スフィアズという名前を持つトリオは、ピアニストの山中千尋(2005年8月21日、2009年6月7日、2010年3月14日、2011年8月6日、2013年3月3日)と、NY在住のイスラエル人リズム・セクションが組んだ女性バンドだ。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 山中とドラマーのカレン・テバーバーグ(写真より、ずっと綺麗なルックスでした)はバークリー音大時代の友達だそうで、22歳というベーシスト(エレクトリックのみを弾く)のダナ・ロスはテバーバーグの推挙によるもののよう。ロスの演奏は、なかなかしっかり。今回ベースは電気だから、鍵盤もアコースティックに限るのはやめようと、山中は思ったのではないか。

 山中は、前半はずっと電気ピアノを弾く。師匠のジョージ・ラッセルの曲と言ってやった「リヴィング・タイム(イヴェント5)」は、原曲ともどもとっちらかった様相の曲。ビル・エヴァンスとジョージ・ラッセル・オーケストラの双頭名義で出された1972年同名盤(コロムビア)は何気な奇盤だったよなあ。ああいうレコードを好きな人に悪い人はいない、か。とともに、あのころの米コロムビアのジャズ部門は気張っていたよナと思う。

 中盤からは、アコースティック・ピアノの巻。MCによれば、7月に出る新作はラグタイム巨人のスコット・ジョプリン曲集だそうで、そのなかからと言ってお馴染みの旋律曲「ザ・エンターテイナー」を、相当に現代的に移行させる方向で披露。それ、アルバム様に録ったものとも離れていると、当人はMCでコメント。その次の曲も、ジョプリン曲だったのかな?

 そして終盤のセロニアス・モンク曲「エヴィデンス」はなんとショルダー・シンセサイザーを肩にかけ、最初から終わりまでエフェクターをかけた単音でごにょごにょやる。意外に、合っていた。あ、スフィアズというグループ名はモンクのミドル・ネームからきているの? テーバーグは手数多く、だが重くならず叩く人で、ドラムンベース系のビートを叩かせると上手そうと思わせる? 本編最後は、山中がよくやっている故郷曲「八木節」だったが、この曲をバークリー音大時代に最初にやったときのドラマーが彼女であったのだとか。そりゃ、今回感無量だろうな。なんか、この曲の前半部のピアノのソロがもろにケニー・カークランドみたいだった。

▶過去の、山中千尋
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/201003191715113498/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130303

 その次は、代官山・晴れたら空に豆まいて で、ポーランドの男女エレクトリック・ポップのユニットを見る。女性シンガーのユスティナ・シフェンスとサウンド担当のクバ・カラシが、その構成員。2011年にドイツに近い都市のザブジュで結成され、2014年に同国のワーナー・ミュージックから『No Bad Days』を出した。同国のグラミー賞みたいなアウォードで、新人賞も受けているという。

 ステージに立った2人を見て、誰もが若いっ〜まだ子供じゃねえか、思うのではないか。なんと、男性は19歳、女性はまだ高校生で18歳だそう。つまり民主化後に、2人は生まれたということになるではないか。

 カラシが出音を扱うなか、シフェンスがベール系の音を出すキーボードを弾きながら歌う。ちょっと懐かしい部分も持つエレクトリック・ポップ表現にプラスして、今様なダンス・ビート/音像が付く場合もある。今、ポーランドではエレクトリック・ポップが流行っていて、そこで自分たちもやろうとなったそうだが、かなりまっとう。同国のインターナショナルなポップ・カルチャー水準は、やはり高いと思わせる。シフェンスの歌は上手く、訴求力もあり。カラシはギターやベースを弾く場合もあり、彼女がベースを弾いた曲も1曲あった。

 先に書いたように、まだ2人ともティーンエイジャー。こりゃ、今後どうにでもいいように回るナ、と思わずにはいられず。歌詞は英語を中心に、ときにポーランド語でも歌う。本人たちにとっては、英語のほうが自然に歌えるという気持ちがあるようだ。そんなザ・ダンプリングスは、これまでフランス他いくつかの外の国でパフォーマンスしている。
 
<今日の、10代> 
 ライヴ終了後に、ザ・ダンプリングスの2人にインタヴュー。あなたたちは、同年代の友達と比べて普通なのー、と思わず聞いてしまったな。普通ではないそうデス。彼の地では18歳から選挙権が与えられ、お酒も飲める。すぐ前に大統領の選挙があり野党候補が当選したが、シフェンスはそれが初の選挙投票であったという。すらりとしていて綺麗な彼女は純すっぴんで、歯の矯正のワイヤーをまだ入れている。そういう様に触れると幼さまだ感じてしまうが、腕に小さくはない魚の刺青を入れている。カラシ君のほうは、彫り無しとのこと。彼の父親はぼくより年長だそうで、それに少し安堵?