1990年ミシガン州キャントン生まれの女性シンガー・ソングライターを、EXシタアター六本木で見る。エキゾな顔をした美人さん、その芸名はフランス語から取られた。10代から曲作りの才を発揮し、一時は豪州シドニーに住んだものの、現在はソングライターの街であるナッシュヴィルに住んでおり、本名はローレン・ストラーム。彼女は、この夏に『Portals』というアルバムを出したばかり。

 音出し、鍵盤、スティックで叩くパーカッション・パッドを扱う男性を横に置き、歌う。その際の手振り身振りは大きい。エレクトロ・サウンドを下敷きにする人だが、生だとアルバムよりも声が出ているようにも思えた。キーボードを弾きながら歌う曲も一つ。悪くない。また、彼女の後にはアコースティック・ギターが置かれていたが、それを持って歌ったかは不明。というのも、飲み物を引き換えするのに20分近く並ばされて、30分弱のパフォーマンスのうち頭の10分は見ることができなかったから。あの規模の会場に、小さなカウンターで販売員は二人。とんでもない欠陥ヴェニュー、というしかない。あまりにも、要改善だ。

そのフレアリーは、アウル・シティ(2009年11月24日)のオープニング・アクト。会場は、ほぼフル。アウル・シティにぜんぜん悪い印象は持っていないが、新進の彼女だけを見て、次の場に移動する。ちなみに、彼女は中国で3箇所回ってきた後に日本入りし、アウル・シティと合流したよう。日本でやった後は、ソウルに行って帰国するようだ。一方、アウル・シティは日本3箇所でライヴをやった後、韓国1箇所(フレアリーとは別の場所)、中国6箇所を回ることになっている。

▶︎過去の、アウル・シティ
http://43142.diarynote.jp/200911261250221741/

 続いて、ポーランドの若手ピカ一のジャズ・アルト・サックス奏者と認められているというクバ・ヴィエンツエックのトリオ・ギグを見る。代官山・晴れたら空に豆まいて。現在大学院に通っているようなヴィエンツエックは24歳で、25歳のポーランド人ドラマーのアルベルト・カルフ と1985年生まれの日本人ダブル・ベース奏者の小美濃悠太を伴う。

 へえ〜。演奏が始まって、すぐに頷く。ヴィエンツエックくん、ちゃんと吹ける。音が綺麗で、多彩。サブ・トーンもうまく使う。だが、技術はとうぜんとして、とても確かなジャズ観を持っているという事実がそのパフォーマンスの端々から感じられて、いいゾとなってしまう。まず、曲とアレンジが興味深くも個性的。いわゆるテーマがあってソロ部になり、テーマで終わるという定型のありかたを踏まずに、それらは起伏を抱えて流れていく。と、説明したくなるものだ。それは、散文的という言い方もできるだろう。そして、リズム・セクションもそまた散文的な行き方を助ける重なり方を見せていて、普通じゃない。ワーキング・バンドではないのに、二人は健闘していた。

 小美濃悠太の演奏には初めて触れるが、確かで太い。演奏にきっちり芯と流れを与える。一方、シンプルなセットをレギュラー・グリップ主体で叩いていたカルフも好奏者だ。ベルを垂らしていたり横に大きさの異なる小さな金属製のツボを並べ、それらも効果的に用いつつ、隙間があるのにカラフルなビートを送出。いろいろ、耳惹かれたナ。そして、ヴィエンツエックはというば、オーネット・コールマン(2006年3月27日)のファンであるのがすぐに分かり、これもうれしい。ときにはカデンツァ的な一人演奏もして、やはりクラシックにも強い奏者であるとも知らされるが、総合点高し。その一方、アラブ的と感じさせるソロも彼は繰り出していた。また1部と2部で1曲づつ、自らが扱うエレクトロ音を流す場合もあった。

 アンコールでは、レニー・トリスターノの弟子筋のウォーレン・マーシュの曲を取り上げる。これが、一番通常のジャズっぽい演奏だった。

▶︎過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/

<今日の、ポーランド人>
 お二人とも色白痩身、端正で優しい顔つき。いかにも草食系男子といった感じで、日本人女子には受けが良さそう? ドラマーは短期留学などもしているようで、けっこう日本語をしゃべる。この晩は上に書いたような芸あるアコースティックなジャズ・ドラム演奏を聞かせたカルフだが、来週だかに東京でやる自分のリーダー・ライヴはエレクトロだと言っていた。
 クバ・ヴィエンツエックのトリオ名義盤(今日のリズム・セクションとは違う)『Another Raindrop』(Polish Jazz、2017年)は純アコースティック作で、より初期オーネット・コールマンを思い出させる聞き味を持つ。同作は13曲入りで各曲はどれも短め。それでいながら。創意工夫の先にちゃんとジャズの天衣無縫な自由を体現していて、推すにたる。
 DJをやる前にドラムを叩いていたというジェフ・ミルズ(2017年11月7日、2017年11月10日)がジャズ・フュージョン傾向のバンドをやりたくて組んだのが、スパイラル・デラックスだ。他の構成員は、モウグ・シンセサイザーの大野由美子(2002年1月13日、2003年11月8日、2004年12月12日、2006年6月22日、2011年9月16日、2012年6月1日、2015年6月9日、2015年7月30日、2016年9月1日、2017年3月24日、2018年4月26日、2018年9月1日 )、エレクトリック・ベースの日野“JINO”賢二(2006年1月9日、2011年7月25日、2012年3月24日、2014年4月22日)、そしてキーボードのジェラルド・ミッチェル。彼はミルズと旧知の間柄である米国人。その4人は、『ヴードゥ・マジック』というパリ録音のアルバムをリリース。そこには米国人女性シンガーも歌っていたが、彼女はの日野の推挙で入った。

 六本木・Super Deluxe、オール・スタンディング。けっこう、ノリですすめていたところはあったのではなかったのかな。ミルズのビート出しから始まり、それにメロディを出せる3者が呼応しながら、音を加えていくという感じ。そして、それを受け、ミルズがまたビートを変えていく。ショウを通して、思って以上に即興性が高いと感じた。

 実は、スパイラル・デラックスはミルズが機械音と併用してドラムを叩くプロジェクトと理解していたが、彼はボンゴやタンバリンを叩く場面も少しあったものの、全面的に機材経由でビートを送り出す。ただ、けっこうその場でパッドを叩いたりつまみをいじり4つ打ち基調のビートや流れを臨機応変に作っていて、その変化に合わせてスラッピング主体のJINO がジャズ的なウォーキング・ベースのフレイズにチェンジしたりもする。なんでも、彼らにはもっとアコースティックなセットもあり、その際はミルズがドラムを叩き、ミッチェルはグランド・ピアノも弾くのだそう。そのミッチェルはなかなかに優秀な指さばきでリフを入れていた。4人、とても楽しそうだった。

追記:あ、忘れました。本編最後に、若いアルトとテナー・サックス奏者が加わる。JINO流れの奏者であるように見受けられたが、真っ当な演奏を聞かせた。

▶︎過去の、ジェフ・ミルズ
http://43142.diarynote.jp/201711080729053828/
https://43142.diarynote.jp/201711110810235717/
▶過去の、バッファロー・ドーター/大野由美子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200606270001320000/
http://43142.diarynote.jp/200412212058580000/
http://43142.diarynote.jp/201109171049342536/
http://43142.diarynote.jp/?month=201206
http://43142.diarynote.jp/?day=20150609
http://43142.diarynote.jp/201508051544452721/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201708141221583726/
https://43142.diarynote.jp/201804271733498350/
https://43142.diarynote.jp/201809051532324111/
▶過去の、日野賢二
http://43142.diarynote.jp/?day=20060109
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120324
https://43142.diarynote.jp/201404260858553785/

<少し前の、メンバーの言葉>
「スパイラル・デラックスは私の長年の音楽活動の結晶です。他のミュージシャンと自由に演奏できる環境を作ることが目的です。日本には友人がたくさんいるので、興味を持ってくれるアーチストを探すのはそう難しいことではありませんでした」(ミルズ)
「バンドの趣旨は、何か新しい形のジャズ、フュージョン辺りの音を作っていく事と聞きました。私はフュージョンというジャンルは全く演奏したことがないくらい縁のない音楽だと思っていましたが、”新しい形”という所に惹かれ、また90年代からジェフのファンなので喜んでお受けしました」(大野)
「メンバーの長いキャリアやバックグラウンドが様々なレベルに到達したと思っています。4人が一緒になる事で共通項を探し出し、そこから未知のものを探索することができました」(ミルズ)
 これらは、毎日新聞記事用に今年9月にやったメール・インタヴューの抜粋。ミルズの最初のターニング・ポイントは、「1989年にラジオの仕事をやめてプロのミュージシャン(DJ)になった時」とのこと。でも、もうデトロイトを離れて相当年月がたつようだ。また、彼は「 私たちはMIDIのシンクを使用して一つに繋がることをせず、もっと自由にプレイする方法をとっています。つまり、どんな時でもメンバーの一人がフリーにプレイし始めて曲の流れを変えていくことができます。テンポの変化、ソロ、即興などこういったこと全てがスパイラル・デラックスでは可能なのです」とも答えていて、まさにこの晩の演奏は発言通りの内容だった。

 ポップ、エレクトロニカ、アフリカをはじめとするワールド要素、ジャズなど、様々な要素を俯瞰した英語によるポップ・ミュージックを作るポルトガル人アーティストのブルーノ・ペルナーダスの公演を、渋谷・WWW Xで見る。エレクトリック・ギターを弾く彼に加え、管楽器セクションや男女コーラスを含む全9人でパフォーマンス。彼は教鞭を取ってもいるようで、バンド員はその教え子が主となるよう。ドラマーは、ペルナーダスがソロになる前に組んでいたジュリー&ザ・ハイジャッカーズからの同士だ。

 なるほど、ヴァン・ダイク・パークス(2013年1月29日)好きというのも納得の、レイヤー感覚を大いに抱える、多大な起伏を持つラウンジ・ポップをくり広がる。そこに取り込まれた音楽のヴァリエーションはポップ・ミュージックとしてはまこと破格。それを才気走る感じでなく、ほんわかほのぼの出すのが彼の流儀であるのもよく出していた。

 ブルーノ・ペルナーダスには、ライヴ前に会場でインタヴューをした。1982年生まれの、律儀な髪型をした好青年。そして、やはりかなりな音楽エンスー。もう博識で、その興味は1980年代の日本のJ・ポップまでに広がる。ちょっとでもマニアックな名前を出すと、彼はすぐに携帯の画面でその該当者を出してくれる、気配りの人でもある。この夏には、日本人グループの幾何学模様の新作プロデュースをリスボンでしましたね。サントラや舞踏曲作りの分野にまで進出している彼はオーケストレーションもできるそうで、自分の過去のポップ曲をそれを添えた形で提出するアルバムも作りたいよう。2016年以降出していないリーダー作は、ポップ志向盤が来年にリリースされる。
 
 ギター奏者としての自分を出したジャズ・アルバム『Worst Summer Ever』を出してもいるだけに、ジャズ・ギタリストは故ジム・ホール(2005年1月18日、2012年6月4日)からカート・ローゼンウィケル(2009年3月1日、2010年3月12日、2013年11月20日、2014年3月4日、2016年6月27日、2017年4月15日、2018年1月13日)まで、いろんな人が好きであるそう。彼は掛川市であったFESTIVAL de FRUE 2018に自己グループで出演するとともに、単独でもそこでも持たれたビリー・マーティン(1999年8月5日、2000年8月13日、2001年2月5日、2002年9月7日、2012年3月2日)のセッションに堂々はいったとのこと。その際のベースは、シャザード・イズマイリー(2018年7月24日)であったよう。

▶過去の、ヴァン・ダイク・パークス
http://43142.diarynote.jp/201301311032072367/
▶過去の、ジム・ホール
http://43142.diarynote.jp/200501222324430000/
http://43142.diarynote.jp/201206110916017268/
▶過去の、カート・ローゼンウィンケル
http://43142.diarynote.jp/200903031751323247/
http://43142.diarynote.jp/201003131221091991/
http://43142.diarynote.jp/201311230757159421/
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
http://43142.diarynote.jp/201704170805443358/
https://43142.diarynote.jp/201801140944229876/
▶︎過去の、ビリー・マーティン/メデスキー・マーティン&ウッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm 8月13日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 9月7日
http://43142.diarynote.jp/201203062004221304/
▶︎過去の、シャザード・イズマイリー
https://43142.diarynote.jp/201807260047172162/

<また、R.I.P.>
 テキサス州出身のトランペッター/フリューゲルホーン奏者であるロイ・ハーグローヴ(2003年2月18日、2003年9月21日、2004年12月2日、2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月24日、2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日、2017年3月2日、2018年3月1日)が10月2日にNYの病院で心臓発作のため、まだ40代ながらお亡くなりになった。彼はここ10年強、人工透析を来日時も受けていたわけだが……。高校時代にジャズ方面で早々に脚光をあびるものの、一方ではファンク・バンドも組んでいた御仁。バークリー音大に進み、20歳ごろからエスタブリッシュされた、まさにエリート・ジャズ・マンだった。でも、その裏で打ち込みやラップにもこっそり挑戦していた彼。ソウル・クエリアンズ関連のディアンジェロ『ヴードゥ』、コモン『ライフ・ライク・ア・ウォーター』、エリカ・バドゥ『ママズ・ガン』などは、彼の同時代R&Bホーン音創出の才をおおいに示す。また、彼はそっち方面への興味を大きく出した自己グループのR.H.ファクターも組みアルバム作りやライヴ・ツアーも行ったが、今冷静に見るなら、ハーグローグの才能は何よりアコースティック・ジャズの分野で2000年代以降に発揮されたと思う。その太さと比すと、R.H.ファクターはフュージョンぽくもあり、少し中途半端〜素直に『ヴードゥ』のインスト版をやればよかったのになー〜。ああ、これで現代ジャズの定点観測ができる重要人物が一人いなくなってしまった。
▶過去の、ロイ・ハーグローヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm 18日、ディレクションズ・イン・ミュージック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm 21日
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
http://43142.diarynote.jp/201703081443314613/
https://43142.diarynote.jp/201803031242579295/

 上野東京文化会館小ホール。久しぶりに中に入ると、おお作りが立派な会場だなあ、昔の文化施設は気合とお金のかかり具合が違うなあみたいな正の所感を得る。とともに、ここはプーさん(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日、2015年7月8日、2016年6月11日)の最終作『黒いオルフェ〜東京ソロ2012』(ECM、2016年)が録られた場なんだよなあとも思い、少しじわ〜ん。

 主役は結成30周年となるコンボ、山下洋輔ニューヨーク・トリオ。70代ピアニストの山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日、2017年7月8日、2017年9月2日)、80代ダブル・ベース奏者のセシル・マクビー(1999年11月10日)、60代ドラマーのフェローン・アクラフ(1999年11月10日。ジャズ・ドラマーとしては少し大きめのセットを使う)。その新作『30光年の浮遊』(ヴァーヴ)はそれを記念するアルバムで、もちろん不動の3人でレコーディングされている。客は先日のポール・マッカートニー公演同様に高い。もう、ぼくは若い方ではないかと思えちゃう。

 休憩を置く、2部制にてなされた。新作収録曲を中心に、遊び心に満ち満ちた山下のオリジナル曲群(実は、それこそはNYトリオの肝となる部分でもあると思う)を阿吽の呼吸を持つトライアングルで開いて行く。3人が楽しんで演奏しているのが、よく分かる。それぞれのソロはたっぷり披露され、1曲ごとに山下はピアノの横に立ち、軽妙洒脱に曲説明を行う。白いスタンド・カラーのシャツと白いパンツ、そして黒基調のベスト、彼のそうしたいつもの衣服はいつごろからつづけられているものなのか。

▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611
▶過去の、山下洋輔
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http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶︎過去の、セシル・マクビー
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▶︎過去の、フェローン・アクラフ
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<今日の、トリオ>
 ぼくはこのトリオを約19年ぶりに見るのだな。そりゃ、新鮮ですね。実は、このトリオを組むきっかけになったのは、名作編曲家/バンド・リーダーであるギル・エヴァンス(1912年5月13日〜1988年3月20日)の死であった。マンハッタンのスウィート・ベイジルで毎週月曜にエヴァンスは自己オーケストラの公演を持っていたが、死去によりその月曜日代役出演の話が山下洋輔に持ちかけられた。前年だか、彼は同クラブでソロ・ピアノ公演をやり高評を受けていたことがその奥にはあり、そのアフリカ系リズム・セクションの人選は欧州での山下の演奏に触れていたコーディネイターに拠ったという。そしたら、ばっちりとはまってしまい、その後ずっと続くことになった。好奇心旺盛に軽いスタンスでいろんなものに飛びつく彼(それは、今もそう。いろんな人のライヴに入ったり、プロジェクトにとても腰軽く関わっている)には、ときどき成り行きが呼び込む必然があるのだそう。
Q:そんなNYトリオの原点には、それまで独エンヤからアルバムも出し欧州ではエスタブリッシュされていた洋輔さんが、ジャズの本場である米国で勝負できる表現をトリオでやってみたいという意図があったように思えますが。
「そうですね。本場で、本道のピアノ・トリオの編成で、自分は何ができるか。それを目指したんです。どこまで通用するんだ、どうやったら通用するんだ、という気持ちから始まっていますね」(今年、ジャズ・ジャパン誌用に5月にやったインタヴューより)
 そして、3人とも決定的な結びつきを感じ、心置きなく自分を解放できる場とこのトリオのことを認め合っている。山下洋輔は楽器が弾けるかぎり、このトリオを続けて行くことを自認もしている。

 最初は丸の内・コットンクラブで、ニューオーリンズ生まれのピアニストであるピーター・マーティン(2008年9月22日、2010年3月23日、2014年9月16日、2016年2月18日、2017年5月29日、2017年10月4日)とリオデジャネイロ生まれのギタリストであるホメロ・ルバンボ(2003年5月6日、2006年11月22日、2008年9月22日、2010年3月23日)のデュオ公演を見る。2015年 には二人の対話映像がYouTubeにアップされていたりもするので、すでに何度もこれをやっていると思われる。

 というわけで、二人はとっても仲が良さそう。ルバンボがマスターとマーティンを讃えると、マーティンはグランドマスターとルバンボに返す。彼らは交互に、元気にMCを取っていた。なるほど、二人はダイアン・リーヴス(1999年4月28日、2001年4月24日、2008年9月22日、2010年3月23日、2011年11月15日)のバンド仲間であるんだよな。マーティンは帰国後、リーヴスのツアーに入る。ルバンボも同様だが、彼の場合は入る日と入らない日がある。なお、マーティンのHPではこのデュオを<ニューオーリンズ・ミーツ・リオデジャネイロ>と紹介していて、二人によるライヴ曲を2つ聞くことが可能だ。

 その謳い文句ほど、ニューオーリンズ要素とリオ要素を拮抗させる内容ではなかったが、達人同士の心置きない会話が交わされる。ニューオーリンズ・ビート調やタンゴ調などの彼らそれぞれのオリジナル、スタンダードやハービー・マンのブルース・コード曲カヴァーまで素材はいろいろ。ルバンボは1曲以外ガット・ギターを弾き、その際はアルペジオ。エレクトリック・ギター演奏の場合はピック弾きだが、ぼくは彼の後者扱いが好みのなのを再認識。30歳の1985年にNYにやってきてそのまま活動を続けているルバンボだが、実はブルージィな弾き方がイケることも再確認。ジャズの根にあるものとしてブルースをちゃんと研鑽しているのは明らかですね。
 
▶過去の、ピーター・マーティン
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
http://43142.diarynote.jp/201111210320292366/
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
http://43142.diarynote.jp/201705301638029304/
http://43142.diarynote.jp/201710051255419305/
▶︎過去の、ロメロ・ルバンボ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200611271210490000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
▶︎過去の、ダイアン・リーヴス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
http://43142.diarynote.jp/201111210320292366/
https://43142.diarynote.jp/201705301638029304/

 次は六本木・ビルボードライブ東京で、ホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日、2015年2月15日、2016年2月16日、2017年2月15日、2018年2月21日)を見る。彼の新作『リーン・オン・ミー』(ブルーノート、2018年)をフォロウする、ビル・ウィザース曲縛りのショウ。なお、本編が始まる前に、ターリという在NY の女性が電気キーボードで2曲弾き語り。彼女は来年、アルバムを出すという。ぼくは1曲目の終わりから聞いたが、英語じゃない2曲目を聞いて中東出身の人なのかと感じた。

 ジェイムズはよりアフロ・ヘアがこんもり。生理的に華やか。途中で、彼はスーツをお召し替えもした。バンド員はピアノと電気ピアノの大林 武司(2014年5月25日、2015年9月5日、2016年2月16日、2016年9月4日、2016年12月16日、2018年2月21日)、エレクトリック・ギターのブラッド・アレン・ウィリアムズ(2014年7月27日)、電気ベースのベン・ウィリアムズ(2009年5月18日、2009年9月3日、2010年5月30日、2012年3月3日、2012年5月28日、2013年4月1日、2013年5月21日、2015年1月22日、2015年12月12日、2016年7月3日、2016年9月1日、2016年12月11日、2017年12月7日、2018年2月21日、2018年5月28日)、ドラムのネイト・スミス(2012年5月28日、2015年8月5日、2016年2月16日、2018年2月21日)。

 ジェイムズは登場時から、くつろいだ風情のもと、意気揚々。そして、いい楽曲を、揚々とした歌声で聞かせる(声が出るようになったネ。曲趣が合っているというのもあるだろう)のだから、接する側もキブン良くてしょうがない。結構ライヴで披露している、肉声スクラッチも映える映える。彼はステージをおりて上の階を回って歌ったりもした。彼は今回このようなことをやる一方、ずっと前からジョン・コルトレーンをトリビュートする実演やビリー・ホリデイ絡み曲を歌う純ジャズ・アルバムを出したりしてきているわけで、往年のジャズ巨匠と都会派R&B大家を並列に置く活動をする彼のスタンスにも頷かざるを得ない。

 そんな彼の良さを実感できたのは、バンドの演奏がとても素晴らしかったからでもある。とくにリズム・セクションには聞き惚れる。今回、ベン・ウィリアムズはエレクトリック・ベースに専念したが、その演奏すげえ。縦でもやたら評判のいい彼だが、サム・ピッキングを多用する電気の方のノリやフィレイジングや音色は素晴らしい。そして、レギュラー・グリップとマッチド・グリップを併用するネイトの出音にもため息。もう、タイトなだけでなく、ジャズを知っているからこその広がりもあるし。途中で、彼は5分ほどのソロ・パートを与えられたが、その多くはスネア(二つ並べていたかな)とハイハットとキック・ドラムだけを用い定型のビートをヴァリエイションをつけながら叩くというもの。文字だけだと、その凄さはいまいち伝わらないかもしれないが、今年見たトップ級のリズム・セクション音だと思った。かような彼らと重なる大林武司もなんか誇らしいな。

 ジェイムズ、絶好調! 次に、彼はどんなプロジェクトにあたるのか? わくわく。

▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
http://43142.diarynote.jp/201702201427067352/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
▶過去の大林武司
http://43142.diarynote.jp/?day=20140525
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160216
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/201612181010384754/
http://43142.diarynote.jp/201702201427067352/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
▶︎過去の、ブラッド・アレン・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
▶過去の、ベン・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100530
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
http://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
http://43142.diarynote.jp/?month=201609
http://43142.diarynote.jp/201612171245154424/
http://43142.diarynote.jp/201712081715389473/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
https://43142.diarynote.jp/201805290906425481/
▶過去の、ネイト・スミス
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150805
http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/

<今日の、お願い?>
 これまでライヴにおいては基本ダブル・ベースの演奏に触れて来たわけで、今回のベン・ウィリアムズの雄弁な5弦のエレクトリック・ベース演奏にはびっくり。左手も右手も、その動きは素敵すぎる。彼はコンコードから2枚リーダー作を出していて(電気と縦の両方を弾く)、それは無理して聞く必要性を感じないが、才能あるなあ。何気に、彼はルックスもいい。そんなベンちゃんは来月、デイヴィッド・サンボーン(2000年3月21日、2003年7月18日、2010年12月1日、2012年3月3日、2013年9月3日、2014年11月6日、2015年10月19日、2017年12月5日、2017年12月7日)のサポートでまた来日するが、これはまた見に行かなくちゃと思った。今日と同じように、電気を弾かないかなー。彼の演奏に触れ、エレクトリック・ベースを手元に置きたくなった。かつてはフレテッドとフレットレスの2本が家にあったというのに、今はない……。遊びのやつ、買いたいなあ。もう年末だし、サンタさんにお願いしようか。小さなベース・アンプもよろしく、と。
▶過去の、デイヴィッド・サンボーン
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130903
http://43142.diarynote.jp/201411101737513509/
http://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
https://43142.diarynote.jp/201712081715389473/
 ポール・マッカートニーを見るのはいつ以来だろう。大麻持ち込み(下っ端に頼らず、自ら堂々したのは偉いといえばえらい)でパクられてずっと日本には入れなかったところ特別に入国禁止が解けて実現した1990年ごろの公演だったか。東京ドームであったのはちゃんと覚えているのだが。それ以上に鮮明に覚えているのはザ・ビートルズの曲をいろいろやってくれて、一緒にうろ覚えの歌詞をがなりまくったこと。いやー、すんげえ楽しかったァという記憶しか残っていない。そのとき以来の、マッカトニーの実演享受なり。

 東京ドーム。ここに来るのももう久しぶり。野球にほとんど興味がないし、アンチ東京ジャイアンツでもあるので、たぶんエアロスミス(2011年11月30日)いらいか。スティングをその楽屋(にあてられていた場所。バックグラウンド・コーラスのジャニス・ペンダーヴィスが鷹揚に下着に近い格好で歩き回っていたっけ)でインタヴューしたのはよく覚えていて、それが1988年秋だったので、ドームはできてもう30年もたつのか。そっかー。壁に直書きされた宣伝看板はダサいが、メインテナンスがちゃんとなされているのか、そんなに古くは感じないよなー。以下、今回のマッカートニー公演の記憶に残っていることをざっと箇条書きに。

*場内がまだ明るいうちに、ザ・ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のじゃーんという残響音が流れて始まる。オープナーは、「ア・ハード・デイズ・ナイト」。披露された半数以上が、ザ・ビートルズ曲だった。
*1階スタンドの悪くない位置から見たが、ドームはやはり広い。もう、マッカートニーは米粒。けっこう左右の縦長のヴィジョンを見るときのほうが多かったか。ヴィジョンに映る彼は、近年の写真とかを見てもう相当なちゃんじいという印象をもっていたが、なかなか若々しく見えた。ヴィジョン上では−10歳でも通る。それ、元気そうなステージ上振る舞いから得る印象も加味されたか。
*彼の格好は白いシャツとジーンズというカジュアルなもの。今シャツは外に出す人が多数と思うが、マッカートニーはパンツのなかに入れ律儀にベルトもしているあたりに世代を感じたか。でも、お腹ぽっこりもなく、別に変でもない。
*MCに日本語を入れるなど、日本人に向けてのサーヴィスはかなりする。少し、それが臭いと書くと、怒るファンもいるだろうけど。また左右ヴィジョンの下に、MCの翻訳が出る場合もあった。アンコールで再登場時には、ハロウィーン用の仮面を被り、デカい日章旗を持って彼は登場した。
*ショウはベースを弾きなが歌うブロック、エレクトリック・ギターを持ち歌うブロック、グランド・ピアノを弾きなら歌うブロック、生ギターを弾きながら歌うブロック(前身ザ・クォーリーメン曲もやった。「ブラック・バード」は単独で)、電気キーボードを弾きながら歌うブロックという順に進んでいく。で、途中からはもっと頻繁に持つ楽器が変わったという感じか。ウクレレを持って歌ったのは、ジョージ・ハリソン追悼での「サムシング」。ソロ初期のウクレレ使用曲「ラム・オン」を聞きたかったなー。
*新作『エジプト・ステーション』からはやるのは1曲ぐらいかなと思っていたら、確か3曲やった。
*バンドは弦楽器系奏者2名、キーボード、ドラム。コーラスをとるときもあり、皆ちゃんとしている。また、曲によってはトロンボーン、トランペット、テナー・サックスの三管が入る場合ものあり。その管セクションは、最初フィールド内中央客席通路に出て来てきて吹いた。
*ギター奏者が、スライド・バーを使う曲がいくつも。そこに、マッカートニーのロック(・ロール)観が出ていたような。
*マッカートニーが弾いた電気ギターは派手な模様のボディのレスポール型のやつ。それを見ながら、倒産してしまい今どっかの支援で再興することが発表されているギブソン社をいっぱい稼いでいる彼が買っちゃえばいいのにと思った。マネージメント、レコード会社、スタジオ、音楽配信会社、レストランその他、いろんなことを音楽とともにやるミュージシャンは少なくないが、きっちり楽器メイカーを持っている人というのは聞かないような? どうだろ? エンドーサーとなることで満足してしまうのだろうか?
*ステージ美術は規模がでかく入場料が高い割には、それほど立派ではないと最初のほうは思っていた。だが、途中からレーザーを飛ばしたりもし、熟考しているんだろうなと思う。映画007提供曲「リヴ・アンド・レット・ダイ」での火をバンバン打ち上げるのはすごい。また「ヘルター・スケルター」の際のグラフィック処理映像にはイイなと頷く。一方、昔の写真をヴィジョンに出す場合もあったが、それはなしでもいいのでははいか。なんか回顧趣味みたいのが出て来ちゃう。黄金のエヴァーグリーン曲を作り、それを現在、おいら今の歌として歌い、観客と共有している、でいいじゃないか。
*アンコールを含めて、きっちり2時間半やる。元気だなあ。プロ。声はちゃんと出ていて、ヘロったりもしない。おおいに、感心。実は彼、水を飲むということをしなったんじゃないかな。一緒に行った人たちと、それは話題にあがった。とにもかくにも、すごい76歳なり。
*前の席がぽっかり空き(それは所々に見られた。チケットは購入したものの、これない無念の方達が相当比率でいたはずだ)、通路の横だったので、前に立つ人がいてもちゃんと座って万全にステージを見ることができたのはよかった。まあ感激で苦痛にならないのだろうが、ずっと立ちっぱなしの歳をめした方々を見て、体力あるなーと思わずにはいられず。
*途中で喉がどーにも乾き、ビールのお代わりを買いに行ったが、20時10分ですでに売店のシャターが降りていた。なぜ? 野球のときはそんなことないでしょ?

▶︎過去の、エアロスミス
http://43142.diarynote.jp/201112041056176581/
 
<今日の、いろいろな落差>
 昨日早朝から今日の夕方まで、泊まりがけで母親のお供を粛々とこなす。ハラをくくって親孝行。夕方東京駅につき、その後にドーム。まず、それまでとの環境の隔たりを覚えていたら、その後にもっと感じてしまう。公演後、後楽園敷地内でおやじィな中華飲食。そして、JRで帰路につき、代々木で山手線に乗り換えたら、車内の客層が全然違う。23時なのにはハロウィーンの仮装をしている若年層が目につき、23時なのに、彼女たちはぼくと同様に渋谷で降りる。渋谷のホームには逆に帰宅するだろう仮装の若者がたくさん。盛り上がっているんだなー。さて、ぼくはこのまま素直に帰宅したでしょうか? それとも、渋谷の光の中にきえたのでしょうか?

 出演者が口笛を吹いたショウを、続けて二つ見る。港区16時半、江東区19時。

 六本木・ビルボードライブ(ファースト・ショウ)で見たのは、昨年のカーラ・トーマス公演のメンフィス・ソウル系名伴奏陣に大御所ギタリストを新たに加えた布陣に、フロントにはサム・クックの好フォロワーであるウィリー・ハイタワー(1940年、アラバマ州生まれ)が立つという設定の実演。ギターのスティーブ・クロッパー (2008年11月24日、2009年7月14日、2009年7月25日、2012年5月11日、2017年6月5日 )、オルガンのチャールズ・ホッジズ(2018年7月30日 )、ベースのリロイ・ホッジズ (2018年7月30日 )、ドラムのスティーヴ・ポッツ(2012年3月9日、2012年5月11日、2018年7月30日 、他)、トランペットのルイス・バジェ(2018年7月30日)、テナー・サックスのアンディー・ウルフ(2012年3月24日、2016年11月10日、2017年3月20日)というのが演奏する人々。

 クロッパー御大は演奏だけするのかと思ったら、アタマの2曲はなんと「イン・ザ・ミッドナイトアワー」(ウィルソン・ピケット)と「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」(オーティス・レディング)というスタックス/アトランティックの大ヒット曲を自ら歌う。自分が曲作りに関わった曲ですね。ぼくはクロッパーがライヴの場でちゃんとリード・ヴォーカルを取るのに触れるのは初めてのような気もするが。そりゃ上手ではないものの声量はブッカーT・ジョーンズ(2007年7月18日、2008年11月24日、2009年7月25日、2010年2月8日 、2011年9月12日、2012年5月11日、2013年10月29日、2017年4月13日)よりあるし、触れていやなものではない。で、「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」の中程でオリジナル同様に、クロッパーは口笛を入れ、客にも一緒にやることを促す。

 その後、長めの前説演奏のあとに、真っ赤なジャケットを着たウィリー・ハイタワーが出てくる。このバンドのもと歌う必然性は彼が50年近く前にフェイム・スタジオで録音したことがあったから。長いブランクを経て唐突にリリースされた新作『アウト・オブ・ザ・ブルー』(エイス)は好盤だったが、フェイム時代の古い曲もまじえて、じっくりとソウル歌唱の妙美をアピール。MCも実に堂にいっていて、にっこり。人間性もよさそうだったナ

 最後の曲は、サム(・ムーア、2006年11月14日、2008年8月31日、2010年12月15日、2011年7月27日、2015年12月2日)&デイヴの「ソウル・マン」。このスタックス最大級の有名曲はアイザック・ヘイズ(2007年7月18日)とデイヴィッド・ポーターが作った曲だが、オリジナルのあの印象的なギター演奏はクロッパーによる。あのイントロや途中のキューンというフレイズなどを悠々と繰り出し、このときだけ彼のギター演奏が2倍うまくなったような気がした。そういえば、前半部における日本で雇われた二人の外国人管楽器奏者の音はバラバラだった。でも、終盤はまとまってきたので、この後は聞けるようになるのではないか。

▶過去の、スティーヴ・クロッパー
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/200907161729269209/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
▶過去の、ブッカー・T・ジョーンズ
https://43142.diarynote.jp/200707232251010000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/201002090914248826/
http://43142.diarynote.jp/201109151819433479/
http://43142.diarynote.jp/201310301217408539/
http://43142.diarynote.jp/201704161228187684/
▶︎過去の、チャールズ・ホッジス
http://43142.diarynote.jp/201807311020598905/
▶︎過去の、リロイ・ホッジズ
http://43142.diarynote.jp/201807311020598905/
▶︎過去の、スティーヴ・ポッツ
http://43142.diarynote.jp/201203100844041105/
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/
http://43142.diarynote.jp/201807311020598905/
▶︎過去の、ルイス・バジェ
http://43142.diarynote.jp/201807311020598905/
▶︎過去の、アンディ・ウルフ
http://43142.diarynote.jp/201203260807415637/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161110
http://43142.diarynote.jp/201703211232135720/
http://43142.diarynote.jp/201807311020598905/
▶︎過去の、アイザック・ヘイズ 
https://43142.diarynote.jp/200707232251010000/
▶過去の、サム・ムーア
http://43142.diarynote.jp/200611190319380000/
http://43142.diarynote.jp/201012160928249431/
http://43142.diarynote.jp/201107310730365740/
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/201512030957287514/

 その後、亀戸駅(公演後、初亀戸飲み!)のすぐそばにある亀戸文化センター・カメリアホールで7弦ギターを弾くブラジル人奏者のヤマンドゥ・コスタ(2017年2月4日)を見る。彼は10年以上前から何度も日本に来ているようだが、ぼくは昨年初めて彼のことを見て、ブっとんだ。譜面台などおかず、奔放に(やる曲はいきあたりばったりであるよう)かつ繊細に、ギターに様々な表情や人格を与える。というわけで、今回も素晴らしかったのだが、新たに気づいたことを箇条書きにする。

+太った。水分補給も頻繁にしていた。
+詠唱パートは増えた。一部、超技巧を持つシンガー・ソングライターみたいな曲まであった。でも、歌の手触りも良い。
+歌うだけでなく、口笛も吹く場合も今回はあり。歌にせよ口笛にせよ、たまらず出しちゃうという風情は本当にマル。
+けっこう曲ごとにチューニングをしたり変えたりしていたが、神経質な感じはなく、生理的にラフにスパとやっていたのもよろし。
+ショーロをはじめとするブラジル音楽とともに、他の南米フォークロアからインスピレーションをいろいろ受けている。
+同じギターをずっと弾いているのに、音色がとおっても多彩。
+入場時にもらったチラシ群にはクラシック・ギター奏者の公演のそれがいくつも。いっぱい、その手の公演もあるんだな。

▶︎過去の、ヤマンドウ・コスタ
http://43142.diarynote.jp/201702081153548285/

<この24日、二つの訃報>
 一人は、ギター奏者のワー・ワー・ワトソン(2005年8月21日)。本名は、メルヴィン・レイギン。1950年12月8日ヴァージニア州生まれ、2018年10月24日カリフォルニア州で死去。67歳とは若いなあ、たたき上げで、若くして活躍していたんだなー。モータウンの演奏スタッフが彼の出発点であり、彼の唯一のリーダー作『エレメンツ』(コロムビア、1976年)の昨年出た再発盤のライナー・ノーツはぼくが書いているはずだが、ぼくにとってのワトソン演奏というと真っ先に頭にあがるのが、ハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日、2018年9月1日)のライヴ盤『V.S.O.P.』(コロムビア、1977年)収録の「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」。彼の刻み(ワー・ワー・ペダルは使っていないけれど)から始まるそれはキング・カーティス&ザ・キングピンズの「メンフィス・ソウル・シチュー」のライヴ・ヴァージョン(アトランティック1971年盤『ライヴ・アット・フィルモア・ウェスト』収録)の洒落たっぷりの流用で、最高に格好いい。最初に、ハンコックによるワトソンのメンバー紹介から始まる曲だしね。なお、『エレメンツ』のプロデュースはベイ・エリアの超顔役制作者だった故デイヴィッド・ルビンソン(2016年11月12日参照)。彼はコロムビア1970年代ハンコック表現の最たる立役者でもあったわけだが、やはり彼が制作したハンコック『シークレッツ』(コロムビア、1976年)でワトソンは起用され、それが『エレメンツ』のレコーディングに繋がったと思われる。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=159&v=yRuLc2d5x5g カーティス「メンフィス・ソウル・シチュー」
https://www.youtube.com/watch?v=VErtzRe98Ic&index=1&list=RDVErtzRe98Ic ハンコック「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」
▶︎過去の、ワー・ワー・ワトソン
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903
http://43142.diarynote.jp/201809051532324111/
▶︎過去の、デイヴィッド・ルビンソンが出てくる映画
http://43142.diarynote.jp/201611121006546827/

 そして、スワンプ・ロッカー/渋味シンガー・ソングライターのトニー・ジョー・ホワイト(2007年4月6日)。75 歳で、心臓発作のためテネシー州の自宅で亡くなった。活動はバリバリしていたはず。オーストラリアのフェスで、彼の実演に接せたのは本当によかった。彼がワーナー・ブラザースに移籍して出した1970年代初期2作はメンフィス・ホーンズ(先に触れた「メンフィス・ソウル・シチュー」にも入っている)とフェイム・スタジオ付きのザ・スワンパーズ(2014年6月26日、参照)がそれぞれに音をつけていた。ぼくが気持ちよく思えたスワンプ・ロックの感覚は良質な南部ソウル感覚を介する部分もあったのかもしれない。ガキのころはロックばっかで、そんなにソウルは聞いていなかったからなー。
▶過去の、︎トニー・ジョー・ホワイト
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶︎過去の、ザ・スワンパーズが出てくる映画
http://43142.diarynote.jp/201406270933515875/

海青( Hai Qing)

2018年10月24日 音楽
 上海と北京に拠点を置くというモンゴル出身のハイ・クィン率いるソロ・プロジェクトのバンドを、青山・月見る君想フで見る。ただいま、日本ツアー中だ。

 バンドはギターを弾きながら歌うリーダーの海青に加え、エフェクターもいろいろ使うギターの李星(長髪)、ドラムの鄧博宇、アルト・サックス/横笛(フルートほどの大きさながら木製のように見えた)の老丹5弦エレクトリック・ベースの杜平(ベース)という編成で、インスト部も長いギター主体ロックを聞かせる。長尺の曲は10分ぐらいあったのではないか。歌詞は非英語、モンゴル語か中国語系なのかな。

 ものすご〜く大雑把に言うなら、我々ならではプログ・ロックをやろうとしているとなるか。一部、キング・クリムゾンのフレイズを入れたような曲もあったしね。でもプログ・ロックの担い手が持ちがちな俺たち美意識に長けているでしょ的阿呆さが皆無で、なんか彼らはゴリゴリ感があるのがポイント。それ、リーダーのモンゴル属性が跳ね返ったものかどうかは判断しかねるが。そうなのかな? 曲によっては、彼らなりのブギー(・ロック)をやっていると思わせる曲もあった。

 それから、どこか不条理的なコード使いをもっているのもポイントで、ぼくはかつて大好きだった突然段ボールを思い出す局面もあり。

<今日の、残念!>
 メイン・アクトの出演時間に合わせて会場に行ったのだが、今日ここに最初に出たのは、ぼくの大好きなドラマーの山本淳平が叩くロック・バンド、LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS(2016年10月5日、http://43142.diarynote.jp/201610120805451037/ の最後のほう参照のこと)ではないか。見たかった!
▶過去の、山本淳平/nouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
http://43142.diarynote.jp/201702211431013289/
http://43142.diarynote.jp/201708240028435013/
http://43142.diarynote.jp/201806081020157759/

アート・リンゼイ

2018年10月23日 音楽
 米国→ブラジル(高校まで)→米国→ブラジル(ここ10年ちょいぐらい? )という移動をしている個性派シンガー/ギタリストであるアート・リンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2015年6月9日、2016年9月1日、2017年6月23日、2018年10月21日)のグループ公演を、南青山・ブルーノート東京で見る。セカンド・ショウ。彼、今年はカシン(2001年5月18日日、2006年6月27日、2007年7月25日)、そしてドメニコ(2001年5月18日、2006年6月27日、2007年7月25日)がらみのアルバムに翻訳者としてクレジットされていますね。

 同じ名前の人が多そうで大変だろうなと思ってしまうキーボードのポール・ウィルソン(2016年11月10日、2014年10月26日、2017年6月23日、2018年10月21日)、旧ロリンズ・バンドからブランドン・ロス(2004年9月7日、2005年6月8日、2005年6月9日、2006年9月2日、2011年5月5日、2011年12月8日、2011年12月14日)のハリエット・タブマンまでに関わるベースのメルヴィン・ギブス(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2014年10月26日、2017年6月23日)、ヴィジェイ・アイヤー(2014年6月17日、2014年6月19日、2014年6月20日)やヨーコ・オノらのアルバムに名が見られるドラムのカッサ・オーヴァーオール(2017年6月23日)という、昨年の来日時に同行していた奏者たちがサポートをする。

 やっぱ、バンドはいいな。昨日の片肺のパフォーマンスを見た後だと、そう思わずにはいられないパフォーマンス。強弱や情報量が有機的にして、豊富。特にウィルソンの隙間をいかしつつ立ちも有するドラミングにはほうっ。彼、一部パッドも併用していたがプログラムも得意なんだよね。また今回、キーボードのウィルソンも秀でたセンスをもっているナと思わせる。基本重心を支えることに専念するギブス(ぜんぜん、老けないなあ)だが、今回は1曲ディストーションをかけた音色でギター・ソロ的なのをとった。で、アートは歌が堂々としてきたと思わせる。昨日と異なる12弦ギターを弾いていたような。それを無調律にてパーカッシヴに弾くわけだが、やはり長年やってきているだけあって、いろんな確固たるパターンが本人のなかにできていると思わせるものだった。

▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
▶︎過去の、カシン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm モレーノ+2
http://43142.diarynote.jp/200607041834300000/
http://43142.diarynote.jp/200708051738450000/
▶︎過去の、ドメニコ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm モレーノ+2
http://43142.diarynote.jp/200607041834300000/
http://43142.diarynote.jp/200708051738450000/
▶過去の、メウヴィン・ギブス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
▶過去の、ブランドン・ロス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040907
http://43142.diarynote.jp/200506120643190000/
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/200609031313220000/
http://43142.diarynote.jp/?month=201105
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201112201158055043/
▶︎過去の、ポール・ウィルソン
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
▶︎過去の、カッサ・オーヴァーオール
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
▶過去の、ヴォジェイ・アイヤー
http://43142.diarynote.jp/201406180853065508/
http://43142.diarynote.jp/201406201008164250/
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
▶︎過去の、オノ・ヨーコ
http://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
http://43142.diarynote.jp/201105282358273180/ ショーンの言及
▶過去の、ブランドン・ロス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040907
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http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/200609031313220000/
http://43142.diarynote.jp/?month=201105
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201112201158055043/

<今日の、スパム>
 家に帰ると、とっても軽〜い新聞社の専門編集委員から、ぼくの名義で変なメールが届いているよーんと、そのメールを転送してきていた。ありゃあ? そういうの弱く、酔っ払ってもいたので少し慌てる。あわわ。ぼくが使っているdionではなく、calvaryoakhillというプロヴァイダーのもの。それだったら、無視して、すててくださいー。

 恵比寿・ガーデンプレイス。二日目。いろんな人と会って、本当に楽しい。その酒付き交流の合間にライヴを見るという感じにもなってしまったりもするが、ふれたものを列挙します。

+デレブ・ザ・アンバサダー(2013年9月7日 )。
 エチオピア出身のシンガーであるデレブ・ダサレンをフロントに置く、オーストラリアのエチオ歌謡ジャズ・ファンク・バンド。バンドは有色人比率が増している。とっても確かに、固有の癖や味とインターナショナルな働きかけを持つ表現を彼らは送り出す。その後、知人と立ち話をしていたら、イケメンの黒人がやあやあと話しかけてくる。ん? ありゃ、デレブさんというじゃないか。で、5年前にあんないいインタヴューしてもらったら、髪型が変わろうとキミこと忘れるわけがないじゃないかと言う。冥利につきます。
▶︎過去の、デレブ・ザ・アンバサダー
http://43142.diarynote.jp/201309161507226186/

+Ky=仲野麻紀 with ヤン・ピタール(2018年7月7日) 。
 フランスを拠点におく女性リード(アルト・サックとクラリネット)奏者とエレクトリック・ギター/ウード奏者のデュオ。二人は、パリ市立音楽院ジャズ科の同級生で、2005年から一緒に活動をしていて、アルバムも出している。この秋にはそれらをソースとする中野麻紀名義の『アンソロジー vol.1~月の裏側~』(プランクトン)をリリース。今年2度目の来日パフォーマンスとなり、中東、サティ曲、日本民謡、オリジナルなどいろんな属性を持つ曲をけっこう中野の歌も入れてやるのは前回と同様だが、また違う印象を得たかも。さすが、音楽は生き物ですね。どこにでも自らの足/個で自在にいけるしなやかさや快活さがよりアピールされていたと思う。サティ曲のソロ・パートではジョン・コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」をマッシュ・アップ。ああ、彼女たちは“ジャズのイバラ道”を経た末に今の好奇心旺盛な地平を得ていると思わせるのが良かった。
▶︎過去の、仲野麻紀 with ヤン・ピタール
http://43142.diarynote.jp/201807080932266789/

+勝井祐二(2000年7月29日、2000年9月14日、2002年9月7日、2002年9月14日、2003年3月6日、2003年7月29日、2004年1月16日、2004年5月28日、2004年5月31日、2004年6月2日、2004年6月3日、2004年11月19日、2005年2月15日、2005年2月19日。2005年4月11日。2005年10月30日、2006年5月30日、2006年7月7日、2006年8月27日,2006年12月3日,2006年12月28日、2007年6月29日、2008年1月30日、2008年2月18日、2012年12月23日、2013年1月7日、2013年2月11日、2013年6月6日、2014年7月8日、2014年12月26日、2017年11月12日、他)× U-ZHAAN(2013年6月19日、2013年8月7日、2014年7月8日) 。
 なんどもやっているだろう単位でのパフォーマンスで、勝井はエレクトリック・バイオリン、U-ZHAAN(2013年6月19日、2013年8月7日、2014年7月8日)はいろいろなタブラを並べる。通ってきた道は異なってきているはずだが、生理的にとっても合点のいく合同演奏を自由に繰り広げる。マインドのあり方や興味の持ち方が重なるからではないかと傾聴した。
▶過去の、勝井/ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/
http://43142.diarynote.jp/200406080043380000/
http://43142.diarynote.jp/200406100011020000/
http://43142.diarynote.jp/200406111859060000/
http://43142.diarynote.jp/200411231717590000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050215
http://43142.diarynote.jp/?day=20050219
http://43142.diarynote.jp/200511130013450000/
http://43142.diarynote.jp/200606071931300000/
http://43142.diarynote.jp/200607100307170000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060827
http://43142.diarynote.jp/200612060136540000/
http://43142.diarynote.jp/200612291257400000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070629
http://43142.diarynote.jp/200802051634040000/
http://43142.diarynote.jp/200802212248350000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121223
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130211
http://43142.diarynote.jp/201306111556299464/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
http://43142.diarynote.jp/201711130924085796/
▶過去の、U-zhaan
http://43142.diarynote.jp/201306241437513041/
http://43142.diarynote.jp/201308110827534904/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/

+ノーム・ピケルニー & スチュアート・ダンカン
 パンチ・ブラザーズ(2016年8月4日)のバンジョー奏者のノーム・ピケルニーとラウンダーやシュガーヒルからたくさんのアルバムを出しているザ・ナッシュヴィル・ヴルーグラス・バンド(今は活動をやめているのかな)のフィドル奏者であるスチュアート・ダンカンによるデュオ。米国外、プレミア公演。二人並ぶと、ピルケニーはおぼっちゃまくん的容姿がひかる? 名人芸はアートに通ず、そんな内容のパフォーマンス。
▶︎過去の、パンチ・ブラザース/ノーム・ピケルニー
http://43142.diarynote.jp/201608100931466329/

+アート・リンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2015年6月9日、2016年9月1日、2017年6月23日、2018年10月21日)+ポール・ウィルソンポール・ウィルソン(キーボード(2016年11月10日、2014年10月26日、2017年6月23日)。
 あれ、個人的は少しがっかり。最後のほうに小ステージに出演が決まったスペシャルな出し物だが、アート・リンゼーのみの名前が記されていて、ぼくは完全にソロで“馬鹿”ギター演奏を狼藉するんじゃないと期待したのだ。甦れ、1980年代みたいな。そしたら、ちゃんと曲骨格/ビートを出す鍵盤奏者もつき、通常公演の簡素版をやるみたいなパフォーマンスを披露。この日だけアートを見る人なら興味深くもグっと引きこまれるものであったに違いない。でも、ぼくは明後日にバンドによる正規公演を見るので、途中で中ホールに少し降りちゃう。
▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
▶︎過去の、ポール・ウィルソン
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/

+濱口祐自(2014年4月11日、2015年10月25日、2017年10月22日)。
 毎年出ている勝浦の傑物ギタリストのソロも少し見る。スライドを用いたブルージィなものだけでなく、素直にギターをつまびきながら訥々と歌うフォーク調の曲もやっていた。
▶過去の、濱口祐自
http://43142.diarynote.jp/201404141032338019/
http://43142.diarynote.jp/201510290731105395/
http://43142.diarynote.jp/201710240958114009/

+ジョン・クリアリー(2007年4月6日、2008年10月15日、2009年9月5日、2013年5月20日、2013年10月14日、2014年10月25日、2018年10月20日)トリオ・ウィズ・ナイジェル・ホール(2017年3月22日)。
 この晩のNOLA在住の鍵盤奏者の実演はリズム・セクションがついた自己トリオに加え、NY在住なはずのアフリカ系キーボード奏者もくわえてのもの。濃くもジュージーなサウンド設定のもと、ニューオーリンズの様々な機微を吸ったビート・ポップが湧き上がる。驚いたのは、鍵盤をホールにまかせ、クリアリーがギター弾きながら歌う局面もあったこと。なんにせよ、正しいヴェクトルを抱えるライヴ・ミュージックがありました。
▶過去の、ジョン・クリアリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20070406
http://43142.diarynote.jp/200810170628196746/
http://43142.diarynote.jp/200909120648439512/
http://43142.diarynote.jp/201305260926059486/
http://43142.diarynote.jp/201310150811404538/
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/
http://43142.diarynote.jp/201810211009327305/
▶︎過去の、レタス/ナイジェル・ホール
http://43142.diarynote.jp/201703231027039040/

<今日の、予感>
 秋晴れ。会場に向かうなかTシャツ1枚の人もいる。ぼくはと言えばシャツ2枚にライトなコート。さすが、室内では少し暑いかなと思う部分もあったものの、ぼくにはそれでまあちょうど良かった。日が暮れると寒さも感じるし。なんかそんなこんなで、(暑がりにして〜でも冷房には弱い)寒がりではあるのだが、今年の冬は寒さにひいいいとなりそうだなと思ってしました。ところで、タイムテーブルに“pb”というのがありアーティスト説明もなく、なんのこっちゃと思っていたら、ピーター・バラカンのDJタイムのことだった。ぼくは過去触れたことがないが、毎年やっているという。1曲ごとにコメントをはさみつつ米国黒人音楽の歩みを40年代まで追うみたいな、故中村とうようさんの紹介功績に負うものをかけていた。
▶︎過去の、中村とうよう展
http://43142.diarynote.jp/201508121207182086/
 今年で、5年目となるのか。いい感じで、続いているナ。恵比寿・ガーデンプレイス。大小3つのステージにて、様々な出し物がもたれる。うち、中規模会場となるガーデン・ルームでのライヴは座って演奏する人だと後方から(前方は椅子席。真ん中より後ろはスタンディング)だと出演者がまったく見えない。これは、なんとか改善してほしいところ。1日目、昨年より人が多いかもと、知人と話し合った。

+フルック(2001年12月11日、2016年5月14日)。
 北アイルランドとイングランドの出身者からなるトラッドのグループ。よく見えなかったので詳細はわからないが、変わらない4人でやっていたのかな。アコースティックな清らかさのなか、洒脱とユーモアがあふれていた。
▶︎過去の、フルック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201605240830291122/

+高田漣(2007年1月27日、2007年11月27日、2009年10月31日、2014年10月25日)。
 米国土着系弦楽器の名手は4人組のバンドにて出演。1曲目のドラマーの伊藤大地(2013年2月5日、2013年9月20日、2015年7月27日) の入り方がすごい格好良かった。ベーシストは縦も弾く。アーシーで渋味のアメリカン・ミュージックを日本語にて歌う路線はオヤジにはとてもわかりやすい。これで高田の歌がもう少し味わい深いものであれば。サイド・ギタリストがマンドリンを引く場合は、ザ・バンドぽくなる場合もあった。
▶︎過去の、高田漣
http://43142.diarynote.jp/200702010112550000/
http://43142.diarynote.jp/200711290932200000/
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/ 細野

+中村まり(2012年6月14日、2014年6月2日、2014年8月16日)。
 アコースティック・ギターやバンジョーの弾き語りをするが、この人はもう化け物と思ってしまうところがあった。英語によるオリジナルにせよ、アメリカ渋味楽曲カヴァーにせよ、もう完璧。なぜそんな秀でたフィーリングを抱え、非の打ち所のない歌技法/声質で歌える? パフォーマンスしている姿が見えないこともあり後半は外に出て知人と談笑タイムにしてしまったが、最後に高田漣が出てきて、高田渡の曲をやったりもしたそう。その際の中村の日本語歌唱がまた良かったと、の報告を知人から受けた。
▶過去の、中村まり
http://43142.diarynote.jp/201206181341313130/
http://43142.diarynote.jp/201406110834215934/
http://43142.diarynote.jp/201408180925374091/

+ガリカイ・ティリコティ
 ジンバブエのンビラ(親指ピアノ)奏者/シンガーのライヴは、他のアフリカ人や日本人たち(二人づつだったよな?)をともない、和気藹々と繰り広げる。野生を根っこに置く綺麗な楽器音の重なりや躍動の妙味感を率直にアピールしていた。

+ジョン・クリアリー(2007年4月6日、2008年10月15日、2009年9月5日、2013年5月20日、2013年10月14日、2014年10月25日)。
 長年ニューオーリンズに住む、英国人ピアニスト/シンガーのこの日のパフォーマンスは、ピアノ弾き語りにて。堂々。おお、歌がうまくなっていない? いろんな曲を、悠々と滋味に満ち披露。そして、英国人という属性も正に働くのかもしれないが、ニューオーリンズ音楽をはじめとする豊穣なアメリカン・ミュージック群を俯瞰しているという美味しさも出ていた。とともに、彼のもう一つの持ち味である洒脱なシティ・ポッパーみたいな側面もより効果的に浮き立つ場面もあった。
▶過去の、ジョン・クリアリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20070406
http://43142.diarynote.jp/200810170628196746/
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http://43142.diarynote.jp/201305260926059486/
http://43142.diarynote.jp/201310150811404538/
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/

+ザイドファンク feat.ブランドン“タズ”ニードラウアー
 ルイジアナ州出身のベーシストであるチャーリー・ウートンのトリオ・バンドに、15 歳というギター奏者のブランドン“タズ”ニードラウアーが加わった出し物。ウートンはシリル・ネヴィル(2004年9月18日、2008年8月12日、010年3月29日)やデュエイン・オールマンの息子であるデヴォン・オールマンらが組んでいるロイヤル・サザーン・ブラザーフッドの構成員でもありますね。そのバンド名はザディコとファンクをくっつけたもののようだが、もうバンド音がムキムキ。ぼくが想像していたよりロックぽくもあり、ザ・オールマン・ブラザース・バンドの「ランブラリン・マン」みたいな曲を肉感的にやっているという印象も得た。見た者は、米国のライヴ・サーキットで鍛えられるバンドは強いと思わずにはいられないか。
▶︎過去の、シリル・ネヴィル
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
https://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
http://43142.diarynote.jp/201004080749482839/

<今日の、息抜き>
 恵比寿駅から会場に向かう動く歩道に、執拗にこの18日にガーデンプレイス向かいにできた電気屋さんの広告がディスプレイされている。ノジマ。電気量販店という認知はあるものの、ぼくの行動範囲のなかにその店舗はない。知人とライヴの合間に行ってのぞいたら、前はTSUTAYAのレンタル・ヴィデオ店があったところ。で、電気量販店としては広くはない規模の場所に、<プレミアム・セレクション>という店舗ネーミングのもとショーケース的にいろんな家電が並べられていた。へえ、こんなのあるんだとかなにげに楽しく時間をつぶさせてもらったが、いまいち出店意図はわからず。来年秋、まだあるだろうか?

PJモートン

2018年10月19日 音楽
 身も心も弾み、とろけた晩。最高じゃあないか。

 2012年以降はマルーン5(2011年5月16日)のメンバーでもある、ニューオーリンズ生まれ(その新作ソロ・アルバムのタイトルは『ガンボ』! 前作である2013年作はそれこそ『New Orleans』。同地特有のセカンド・ライン〜ファンク・ビートを用いる人ではないが、ニューオーリンズ生まれであることに多大な自負を持っているのは間違いない)のアフリカ系シンガー・ソングライターのパフォーマンスを南青山・ブルーノート東京で見る。ファースト・ショウ。

 フェンダーのローズとヴィンテージのアナログ・シンセサイザー、そしてヤマハのモティーフ(2曲だけ弾いた。こちらの方がピアノ音色に近づけていた)を弾きながらしなやかに、弾力に満ちつつ歌う。すると、円満にして豊穣なソウルネスが場内に満ちる。バンド構成員はシェマイア・ターナー(ギター)、ブライアン・コッケルハム(ベース。半分は鍵盤を用いた)、エド・クラーク(ドラム)、シェーナ・ベリーとジャキヤ・ウィリアムズ(バックヴォーカル)。皆、アフリカ系の人たちなり。

 実は彼、かなり鍵盤さばきが達者と思えたが、ついていたバンド・メンバーたちの力量もマル。確かな技量とともにモートンの所作を十全に感知し、それに呼応しつつ伸縮性に長けた演奏をしているのがわかる。また、各奏者の楽器音が良いのも特筆もの。女性コーラスも声の重なりがとってもよく、さすが二人はアモーレスというユニットを組んでいるのにも納得した。

 2000年代中期以降リーダー作を出してきているが、スタジオ録音作は基本オリジナル曲で占められており、彼は自作曲には自信を持っているはず。だが、2008年ライヴ盤『Live from LA』盤ではE.W.&F. (2006年1月19日、2012年5月17 日、2016年9月17日)「キャント・ハイド・ラヴ」ら他人曲も嬉々としてちょい出ししてもいたが、ボブ・マーリー「イズ・ディス・ラヴ」をはじめ、そのノリはこの晩も同じ。また、スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)がゲスト入りした前作曲「オンリー・ラヴ」や今作収録のザ・ビージーズ「ハウ・ディープ・イズ・ラヴ」のカヴァーなども十全に長尺にて披露する。他人曲も鷹揚に扱うことによる音楽をやる楽しさの発露というのは、R&Bだと一番アピールされるなあ。

 とちゅう、スライ・ストーン(2008年8月31日、2008年9月2日、2010年1月20日)みたいなファンク感覚を出す場面もあり、最後の2曲は鍵盤弾き語り主体。それぞれに女性コーラスとベースだけが寄り添ったが、そのさいバンド員は手持ち無沙汰な感じをださず、ニコニコ見守った。

 現代的メロウネスを湛える、今年トップ級のR&B公演であることをまったく疑いません。

▶︎過去の、マルーン5
http://43142.diarynote.jp/201105170923444580/
▶過去の、E.W.&.F.
http://43142.diarynote.jp/200601271855390000/
http://43142.diarynote.jp/201205301252113538/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、スライ・ストーン
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/200809071428140000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
http://43142.diarynote.jp/201505201630381899/ 映画

<今日の、想起>
 「オンリー・ラヴ」をやっている際、モートンはジャクソン5の「アイ・ウォント・ユー・バック」もちらりとインサートさせる。話は変わるが、夏場に話題になった日本映画に「カメラを止めるな!」がある。このブログには書いてないが、ぼくも見に行った。なるほど、頑張って作られた、面白い映画だと思う。でも、音楽は褒められたものではないとぼくは思った。劇中音楽は、チープで紋切り型。低予算だからしょうがないという言い方もされるのだろうが、エンド・ロールでかかるあの日本語曲はなんなのだ。曲調もアレンジも「アイ・ウォント・ユー・バック」の厚顔無恥なパクリじゃん(もし、ちゃんと原曲作者の名もクレジットされているのなら、ごめんなさい)。ぼくは思わず、貧すれば鈍する、という言葉を思い浮かべてしまった。

 渋谷・映画美学校試写室で、津軽三味線の大御所偉人である高橋竹山の人生や残したものと津軽の風土を重ねるドキュメンタリー映画を見る。監督、制作、撮影、編集は大西功一。試写の最終日ながら、受付に本人がいて気さくに接していて驚く。彼の上映前の挨拶は思慮深くも、溌剌としていた。宮古島のトラッド音楽をテーマにおいた、「スケッチ・オブ・ミャーク」に続く映画のよう。

 高橋竹山(1910年〜1998年)、そして彼に代表される津軽三味線。一切興味を持ったことがないはずなのに、それらはくっきりと思い浮かべることができる。それなりにエスタブリッシュされ、小僧のころにTVでなにげに触れていたからだと思う。実際、出てくる御大とその音楽はぼくのイメージとそれほど乖離していなかった。ではあったものの、いろんな音楽に触れ、かつての“和”アレルギーがなくなったぼくには、それはとっても興味深い表現である。

 過去の高橋竹山の映像もいろいろ使われており、それは彼がちゃんと認められていた証左になるだろう。とはいえ、津軽という場や高橋竹山の歩みを語られると、いかに高橋竹山が苦労したかは察するにあまりある。かつて津軽地方で盲目の場合、男性は差別の対象となる旅の流し三味線奏者となり、女性の場合はイタコとなるのを初めて知った。彼は多大な困難を受けつつ(生きるために、彼は尺八は独学で吹いた)、88 歳まで生きたのはなりより。

 高橋竹山や津軽を写す新旧の映像や写真があり、彼の縁者や弟子たちのいろんな映像が出てきて、それが効果的に噛み合わされる。と、それはドキュメンタリー作の常道ではあるのだが、対象がまったくぼくと繋がりがないものでありつつ、かなり興味を持てるものなので、うんうんと見てしまう。

 2代目・高橋竹山が女性であるというのも初めて知ったが(昔、ロック好きでしたと言われたら信じそうな感じの人ですね)、彼女が先代ゆかりの地を回るロード・ムーヴィ的なパートもあり、それにより津軽三味線/民謡が決して閉じられたものではないことを示唆できているのではないか。

 初代にせよ、2代目にせよ、けっこう海外公演もやっているはずだが、それについてはふれられてはいない。だが、本映画の求めるところは日本における地方の地縁や風習や文化の数奇な形而上をさし示すことであり、それらが日本においてどう他所/他者とつながりを持ったかということであろうから、間口を広げないのは正解か。いろんな地方がある日本という国、その人々の生活についていろいろ考えちゃうようなあ。

 高橋竹山が本当に善人でユーモアのあった人であったと、所縁の方々は語る。映画を見ていて、さもありなんと思う。そして、私見だが、出てくる人たちがけっこうサバけていて、いい感じ。悪い意味での辺境感がなく、ユニバーサルであるともぼくは思ってしまった。映画は11月10日より、ユーロスペースほかで公開される。

 夜は六本木・Super Deluxeで、スイス人アクトが中心となる“Match of Fuse”という出し物を見る。2日間あるうちの初日で、Art of Soloと副題されているように、3人の出演者がそれぞれにソロでパフォーマンス。するだけでなく、ちゃんとそれぞれに“この日、この時”と言えるような演奏をしていて、主催者側が丁寧にこの催しの趣旨を説明していたのだなと了解した。

 1番目は、近3枚のリーダー作をECMからリリースしている1980年生まれスイス人ピアニストのコリン・ヴァロン。先日はピットインでアルバム流れのトリオ公演をやったはずだが、この晩のパフォーマンスは大雑把に言えば静謐傾向にあるECM盤とまったく繋がらないものでほうっとなった。妙なエフェクト音に変換したフェンダー・ローズとアップライト・ピアノ(弦弾きもあり)をパートに分けてつらつらと弾く。一言で説明すれば過剰にして、おぼろげに酔狂。歪は美にあり、かような彼なりの定理を素直に露にしていたとも言いたくなるか。エレクトリック・ピアノ演奏部の終盤は、ザ・ビートルズの「アクロス・ザ・ユニヴァース」の“Nothing’s gonna change my world”という歌詞部分のメロディを臨機応変にデフォルメしながら執拗に反復させる。なんか、鍵盤に向かう彼の業の深さをあっさりと外に出していたな。ピアノ演奏の一部はなぜかチリー・ゴンザレス(2018年8月15日)の回路を思い出させたりもした。

▶︎過去の、チリー・ゴンザレスの映画
http://43142.diarynote.jp/201808160646059913/

 次は、石橋英子(2001年9月22日、2008年1月30日、2010年4月15日、2011年1月8日、2013年5月24日、2013年4月21日、2015年4月9日)。いろいろエフェクターをおいたコーグのキーボードは最初のうちはオルガン音色。それをサンプリングして音の波を作り、音色も変わっていく。最初のパートは淡いインダストリアル調ビートを下敷きにおいた。二つ目のパートはフルートを弾き、同様のやり方でそのうちフルートの音はオーボエみたいになったりもし、全体のサウンドは陰険なものに流れていく。彼女は歌を差し込むときもあったが、けっこうショウとしての構成を練っているんだろうなあと思わせられた。

▶過去の、石橋英子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm パニック・スマイル
http://43142.diarynote.jp/?day=20080130
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201101111201402329/
http://43142.diarynote.jp/201304230829016302/
http://43142.diarynote.jp/201305280923275394/
http://43142.diarynote.jp/201504131107563912/

 3番目は、スイス人ヴァイオリニストのトビアス・プライシク(2014年10月8日、2015年9月4日)のソロ。彼もいろいろエフェクターやつまみをいじり、ヴァイオリン音をいろいろに用いる。クラシックみたいな曲もやっていた(やはり、そっちのほうの造詣は深そう)が、プログ・ロックの愛好者に一番受けそうなことをやっていたのではないか。で、世が世なら、プログ・ロックの人気バンドに誘われて、世界的に有名な存在になっちゃうような人かもなーとも思った。

▶過去の、トビアス・プライシク
http://43142.diarynote.jp/201410141140507485/

 そして、最後にはなんと3人でジャム。いわゆるジャズ的一発ものではなく、ある種のムードを3人で見据えておっとり音を重ねる。10分強、やったかな。みんな真面目というか、音楽家としての誠意をたたえた協調をしていて、オマケを超えたものがありました。

<今日の、途中下車>
 試写会とライヴの間に、ちょい原宿と渋谷の間にあるトランク・ホテルに行って和む。なんか今年はパリ市と東京の仲良し年間にあたっているそうで、週末にかけて「パリ東京文化タンデム 2018」と題し代官山/渋谷周辺でいろんなイヴェントがもたれ、そのキックオフ・パーティみたいなのがそこで開かれていた。サーヴされた食べ物のなか、見た目はサーモンなのに野菜を調理したもので驚く。ともあれ、その流れでシャソル(2015年5月30日、2016年8月29日)がまた来たりもするんだなー。この前の、FESTIVAL TANDEM(2018年9月23日、2018年9月24日)もその一環だったのかー。
▶︎過去の、シャソル
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/
http://43142.diarynote.jp/201609200921301045/
▶︎過去の、FESTIVAL TANDEM
http://43142.diarynote.jp/201809261357472982/
http://43142.diarynote.jp/201809261358593168/
 ピアノと電気ピアノのジェイムズ(2013年9月3日、2015年3月5日、2015年9月5日)、カナダ生まれの新鋭ベース奏者のマイケル・パラッツォーロ、ドラムのビリー・キルソン(2017年12月7日 )、彼のものすご〜く久しぶりとなるトリオ名義による新作『エスプレッソ』(エヴォリューション)と同じ顔ぶれによるもの。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 経験豊かな才人、様々なものを見渡した末の現代ピアノ・トリオ表現と言えるものを多大な余裕とともに送り出す。ちょっとした曲調や指さばきに、なるほどのセンスあり。もう少し弾きまくってほしいと思わせるところもなくはないが、それこそは80歳近いこの伯楽の現在の音楽観の反映なのだろう。そこここに見える才気とともにウィットや娯楽性、そして統合的な今様視点がすうっと浮かび上がる。いくつかの曲ではハーモニー音を担うシンセンセ同軌音も用い、そのさい彼はヘッドフォンをつけて演奏した。

 けっこうネイザン・イースト(2011年9月27日、2014年4月22日、2018年4月17日、2018年4月17日)と似ているかもと思わせるキルソンのドラムにはへえ〜。通常は曲調に添いメロディアスにとても繊細に叩くのだが、アップな曲やソロだととんでもなく手数が多くなり、なんとも生理的に活力ある演奏をダダダダダァと繰り出す。もう片手だけでも、両手で叩くのと変わらないんじゃないかと思わす音を出していたりして。その叩き味の引きつけ具合はジェイムズもしっかりと認知するところのようで、ほとんどの曲で彼にソロ・パートを与えていた。

 一方、今回が初来日となるほぼ無名のパラッツォーロは全面的にダブル・ベースを弾く。キルソン演奏の強弱の在りかに触れるともう少しダイナミズムを求めたくなるが、実のところジェイムズは彼のことを相当買っている。まだ旅慣れもしておらず、空港の荷物のピックアップにも手間取ってしまったりもするところも可愛いなぞと、ジェイムズは思ってしまうそうだ。久しぶりにアコースティック傾向にあるトリオ作品を録ったのはパラッツォーロと出会ったことも大きいそう。

▶過去の、ボブ・ジェイムス
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201503060912185943/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
▶︎過去の、ビリー・キルソン
http://43142.diarynote.jp/201712081715389473/

<1ヶ月前の、好々爺>
 本編が終わるとスタンディング・オヴェオションをする人もそれなりにいて、人気者だなあと思う。旧曲をやると拍手がおきたりもするしね。そんな彼がアレンジャー/フュージョン界で活動する前、25歳のときに初アルバムを出したレーベルは前衛ジャズで鳴らしたESPディスク。もちろん、内容は現代音楽要素も見ての完全なアヴァンギャルド。この前、アナログを見つけて思わず買ってしまった。そしたら、テープ音も入れていて、それはサンプリング音みたいな使い方がされていた。実は彼は話好きで、インタヴューをするととても返しが長い。この9月上旬に彼は震災以降関わりができた大船渡で演奏するために来日しており(そして、今回また来日。元気だな)、その際にインタヴューした。で、1964年デビュー作『Explosions』のことと、亡くなってしまったアリサ・フランクリンの1974年作『レット・ミー・イン・ユア・ライフ』にレコーディング参加していることも聞こうと思ったのだが、時間的にその余裕がまったくなかった。彼が組んでいるフォープレイについては大甘すぎてダメなぼくだが、そのファースト・アルバムについて今どう考えているかはそのうち聞いてみたいなあ。

ボカンテ

2018年10月10日 音楽
 スナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)を率いるマイケル・リーグのもう一つのリーダー・バンドであり、酔狂とも言える編成を持つ多国籍集団の初来日公演は、南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)。フランスのカリブ海外県であるグァトループ出身のシンガーであるマリカ・ティロリエンをフロントに立て、あとは弦楽器奏者と打楽器奏者(ただし、ドラマーは置かず)だけという編成を持つ。そこでリーグは通常持ち楽器のベースを弾かず、バリトン・ギターやウードみたいな楽器を弾く。

 そんな二人に加え、電気ギターのクリス・マックイーン(2017年4月18日)、電気ギターのボブ・ランゼッティ、ドラマーとしてエスタブリッシュされている電気ベースのルイス・ケイトー(2010年9月3日、2011年11月22日、2013年9月3日、2013年10月21日、2015年5月26日)、ロバート・ランドルフ(2003年12月10日、2009年7月24日、2012年2月28日、2012年3月5日)と同じキリスト教宗派“ハウス・オブ・ゴッド”出身のゴスペル・スティール・ギター奏者のルーズベルト・コリアー(ラップ・スティール・ギター)、パーカッションの小川慶太(2014年8月3日、2016年1月19日、2017年4月18日、2017年12月11日、2018年4月4日)、バークリー音大出身者にはおなじみというパーカッションのジェイミー・ハダド、スウェーデンのトラッド・グループのヴェーセン(2014年11月20日、2016年11月6日)のメンバーでもあるアンドレー・フェラーリ。奇抜極まりないヘア・スタイルをしたフェラーリは飛行機嫌いもあり、ヴェーセンで日本に来たのは10年前とか。彼、電気パッドも用いる“電波”系な演奏をし、なるほどカっとんだ人であるのはよくわかった。

 鍵盤楽器も管楽器も存在しない呪術的と言えなくもない躍動するバンド音に、クリオール語やフランス語による果敢なという形容もあるかもしれないマリカ・ティロリエンの歌が乗る。インスト・パートにも力が入れられ、曲ごとに楽器奏者にもソロ・パートは振られる。ぼくはその総体を聞いて野生とクリエイティヴィティを秤にかけたマイケル・リーグならではのワールド・ビート表現という印象を持っていた(『ファミリー・ディナー』シリーズにおけるサリフ・ケイタの扱いを見てもわかるように、彼はそっちの知識も持つ。ティロリエンも同シリーズで登場したのが最初)が、問えばリーグが考えるところのブルース・バンドを作りたいというのが最初の動機であったという。すると、“セイクリッド・スティール”の奏者を入れているのも合点が行くか。

 ともあれ、いろんな興味や設定、そしてそれらを音楽に移す喜びが横溢しているパフォーマンス。スナーキー・パピーの新作はすでに準備済みとのことだが、リーグにはどんどん課外活動をやってほしいなー。

▶︎過去の、スナーキー・パピー/マイケル・リーグ
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶︎過去の、クリス・マックイーン
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、ルイス・ケイトー
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201111251251201578/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201310210730403296/
http://43142.diarynote.jp/201505271549266046/
▶︎過去の、ロバート・ランドルフ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200907310050296060/
http://43142.diarynote.jp/201203061824335340/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、小川慶太
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160119
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
http://43142.diarynote.jp/201712121324481276/
http://43142.diarynote.jp/201804051207119119/
▶︎過去の、ヴェーセン
http://43142.diarynote.jp/201411211148399707/
http://43142.diarynote.jp/201611101508243962/

<昨日の、マスク嬢>
 マイケル・リーグとマリカ・ティロリエンに取材。相変わらず、マイケルはいい奴100パーセント。気立てがよさそうなティロリエンはマスクをしており、喉保護のためしゃべれないという。彼女たち、前日には六本木ヒルズで2ショウをやっている。でも彼女、ステージではちゃんと歌っていて、めでたし。というわけで、リーグは普通に話をし、ティロリエンは質問をすると手書きで答えを英語で返してくる。インタヴューで筆談となったのは初めて(か)。モントリオール在住の彼女、普段はフランス語を話しているそう。なお、ボカンテの1枚目はリーグ主宰のグラウンド・アップ発で、2作目(オランダのメトロポール・オーケストラとの共演盤)は英リアル・ワールドから。彼曰く、間口を広げすぎたので、グラウンド・アップからの物リリースを自粛するのだそう。
 対照的なジャズ位相を抱えた二つのグループを見る。ともに個性と意義、あり。ぼくは大きく頷きましたね。ちなみに、ドラマーはともにカノウプスを叩いていた。この日本メイカー、和太鼓の技術を応用していると聞いたことがあるけど、本当に大人気だな。

 まず、オランダ人リード奏者(この晩はテナーだけを吹いた)のユリ・ホニングのカルテットを見る。丸の内・コットンクラブ。1965年生まれの彼、ちょい古めだがブランドのジャケットを身につけている感じでなかなかカッコつけた感じの人なんだな。無粋で見え方に無頓着な人より、ぼくはずっとましに思う。サイドマンはECMから何枚ものリーダー作を出しているオランダ人ピアニストのヴォルフェルト・ブレデローデ(1974年生まれ)、アイスランド人ダブル・ベース奏者のGulli Gudmundsson(1971年生まれ)とオランダ人ドラマーのJoost Lijbaat (1967年生まれ)なり。

 その4人で、テーマとソロ部が表裏一体の感じで進んでいくような演奏を続ける。ハーモニー留意というか、各楽器音の層の重なりがなんとも魅惑的で耳惹かれる。結構、各人の音は生理的に鋭敏で耳優しいものではないかもしれない。だが、その楽器音の集積の流れが美しいため、楽ではないが、悠々と身を任すことができる。そして、これは米国発ではないジャズの今の有意義な一断面を教えるものだと大きく頷く。

 その後は、南青山・ブルーノート東京でキューバ人のピアニストであるアロルド・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、2016年9月3日)のトリオを見る。新ベーシストはキューバ人のガズトン・ホヤ、そしてドラマーは弟であるお馴染みのルイ・アドリアン・ロペス・ヌッサという面々。その3人はキューバ人であるがゆえ抱えるラテン音楽感性を下敷きに置く、笑顔と優しさに満ちたピアノ・トリオ表現を繰り広げる。いやはや、ジャズ技量の高さを何気にオブラートに包み広い層に向かって両手を広げるような方向を差し出す確かさたるや。同じキューバ人ピアニストのアルフレッド・ロドリゲス(2011年11月25日、2013年8月1日、2014年4月16日、2017年3月8日、2018年4月28日)もまた新作で同様の方向性にとっているが、大衆への迎合ではなく、胸を張ったジャズの楽しさ/醍醐味の開かれたアピールはここのところの現代ピアニストの動向の一つであると思う。そして、その場合、キューバ人の彼らのように育った属性を素直ににじませる場合が多い。とにかく、ロペスさん、あっぱれ。もう見終わったと、ぼくはスマイルと従属感に満たされてしまいましたよ。東京ジャズで見せた、兄と弟のピアノ連弾(昔、自宅で遊びでしていたことが元になっている)も本当にエンターテインメントとして絵になっていた。

▶︎過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
▶過去の、アルフレッド・ロドリゲス
http://43142.diarynote.jp/201111281001329390/
http://43142.diarynote.jp/201308091149599475/
http://43142.diarynote.jp/201404191143506158/
http://43142.diarynote.jp/201703111125595848/
http://43142.diarynote.jp/201804290935481570/

<今日も、忙しい>
 午前中から、10月4日に見たエストニア人トリオであるトラッド・アタックをインタヴューする。うち二人は夫婦で、まだ3ヶ月という子供を連れ、どちらかがあやしつつ取材を受ける。もう一人のドラマーももうすぐ子供が生まれると言っていた。本国では超人気グループである3人の目標は世界中の国に行って演奏することで、もう36カ国を制覇しているそう。明日は、11時と14時に取材が入っている。今日ライヴ会場で会った人になんか疲れている顔をしていると言われ、がーん。ぼくの嫌いな言葉は、苦労とかと我慢とかです。

 こんな大掛かりなことやらせてもたって、幸せな青年だよなあと心底思った。1994年英国生まれのマルチ・プレイヤー/シンガーで、いろんな楽器を重ねていきトータルなサウンドを作り、その有名曲カヴァーをしなやかに歌うミュージック・クリップなどもあり話題を呼んできたタレント。過去何度かソロ・パフォーマンスによる公演を行なっているはずで、それはその場で一つ一つの楽器音を重ねていき機会経由のサウンドを作り、そして歌う(その際はハーモナイザーを用い、一人コーラスも作ってしまうらしい)というもののようだが、過去ぼくは見に行っていない。それは、なんか曲芸を見せられるようなキブンになるのを危惧したから。全部一人でやっちゃう可能性や素敵を否定するものではないが、なんか一人多重による軽さ〜不毛さがそこにあるような感じがし(それ、エレクトーンという楽器に感じることと重なる)、ならバンドでやればいいじゃんと思わせられるのがいやで実演を見る機会をぼくは排除してきたのだ。

 だが、今回は全60人を超えるオーケストラがバックにつくというので行ってみた。なにげに、年とともにオーケストレイションものに興味を覚えてもいまして。錦糸町・すみだトリフォニーホール。コリアーはクインシー・ジョーンズに可愛がられているが、チケットにはきっちりクインシー・ジョーンズ(2013年8月1日)・プロダクションの名義も記されていた。

 彼は過去、欧州で何度もオーケストラとの共演をしているはずで、スコアはそのとき使用したものを応用しているのだろうか。オーケストラはバンド(鍵盤、ギター、電気ベース、ドラム)、弦楽器奏者や管楽器奏者、打楽器奏者やハープ奏者など60人強がずらり。指揮者として、エリック・ミヤシロ(2010年5月11日、2011年3月10日、2011年3月28日、2011年4月21日、2011年8月6日 、2014年9月7日、2015年9月27日、2016年1月7日、2017年7月28日、2017年11月8日、2018年5月16日)が付いていた。コリアー本人はピアノやキーボード、ベース、なりものなどをつまみ食い的に扱いつつ歌い、ステージ(一部は客席にもおりる)を走り回り、その屈託ないやんちゃさは初期のジェイミー・カラム(2004年6月13日、2006年6月13日、2014年1月30日)を思い出させる? ファースト・ヴァイオリンのセクションには母親のスーザン・コリアーがいたようで、彼女は1曲でヴァイオリンのソロを取り、喝采を受けていた。
 
▶︎過去の、クインシー・ジョーンズ
http://43142.diarynote.jp/201308091149599475/
▶過去のエリック・ミヤシロ/ブルーノート東京・オールスターズ・ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/?day=20100511
http://43142.diarynote.jp/?day=20110310
http://43142.diarynote.jp/201104041100266528/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110421
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/ ノー・ネーム・ホー^セズ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201601090750252990/
http://43142.diarynote.jp/201708081429085086/ B.B.STATION
http://43142.diarynote.jp/201711091333526195/ マシュー・ハーバートツ・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
http://43142.diarynote.jp/201805201310351671/

<今日の、どうでもいいこと>
 この4週間の間に3連休が3度もあり、この日は最後の3連休の最終日。明日を思い少しユーウツと、知人が言っていた。そういえば、何気に日本は祭日が多いのと、勤め人の自殺が週頭に多いというニュースを見たが……。ずうっとフリーランスなのでぼくにはまあどーでもいいことなのだが、学生の頃は祭日が入るとうれしくてしょうがなかったような気もする。別に、そんなに学校が嫌いではなかったはずだが。しかし、振替休日はすべて月曜なので、月曜日の教科をちゃんと消化するのは大変になっているのではないだろうか。学校によっては、大学受験科目は月曜には置かないとか決めていたりして。。

 六本木・ピットイン(昼の部)でフィンランドからやってきたピアノ・トリオを見る。ピアノのカーリ・イコネン、ダブル・ベースのオーリ・ランタラ、ドラムのマルク・オウナスカーリという陣容。いやはや、フィンランドのジャズ水準もこれは高いなと素直に頷く。もう、身を乗り出して傾聴しちゃいました。

 カーリ・オコネンの指さばきに触れてまず感じたのは、切れ味のなかに強靭さを持っていること。彼なりの創意に満ちた風景を描きつつ、実は米国的に黒っぽい演奏を弾かせたら相当にやるんじゃないかと思わせるものをそれは持つ。ひゃは、達者にして個性的。そんな彼はときに弦をミュートし、そのままミュートした右手音や少しエレクトロぽい音を出したときもあったのだが、あれはどうやっていたのだろう。なんも装置っぽいのは見当たらなかったんだよなあ。なるほど、ボブ・モーゼズ(2000年8月13日)なども入っていた『Iknostasis』(Ozella,2017)ではミニ・モーグや電気ピアノも弾いているのも了解。現代のジャズであるためにフレイジングにも音色にもとても自覚的な才人だった。

 そんな彼を受け止めるリズム・セクションもとても優秀。ダブル・ベースのランタラは忠実にリフを送り出す一方ときにわあと耳を引くフレイズや弓弾き音を繰り出すし、ドラムのオウナスカーリもちゃんとジャズでありつつ見事に“立った”ビートを繰り出す。実はオウナスカーリはベン・モンダー(名前は出ていないが、2005年7月3日公演に同行)作他、ECM発のアルバムにいろいろ参加している御仁でもあるが、なるほどお。その三者の重なりは確実に今を宿すもの、終わり方が少しもったいぶったところをぼくに感じさせる以外は本当に花丸のトリオ演奏だった。

▶︎過去の、ボブ・モーゼズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm バーク・フェス最終日
▶過去の、ベン・モンダー
http://43142.diarynote.jp/200507061225530000/

 南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)では、キューバ出身のコスモポリタン型ピアニストであるオマール・ソーサ(2001年8月24日、2002年7月22日2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日2010年8月3日、2013年9月17日、2014年3月10日、2016年7月15日、2016年7月16日、2017年10月22日)の実演を見るキューバ人ヴァイオリンとヴォーカルのジiリアン・カニサーレスとベネズエラ人パーカッションのグスターボ・オバージェス(2017年10月22日)を擁するトリオによるものだ。

 ソーサの新作はジィリアン・カニサーレスとの双頭名義作であるのだが、なるほどこのショウ接してこれはカニサーレスありきの出しものであると痛感。ヴァイオリンを弾きちゃんと歌を歌うカニサーレスのフィーチャーを第一義に置くもので、ソーサのかっ飛び度数はこれまでで一番抑え気味だったのではないか。キューバで打楽器を学んだこともあるオアバージェスは打楽器を座って扱うとともに、数曲では立ってバタ・ドラムだけを叩いた。

 いやはや、カニサーレス嬢は可愛い。その外見は髪型もあり、エスペランサ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日、2016年5月31日、2017年3月27日)かキャンデス・スプリングス(2016年5月25日、2016年9月8日 )かといった塩梅。スプリングスよりは本格的であり、エスペランサほどは創造的ではないが、彼女を見たなら多くの者はファンになるのではないか。なんかスプリングスには失礼なことを書いたかも知れないが、カリーム・リギンス(2005年9月15日、2015年9月6日)主制作の新作『インディゴ』(ブルーノート)はまぎれもない好盤だ。これなら推すにたる。

 終盤、ソーサとカニサーレスが一緒に似たようなフリで踊る場面とか最高。そういう意味では、広スケールを持つやんちゃ無礼講アーティストであるソーサの妙味は効果的に出されていたのかもしれない。彼は半数近くの曲で、右手はピアノを弾きつつ、左手は電気キーボードでベース音を弾くという作法を取っていた。

▶過去の、ソーサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200408021925240000/
http://43142.diarynote.jp/200510030021170000/
http://43142.diarynote.jp/200611020835550000/
http://43142.diarynote.jp/200803201207150000/
http://43142.diarynote.jp/200905131200576485/
http://43142.diarynote.jp/201008251432447574/
http://43142.diarynote.jp/201309201840164499/
http://43142.diarynote.jp/201403131302032810/
http://43142.diarynote.jp/201607191309581526/
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
http://43142.diarynote.jp/201710240958114009/
▶︎過去の、グスターボ・オバージェス
http://43142.diarynote.jp/201710240958114009/
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/
http://43142.diarynote.jp/201703281829079078/
▶︎過去の、キャンディス・スプリングス
http://43142.diarynote.jp/201605260923093422/
http://43142.diarynote.jp/201609201655127640/
▶過去の、カリーム・リギンズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/

 そのあとは丸の内・コットンクラブで、渡辺貞夫(2002年12月14日、2003年5月6日、2004年12月17日、2005年12月18日、2006年8月8日、2006年9月3日、2006年10月4日、2007年12月16日、2008年12月14日、2009年7月22日、2009年9月3日、2011年7月4日、2012年6月29日、2012年12月15日、2013年4月1日、2013年7月27日、2013年9月29日、2014年7月8日、2014年10月5日、2014年12月14日、2015年12月12日、2016年7月3日、2016年12月11日、2017年10月8日、2017年12月16日、2018年5月28日、2018年9月2日)のショウを見る。

 2013年にリオデジャネイロで録音した『オウトラ・ヴェス ふたたび』の参加メンバーを呼んでのもの。ピアノのファビオ・トーレス (2013年7月10日)、7弦ギターのスワミJr. (2013年7月10日)、ドラムとパーカッションのセルソ・ヂ・アルメイダ (2013年7月10日)、そこに渡辺貞夫の日本人バンドでベースを弾き、ブラジル音楽に造詣の深いコモブチキイチロウ (2011年1月21日、2012年4月10日、2012年11月10日、2012年11月25日、2013年7月10日、2013年7月27日 )が加わる。彼はこの晩、ダブル・ベースだけを弾いた。

 ジョビン曲はやったが、例により渡辺貞夫のオリジナル曲を基本演奏する。しかも2013年作の曲以外の様々なオリジナルをブラジル音楽諸要素をいろいろと取り入れた感じで披露。面々、早めにきて、ちゃんとリハをやっていたのも納得ですね。本人もサポート陣もとにかくうれしそう。弾んだ曲調が多めで、アルト音もいい音色でなっていると思った。

▶過去の、渡辺貞夫
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm  6日
http://43142.diarynote.jp/20041221210502000
http://43142.diarynote.jp/200512231955480000/
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200610080946310000/
http://43142.diarynote.jp/200712171350530000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200907310048137248/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201107111008176019/
http://43142.diarynote.jp/201207031353196616/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201310050701201281/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
http://43142.diarynote.jp/201410061850124929/
http://43142.diarynote.jp/201412281017371613/
http://43142.diarynote.jp/201512151504068292/
http://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
http://43142.diarynote.jp/201612171245154424/
http://43142.diarynote.jp/201710121700178187/
http://43142.diarynote.jp/201712181015052794/
http://43142.diarynote.jp/201805290906425481/
http://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
http://43142.diarynote.jp/201806130948515941/
http://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
▶︎過去の、トーレス、スワミ・ジュニオール、ヂ・アルメイダ
http://43142.diarynote.jp/201307121511031149/
▶︎過去の、コモブチキイチロウ
http://43142.diarynote.jp/201101231224498510/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120410
http://43142.diarynote.jp/?day=20121110
http://43142.diarynote.jp/?day=20121125
http://43142.diarynote.jp/?day=20130710
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/

<今日は、ヘロヘロ>
 11時から、某ホテルでスワミ・ジュニオールにインタヴュー(なんと、ラティーナ誌の今月20日売り号に掲載!)。彼とはアララな共通点も発覚し、盛り上がる。ブラジル音楽界でトップ級にキューバの音楽界に近い関係にもいる彼は、コロンビアやスペイン人歌手の作品など現在プロデュース業が増えている。もうすぐ公演がある、キューバ人ピアニストのアロルド・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、2016年9月3日)の2018年作もまた彼のプロデュース盤。一方、自分のアルバムも来年3月に発売予定だ。ちなみに、バジェットや政治も取っ払ったとして制作したい人はと問うと、最初はうーんと悩みつつ、「ポール・マッカートニー。そして、スティング」。ほう。スティングは2010年代初頭に、マルコス・スザーノ(1999年8月11日、2001年12月19日、2002年7月21日、2005年2月15日、2005年10月30日、2006年8月11日、2006年8月24日、2006年12月28日、2007年8月11日、2007年8月23日、2008年10月10日、2009年9月25日、2009年9月26日、2013年1月7日、2015年1月10日)を自己バンドのツアーに呼んだことがあるが、もしそのタッグが実現したらスティング(2000年10月16日)の新生面を開くものになると確信する。
 その後は14時に新宿・ピットイン、17時に南青山・ブルーノート東京、19時に丸の内・コットンクラブと次々に移動。例により貞夫さんは2部制のもとたっぷり2時間越えのパフォーマンス。そこで、ギターを弾くスワミ・ジュオールは一時ジョイスが愛用していたのと同様な空洞ボディのギターを弾いていた。といった感じで、普段昼間は家にいる人間にとって、ずうっと外に出っ放しをやるとけっこうヘロる。各会場でも過剰に飲み物摂取していないのに、ライヴ後は1、2軒回るのが常のぼくが疲れ果てて飲み屋に寄らず帰宅してしまいましたとサ。うれCと感じつつも、困憊の1日でありました。
▶過去の、マルコス・スザーノ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200502161844550000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20051030
http://43142.diarynote.jp/200608141732470000/
http://43142.diarynote.jp/200608271342350000/
http://43142.diarynote.jp/200612291257400000/
http://43142.diarynote.jp/200708161531410000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070823
http://43142.diarynote.jp/?day=20081010
http://43142.diarynote.jp/200909291503456026/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/ 
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
▶︎過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
▶︎過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/

ジョイス

2018年10月5日 音楽
 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。いやあ、ジョイス(2004年7月15日、2005年7月13日、2007年7月24日、2008年9月7日、2009年9月29日、2010年7月29日、2011年8月3日、2012年8月15日、2013年7月30日、2014年7月15日、2015年8月3日、2017年9月8日)は何度見ても素晴らしい。今回はよりジャジーかつスリリングなところもあって、今もっともMPBとジャズの均衡をスリリングかつ、有意義に行なっている人だと、ぼくは断言したくなる。とともにさらに筆が滑るなら、ジョニ・ミッチェルの本懐を今一番宿しているのはジョイスなのではないか。そして、そんな人はブラジル人ならではの滋養もたくさん抱えている。そんな素敵なことって、あるかい? 途中で、ブラジル人ギタリストのシコ・ピニェイロ(2012年6月21日)がまざり、2曲はジョイスが退く。うち1曲はピアニストのエリオ・アルヴェス(2015年9月10日、2017年10月8日。ジョイス公演同行を除く)とのデュオをけっこう長めに披露したのだが、その絶妙の噛み合いには口あんぐり。すごすぎる! 二人のデュオ公演が見たい、デュオ・アルバムを作ってほしい。ジョイスが再度時入ってからもピニェイロはずっとステージにいて、演奏を入れる。流麗さと歌心を併せ持つ名手というしかないな。魔法がたくさんあったショウでした。

▶過去の、ジョイス・モレーノ
http://43142.diarynote.jp/200407151608250000/
http://43142.diarynote.jp/200507161357340000/
http://43142.diarynote.jp/200708051737070000/
http://43142.diarynote.jp/200809081534510000/
http://43142.diarynote.jp/200910021138591223/
http://43142.diarynote.jp/201008111723131487/
http://43142.diarynote.jp/201108101628235325/
http://43142.diarynote.jp/201208201259398163/
http://43142.diarynote.jp/201308021400578638/
http://43142.diarynote.jp/201407161154441780/
http://43142.diarynote.jp/201508091203108498/
http://43142.diarynote.jp/201608291403509244/
http://43142.diarynote.jp/201709110843278416/
▶︎過去の、シコ・ピニェイロ
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
▶︎過去の、エリオ・アルヴェス
http://43142.diarynote.jp/201509231110566930/
http://43142.diarynote.jp/201710121700178187/

<今日の、余談>
 全部持っているわけではないがシコ・ピニェイロのリーダー作群は味よく、彼の才能は十分に知っていたいたつもり。オレ、数年前に誰かの働きかけで撮った一緒の写真も持っている。だが、今回、彼のパフォーマンスに触れて、これは逸材だと改めて唸った次第。彼はバークリー音大の出だが、同級生にはどんな人がいたんだろう? そんなピニェイロのリーダー作に入ったことがあるのが、ブラジルの7弦ギターの使い手のスワミ・ジュニオールで、彼は渡辺貞夫のツアーでただいま来日中。そんなスワミを扱った長尺映像 https://www.youtube.com/watch?v=GcZ3AexTSoM の15分目ぐらいから、彼とピニェイロのデュオ演奏が楽しめたりする(終盤にもまた登場)。ところで、スワミはブラジルのスタジオ・シーンでは当初ベーシストとしての需要を得た。ジャコ・パストリアスが大好きでフレットレス・ベースを弾くようになったら、それが仕事につながってしまったんだよね。

 わあ、 今年のエストニアの日本市場への音楽働きかけの様はなかなか燃えていてすごい。今回は、5月に持たれた2回(5月23日、5月26日)に続くものとなる。青山・CAY。この晩は、3つの担い手が出た。

 まず、ポルカドット・アコーディオンという、エストニア人と日本人、二人の女性アコーディオン奏者のデュオ。まず、大きめの鍵盤式アコーディオンを持ったトゥーリキ・ガートシクが2曲演奏する。ゆったり、まったり。その後、ボタン式アコーディオンを抱えるかとうかなこが加わり合奏が始まる。去年お手合わせをしたら息がぴったりで、一緒にやることになったそう。

 次は、今年2度目の来日となる女性シンガー・ソングライターのマリ・カルクン(2012年12月4日、2018年5月23日)。肩掛け式ともう少し大きめの膝置き型の2種類の伝統弦楽器であるカンネルを弾きながら、エストニア語や地元古語のヴァイ語にて、伝統的な歌唱法も介しつつ歌う。と書いてしまうとアレだが、彼女の場合、英米の現代ポップ・ミュージックも知っており、それが伝統に根ざした自作曲を歌う彼女の表現に正しい現代性をもたらす。その新作『森の世界の中で ILMAMÕTSAN』はシンプルな楽器音の響きや歌声の多重を練り上げた末の現代トラッドの傑作とぼくは思っている。

 3つ目に出たのは、その名もトラッド・アタックという名の3人組。サンドラ・ヴァバルナ(バグパイプ、口琴、笛)、元カーリー・ストリングス(2016年9月28日、2018年5月23日)というヤルマル・ヴァバルナ(ギター)、トヌ・デュプリ(ドラム)という面々はプリセット音も用いて、やんちゃにして疾走感のあるトラッド・ビヨンド表現を展開する。妙にすがりつきがいのある呪術性もあり。その様はまさしく、グループ名のとおりというしかない。

▶︎過去の、マリ・カルクン
http://43142.diarynote.jp/201212131100492609/
http://43142.diarynote.jp/201805240836284188/
▶︎過去の、カーリー・ストリングス
http://43142.diarynote.jp/201610100851107027/
http://43142.diarynote.jp/201805240836284188/

<今日の、R.I.P.>
 NYラテン/ジャズ界のパーカッショニスト/トランペッターであるジェリー・ゴンザレス(2005年8月4日)が69歳で亡くなってしまった。2000年以降はスペインに移住し、住んでいたビルの階下の火事の煙を吸ったことが死因であったという。NYの裏町の移民音楽をリアルに奏でた男ゆえ、ちゃんとザ・ニュー・ヨーク・タイムズの電子版も1日付けでその訃報を報じている。それによると、スペインではフラメンコも演奏していたという。しかし、キップ・ハンラハンもさぞや悲しんでいる事だろう。彼のアメリカン・クラーヴェの第1弾はゴンザレスのリーダー・アルバム『ジャ・ジョ・メ・クレ』であり、同レーベルの録音セッションの要的な奏者であった。そういえば、ジャマラディーン・タクーマ(2014年7月28日)もフェイスブックで追悼していたな。キップ・ハンラハン名義作録音で知り合い、ジェリーとアンディのゴンザレス兄弟をタクーマは『Music World』(Gramavision,1986年)で呼んだのだった。
 それから数日前には、名ブルース・マンのオーティス・ラッシュの訃報も届いた。脳卒中に伴う合併症で9月29日没、享年84歳。いかにも、同時代的にギターが効いたなモダン・ブルースを届けたシンガー/ギタリスト。ぼくが見たのは、1980年代半ばのこと。彼の奥さんは日本人で、そのときに知りあったのか?
▶︎過去の、ジェリー・ゴンザレス
http://43142.diarynote.jp/200508060625180000/
▶過去の、キップ・ハンラハン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
▶︎過去の、ジャマラディーン・タクーマ
http://43142.diarynote.jp/201408051026553769/

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