしての生き残りの方策を求めるストラグルもそこには見え隠れするわけで、鮮烈さを抱えつつも平穏に流れて行くショウにはある種のドラマがあったとぼくは思う。

 ここで使われた音楽は今年i-tunesで配信されたらしいが、やはり映像込みで楽しむべきものか。彼女ホームページ冒頭に掲げられているライヴ映像を見ると、背後のスクリーン映像はなしで、白いギターに映し出される映像効果だけで彼女は勝負しており、そのほうがプロジェクション・マッピングの有り難み、そこから飛躍するパワーは強いのではないかとも思う。ただし、背後映像にはとてもおもしろいパートもあり。白いギターを擬人化して、街を歩くギター君が他のギターたちともろもろやりとりする箇所にはウフフ。その際、ちゃんと日本語の字幕も映し出された。ちゃんと日本向きに手を加えていて、偉いな。そこで、ギターは白いプラスティックのギターと紹介された。そこから、オーネット・コールマン(2006年3月27日)が一時使った白いプラスティックのアルト・サックスを想起し、プルプルとなった人もいたに違いない。

▶過去の、カーキ・キング
http://43142.diarynote.jp/200408030059330000/
http://43142.diarynote.jp/200504051427210000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070406
▶過去の、DOOODLIN’
http://43142.diarynote.jp/201504091238177478/
▶過去の、ジョン・マッケンタイア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/200610251742410000/
http://43142.diarynote.jp/200712031018200000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111121
http://43142.diarynote.jp/201204091014019131/
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/
▶過去の、デイヴィッド・トーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm  16日のティム・バーン
▶過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/

 その後、代官山・山羊にきく に行って、ボビー・プリヴィットらNYボーダーレス/冒険系奏者の作品にも名が見られたりもするデンマーク人冒険系ジャズ奏者が日本の和楽器系奏者たちと重なる出し物を見に行く。この前のスプラッシュガール(2015年5月8日)のときの様なものを期待して行ったのだが、かなり違った。セカンド・セットを見た。

 まず、小山豊(三線)、一噌幸弘(納管、篠笛など)、大多和正樹(和太鼓。2006年3月24日)、磯部舞子(ヴァイオリン)という面々が出て来て、構成を持つ曲を演奏。和楽器の音色や息づかいを活かしたインスト長尺曲、なり。和太鼓はいろんなものを組み込んだ大きなセットで、目を引く。ヴァイオリン奏者は中川五郎1999年8月9日、2004年2月1日、2005年6月17日)ともよくやるそうだ。この4人は2日後に、新宿ピットインにこのまま出るそう。

 そして、そこにニスル・デヴィッドセン(アコースティック・バース)とアナス・モーンセン(ドラム)が加わる。先の日本人4人の演奏/流儀に、デンマーク勢が控え目にあわせる。フリーフォームでなかったのは残念&北欧リズム隊の真価は見極めることは困難だった。

 このリズム・セクションは明日、晴れたら空に豆まいて で、ピアニストの南博(2001年10月29日、2005年6月9日、2005年9月11日、2006年10月25日、2007年4月12日、2007年10月17日、2010年3月26日、2011年3月2日、2013年2月17日)とトリオ演奏をする。その単位で、レコーディングもしているようだ。

▶過去の、スプラッシュガール
http://43142.diarynote.jp/201505091418013376/
▶過去の、大多和正樹
http://43142.diarynote.jp/200603281333540000/
▶過去の、中川五郎
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200402051852240000/
http://43142.diarynote.jp/200506200011180000/
▶過去の、南博
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050911
http://43142.diarynote.jp/?day=20061025
http://43142.diarynote.jp/200704151310110000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071107
http://43142.diarynote.jp/201003280551094942/
http://43142.diarynote.jp/201103040841482385/
http://43142.diarynote.jp/201302191656063458/

<今日の、買い物>
 ぼくが昔、最初に買ったプリンターはキャノンのレーザー・プリンターだった。白黒しか印刷しないから、それが適切だと判断し購入した。だが、2度目か3度目のトナー交換をするとき、トナー・カートリッジの端から黒い粉がぼろぼろ出てきてしまったことがあり、それでレーザー・プリンターがいやになり、キャノンのカラー・ブリンターに変更。その後、エプソンのカラー・プリンターに代わりずっと使っていたのだが、このたび故障。そして、なんとなく、またレーザー・プリンター(今回は、ブラザー。ころころメーカーを変えているのに他意はない)にしたのだが、これがサクサク印刷できてとっても気持ちがいい。色ごとにインクが切れたという表示が出ないと思うだけで、とても心持ちも良い。これは、いい買い物したなあ、と思うことしきり。
 ハサウェイ/スティーヴィー系の味とハンコック的指さばきを併せ持つシンガー/キーボード奏者(2004年4月15日、2004年5月10日、2006年9月3日、2006年12月7日、2007年12月28日、2011年3月4日 、2012年3月5日)の公演は、彼の日本での常会場となる丸の内・コットンクラブ。その初日、ファースト・ショウ。今回は、電気ベース奏者とドラマーを伴ってのもの。そのサイド・マンは20代前半かと思えるぐらい若い。両者とも初来日のよう。

 マッコムは電気ピアノとキーボードの前に座り悠々と指さばきを披露し出すが、音がデカい。とくに、ベースの音は大きくて、最初はツラかった。で、そのうち朗々とした歌を差し込み出すわけだが、それがまた体躯にあってデカい。わー、アメリカンな音量だア。例により、縦横に鍵盤を歌わせるインスト部は長い。

 グランド・ピアノ弾き語りも1曲。それ、ダニー・ハサウェイのヴァージョンを下敷きにしたリオン・ラッセル(2005年11月24日)作「ア・ソング・フォー・ユー」。悪いわけ、イヤな気分になるわけないじゃん。ハサウェイのライヴ・アルバム流れの曲を、日替わり/ショウ代わりでやったりしてな。この彼だけのパフォーマンスのときも、出音はとっても大きい。

 そして、リズム隊が戻ってきてやったのは、ハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日)とスティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)のマッシュ・アップ的な表現と言えそうなもの。ハンコック「アクチャル・プルーフ」のリフでスティーヴィーの「迷信」を歌い始め、リフレインが終わったときのシンセ音色はハンコックの「カメレオン」のそれ。もちろん、鍵盤ソロは『ヘッドハンターズ』〜『スラスト』流儀にある。ニヤニヤ、しちゃうよなあ。その根にあるおいしい種をより屈託なく提示した、今回のマッコムのパフォーマンスだった。

▶過去の、フランコ・マッコム
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http://43142.diarynote.jp/?day=20071228
http://43142.diarynote.jp/201103091608158507/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、リオン・ラッセル
http://43142.diarynote.jp/200511281322500000/
▶過去の、ハービー・ハンコック
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http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
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http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
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<今日の、癖>
 鳥の鳴き声から雨音まで。それに呼応するような電気キーボードの音が聞こえる? それ、巷(ほんの一部だけど)でシャソル(2015年5月30日)愛好者に起こっていること。その回路を持ってしまうと、外に出ていても一つの感興を得ることができるとともに、端からは危ない人に見えることにつながる……。上司の小言にシャソル流鍵盤音を重ねてやり過ごした……なんて、知人も一人。シャソル症候群、密かに進行中? なお、日本ではシャソールと表記されたりもするが、彼と遠くない日仏語堪能な人に言わせると音引きはいらないんじゃないかとのこと。
▶過去の、シャソル
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/

近藤等則 

2015年6月29日 音楽
 我がまま勝手し放題、“嵐を呼ぶ”トランペッターなんてイメージもなくはない、ヴェテラン狼藉派(2006年4月28日, 2007年1月8日)のこの春リリースした旧録音スタンダード集のリリースをフォロウする(と言っていいのか)公演。渋谷・クアトロ。客は年配が多い。60歳以上の人にとっては、近藤って“文化人”なんだよなあ


 二部制にて。ともに、近藤自ら作った響くプリセット音をベースにする。1部は山木秀夫が介添え役となり、すべてメロディアスにスタンダードを演奏。二部はその2人にSUGIZO(ギター)が加わり、メロディなし、フリー・フォーム気味の演奏を展開する。打ち込み音が流行から遠く離れたところにあるため、なんかぽっかり中に浮かんでいる感じあり。それは、近藤ならではの、シブとい、自分であらんという意志も感じさせるもであった。

<今日の、淡い記憶>
 昔、コットンクラブで一緒になり、終演後にSUGIZOとイタリアンに行ったことがあった。彼とは初めて話したけど、そのとき一緒のTOKIE嬢がぼくたち2人が音楽の話があうのに驚いていた。だから、今日の重なりも奇異な感じはしません。SUGIZOさん、あのときはおごっていただき、ありがとうございました。