晴れたら空に豆まいてで、ザ・ゴー!ティーム(2005年8月2日)が所属するメンフィス・インダストリーズから新作『Flux』を昨年出している(過去、何作もソロ作を発表している)、英国人シンガー・ソングライターを見る。彼女は新曲も披露していた。

 オープニング・アクトとして、文筆家でもある寺尾紗穂がピアノ弾き語りをする。彼女のファンもけっこう来ていたのだろう、熱心にパフォーマンスを受け取ろうとする観客の様を肌で感じた。アンコールにもしっかり応えていたが、純度の高い、悠々感が印象的な実演でした。

 休憩をおいて、ブリストル在住のレイチェル・ダッドが出てくる。エレクトリック・バンジョー(これを持つ場合が一番彼女らしさを引き出すかな)やエレクトリック・ギター、さらにアコースティック・ピアノを弾きながら彼女は自分の曲を歌う。やはり、伴奏楽器を持ち替えるのは効果的だし、飽きさせない。透明感とたゆたふ感覚を抱える彼女の所作はレトロ性を持つのに、一方では今っぽい肌触りを持っているのは要点と言える。

 最後の2曲は寺尾も出てきて共演。それ、楽屋で急に一緒にやることが決まったよう。でも、無理なくフレッシュに2人の音楽回路が重なり、意義おおいにあり。音楽は生き物だとなあと思わせられもした。とともに、女性のしなやかさに存分に触れることができた夜だった。予定されていた日本ツアー9公演のうち7公演が中止となるなかのライヴで、その評は日本経済新聞の夕刊で書きます。

▶︎過去の、ザ・ゴー!ティーム
https://43142.diarynote.jp/200508060624050000/


<今日の、会場>
 ハコに着くと、場内はかなりの混み具合。げ。とはいえ、入り口では入場者の体温測定をして手のアルコール消毒をお願いし、またマスクをしていない人にはマスクを与えてもいた。飲み物カウンターにもアルコール消毒用のボトルが置いてあったりもし、それは安心感に繋がる。終演後、ダッドの旦那さんであるブリストル在住のミュージシャンであるichiと少し話す。楽旅で行き気に入ってしまい、住むようになったと言っていたかな。一方、ダッドは尾道が大好きらしい。

 ジム・ジャームッシュの3年ぶりの新作、2019年米国映画を市ヶ谷・日本シネアーツ社試写室で見る。市井の映画館は今がらがらであると聞いていたせいもあり、普段は15分前には試写会場に入るようにしているが、この日はどうせ空いているだろうとタカをくくりギリで入ったらなんと満場。補助椅子に座って見た。電車の窓を少し開けてもいいんじゃないかと思っており、その話を出すと賛同も受けるが、まだ開けられている車両に乗ったことはないな。行き帰りとも、通常とそんなに混み具合は変わらない感じ。

 地球の自転軸がズレて、様々な怪奇現象が起き始め……それは死人がゾンビになって人間を襲うことも引き起こす。なんと、大御所の新作はゾンビ映画だ。コメディ映画という打ち出しもしているが、ちょっとしたやりとりが笑いを誘う部分はある。とぼけた、楽屋落ちな台詞もあり。ちょいクエンティン・タランティーノ的な、不条理な諧謔を覚えるところもあった。日本刀を振りまわす葬儀屋のスコットランド出身らしい女性店主なんて、タランティーノ映画に出てきそうなキャラクターだとぼくは思う。いや、確かジャームッシュ作品にも過去に刀を振り回す登場人物がいたような気もするし、タランティーノがジャームッシュに影響を受けているのは間違いない。

 ビル・マーレイ(映画「ライフ・アクアティック」のころと比べるとじいさんになったなー)、ジャームッシュの2016年リリースの2本の映画の主役であるアダム・ドライヴァー(2017年7月7日)とイギー・ポップ、そしてトム・ウェイツら、ジャームッシュと近い人たちがいろいろ出演。ポップとウェイツはともにはまり役? ミュージシャンだと、ウータン・クランのRZAやセレーナ・ゴメスも出てくる。なんとも荒唐無稽なストーリーを生真面目に、どこか弛緩したテンポにて綴っている。

 表題の「The Dead Don’t Die」は、劇中にいろいろ使われるカントリー・ソングの曲名でもあり、それはその畑では今トップ級にのっているスタージル・シンプソンの曲。→2017年にファンタスティック・ネグリート(2017年4月7日、2019年5月24日)にインタヴューした際に、シンプソンはいいなと言っておりました。のんびりした曲調のもと死者の復活+アルファが歌われるこの曲は映画のストーリーともばっちり合っており、これは書き下ろしなんだろうな。もとい、映画の場所はカントリーを愛でる空気も流れる、時間が止まっているような田舎町(ただし、なぜか少年院もある)。そこはポイントで、ほのぼのした安穏さとありえない惨事との対比を高める。また、ある種の普遍性も出てくるか。

 最後のええっという展開には、唖然。これでいいのか? なんにせよ、ジャームッシュが今の社会に、米国の現況にかなり違和感を持っていることだけはよく伝わる。4月3日より公開されます。

▶︎過去の、映画「パターソン」
https://43142.diarynote.jp/201707080859335054/
▶︎過去の、映画「ライフ・アクアティック」
https://43142.diarynote.jp/200502161844550000/
▶︎過去の、ファンタスティック・ネグリート
https://43142.diarynote.jp/201704130837359192/
https://43142.diarynote.jp/201905250820424812/

<少し前の、訃報>
 ジャズ・ピアノ大家のマッコイ・タイナー(2003年7月9日、2008年9月10日、2011年1月12日)がお亡くなりになった。1938年12月11日〜2020年3月6日。彼には、1990年代に一度インタヴューしたことがある。月刊プレイボーイの記事用だったか。コルトレーン諸作や彼の『サハラ』や『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド』、『ザ・リアル・マッコイ』とかは持っていたが、彼が関わったプロダクツの10分の3.3ほどしかぼくは聞いていないという思いはあった。だが、一般誌なら過剰に入り込んでいなくても、読み手に分かりやすく訴求する原稿は書けると思い、おそるおそる引き受けた。そしたら、そのころすでに彼は痩せていたが、これがなんとも下世話な、くだけた人物でびっくり。で、スケベ。行く先々にオンナがおってのお、みたいな話もこっちが聞きもしないのに彼はずらずら喋った。記事には入れませんでしたけど。英雄、色を好む……。安らかに。
▶過去の、マッコイ・タイナー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200809111754413101/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/

 スナーキー・パピー(2016年6月16日、2017年4月18日)に在籍したゴスペル・フィールド出身の怪物くんであり、ロバート・ランドルフ(2003年12月10日、2009年7月24日、2012年2月28日、2012年3月5日)ともけっこう懇意にしている鍵盤奏者のコリー・ヘンリー(2017年9月3日)のリーダー・プロジェクトの実演を、南青山・ブルーノート東京で見る。ファースト・ショウ。

 うれしい。半年経たずに、また来日をした。前回はトン・ゼー(2019年10月31日)とエラ・メイ(2019年11月1日)という黄金の初来日アクトのホール公演と完全に重なっており、ヘンリー公演に行けなかった。今回の同行者はジャズ・トランペット大御所故人のクラーク・テリー、ロナルド・アイズリー(2001年12月6日、2004年3月1日)やアイザイア・シャーキー(2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年12月12日、2018年6月2日)とも絡むベース奏者のシャレイ・リード、やはり一時スナーキー・パピーのレコーディングに入っていたドラムのタロン・ロケットの演奏陣に、タマラ・フィンガルとフィリシャ・ミッチェルという2人のコーラスがつく。

 ゴスペルはすべてに通ず。そんな内実が溢れるパフォーマンスに、大きくうなずく。ヘンリーはハモンド・オルガン、2台のシンセサイザー(コルグのクロノスと、ピッチ・ベンド使用の単音弾きのみに使った〜ぼくにはメイカーが分からなかった〜もの)とフェンダー・ローズの4種のキーボードを置く。が、7割はオルガンで勝負という感じであったか。

 頭の2曲は3人の演奏陣のみで、インストのパフォーマンス。1曲目はもろにゴスペル調で迫るが、オルガン・ソロの噴出感がすごい。ジョエル・ロス(2019年11月12日)のデビュー作『キング・メイカー』(ブルーノート、2019年)のジャズ・ジャパン誌のディスク評で<ヴァイブラフォン捌きがラップをしているがごとく>というようなことを書いたりもしたが、よりコーリーの演奏の方がそういう感じがあり、ヒップホップ時代のほとばしり感を抱えていると言いたくなるか。その次のインストはもろにジャズ・オルガン王道調にあったが終盤はやはりゴスペル情緒濃厚となる。ときに前のめりになるぶっといエレクトリック・ベース(5弦だったか)演奏も、かなりゴスペルの下地ありと思わせるものだった。ドラマーは持ち運びが大変そうな面が歪んだシンバルを使用。同様のものを、先日のクリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日、2018年6月2日、2020年2月20日)も使っていたな。

 その後は、2人の女性シンガーも加わり歌ものをやる。で、最初の曲はビー・ジーズのディスコ期の大ヒット曲「ステイン・アライヴ」だったのだが、なんか華やかでいい感じ。この曲、ウケますね。そして、やはりここにもどこかゴスペルの魔法が効いていると言いたくなる。女性陣は基本ユニゾンで歌い、歌も歌うヘンリーがハーモニーをつけるノリの曲もある。ヘンリーの歌はどこか節回しのつけ方がスティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)的と思わせる部分があった。実はワンダーの歌唱にゴスペルの影を見たことはあまりなかったが、逆引き的に御大の歌もゴスペルから来ているんだなとふと思う。

 とかなんとか、ゴスペルの音楽的回路を根に置きまくった実演。ゴスペルはR&Bに、ファンクに、ジャズに、ポップスに、コンテンポラリーなダンス・ミュージックに……すべてに通ず。まあ、米国黒人音楽の滋養としてゴスペルがあるのは厳然とした事実なわけで、ヘンリーは当たり前のことをしているとも指摘できるのだが、抱えている末広がりの傾向資質が絶大で、これはもう唸るしかない。ふむ、“ファンクの使徒”ではなく、完全に“ゴスペルの使徒”でしたね。実はゴスペルの美点をこれでもかとコペルニクス展開させて出していた〜ようは、つきるろころはゴスペルと思わせた〜のがプリンス(2002年11月19日)であったとぼくは常々感じる者であるのだが、ヘンリー公演に接していてなぜかプリンスを頭の片隅に覚えたりしたんだよなー。

 会場はけっこう入っていた。来日アーティストの公演が次々にキャンセルされるなか悠々と開かれたこのライヴ(4日まで)ゆえ、よくこんなおりにやってくれましたという気持ちもあってか、観客の反応も熱い。とともに、ゴスペルは強い。その巨木が大地に根を張っている感覚が、また接する者を安心させ、鼓舞する。うーん、これはけっこう忘れがたいショウになるかもなあ。

▶︎過去の、コリー・ヘンリー
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/ 挾間美帆への客演、そして彼のリーダー公演
▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶︎過去の、ロバート・ランドルフ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200907310050296060/
http://43142.diarynote.jp/201203061824335340/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶︎過去の、トン・ゼー
https://43142.diarynote.jp/201911011701216748/
▶︎過去の、エラ・メイ
https://43142.diarynote.jp/201911021100591246/
▶︎過去の、ジョエル・ロス
https://43142.diarynote.jp/201911131405562579/
▶︎過去の、アイズリー・ブラザーズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
https://43142.diarynote.jp/200403011119270000/
▶過去の、アイザイア・シャーキー
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201612171246253699/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
https://43142.diarynote.jp/202002211026566257/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm

<今日の、確認>
 会場に向かっていると、前に知り合いのH君がいる。よおっと声をかけると、「あーいつものA輔さんに会って、ホっとする〜」と言われる。それは、何より。と書きつつ……
 10日も空いての、ライヴ行きとなるんだよなあ。大腸のポリープ除去を受けたため(先延ばしにすると、もっと外出するのが憚られるような状況になるような気もして、即やっちゃった。そんなに急がなくてもいいよと医者からは言われたんだが)当面お酒を飲んじゃいけないことにくわえ、先週中旬いこう鼻水が出て(花粉症じゃないかという人がいた。ついに発症?)少し咳も出たりして(冬は風邪をひいても気にしないぼくではあるが、これまで風邪ぽくならなかったのは例年と大きく異なる。やはり、今年は暖冬なのだろうか?)、少しライヴに行くのを控えていた。やっぱり、咳をしている人が隣にいたら嫌だろうし、平熱ではあるのだけど万が一キャリアだったとして、そうした場合の迷惑をかける度合いの大きさを考えると集団の空間に行くのは怯む。ま、逆もそうだけど。手術を受けた翌日(22日)には、ムーン・ロマンティック・ジャズ・フェスティヴァルというのが青山・月見る君想フ周辺の複数会場であり(純ジャズの出演者は、山下洋輔のみのよう)、それはちょい行ってみたかった。入場者の体温チェックや入場時のアルコール液手洗い徹底とか、その時点でクールにできることをやるようにして開催にこぎつけたようだ。
 そしたら、その後、公演中止や会場閉鎖が相次ぎ……。https://43142.diarynote.jp/202002161253276164/ の欄外で書いていることがゲンジツになってきている。あーあ。能力も倫理観もゼロの最悪なおさに対する絶望もあり、ダークになっている自分がいる。まだ、311の体験があるから、マシではあるのだろうけど。とほ。自分の運を信じ、ポジティヴに行きたいが。
 ライヴの帰り、寒くないし、電車に乗るのがなんかイヤだなあと思い、歩いて帰ろうとした。が、途中で渋谷のお店に入ってしまう。あら、後から来た人も含め、知り合いだらけ。お雛様が飾ってあり、桃の節句であるのを実感。飲んじゃいけないのでブルーノートと同じくハーブ茶を頼んだら、おしゃれなオーガニックなやつ(ハーブがそのまま押し花になったみたいのをお湯につける。フランスのル・ベンフィック社のもの)を出してくれた。そこからの帰りは寒さを感じたので、電車に一駅乗る。けっこう、混んでいた。
 ともあれ、ライヴはいい。音楽はいい。

 いやあ、アルゼンチンの奏者たち、水準高すぎ。もう、接しながら、ため息ばかりついていました。

 毎年恒例の日本各地をいろいろと回るアルゼンチン・タンゴのイヴェントを中野サンプラザで見る。ぼくは昨年初めてこの催しを見に行ったら(https://43142.diarynote.jp/?day=20190122)、かなり感銘を受けてしまい、今年も見に行くことにした。

 今年のバンドは、キンテート・グランデという、ヴァイオリン奏者のマティアス・グランデがリーダーとなる五重奏団。他に、ピアノ、コントラバス、バンドネオン、チェロ奏者という布陣。チェロ奏者は代役のようであるが、とっても綺麗っぽいお姉さんでいいじゃないか! グランデが、そして2015年結成となる彼のクインテットが本国やタンゴ通の間でいかなる評価を受けているかはまるで知らないが、現代タンゴの魅力、アルゼンチン人プレイヤーの力量の高さは門外漢ゆえにすうっと理解できちゃうところはあったかもしれない。

 2部制で持たれたショウの演目は1910年代のタンゴ曲からピアソラの「リベルタンゴ」、さらにはメンバーのオリジナルまで様々。バンドの編成は弦楽器3つに鍵盤楽器2つというのものだが、弦奏者たちはなにげに皆弓弾きしている曲が多い。コントラバス奏者は指弾きするときも、弓を持ったまま弾いていたのではないか。というのはともかく、それは優美な調べを導くのは当然として、一方では随時パッションやある種のビート感に溢れていたのはどうしたことか。ピアノなんかもときに相当にパーカッシヴな演奏を見せていたなー。とともに、コントラバスとチェロの弓弾きの波が強力なのか。

 バンドの単独演奏曲もあるが、そこに3組の男女ダンサーたち(←それを目当てに来てる人も多いのだろう)や、歌声がよく通る女性シンガーが曲によっては入ったりもし、起伏や変化はたっぷり。いやあ、周到に練られている。そういう面でも、賞賛される出し物であると思えた。また後ろのヴィジョンにはいろんな情報が映されるし(歌が入る場合は歌詞も)、入場時に配られたフライヤーも出演者や演目について知りたいと思える情報はばっちり開示されていて、それも良い。そのうち、毎日新聞夕刊にライヴ評が出ます。

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京で、現代ジャズ/R&Bの人気ドラマーであるクリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日、2018年6月2日)のグループを見る。

 けっこう来日している彼だが、過去の同行常連者である鍵盤のボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日、2018年6月2日)やギターのアイザイア・シャーキー(2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年12月12日、2018年6月2日)はおらず。前回来日時は同行していなかった(よな?)打楽器のフランク・モカ(2016年1月25日、2016年10月11日、2017年10月6日)は留任で、あとはヴォーカルとラップのアーロン・カンパー、すでにブルーノート東京でリーダー・バンドで出たことがあるキーボードのダニエル・クロウフォード (2015年6月16日)、ジャガー・ライトやミュージック・ソウルチャイルド(2009年9月26日、2015年2月21日)らのアルバムに名前が見られる4弦のエレクトリック・ベースを弾くサディーアス・トリベットという人たちが加わり、5人にてパフォーマンスはなされる。

 サディーアス・トリベットとダニエル・クロウフォード、2人によるインプロヴィゼーションからショウは始まる。その後、他のメンバーがだらだら出てくるわけだが、フランク・モカのアフリカ部族調(?)の格好は目立つとともに、より機材を並べるようにもなり、彼のバンド表現にしめる演奏の割合は大きくなった。そのぶん、クリス・デイヴはこれまでで一番叩かなかった? でも、2人の重なりはやはり強力というしかない。

 なあなあで曲やリフを重ねていくジャム調というノリはこれまでと変わらず。面々、アイコンタクトではなく、「アウアウアウ」みたいな擬音でボイス・コンタクトをし合う場合もあり。それ、コントみたいだった。

 半分ぐらいで絡む肉声担当者のアーロン・カンパーがかなりの実力者で頷く。ラップをかましたときは、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日、2018年1月3日、2019年1月12日)の新作『ファック・ヨ・フィーリングス』みたいだと思えたし、歌も朗々としていてマル。彼はスティーヴィ・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)の曲(曲名、失念)とともに、ザ・ビートルズの「イエスタデイ」も見目麗しく歌ったが、ザ・ビートルズのほうは歌詞を聞き取らないとあの有名曲とはなかなか分からない改変がされていた。タッパもある彼はコンポーサーとしても活動し、ジェイ・Z(2010年8月7日)やジル・スコット作らに関与しているが、いいタレントだ。彼の活躍もあってか、これまでで一番R&B濃度の高いデイヴの実演だったと言えるかもしれない。

 有名ジャズ曲でやったのは、コルトレーンの「ジャイアント・ステップ」だけだったか。それとも、ぼくの知らない曲の断片もやっていたか。ギターレス編成であったが、ダニエル・クロウフォードはキーボードでけっこうギター調の音を出していた。このセカンド・ショウは、90分ほど演奏された。

▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、アイザイア・シャーキー
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201612171246253699/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶︎過去の、フランク・モカ
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/ クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/ クリス・デイヴ
https://43142.diarynote.jp/201710071225329957/ エリカ・バドゥ
▶︎過去の。ダニエル・クロウフォード
https://43142.diarynote.jp/201506180954176007/
▶過去の、ミュージック・ソウルチャイルド
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
https://43142.diarynote.jp/201901141233456475/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、ジェイ・Z
http://43142.diarynote.jp/201008261617154352/

<今日の、覚え書き>
 売れっ子クリス・デイヴはいろんなレコーディング・セッションに呼ばれており、2019年リリースものに限定しても、元ザ・バンドのロビー・ロバートソン、ラファエル・サディーク(2009年6月30日)、ロバート・グラスパー(先に触れた、『ファック・ヨ・フィーリングス』)らのアルバムに関与している。そんななかでも目を引くのは、ヴァン・モリソンやグレン・ハンサード(2009年5月20日、2009年1月15日)らもシンガー参加しているロバートソン久しぶりのリーダー作の『Sinematic』(Universal)か。そこではジム・ケルトナーなんかも叩いているが、かつてマヌ・カチェ(2011年1月28日、2012年1月13日、2016年4月13日、2019年12月2日)を雇ったこともある彼(それをECM社主マンフレート・アイヒャーが聞いて、ヤン・ガルバレク〜2002年2月13日、2004年2月25日〜のレコーディングにカチェを誘った)、やはりビートにも留意する人なんだよな。かつて、ザ・バンドが曲によってはツイン・ドラムであったこともそれと繋がっている? 2016年だかに出した自伝をもとにしたロバートソン視点でザ・バンドを扱うドキュメンタリー映画「Once Were Brothers: Robbie Robertson and The Band」(監督は、ダニエル・ロアー。いまだ、ロバートソンに音楽づくりのインスピレーションを与えているマーティン・スコセッシがエグゼクティヴ・プロデューサーを務める)を早く見たいなー。そのトレイラーは、
https://www.youtube.com/watch?time_continue=42&v=ZYTpMZjZxwI&feature=emb_logo
▶過去の、ラファエル・サディーク
http://43142.diarynote.jp/200907131157415716/
▶︎過去の、グレン・ハンサード
http://43142.diarynote.jp/200905221027321644/
http://43142.diarynote.jp/200901161818098587/
▶過去の、マヌ・カチェ
http://43142.diarynote.jp/201102081259129769/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
https://43142.diarynote.jp/201604271334589018/ 取材
https://43142.diarynote.jp/201912030740028983/
▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/

 クラリネット奏者の大熊ワタル(2001年3月24日、2010年12月13日、2012年7月1日2019年9月7日)の自己バンドであるシカラムータのセルフ・タイトルのデビュー作(リスペクト、1998年)を聞いた際の感興は今もリアルに覚えている。時代性という縦軸と音楽ジャンル/地域性という横軸をすっとばし、また野心と人間性が効果的に渦巻くその表現は、オルタナティヴなこれからの日本のジャズを語る際にも不可欠となると確信させる創意に満ちていたからだ。って、そのときはぼく自身ジャズを書く比率がそれほど高かったわけではないが。←それは、この<ライヴ三昧>のかつてのラインアップを見ても分かる。ロックやブラックが多かった。

 各種クラリネットとすこし鳴り物や鉄琴も叩く本人にくわえ、ちんどんとシンバルとフロアタムを叩くこぐれみわぞう(2019年9月7日)、ヴァイオリンの太田惠資(2001年3月24日、2003年5月22日、2004年10月10日、2005年2月19日、2016年9月27日、2018年7月7日、2019年10月16日、2020年1月13日 )、エレクトリック・ギターの桜井芳樹(2001年3月24日、2005年2月19日。2007年6月29日、2012年6月14日、2014年8月16日、2017年7月2日)、ドラムの吉田達也(2006年1月21日、2013年2月11日、2019年7月16日、2020年1月13日)、チューバの関島岳郎(2001年3月24日、2005年12月20日、2009年7月29日、2011年12月28日、2019年9月7日)とギデオン・ジュークス(2008年8月24日、2013年2月19日)、トランペットの北陽一郎、アルト・サックスの川口義之。最後2人は不破大輔/渋さ関連(2004年7月29日、2004年9月1日、2005年12月22日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月3日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日、2015年11月23日)の奏者でもあり、川口は栗コーダー・カルテットもやっていますね。1部の途中からは、テナー・サックスを吹く女性も加わり、多いときは管楽器が6人となる。ちょっとした、管楽器アンサンブル・グループといった感じもあったな。

 日本も当然含めた世界のストリート/人民の手作り音楽を俯瞰し、それを粋とユーモアを介して宙に舞わせる。シカラムータの実演を聞くのは鬼のように久しぶりで、昔の印象ともまた異なっていて、そうかあ。それは面々(人数も増えている)がどんどん変化/成熟している部分もあるだろうし、ぼくの“耳”が広がっていることもあるだろう。昔、フランク・ザッパ的と思える部分もあったと記憶するが、どーしてそう思ったんだろう? 変拍子や仕掛けがあると、ぼくはそう感じていたのだろうか? など、大熊たちの胸を張った所作に対峙しながら、自らの音楽観の変化をたどっていた部分もあった。それもまた、力のある音楽の効用なり。

 起点はプログ・ロック小僧(あと、絵を描くのが好きだったみたい)だったそうで、1部の最後にはキング・クリムゾンの「レッド」を演奏する。また、2部のあたまには大作「コジラ」(子供のころ、特撮モノが大好きであったよう)をシカラムータ・ヴァージョンにて披露。伊福部昭によるこの曲、即興なしのオリジナルが13分もあるとのことだが、なかなかに複雑。それゆえ、このときだけこぐれが前に出てきて(ちゃんとクラシック奏者?風に着替える)指揮をする。この2曲(とアンコール)は、キーボードで清水一登(2010年3月20日、2011年7月4日、2017年7月31日)も加わった。

 吉祥寺・スターパインズ・カフェ。一部は下のフロアで、2部は上の階からステージを見下ろす。なんか、2倍おいしい? こういう出し物をもてて、本人も幸せそう。これまでの音楽遍歴をまとめつつ、これからも冒険は続く……。そんな音楽家の精気ある存在感を存分に受けた。

▶︎大熊ワタル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
https://43142.diarynote.jp/201012150816313582/
https://43142.diarynote.jp/?day=20120701
https://43142.diarynote.jp/201909091048167448/
▶︎過去の、こぐれみわぞう
https://43142.diarynote.jp/201909091048167448/
▶︎過去の、太田恵資
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm シカラムータ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm ハシケン
http://43142.diarynote.jp/?day=20041010
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http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/
https://43142.diarynote.jp/201807080932266789/
https://43142.diarynote.jp/201910170731042901/
https://43142.diarynote.jp/202001141031439634/
▶過去の、桜井芳樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm シカラムータ
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▶︎過去の、吉田達也
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
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https://43142.diarynote.jp/201907180809371988/
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▶︎過去の、関島岳郎
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
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▶︎過去の、ギディオン・ジュークス
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▶過去の、不破大輔/渋さ知らズ
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http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/
http://43142.diarynote.jp/201711241828493970/
https://43142.diarynote.jp/201804290935481570/
▶︎過去の、清水一登
http://43142.diarynote.jp/?day=20100320
http://43142.diarynote.jp/?day=20110704
https://43142.diarynote.jp/201708081443281390/

<今日の、追記>
 冒頭に記したように、この晩は[大熊祭 OKUMA FESTIVAL 60’s Anniversary]と名付けられた3デイズの出し物の初日。青年ぽさを持ち続けているのでまだまだ還暦には遠いイメージをぼくは持っていたのだが。やっていることや知識はそれにふさわしいものであるし、最初シーンに出たときはシンセサイザー奏者らしいからな。大熊ワタルは1日して、ならず。ま、それをすんなり納得させるパフォーマンスでもありました。そんな彼は赤いシャツと赤い靴、パンツは白で、ジャケットは赤と白のツー・トーンのものを身につけていた。翌日は、<ジンタらムータの日>で、明後日は<地下音楽 ジャズロックspecial>の巻となる。

菅波ひろみ 

2020年2月18日 音楽
 菅波ひろみ(2017年12月1日、2019年10月18日)のショウを、荻窪・ルースターで見る。満場、ちかしい声援も飛び、しっかりファンを獲得しているなああ。

 2部制にて。アレサ・フランクリン、ココ・テイラー、デニス・ラサール(2004年12月20日)、ザ・ステイプル・シンガーズ、ジョニー・テイラーたちの曲に交え、まっとうな知識が反映させる自己曲も6〜7曲。やっぱり、ピカ1のブルーズン・ソウルの日本人シンガーというしかない。歌詞カードなんかを一切置かないのも、毎度のことだが素晴らしい。バンドはキーボードの中道勝彦(2017年12月1日)、ベースの土本浩司 、オーサカ=モノレール(2002年7月25日、2006年6月8日、2018年12月19日)で叩くドラマーの木村創生。この晩のライヴ評は、日経新聞の電子版に書きます。

▶︎過去の、菅波ひろみ
https://43142.diarynote.jp/201712031012091034/
https://43142.diarynote.jp/201910191200281107/
▶︎過去の、デニス・ラサール
http://43142.diarynote.jp/200412212106260000/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180110 訃報
▶︎過去の、中道勝彦
https://43142.diarynote.jp/201712031012091034/
▶︎過去の、オーサカ=モノレール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm ソウル・スクリーム
https://43142.diarynote.jp/200606111739030000/
https://43142.diarynote.jp/201812201007219205/


<今日の、訃報>
 ECM御用達のノルウェー人ドラマーである、ヨン・クリステンセン(2007年9月18日)の訃報が届く。1943年3月20日〜2020年2月18日。娘さんのエミリー・ストーゼン・クリステンセンはシンガーと女優をしている。彼女はピアニストのヨン・バルケと親しく、ECMやジャズランド発など彼がらみのアルバムに入っています。
▶︎過去の、ヨン・クリステンセン
https://43142.diarynote.jp/200709201051570000/

 トリック・スター的な一面も持つチリ出身/パリ在住の著名映画監督であるアレハンドロ・ホドロフスキーの2019年フランス映画の試写を、渋谷・UP LINKで見る。スペイン語とフランス語が中心で、章のテーマは英語で記される。音楽は弦音を使った、セミ・クラシック調のもの(と、書いていいのかな?)がつく。

 おお、ぼくにとってはよく分からない、ドキュメンタリー調映画。らしいといえばらしいし、それが彼の常人の理解を超えたサムシングを作り出すとは思えるのだが。

 “サイコマジック”とは、タロット占いの名人でもあるらしいホドロフスキーが考案した心理療法だそう。で、10あまりの悩む人を変テコ(スピリチュアルと感じる人もいるだろう)治療する映像が紹介されるのだが、それが荒唐無稽と言えばまったくそうで、ある意味胡散臭い。この作品用に撮ったものもあるだろうが(1990年代にはポリドールから日本盤も出て、来日公演もしていたフランス人シンガー・ソングライターのアルチュール・アッシュの場面はそうだろう。彼の場合は偉大な父、故ジャック・イシュランとの関係に悩んでいるよう。歌も歌うが、素直に歌うようになり、あまりトム・ウェイツを想起させないようになっている)、チリの広い会場で癌に蝕まれた女性に観客とともに気を与える映像など、長い期間に渡り撮りためたものも少なくないか。そして、その施術を受けた者のだいぶ後の姿を紹介するときもある。また、その10ほどのケースの間に、彼が監督した処女作『ファンド・アンド・リス』(1968年メキシコ映画)から前作『エンドレス・ポエトリー』(2017年7月14日)まで、それら映画のほんのすこしの部分がインサートされたりもし、彼の映画は“サイコマジック”回路に根ざしたものなのだと示唆するようなところもあるからややこしいというか、思わせぶりで始末が悪い。

 適時、本人も出てくる映画。一応、資料にはサイコマジックについていろいろ能書きが書いてあったが、よくわからねえ。科学としてのセラピーではなく、アートとしてのセラピーであるとのことだが。

 御大は2月17日生まれだそうで、この日で91歳。すごいな、今も「エンドレス・ポエトリー」の続編を作っているというし、意気軒昂に安易な理解を求めない作品を問い続ける様には頭が下がる。ジャズでは91歳で来日公演をしているハンク・ジョーンズ(2010年2月22日。その5ヶ月後お亡くなりになった)のような人もいなくはなかったが、ポップ・ミュージックの世界ではそんな高齢でプロとして恒常的に活動している人、おそらくいない。彼の体力/気力は、サイコマジックゆえ? 4月下旬から、アップリンク系他で公開される。

▶︎過去の、「エンドレス・ポエトリー」
https://43142.diarynote.jp/201707151654245284/
▶︎過去の、ハンク・ジョーンズ
https://43142.diarynote.jp/201002280939559070/
 
 その後は、南青山・ブルーノート東京で、1980年シアトル生まれのドラマー/シンガー(2014年5月3日、2017年6月23日、2018年10月23日)の公演を見る。お、そんなことやるの? その連続。超おもしろかった。

 リーダーのカッサ・オーヴァオールは、ディー・ディー・ブリッジウォーター(2003年8月1~2日、2007年8月24日、2008年12月4日、2009年11月27日、2014年5月3日)やアート・リンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2015年6月9日、2016年9月1日、2017年6月23日、2018年10月21日、2018年10月23日)のグループでドラマーとして来日している御仁。自主制作の2019年前作『Go Get Ice Cream And Listen to Jazz』は過去関連してきた人たちを総動員したヴォイスや現代ソウル流儀をも介する現代ジャズ作品という感じであったが、2020年新作『I THINK I’M GOOD』はそんな彼のハイブリッド性に着目したのか、ジャイルズ・ピーターソン(1999年5月21日、2002年11月7日、2004年1月16日、2008年9月18日、2012年9月13日、2013年11月1日、2016年10月8日)のブラウンズウッドからのリリースとなり、よりいい意味での非ジャズ化が見られたりもする。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 まず、ジュリアード音楽院とかを出ている1989年NY州生まれのジュリアス・ロドリゲス(ピアノとフェンダー・ローズ。小僧な、ラフな格好)が1人出てきてピアノ・ソロを披露。ちゃんとしている。その後、当人を含め他のメンバーたちも出てくるのだが、おおそれぞれに個があり。とくに、4弦エレクトリック・べースやウィンド・シンセを主に扱うモーガン・ゲリンはテナー・サックスを吹いたらとてもいい音色で、いいフレイズを出していた。彼はエスペランザ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日、2016年5月31日、2017年3月27日)の『12リトル・ピルズ』(コンコード、2018年)やテリ・リン・キャリントン(2004年9月7日、2005年8月21日、2008年12月1日、2009年6月15日、2010年9月4日、2014年9月16日)のヴォイス多用の社会問題に言及するテリ・リン・キャリントン&ソーシャル・サイエンスの『Wating Game』(Motema,2019年。もっと話題にならなきゃ、ウソだと思う)に名前が見られる。あ、オーヴァオールもソーシャル・サイエンスにシンガーやプロデューサーとして関与していますね。

 話を戻すと、そのロドリゲス君、さらに1曲はリード・ヴォーカルをとるは、和太鼓を控えめに叩くは、オーヴァオールが中央に出てきて歌う際にはドラムを叩くはと大活躍。今後、もっと名前を出しそうだな。また、もう1人気分一発キーボード&盛り上げ役として、アート・リンゼー・バンドの同僚であるポール・ウィルソン(2016年11月10日、2014年10月26日、2017年6月23日、2018年10月21日、2018年10月23日)も同行した。

 ヴォーカル(ラップぽいときも)はすべてエフェクトを通したもので、プリセットの音を趣味良く使う場合もあり。オーヴァオールは活きのいいドラミングを見せるとともに、ドラムを叩かずにサンプラーをいじりながら歌う場面もあり。彼って見かけはいかついが、なんかいい奴そうだな。で、そうしたいろんな局面を聞き手に差し出すパフォーマンスは 今の洗練されたR&B傾向表現と現代ジャズ表現が同義語になり得る……、そんな可能性も思わせるものだった。推奨する。。

▶︎過去の、カッサ・オーヴァオール
https://43142.diarynote.jp/201405051105329639/ ディー・ディー・ウォーター
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
https://43142.diarynote.jp/201810240904066739/
▶過去の、ディー・ディー・ブリッジウォーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200708270316020000/
http://43142.diarynote.jp/200812150311286788/
http://43142.diarynote.jp/?day=20091127
http://43142.diarynote.jp/?month=201405
▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
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http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
https://43142.diarynote.jp/201810240904066739/
▶過去の、ジャイルズ・ピーターソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live2.htm 1999年5月21日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
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http://43142.diarynote.jp/201311021703148497/
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▶過去の、エスペランサ・スポルディング
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http://43142.diarynote.jp/200812141259213603/
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
https://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
▶︎過去の、ポール・ウィルソン
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
https://43142.diarynote.jp/201810240904066739/

<今日の、半泣き>
 税理士に申告用の領収書と支払調書の束をそろそろ送るために準備しようとしたら、ありゃりゃ。昨年の領収書群が見当たらない。ええええ。ぼくは仕事場のドアの取っ手にかけたデカいトート・バッグみたいなのに、ぼんぼん領収書を入れ、溜めている。で、新年になったさいにその束を別の袋に入れ替えたんだが、その袋が行方不明。オレはいったいどこに置いたんだ? 自分のだらしなさを嘆きつつ、10分捜索してとりあえずヤメ。これ以上やるとストレス過多になってしまう。キブンを変えるためなんか柄にもなく優美なクラシックをかけ、原稿をちょいちょい書きつつ、アタマのどこかで新年の入れ替え所作を考える。うーん。結局、2番目の候補であるトランクルームを見たら、無造作に置いてあった。

 1980年代上半期の英国ニュー・ウェイヴの人気ユニットであるソフト・セルのシンガーであったマーク・アーモンド(やはり印象に残っているのは、そのルックス/佇まいかな)のショウを、六本木・ビルボードライブ東京で見る。ファースト・ショウ。

 彼はソロ・アーティストとして、現在までコンスタントにリーダー作を出し続けてきている。その活動をチェックしているわけではないが、新作『Chaos And A Dancing Star』 (BMG,2020年)は聞いた。誠実な歌心を前面に出した仕上がりで、ショウもそうなるのかと推測。ヴォーカルの当人に加え、キーボードのジェームズ・ビューモントとギターのニール・Xの3人による。その2人はともにその新作に参加していた人たちであり、プリセットの音は随時用いられた。

 冒頭、歌声がヤレ気味であら。でも、すぐに落ち着き、自分の世界をやんわりと送出する。いろんな辛さも経たうえでのは肯定感のようなものが感じられ、当然それは聞く者に共感の情をもたらす。基本カラオケちっくな伴奏で、各曲は短め。それゆえ、ちょうど60分ぐらいで終わるショウなのかなと思ったら、80分を超える尺のショウをきっちり彼は披露した。ときに古い映像も流しつつ、過去の姿も是認するショウ。ぼくが一緒に口ずさめる曲はなかったが説得力あり、後味は良し。

 礼儀正しそうなギターのニール・Xは、一時は日本でもかなり注目を集めた、ジェネレーションX流れの扇情度高しのジグ・ジグ・スパトニックのメンバーであったのか。終盤、彼はその代表曲「ラヴ・ミサイルF1-11」を中央に立って歌う。そのとき、横にいたアーモンドの様にはいい人そうな感じがあふれる。そういえば、ブラジル音楽バーの店主が、ジグ・ジグがブラジル人と絡んだかブラジルで録音した曲があって、それを探していると言っていたことがあったな。

 1957年生まれの、62歳。見てすぐにゲイであるのがよく分かるし、当初から彼は公言していたはず。客は女性がすんごく多く、最後にはプレゼントを渡す人も散見され、アイドルだったのだなと気づかされる。うれしそうに、彼はその反応にも応対していた。

 なんか、アーモンドを見ながら、ジミー・ソマーヴィル(ブロンスキ・ビート、ザ・コミュナーズ)のことを思い出した。ソマーヴィルも昔からゲイあること、そしてソウル耽溺を隠さずに、自分なりに襞のある音楽を紡いでいた。ぼくがそんな彼を見たのはザ・コミュナーズ時代の1987年初春、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの公演。つまり、英国ではものすごく人気を得ていた。その際の前座は、UK女性ソウル歌手のルビー・ターナー(彼女を送り出したジャイヴ/ソンバ・プロダクションのオフィスは、まだロンドンにあった)とデビューしたばかりのテレンス・トレント・ダービー(2013年3月21日)だった。最後にアルバムをリリースしたのは4年前になるが、彼も健在なはずで来日しないかな。

▶︎過去の、サナンダ・マイトルーヤ(TTD)
http://43142.diarynote.jp/201303230952387108/

 その後は、南青山・ブルーノート東京で、カマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日、2019年9月2日)やスタンリー・クラーク(2008年9月8日、2010年12月3日、2012年12月5日、2015年9月30日、2020年1月5日)のアルバム録音に参加していて、なぜかリオン・ウェア(2009年8月23日、2012年12月9日)とも付き合いを持つ、過去マック・アヴェニューから1枚リーダー作も出している鍵盤奏者のキャメロン・グレイヴス(2015年9月30日、2020年1月5日)のリーダー公演を見る。

 同行者はギターのコリン・クック(いかにもロック好きがジャズ素養を得て成長しましたという感じ。アラン・ホールズワース的な位置を狙える実力者と思った)、6弦エレクトリック・ベースのマックス・ゲル(ソロを披露する場合は、エフェクターを通し、シンセサイザーで演奏しているような音でやる)、ドラムのマイク・ミッチェル(2015年9月30日)。弦楽器のお二人は白人。終演後、アメリカ人の友人がギタリストは微妙だが、他は皆ゲイっぽく感じると自信ありげに言っておった。ぼくはぜんぜん分からなかった。

 まずは、ドラマーのが叩き倒しながちんこドラミングに笑っちゃう。好きか嫌いかはともかく、もう破格! 決めも多い表現総体はハード・コア・ジャズというか、かなりジャズ技量が入ったプログ・ロックというか。あらあ、そういうものを志向する人であったのか。快活なMCもハンド・サインを観客に向ける様もジャズ的というよりはロック的だな。そして、サイド・マンもそういう音楽を志向するには適した人材を揃えているとも痛感した。

 ピアノ音色のキーボード(こちらが主)とグランド・ピアノを弾くグレイヴスだが、それほどそれらの音に差異はない。バンド全体の音量が高いので、それに負けずに鍵盤に指を這わせるためにキーボードを弾く頻度が高くなるという感じか。一方無伴奏でクラシック流れとも言いたくなる演奏をするときもあって、その際は生ピアノを弾く。本にインスパイアされてとかいうコメントも、彼は挟んだ。本のタイトルは言わなかったが、どういう内容の本なんだろ?

▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、スタンリー・クラーク
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
http://43142.diarynote.jp/201012051906481605/
http://43142.diarynote.jp/201212131141531884/
https://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
https://43142.diarynote.jp/202001060957069830/
▶︎過去の、リオン・ウェア
https://43142.diarynote.jp/200909091016498286/
https://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
▶︎過去の、キャメロン・グレイヴス
https://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
https://43142.diarynote.jp/202001060957069830/
▶︎過去の、マイク・ミッチェル
https://43142.diarynote.jp/201510021221454336/

<今日の、もろもろ>
 コロナ・ウィルスのけん、じわじわと危機感を覚えている。https://43142.diarynote.jp/202002010925433919/ の項で米国人音楽家の来日公演中止に触れているが、その後4月のビリー・コブハム公演のキャンセルも発表された。おととい(昼間には、ロンドン、LA、NY、サンパウロ録音曲で固めた新作を出すさかいゆうにインタヴューした。ミュージック・マガジンの来月発売号のため)飲んだ際にも、シャレにならなくなってきているということで知人たちと見解が一致。すでに始まりとぎれとぎれにホーム&アウェイの試合がずっと持たれるアジアのNo.1クラブ・チームを決めるAFCチャンピオンズ・リーグ(日本は、横浜F・マリノス、FC東京、ヴィッセル神戸が出場)は、このまま悪い状況が続けばそのうち中止になってもおかしくないという話で決着。また、日本人をじきに入国拒否する国も出てくるかもしれない。そして、為政者/公僕の初動対応ミスによる感染者増加によっては東京オリンピック中止も現実味を帯びるんじゃないかとも……。マーフィーの法則じゃないが、この件に関しては、よくない方向を書いた方がいいほうに動くと思いたい。
 普段メガネをしており、マスクをするとときに眼鏡が曇るので、僕はマスクをしない。花粉症でもないし、買い置きもない。しかし、こんな状況であると、そんなに効果がないと言われていたりもするがやはりしたくなる。だが、マスクや消毒液は売り切れだー。ところが、昨日に年一度の健康診断に病院に行き(めちゃ、空いていた。今日は借し切り状態ですねと看護婦さんが言う。多少、コロナ・ウィルスの影響もあるんじゃないかとも……)、受け付けで販売していたマスク(1人2枚限定で100円)を買った。
 この3日間ほどそうなんだが、ライヴに行くために家を出たら、あったけー。花見に行く際、今日よりも寒いと感じることはあったはずだ。コートのポケットには一応昨日購入したマスクを忍ばせていたが、電車に乗ったら多くの人がマスクをつけていることに圧倒され、昨日買った1/2をつける。←オレ様のわりには阿呆で、人の所作に左右される場合もある。車内広告ポスターには、例の悲劇のクルーズ船“プリンセス・ダイアモンド”に乗るゴールデン・ウィーク航行参加勧誘のそれが貼られている。東急の観光部門あつかいのそれ、ずいぶん呑気だねえ。一瞬、目を疑った。
 ライヴとライヴの間に時間があったので、表参道ヒルズにある小洒落たポリウレタン素材マスク屋(名古屋の会社のよう)の購入客列に並ぶ。小一時間。寒くない晩であったのと、知人と一緒だから並ぶことができたが、そうじゃなかったら無理だな。ハッシュタグをつけて投稿するとさらに1つもらえるというので、初めて携帯からトゥウィート。3個入りパックで500円、1人2袋まで購入可。丁寧に洗えば、3回ぐらいは使えると言っていたか? 昨日からの2週間期間限定ショップだそうで、最後まで在庫はあるんですかと店員さんに聞いたら、品切れの種類が出てくるかもしれませんが、あると思いますとのこと。レジが一つだけしか設けられておらず←バカ企業、このご時世そりゃ長い列になるよな。立派な紙バッグに購入商品を入れてくれたりもするが、原価は相当に低いのだろう。中国製だったりするのかしら。
 今日行ったヴェニューはともに飲み食いする会場であるので、さすがマスクして見ている人はいないな。とともに、両会場ともアーティストはアジアで流行っている新型結核に対するビビリ感ゼロ(それについての恐れは、欧米人のほうが強く持つだろう)の感じで観客と真心いっぱいに対峙し、熱演。それには、心温む。いつまでもそうであってほしい。
 

 わお。スイスのニック・ベルチェ/ローニン(2006年10月26日、2008年4月27日、2012年12月23日、2015年10月14日)の2006年来日公演の項で、米国西海岸の本家“浪人”のことに触れたことがあったが、まさかそっちの方を見れる日が来ちゃうとは。しかも、ギターと歌のワディ・ワクテル(2018年6月16日)、ドラムのリック・マロッタ、ギターと歌のダン・ダグモア、ベースのスタンレー・シェルドンと、オリジナル・メンバーぢゃん。西海岸の売れっ子ロック系スタジオ・ミュージシャンたちで組まれ、アルバムはピーター・アッシャー制作の『Ronin』(Mercury,1980年)のみ。アルバムでは、控えめにドン・グロルニックとビル・ペイン(2000年12月8日、2012年5月22日)がキーボードで録音参加していた。

 この4人、けっこうな年になっているはずだが、みんな禿げずに頭髪あり。ワクテルなんて、昔と同じカーリーの長髪。そんな人、今いないわけで、歩いていたら皆んな振り返るのではないか。で、なんとワクテルはMCでローニンは1981年に来日していると言う。え? 誰かのバック・バンドで来たのかと思ったら、終わったあと、識者からその年に横浜球場でジェイムズ・テイラーやリンダ・ロンシュタットらが出演した大イヴェントがあって、その一番手でローニンがきっちりパフォーマンスをしたんだそう。わう、それはまったく知らなかった。というか、シンガー・ソングライターやウェスト・コースト・ロックが好きじゃなかったぼくは最初っから無視したのだろう。まだ、そのころブラック・ミュージックよりもロックの方が大好きだったけど、翌1982年に同じスタジアムでのチャック・ベリーやサム・ムーア((2006年11月14日、2008年8月31日、2010年12月15日、2011年7月27日、2015年12月2日、2019年4月26日、2019年4月28日)が出るイヴェントは見に行っている←https://43142.diarynote.jp/?day=20170320。チャック・ベリーの訃報に言及した項、ナリ。

 トロい、いやメロウなサポートも多かったワクテルらが、やりたいようにがっつりロックをしよう。それが、ローニンのコンセプトというのは大昔なにかで読んで記憶しているのだが、実演はまったくもってそのとおり。スティーリー・ダン(2000年5月15日)の『エイジャ』参加名演で知られるマロッタもどすこいなロックロール・ドラムに専念していた。ハハ。

 ほんと、2本のギターが重なる竹を割ったようなロックをやりたいと言うのはよく分かった。だって、マイナー・キーの曲やゆったり目の曲はゼロで、ザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)がやってもハマると思えた曲もあった。ダン・ダグモアがペダル・スティールを弾く曲もカントリーにはならず、スライド・ギターの役割を担っていたと言えるもの。ワクテルも2曲ほどでスライドを用いたか。彼、なんと一つもイフェクターを足元に置いていなかった! 主のヴォーカルはワクテルが担い、少し軽めで高めの声。ダグモアも3曲ぐらいでヴォーカルを取り、リズム隊もときにコーラスを入れる。ニール・ヤング(2001年7月28日)の初期曲「ザ・ロナー」も披露したが、それもざっくりしたロックンロールになっていた。

 アンコールはチャック・ベリーの曲をやるよと言って、ストーンズが『ラヴ・ユー・ライヴ』(ローリング・ストーンズ、1977年)にも入れている「アラウンド・アンド・アラウンド」。ミック・ジャガー好きのヴォーカルの友人を立ててこの曲をそのストーンズ・ヴァージョンにてカヴァーしたことが学生時代にあったんだが、だからかよく分かった。ワクテルたちには濁りや、生理的にあやふやなところがない。さすが、西海岸の腕利きたち。だが、それはロックンロールとしては綺麗すぎて物足りないところも引き出す、と……。でも、高揚したし、彼らを見て、ギター2本のロックンロール・バンドをやりたいとも思った。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。歓声音量、高し。かつてのブルースのライヴもそうだったが、こういう懐かしの人のショウの際の年長の観客は声がでかい。

▶過去の、ニック・ベルチェ
http://43142.diarynote.jp/200611020835110000/
http://43142.diarynote.jp/200805031359390000/
http://43142.diarynote.jp/201212240918419016/
https://43142.diarynote.jp/201510180830142014/
▶︎過去の、ワディ・ワクテル
https://43142.diarynote.jp/201806170617395286/
▶︎過去の、リトル・フィート/ビル・ペイン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
▶過去の、サム・ムーア
http://43142.diarynote.jp/200611190319380000/
http://43142.diarynote.jp/201012160928249431/
http://43142.diarynote.jp/201107310730365740/
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/201512030957287514/
https://43142.diarynote.jp/201904271153238361/
https://43142.diarynote.jp/201904291825347224/
▶過去の、スティーリー・ダン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
▶過去の、ニール・ヤング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm
▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 3月13日(バック・バンド)。15日
https://43142.diarynote.jp/201904200941516964/ ストーンズ展

 その後は、毎年恒例の中原仁(2011年2月11日、2013年2月11日、2014年12月1日、2015年2月11日、2016年2月11日、2016年9月29日、2017年2月11日、2017年8月24日、2018年2月11日、2019年2月11日、2019年6月10日)仕切りのブラジル音楽イヴェントへ。渋谷・クラブクアトロ。

▶︎過去の、中原仁
http://43142.diarynote.jp/201102121002078478/
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/
http://43142.diarynote.jp/201412031621332692/
http://43142.diarynote.jp/201502140823232703/
http://43142.diarynote.jp/201602120856568973/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160929
http://43142.diarynote.jp/201702120725278375/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170824
https://43142.diarynote.jp/201802131131538961/
https://43142.diarynote.jp/201902141412599444/
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/

 会場入りすると、フロアでサンバの打楽器隊のケール・スウィンガール・ヴェン・プラ・カ(2015年2月11日)がやっている。彼らは、3番目の出演者。リオ仕込みのパーカッション奏者の宮澤摩周(2013年8月24日、2014年5月3日、2014年6月15日、2015年2月11日、2016年2月11日、2016年5月22日、2017年7月8日、2017年11月9日、2018年6月17日、2018年7月4日、2019年11月16日)が面々を指揮。おお、普段正面からしか見たことがない宮澤の後ろ姿が頼もしい。ガタイがいいので映える。若い面々から信頼され、それをしっかり受け止め、構成員が音を楽しむことを導いているのが伝わってくる。彼らはこの後、リオに遠征するようだ。

▶︎過去の、宮沢摩周
http://43142.diarynote.jp/201308281519499994/
http://43142.diarynote.jp/201405051105329639/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
https://43142.diarynote.jp/201502140823232703/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160211
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/
http://43142.diarynote.jp/201711101104467609/
https://43142.diarynote.jp/201807050952089343/
https://43142.diarynote.jp/201911181002427435/
▶︎過去の、ケール・スウィンガール・ヴェン・プラ・カ
https://43142.diarynote.jp/201502140823232703/

 その次に出てきたのは、昨年に続き出演のパーティ・バンドのオルケストラ・ムラータ)がステージ上に登場する。歌とギターの村田匠(2010年12月27日、2011年2月11日、2011年5月8日、2012年6月8日、2012年10月27日、2013年2月11日、2013年8月24日、2014年5月3日、2014年6月15日、2016年2月11日、2016年5月22日、2016年12月1日、2017年2月11日、2018年2月11日、2018年6月17日、2019年2月11日)、ベースとコーラスの梅田誠志、キーボードとパーカッションのスガメス ジャポン、カヴァコとヴォーカルのcámaci、オーサカ=モノレール(2002年7月25日、2006年6月8日、2018年12月19日)にいるらしいトランペットの淡路泰平、トロンボーンの原田彩香のアルト・サックスの林遼佑、パーカッション宮地良平と岡部量平、ドラムの馬場智也、ヴォーカルの田中美里という面々。お、ホーンとパーカッション奏者は村田のワーキング・バンドであるカルナバケーションのメンバーたちが多いな。そして、「憧れのハワイ航路」とか「リオは良いトコ一度はおいで」とか、村田のサンバマシーンズ/カルナバケーションの曲が多い。Cámaciがリード・ヴォーカルを取る歌もあり、オトコの照れの感覚が出ていてなんかよろしい。そういえば、出だしはクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」みたいなビートではじまった(そして、スティーヴィー・ワンダーの「サー・デューク」のホーン音が入る)のだが、なら呑気に虹色のウィッグつけて出てくるのではなく、村田はフレディ・マーキューリーのコスプレで笑いを取るべきではなかったか。

▶過去の、サンバマシーンズ/カルナバケーション関連
http://43142.diarynote.jp/201101061047294455/
http://43142.diarynote.jp/201102121002078478/
http://43142.diarynote.jp/201105140858559432/
http://43142.diarynote.jp/201206120854205300/
http://43142.diarynote.jp/201211151028209850/
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/
http://43142.diarynote.jp/201308281519499994/
http://43142.diarynote.jp/201405051105329639/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160211
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/
https://43142.diarynote.jp/201806181751451387/
https://43142.diarynote.jp/201902141412599444/
▶︎過去の、オーサカ=モノレール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm ソウル・スクリーム
https://43142.diarynote.jp/200606111739030000/
https://43142.diarynote.jp/201812201007219205/

 そして、トリはSaigenji (2006年6月27日、2007年11月27日、2009年3月14日, 2009年8月9日、2012年6月13日、2013年1月7日、2013年2月11日 、2013年4月12日、2014年2月9日、2016年2月11日、2016年11月30日、2017年2月11日、2018年5月8日、2019年7月12日)。ギターを巧みに奏でながら歌う彼にくわえ、ダブル・ベースの小美濃悠太(2018年11月7日)、ドラムの斉藤良(2010年5月9日、2016年11月30日、2017年2月11日)、パーカッションの南條レオ(2016年10月22日、2016年11月30日、2017年2月11日)という4人でことにあたる。この5月にライヴ・アルバムを出すことになっているそうだが、まったくもっていい感じ。あ、1曲はトロンボーン奏者も確かな演奏で加わった。

 終盤、1曲有名なジャズ曲をスキャットでやる。へえ。一度、死ぬほどジャズっぽいレコード作ってほしいなー。そして、おなじみの「ミュージック・ジャンキー」。秀でたいろんなジャンルの逸材の名を次々に連呼するこの曲で、彼はキーボード奏者のライル・メイズ(2002年9月19日)の名も出す。あれ本来、彼の名前はこの曲に入っていなかったはずだが。と、思ったら、2月10日に彼が亡くなっていたのですね(享年66)。追悼かあ。そういう臨機応変さ、音楽愛の表わし方、素敵だな。メイズの姪御さんとなるシンガーのオーブリー・ジョンソンがアルバム『アンラヴェルド』(コア・ポート、2020年)を日本先行で出したばかりだが、ジャズ・ビヨンドのアーティスティックな広角型ヴォーカル盤としてかなり吉。それ、メイズがエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジット。ライナー・ノーツ担当盤なのであまりほめるのもナンですが、彼の因子は生き続けています。

▶過去の、Saigenji
http://43142.diarynote.jp/?day=20060627
http://43142.diarynote.jp/200711290932200000/
http://43142.diarynote.jp/200903161734533723/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090809
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130211
http://43142.diarynote.jp/?day=20130412
http://43142.diarynote.jp/?day=20140209
http://43142.diarynote.jp/201502140823232703/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160211
http://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
http://43142.diarynote.jp/201702120725278375/
https://43142.diarynote.jp/201805091613022617/
https://43142.diarynote.jp/201907130803488810/
▶︎過去の、小美濃悠太
https://43142.diarynote.jp/201811081231284665/
▶︎過去の、斎藤良
https://43142.diarynote.jp/201005101856373393/
https://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
https://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
https://43142.diarynote.jp/201702120725278375/
▶︎過去の、南条レオ
https://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
https://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
https://43142.diarynote.jp/201702120725278375/
▶︎過去の、ライル・メイズ 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm パット・メセニー・グループ

<今日の、そうだったんですか>
 昼下がりに、ジェフ・パーカー(1999年6月6日、2000年10月15日、2001年11月7日、2004年1月20日、2005年1月7日、2011年11月21日、2014年5月7日、2017年5月13日、2017年5月15日、2020年2月9日)にインタヴュー。ヴァージニア州育ちの彼がバークリー音大に行ったのは、ジャズを知れば幅が広がると思ったからだそう。それまでは、エドワード・ヴァン・ヘイレンやZ.Z.トップのビリー・ギボンズその他を、彼は好きだった。卒業後、NYでなくシカゴに行ったのは、ちょうどシカゴにタワー・レコードができるときで、そのオープニング・スタッフとして雇ってもらえたから。だが、その流れでAACM(フリー系奏者多しの、シカゴのジャズの担い手の互助団体。Association for the Advancement of Creative Musiciansの略)に所属しジャズを研鑽し、トータス、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217などにも関わるわけだであり、今はLAに住んでいるものの、シカゴに向かって本当に良かったという気持ちを彼は持っている。いやあ、タワー・レコードに関して久しぶりにいい関連話を聞きました。シカゴのタワーで何年働いたかとか売り場はとかは聞かなかったけど。取材話は、ギター・マガジンと毎日新聞にそのうち出ます。彼、ストラタ・イースト・レーベルのTシャツを着用。それを指摘したら、嬉しそうでした。
▶過去の、ジェフ・パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm トータス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201705140938439184/ スコット・アメンデラ
http://43142.diarynote.jp/201705161314529397/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201708161337599841/ ザ・ニュー・ブリード
https://43142.diarynote.jp/202002101032103464/ トータス

 著名なジャズ喫茶に、岩手県一関市で営業しているベイシーがある。1970年開店というから、歴史的にはジャズ喫茶としては第2世代と言えるだろうが、とにかく店内オーディオの音がべらぼうにいいことで知られ、それとともに店主の菅原正二の名前も出される。いや、まず菅原正二の名前があり、それにベイシーの屋号が続くという感じか。とにかく、東北新幹線のない時代からずっと営業していたわけであり、その名声ゆえ県外から来る客は少なくないよう。また、店主が早稲田大学のハイソサエティ・オーケストラの出身でドラムを叩くため、店内にはドラムが置いてあり、有名アーティストのライヴもなされる。

 ぼくの知り合いで同店詣でをしている人は何人もいて、やはり皆異口同音に音の良さ〜まるで目の前で演奏がなされているような再生音が聞ける〜を語るので、本当にオーディオの音はいいのだろう。残念ながらぼくは行ったことがなく、少しでも「ベイジー」のことを知ることができればいいなと思い、五反田・イマジカ第二試写室に試写を見に行った。冒頭、監督の星野哲也の挨拶があり、試写会場に来ていた菅原本人も紹介される。なお、実際に試写を見たのは2月5日(水)。だが、情報解禁は2月10日からと言うので、この日の項にあげる。

 あら。菅原がどんな環境で育ったかとか、故郷に戻ってジャズ喫茶を開店したころの話なんかはすっ飛ばし、名をなしてからのベイシー=店主のもろもろ(彼の顔のアップ映像も少なくない。1942年生まれだが、お若いな)を紹介するという内容。過去の古い写真や同所でのライヴ映像も出てくるが、ここ5年間ほどの取材映像が主となるよう。そして、当然のことながら、ジャズ喫茶の先達である新宿DIG/DUGの中平穂積ら同業者やジャズ/オーディオ関係者の発言、そしてそこでライヴを行う坂田明((2006年8月8日、2008年9月25日、2009年7月19日、010年4月15日、2011年4月1日、2012年10月3日、2013年1月12日、2014年9月7日、2016年1月28日、2017年9月17日)、ペーター・ブロッツマン(2008年9月25日)とポール・ニールセン・ラヴ(2005年4月12日、2008年9月25日)、渡辺貞夫(2002年12月14日、2003年5月6日、2004年12月17日、2005年12月18日、2006年8月8日、2006年9月3日、2006年10月4日、2007年12月16日、2008年12月14日、2009年7月22日、2009年9月3日、2011年7月4日、2012年6月29日、2012年12月15日、2013年4月1日、2013年7月27日、2013年9月29日、2014年7月8日、2014年10月5日、2014年12月14日、2015年12月12日、2016年7月3日、2016年12月11日、2017年10月8日、2017年12月16日、2018年5月28日、2018年9月2日、2018年10月6日、2018年12月15日、2019年8月6日、2019年11月12日、2019年12月15日)らのライヴ/インタヴュー映像も使われる。

 最後のセロニアス・モンクの「パリの4月」(1957年ソロ・ピアノ盤「セロニアス・ヒムセルフ」のオープナー)が流されるところは渋い。っていうか、ぼくも1990年代前半にあの曲を4枚シリーズのコンピーレーション『ソウル・ソサエティ』(ビクター)の中の1作で選んだが、もうあそこにあるアフリカン・アメリカン的ブラックホール感覚/侘び寂びが大好きなんだよなあ。かかる音楽はライヴ場面を除いてはすべて同店でかけられたレコードの再生音が使われているよう。あと、フォノグラムやソニー、そしてフリーランスのジャズ・プロデューサーとして活躍してきた親友の伊藤八十八(1946〜2014年。2006年8月8日の六本木・スイート・ベイジル139公演の主役は彼)トリビュートの項も唐突にあり。公開は5月下旬、アップリンクらにて。

▶過去の、坂田明
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090719
http://43142.diarynote.jp/?day=20100415
http://43142.diarynote.jp/201104041101543361/
http://43142.diarynote.jp/201210060945309832/
http://43142.diarynote.jp/201301161544336447/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/
https://43142.diarynote.jp/201709180648097389/
▶︎過去の、ペーター・ブロッツマン
https://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
▶︎過去の、ポール・ニスセン・ラヴ
https://43142.diarynote.jp/200504151005000000/ アトミック
https://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
▶過去の、渡辺貞夫
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm  6日
http://43142.diarynote.jp/20041221210502000
http://43142.diarynote.jp/200512231955480000/
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200610080946310000/
http://43142.diarynote.jp/200712171350530000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200907310048137248/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201107111008176019/
http://43142.diarynote.jp/201207031353196616/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201310050701201281/
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http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
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http://43142.diarynote.jp/201712181015052794/
http://43142.diarynote.jp/201805290906425481/
http://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
http://43142.diarynote.jp/201806130948515941/
http://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
https://43142.diarynote.jp/201810090958036278/
https://43142.diarynote.jp/201812201004266842/
https://43142.diarynote.jp/201908071557182844/
https://43142.diarynote.jp/201912161054076351/
▶︎過去の、伊藤八十八
https://43142.diarynote.jp/200608091255180000/

<今日の、ごくごく>
 試写で会った音楽関係の知人たちと流れ、まず五反田の店に。うち、2人は5年ぶりぐらいになる? 1人以外は五反田で飲んだことがなく、少しお店選びにとまどう。入ったのはまあ渋い店、2階の畳部屋にあがり、話も弾む。その後、渋谷→松見坂。けっこう、酔っ払った。翌日起きてから、携帯がどこにおいてあるか不明。その日は、携帯なしで出かけてライヴ〜飲み。PCでGPS検索すると自宅周辺を指すし、固定電話から電話するとわずかにヴァイブの音が聞こえるような気がするので、まあ悠長に構えていた。

 アメリカ合衆国の非ジャズのインストゥルメンタル・バンドを2つ見る。ともにソールド・アウトが発表されていて、会場はまじフル・ハウス。

 まず、南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)で、トータス(2001年11月7日、2005年1月7日、2011年11月21日、2014年5月7日、2017年5月15日)を見る。今回の彼らの来日公演のファースト・ショウはトータスにジャズ・ギタリストのジェフ・パーカー(1999年6月6日、2000年10月15日、2001年11月7日、2004年1月20日、2005年1月7日、2011年11月21日、2014年5月7日、2017年5月13日、2017年5月15日)が入っての最初のアルバムであり、出世作となった『TNT』(スリル・ジョッキー、1998年)の再現パフォーマンスを掲げるもの。<ザ・グレイテスト・ヒッツ>と名付けるセカンド・ショウより、ずっと予約の入り具合がいいという。まあ、『TNT』でプロ・ツールズやシカゴのソーマ・スタジオの名、ひいては誰がつけたかは知らないが“シカゴ音響派”という呼称はロック愛好者のなかで浸透した。

 ジョン・マッケンタイア、ジョン・ハードン、ダン・ビットニー、ダグ・マッコームズ、ジェフ・パーカーの5人のメンバーにくわえ、マッコームズのサイド・プロジェクトであるブロークバック(2000年10月15日、2004年1月20日)のジェームス・エルキントンも入り、今回は基本6人でパフォーマンスした。例によりステージ上には中央前に向かい合って置かれる2台のドラム、ステージの両端に置かれたマリンバやヴァイブラフォンら3つの鍵盤打楽器、ギター類、ベース類、ペダル・スティール、小鍵盤、PC/機材などがずらり置かれ、面々はそれらをいろいろと持ち変える。ツイン・ベースの曲もちらほら。だから、誰がどの楽器と書きにくくなってしまうわけだが、それはとっても素敵なこと。その頻繁な持ち替えの様に、レコーディング時の様子を想起しちゃったりもする。ああでもない、こうでもないと試み、じゃあここは俺が弾いてみようかとか、いろいろあって、それらがハードディスクに貯められ自在の編集のもと商品となっているわけだ。そういえば、PCのデーターが使われる比率は今回多かったような。

 おそらく、『TNT』の曲がその順どおりに披露されたんじゃないかと思うが、途中、レゲエっぽいビートやノリの曲が2曲続く。それに触れ、トータスの音はレゲエ・ダブの感性/発想をシカゴの環境に持ってきている部分もあったんだなと思った。あと、ラテン情緒を持つ曲もあったんだな。ミニマル・ミュージックともかするクールな音/ビート/音像配置の表現とまず彼らの音楽を説明したくなるが、その実演は襞にあるものも直裁に浮き上がらせていた。

 『TNT』には弦楽器奏者や管楽器奏者も少し入っていたが、そのため一部は5人の日本人奏者が追加される。山田丈造(トランペット)、駒野逸美(トロンボーン)、波多野敦子(ヴァイオリン)、関口将史(チェロ)、河崎聡(バスーン)、山田丈造(トランペット)、駒野逸美(トロンボーン)。冒頭のほうで入ったトロンボーンとトランペット音はよく聞こえ新鮮だったが、追加奏者たちが入る曲は多くなかったし、弦音とかはあまり聞こえず、6人だけで演奏してもよかったかもしれない。

▶過去の、トータス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140507
https://43142.diarynote.jp/201705161314529397/
▶過去の、ジェフ・パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm トータス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201705140938439184/ スコット・アメンデラ
http://43142.diarynote.jp/201705161314529397/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201708161337599841/ ザ・ニュー・ブリード
▶︎過去の、ブロークバック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 

 その後は、代官山・ユニットで、ヴードゥ・デッドを見る。そのグループ名に表れているように、グレイトフル・デッド流れの人たちとニューオーリンズ・ファンクの重鎮が重なるという内容を持つ。数年前のニューオーリンズのジャズ&ヘリテッジ・フェスティヴァルでキモック・バンドとポーターJr.が一緒にやったことで、時々一緒にやることになったようだ。

 ギターのスティーヴ・キモック(2012年7月27日)、ベースのジョン・ポーター・Jr.(2007年2月2日、2007年2月4日、2008年8月12日、2009年7月25日、2014年1月17日)、デッド&カンパニーやレス・クレイプールやザ・ストリング・チーズ・インシデント(2003年4月12日、2004年4月22日、2005年9月28日)などでキーボードを弾いてきたジェフ・キメンティ、若めのドラマーのジョン・キモック(元フィッシュ〜2000年6月11日〜のマイク・ゴードンの2017年ATO発の『OGOGO』で叩いていた)の4人で、セット2つにて面々は笑顔でパフォーマンスした。

 会場入りしたときやっていたのは、なにげにエレクトリック・マイルスみたいな感じも抱かせる曲。エフェクトをかけたエレクトリック・ピアノの音がその時期のキース・ジャレット(2001年4月30日、2007年5月8日)みたいと思わせたから? キメンティの演奏はなかなか効いていて、さすがぼくが見たときのフジ・ロック出演時は故バーニー・ウォレル(2007年8月7日、2011年8月12日、2012年7月27日、2013年1月30日、2014年10月28日)を同行させるなど、スティーヴ・キモックはいい鍵盤奏者をやとっているなあと思った。

 ところで、冒頭でインストゥメンタル・バンドと書いたけど、大ウソです。いや、そういう触れ込みだったんだが、ポーターJr.さん、しっかり歌うわー。インスト曲もやるし、インスト部は十全に長いのだが、これは彼の歌を聞かせるプロジェクトであるのだとも思った。まあ実際、ポーターJr.が一番年長者なんだから、ミュージック・ラヴァーのキモックさんたちはリジェンダリーな存在である彼をそれは立てるよなー。

 とくにファーストなんて、ポーターJr.と愉快な仲間たちみたいな感じもあった? ニューオーリンズ・スタンダード「アイコ・アイコ」(ドクター・ジョン〜2000年5月24日、2002年3月23日、2005年9月20日、2012年2月15日、2013年10月1日〜がカヴァーして有名になったほう)、ハウリン・ウルフのブルース曲(「スモークスタック・ライトニン」みたいにモーンがしっかり入る曲)、ポーターJr.がいたザ・ミーターズの当たり曲「ヘイ・ポッカ・ウェイ」(実は、昔グレイトフル・デッドも取り上げていた)の3連発とか、ポーターJr.さんもうグリグリでどうしようかと思いましたよ。ニューオーリンズ・ファンクのファンよりグレイトフル・デッド好きの人が大半なんだろうなと思っていたのだが、ニューオーリンズ曲をぼくと同様に口ずさむ人が散見されて、なにげに前者の聞き手もいるのかとも感じる。もちろん、「シェイクダウン・ストリート」や「シュガリー」ら、ジェリー・ガルシア絡み曲もグルーヴィに披露された。

 ちんたらだけど、線が太く、ジューシー。合衆国の底力あり、ああ横綱相撲。いやあ、久しぶりにジャム・バンドを聞いたなあという気持ちもあり。

▶︎過去の、スティーヴ・キモック
https://43142.diarynote.jp/201208091303253665/
▶過去の、ジョージ・ポーター・Jr.
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/?day=20140117
▶︎過去の、ザ・ストリング・チーズ・インシデント
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040422
http://43142.diarynote.jp/200510030022330000/
▶︎過去の、フィッシュ関連
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm フィッシュ
https://43142.diarynote.jp/200410071535520000/ ヴァーモント・ユース・オーケストラ・フィーチャリング・トレイ・アナスタシオ
https://43142.diarynote.jp/?day=20040918 トレイ・アナスタシオ
▶過去の、キース・ジャレット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://43142.diarynote.jp/200705181807060000/
▶過去の、バーニー・ウォレル
http://43142.diarynote.jp/200708051740450000/
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
http://43142.diarynote.jp/201208091303253665/
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
http://43142.diarynote.jp/?day=20141028 
https://43142.diarynote.jp/201606250931166236/ 訃報
▶過去の、ドクター・ジョン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200510030016390000/
http://43142.diarynote.jp/201202161725143619/
http://43142.diarynote.jp/201310050709459564/

<今日の、会場>
 そんなに風があるわけではなかったのに、陽が暮れてから寒かったぁ。こんなに耳がピリピリ痛いと感じたのは、今年初めて。青山から代官山の移動で乗ったタクシーの運転手が、寒かったり暑かったりするとやはり利用客が増えますと言っていた。ともあれ、一頃より陽は長くなっているナ。こころなしか、それについてはうれしい。
 2番目に見た、ヴィードゥ・デッド公演のほうはスタンディング会場だしより混んでいた。だが、それでも会場はほのかにほのぼの。人の間を縫って行く際やちょっと接触したら、ごめんなさいとかいう人は他のロックやR&Bのショウより間違いなく多い。ただし、すれ違う人のタバコ臭さにはけっこう閉口。これは、近年行ったの公演のなかでは際立つ。1日開けた11日にヴードゥ・デッドの面々は横浜のベイホールでもやる。行きたいなあ、そちらはユニットほど混んでいないだろうし。だけど、新作『スイート・フォー・マックス・ブラウン』(イッンターナショナル・アンセム、2020年)を出し7月にまた自己公演のためにブルーノートにやってくる大好きなジェフ・パーカーのインタヴューをしたあと、二つのライヴ会場をはしごすることになっている。風邪、ひけないよー。

 キングストン出身ジャズ・ピアニストであるモンティ・アレキサンダー(1999年8月18日、2002年7月24日、2006年6月14日、2011年11月4日、2013年2月8日)のショウ、なんかくだけていて自由だったなー。もう、ちょっとした音の重なりだけで、いいヴァイブがステージからもわもわと発されていた。6弦電気ベースのレオン・ダンカン、シンバル類をとても上方にセッティングするカール・ライト(ドラム)、ドラムのジェイソン・ブラウン、UKジャマイカンでトロンボーン奏者のデニス・ロリンズ(2000年5月30日、2001年3月12日、2009年1月21日、2013年2月2日)、ギターのアンディ・バスフォードというサポートの面々。ダンカン、ライト、パスフォードはジャマイカ在住か。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 ボブ・マーリーの生誕75年を祝うと題されたショウで、のっけから、ハッピー・バースデイの歌が歌われる。そして、マーリー曲が次々に送り出されるのだが、どれもテーマ部においてはライトやダンカンやアレキサンダーが歌う。オスカー・ピーターソンの後継者的な感じでジャズ界でぶいぶい言わせたこともあったアレキサンダーは過剰にソロは取らず(少しはキーボードも弾く)、ロリンズの方が取っていた。

 そして、終盤以降の数曲は、「ブリリアント・コーナーズ」らセロニアス・モンクの曲を、レゲエ・ヴァイブレーションのもと演奏。彼の2019年自主リリースの新作『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』(デニス・ロリンズ以外は、こん晩の同行者は皆参加)はセロニアス・モングの曲をやっているのだが、なんかもうユーモラス極まりなく、曲が始まるとふふふと笑いがこぼれちゃう。そういえば、メデスキ・マーティン&ウッド(1999年8月5日、2000年8月13日、2001年2月5日、2002年9月7日、2012年3月2日)は『イッツ・ア・ジャングル・イン・ヒア』(グラマヴィジョン、1993年)でモンクの「ベムーシャ・スウィング」とマーリーの「ライヴリー・アップ・ユアセルフ」をレゲエ・ビートで繋ぐということをやっていたが、発想としては遠くはない。さすが、メデスキたち、やることが早かった。

 そこからまた、マーリー編に戻り、女性シンガーが出てきて「ウェイト・イン・ヴェイン」(だったかな?)も歌ったのだが、なんと途中ではフランス語歌詞で歌われていた。この晩のライヴ評、毎日新聞29日夕刊に出ます。

▶︎過去の、モンティ・アレキサンダー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
https://43142.diarynote.jp/200606182135590000/
https://43142.diarynote.jp/200606182135590000/
https://43142.diarynote.jp/201111141213387048/
https://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
▶︎過去の、デイス・ロリンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
https://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
https://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
▶︎過去の、メデスキ・マーティン&ウッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm 8月13日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 9月7日
http://43142.diarynote.jp/201203062004221304/

<先日の、カミング・アウト>
 レコード会社のニュース・レターで、ジャスティン・ビーヴァーの写真が載せられていた。お、刺青すごいんだなー。そういえば、この前、聖心女子大を出ているお姉さんに、実は肩にタトゥーがあるんですと言われた。留学中にしたらしい。さすがにパブリック・イメージを考え、ノー・スリーブは着ないそう。

 ラティーノの自負も出すNYハウスの大物DJ/クリエイターのルイ・ヴェガの生音ユニット(2003年7月20日)の公演を、南青山・ブルーノート東京で見る。セカンド・ショウ。しかし、ケニー・ドープと彼が仕切った大風呂敷盤『ニューヨリカン・ソウル』(Giante Step/Talkin’ Loud,1997年)は大好きなアルバムでは今もごくまれに聞いたりするよなあ。
 
 元気な指揮とMCをするルイ・ヴェガにくわえ、彼と近い位置にいて何作もリーダー作も出している西アフリカ・ツールらしいシンガーのアナーネ、ヴァガとの付き合いは30年近くとなりヴェガの2019年作『NYC Disco』の制作や編曲もしているキーボードのジョシュ・ミラン(2曲、きっちりリード・ヴォーカルもとった)、在米キューバ人キーボード奏者のアクセル・トスカ(2018年5月24日。鍵盤ソロは彼が担うことが多かった)、ずうっとヴェガのアルバムでベースを弾いてきているジーン・ペレス(ベース)、ヴェネズエラ出身でNYラテンの顔役打楽器奏者でこの晩はドラムを叩くルイシート・キンテート(2011年12月8日、2016年7月31日、2017年9月2日。ルイ・ヴェガ制作の2006年盤『PERCUSSION MADNESS』は昔けっこう聞いたな)、ルイシートのいとこであるやはりヴェネズエラ生まれパーカッショニストのロバート・キンテーロ(2017年10月31日)、そしてソウルフルな歌い方のできるドーン・トールマンとラモーナ・ダンラップという面々。女性陣3人は並んで、スキャットのコーラス隊みたいな使われ方もされる。
 
 ブラジルに行くよとか言って曲を始めたり(実はそんなにブラジル色のある曲ではない)、ジョニー・ハモンドの名を出したり(その際、ジョシュ・ミランはオルガン音色の鍵盤を用いたので、ジャズ・オルガン大家のジョニー・ハモンド・スミスのこと?)、後半には教会に連れて行くよと言いわずかにゴスペル色を出したかもとも思える曲をやったり。もちろん、ファニア・オールスターズに言及し、そのシンガーでもあった偉大なサルサ歌手である叔父のエクトル・ラボーの名前も誇らしげに出す。その際、ヴェガは「ヘクトル(ヘクターだったかもしれない。頭が“エ”でなく“ヘ”だったのは間違いない)・ラヴォー」と英語読み的に発音。そうかー。非英語のルーツ/名前を持つミュージシャンで、英語読みさせている人は少なくない。それ、普通の米国人からちゃんと読んでもらえないからそうするとともに、自らが米国市民として認められ生きている証を込めている場合もあり、そういう場合はスペイン語名であってもHの発音を入れたり、ウ濁点を使ったりと英語流れの名前表記したほうが適切であると思う。

 名手キンテーロのお二人は、場に合わせて(?)白いシャツに 蝶ネクタイ。とはいえ、2人とも、演奏が白熱していく際に、ネクタイを取りシャツの上のボタンを外していた。終盤には、ケニー・ドープの名前を出し、ニュー・ヨリカン・ソウル曲もする。そりゃ、アガります。DJミュージック流れの折衷性を抱えた、ラテン、フュージョン、ソウルなどが交錯する、活劇的ダンス・ミュージックの数々。なにげに人間臭くもあり、それも魅力的でした。

▶︎過去の、ルイ・ヴェガ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
▶︎過去の、アクセル・トスカ
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
▶︎過去の、ルイシート・キンテーロ
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201608020805158759/
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶︎過去の、ロバート・キンテーロ
https://43142.diarynote.jp/201711020709222163/

<今日の、邂逅>
 ライヴに行く前、表参道駅ですれ違った人に「あれえ」と声をかけられる。そしたら、昨日インタヴューした、帰国中の挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日、2017年9月3日、2019年2月6日 )。それは今年自らのm_unitで出演する東京ジャズ絡みの取材であったのだけど、長年東京ジャズの広報に関わっている人も、狭間の事務所の方も、ぼくがそのとき彼女に初めてインタヴューするという事実に驚いていたが、またすぐに会うとは。ノミネーションされ会場入りした先日のグラミー賞授賞式のときに着ていた服はフェンディだそうです。ほんとに、一切事前に受賞者は分からないそう。しかし、世界的にいろんな仕事に関わっていて、忙しそう。キラキラしてました。
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201902071836593799/

<Echoes of Europe>

1.Allemande / European Jazz Trio『Classics』(Pony Canyon,2004)
2.Taurus Line / Truosence 『Scorpio Rising』(Okeh,2019)
3.There is A Butterfly in My Room / Lars Jansson Trio (Spice of Life,2016)
4.Make Someone Happy / Toots Thielmans 『The Verry Best of 』(Emarcy,2003)
5.Private Eye / Terje Rypdal 『If Mountains Could Sing』(ECM,1995)
6.Stompin’ at Gagarin / Christian Wallumrød Ensemble『A Year From Easter』(ECM,2005)
7.It’s High Time / Jan Garbarek『Rites』(ECM,1998)
8.Louisiana O Els Camps De Coto / Andrea Motis 『Emotional Dance』(Impulse!,2017)
9.Diamonds And Pearls / Marcin Wasilewski Trio 『January』(ECM,2008)
10.Moon River / Lucia Cadotsch 『Speak Low』(Yellowbird/Enja,2016)
11.TheDreaming / Sidsel Endresen 『Exile』(ECM,1994)


掲載するのを忘れていました。正月ボケ? まあ、コンピレーションを組む感覚で毎回選曲していますが、いつも許諾がおりない曲があり、手直しが必要とされます。この回はそれが多くて少し苦労しました。
 ドイツに住むノルウェー人女性と日本人女性がリーダーとなる公演を、昼間と夜見る。それぞれ、ケルンとベルリン在住となるのかな。

 まず、代官山・晴れたら空に豆まいて で、イェトゥルー・ルンデ(2017年11月19日)のマチネー公演。前回とまったく同じ豪華メンバーをつれて、パフォーマンスを行った。ドイツ人ギタリストのフロリアン・ゼンカー、オランダ人ピアニストのヴォルファート・ブレーデローデ(2016年5月14日)、ファーマーズ・マーケット(2001年6月16日、2008年5月24日、2012年11月15日 )で日本に来ているノルウェー人ドラマーのヤーレ・ヴェスぺシュタという面々。

 幽玄、透明感、リリシズム……シャープなジャズ感覚をはらみつつも、それらプラスαの要素が自然に上乗せされたパフォーマンスは、もう“北の、オルタナティヴなジャズ”としてこれ以上何を求めるのというもの。感じ入り、聞き惚れました。今回、ドラマーのアイデア豊富な叩き味にも感心。また、今回あれっと思ったのは、ギターのゼンカーがけっこうフィーチャーされていたこと。それ、ルンデの体調が思わしくないための方策であったのだが、そのインスト部もとっても魅力的かつ新鮮であった。そして、歌う時間は前回時より短かったかもしれないが、ぼくはルンデの歌唱になんの不備も感じず。彼女は英語、フランス語、スキャットなどで歌っていた。アンコールは演奏陣、3人だけで対応。

 リーダー作やスザンヌ・アビュール(2016年5月14日)作などECMから9作品関与作を出しているピアニストのヴォルファート・ブレーデローデは、今年10月に誰だかのサポートでくるようだ。

▶︎過去の、イェトゥルー・ルンデと同行者たち
https://43142.diarynote.jp/201711201009595785/
▶︎過去の、ファーマーズ・マーケット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200805281150320000/
http://43142.diarynote.jp/201211170929436724/
▶︎過去の、スザンヌ・アビュール
https://43142.diarynote.jp/201605240830291122/

 鍵盤打楽器奏者の齊藤易子(2019年6月29日)が帰国中のおり、桐朋学園大学の先輩や後輩たちに声をかけて持たれたライヴ。渋谷・公園通りクラシックス。

 今回はマリンバ(それには、KOROGIという商標が。福井県に本社があるメイカーのよう)を弾く齊藤易子にくわえ、パーカッションの佐藤直子(2019年11月25日)、ベースのカイドーユタカ(2014年7月22日)、ドラムの小林拡史(スネアを二つ置き。すべてマッチド・グリップで叩いていた)の4人にて演奏。“Groovin’”という公演名称は、この4人でやるギグのために用意されたもののよう。この面々で演奏するために2週間前に書いたと紹介された曲もあったが、曲はすべて齊藤が用意したものか。リフをもとに発展していく曲があったり、ブルージィと思わせる曲があったり。それなりに仕掛けが施されていたりもし、それをこなしてメンバー間で笑顔を交わす局面もあり。その様を受けて、ああこれは音楽家のプレイグラウンドになっているナと頷く。

 仕掛け/構成のあり具合からけっこうプログ・ロックの愛好者に受けそうと思える局面も多々、あった。また、佐藤が少しパンデイロでアクセントをくわえていたものの「ワン・ノート・テクノ」という曲はほとんど齊藤のソロ演奏曲であったのだが、それは左手に持つ棒で鍵をミュートしながら右手で持つ一本のマレットで音色の表情が変わるリズムを刻むような曲だった。奏法はなんでも、いくらでもあり。その様が音楽家の自由謳歌の姿にすんなり繋がり、接していてとても気分が良い。彼女は多いときは右手2本、左手3本のマレットを持ち、意気揚々と演奏していた。

 最後のほう、3曲で石原信輔が加わり、マリンバを連弾する。2人は左右の立ち位置を変えたり、どちらかがマリンバ前側に周り向き合って叩きあったり。石原は左右3本づづ、計6本のマレットを持って演奏したりもする。本編最後の曲はまず延々とフリーフォームでことがなされたが、それも面白い。その際に石原はストンプしたり、床を叩いたりとか自在。それ、どこか現代音楽流れの即興という感じがして、ぼくには新鮮だった。アンコールもフリーフォーム。その際の、カイドーのコントラバスのアルコ弾きソロはなかなか大胆。糸巻きもぐりぐりいじっていた。

 旧知の気心が知れている人たちとの演奏のためか、齊藤のMCも何気に奔放。根がお転婆さんであるのが、よく分かりました。

▶︎過去の、齊藤易子
https://43142.diarynote.jp/201906301115529387/
▶︎過去の、佐藤直子
https://43142.diarynote.jp/?day=20191125
▶︎過去の、カイドーユタカ
https://43142.diarynote.jp/201407231341189225/

<今日の、あれ?>
 昔から眠りが浅いのか、よく夢を見て、起きた際にも直近に見たそれはわりかし覚えているというタイプだった。これは夢なんだから楽しんじゃえと、よく夢を自分なりにコントロールすることもあった。だが、年をとってから、あまり夢を見ない(=起きても、夢を覚えていない)というように状況が変わった。てな塩梅であったのが、ここのところ起きた際、ああこんな夢を見ていたなとすぐに自覚することがまた多くなっている。今日は海外か日本かよく分からないが、バスに乗って目的地に行こうとしているのに、それがなかなか乗れず、いろいろ困惑思案しちゃっている……というもの。まだまだ、成長過程のようです。

 六本木・ビルボードライブ東京で、すでに5枚のアルバムを出している1989年生まれの英国人シンガー・ソングライターのルーシー・ローズを見る。ショウの開始とともに、背景の幕が開けられ、夜景を背景にパフォーマンス。通常ライヴ中はカーテンが閉められるので、それは開放的な環境を求めたアーティスト側のリクエストだろう。

 ギター(エレククトリックとアコースティックの両方)やキーボードを弾きながら歌う当人にくわえ、ヴァイオリンとキーボードのアンドリュー・スチュアート-バトル 、ギターのジェイムズ・ディー(何気に効果音的な音を入れ、スライド・バーも用いる)、ベースのベンジャミン・ダニエル(フットレスを主に弾く)というドラムレスの編成でことにあたる。スチュアート-バトルとダニエルはコーラスを入れる場合もあった。3人とも彼女の2019年作『No Words Left』(Communion)に関与しており、雰囲気はやはりインティメイト。同作には弦奏者たちが入っていたものの、やはりドラムレスで録られていた。

 ボーイッシュな格好をしているローズは年齢よりも若く見える。基本、ちょい暗めというか物憂げ、冷めたとも形容できる曲調を淡々と歌うが、一度声を張り上げた際はけっこう声が出ていた。ある種の美意識を持つ漂うフォーキー表現の数々。ちゃんと歌詞をチェックしていないが、ときに耳に入ってくる言葉尻は風情があった。あと、誠実に音楽と向き合っているというのを、さらりと出す人ですね。

 その後は、南青山・ブルーノート東京でニューオーリンズの現代R&Bバンドであるタング&ザ・バンガスを見る。スタジオ作2枚(最新作の『グリーン・バルーン』はメジャーのヴァーヴ発)と、最低でもライヴ・アルバムを3作リリース。シンガーのタンクがノラ・ジョーンズ(2002年5月30日、2002年9月14日、2007年3月21日、2010年1月20日、2012年11月8日)と絡んでいることが関係しているのかどうかは知らないが、会場はフル・ハウス。もう、のっけから反応が熱い。

 アーティスト写真は4人で写っているが、7人にてパフォーマンス。歌のタリオナ “タンク” ボール、ドラムのジョシュア・ジョンソン、キーボードのノーマン・スペンス、アルト・サックスとフルートのアルバート・アレンバック、ギターのダニエル・アベル、ベースのジョナサン・ジョンソン、バックグラウンド・ヴォーカルのティア・ヘンダーソンがステージに立つ。生理的に、その佇まいはカラフル。2曲めと3曲めには日本人とおぼしき女性トランペッターも入り、ソロ・パートを与えられていた。

 楽しい。曲はけっこう切れ目なく続けられる。タンクはアルバムで聞けるように、アニメ声というか、けっこう癖のある可愛らしい声で歌う。それ、R&B向きの声質ではないと思うが、しっかりと差別化が計れますね。けっこうロックぽかったりラップをかますところもあるなど音楽性はいろんな要素が入っており、ビートにニューオーリンズぽいところはないが、これは今のガンボ・ミュージックだと思わすところがあり。もうすぐ、マルディグラ・シーズン。ああ、ニューオーリンズに行きてえ気分も煽られた。締めは、ニルヴァーナのロック・スタンダード「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」。ファレル・ウィリアムズ(2006年4月2日)が送り出し、オル・ダラの息子(2001年8月1日)であるナス(2004年8月8日)と結婚したこともあったケリス(2000年7月29日)がフジ・ロック出演時に高らかにカヴァーした様をふと思い出す。

▶過去の、ノラ・ジョーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm 5.30
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 2.09
http://43142.diarynote.jp/200703241326090000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
http://43142.diarynote.jp/201211151032395193/
▶︎過去の、ファレル・ウィリアムズ
https://43142.diarynote.jp/200604050124430000/
▶︎過去の、オル・ダラ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
▶︎過去の、ナス
https://43142.diarynote.jp/200408082300500000/
▶︎過去の、ケリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm

<今日の、うえん>
 来週予定されていたギタリストのチャーリー・ハンター(1999年6月22日、2002年1月24日、2006年4月17日、2009年1月16日、2015年2月18日)とシンガーのルーシー・ウッドワード(そして、ドラマーのダグラス・ベロート)の来日公演が中止になった。昨年出た2人のアルバムがよかっただけに、これは残念。久しぶりに取材することにもなっていたしなあ。聞けば、ハンターたちはその後に中国の北京や上海でも公演をする予定であったのだが、コロナ・ウィルスのため中国行きがキャンセル。連動して、日本公演もなしになってしまった。今、中国ツアーの前後に来日する海外ミュージシャンは少なくないわけで、今後ハンターさんたちのようなケースは出てきそうだ。
▶︎過去の、チャーリー・ハンター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200604181149370000/
http://43142.diarynote.jp/200901171017206901/
http://43142.diarynote.jp/201502230940316504/

 高津川という名前は認知していたものの、島根県を流れる川というのは、この2019年日本映画を見て初めて知った。へえ、益田市を流れ、同市にはANAが乗り入れる空港があるのか。ぼくが日本で唯一行ったことない山陰の、ある地区のことを、このご当地映画は教えてくれる。まあ、何年か前には、四国には行かずに死んじゃうと思うとぼくは言っていたのに行けたので、そのうち赴く機会もあるような気もするが。原作・脚本も手がける1962年生まれ監督の錦織良成は、島根県出身とのこと。

 過疎、介護、伝統芸能の継承、自然への愛着、開発への危惧など、かなりな清流のような高津川流域にある廃校が決まった小学校区に住む人/出身者たちが抱えるもろもろを拾い上げる映画。現地に根ざす形而上を自負とともに丁寧に映像作品に昇華させた内容で、これがドキュメンタリーだったらなんぼか見るのが楽だと、ぼくには思えた。というのも、失礼な書き方になるが、すべからく優等生ちっくなストーリー仕立てで、ぼくは戸惑った。登場人物それぞれに問題や悩みも抱えるが、その描き方が予定調和と言うか、なんか綺麗ごとすぎる。汚れた(?)ぼくの感じ方においては。

 まあ地元の人々の協力率100パーセントという感じの仕上がり、それだと負の話は盛り込みにくいよなー。まあ、監督はそういう意思は端からなかったろうけど。もしぼくの子供がちらり映っていたとして、その映画が不謹慎な話をはらんでいたら子供にも見せられないし、そういう場合はぼくもなぜか真人間になり、おりゃあ地元さんざん巻き込んで何ふざけた映画つくってるんじゃいと憤りを覚えると思うもの。そんなこと考えたら、外野は無責任であることも自覚した。

 変な例え方をするなら、ロックやファンクや冒険ジャズを聞きに行ったら、ビリー・ヴォーンの楽団だったという感じ? いや、ケニー・Gでもいいけど。ビリー・ヴォーンやケニー・Gを評価する人がいていいのは当然。ただ、ぼくの好みとは離れるだけ。そういえば、音楽も現代的要素ゼロのぬるい、いや落ち着いた生音の音楽がつけられていて、それも監督の求めるところなのだろう。あと思ったのは、普段のぼくの生活が“お花畑”すぎるのかということだった。だからこそ、ぼくはハウリン・ウルフもキャプテン・ビーフハートも笑顔で聞ける。どこかに傷を抱えていたら、負の要素を抱えた、トゲのある音楽は心から楽しめないんじゃないか。

 地元愛のもと、生真面目にその流域の人々の実直な営みや気概を描こうとしているのはよく分かる。中国地方ではすでに公開されているようで、4月からこちらでも公開される。渋谷・ショーゲート試写室。

<今日の、昼下がり>
 本を上程した知人がお世話になった人をもてなす昼食会にお呼ばれし、銀座の個室だけの和食店でパクパク。昼間からワインも開栓で、お地蔵さま。そんな大げさなお礼をされるようなことはしてないんだけどなー。その後、伊東屋とか、夕方まで銀座をぶらぶら。天気もとてもよく、うれしい午後でした。で、帰りしなに、渋谷下車。

映画「衝動」

2020年1月29日 音楽
 スペイン人フラメンコ・ダンサーであるロシオ・モリーナ(2005年5月17日)の活動を追う、2017年フランス/スペイン映画(原題は「Impulso」)を渋谷・映画美学校試写室で見る。監督は23歳(1999年)以降、フランスに居住してTVドキュメンタリー畑で働くスペイン人のエミリオ・ベルモンテ。この作品が彼の初の長編ドキュメンタリー映画になるという。

 モリーナはもう押しも押されぬ当代きってのフラメンコ・ダンサーとして扱われており、おお。彼女が20歳のときの来日時を見ている身としてはなんか感無量(?)。しかし、ひどい書き方をするが、容姿に恵まれない彼女がちゃんと大成しているようなので、本当に実力があるのだろう。

 パリのシャイヨー国立舞踏劇場の上演に際しての準備の模様、本国でのいろんなやり取りを追いつつ、アタマでも触れるパリのそのショウに最後つなげる。そのパリ公演では、ディストーションの効いたエレクトリック・ギターやドラムを伴奏に使ったり、白いフロアにボディ・ペインティングをしたり(その俯瞰映像がその場のステージ後方に映し出される)と、彼女がけっこうなかっ飛び派であるのは間違いない。なるほど、そういう部分も、モリーナをインターナショナルな存在に押し上げているのかな。

 とはいえ、フラメンコ特有の手拍子や足拍子が彼女の行為の基本にあることも映され、つくづくフラメンコは肉体ビート表現であるとも思わされよう。そして、監督は彼女の信頼を得て、彼女の内側にまで入った映像を撮っているとも感じる。モリーナは弁もたつし、観客に見せることない裏側が出ているのはマル。あるダンサー巨匠老婆が彼女のセビーリャ(だったかな?)のショウにゲストで出て椅子に座りながらステップを踏む場面にはデ・ジャヴを覚える。おお、ぼくはそのラ・チャナのドキュメンタリー映画(2018年5月15日)を見ているじゃないか。

 この興味深い映画は、3月中旬より東劇や東京都写真美術館ホールほかで公開。とともに、彼女はロシオ・モリーナ舞踏団として、3月7日に日本青年館で公演を行う。それ、SS席が12.000円で、C席が3.500円。金額の幅、ありすぎ。この映画を見ると、それを見たくなりますね。映画ではのっけから伴奏陣が日本酒を飲んだり、モリーナが日本語がプリントされた(”私はネコ”、だったかな)シャツを着ていたりする。

▶︎過去の、ロシオ・モリーナ
https://43142.diarynote.jp/200505190035230000/
https://43142.diarynote.jp/201201171011033219/ 彼女が出てくる映画
▶︎過去の、ラ・チャナの映画
https://43142.diarynote.jp/201805180920051080/

<今日の、困惑>
 いつのまにか山ほど来ていたスパムがなくなったと思ったら、また入り出し、昨日からものすごい量に。うわわわー。

 六本木・ビルボードライブ東京で、在NYのブラジル人であるベベウ・ジルベルト(2014年11月28日)の公演を見る。ファースト・ショウ。なんと、1971年リオ生まれで2000年以降はニューヨークに住むギタリストのギレーミ・モンテイロ(2010年10月10日)だけのサポートでショウはすすめられる。彼は少しエフェクターを足元においていたものの、すべてガット・ギターでことをこなす。

 そのモンテイロはベベウ・ジルベルトの諸サポートはもちろんのこと、アナット・コーエンやカート・エリング(2012年6月21日、2016年3月1日)のアルバム録音に関与をするほか、ジェシー・ハリス(2002年12 月21日、2005年9月7日、2006年1月23日、2006年4月22日、2007年3月11日、2009年3月31日、2010年10月10日、2011年8月6日、2012年7月16日、2013年5月26日、2016年4月27日、2016年9月8日、2017年6月10日、2018年12月19日、2019年11月20日)が懇意にする在NYブラジリアン・グループであるフォホー・イン・ザ・ダークのメンバーでもありますね。

 デュオで粛々と。ベベウ・ジルベルトは白と黒のドレスを綺麗に身にまとい、高いヒールの靴を履いていたものの、背が高そうにも見え、ステージ上の見栄えはなかなか。そして、しっとりと上品にボサノヴァ・ソングブックをこなしていく。お、偉大な父親である昨年7月に亡くなったジョアン・ジルベルト(2003年9月12日)・トリビュートじゃないか。とは、皆思いますね。通常の物差しで言えば、彼女は歌が上手な方ではない。だが、豊かな人間性も感じさせるそのパフォーマンスはまったくもって悪くない。

 そう、その実演に触れて何よりも感じたのは、ベベウ・ジルベルトの温かな心地のようなもの。彼女の5年強前の公演の項にも書いているが、そういうものに触れると偏屈と言われた父親のイメージとの落差に考えは飛んでいくわけで……。実はジョアンってすごいいい人だったんではないかとか、母親のミウシャが度を越してファンキーだったとか……。なんか、ぼくなりに彼女のパフォーマンスに触れながら、ジルベルト家に対するもろもろを考え、これはいい父親トリビュートだったと言えるのかもしれない。そして、”静のベベウ”でずっと行くのかと思ったら、途中から自分の曲なども披露し、すると彼女のステージ上の動きが活発となる。拍手やスキャットも求めるなどする、客扱いもうまい。でも、ある種の品格のようなものはずっと携えていた。

 最後の曲が終わると、2人ならんでお辞儀。それは、拍手とともにどんどん深くなり、2人は両手をステージにつけ……。最後には、両者は腹ばいになり、腕立て伏せを始めた。そんなことする人には、初めて触れたか。ましてや、今日のようなタイプの公演ではとんと記憶にない。そんなことできちゃう人が悪いはずがないではないか!

▶︎過去の、ベベウ・ジルベルト
https://43142.diarynote.jp/201412011333568989/
▶︎ギレーミ・モンテイロ
https://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
▶過去の、カート・エリング
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
https://43142.diarynote.jp/201603111217517934/
▶過去の、ジョアン・ジルベルト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/ 関連映画
▶過去の、ジェシー・ハリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130315380000/
http://43142.diarynote.jp/200601271859050000/
http://43142.diarynote.jp/200604251252010000/
http://43142.diarynote.jp/200703130418360000/
http://43142.diarynote.jp/200904040640421651/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201305280925006733/
http://43142.diarynote.jp/201605141103337291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160908
https://43142.diarynote.jp/201706111121479426/
https://43142.diarynote.jp/201812201007219205/
https://43142.diarynote.jp/201911211432415461/

<今日の、天候>
 昨日、今日と、絶望的と書きたくなるぐらい寒い。でも気温を見ると、氷点下にはまだまだ程遠い。寒いと、歩いていて息が上がるのはどうしてなんだろう。だが、軽妙でもある2人のショウにふれて、なんかほんわか〜。その後の飲食の会話も滑らか〜。音楽の効用って、いろんなところに及びますね。

 赤坂・橋の下で、テナー・サックスとアルト・サックスのRicky がリーダーシップを取るショウの2部を見る。アコースティック・ギターの大里健伍、ドラムの岡山たくととの3人による。Rickyは普段はFSPというダンサーも含めた大所帯のグループを率いていて、この晩の出演者は皆そのメンバーであるようだ。

 ベースレス編成のためドラマーはときにフロア・タムの上に小鍵盤を置き、右手でベース音を出しつつ、ハイハット、スネア、キックを扱う。3人でやるときは、ポップなスムース・ジャズ風の演奏を聞かせる。少しヴォーカルの若島史佳も加わり、その際はソウル色が加わる。

 そして、なんとそこに、1990年代にけっこう日本でも注目された(彼女の曲がNHKドラマの主題歌になったこともあったよう)豪州人R&B歌手のデ・ハインズがゲスト入りする曲もあり。実は、ハインズは今Rickyたちとせえの方式で曲作りを一緒にやっている。ここ2年間ほどは、彼女は気候や物価の安さからバンコクに居住。そして、タイに演奏に行ったRickyバンドを彼女が見初め、昨年両者は一緒に全国4箇所の日本ツアーを行った。そして、今回はハインズが申し出て、ゆったりしたスケジュールのもと東京で一緒に作業をしている。また、この後、Rickyたちがバンコク入りする予定もあるようだ。

 で、Rickyのライヴが入っていたこの晩、ハインズも笑顔で参加。上のやりとりがあるだけに、かみ合いはばっちり。オリジナル(なのかな?)やソウル・スタンダード「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」などを、悠々と披露。P-ヴァインからも出た豪州録音の彼女の近作『ザ・ソウル・セッションズ』はバンド・サウンドでやることを重視したソウル名曲カヴァー集でしたね。実は、ハインズさんはとんでもなくフランクで、オープン・マインドな人。活力ある歌い方とともに、そういう側面が透けて見えるのがなんとも聞く者をノックする。やはり、人間性は大切。高揚できました。

<今日の、その後>
 会場にはオーストラリア大使館の方々も来ていて、ハインズをやんやと応援。分かるなあ、彼女にはそうさせる人間的な魅力がある。ところで、1970年シドニー生まれのデニ・ハインズはかなり興味深いバックグラウンドを持つ。母親のマーシア・ハインズ(1953年、ボストン生まれ)は14歳でニュー・イングランド音楽院の奨学金を得て入学したもののすぐにドロップアウト。16歳でオーストラリアに渡ったが、それはミュージカル「ヘアー」に出演するため。そして、その翌年にデニが生まれたが、出産して9日後にマーシアはまた「ヘアー」のステージに戻っている。そんな母親はそのままオーストラリアに滞在し、同国で女性として初のプラチナ・レコードを獲得するなどスター歌手として大成。奔放な彼女は4度ほど結婚しているようだが、デニはまだ2回。今の旦那さんは白人のよう。デニにお母さんは今も元気に歌っているんですよねと問うと、もちろんと笑顔。著名軍人でかつてアメリカの国務長官を務めたこともあるコリン・パウエルは母親のいとこと言われるが、それは事実だそう。日本酒/焼酎好きの彼女は、大好きな日本人ともっとコミュイケイトするために、タイに戻ったら日本語を学ぶと言っておりました。ライヴ後にインタヴューしたことを元にした記事は、2月8日の毎日新聞夕刊に出ます。

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