「話題になっているので、試写場が30分前に満員になったみたいです」。と、先に見た知人からの伝言。そしたら、そんなことはなかったが、もうとても興味深く、べらぼうに面白い2018年米国映画だった。見たあとの所感の良さは、ここ数年で1番と思った。

 実話をもとにした作品。当然、主人公のトニー・リップ(1930〜2013年)とドン・シャーリー(1927〜2013年)は実在の人物。時代は、1962年。無教養で下品で粗暴なイタリア系用心棒と教養高くで上品で物静かな黒人ピアニスト(売れっ子、ゆえに金持ち)が主役の映画である。米国にジム・クロウ法がまだあった時代の二人の関わりを扱い、北部と南部のカラードの扱いの違いを克明に描いている。二人は興行で中西部から南部へと周り(ロード・ムーヴィでもあります)、クリスマス・イヴにともに住むニューヨークに帰ってくる(心温まるクリスマス映画でもあるか)のだが、いろんなところ、よくできている。表題のグリーン・ブックとはカラードが隔離されていた時代に、1936年から66年にかけて出版されていた黒人が利用可能な施設を紹介した旅行ガイド本であるという。そんなのがあるのは知らなかった。ブルース・アンド・ソウル・レコーズ誌にこの映画の原稿を書くので、これぐらいにしておきます。

 なお、驚いたのは、プロフェッサー・ロングヘアの「マルディグラ・イン・ニューオーリンズ」がエンド・ロールに使われたりもする、この映画の音楽をコンコードから1枚リーダー・アルバムを出し、マーカス・ミラーやホセ・ジェイムズのサポートで来日したこともあるキーボード奏者のクリス・バワーズ(2014年7月27日)が担当していること。2014年にとった、彼へインタヴューを載せておく。もともとはCDジャーナル誌ように取ったものだ。

——唐突ですが、本や雑誌は好きですか?
「うん、かなりね」
——あなたのデビュー作『ヒーロー+ミスフィッツ』(コンコード、2014年)のタイトルはどういう意味を持つのでしょう。
「“ヒーロー”と“ミスフィッツ”は、僕たちの世代をうまく表現している言葉だと思う。僕たちの世代を“ヒーロー”世代だと言っている記事があって、それを読んで、すごく面白いなと思った。僕たちの世代はソーシャル・メディアが身近にあり、世界に対してポジティヴな変化をもたらせる力を持っているんだそう。一方、“ミスフィッツ(ならず者)”は僕自身のことを指す。個人としてありのままの自分を出した時に、そういうふうに思われてしまうからね」
——曲のタイトルを見ても、いろんな意志を込めているようにも思えて、あなたは本を読んでいる人なのだろうと思ったんです。
「そう思ってもらえて、とてもうれしい。学生時代は音楽中心でずっと来たから、歴史の授業とかをないがしろにしていた。でも、この年になってやっと歴史や過去に興味を持ち、いろんなものを読んで勉強しているんだ」
——1989年生まれというと、とうぜん物心がついたときにはヒップホップが溢れている世代ですよね?
「そうだね、あとロックもね。10代のときは、スマッシング・パンプキンズとかも聞いていたよ。とはいえ、4歳のときから“鈴木メソード”でピアノを弾き始め、8歳からクラシックの個人レッスンも受けてきた」
——恵まれた環境だったようですね?
「うん。僕がやりたいと思うことを全部やらせてくれて、僕は両親に恵まれたよね。たとえば、数ヶ月だけだったけど漫画家になりたいと思ったことがあって、そのときも家から車で1時間近く離れた教室に毎週末に連れていってくれたりと、僕がやりたいことを必ずサポートしてくれる親だった」
——ミュージシャンンになりたいと思ったのは、わりと早くからですか?
「ミュージシャンになりたいというのと漫画家になりたいというのが同じぐらいのときかな。芸術系の高校に入ったんだけど、そこに入るときには絵描きのほうに進みたかった。でも、絵のポートフォリオがそこに入学できるレヴェルじゃなかった。それで、まず音楽のほうで高校に入り、2年目から美術のほうに移ろうと思っていたんだけど、音楽のほうが面白くなり、音楽を続けてやることに決めたんだ」
——今でも絵を描きます?
「いや、描かない。いつかは勉強し直したいとは思っているんだけど。グラフィック・デザインも少しはかじっているけど、ちゃんとはやっていないので、いずれはもう一回やり直したいな」
——17歳からジュリアード音楽院に通ったようですが、飛び級で入ったのですか?
「実は、幼稚園は2年早く、3歳から入った。それで、幼稚園は普通の子供よりも1年長く通ったけど、小学校以降も、僕は他の人よりいつも1歳若かったんだ」
——ジュリアード入学以降は、NYに住んでいるんですよね。やはり、音楽をやるにはNYが適していますか。
「それは、やる音楽にもよるよね。ジャズをやるのであれば、やはりNYは最高。演奏できる場所は多いし、ミュージシャンの質も高いし。でも、映画音楽をやりたかったり、ブリトニー・スピアーズと演奏したいのだったら、LAの方がいいだろうな」
——では、あなた自身はジャズのミュージシャンだと思っている?
「(虚をつかれたという感じで)あー、ええとねえ……。音楽はいろんなことをやるし、どんなことをできるとも、僕は思っている。音楽だけでなく何をやっていても、その中で一番大きな因子は人種であると思う。やはりアフリカン・アメリカンであるということで、こうあるべきだとか、そういうことがついて回ってしまう。それは避けられないもので、何をやってもそこにたどり着く。それと同じように、僕が一番勉強してきていて、一番やってきた音楽というのがジャズであり、僕の根底にはジャズがある。アフリカン・アメリカンであるという属性とともに、そこからは逃れられない」
——アフリカン・アメリカンであること、ジャズをしっかり通って来たことを肯定しつつも、そこから大きく離れようとする指針を、あなたのアルバムは持っています。これだけポップ・ミュージック側に踏み込んだエクレクティックなアルバムをレコード会社はよく作らせたなと思います。
「それには、僕も驚いている(笑い)。今作は、コンコードのA&Rのクリス・ダンと綿密に連絡を取り合いながら作ったんだ。でも、すべてにおいて、それでいいよと快諾されて、これで本当にいいのかと思いながら作っていた部分はあったな」
——あなたは、映画音楽が大好きなんですよね。そこで、一つ合点がいったことがあります。オーケストラを使った荘厳なものからエレクトロニカなものまで、どんな音楽でも映画に合っていれば良い映画音楽として認知されます。それに倣えば、どんな傾向の曲も新世代を自認するクリス・バワーズを顕す音楽と取れば、何をやっていてもあなたのサウンドラックとして違和感なく接することができます。
「そう思ってもらえるなら、うれしいなあ。まったくそのとおりだと思う。ああ、僕のサウンドトラックと取ってもらっていい。やはり、映画音楽は映画が持つ感情であったり、アイデアであったりを、音で表現する。受け手は映画を見ながらその曲を聞くことで、そこにある感情をより大きく増幅させる。それと同じことを、僕は今作で意識的にやったんだ」
——アルバムには複数のゲストによるヴォーカル曲も入っています。やはり、感情を直接的に表現するには、歌が必要だと判断したわけですか?
「すべての曲にヴォーカルが必要だとは思わない。でも、歌が入ることによって、伝えたいことが直接的になるという利点はあると思う。やはり、インストゥメンタルより歌詞があると、意図するものがより伝わりやすい。それに、人間の声の特色であると思うけど、人は肉声に反応しやすい。歌詞がなかったとしても、声を用いることで分りやすくなる部分がある。ヴォーカル曲には、僕はそういう効果を求めている」
——自分に似ていることをしているなと感じる人はいますか?
「ケンドリック・ラマーとか、ジェイムス・ブレイクとか……。いろんな音楽に対してオープンでもあるけど、伝えるメッセージに対してすごく意識的であり、それを考えてやっているミュージシャンたちは、僕と同じだと思う。小さなことよりも、長い目で見たような、あたかも俯瞰する感じで大きな問題を音楽で伝えていこうとするアーティストが好きだ」
——参加ミュージシャン選択で、留意したことはあります?
「一番重要であったのは、僕と同世代のミュージシャンを使うということ。今回のアルバムに誰か有名な人に参加してもらおうとは考えなかった。逆に、僕と同じ世代の、僕が大好きなそれぞれの楽器担当者に声をかけた」
——それは自分たち、“ヒーロー”世代の音を作りたかったという意志の反映でしょうか?
「もちろん、そう。ハービー・ハンコックだって、初期のブルーノートのアルバムはそういう意図があって、それが素晴らしいと思う。僕もそれと同じような作品の作り方を、今の世代としてやりたかった」
——あまたが参加した『ネクスト・コレクティヴ』(コンコード、2013年。若手広角型ジャズ・マンがジェイ・Zやパール・ジャム他をカアヴァーしたアルバム)も同じ意図があるのでしょうか。
「そうかな。あれは、これはレーベルのアイデアでやったものだからね。その一つの世代が子供のころに影響を受けた音楽であったり、成長期において聞いていた音楽というのを反映するというコンセプトがあった。ジャズ・ミュージシャンとして今はやっているけれど、こういうのを聞いて育ったというのを出すのがそのコンセプトだね」
——次のアルバムのことは考えています? 今関与しているホセ・ジェイムズのツアーは長いですが。
「まだ、考えてない。3年後ぐらいを目指したい」
——これまでのキャリア中、ターニング・ポイントと思える事はありますか。
「2011年の夏の終わりだね。セロニアス・モンク国際ジャズ・ピアノ・コンクールで優勝したころ。ちょうど同時期、Qティップやカニエ・ウェストと一緒に仕事をさせてもらえたりとか、様々なアーティストとの仕事が入るようになった。ホセ・ジェイムズと出会ったり、マーカス・ミラーからお誘いがあったのもそのころ。あの時期、すべてが変わった。あれがなかったら、両親と一緒に住んで、平凡な人生を送っているかもしれないな」

▶︎過去の、クリス・バワーズ
https://43142.diarynote.jp/201408051020111821/

 その後は、南青山・ブルーノート(ファースト・ショウ)で、1994年生まれのクライド(歌とキーボード)と1997年生まれのグレイシー(歌)の兄妹からなる、ローレンスを見る。二人の親は脚本や映画監督で知られるマーク・ロレンス(1959年生まれ)で、クライドは父親が作った映画「リライフ」(2014年)の音楽を担当して、まず注目を浴びた。そして、兄妹で2枚のアルバムを出している。

 他に、ギター、ベース、ドラム、テナー、アルト、トランペット奏者がつく。おお、みんな兄妹と同じ年頃か。で、フロントの二人もそうなのだが本当に普段着で洒落っ気がないことに驚く。その和気藹々のノリに接して、地方の州の街のコミュニティ・センターで週2回練習しているバンドと聞いたら、見てくれだけは信じそう。正確に書くとグレイシーの格好は普段着ではなく、バスケット・ボールのユニフォームそのもので、年配の人ならリンダ・ロンシュタットの『リヴィング・イン・ザ・USA(アサイラム、1979年)のジャケみたいと言えばわかってもらえるか。40年前の健気な張り切り米国ムスメ像と重なるなるなんて……。わお。

 ショウはクライドの弾き語りが基調となる。面々が送り出すのは、ソウル・ミュージックにインスパイアされた陽性なビート・ポップ。兄と妹がそれぞれリード・ヴォーカルを取る曲は別れているが、なんにせよ溌剌にしてちゃんと質のあるソウル影響下にある表現を展開。何気に、バンドを絡めたショウの進め方も的を得ている。一生懸命、生理的な眩しさにわくわくできました。

 カヴァーも3曲。ザ・ビートルズの「ゲット・バック」とショーン・ポール(2015年8月5日)の「ゲット・ビジー」、グレイシーのこのプラネットで一番好きな人と紹介されて歌ったアリサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」。先の映画「グリーンブック」ではアリサの曲が車のラジオから流れるシーンもあったが、ソウル好きの若い彼らは”グリーン・ブック”がかつて自国にあったことを知っているだろうか。

▶︎過去の、ショーン・ポール
https://43142.diarynote.jp/201508091204162305/

<今日の、バランス>
 試写が終わって、ちょうど一駅分歩くと、ライヴの開演時間にぴったり合うので、歩く(いや、所用時間は電車を使っても、徒歩でも同じぐらいかな?)。うわ、寒いっ。最低気温が4度であったはずだが、風があるためか、ぼくは今年一番日暮れ以降の寒さを感じた。風邪ぎみなのもあり、ライヴ後は寄り道せずに帰ろうと思っていたのだが、これだと店から外に出たらすぐにタクシーを拾いそうと思った。ライヴを見ながら、タクシーに乗ったつもりで(歩くことにし)もう一杯のんじゃいな(=お店に立ち寄る可能性が高まる)という悪魔と、もうお酒は切り上げてタクシーに乗ってもいいからすぐに帰ろうねという天使が、頭の中で言い合いをしている。結局、もう一杯もらう。そして、終演後にまっすぐ駅に向かうそぶりをみせつつ、200メートル歩いたところで空き車を見つけ、手をあげてしまう。内なる悪魔と天使の双方に気配りしたカタチとなった。
 デーモン小暮だと思っていたら、今はデーモン閣下と名乗っているの? ぼくは聖飢魔IIにも相撲にも興味を持てないで今にいたるので、この自己演出にたけたおじさんのことについてはとんと疎い。

 初、“悪魔”(笑い)。練馬 練馬文化センター 大ホールで、へえ〜こんなんという出し物を見る。邦楽器と通常のバンド楽器が重なるなか、デーモン閣下が書を読み、ときには歌う。と、書くとあまりに乱暴な説明になるが、このシリーズは今年で20年目になるという。ライヴの模様はネット配信もされていたよう。

 暗転前にまず打ち込み系サウンドが使われるなか、この後に出てくる古典和楽器それぞれの説明をするデーモン閣下の解説が流される。サウンド音の安さに少しひいたが、話自体は的確に歴史にも触れ、分かりやすくて有用。そして、デーモン閣下(朗読、歌唱)、三橋貴風(尺八、プロデュース)、福田栄香(箏、三絃)、稲葉明徳(篳篥、笛、笙)、外山香(二十絃箏)、松崎雄一(キーボード、アレンジ)、雷電湯澤(ドラム)、 石川俊介(電気ベース)、田村祐子(サンド・アート)、Kohei(サンド・アート)、という面々がステージに登場して、出し物は始まる。鍵盤とベースとドラムは聖飢魔II関係者のよう。

 <芥川龍之介を詠み謳う>という副題がつけられ、デーモン閣下は芥川龍之介の著作のパートを淀みなく読んで行く。会話の部分は落語のように声色を変える。その際、邦楽器はその音色を生かし効果音のような音を出したり、登場する人物ごとに楽器の音を振り分けて、その存在を立体的にするようなこともしていたようだ。と、他人事のように書いているのは、達者なデーモン閣下による言葉がぼくの頭にはちゃんと入ってこなかったから。ゆえに、語りがオリジナル通りなのか、少し話し口調にアレンジしているのかはもちろん、話の流れも分からなかった。朗読を聞いて笑っている人もいたので、ぼくの聴解力のなさが悪いのだろう。少し、悲しくなった。

 そして、ときに奏者たちのインストが入ったり、その演奏にあわせてデーモン閣下が歌を歌ったりもする。それら和洋楽器奏者たちによる合奏部分は”今や洋”のほうに和楽器奏者たちが寄る作法(ようは、普通のバンド楽器の音が和楽器に置き換えられる)を取り、ぼくの耳には魅力が薄い。デーモン閣下が歌ったのはムード歌謡曲やレッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」(英語で歌われた)だったり。ツェッペリン曲の出だしのアコースティック・ギター音は箏が担当していた。

 ステージの後ろには大きなヴィジョンが用意され、そこに砂で絵を描く二人の創造所作が随時映し出される。二人の描く絵は上下にわけられて映し出され(連携し、上下繋がった絵にする場合もあり)、作風は異なるものの両者ともとても巧み。ストーリーに沿って、パッパと砂絵を描いていくドキュメンタリーは興味深い。

 といった感じで、いろんな人たちが同じゴールを見据え、様々な要素が二重三重に交錯させられいくといった出し物。デーモン閣下は相変わらずメイクとコスプレをし、きっちり虚構の人であり続ける。公と私ずっと使い分けているのはすごいな。

<昨日の、訃報>
 フランスの名映画音楽作曲家/ジャズ・ピアニストであるミシェル・ルグラン(2011年9月3日、2012年10月2日)が、26日にお亡くなりになった。享年、86歳。死因は報じられていないが、パリの自宅で死去。日本にフランスの洒脱を明快に伝えた一人でした。
▶︎過去の、ミシェル・ルグラン
https://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
https://43142.diarynote.jp/201210060944303925/
 六本木・アスミック試写室で、2018年米国映画「パペット大捜査線 追憶の紫影」(原題「The Happytime Murders」)を見る。実写映像(主役はメリサ・マッカーシー)のなかにパペットが随時入る仕立てで、監督のブライアン・ヘンソンは「セサミ・ストリート」のパペットを作ったジム・ヘンソンの息子さんだそう。なるほど、映画に登場するパペット群はセサミ・ストリートのそれを思いだ出させるが、この人間とパペットが共存する世界を舞台(撮影はLAでされたか)とするコメディ映画はあちらでは成人指定(日本では12歳以下NG 指定)。下品なセックスねたのためのようで、お子様が主役のお下劣TVアニメ「サウスパーク」に代表されるように、米国ってそういうの何気に好きだな。ストーリーも他愛ないが、アメリカっぽいと言えばいかにもそうか。劇中には往年のリック・ジェイムスやウォー(2007年11月6日 、2007年4月6日、2017年5月15日)曲他が入り、それはこの映画の時代性を少し前に持っていく。エンドロールの前半で使われるのはバウ・ワウ・ワウのボー・ディドリー(2004年4月12日、2009年8月9日)・ビートを用いた「アイ・ウォント・キャンディ」。その際のパペット操作の模様を伝える映像はへえ。たいそう手間がかかっていそうだ。

▶︎過去の、ボー・ディドリー
http://43142.diarynote.jp/200404120828130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶︎過去の、ロニー・ジョーダン/ウォー
http://43142.diarynote.jp/200711101235120000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090809
https://43142.diarynote.jp/201705161314529397/

 丸の内・コットンクラブ(セカンド・ショウ)で、ECM契約ピアニストのマルチン・ボシレフスキ(2005年10月26日、2015年9月24日)のトリオを見る。ベーシストのスワヴォミル・クルキエヴィッツとドラマーのミハウ・ミスキエヴィッツは、ずっと一緒にやっている。

 あたまの2曲、鬼のように抑制が取られた静寂演奏で、しびれる。オープナーはフリー・フォームぽかったが、恩師トーマス・スタンコ( 2005年10月26日)の曲と紹介。ドラマーは3割の力の入れ具合で打楽器的に演奏し、キック・ドラムはほとんど使わなかった。ある意味、ピアニズムの確か行方を介してのジャズの深淵を強烈に描いていました。2曲目はとってもメロディが美しい。以下は美的ではあるもののわりとプッシュもする密なインタープレイを聞かせる行き方を取り、ボシレフスキが素晴らしい弾き手/リーダーであることを受け手にきっちり与える。本編最後は、ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日、2018年9月1日)の「アクチュアル・プルーフ」。瑞々しかったけど、いまだにこのカヴァーをやっているのか。

▶過去の、マルチン・ボスレフスキ
http://43142.diarynote.jp/200511130011570000/
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/
▶過去の、トーマス・スタンコ
http://43142.diarynote.jp/200511130011570000/
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903
https://43142.diarynote.jp/201809051532324111/

<今日の、パリのドラマー>
 夕方、トニー・アレン(2003年9月26日、2019年1月23日)にインタヴュー。もともと数少ないアフリカ英語公用語国であるナイジェリア出身ゆえ、英語で答える。とはいえ、パリに住んで長い彼の英語はフランス語的に、Hを発音しない傾向にある。「わしゃ、済んことには興味がないんじゃ」と言いつつ、興味ある質問には丁寧に答える。やっぱりジャズは好きだそうで、ブルーノートを介してアルバムを出せたときは嬉しかったですかと問うと、にっこり。可愛かった。イントキシケイトに出ます。→その原稿には使わない返答のいくつか。
「(ナイジェリアから最初は英国に行きました。でもすぐにパリに移り、住み続けていますよね。パリは音楽をしやすい街ですか?)そうだね。ナイジェリアはUKの植民地だったから、最初はUKに向かったけど、そこで仕事をするのは楽じゃなかった。労働許可証とか必要とされたしね。EPは1枚作ったけど、いろんなことがうまくいかなず、バンドも組めず、そこからすぐに出たいと思った。フランスでは契約を取れたし、ミュージシャンたちもプロフェッショナルであったし、フランスはやりやすかった」
「キャリアのなかでのターニング・ポイントはない。なぜなら、ずっと音楽をやってきたからね。音楽をやりたいと思ってこの世界に入り、ずっと一生懸命にやってきやってきただけだ。そりゃいいことも悪いこともあったよ。でも、ずっとまっすぐに音楽とむ向かい合ってきたということだね」
「(あなたはおしゃれですね?)俺ってクールだろ。物事のバランスを取るのが俺は好きで、何かを人に強要するというのが好きではない。それが、人生の極意だね」
 同じくパリに住むドラマーのマヌ・カチェ(2011年1月28日、2012年1月13日、2016年4月13日)の近く出る新作『the scOpe』(anteprima)は自ら歌うヴォーカル曲が入ったポップ傾向にあるアルバム。それ、デビュー作『イッツ・アバウト・タイム』(BMG、1991年)いらいとなるか。機械経由の音も加えた仕立てのもと、慈しみのあるメロディを開いている。フランス人ラッパーのジャジィ・バズや米国人シンガーのジョナサ・ブルックをフィーチャーする曲もある。また、コラみたいな音とシャキッとしたドラム音の重なりが気持ちいオープナーをはじめ、インストも4曲。そういえば、彼がECMと契約していた際の前半の3年半に、マルチン・ボシレフスキはカチェのグループに入っていた。
▶︎過去の、トニー・アレン 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
https://43142.diarynote.jp/201901241310023413/
▶過去の、マヌ・カチェ
http://43142.diarynote.jp/201102081259129769/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
https://43142.diarynote.jp/201604271334589018/ 取材

 78歳のアフロ・ビートのマスター(2003年9月26日)のコンボを、南青山・ブルーノート東京で見る。ファースト・ショウ。

 ジミ・テナーやジェフ・ミルズ(2017年11月7日、2017年11月10日、2018年11月6日)らとのコラボレーション盤を出すかたわら、仏ブルーノート契約し、ジャズ傾向にある作品を2種リリース。その片方の2017年10インチ・アナログ盤タイトルと同じ<ア・トリビュート・トゥ・アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ>という表題がつけられたショウだ。

 2管ハード・バップ編成に加え、ギター入り。ドラムを叩く当人に加え、トランペットのニコラス・ジロー、テナー・サックスのヤン・ヤンキルヴィ、ピアノとキーボードのジャン・フィリップ・ダリー、ダブル・ベースのマティアス・アラマネ、ギターのインディ・ディボング。皆、『The Souce』(Blue Note,2017)に入っていた奏者たちで、パリ在住だろう。管楽器とベース奏者は白人、菅はちょい弱かったかな。

 アート・ブレイキーを知りドラムを叩くようになったらしいアレン流のジャズ表現が送り出される。アフロ・ビート色は薄いとも書けるだろうが、やはり随所にらしいアクセントはあり。曲はブルーノート発の2作に入ってたものが中心か。トリビュート盤に入っていたスタンダードの「チュニジアの夜」もやったが、それの演奏ぶり(彼はマッチド・グリップで叩く)に触れて彼のラヴリーさをより身近に受けもした。そんな御大は何気におしゃれっぽく、痩身で、元気そう。ドラムは、パールだった。関係ないけど、始まる前にフレディ・ハバードの洗練ハード・バップなブルーノート曲「クライシス」が流れ、少しアガった。

▶︎過去の、トニー・アレン 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
▶︎過去の、ジェフ・ミルズ
http://43142.diarynote.jp/201711080729053828/
https://43142.diarynote.jp/201711110810235717/
https://43142.diarynote.jp/201811071446015153/
▶︎過去の、フレディ・ハバード(追悼)
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/

<今日の、CD>
 少し前に、オーストラリア大使館からの郵便物あり。なかにはThe Gravigty Projectなる名称のCD(APLS1811)。あら、2017年晩夏にポール・グラボウスキー(2017年9月2日、2017年9月5日)が中心となる豪州ジャズ・マンと日本人古典邦楽奏者が東京で録ったやつじゃないか。ちょい立て込んでおり、今日やっと聞いた。クレジットを見ると完全に豪州でまとめられ、ライナー・ノーツも入っていないが、発売元は日本のアポロ・サウンズ。ネットを引いたら、昨年夏に発売されているじゃん。2017年9月2日のセルリアンタワーの能楽堂でのパフォーマンスはそこの文章にあるとおりかなり感銘を受けたが、スタジオ録音作はこんなふうになったのか。へえ。ライヴではジャズと雅楽の鮮烈にして幽玄とも言える重なりを出すことに成功していたが、CDではさらにヒップホップ要素も取り込んだものになっている。曲により、サンプリング・ビートが入り、さらにコージョーとDAICHI YAMAMOTOがラップもしている。確かグラボウスキーのリーダー作にはエレクトロニクス語彙が入ったものもあったし、それも面白いと思うが、ライヴに接した者としてはまずはジャズ奏者と日本人古典音楽演奏家の出会いというものに焦点を絞ったものにし、その続編としてヒップホップも重ねた盤を問うて欲しかったなと思った。
▶︎過去の、ポール・グラボウスキー
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
https://43142.diarynote.jp/201709110824329582/

 中野サンプラザで、アルゼンチン・タンゴを大々的に扱うショウを見る。満場、年配の人が多いか。この日はマチネー公演もあったよう。民音がアルゼンチンのタンゴ関連アーティストを毎年呼ぶようになって50周年となるのを記念してのもので(一時は本国で下火になったタンゴの担い手に貴重な活動の場を与えてもいたよう)、フェルナンド・マルサン・セステート、男女のシンガー、ペアのダンサーが4組、計12人のアルゼンチン人がステージに立った。

 ピアニストのフェルナンド・マルサン率いる楽団は、二人のバンドネオン、二人のヴァイオリン、コントラバスという編成。彼らはずっとステージにいて演奏し、曲により、ダンサーたちやシンガーたちが代わる代わる出てくる。インストだけの曲もある。ダンサーたちは何着衣装を持ってきているのだろうか。

 なんかすごいものを見ちゃったなという満足感たっぷり。絢爛豪華、理知整然。2部制で、タンゴの歴史の流れを追わんとするのだが、よく構成され、またちゃんと実演もされ(演奏も、歌も踊りも、みんなうまい)、ぼくは見入った。考えて見れば、ぼくはピアソラ絡みのコンボによるインストゥルメンタルの公演しか、タンゴ関連公演はこれまで見ていないのではないか。

 音楽監督を務めるフェルナンド・マルサンは現タンゴ界を率いる実力者のようで、マドンナ(2005年12月7日)主演の映画「エビータ」のサントラにも関与したというが、この情報量の多いプロジェクトをよくまとめたな。1967年生まれで紳士然とした彼は、カニング・ペーパーなしに、長めの日本語MCをいろいろとする。彼の熱意と真心を感じずにはいられず。

 1部は1950年代までのタンゴ曲をとりあげ、2部はそれ以降の曲を取り上げる。2部中盤からラスト1曲前にかけては、アストル・ピアソラ曲が半数近くの6つも並べられる。だが、1部の演奏との乖離はあまり感じず。それはピアソラ以後の価値観を持つ奏者たちが生き生きと演奏しているためもあるだろう。

 ミュージシャンに太ったは人はいないし、ときにアクロバティックなこともして観客を沸かせるダンサー陣だとよけいにそう。もう、すらりとした女性陣は遠目には足も二の腕も背中も綺麗。総じて、あまり年をとった人がいず。それらは、過去の焼き直しでなく、今の感性と娯楽性とアート性を通過したタンゴを自分は受け止めているのだという気持ちになれて、心地よい。

 門外漢だが、おもしろかった。結果、タンゴは深いし、アルゼンチンすげえという気分に断然なる。アルゼンチンに行きたいなあ。この力の入った出し物はこの9日から約2カ月間、日本各都市を回る。推せます。

▶過去のマドンナ
http://43142.diarynote.jp/200512091117210000/

 その後は、JRと都営地下鉄を乗り継いで、六本木へ。ポスト・ニュー・ウェイヴ期に世に出たソウル趣味少しアリのUKポップ・ユニットをビルボードライブ東京で見る(セカンド・ショウ)。メイン作曲者でリード・シンガーであるクラーク・ダッチェラーとベーシストのマイク・ノシートがオリジナル・メンバー。確か、オリジナルのドラマーは英国著名プロデューサーのミッキー・モストの息子だった。他に、鍵盤女性のロサ・ウルマン、長髪ギターのマーカス・ボンファティ、渋いルックスがいい感じのドラムのアレックス・リーヴスという陣容でことにあたる。1980年代下半期に活動し、約10年前にダッチェラーがまた再結成バンドに合流して、現在にいたるよう。

 ソロ作も数枚持つ50代半ばのダッチェラーを見て、まずはにっこり。そりゃ年齢相応ではあるが、昔のハンサム君風情の面影が残っていてアリと思ってしまう。キーボードも弾く彼だが、それは数曲にとどめてマイクを持って歌うダッチェラーはちゃんと往年の輝き、マナーを維持。声もそれなりにちゃんと出ていた。

 ショウが始まり、すぐに甘酸っぱい気持ちになる。へえ、何気に後打ちビートの曲が少なくなかったんだな。ヒット曲「アイ・ワナ・ビー・ユア・ヒーロー」はナイル・ロジャース(2003年4月15日、2003年8月24日、2006年4月11日、2009年4月6日、2010年4月30日、2011年4月18日、2012年12月28日)制作曲と聞いたら信じそうな、四つ打ち/ギター刻みが入った曲。そしたら、次にE.W.&F.(2006年1月19日、2012年5月17 日)の「セプテンバー」をアコースティック・ギター音を介して披露したのにはびっくり。派手なホーン音や鍵盤音がないと妙な感じ。でも、なんかにこにこなれた。総じて、生理的に晴れやか。ほのかに幸せな心持ちをぼくは得てしまった。

▶︎過去の、シック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 4月15日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm Mt.フジ・ジャズ・フェスティヴァル
http://43142.diarynote.jp/200604141318090000/
http://43142.diarynote.jp/200904120633434116/
http://43142.diarynote.jp/201005011117591329/
http://43142.diarynote.jp/201104220822068448/
http://43142.diarynote.jp/201301051329276221/
▶過去の、E.W.&.F.
http://43142.diarynote.jp/200601271855390000/
http://43142.diarynote.jp/201205301252113538/

<今日の、迷い>
 昨日の夜にライヴに行く前にご飯を食べているころから咳がコンコンと出始め……。起床したら、どこか熱っぽい。だるい(あ、これは今日に限ったことではないか)。昨年初めてインフルエンザになり、小心者のぼくはすこしビビる。そしたら、ラジオのディレクターからぼくが間に入った番組収録(ぼくはでません)が、パーソナリティが風邪のため声が出ないとかとかで今日の録りはなしになりましたと連絡がある。風邪、はやっているのかー。原稿書きだと家にいればいいだけだからそんなに負担はないが、ぼくも木曜にはナイジェリア出身のおじいちゃんにインタヴューしなくてはならないし(そこで、咳をしていたらまずいでしょう)、これはちょい構えるなあ。というわけで、今日のライヴのハシゴを無しにしようかと一瞬弱気になり悩む。でも、ライヴに対する好奇心の方が増した。そしたら、両方とも望外の感興アリで、体に活気がみなぎる感もあり。うしし。ところで、まだヴァージン・ジャパンがあったころ(オフィスは代々木だった)、クラーク・ダッチェラーのファーストのライナー・ノーツはぼくが書いたんじゃないかと思えてきた。当時、ぼくは洋楽ロック/ソウルものの原稿ばかり書いていたからなあ。ぼくに原稿を頼んでくれていた同社ディレクターは数年前にお縄になったと聞いた。いろいろあります。
 ブルーノート・レコード設立80周年という名目のもと持たれた公演で、今伸び盛りの日本人奏者が集い、ブルーノート名曲を演奏するという趣旨をもつのかな。南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)。

 登場者はトランペットの黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日、2015年1月30日、2015年2月15日、2016年9月17日、2016年12月16日、2017年7月12日、2018年2月21日、2018年4月4日 、2018年9月21日)、テナー・サックスの西口明宏(2016年7月21日)、ギターの井上銘(2016年6月27日、2017年6月21日)、オルガンとピアノの宮川純(2015年10月15日、2016年8月10日、2018年9月28日)、ピアノの桑原あい(2013年9月8日、2016年12月7日、2017年7月8日、2017年9月29日、2018年12月21日)、ダブル・ベース(1曲はエレクトリックを弾いた)の角田隆太(2016年8月10日、2017年6月21日、2018年5月13日)、ドラムの石若駿(2014年9月26日、2016年6月27日、2016年7月21日、2016年9月4日、2017年6月21日、2017年7月12日)。また、さらに特別ゲストで現ブルーノート・レコーディング・アーティストであるキーボードとピアノのジェイムズ・フランシーズ(2017年1月16日、2019年1月16日)が絡む。黒田と彼は、年齢層は違うもものニュー・スクール大の同窓ですね。

 リズム・セクションの二人は出ずっぱりで、あとは曲により参加者が変わり、編成も変わる。90分強の演目は、ハービー・ハンコック「処女航海」、ケニー・バレル「ミッドナイト・ブルー」、バド・パウエル「クレオパトラズの夢」、リー・モーガン「ザ・サイドワインダー」、ドナルド・バード「シンク・トゥワイス」といったブルーノート絡み曲に加え、フランシーズの新作収録曲「スウェイ」やロバータ・フラックの大ヒット曲「エッチがしたい」も披露。それぞれに今様視点を加え、各奏者はそれぞれに存在意義をださんとする。とくに、フラーシーズを横目に気張っていた桑原は偉い。

▶過去の、黒田卓也
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201501310942048841/
http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201609201835285184/
http://43142.diarynote.jp/201612181010384754/
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
http://43142.diarynote.jp/201804051207119119/
https://43142.diarynote.jp/201809221638262424/
▶︎過去の、西口明宏
https://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
▶︎過去の、井上銘
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
https://43142.diarynote.jp/201706220952582448/
▶︎過去の、宮川純
http://43142.diarynote.jp/?day=20151015
http://43142.diarynote.jp/201608111103309626/
https://43142.diarynote.jp/201809290719113115/
▶︎過去の、桑原あい
http://43142.diarynote.jp/?day=20130908
http://43142.diarynote.jp/201612100926461885/
http://43142.diarynote.jp/201707101243147840/
https://43142.diarynote.jp/201710011917499392/
https://43142.diarynote.jp/201812220840383594/
▶︎過去の、角田隆太/ものんくる
http://43142.diarynote.jp/201608111103309626/
https://43142.diarynote.jp/201706220952582448/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
▶︎過去の、石若駿
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170621
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180404
▶︎過去の、ジェイムス・フランシーズ
https://43142.diarynote.jp/201701171118107802/
https://43142.diarynote.jp/201901180819479701/

<今日の、あれれ>
 年明け10日ぐらいまでの締め切りの原稿は旧年内にあげ、新年はのんびり過ごすというのが、例年の倣い。今年もそうし正月はのんびりできていいなあとタカをくくっていたのだが、1月第3週ぐらいからそれなりに気合いを入れないと大変になっちゃうって感じで、2月頭までいろいろと締め切りが並んでしまった。ま、こなせるだろうけど。だが、ここに来てPCの動作が遅くなったりするのがストレス。また新しいの買っちゃおうかと、一瞬思ったりもしちゃい……。

 代々木上原に新しくできたOPRCTという会場で、在NYのキーボード奏者のBIGYUKI(2016年11月20日)のショウを見る。土曜日とはいえ、17時半開演というのは、珍しい。ギターのランディ・ラニヨン (2016年11月20日、2017年1月24日)、ドラムのティム・スミス という3人で、ポスト・ソウル的な演奏を悠々繰り広げる。BIGYUKIは3つのキーボードを時に音色を変えつつ自在に操る。左側に置いていた鍵数の少ないキーボードはベース音送出主体。そして、それがとっても効き、グルーヴィ。また、ピアノ音色の際のノードの演奏が何気に訴求力あり。ギターのラニヨンはのべつまくなし弾くのではなく、手元のパッドでサンプリング・ヴォイスの送り出しもしていた。

 今回はゲスト・ヴォーカルも同行させていて、それはケンドリック・ラマーの曲で複数歌っている白人シンガーのアナ・ワイズ。彼女はただ歌うだけでなく、手元のテーブルにおいたエフェクターを扱い、自らの歌声をループさせたり、変えたりもする。けっこう、露出度の高い格好していな。

 何ゆえに日本人であるBIGYUKIはゴスペル経験もないにも関わらず、ATCQやタリブ・クウェリ、ベン・ウィリアムズ(2009年5月18日、2009年9月3日、2010年5月30日、2012年3月3日、2012年5月28日、2013年4月1日、2013年5月21日、2015年1月22日、2015年12月12日、2016年7月3日、2016年9月1日、2016年12月11日、2017年12月7日、2018年2月21日、2018年5月28日、2018年11月1日 、2018年11月26日、2018年12月15日 )らの物件に関与できるのか。彼はある種のレイヤーの感覚をキーボードで出すことができ、それが現代感覚を持つものとして好評を博すのではないかと考えていたが、日本人だからこそ出せる揺らぎとあちら流儀のファンキーさのナチュラルな所有が肝なのではないか。なんてことも、ぼくは実演に接しながら思った。

▶︎過去の、BIGYUKI
https://43142.diarynote.jp/201611211717002386/
▶過去の、ランディ・ルニオン
http://43142.diarynote.jp/?day=20161120
https://43142.diarynote.jp/201701251128533335/
▶過去の、ベン・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100530
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
http://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
http://43142.diarynote.jp/?month=201609
http://43142.diarynote.jp/201612171245154424/
http://43142.diarynote.jp/201712081715389473/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
https://43142.diarynote.jp/201805290906425481/
https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/
https://43142.diarynote.jp/201811271055049781/
https://43142.diarynote.jp/201812201004266842/
▶︎過去の、ATCQ関係者
http://43142.diarynote.jp/200508152007550000/ Q・ティップ
https://43142.diarynote.jp/201407221705302936/ アリ・シャヒード・ムハマド



 そして、渋谷・クラブクアトロに移動して、日本一のファンク・バンドであるザ・たこさん(2016年10月13日)のイヴェントに接する。フロム・オーサカだろう3組が出演した模様で、2組目の出演者の赤犬から、しっかり見る。

 うわ。名前はなんとなく認知していたが、赤犬ってこんな集団だったの。乱暴に書けば、ムード歌謡を今のわちゃくちゃお楽しみ感覚を通して、真っ向から提示する。ちょいホスト風のシンガーも、捨て身で笑いをとる(その様、すごい)3人のおじさんダンサーもいいじゃん。彼らはショウの最中、数度お召しかえをする。3人はフロアに降りて、客とチーク・ダンスを踊ったりもする。2菅やヴァイオリン奏者もいるバンド音もちゃんとしているし、パロディ風の曲も問題なし。それを様々な工夫とともに、大エンターテインメント表現と押し出す様になんの文句があろうか。あ、グループ名は大阪ロマンチカとか、もっと下世話なやつの方が似合うと思うけど。

 その後、格好も決めた4ピースのザ・たこさんが登場。最初にやった彼らにはめずらしい爽やか(?)曲はトヨタ自動車のTV-CMに使われたんだっけか? トヨタ素晴らしすぎじゃないかと、頭の中でぼくの企業礼賛が渦巻く。以下、もっとアーシー&ファンキーな曲が続き、ぼくの感激という名の頭の中のメーターは笑いとともに振り切れる。以下、言葉では書き表せないので省略……。

▶︎過去の、たこさん
https://43142.diarynote.jp/201610141749551400/

<今日の、最初の会場>
 代々木上原駅にほど近い、ちょいスタイリッシュかもと思わせる新築の4階建てビルの地下3階にあった。大きさは渋谷のオンエア・ウェストぐらいか。1階はギャラリーみたいになっていて、飲食も可能。ライヴ前にこのビルの4階で、BIGYUKIにインタヴューをする。クールさと軽さを併せ持つ人で、好印象。近年は成功するとLAに引っ越すミュージシャンが少なくない、なんてことも言っていたな。媒体は、ソトコト。インタヴューの場から、眺めがよくてびっくり。新宿の高層ビル群が遠くに一望できました。このビル、現代R&Bものをいろいろ出しているSWEET SOUL RECORDSの親会社の持ち物のよう。
 “好きに、楽に、新たなトリオ編成を披露してみます”というパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日、2019年1月7日、2019年1月11日)の新春公演第2弾は、若手のアフリカン・アメリカン辣腕二人を擁してのもの。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 2018年新作『Flight』はブルーノートから出しているピアノや鍵盤ベースを弾くジェイムズ・フランシーズ(2017年1月16日)とドラムのネイト・スミス(2012年5月28日、2015年8月5日、2016年2月16日、2018年2月21日、2018年11月1日)がついてのもの。これはまったくの初顔合わせで、ブルーノート東京がワールド・プレミアとなるという。とはいえ、フランシーズは曲により弾く楽器を変えたり、3人はスパっと曲を終えたりして、リハはやっていたのは間違いないが。

 フランシーズは1曲めはピアノのみ、2曲めは鍵盤ベースのみ、3曲めは右手ピアノで左手は鍵盤ベース(この組み合わせが多かった)とかえていき、 ブルース曲ではオルガン(音色キーボード? 反対側の横から見ていたので、見えなかった)も弾いた。また、スミスは他のセッションよりはジャズ的な叩き方で対応した言え、リム・ショットやブラシも印象に残る形で用いる。そして、メセニーはセミアコ中心でうれしそうに指を這わせる。今回の一連のメセニーの東京ギグは毎日新聞に公演評を書きます。

▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201901121341307532/
▶︎過去の、ジェイムス・フランシーズ
https://43142.diarynote.jp/201701171118107802/
▶過去の、ネイト・スミス
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150805
http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/

<今日の、勘違い>
 渋谷で野暮用をこなしてから、会場に向おうとしたのだが、あれれ渋谷で使える時間が思っていたよりかなり少ない。あわてて表参道に向かい、わああ。うっかり間違い、1時間早くついてしまった。まあ遅くなるよりはいいわけですが。今年の初ボケであります。

 毎新春恒例となっている、トランペットの田村夏樹とピアノの藤井郷子による、新宿・ピットインの昼の部と夜の部を続けてしちゃう大型公演(?)に行く。昼のほうは、田村と藤井のデュオ、田村とここではアコーディオンを弾く藤井とトロンボーンの金子泰子からなるGato Libre(田村曲を中心としたよう)、田村と藤井とドラマーだがここではかなりパーカッション奏者的な演奏する井谷享志のThis Is It!。どの単位も胸のすく即興と鋭敏なインタープレイに満ちるが、その一方でそれらの飛翔は線の太いメロディや情緒設定に則ってのものであるのだと今更ながら気づかされる。そして、その事実を頭に置くと、どんどん展開して行く様がおもしろいったらありゃしない。空虚ではない実のあるアヴァンギャルドである理由の一端は、そこにあるのだ。

 藤井は日記のように毎日メロディを認めていて、それは様々な彼女が抱えるユニットのレパートリーに使われてきている。そんな彼女は昨年秋に2枚組『Diary 2005〜2015』(リブラ)をリリース。それはアルバム・タイトルにあるように、彼女の2005〜2015年に日々書いた曲(118曲が選ばれている)がシンプルにピアノ一本で演奏されている。ただし、そこで演奏しいているのは、藤井のニュー・イングランド音楽院時代の学友である米国在住ピアニストの山岡優子。なぜ自分で弾かなかったのと問うと、「曲が難しいので、私がやろうとするとレコーディング日数がかかってしまう」。なんの装飾音もつかない、一番素の状態にあるそのピアノ演奏群はなかなかに高貴でクラシックぽく聞こえたりもする。今日のパフォーマンス(新曲が大半であったよう)に触れ、もう一度じっくり聞かなくてはとも思った。なお、『Diary 2005〜2015』の楽譜集も併売されている。音楽をする人は、対照しながら聞くと興味深くてしょうがないんじゃないだろうか。

<今日の、案内>
 この日は新年会があるため、今年は昼の部だけで失礼した。残念である。でも、そちらもとっても楽しかった。藤井は2018年に還暦記念と題し、パッケージとしてもまことプロなプロジェクト違いのCDを1月に1枚、12ヶ月で計12枚リリースした。その酔狂ながら独立独歩なアーティスト活動の自由を謳歌する所作を語った藤井へのインタヴューが、この20日売りのCDジャーナルに出ます。先に触れた『Diary 2005〜2015』もそのなかの1枚だ。

 今から12年弱前にロバート・グラスパー・トリオの『イン・マイ・エレメント』(ブルーノート)を聞いたときは、驚いた。これこそは、ヒップホップ要素を用いたリアル・ジャズ! これぞ、光り輝く同時代USブラック・ミュージック! と、興奮したものなあ。まだあったbmr誌のベスト10にも入れたはずだ。その後、グラスパーはハービー・ハンコック1970年代電気路線応用表現&ポスト・ソウル表現へ邁進し、アコースティック・ピアノ路線は休止。近年、DJを加えることで再活動している。

 六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日、2018年1月3日)、ダブル・ベースのヴィセンテ・アーチャー(2007年10月3日、2009年4月13日、2010年7月24日、2012年6月29日、2013年2月2日、2013年6月4日、2016年12月20日、2018年1月3日、2018年9月2日)とドラムのダミアン・リード(2016年12月20日、2018年1月3日)、そしてDJシャヒ・サンダンス(2003年11月18日、2003年11月22 日、2016年12月20日、2017年6月5日、2018年1月3日)がステージにあがる。サンダンスは時々の効果音送り出し送出に終始する。

 もろにヒップホップを介したリズム・セクション音にのり、悠々、気張ることなくグラスパーは指を這わす。昨年公演時には3度もソロ・パートを与えられたリードの今回のソロの出番はこの回は一度だけ、その事実にあらわれているように、よりグラスパーがピアノを弾いている時間は増えた。イントロでスタンダードをソロで長めに弾いたりもした。なんにせよ、その指さばきは無理がなく、鼻歌きぶんという言い方もできるだろう。

 オープナーはプリンス(2002年11月19日)の「サイン・オブ・ザ・タイムス」(その際、シャヒードはオリジナルに入っていた“タイム”というプリンスの声を、別の曲から持ってきただろうもので入れる)で、終盤にはスティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)の「リヴィング・フォー・ザ・シティ」。それらを弾き込まず、だがジャズの深淵とつながったもやもやを介して彼は聞き手に送り届ける。6曲だか、披露したか。横にはキーボードも置いていたが、それは1度も弾かなかった。

 アーチャーとリードは、『イン・マイ・エレメント』でも演奏していた奏者である。だが、本当にコンビネーションがアップ・デイトされていて、気持ちいい。そして、この晩の演奏に触れていると、『イン・マイ・エレメント』は間違いなく2000年代ジャズの金字塔となる傑作であったが、今となってはすこし攻めすぎで、窮屈という思いを得たりもする。どっちが研ぎ澄まされたジャズ度を持っているかといえば、もちろん『イン・マイ・エレメント』。だが、ヒップホップ時代のスポンテニアスな人力ビートというものをより確立したアーチャーとリードともっと広い層を見てピアノを奏でるようになったグラスパーの重なりのほうを、今のぼくなら取るのかもなあと思いながら、70分のショウに触れていた。ただ、DJを起用したいなら、別の人材を試してほしいとも思うが。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
▶過去の、ヴィセンテ・アーチャー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090413
http://43142.diarynote.jp/?day=20100724
http://43142.diarynote.jp/201207031353196616/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
https://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
▶︎過去の、ダミアン・リード
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
▶︎過去の、シャヒ・サンダンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm 18日と22日。18日の方にオリヴァー・レイクの息子と記しているが、ジーン・レイクの息子のよう。
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/ ロバート・グラスパー・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/


 その後、新宿・K’sシネマで2016年米国映画「サイドマン:スターを輝かせた男たち」を見る。

 何よりハウリン・ウルフの過激サポートで知られるギタリストのヒューバート・サムリン(1931年11月16日〜2011年12月4日)、マディ・ウォーターズのバンドで活躍したピアニストのパイントップ・パーキンス(1913年7月7日〜2011年3月21日)と同ドラマーのウィリー・“ビッグ・アイズ”スミス(1936年1月19日〜2011年9月16日)という、3人のブルース・マンのサポート偉人にスポットをあてた映画だ。2013年米国映画『バックコーラスの歌姫たち』のようにロックやソウルのスターたちを支えたバックグラウンド・ヴォーカリストたちにスポットを当てた映画はあったが、まさかブルース・マンのそれを扱う映画があったとは……。

 そんなに豊富にマテリアルが残されているわけではない。でも、よく構成しているし、伝承部分でのイラスト使用も違和感はない。だから、周辺証言者の発言映像は多め。ボニー・レイット(2007年4月6日)、EC(2006年11月20日)、キース・リチャーズ(2003年3月15日)、ジョー・ボナマッサ(2009年9月16日)、エルヴィン・ビショップ(2017年7月31日)、ほんと仲良しそうなテデスキ/トラックス夫妻(2016年4月1日、2014年2月11日)、エアロスミス(2011年11月30日)の二人、2017年に亡くなったグレッグ・オールマン(一瞬、ウィリー・ネルソンかと思った)らいろんな人が登場。ブルースがなかったらロックは、、、みたいな言わずもがなの発言も出てくるが、偉大なサイド・マンたちの存在を借りてブルースの成り立ちや魅力、マディやウルフの存在を伝えようとしているところもあって、ブルース門外漢が見ても比較的わかりやすい映画になっているのではないか。字幕ははしょりすぎと思えたものの。

 ハウリン・ウルフの人間の良さを多くの人が語ったり、ウルフとサムリンが親子以上の絆を持ち合っていたり、映画「ブルース・ブラザース」のシカゴ街頭でのジョン・リー・フッカーの演奏シーンでパーキンスとスミス(レビュラー・グリップで叩いている)が伴奏しているが、実はマディ・ウォーターズが風邪で出られなくなり急遽フッカーが呼ばれたという話を監督のジョン・ランディス(ここのところあまり話を聞かないが初老紳士という感じで、なにより)が該当映像とともに語ったり。など、へ〜えという話はいろいろ。ジミ・ヘンドリックスがヒューバート・サムリンから影響を受けていたという話も出てきて、なるほど意識したことはなかったがありえるか。また、2011年にパーキンスとスミスが双頭リーダー作で、グラミー賞のトラディッショナル・ブルース部門で勝者となったことも、ぼくはこれを見て初めて知った。奇しくも、3人とも2011年に亡くなっているが、それら事実はこの映画を作る引き金になっているかもしれない。

 映画には、なんと3人が一緒のステージに立っている映像も出てくる。監督は、テレビの世界で成功しているスコット・ローゼンバウム。彼は2009年にロックを題材においたドラマ映画『The Perfect Age of Rock’n’Rool』を初映画監督していて、その共演はその作品のキャメオ映像用に撮られたもののよう。すでに関係はあったゆえに、3人の発言もいろいろ入っているし、ことはスムースに進んだのだと理解できる。

▶過去の、ボニー・レイット
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶過去の、エリック・クラプトン
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
▶︎過去の、ジョー・ボナマッサ
https://43142.diarynote.jp/200909181207451891/
▶過去の、キース・リチャーズ/ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
▶︎過去の、エルヴィン・ビショップ
https://43142.diarynote.jp/201708081443281390/
▶過去の、テデスキ・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
https://43142.diarynote.jp/201604020743314542/
▶︎過去の、エアロスミス
http://43142.diarynote.jp/201112041056176581/

<今日の、うるおい>
 基本、ずっと昼間晴天続きの日々が続いている。だが、今日は断続的に降雨があった。雨天は嫌いだが、乾燥しまくったなかのそれにはホっとした心持ちを感じてしまう。濡れた路面にほのかな浪漫を感じた。
 六本木・アスミック試写室で、2018年のノルウェー映画「ウヤト島、7月22日」をまず見る。2011年7月22日にノルウェーで起こった77人もの命が奪われたテロを扱う映画だ。監督は、1960年同国生まれのエリック・ポッペ。

 練られた作品。まずオスロにある政府庁舎前の爆発事件がおこされ、その犯人がノルウェー労働党青年部のサマー・キャンプが行われていたウトヤ島に渡り、さらに若い参加者たちに銃を乱射したというのが、素材となる事件。映画は最初のテロは実際の映像を手短にまとめ、2番目のテロ行為をじっくりと扱う。そのさい監督が取った手法は、島での凶行が行われた72分間を長回しのワン・カットで撮るというもの。しかも、犯人のことは一切描かず、一人の少女を中心に逃げ惑うキャンプ参加者たちを追うことでテロの悲惨さを描写。さらには、一切音楽を使わず。つまり、見えない犯人が打つ山ほどの銃声、キャンプ参加者の会話、鳴き声、嬌声だけが、映画の構成音。それは、このフィクションのドキュメンタリー性を高める。

 そんな作りのため、映画は重く、暗く、ある意味単調。だが、それはノウルェー国民にとってあの事件はどうしようもないほどショッキングな出来事であったということも知らせるか。映画中、唯一音楽が出てくる箇所があって、それは少女が歌を口ずさむシーン。その曲は、シンディ・ローパー(2011年3月16日、2012年3月9日)の「トゥルー・カラーズ」だった。

 映画の最後に、このテロの犯人のような排他的な極右の欧州での台頭を危惧するという監督のコメントが出される。そして、この映画は様々な証言をもとにした作り物であり、物事の正解はひとつではない、との文言も出てくる。

▶︎過去の、シンディ・ローパー
https://43142.diarynote.jp/201103171354125352/
https://43142.diarynote.jp/201203100844041105/

 続いては、市ヶ谷・日本シネアーツ試写室で2014年英国映画「ノーザン・ソウル」を見る。英国ユース・カルチャーもの。監督は1965年ランカシャー州生まれの、エレイン・コンスタンティン。

 舞台はイングランド北西部のランカシャー州にあるバーンズワース。それ、架空の地名かもしれない。時代は、1974年(よく、劇中の古い車あつめたな)。マニアックな60年代米国ソウルをDJが回し、それに若者がむらがっていたという事項を下敷きにする青春友情映画だ。ストーリーは他愛ないが、誇張したものであってもあのころの英国地方若者事情を伝えるということだけで興味深いし、エドウィン・スターらソウルだけがかかるものに引力がないはずがない。こうした英国の米国音楽享受の様は1960年代のモッドのマニアックな音楽趣味のありかたを思い出させ、また90年代のレア・グルーヴのムーヴメントに繋がるかと思えもした。やはり、英国形而上は随所にある。R15+指定がなされていて、セックス描写が激しいのかと思えば、それはドラッグに関する事項が多いゆえのものか。

 米国南部で作られる剛毅でアーシーなサザン・ソウル、それに比して米国北部都市から送り出されたノーザン・ソウルは洗練とキャッチーな親しみやすさを持つ……。僕はノーザン・ソウルを米国の往年ソウルの属性として捉えていたが、資料には“1966年ごろからイングランド北部で好まれていたソウル”との注釈あり。へえ、そうなの?

 そして、南青山・ブルーノート東京で、ギターのパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日、2019年1月7日)の新春来日ライヴ3種出し物のその2を見る。ファースト・ショウ。ビッグ・バンド共演に続くその2とその3はトリオ編成であるのだが、その2のほうはドラムレス、その3のほうはベースレスと変則編成を取っている。

 ユニティ・バンド後のメセニーのグループのライヴに参加してきている、マレーシア生まれオーストラリア国籍を持つ1984年生まれのリンダ・メイ・ハン・オウ(2019年1月7日)がダブル・ベースを弾き、1981年英国生まれのグウィリム・シムコックがピアノでつく。オウはデイヴ・ダグラス(1999年9月24日)やラルフ・アレッシ、テリ・リン・キャリントン(2004年9月7日、2005年8月21日、2008年12月1日、2009年6月15日、2010年9月4日、2014年9月16日)らとの仕事を重ね、ピアノのファビアン・アルマザン(2013年8月18日、2016年7月6日、2018年5月16日)の奥さんでもあるんだっけか。一方の、シムコックはUKプログ・ロック名士であるビル・ブラフォードが考えるジャズ・コンボであるアースワークスに入っていたことがある。

 メセニーは電気のセミアコ、シタール・ギター、アコースティック・ギターを弾く。音質のせいか弾きまくらないニルス・ヘニング・オルステッド・ペデルセンという印象も得た達者なオウは終盤の「ファースト・サークル」のさい、ハミングを入れる。やはり、この曲は肉声が入ったほうがよろしい。シムコックは細心の注意でもって、ギター音と被らない確かな音を一歩下がって供給。ときにはクラシカルな指さばきも見せ室内楽的手触りをたし、なんかエフェクトを軽くかけたような音でソロをとるときもあった。演目は自作からスタンダードまで。しかし、“ア・ナイト・ウィズ デュオズ&トリオズ”という公演表題はナゾだ。

▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
▶︎過去の、リンダ・メイ・ハン・オウ
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
▶︎過去の、デイヴ・ダグラス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm マサダ
▶過去の、テリ・リン・キャリントン
http://43142.diarynote.jp/200409070203440000/
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200812141259213603/
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
https://43142.diarynote.jp/201409171722239857/

<今日の、人それぞれ>
 根性がないので、寒がり(暑がりでもあるが)だ。とはいえ、下半身は何気にそうではないと自負を持っている。というのも、下は薄着。聞けば、冬におおくの人はタイツを併着するというが、ぼくにはそれはない。さすがにスキー場では履いていたが、通常環境では暑さと窮屈さを感じてしまい、イラネーとなってしまう。その下半身の冷気に対する耐性は、中学校時代のクラブ活動からきているんじゃないか。サッカー部に入っていたのだが、なぜか真冬でも半ズボンで練習しましょうとなっていたから。あと、小学生低学年のころ、ぼくは半ズボン小僧だった。なんか、長いズボンを履くのが恥ずかしかった。今となっては?を30個ぐらいつけたくなる美意識を持っていたなー。・°°・(>_<)・°°・。
 渋谷・WWW。女性がフロントにたつ日米のロック・バンドを見る。

 まず、女性(ヴォーカル、ギター)、女性(ベース、ヴォーカル)、中性的な男性(ドラム、ヴォーカル)からなる羊文学。うつろいやすい青年期情緒をしなやかオルタナ系ギター・サウンドとともに開く3人組だが、すぐに感心する。歌詞は、日本語のよう。曲/コード使いがしっくりくるし、またバンド音も良い。ずっと洋楽を聞いて来たじじいにもなんのストレスもなく入ってくる。この手のバンドで女性だとベースはピック弾きが多そうだが、2フィンガーでぶりぶり弾いていてへえ。その総体、かなり好感触。

 続いて、ナッシュヴィル育ちで今はNYに住んでいるようなソフィー・アリソン(ヴォーカル、ギター)のソロ・プロジェクトであるサッカー・マミー。デビュー作『クイーン』はファット・ポッサムから! 羊文学の面々はまだ大学生のようだが、アリソンも21歳とのこと。こちらは、アヴリル・ラヴィーン(2002年8月8日)が好きなのが顔つきでなんとくなく察させる小柄なアリソンを男性3人(ギター、ピック弾きのベース、ドラム)がサポートする。

 ベッドルームのギター弾き語り表現が評判を呼び、バンド編成でデビューした彼女だが、基本はアリソン+伴奏音というノリ。まっすぐ、自分の歌とメロディをときにキラキラしたものを出しながら彼女は提出。終盤、サポートの3人が下がり3曲電気ギターの弾き語りもした。うち、一つは彼女のシングルB面曲として出しているブルース・スプリングスティーンの「アイム・オン・ファイアー」。客は若い人が多そうだが、スプリングスティーンの名前を彼女が口に出すとかなりの歓声があがったのは謎。オレ、リアルタイム世代だが、まったくスプリングスティーンに興味が待てない。バンドだと意外に変哲のない地味ロックという感じも得たが、それは羊文学に触れた後だったからか。透明感を持ちつつ押し出しも持つアリソンはヴォーカル力ということにかけては上だが、他の項目は羊文学のほうが優っていると感じたから。事実、アリソンたちは羊文学のパフォーマンスを大喜びで見ていたし、ステージからは愛ある謝辞を彼女たちに送った。

▶︎過去の、アヴリル・ラヴィーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm

<今年の、拍手>
 申告用の、支払調書がP社から届く。今年の、第一号。これが届くと、年が変わったんだと実感する? ああ、しばらくしたら、税理事務所に送る領収書をまとめなきゃなあ。 しかし、新年早々に届くと、清々しい。清廉な企業という所感を得るか。かと思えば、3月15日間際にアリバイ作るように送ってくるダメ会社もある。そのころには、とっくに申告を終えているぞ。

 渋谷・ル・シネマで、稀代のオペラ歌手であるマリア・カラス(1922〜1977年)のドキュメント映画(2017年フランス映画で、監督はトム・ヴォルフ。3年をかけて作ったという)を見る。要約すれば、“スターは、天才は、つらいよ”という内容か。

 要点は、彼女が自ら認めた未完の自伝や愛人や友人にあてた手紙をソースとすることに成功し、独白としてそれらを朗読する声(映画でマリア・カラス役も演じたことがある、フランス人女優のファニー・アルダンによる。なんか、当人のモノローグのように感じた)によって、彼女の人生がつづられていくこと。ゆえに、多くのドキュメンタリーに見られる周辺者の発言映像はあまりなし。彼女の少女時代の歌の先生の映像は入れられているが、その女性がタバコをぷかぷかしながらしゃべっているのは笑かす。別に完璧に生涯を追っている訳でもないので、映画の統一した流れを得るためにそれは使わない方がよかったのではないか。そのかわり、写真、プライヴェイト映像、舞台映像などはいろいろ出てくるのだが、本当にこれらしかなかったの? 他の音楽ドキュメンタリーに触れてきたぼくには構成/編集があまり巧みではなく(歌唱部分を延々と流すのは、彼女の音楽を大切にしている。と、理解できるが)、画質がよくないものも少なくなく、ネタが貧弱に感じてしまったのだが。アンダーレイテッドな人ならともかく、彼女はそうじゃないでしょ。もし、これらが周到なリサーチの末の決定的な材料なら、カラスは不幸な人だ。

 ギリシャ系アメリカ人(のちに市民権を放棄)で、米国〜ギリシャ〜イタリア〜フランスといったように居をかえ、ある意味、気高くも人間臭く生きた女性……。最低でも、4カ国語はしゃべれたのかな? オペラのオの字も知らないし、今のところは知りたいともあまり思わないが、数奇なストーリーを抱えたマリア・カラスという人には興味があり、ぼくはこの映画を見に行った。なるほどと思わせれるところももちろんあるものの、もどかしさも感じちゃったなー。些細なところでは、もう少しかつての社交界(に出入りしていなかったら、愛人関係にあったアリストテレス・オナシスとも出会わなかったろう)やセレブリティについて踏み込む部分もほしいとも思えた。やはり、抱えた”世界”がバカでかかったんだろうナというのは痛感させられました。

<今日の、M2>
 昨年末から滞日しているマーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日、2018年5月16日、2018年5月24日、2019年1月3日)を夕方にインタヴューした。本当はブルーノート東京の年またぎ帯公演の最終日の4日にする予定だったが、この日に変更。すごい、日本にいるんだなー。『アフロディジア』、『レイド・ブラック』(ともに、ブルーノート)と強いアフリカン・アメリカン意識を掲げたアルバムを出していること、ブルース的な要素も孕むサントラ『Marshall』(ワーナー)をリリースしていることもあり、今回の媒体はBlues &Soul Records誌。ところで、彼がフランス語も話せるというのは聞いていたが、フランスのラジオ番組でもしゃべっているということで、ラジオDJ風にフランス語ですらすら喋り始めたのにはおおお。この6月に60歳となる彼、日本では還暦と言い少し特別な意味を与えると伝えたら、アメリカではただ年をとっちゃたねで終わってしまうよなあと返事。例の記念コスチュームのことを教えると、赤い帽子はヤだけど、赤いベストを着てステージに出てもいいかもなーと言ってました。
 なお、現在ミラーが楽しんでやっている 米国ラジオ放送は、車に乗る人がよく聞くというデジタル・ラジオ放送であるSirius XMの”Miller Time"という番組。チャンネル67で、日曜午後6時から9時にかけて放映されているそう。

 アップリンク渋谷で、孤高の西ドイツの現代美術家/パフォーマー、教育者、社会/政治活動家である(1921〜1986年)のドキュメンタリー映画の試写を見る。原題「Beuys」(ボイスのドイツ語表記)。2017年ドイツ映画、監督はアンドレス・ファイエル。彼は300時間もの映像や肉声、2万枚近くの写真をほりおこし、真の自由や民主主義にコミットし続けた芸術家であったボイスの様を伝える内容になっている。過剰な説明はなされず、とまどう人もいるかもしれないが、その像と生き様がひたひたと浮き上がっているのではないか。

 適所につけられた音楽がとても良い。ちょい暗い質感を与えすぎかもしれないが、効果音的なものからヴァイブラフォンを使うジャズ的断片まで達者。冒頭に“孤高”と記したのは、その音楽がそういう思いを誘発させたからでもある。エンド・ロールにはドイツ名っぽい二人の名前がクレジットされていた(と見えた)。

<今日の、4649>
 その後、友人たちと新年会じみた飲み会。試写のことを話すと、ボイスは80年代中期にニッカウヰスキーのCMに出たことがあったよねと、すぐに反応する者あり。その後、河岸が変わると珍しく車が話題にあがり、車ナンバーの話になった。一人が買い換えを考えていて、納得のいく番号にしたい(今、選べる制度があるらしい)、と言う。そんなこと、どーでもいいぢゃんと言ったら、少し嫌な顔をされた。一方で、エースケはそうだよねとも納得もしていたな。昔、頻繁に乗り換えていたとき、車種にはこだわっていたが、それにつくナンバーに関しては無関心。というか、そういうことにシノゴ言うのがイヤな性分なのと、うだうだ考えることが面倒クセー。4949じゃ、少しいやかもしれないが、逆に面白がってつけちゃうかもしれぬ。うちの固定電話の番号をいいねと褒めてくれる人もいるが、与えられたのを使っているだけで、携帯電話の番号にもこだわったことはない。人、それぞれー。いちおう、おまえは1919が似合うと、推しておきました。
 トランペッターのエリック・ミヤシロ(2010年5月11日、2011年3月10日、2011年3月28日、2011年4月21日、2011年8月6日 、2014年9月7日、2015年9月27日、2016年1月7日、2017年7月28日、2017年11月8日2017年12月5日)が率い指揮するビッグ・バンドに、ギターのパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日)が加わるという出し物。2015年のブルーノート・ジャズ・フェスティヴァル(2015年9月27日)でお披露目されたもののアップ・デイト版ですね。

 まず、オーケストラだけで2曲を爽快に演奏。サックスの本田雅人と近藤和彦と小池修と庵原良司と吉田治、トランペットの佐久間勲と奥村晶と二井田ひとみと小澤篤士、トロンボーンの中川英二郎と半田信英と池田悠人と朝里勝久、ピアノの林正樹、電気ベースの納浩一、ドラムの高橋信之介という面々なり。

 その後は納浩一が下がり、メセニーと彼が同行させるリンダ・メイ・ハン・オウ(ダブル・ベース。1曲だけ、4弦のエレクトリック・ベースを弾いた)が登場し、以下は完全に外国勢と日本勢が重なる曲が披露された。素材は「ドリーミング・トゥリーズ」や人気曲「ファースト・サークル」などメセニー曲、アレンジはミヤシロがしたようだ。メセニーはいろんなギターを持ち替え、シンセ系音色で飛ばす曲も散見され、何気に林正樹もキーボードを多用する。もう、みんなニコニコ¡という感じで、ステージ上にはいいヴァイブスがあふれる。2日間の最初のセット、リハを介してのものとはいえ、日本人勢には緊張もあったかな? ともあれ、3年半前の共演経験をちゃんと踏まえての、実のある協調がそこにはあった。なるほど、これはメセニー御大も満足の、今後も続いて行く可能性大の出し物であったと思う。

▶過去のエリック・ミヤシロ/ブルーノート東京・オールスターズ・ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/?day=20100511
http://43142.diarynote.jp/?day=20110310
http://43142.diarynote.jp/201104041100266528/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110421
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201601090750252990/
http://43142.diarynote.jp/201708081429085086/ B.B.STATION
http://43142.diarynote.jp/201711091333526195/ マシュー・ハーバーツ・ビッグ・バンド
https://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/

<今日の、ミュージック・ジャンキー>
 会場には顔見知りの好漢シンガー・ソングライターもいて、年初の挨拶をしたんだが、いたく御満悦の様子。(これを見て)菅入りの表現もやってみたいなーとも、申しておりました。うん、満足度の高い公演だったよね。と思うとともに、その Saigenji (2006年6月27日、2007年11月27日、2009年3月14日, 2009年8月9日、2012年6月13日、2013年1月7日、2013年2月11日 、2013年4月12日、2014年2月9日、2016年2月11日、2016年11月30日、2017年2月11日、2018年5月8日)の晴れ晴れした笑顔にふれて、ぼくたちはあなたの超絶音楽賛歌曲「ミュージック・ジャンキー」を聞くと、同様の至福感を得るんだよと言いたくなった。それ、いろんな人名や音楽の種類や国が山のように出てくるが、歌詞を忘れたことはないと前に言っていたことがあったなー。
▶過去の、Saigenji
http://43142.diarynote.jp/?day=20060627
http://43142.diarynote.jp/200711290932200000/
http://43142.diarynote.jp/200903161734533723/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090809
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130211
http://43142.diarynote.jp/?day=20130412
http://43142.diarynote.jp/?day=20140209
http://43142.diarynote.jp/201502140823232703/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160211
http://43142.diarynote.jp/201612030915436915/
http://43142.diarynote.jp/201702120725278375/
https://43142.diarynote.jp/201805091613022617/

 ECMのリーダー録音アーティストであるドラマーの福盛 進也 (2018年1月7日、2018年4月7日)と、清新ピアニストの佐藤 浩一 (2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日)のギグを、渋谷・公演通りクラシックスで見る。生音による公演だが、それぞれの楽器には立派なマイクがセッティングされており、録音がなされていた。渋谷・公演通りクラシックス。

 まったくのデュオによる実演。フリー・インプロヴィゼーションではなく、きちんと曲を素材に二人が対話しあうという内容を持つ。演奏された曲は二人のオリジナルであったようで、それらはかなりメロディ性を持つ。ときに音がラウドになる曲もあったが、基本はしっとり目に流れていく傾向の曲が多かった。佐藤の演奏から始まり、それに福盛がドラム演奏を加えていくというお膳立ての曲の方が多かったが、福盛の演奏から始まる曲もあり。佐藤は譜面を置いていたが、福盛はなしで悠々、繊細にことにあたった。

 ドラムとピアノという楽器をきっちり研鑽した者、そして豊かな歌心をちゃんと持つ即興音楽家だけが分かち合える平地に立っての、飾らない宙に溶ける楽器音の尻尾が綺麗なパフォーマンス。福盛は例によりスティック、ブラシ、マレットを駆使し(この晩は会場そなえつけの、カノウプスを叩いていた)、佐藤は本田珠也(2000年5月9日、2002年9月22日、2003年6月10日、2004年10月13日、2007年12月4日、2011年5月5日、2012年7月16日、2013年7月27日、2015年5月20日、2018年1月19日、2018年4月7日)のICTUS Trioで聞かせる菊地雅章(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日、2015年7月8日、2016年6月11日)流れにあるような黄金のほつれ開陳はなしにまっすぐな指使いで対応する。

 即興という窓口を見据えた楽器音とともに純度の高い音楽/ミュージシャンシップが送り出されたわけだが、本来同居しづらいストイックさと微笑みが見事に重なり合っていたとも指摘したい。切れ目なしに曲が続けられ、あまりMCをしないのも、ぼくには心地よかった。この後すぐにミュンヘンに帰国する福盛は、2月にもレコーコーディング等で来日することになっているという。

 今日は福盛の誕生日とのこと。2セット公演の最後に演奏された曲は、この日に福盛が書いたそうな「バース」という曲。慈しみに満ちた、美曲であった。佐藤のハーモニーのつけ方も冴えていた。

▶︎過去の、福盛 進也
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
▶過去の、本田珠也
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/200410162306570000/
http://43142.diarynote.jp/200712151621260000/
http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
http://43142.diarynote.jp/201801200930278094/
▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611

<今日は、初めての武蔵小杉>
 昼間に高校サッカー選手権の準々決勝を見に、川崎市の等々力陸上競技場に行く。この日の最高気温は15度とか言われていたので、ヘタレのぼくは行くことにしたんだけどね。最寄り駅の一つである武蔵小杉駅まで、渋谷から東横線の特急だと15分弱。駅からは、徒歩20分。遠いと思っていたが、都下にある味の素スタジアムよりも行くの楽じゃん。実は同じ敷地内にある等々力アリーナには、1996年にビースティ・ボーイズの公演(リー・ペリー〜2004年8月7日、2007年4月5日〜も同行していたっけ?)を見に言ったことがあったが、そのときは車で行ったから、ちゃんと鉄道使用による行き方を確認することはなかった。
 武蔵小杉といえば、今タワー・マンションが乱立していていろんな弊害も指摘されており、なにかと話題(?)の土地。これは興味深いと少し家を早めに出て、等々力陸上競技場に行く前にリサーチ。へえ、よく駅周辺にあれだけビルを建てる土地を確保したな。地上げ屋頑張ったのかなー。もう人工臭ばりばりの街並みがあるが、その横にはかつての細々した風景も残っている。南口には飲み屋が軒を連ねる小道もあった。その対比はすごいな。うーむ、誰の主導で、このドラスティックな街の書き換えがなされているのか。
 競技場の道すがらには、高層ビル建設反対みたいな幟を出している家もあり。また、途中には(その人口増加に伴うものか)完成間近の小杉小学校もあり、その外観はお洒落な商業施設のようであった。競技場の手前にはそこそこな広さの神社もあり、競技場奥にはでっかい池があって、釣り堀施設もあった。ほのぼの。
 チケットはどこに座っていいものが、当日1500円。チケットの絵柄は、高校時代(?)の乾選手。チケット販売者は高校生であった。さすが、売店ではビールを売っていなかった。外観はそれなりに立派なんだが、川崎フロンターレのホーム・スタジアムでもある等々力陸上競技場は陸上トラックがある駄目スタジアム。増改築を経て妙な雰囲気を少し持っている(ゴール裏は椅子がなく未だ立ち見席だった。まあ、サポーターの向けゆえに、それは合理的かもしれが)が、今Jリーグを2連覇している強豪チームに見合ったスタジアムとは思えない。まあ、それでも、FC東京の味の素スタジアムよりは見やすいとは思うが。かつての親会社であり主要株主の不実(富士通と表記する人もいる)にワープロ“親指シフト”の恨みをもっているため、フロンターレに思いを入れたことはないが、パっと見は悪いチームではないし(少なくても、FC東京よりは……)、これだけスタジアムに来るのが楽なら、今年のACLの国際試合は見に行こうと思った。
 2試合を見る。27000人収容とかのスタジアムにはけっこう人が入っていた。15000人ぐらいいたのではないか。高校生応援団はゴール裏ではなく、バックスタンドに位置するんだな。ぼくはそれゆえ、試合の展開はとっても掴みづらくなるが、がらがらのゴール裏のコンクリートにのんびり座って観戦。というのも、そこは陽がさんさんと照らす場所であったから。ほんと暖かくて、コートを脱いでぼくは見ていた。真冬にこんなに陽光を浴びるとは思いもしなかった。それには、大マル。
▶︎過去の、リー“スクラッチ”ペリー
https://43142.diarynote.jp/200408071336510000/
https://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
https://43142.diarynote.jp/200806121400260000/


 昨年『レイド・ブラック』を米国ではブルーノートからリリースしたマーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日、2018年5月16日、2018年5月24日)のワーキング・バンドのギグを見る。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 同行者は、アルト・サックスのアレックス・ハン(2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日、2018年5月24日)、トランペットのラッセル・ガン、キーボードのジュリアン・ポラック、ドラムのアレックス・ベイリー(2016年9月17日、2017年1月7日、2018年5月24日 )。今回のバンドは、前回から二人入れ替わっている。

 新任トランペッターのラッセル・ガン(1971年シカゴ生まれ。かなり若く見えた)は1995年にミューズからデビュー作を出して以降、15枚を超えるリーダー作を出している中堅。最初のアイドルはLLクールJだったという彼だが、もうもろにストレートなもの(実は彼、ウィントン・マルサリス〜2000年3 月9日〜のお気に入りだ)からエレクトリック〜ヒップホップ流れのものまで、なんでもござれのプレイヤー。2013年には電気トランペットを手にしてブラック・サバス曲集もリリースしているが、そこにはブランフォード・マルサリス(2001年10月24日、2010年3月8日、2010年10月21日)やロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日、2018年1月3日)、トロンボーンのフレッド・ウィズリー(1999年10月25日、2007年2月2日、2007年2月4日、2007年4月18日、2007年9月13日)2008年4月1日、2014年10月28日)がフィーチャーされる曲もあった。彼は『レイド・ブラック』のレコーディングにもちょっとだけ入り、ホーン・アレンジをしている曲もあった。

 もう一人のニュー・カマーである1988年生まれの白人鍵盤奏者のジュリアン・ポラックは、クラシック指揮者/指導者の父親とコンサート・ピアニストの母親のもとに生まれたエリート君。西海岸バークレーで育ち、高校卒業後はニューヨーク大学で音楽を専攻し、現在はロサンジェルスに住んでいる。そんな彼はクラシック(オーケストレーションが大得意)、ジャズ、エレクトロまで幅広く関わっているが、ここでは並べたいくつかのキーボードだけを弾いた。彼は、『レイド・ブラック』には入っていない。

 そして、ヴォーカル・パフォーマーのバタースコッチ(本名アントワネット・クリントン。1985年サクラメント生まれ)が中盤の2曲とアンコールでフィーチャーされる。すごく性格良さそうなヤンキー髪型のおねえさん。ピアノを弾きながらヒューマン・ビートボックスをかまして好評なのは知っていたが、登場しての一曲目はアコースティック・ギターを弾きながら、スタンダード「サマータイム」(陰気すぎて、ぼくはあまり好きになれないガーシュイン曲だなあ)を始める。で、その際彼女はマウス・トランペットを披露。そういうこともするのか。他に、ヒューマン・ビートボックスや素直な歌唱も彼女は披露した。

 昨年末から続く、6日間2ショウ帯公演の9つ目のショウ。キー曲を柱にいくつかの曲は入れ替えてマンネリを避けているようだが、飽きた感じは出さずに、聞き手に両手を広げながら演奏をすすめていく様はまことプロ。もともとぼくはロックから音楽偏愛の道に入ったので“演奏がうまいことこそは善”という考え方はしないものの、バシっと決めやエンディングが決まる彼らの演奏を聞いて気持ちいい、上手であるのは一つの正義になるナと思ったりもした。そういえば、ハンとガンの2管も絶妙な重なりを見せていて頷く。実はぼく、生理的に軽めなハンの演奏を買っていないがそのセクション音で感心したせいか、彼のソロもこれまでで一番よく聞こえた。

 スラッピング、ツー・フィンガー、サム・ピック(過去、あんなにしたっけ?)など様々な奏法を介しつついろんなグルーヴ/アフリカ性を抱えた電気ベース演奏をするミラーだが、背後にはサブ4弦やフレットレスなども置いていたものの、一切持ち替えずおなじみのジャズ・ベース型の4弦を一貫して抱える。ベース・クラリネットも一切手にしなかった。それ、彼の公演においては初めてのことであるかもしれない。また、曲によっては控えめにプリセット音を敷くものもあり、それも初めて接する? これについては、前にもやっていたが認知していなかったとする方が自然かな。

 新作の曲を中心に、昔からけっこう披露している「TUTU」とともに、やはりミラーによるマイルズ・デイヴィスへの制作/楽曲提出曲である茫洋曲「アマンドラ」を演奏したのには驚く。これ、エレクトリック・マイルス曲集も2007年に出しているラッセル・ガンがバンド入りしたからこその選曲ではないだろうか。

▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
https://43142.diarynote.jp/201805201310351671/
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
▶︎過去の、アレックス・ハン
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
▶︎過去の、アレックス・ベイリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
▶過去の、ウィントン・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
▶過去の、ブランフォード・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201003101340038868/
http://43142.diarynote.jp/201010221631583852/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
▶過去の、フレッド・ウェズリー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200704251224130000/
http://43142.diarynote.jp/200709171112310000/
http://43142.diarynote.jp/200804030050390000/ 
https://43142.diarynote.jp/201410301514399746/

<今日が、2018年最初のライヴの日>
 いつもより、少し早いか。と思ったら、昨年もグラスパー・トリオを3日に見ているんだな。表参道駅に降りたら、人がまばら。ブルーノート東京への道すがらも空いていない店舗も多く、まだ世間はちゃんと稼働していないとの印象を強くする。と思ったら、会場内はいつもの賑わいで一気に日常が戻る心持ちを得た。実は、ぬる〜い正月、大好き。ぼくはバチあたりなんで、初詣もおみくじもまったく興味ないんだけど。ずっと晴天日が続いていて、昼間は温室にいるがごとしで\(^o^)/。

 1990年代上半期、ヒッポホップ界で音楽的にもスタンス的にももっとも清新さをまとい、またセールス上も大成功した南部アトランタのティームが、スピーチ(トッド・トーマス)率いるアレステッド・ディヴェロップメント(2000年4月27日、2000年8月5日、2001年2月3日、 2002年4月17日、2013年4月19日)だ。デビュー時にグラミー賞もちゃんととったにも関わらず、その約10年後には失速。じっさい、プロダクツはあまり光ったものではなかったが、それこそはデビュー作があまりに素晴らしすぎた担い手の悲劇とも言いたくなる。本国ではアレステッド・ディヴェロップメントとというと、4シーズン作られた同名TVドラマを多くの人は想起するというからなー。とはいえ、スピーチたちは活動を続けていて、アルバムも2〜4年おきにずっとリリースしてきている。で、2018年秋リリースの新作『Craft & Optics』(Vagabond)は肉声や管音の使い方に広がりと強さがあり、一部ジャジーな曲調も新鮮さを抱えており推すに足る。

 六本木・ビルボードライブ、セカンド・ショウ。冒頭、サンバのリズム音とともに面々は登場。ダンスと歌のファリーダ(ファリーダ・アレーム)がフロアからステージに上がり、それだけで観客は総立ちっぽくなる。わ、サンバの起爆力、すげえ。客はそれなりに若い人も見られたが、黄金時を同時代で体験していない人もそれなりにいたと思われる。

 その彼女、歌とラップのスピーチ、のど自慢女性ヴォーカルのラターシャ・ラレイ(ラターシャ・コンウェイ)とラップのワン・ラブ(スペンサー・ラヴ)、さらにギターのジェイ・ジェイ・ブギー(ジェイソン・ライヘルト)、ベースのウィリアム・モンゴメリー、ドラムのコーリー・レイモンドという陣容による。この3人によるキーボードレスのバンド・サウンドは良い。わりと途切れなく臨機応変な感じで曲は連ねられるのだが、肉声陣も伴奏者たちも一切セット・リストの類は置いておらず、リハを重ねた練り込まれたショウだったのかもしれない。本編60分、そして2曲10分強のアンコールという尺のパフォーマンスをきっちり彼らはやった。

 途中何度もスピーチは客とのコール&レスポンスを求めるが、それはちゃんと成り立つ。彼、なんかサバけたというか、吹っ切れた感じもあってマル。いろいろな重なり方をする肉声群と含蓄あるファンク・サウンドの拮抗表現は力あり。かつて前に出した南部土壌を土台に置く精神性は後退していたが、ワクワク感を持つヒップホップ・ソウル・バンドの確かな像を彼らはきっちり獲得していた。そういえば、終演後にメンバーたちはステージ前にできて笑顔でずうっとお客さんたち握手をしていて、ほっこり。ああ、良き心地ある集合体であるナと思わされました。

▶過去の、アレステッド・ディヴェロップメント/スピーチ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-4.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-4.htm
http://43142.diarynote.jp/201304211111189539/

<今日の、枯れきれない男>
 まあ洋風なもののほうが好みだったせいか、蕎麦やうどんにはあまり魅力を感じてこなかった。ゆえに、好んで自ら、その手に店に入るということもない。まあ、年をとると静かな蕎麦屋でお酒をちびちびという図は悪くないとも思うのだが、一人ではやったことがない。蕎麦屋の肴にそれほど惹かれないというのも理由かな。それから、周りの人間でそば打ちをやるようになりましたというのも複数いるが、それにも憧れない。第一、ちゃんと美味しいもの作るのは無理でしょ。けっこう、アヴェレイジを出すのはプロでも困難と聞いたことがある。”工作”は別な料理でしたい。でも、ここんところは年越しそばはいいかもとか思うようになっているワタシ。日本人のDNAがひょんなところで現れるわけだが、それは食べ物にまつわる項目が一番多いのかな。

 甲田“ヤングコーン”伸太郎率いるジャンプ・ブルース・バンドのBloodest Saxophone(2014年6月28日、2015年7月28日2015年11月16日)が定期的にもっているイヴェント“Snuck宇宙”の2018年最後の回は、テキサス在住の女性ブルージィ&アーシィな歌い手のクリスタル・トーマスを迎えて持たれた。この9月に面々はテキサス州オースティンに行って、いろいろなライヴとレコーディングを敢行。それは、トーマスをはじめ5人の女性シンガーを迎えた『I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU 』と『IN TEXAS』(ともに、Mr. Daddy-O/スペース・エイジ)という2枚となりすてにリリースされている。2作ともいい感じ。うむ、ともにかなりうまく録れていると思う。なお、レコーディング後にトロンボーン奏者とウッド・ベース奏者が円満に脱退。この日は新ベーシストが入り、管はテナー・サックスとバリトン・サックスの2管となった新体制によるパフォーマンス。2管となったことで、甲田の好ホンカーな持ち味はより前に出るようになっていた。

 下北沢・440。フル・ハウス。一つ酒宴をこなして会場入りすると、Bloodest Saxophoneが熱演中。粋にスーツをそれぞれに着こなし、それがまずいいナと思わせる。そして、そこにクリスタル・トーマスが呼び込まれ、彼女がフィーチャーされる。おお、ビッグ・ママ体型の彼女(30代?)は少し低めの声でディープに歌う。余裕、あり。「聖者の行進」や時節がら最大のクリスマス・ブルース・ソングである「メリー・クリマス・ベイビー」も披露する。両者のくだけたノリは場をテキサスにワープさせる? ブラウンは『I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU 』で山下達郎の「ユア・アイズ」もカヴァーしているが、それももちろん歌う。それは、アナログ・シングル盤も切られている。両者は、香港でカウントダウン・ライヴをするそうだ。

▶過去の、ブラッデスト・サキソフォン
http://43142.diarynote.jp/201406291238493838/
http://43142.diarynote.jp/201508050949338272/
https://43142.diarynote.jp/201511181202076051/

<今日は、少し迷子になる>
 久しぶりに下北沢駅に降り、いまだ工事中の同駅の出口の位置がまた少し変わったようでとまどう。あれれ。何口とか覚えず長い経験則ですたすた行っていたのに、今回はそれが通じない……。街の風景が変わってきているとともに、方向感覚が悪くなっているのも一因? それほどぼくにとって関わりのある街ではないが、どんどんシモキタが遠ざかっていく〜。その悪い印象もあり〜駅のほうには戻りたくない〜、寒くなかったので(天気予報によれば、最低気温が8度)、酔った勢いでちんたら歩いて家に帰る。細かい住宅地を歩かず、少し大回りの分かりやすい道を通ったので迷わず帰宅。ほいほい。
 近年またいろいろなことをやっている27歳ピアニスト(2013年9月8日、2016年12月7日、2017年7月8日、2017年9月29日)の、「響楽 -KYOGAKU- 2018」と副題された弦楽四重奏との協調公演。赤坂・サントリーホールのブルーローズで見る。顔を出さなければいけない忘年会があったので、あたまの1時間に接したが、 なかなかに才気走っていて感心した。

 ヴァイオリンの吉田篤貴と須原杏(2016年12月7日)、ヴィオラの河村泉、チェロの関口将史が全面的に絡む。あ、1曲はヴァイオリンとチェロの男性陣だけが伴奏をつけた。

 7曲に触れたが、順にレナード・バースタインのミュージカル(2009年8月4日)曲「サムホエア」、自作の「ホエアアバウツ」、アストラ・ピアソラの「フィナーレ」、ビル・ウィーランのレヴュー曲「リヴァーダンス」、エグベルト・ジスモンチ(2008年7月3日、2013年3月27日 )の「パリャーソ」、ビョーク(2001年12月5日、2008年2月22日)の「アイヴ・シーン・イット・オール」、ビル・エヴァンスの「Bマイナー・ワルツ」。おお、なかなかにおもしろいセレクションなり。だが、もっと面白かったのは、肝心のピアノ演奏と弦音の絡みだった。

 弦のアレンジも桑原。家にこもり、地味に作業にあたったそうだが、がんばったなー。3年前にも彼女は弦付き公演をしているが、今回のほうがジャズ・ピアニスト=桑原あいのストリングス入りの出し物にしっかりなっていた。弦の4人全員にピチカートさせたり、ピアソラに特徴的なヴァイオリンかっ飛び作法を他の曲に持ってきたり、様々な冒険を介して“私が考える、ピアノと弦4人が四つに組んだ表現”をちゃんと作っていたもの。しかも、その協調は杓子定規なかっちり感に支配されたものではなく、流動性や広がりへの“窓”となる間(ま)の感覚を宿すものであったのに大きく頷いた。

▶︎過去の、桑原あい
http://43142.diarynote.jp/?day=20130908
http://43142.diarynote.jp/201612100926461885/
http://43142.diarynote.jp/201707101243147840/
https://43142.diarynote.jp/201710011917499392/
▶︎過去の、須原杏
http://43142.diarynote.jp/201612100926461885/
▶︎過去の、ミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」
https://43142.diarynote.jp/200908071506127450/
▶過去の、エグベルト・ジスモンチ
http://43142.diarynote.jp/200807041128510000/
http://43142.diarynote.jp/201303290753133066/
▶過去の、ビョーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200802230934310000/

<いろいろな、お疲れ様>
 81歳の誕生日である17日に、ニューオーリンズの大御所鍵盤奏者アート・ネヴィル(2004年9月18日、2009年7月25日、2014年1月17日、2015年5月10日)が引退を発表した。健康上の理由だろう、いたしかたありませんね。ザ・ミーターズ時代から積み上げてきたものはあまりに大きすぎ、ゆっくりしてください。1990年代前半だったか、来日時に彼とジョージ・ポーターJr.(2007年2月2日、2007年2月4日、2008年8月12日、2009年7月25日、2014年1月17日)に九段下のホテルで取材したことがあった。とんでもなく道が渋滞していて、車移動のぼくは珍しく遅刻。でも、彼らは笑顔でおっとりと応対。そんなこともあり、ぼくのなかでは<大人(たいじん)>という印象が大きいな。彼の次男のイアン・ネヴィル(2012年7月30日)はギタリストとして活躍しているが、50代半ばの長男のアーセルはジャーナリストで、週末のフォックス・ニュース・チャンネルのアンカーをしているそうだ。今晩の忘年会ではなかったが、先週行った忘年会はその職場の定年者の慰労も兼ねていて、なにげに心温まるやりとりがあって、職場〜仲間っていいネという気分になった。万全な姿を見せられないなら、ミュージシャンにも定年があってもいいよね。ボロボロになった姿でも大好きなミュージシャンならずっと接したいという人もいるが、その心地はぼくはわからない。
▶︎過去の、アート・ネヴィル
https://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201401181209502731/
https://43142.diarynote.jp/201505111009314451/
▶過去の、ジョージ・ポーター・Jr.
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/?day=20140117
▶︎過去の、イアン・ネヴィル
https://43142.diarynote.jp/200908180045212538/
https://43142.diarynote.jp/201208091321435870/

< 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 >