ブラジル発の今様天衣無縫ポップ感覚を体現する仲良し3人組+2、計5
人によるユニット。うち、中心となる3人は、2001年(5月18日参照) に来日
ライヴを行っている。その前回と同じく、なあなあな温ま湯的なノリで始ま
り、サウンドがまとまり濃くなっていくにつれて、どんどん音のやんちゃさ
が増していき、こっちの笑顔もどんどん増えるという感じの実演を展開。

 ギターだけを弾いていたモレーノ以外は、みんな微妙にステージ上の立ち
位置を変え、持ち楽器を代える。たとえば、リズム音にしてもドラムとパー
カッションが重なるものから、シンセ・パッドを二人が抑えてリズムを形作
るものまでいろいろ。ときに変テコなシンセ音も聞こえたり、打ち込みっぽ
い音も聞こえたけど、とにかく自由にして臨機応変。変テコなギターやベー
スを淡々と弾いていたペドロ・サー(昨年の、モレーノの父親であるカエタ
ーノ・ヴェローゾの来日公演にもギタリストとして同行していたようだ:2
005年5月23日)をはじめ、+2のほうも連係ばっちり。たしかにヴォー
カルの質(ヴォーカルは名前が出ている3人が代わる代わる取る。モレーノ
の歌が一番ちゃんとしている)をはじめ素人っぽさ(初々しさ、と書いたほ
うがいいのかな) もあるのだが、それが見事に茶目っ気やポップな気分や枠
から逃れた自由の発露に繋がっているんだから言うことない。そして、その
奥に幾重にも見えるブラジル的機知がまた嬉しい気持ちにさせてくれるんだ
よなあ。

本編、最後には高野寛がギターで加わる。そして、アンコールはカシンの
プロデュースのアルバムを出しているSaigenjiが中央に座り、また高野も加
わる。そういう皆で行こうよ的な、鷹揚なところも彼ららしい。それからけ
っこうちゃんとしたアクセントで日本語の単語を言うなあと思っていたら、
カシンの奥さんは日本人だそう。

 楽しかったあ。当然、普通だったらアフタアワーズで弾けるところだが、
ワケありですぐにタクって帰宅。実は会場の代官山ユニットへ来る前にイン
タヴューを二本やってきたのだが、そのうち一本の方が途中でいつの間にか
MD録音が止まっていたのだ。そのアーティストは文筆家として日本人音楽
家中一番の評価を得ている人なので余計に冷や汗。で、急いで帰って起こし
てみなきゃ、となったわけ。そしたら、そんなに消えている部分はなくてホ
っ……。