ヴォーカルも兼業する器楽奏者比率は、トランペッターが一段と高いことは間違いないだろう。それはルイ・アームストロングがいたからか。それとも、チェト・ベイカーの味の良さが後の人たちに影響を与えているのか。トランペットと歌を担当する、バルセロナ拠点のモティス(1995年生まれ)の様を見ながら、ふとそんなことを考えた。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。すべてヴォーカルを取り、確か1曲を除いてはソロも取る。また、彼女は1曲(「ラヴ・スプリーム」)ではアルト・サックスを小さくしたような楽器(カーヴド・ソプラノ・サックス)も手にし、ソロをとった。

 小柄で華奢なアンドレア・モティスを、イグナシ・テラーザ(ピアノ)、ジョゼップ・トラベル(ギター。結構、ぼくの好みだなと思った)、小澤基良(ベース)、ダヴィッド・シルグ(ドラムス)がサポート。小澤いがいは皆、スペイン人だろう。

 新作はけっこうボサ味を介するアルバムだったが、英語のスタンダードだけでなく(ビル・ウィザースの「エイント・ノー・サンシャイン」も披露)、ポルトガル語やスペイン語(カタルーニャ語?)の曲も歌い、そのほうがエキゾ性は増す。なんにせよ、基本は和み傾向にあると書けるものだが、声量はないものの歌のピッチは狂わないし、トランペットのソロも爆発力はないがとっても確か〜やっていることからすればカップを用いても不思議はないが、それはしない。それ、腕のリーチから来るもの?〜で、きっちりジャズを学び、その成果を出していると思わせる。立派なジャズ知識とジャズ愛は想像を超えるものだった。そういえば、ある曲で彼女はまったくビリー・ホリディの歌い方を踏襲していると、ビリー・ホリデイのエンスージアストが言っておりました。

 その後は丸の内・コットンクラブに移動し、米国西海岸拠点のジャズ歌手であるサラ・ガザレク(2006年3月22日、2007年12月27日、2008年3月13日、2012年7月4日、2015年7月7日 )を見る。

 デビュー時からピアニストのジョシュ・ネルソン(2006年3月22日、2008年3月13日、2012年7月4日、2015年7月7日 、2019年2月15日)を音楽的お目付役としておいていた彼女だが、2019年新作『ディスタント・ストーム』はカート・エリング(2012年6月21日、2016年3月1日)の2018新作『ザ・クエスチョンズ』(ソニー)に参加/アレンジをしていたスチュ・ミンデマンが関わっているのが要点(同作のアレンジはラリー・ゴールディングス〜1999年4月13日、2000年3月2日、2012年11月12日。2013年5月10日、2016年6月4日〜やジェフ・キーザー〜2005年1月18日、2006年9月17日、2015年7月9日、2018年11月26日〜もしている)。そのミンデマンの新作『Woven Threads』(Sunny Side、2018年)は幼少期を過ごしたチリの音楽への愛着を覚醒させたヴォーカルも介する作品で、そこにはドラムのマカヤ・マクレイヴン(2017年12月12日、2018年7月10日、2019年2月19日)やトランペットのマーキス・ヒル(2016年9月17日、2017年1月7日、2017年1月16日、2018年5月24日)といった彼が住むシカゴ現代ジャズ界の重要人物が参加していた。そんな彼が関わる『ディスタント・ストーム』はライナー盤なのだが、その文章の最後をぼくは<2019年屈指のジャズ・ヴォーカル・アルバムになること請け合いである。>と締めた。同作、まさにリアルなジャズ感覚と今が綱引きする傑作であると太鼓判をおす。

 ショウは、ピアノとエレクトリック・ピアノを弾くスチュ・ミンデマン、ベースのアレックス・ボーナム(2018年4月19日)とドラムのクリスチャン・ユーマン(2018年4月19日)という『ディスタント・ストーム』のコアとなる奏者たちが参加。そして、そのアルバムに入っていたジョシュ・ジョンソン(2017年1月16日、2017年8月15日)の代わりにテキサスからNY に引っ越して以降のスナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)に加入しているテナー・サックスのボブ・レイノルズが同行という何気にスペシャルな陣容で、面々は隙間や流動性は抱えるものの、生理的に一丸となったパフォーマンスを披露した。

 当然のことながら、『ディスタント・ストーム』からの曲を中心に披露する。スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)やドリー・パートンの有名曲もやるが、これが大胆にコードの置き換えをし、リズムもめちゃ変え、歌のライン取りもあっち側に持っていくという塩梅であり、それを完璧にインタープレイを介し送り出すのだからこれは唸るしかない。

 また、驚いたのはガザレクの喉。もともと歌のうまい人だったが、鬼のようにマイクを離しもし、こんなにも声量と技巧とフィーリングに満ちたジャズ・シンガーであったのかと感服。どうにもこうにも、創意と密度とスリルに満ちたパフォーマンスであった。アンコールの「ディスタント・ウェザー」(ブラッド・メルドー〜2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月20日、2015年3月13日〜の2002年リリース佳曲「ホエン・イット・レインズ」にガザレクが歌詞をつけ、新たな曲名にした)が終わったあとには、緊張がとけ心地よい疲労に包まれた。これ、2019年最良の現代ジャズ・ヴォーカルの日本公演となるだろう。

▶過去の、サラ・ガザレク
http://43142.diarynote.jp/200603281332270000/
http://43142.diarynote.jp/200712291957590000/
http://43142.diarynote.jp/200803141250260000/
http://43142.diarynote.jp/201207071327008624/
https://43142.diarynote.jp/201507090944439091/
▶過去の、ジョシュ・ネルソン
http://43142.diarynote.jp/200603281332270000/
http://43142.diarynote.jp/200803141250260000/
http://43142.diarynote.jp/201207071327008624/
https://43142.diarynote.jp/201507090944439091/
https://43142.diarynote.jp/?day=20190215
▶過去の、カート・エリング
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
https://43142.diarynote.jp/201603111217517934/
▶過去の、ラリー・ゴールディングス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm 1999年4月13日(カーラ・ブレイ)
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/201211170928285333/
http://43142.diarynote.jp/201305131335092387/
http://43142.diarynote.jp/201606121224129353/
▶︎過去の、ジェフリー・キーザー
http://43142.diarynote.jp/200501222324430000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060917
http://43142.diarynote.jp/201507110856518338/
https://43142.diarynote.jp/201811271055049781/
▶︎過去の、アレックス・ボーナム
https://43142.diarynote.jp/201804201245196118/
▶︎過去の、マカヤ・マクレイヴン
http://43142.diarynote.jp/201712131709468312/
▶︎過去の、マーキス・ヒル
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
http://43142.diarynote.jp/201701171118107802/
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
▶︎過去の、クリスチャン・ユーマン
https://43142.diarynote.jp/201804201245196118/
▶︎過去の、ジョシュ・ジョンソン
https://43142.diarynote.jp/201701171118107802/
https://43142.diarynote.jp/201708161337599841/
▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
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▶過去の、ブラッド・メルドー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232041270000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150313

<今日の、つながり>
 1977年生まれ、フロリダ州育ちでバークリー音楽大学卒のボブ・レイノルズはなかなか育ちの良さそうな感じの人。彼はいろいろなリーダー作を出しているが、ギターの写真がジャケット・カヴァーに出された2017年自主制作盤『Bob Reynolds Guitar Band』はキーボードレスで、かわりに二人のギタリストが入ったライヴ・アルバム。レイノルズは、ジョン・ メイヤー(2007年4月5日)のバンドに入っていたこともありましたね。ぐうぜん、その二分の一のギタリストであるニア・フィルダーは明日から3日間、東京国際フォーラムのホールCに出演。二人は、“有楽町で逢いましょう”をするか?
 ところで、今日は今年初めて湿度が高いナと感じた1日だった。
▶過去の、ジョン・メイヤー
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
 六本木・アスミックエース試写室で、2017年イギリス映画を見る。<青春ゾンビ・ミュージカル>という触れ込み、なり。“英国〜若者のもやもや〜ミュージカル”という項目から、「時計仕掛けのオレンジ」とか「トミー」とかの、英国ロック文化と繋がったクリエイティヴなミュージカル映画の系譜にあるものを期待した……。なんてことは、一切考えなかった。それにしても、ゾンビものを好きな映像の作り手って少なくないんだなあ。ぼくは、まったくゾンビに興味は持てない。あ、あとこの映画はクリスマス・シーズンを扱う。向こうの人たちにとって、その設定は人と繋がりや足元を振り返らせる動機を与えるだろう。

 スコットランドの田舎町に住む高校生アナと友達たちがソンビと戦う様を描く。という概要から、すっこーんと抜けた荒唐無稽でもある、痛快活劇的な内容を期待したのだが、仕上がりはけっこう違っていた。なんかジメっとしていたり、現実離れしたストーリーなのに変なところ真面目というか翔んでいなかったり。

 長編2作目となるグラスゴー・ネイティヴのジョン・マクフェール監督は写真を見ると30代に見えるが、この映画を撮るまではミュージカル映画といえば(米国のスーパー・バッドなお下劣アニメ)「サウスパーク」の実写版(1999年。それを見たことはないが、ディズニー風のミュージカル仕立てを取ると聞いたがある)しか知らなかったそう。だが、ありとあらゆるミュージカルDVDを見た結果、今は「ウェストサイド物語」が好き、という発言が資料に載せられていた。うーむ、ブっとんだ「サウスパーク」しか知らない感性で描いたほうが良かったんじゃないか。エンドロールに出てくる登場人物たちのアニメーションは見事にサウスパークの画風に倣ったものですね。それから、監督が学校の先生にかなりな不信感を持ってきていることはよく伝わった。

 話の要所要所で歌が登場人物たちによって歌われるが、それはロディ・ハートとトミー・ライリーによる。両者(1980年と1987年生まれ。前者はザ・ロンサム・ファイアーというバンドでも活動)ともにスコットランドのグラスゴーをベースにするシンガー・ソングライター。それらポップ・ソング傾向にある楽曲の作風の幅は広くないが、出来は悪くない。ただし、画一的なサウンドは安っぽいとは感じた。

 その後、丸の内・コットンクラブで、ドクター・スリーと名付けられたイタリア人ピアノ・トリオを見る(セカンド・ショウ)。ピアニストのダニーロ・レアは1957年生まれで、若い頃に来日して以来とか。日本に何度か来ているイタリア人ドラマーのロベルト・ガッド(2008年5月14日、2019年3月6日)とはマブ達ですね。ベーシストのエンツォ・ピエトロパオーリ(何気に、曲の展開をリードする局面あり)とドラマーのファブリッツィオ・スフェーラ(とてもブラシを多用)はもう少し年下か。

 いろんなリーダー作を持つレアは、その2人とともに1998年から10枚近いアルバムをドクター3として発表。なるほど、凝ったマッシュ・アップ〜曲置き換えや繋がり表現を誰も譜面に頼ることなく悠々と披露する。冒頭で、ぎこちない英語で、リーダーは「我々は、ロック、オペラ曲、映画音楽などいろんな素材をジャズとして演奏します」みたいなことを言ったが、まさしくその通り。

 エルトン・ジョンの「ユア・ソング」を延々と開いた後にザ・ビートルズの曲(あれ、曲名わすれた。他の曲でもザ・ビートルズ曲は披露された)をつなげたり、坂本龍一(2011年8月7日、2012年3月21日、2012年8月12日、2013年8月11日)の映画曲を重ねたり。なかには、メキシコ民謡の「ラクラカチャ」も彼らは俎上に持ち出した。そして、場合によっては、面々は先にマッシュアップと書いたように、だまし絵的に曲の断片をくっつけたり(その場合、ジャズ・スタンダードもかりだす)、引用したりする。また、デイヴ・ブルーベックの「ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク」のようにテンポの交錯を見せるときもあった。

 ヘヴィな方向にはまったく行かないが、3人ともまっとうな技量を持ち、彼らなりのインタープレイ流儀を抱える。趣味良し。ゆえにその作法はポップ・ジャズやイージー・リスニング方面に流れずに、しっかりジャズの範疇に留まる、サバけた欧州人感覚も露わにする。洒脱なジャズを聞いてみたいナ。そんな、おねーちゃんを誘うにはぴったりの出し物であると感じました。

◀ ロベルト・ガット
https://43142.diarynote.jp/200805181146070000/
https://43142.diarynote.jp/201903071110239629/
▶過去の、坂本龍一
http://43142.diarynote.jp/?day=20110807
http://43142.diarynote.jp/?day=20120321
http://43142.diarynote.jp/?day=20120812
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811

<今日の、OS> 
 2ヶ月前ぐらいに、macOS Mojaveを新たに入れた。これまでPCの機能の2パーセントしか使っていないのでライオンに代わり新たにOSを入れる必然性はまったく感じないのだが、半年間近く定期的にダウンロードしましましょうみたいなおせっかいなお知らせボックスがPC画面の右上に頻繁に出て鬱陶しいのでダウンロードしちゃった。すると、ありがたみは何も感じていないが、ワードやエクセルが適合しないみたいな表示が出ることに。とはいえ、今のところはこれまで同様使えている、、、。が、微妙な違和感は感じるところであり、今後はOS新調はすまい。ちなみに、ぼくのオフィイスは2011。ついでに、SIRI ってなんじゃらほい。ホームとか株価とかヴォイス・メモとか新たな項目も勝手にくわわっているなー。

 今年の正月に川崎市の等々力陸上競技場に高校サッカーを見に行った(https://43142.diarynote.jp/201901071211312682/ )ら望外に近かったので、さっそく川崎フロンターレのACL(AFCチャンピオンズ・リーグ。平たく言えば、欧州のEUROのようなもので、アジアのNo.1のクラブ・チームを決める大会)の国際試合を見にいく。相手は、現在予選リーグのグループHの首位を行く韓国の蔚山現代。そのセカンド・レグで、アウェイ1試合目の川崎が勝負弱さを見事に露呈する敗戦を受けてのもの。今年のJリーグの結果もいまいちだし、あまり期待せずに見に行った。アジアのクラブ・チーム選手権を見にいくのは集中開催し、準決勝が1日に2試合観れた1999年4月16日の国立競技場に行って(http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm)いらいとなるなあ。わー、ちょうど20年前じゃないか! あー、このブログも21年目に入るのか!

 蔚山現代のユニフォームの色はフロンターレの色を濃くしたような青。彼らにホーム用のそれを与え、フロンターレは白色基調のセカンド・ユニフォームで試合に臨む。細いパスの交換をしまくり、球や地域の支配率は抜群。ロング・フィード主体の蔚山現代のそれとの対比は大。7分ちょいにワン・トップの小林がファイン・ゴールし、この後の展開を期待させる。が、以降も球は大方保持するもののシュートはなかなかできず、逆にちょっとした守備の綻びから蔚山現代に2点を取られてしまう。なんだかなあで、前半終了。

 アウェイ・ゲームだし、後半は1点リードを受けて蔚山現代は守備より的に構え、うーむこれはというところで、次の場に移動するため陸上競技場を後にする。武蔵小杉から次の最寄駅までは中目黒乗り換えで、25分。公共交通って、便利だな。

 そして、六本木・ビルボードライブ東京(セカンド・ショウ)で、欧州在住(オレゴン州ポートランドで表現基盤を築いたあと、デンマークを経て、現在は奥さんの故郷のアイルランドに居住か)の米国人音楽家であるピーター・ブロデリックのソロ・パフォーマンスを見る。3度目の来日となるのかな。

 魅惑のチェンバー・ポップ、ネオ・クラシカル、アンビエント〜エレクトロニカ、また素朴なフォークまで。さらに映画や舞踏用音楽に関与したり、日本人を含む様々な人たちとしなやかにコラボったりもしている彼は、鬼才と言えるタイプであると思う。だが、ステージに出てきて日本大好きとたどたどしい日本語で話しだす彼は、そんな硬い形容がまるで似合わない開かれた態度を出す好人物だった。まず好奇心ありきで、人々やそれにまつわる事象と向き合うことが大好きな御仁であるのだと、その態度は納得させますね。

 ピアノ、生ギター、セミ・アコースティック型の電気ギター、ヴァイオリンなどを用いたパフォーマンスを展開。一部サンプラーを用い楽器音や歌声を重ねる場合もあり。ピアノを用いたインストゥルメンタルはミニマル音楽+みたいなところもあり、生ギターを用いて歌う曲の一つはオーセンティックなフォーク・シンガーみたいであった。音程確かに伸びる感覚を持つヴォーカルも上質で、なかには祈りの感覚を多大に宿していたり、トラッド表現を聞いているみたいと思わせる場合もあった。また、彼はアーサー・ラッセル曲集をリリースしてもいるが、それも披露した。

 ぶっちゃけ入りはいまいちであったが、それもあいまってとても贅沢な公演であると思えたか。いつもとは違う空気感で会場内は満ちていた。そこには、たゆたふ豊かな時間があった。

<今日の、なるほどねえ>
 川崎のサッカー会場は、ガラガラ。この晩のチケットは、販売4日前より売れ行きによる価格変動制を取るとのこと。そしたら、前売りより通常少し高く販売されるはずの当日券が前売りより1000円は安い価格で購入することができた。そんなことも、あるのだな。試合始まってから買うと、もっと安くなる? 帰宅して、その後フロンターレが1点を挙げて2-2で試合が終わったことを知る。観客のストレスはだいぶ和らいだことだろう。

 サンズ(2016年9月7日)は、この5月で30歳になるピアニスト(とはいえ、すでにリーダー・アルバムは5、6枚出している)。若いっていいナ。屈託なく、軽く90分を超える演奏を披露する。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 近2作では、ギター(前作は、ギラッド・ヘクセルマン〜2012年3月12日、2016年7月3日〜を起用。2018年新作では、ニューイングランド音楽院を出たブラジル人のカイオ・アフィウネを抜擢)や管(新作では、マーカス・ストリックランド〜2007年12月18日、2012年1月13日、2013年9月28日、2018年6月14日〜とキーヨン・ハロルド〜2014年1月10日、2015年8月18日、2016年1月25日、2017年6月5日、2018年2月2日〜を呼んだ)や打楽器奏者たちを曲により使い分けていたが、初リーダー作公演はトリオにて行う。それ、向こうでもそうなよう。その場合、レコーディングを含め中村恭士(2009年10月15日、2015年9月5日、2017年1月10日、2018年12月5日)がベースのファースト・コールとなる。今回のリズム隊は、イケ面のダブル・ベース奏者のジョシュ・アレンとドラマーのジョン・デイヴィス(2015年3月19日、2017年1月16日)。デイヴィスはけっこう譜面を見てもいたが、トリオらしい噛み合いはちゃんとあった。

 綺麗にスーツを着たサンズは快活。MCも陽気で、すぐに明日のインタヴューもフランクにあたってくれるだろうと思った。指さばきはくだけた物腰から離れ真摯、きっちりジャズの積み重ねを受けた演奏を繰り広げていて頷く。新作では、ザ・ビートルズの「イエスタディ」以外は自作曲で固めていたにも関わらず、ぼくが見たショウではチック・コリア(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日、2017年9月2日)の「ハンプティ・ダンプティ」で始まり、マイルズ・デイヴィスの「オール・ブルース」で終わるというものだったが、有名スタンダード(「モーニン」や「イン・ア・センチメンタル・ムード」)をとりあげるとともにぼくが知らない人の曲をやったりもして、自作曲は多くなかった。そこらあたり、ショウごとに変えているようにも思えるが。

 正統なジャズ・ピアニストであることを、ブルージィさやラテン的跳ねを持つ楽曲/奏法も介して、十全にアピールする。ときに、精力的とも言いたくなるか。ラテン・ビート曲のときのソロ部の際、デイヴィスは音の輪郭のはっきりしたベース・ドラムをもう一つおいていて、そちらを使った。けっこうゆさゆさと身体を揺らしながら事にあたる彼、4ビートの際はレギュラー・グリップで、その他はマッチド・グリップで叩いていた。

▶︎過去の、クリスチャン・サンズ
https://43142.diarynote.jp/201609201648546159/
▶︎過去の、ギラッド・ヘクセルマン
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
https://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
▶︎過去の、マーカス・ストリックランド
http://43142.diarynote.jp/200712190953140000/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
http://43142.diarynote.jp/201310041548056608/
https://43142.diarynote.jp/201806151747389966/
▶過去の、キーヨン・ハロルド
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http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201701051022179600/ 映画
https://43142.diarynote.jp/201802050951329410/
▶過去の、中村恭士
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▶︎過去の、ジョン・デイヴィス
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▶過去の、チック・コリア
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http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
https://43142.diarynote.jp/201709101059289712/

<今日の、軽い驚き>
 友人がジャパン・タクシーのアプリを入れていて、その恩恵にあずかる。お、画面で該当タクシーが待っている場所に向かってくる様が地図で確認できるのネ。カード決済だそうだが、1台呼ぶごとに400円強かかるときいて、それはまた運営側が強気に出ているナと思った。
 ザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)にはやはり破格の思いがある。大学時代、ストーンズ中心のコピー・バンドを熱心にやったことがあって、その構造やコード進行には強いという自負がある。『エグザイル・オン・メインストリート』はいまだ“人生の10枚”に入る、超お気に入り盤だ。で、8年ぶりだかのツアーとなった1989年“スティール・ホイールズ”ツアーの際は、それをアメリカに見に行った。あれは、本当に輝かしい思い出だ。

 TOC五反田メッセ。デビュー当時からのいろんなアイテムを、なるほどいろいろ揃えている。初期のファン・クラブ会報(「ザ・ローリング・ストーンズ・ブック」)みたいなのがずらり並べているコーナーもあり。へえ、そんなの出ていたんだ、アイドルだったんだな。60年代前半のキースのマメな自筆日記には皆んな驚くだろう。楽器や衣装もいろいろ展示されている。チャーリー(ジャズ・ドラマー志望で、レギュラー・グリップで叩く)の1965年ラディックのセットはシンプルながら、カウベルが付いていた。アート・ワーク関連展示では、アンディ・ウォーホルの作品もいろいろ。そうしたものの、値踏みをした人もたくさんいたか。

 展示のコーナーの頭のほう、黎明期のメンバーの部屋を再現する一角になっていて、そこにはチャック・ベリー、マディ・ウォーターズ、ジミー・リードらのアナログ・ジャケットが置かれていた。後のコーナーには、ジャケット関連の紹介や雑誌記事が並んでいるところがあり、米国黒人雑誌のエボニーに出稿された『サム・ガールズ』の広告も紹介。なるほど、彼らや送り手側はストーンズの音を非白人にもおくりだすという意図をもっていたのか。ツアーに関する項目もあったが、だったら、彼らが前座として起用したアフリカ系アクトを主とする人たちも紹介してほしかった。

 入場時に、ぼくはクレジット・カードで入場料を支払ったが、有限会社@@@@@で請求されますと言われた。なにも、そんな不自然な名義にしなくてもいいのにねえ。怪しいお金の流れがあるのとかと、勘ぐってしまう。入場時には、カメラ/ヴィデオ撮影OKですと言われる。多くの人がひっきりなしにケータイやカメラを構えていた(少し邪魔なときもあった)が、ぼくは一切撮らず。だって、パカパカ撮っていると見るのが置き去りになりそうな感じがしてヤ。それよりも頭のなかに刻んじゃえば(いらなければ、忘れれば良い)、OKじゃん。

 始まってから1ヶ月以上たち、平日の昼間であるのに結構人がいた。ストーンズ、ごっつい人気あるんだなと再確認。おかげで、売りの一つである、楽器トラックを選んで聞くことができるという装置は埋まっていて、扱うことを断念。その場所、そんなに広くなく、後ろで待っていると通行の邪魔になる感じもあったし。だいいち、待つの嫌いだし。ただし、物販の場はそれなりに広く、いろんなものがあった。ちっ高いなあ、とか冷めつつチェックしたが、可愛い小さな子供用のソックスや小さ目のウンブロ製サッカー・ボールを見て、ぼくにちっちゃい子供がいたら買っちゃいそうとも思った?

 美術館のような、厳重な警備のようなものはなし。皆んな、気ままに見れる。総じて、ロックは金になる、巨大産業たりえるということを、如実に示す。 “セックス&ドラッグ”といった、負の要素を語るものはなし。唯一、映像部で、その手を扱った「コックサッカー・ブルース」がちらり紹介されるだけ。ストーンズ映画群を紹介する映像での進行語り役は、マーティン・スコセッシだった。

▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 3月13日(バック・バンド)。15日

 その後、市ヶ谷・日本シネアーツ試写室で、2019年日本映画「Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN」を見る。マヒトゥ・ザ・ピーポー(2014年1月8日)がフロントに立つ4ピースのロック・バンドであるGEZANの米国ツアーを発端とするドキュメンンタリーだ。撮影/監督/編集はメンバーたちと近い位置にいる、1988年生まれの神谷亮祐。作品を見る前は、彼らが初めてやった悲喜こもごものDIYツアーを追うロード・ムーヴィみたいなものと思っていたら、かなり違っていた。

 前半に、黒人に蔑視の目を向けられショックを受け、アメリカの影を見たような気持ちになった(大意)と話す場面が出てくる。10代のバンドではないのだからあまりにナイーヴすぎない&少し無知ではないかと思ったんだが、まあなるほどそれを出す理由もあった。

 300万円を集め、西海岸中心のツアーとスティーヴ・アルビニの制作によるシカゴでのレコーディング(それは、『Silence Will Speak』というアルバムとしてリリースされた)を、面々は昨年3〜4月に敢行。レコーディングの模様は一切出てこず、ツアーのみが扱われる。

 当然のことながら、彼らは現地で様々な属性を持つナマの人たちと出会う。なんでも、彼らは関係者のところに泊めてもらうととともに、ライヴ会場で出会った人に泊まる場所がないので泊めてくれないかと申し出て宿泊したりもしていたよう。ツアーの山場は、ある場所で34歳のネイティヴ・アメリカンの女性ん家に泊めてもらい、彼女の境遇を聞くとともに、翌日にはコミュニティ・センターでのネイティヴ・アメリカンの親睦会に彼らは連れて行ってもらったりもする。そこで、米国にしいたげられてきている彼らの歴史や考え方に触れ、メンバーたちはいろんな思いを山ほど抱く……。

 そうしたツアーから、彼らは何を得て、それがどうGEZANの音楽や活動にはねかったかを、最終的に映画は語ろうとする。人はなぜ音楽を作るのか、なぜ音楽を求めるのか。そういう問いへの、一端がちゃんと開かれているとも言えるだろう。劇中音楽は、マヒトゥ・ザ・ピーポーが担当。なお、幻冬社のwebマガジンで彼が連載中のものをまとめた、『銀河で一番静かな革命』が同社から5月に刊行されるという。映画の公開は、6月下旬となる。

 最後の5分の1は、帰国後のGEZANや監督の様を伝え、彼らが主宰するフェス“全感覚祭”の模様(10月の2日間、堺で投げ銭制のもとひらかれた)を追った映像で終わる。いろいろな人が出ていて、テニスコーツ(2008年10月9日、2010年9月19日)や原田郁子(2007年9月24日、2009年11月1日、2011年4月6日、2015年2月6日、2015年5月12日、2017年9月8日)や青葉一子(2013年8月7日、2014年1月8日、2016年11月16日)らも出演。そこで使われる歌詞も画面に出されるGEZANの「DNA」は胸に染み入る。そちらのオフィシャル・ヴィデオのほうは、米国ツアーの様々な映像が使われている。

▶︎過去の、マヒトゥ・ザ・ピーポー
https://43142.diarynote.jp/201401141413008927/
▶過去の、テニスコーツ
http://43142.diarynote.jp/200810111558573845/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
https://43142.diarynote.jp/201407261220126653/ 植野隆司
▶過去の、青葉市子
http://43142.diarynote.jp/201308110827534904/
http://43142.diarynote.jp/201401141413008927/
https://43142.diarynote.jp/201611171021419374/
▶過去の、原田郁子
http://43142.diarynote.jp/200709261218590000/
http://43142.diarynote.jp/200911021429368036
http://43142.diarynote.jp/201104091623415118/
http://43142.diarynote.jp/201502071011467530/
http://43142.diarynote.jp/201505131326474300/

<今日の、紹介>
 ぼくがおおいに一目を置く(ライヴを見たことがないので、大好きなとは言うまい)トリオの日本人ロック・バンドのルロウズ/Loolowningen & The Far East Idiots が、この3月から4月にかけて、西海岸と東海岸を車で回るツアーを行った。以前にも米国ツアーの経験を持つ大人のバンドである彼らのあまりに興味深い楽旅の記録は、そのHP( http://www.loolowningen.com )に載せられている。音楽がつなぐ、場所を超えた人の繋がりっって、本当にすごい。映画では、住宅地にある家の裏庭やリヴィング・ルームでライヴをする模様も映されているが、それは珍しいことでないのもわかります。
▶︎過去の、Loolowningen & The Far East Idiotsのアルバム『CREOLES』の記載
https://43142.diarynote.jp/201610120805451037/

 京橋テアトル試写室で、世界的な知名度を持つイラン人のアスガー・ファルハディが脚本/監督した、2018年スペイン/フランス/イタリア映画を見る。

 15年前にスペインに行った際の着想を練り上げた、スペインの田舎(実際の場所はぼかされている)を舞台とする、全スペイン語の映画。キャストは準主役級のアルゼンチン人俳優をのぞいては、皆スペイン人のよう。ファルハディ監督はかつて、フランスを舞台にするフランス語映画を撮ったことがあるそうだが、手間とお金と力のあることを、彼はここでもやっている。

 落ち着いたオーセンティックな映画技法による映画を見ている、と上映に接しながら頷く。驚いたのは、すべては脚本と俳優の演技と撮影の妙に頼り、いわゆる映画音楽が使われないこと。それにも、なんか襟を正した映画という所感を高めさせられたか。結婚パーティの実演バンドの音楽とエンドロールで流れる女性ヴォーカル曲ぐらいしか、音楽は出てこない。と、思ったら、エンドロールには10曲ほどソング・リストが掲載されていたが……。

 130分越えの作品。飽きやすくなっているぼくは大丈夫かと思ったら、やっぱし長く感じた。だが、一つの事件を発端に露呈していく事実や人間関係を丁寧に綴り、じっくり登場人物の所作や心持ちの動きを描写せんとする指針を成就させるためには、それも致し方ないか。ただ単に、ストーリー展開にぼくが完全移入することができなかったということなのだ。

 その後は、南青山・ブルーノート東京に行き、ブルックリンの6人組を見る。ダン・ホワイト(テナー・サックス)をリーダーに、ジョン・ランプリー(トランペット。2曲でスーザフォン。彼のみ、アフリカ系)、クリス・オット(トロンボーン、ヒューマン・ビートボックス)、ジョシュ・ヒル(ギター)、アダム・デアセンティス(5弦のフレットレス)、ジョン・ハベル(ドラム)という編成。40代の人はいない感じで、おそらく彼らはぼくが初めて接する人たち。

 リズムは、わりとタイト目。ブラスの絡みを核に起き、広めの世界を押しだそうとする指針を持つ。腕はさすが、激戦地NYで活動しているだけに安定している。アンサンブルに凝り、ちゃんと披露するソロも確か。ただ、達者な裏返しでもあるが、菅音群の音色が綺麗すぎる。もう少し濁った感覚、はみ出した感覚があればといいのにとは思う。また、できる人たちだと思うのであえて書くが、曲作りをもっと頑張ってほしい。ブレッカー・ブラザースの「サム・スカンク・ファンク」のようなキラー・チューンをなんとかものにしてほしい。また、彼らなら、エっこんなことできちゃうのいというアンサンブルをさらに編み出さなくては。

 とちゅうリズム陣がさがり、フロントに立つ3人だけで演奏。その際は、ホワイトがテナー、ランプリーがスーザフォン、オットがトロンボーンを置きヒューマン・ビートボックスに専任するというカタチで5分ぐらい(?)パフォーマンス。で、やったのはいくつものスティーヴィ・ワンダー曲を自在にマッシュ・アップさせたもの。それ、いい変化を与えるものであったし、彼らのポテンシャルの高さを知らせるものだった。

 フロントの管楽器奏者たちは吹き音を楽器につけたピックアップで拾う。ゆえに動きは大きめで、それは娯楽性につながる。また、ホワイトのMCをはじめ、面々の所作にはここで演奏できてとって光栄デスという誠意があふれていて、当然それも聞き手にはアピールする。本編終了後、フロアでスタンディング・オヴェイションする人が見受けられたのも、その証となるだろう。

 ところで、出てまもないヴァリアス・アーティスツのアルバム『Radiohead In Jazz』(Wagram)にホワイトは自己セクステットで、2011年曲『リトル・バイ・ブルー』カヴァーを提出している。

<今日の、連絡>
 死ぬまでに、経験しておきたいこと。先日、そんな話になったことがあったんだが、ぼくが思わず口に出したのは、軽自動車の運転をすることと、カプセル・ホテルに泊まること。ぼくはともに、それらを経験したことがないんだよなあ。なんか、慎ましか、ちっちゃ。かつてマニアックな外国車を乗っていた知人が今ホンダの軽にあっさり乗っているので、それはじきに初体験可能だろう。実は朝、別な知り合いからメールがあって、昨日初めてカプセル・ホテルに泊まったんだけど、宇宙飛行士になった夢を見たとのこと。そうかー。←カプセル・ホテルにはそういう連想をいだく世代?

 まず、代官山・晴れたら空に豆まいてで、山本精一と内橋和久(2004年7月6日、2005年9月6日、2007年1月27日、2009年9月27日、2010年9月11日、2011年5月22日、2012年6月17日、2014年9月7日、2018年7月16日)のデュオによる実演を見る。お二人、同世代の関西人ですね。かつてピットインで録音されたギター合戦盤が出ていたが、ぬわんとこんかい山本は歌に専念、内橋が心に嵐を持つ伴奏役にまわるという設定なり。普段ギターを弾きながら歌う場合と違い、歌に専念できるので声量が2倍になり、本当はこうなんですみたいなMCを山本はした。

 内橋のつまびきつつエフェクターを介するエレクトリック・ギター演奏にのり、(最初の方は少し安定していながったが)なるほど、堂々情の入った歌いっぷり。宝塚の著名曲(らしい)曲がオープナーとなるショウは日本語曲と英語曲が半々づつ、基本1960〜70年代の曲群か。日本語曲は演歌から「香港ブルース」や「ろっか・ばい・まい・べいびい」といった細野晴臣絡みの曲、洋楽はロバート・ワイアット作のマッチング・モール曲「O・キャロライン」やロジャー・ニコルズ作のカーペンターズのヒット曲「レイニー・デイズ・アンド・マンデイズ」なども披露。山本が内橋くんの青春の曲と紹介したサイモン&ガーファンクルの「ブックエンズ・テーマ」では内橋もコーラスをつけた。次の場への移動で、最後までは見れず。

 かつて親しんだ歌を素直に慈しむ、そういう構図にジョン・ブライオンの“ラルゴ”ライヴ(2007年7月19日)を、ぼくは少し思い出した。

▶過去の、山本精一
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm ROVO
http://43142.diarynote.jp/200406080043380000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/200406100011020000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/200406111859060000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/200411231717590000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/200607100307170000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/?day=20060827 ROVO
http://43142.diarynote.jp/200612060136540000/ ROVO
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/ 渋さ知らズ大オーケストラ
▶過去の、内橋和久
http://43142.diarynote.jp/200407062149440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050906
http://43142.diarynote.jp/?day=20070127
http://43142.diarynote.jp/?day=20090927
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/?day=20110522
http://43142.diarynote.jp/?day=20120617
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
https://43142.diarynote.jp/201807171220429185/
▶︎過去の、ジョン・ブライオン
https://43142.diarynote.jp/200707232252110000/

 2019年のミシェル・ンデゲオチェロ(2002年6月18日、2003年11月18日、2003年11月22日、2008年5月7日、2009年5月15日、2013年11月18日、2014年7月14日、2017年1月18日)の公演は、ギターのクリス・ブルース、キーボードのジェビン・ブルーニ、ドラムのエイブ・ラウンズというカルテットによる。ブルースとブルーニはここのところ彼女の公演に毎度同行しており、ラウンズも前回から来日メンバーで加わっている奏者だ。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。

 とはいえ、今回はけっこう新たな感興を得たな。何気にまっつぐ、ストロング。おお、おお。今回はこう来るの、と引き込まれる部分があった。
 
 まず、ンデゲオチェロのヴォーカル。これが地声で歌うものがまた増え、かつてのゆらゆらした情緒が払拭され、凛とした像を結ぶ。ベースを弾かずに歌だけを担当する曲もいくつか。その際、キーボード奏者が鍵盤ベース音をつける場合もあり。

 今回も、すべて歌もの。バンド音はソロ・パートをいれることなくアンサンブルのみでことにあたり、曲の尺は長くなく、完全にポップ・ミュージック仕様。だが、それでも奏者4人の演奏音は秀でた知見と技がすけて見えるもので、ほれぼれ。今回、キーボード奏者の音の付け方のヴァリエイションが広がり存在感を増し、またレギュラー・グリップとマッチド・グリップ併用のドラマーがどっしりした叩き音をだしていたことも、新たな聞き味を得たことに繋がっていると感じる。

 2018年新作(でき良し)は、やはりカヴァーもの。ゆえに今回もカヴァーもやったのだろうが(ジョージ・クリントンの「アトミック・ドッグ」はすぐに分かった)、どれもオリジナル曲をやっているみたいと思わされる。ゆらゆらした根無し草キブンが何気に横溢していた過去の(ニュー・ウェイヴ的)ヴォーカル路線と比べると、今回はきっちり地に足をつけた感じが倍加していて、自分の歌を毅然と開いているという風情が増していた! 結果的に今回はロックっぽい、シンガー・ソングライター的濃度が高いと、ぼくは感じた。

 あと、今回のパフォーマンスで初めてだったのは、ンデゲオチェロの前に小さな鍵盤がおいてあって、ある曲の間奏で彼女はキーボード奏者の音と相乗し合うような感じで、それを少し押さえた。また、終盤の2曲で、初めてギタリストがソロを取る。その演奏、ブルージーさとアフリカ性を同居させるような手触りを持っていた。

 ジャズかポップかとかいう浅薄な仕切りの不毛さを示唆するような、深みある、圧巻の大人のヴォーカル表現。その開く様を見逃さんと対峙するお客さんも、その質に見合ったものであったと思う。

▶過去の、ミシェル・ンデゲオチェロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200805090836380000/
http://43142.diarynote.jp/200905161026033788/
http://43142.diarynote.jp/201311191050581790/
http://43142.diarynote.jp/201407151135353688/
http://43142.diarynote.jp/201701191854055570/

<今日は、お座り>
 晴れたら空に豆まいてに行くときは、一つだけ留意することがある。ここはフロアを畳敷きにしてライヴをやる場合があり、その際は靴を脱がなきゃいけないので、靴は履き脱ぎがしやすいもので向かうということ。そしたら、今日はそうだった。靴を入れる袋が立派なものになっていた。しかし、椅子ではなく、ずっと床に座っているのは少し疲れるナ。途中から、もぞもぞ姿勢をかえる。そういう人、あまり見受けられなくて、それはぼくだけ?

 渋谷・WWW Xで、米国東部ヴァージニア州出身のほんわか(←ドリーム・ポップなどとよく称されていた)4人組バンド(2013年10月31日)を見る。2018年新作『Indigo』(Captured Tracks、2018年)はかなりゆったりめに迫り、ロキシー・ミュージック(2010年7月31日)の『アヴァロン』や“投げ槍”のころを思い出させる内容になっていた。そして、久しぶりの来日公演となる今回はかつての“さわやか青春ソング”もやったが、やはりハイライトとなるのは変化を伝える新作流れの曲ではなかったか。アルト・サックス兼キーボードのサポート奏者がつき、サックス音が入ると余計にロキシー度数は高まる。そして、その手の生理的な質量感も抱えた風雅な曲群に接すると、曲も作るジャック・テイタムの歌の力が如実に表れる。おお、こんなに存在感のあるシンガーであったのか。成長を如実に感じさせる実演でした。

▶︎過去の、ワイルド・ナッシング
https://43142.diarynote.jp/201311010936527496/
▶過去の、ロキシー・ミュージック
http://43142.diarynote.jp/201008251413325933/

 その後、渋谷・デュオで日本人3人組(+キーボードのゲスト奏者付き)のOvallを見る。ザ・レイ・マン・スリー(2010 年5月25日)をもう少しお洒落にしたことをする人たちという印象を持っていたが、当たらずとも遠からず。そこにもう少し新しいソウルネスを加えていると書けるかな。ぼくはと言えば、数年前に矢野顕子(2004年7月20日、2008年8月3日、2008年12月14日、2009年8月19日、2009年9月4日、2009年12月13日、2010年12月12日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年8月21日、2013年8月11日、2013年11月30日、2014年8月7日、2015年8月20日、2016年9月15日、2017年12月10日、2018年8月27日 )がレコーディングで彼らを起用していて、その存在を知ったのだが。

 大雑把にいえば、PC経由優勢の都会派ソウルをメロウに生演奏で開く。インストゥルメンタルもやるが、ヴォーカル曲のほうが魅力的。押し出しの強い音を叩くドラマーが主にリード・ヴォーカルを取り(その声質、イフェクターをかけているのかいないのか。音楽性にあっている)、ベーシストとギタリストもユニゾン気味のコーラスをつける。とにかく、今のソウルにまつわるイケてるコード進行をよく知っていると思わせる曲群は肌触りが良く、しっくりと来る。事実固定のファンがついていることもお客さんの様子で分かり、彼らの曲を聞いてこれが“我々の日々のサウンドトラック”というふうに感じ入る受け手がいるのも不思議はない。ヴォーカル曲であってもインスト部には力を置き、2曲目ですでにドラム・ソロも入れられる。それ、スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)の「迷信」のパターンを基に発展させていく感じのものだった。

▶︎過去の、ザ・レイ・マン・スリー
https://43142.diarynote.jp/201006031537221581/
▶過去の、矢野顕子
http://43142.diarynote.jp/200407200015350000/
http://43142.diarynote.jp/200808090220110000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200908221621447408/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/201001051622194305/
http://43142.diarynote.jp/201012131714372906/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
http://43142.diarynote.jp/201312051627467488/
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201508210809254412/
http://43142.diarynote.jp/201609201813357761/
http://43142.diarynote.jp/201712111145326498/
https://43142.diarynote.jp/201808291108033102/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/

<今日の、移動とか>
 パルコ・パート2跡地にできた建物の上が、ホテルであるのをはじめて知った。ここ徒歩1〜2分圏内に他に二つもシティ・ホテルがあるのだな。今、工事中のパルコ・パート1のところには何ができるのだろう。WWW Xからデュオまでは5分強、東急本店横から会場に向けての小道がかなり混雑していて驚く。途中にあるラヴ・ホテルが、“チェックアウトは12時で、出入り自由”という立て看板を出している。普通のホテルのようにも使えます、ということか。そういえば、日韓ワールドカップのときに試合を仁川に見に行ったとき(http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm)に、航空機チケットと宿がセットになった安いパックを使ったら、宿はソウルの半分ラヴ・ホテルみたいな雰囲気のところだった。なんか灯りがピンク色だったんだよな。そこで、オンドルの床を体験しました。デュオのトイレには、近く始まるコーチェラ・フェスのツアー告知チラシが貼ってあった。JTB主催、なり。そして、二つのライヴ後に2軒ながれたが、最初の店で少し年下の親友(某有名企業執行役員なんだよなー)と会う。ものすごく久しぶり、よかった良かった。

 全ウズベキスタンでの撮影という触れ込みに惹かれて、2019年日本/ウズベキスタン/カタール映画(黒沢清監督)を見る。なんでも、すべてウズベキスタンで撮影する映画を作りませんかと打診され、これを作ったのだという。エンドロールを見ると、文化庁から助成がされているようだ。

 ソ連から独立した中央アジアの国の人々の生活や風土が手に取るように分かる訳ではない。だが、主題は異国でいろんな経験をし一皮剝ける日本人女性テレビレポーターを描くというものだから、いたしかたない。監督、忖度せず? のっけから主人公が迷子になり、普通グーグル・マップ見ないかとツッコミを入れたくなるなど、御都合主義なところは散見されよう。日本人ディレクターを、昔日本にきて舐めくさり横暴こいてた西洋人のように描いていて、あららあ。ウズベキスタン人の俳優がプロだった。

<先日の、月即別人>
 1週間前のティム・マクミラン&レイチェル・スノウ(2018年9月29日、2019年3月27日)のライヴのとき、ティムの友人だというウズベキスタン人のデニスを紹介された。ドイツで9年前に会い、デニスは今日本に住んでいるという。普通に英語を喋り、ウズベキスタン語、ロシア語、ドイツ語も話すと言っていたな。ホテル勤務でバーテンダーをしているという彼の外見は、オーディナリーな欧州人という感じ。映画中の人たちとはかなり違っていた。
▶︎過去の、ティム・マクミラン&レイチェル・スノウ
https://43142.diarynote.jp/201809300634456583/
https://43142.diarynote.jp/201903281241024170/

 渋谷・ショーゲート試写室で、2018年米国映画を見る。プラダのサブ・ブランド”ミュウミュウ”のために撮られた、NYの女性スケートボード愛好会の“Skate Kitchen”を題材とする短編ドキュメンタリー映画を端緒に置く。その好評を受け、その短編を撮った女性監督のクリスタル・モーゼルが新たに撮り(初長編映画の監督作となる)、やはりスケート・キッチンの面々がそのままメインの役者として出演している。

 主役は、ロード・アイランドに家ではスペイン語しか話さない母親と暮らす、スケートボードで遊ぶことが生きがいの10代の女性。もうすぐ18歳という台詞があったような気もするが、季節が夏休みのシーズンでもあり学校関連の話は出て来ず、彼女たちが学生なのかプータローなのかは判別しがたし。あ、主人公はスーパーのレジ打ちバイドはしていますね。

 スケートボードに青春を託す、若者群像ムーヴィー。多くはボードをやっている場面と、葉っぱ吸って和んでいるシーン。ゆえに、R15指定か。誰と一緒にラリたいかと話し合うシーンが出てきて、ジミ・ヘンドリックスが額を傷つけそこにLSDを貼りバンダナで隠していたという話が出てきた。その際、ポール・ニューマンなんて名前も出てきて、以外に話題は古い? なんか面々の所作には溌剌さよりも刹那的なノリをどこか感じてしまい、あまり面々の所作を楽しそうだと思うことができず、オレは年をとったナと自覚もしました。

 登場人物の多くはカラードだが、人種差別の問題と絡めるところはなく、なんか親と揉めたりもする彼女らが“出口なし”的な閉塞した状況にあるようにも感じてしまい(最後の終わり方を見てもわかるように、監督にはそんな意図はないだろうけど)、なんか英国のその手の映画とつながるとぼくは思ってしまった。漂うギター音などが用いられるが、エンドロールに流されたその音楽担当者は日本人の名前に見えたような。また使用楽曲クレジットも出たが、流れが早すぎ&文字が小さくてちゃんと確認することがかなわなかったが、ぼくが知っている曲はなかった。

 それから、主人公が仲良くなる準主役の男性は、ウィル・スミス(ザ・フレッシュ・プリンス)の息子のジェイデン・スミス。もっと子供のとき父親と出た映画を見た記憶があるが、経歴を見るとすごいセレブおぼっちゃま君なんだな。

<今日の、散歩>
 時間調整のため、試写室のある桜ヶ丘近辺をふらふら。再開発で通りを挟んで、ゴーストタウンと普通の営業/生活の場が隣り合わせにあるのは少しシュール。かつての有名ディスカウント・ショップの一風堂(ギタリストの土屋昌巳が組んでいたバンド名はそこから来ている)は別なところで営業していた。遠目に、ヤマハのスタジオもまだあるのが確認できた。メインの坂道の桜は見頃、ここのところかなり寒い日が続いていて、長生きしていますね。

 変幻自在百戦錬磨悠々怪傑シンガーの蜂谷真紀(2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日、2015年5月20日、2015年6月15日、2016年11月2日、2018年1月19日)にとって、【次ナルJAZZ問答】と名付けた歌と2管がフロントに立つクインテットは彼女にとって一番ジャズのフォーマットに沿った単位であるのかと、ストロング極まりない1曲目に接しながら思った。志向やスピリッツはジャズそのものなんだが、それ以降は、蜂谷のオリジナルは当然のこと、蜂谷のアレンジによるジャズ曲カヴァー(チャールズ・ミンガス、オーネット・コールマン他)もかなり末広がりで、ワープ姿勢を取るものだが。でも、やっぱりリアルなジャズだな。

 新宿・ピットイン。一部ピアノも弾く彼女にくわえ、トランペットの松島啓之(2014年9月25日、2015年5月20日、2018年1月19日、2018年9月2日)と類家心平 (2011年5月5日、2011年7月31日、2014年6月13日、2014年9月25日、2014年12月28日、2015年5月20日、2017年6月21日、2017年9月2日、2018年1月19日、2018年5月13日、2018年7月7日)、コントラバスの須川崇志(2010年3月14日、2011年7月25日、2016年6月27日、2017年6月21日、2018年1月19日、2018年4月7日)、ドラムの本田珠也(2000年5月9日、2002年9月22日、2003年6月10日、2004年10月13日、2007年12月4日、2011年5月5日、2012年7月16日、2013年7月27日、2015年5月20日、2018年1月19日、2018年4月7日)、強力な5個性が絡み合うスリリングなパフォーマンスが続く。

 レコーディングを兼ねるギグ。休憩を間に入れて、正味150分ぐらいはやりました。とにもかくにも、蜂谷の喉は絶好調。もう、歌心と飛躍を兼ね備えた2本のトランペットや現代4ビートの精華とも言えるリズム隊にまったく負けることなく、こんなに彼女の歌声がデカく、ディープに聞こえたのは初めてかもしれぬ。そして、それは本当に表現力とイマジネイション豊か。ときには“和”っぽいものを感じさせる方向に流れる局面もあるなど、無我ってに四方八方に飛び散る様には感服するしかない。【次ナルJAZZ問答】は開かれた現代ジャズの担い手としての矜持に溢れまくった、ジャズを根っこおく進行形ヴォーカル表現の至高にあるものだと思う。

▶過去の、蜂谷真紀
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
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▶過去の、松島啓之
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http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
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https://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
▶過去の、類家心平
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http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
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▶︎過去の、須川崇志
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http://43142.diarynote.jp/?day=20160627
http://43142.diarynote.jp/201706220952582448/
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▶過去の、本田珠也
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/200410162306570000/
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<今日の、録音>
 客の入りも良好。真の冒険や創作にはちゃんと理解者がつく。今回の前のギグを録ったものと、この日の実演をソースとするアルバムが、6月14日発表のレコ発ライヴまでに完成させるそう。上に書いたような塩梅なので、2枚組になりそうな気配……。オリジナル曲編とジャズ曲編と、2枚にわけるのもアリかも。その方が、彼女の幅の広いクリエイティヴィティはわかりやすく提示されるかもしれない。

 麹町・インスティトゥト・セルバンテス東京で、アルト・サックス、テナー・サックス、電気ギター、電気ベース、ドラムという編成を持つ、スペインのマヨルカ島からやってきた5人組を見る。15 年前に大久保嘉人が当時1部にいた同島のチームに入ったことがあり、そこはブイカ(2017年3月7日)の出身地でもありますね。

 非英語圏の人でも日本公演時のMCは英語でする場合が今は多いが、彼らはすべてスペイン語。新鮮? マヨルカ島はインターナショナルなリゾート地なはずで、地元では観光客相手のギグが多いと考えるのが妥当であり、英語が話せても不思議はなく、それは今回の場所に合わせた? ギターとベース以外は、臨機応変に(?)生音でタスクをこなす。入場時に演目表を配布、そこには作曲者の名前も表記されていて丁寧な配慮あり。

 二人のサックス奏者はなかなかに吹ける。アンサンブルもソロも、ほうと頷ける。演目は半数近くがオリジナルで、あとはたとえば、ロイ・ハーグローヴ(2003年2月18日、2003年9月21日、2004年12月2日、2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月24日、2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日、2017年3月2日、2018年3月1日)作のいまのところ21世紀最大のジャズ・スタンダードという言い方もあながち大げさではない「ストラスブール・サンドニ駅」をやっていて、ほう。日本ではその流れを受けて、SOIL & “PIMP” SESSIONS (2005年7月29日、2007年5月6日、2009年6月12日、2011年1月30日、2011年6月23日、2012年3月3日。2012年9月9日、2015年9月27日、2018年6月2日)がオリジナル作でお披露目していますね。サム・クックの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」も演奏していたが、これれもハーグローヴのライヴにおける十八番曲で、彼経由でこれを取り上げたか。

 さらに彼らはヴィクター・ウッテン(2000年8月12日、2004年3月24日、2008年9月8日、2015年6月5日 )の曲もカヴァーしていたが、かような回路からは大まかに言えば熱心なソウル/ファンク愛好から来たというよりは、ジャズ/フュージョン興味に娯楽性を求めた末にこういう形になったという感じを接する者に与える。だからアルト・サックスは野卑な吹き方をしてもメイシオ・パーカー(1999年8月6~8日、1999年10月28日、2001年4月17日、2002年11月19日、2005年9月6日、2007年9月13日、2009年1月21日、2010年2月16日、2010年9月3日、2013年2月2日、2015年7月27日、2016年7月18日)的なイディオムを持たない。ドラマーのソロのパートも完全にジャズ流儀でなされた。他に有名どころでは、トロンボーン・ショーティ(2010年12月13日、2012年2月2日)の曲もやった。

 3分の1では、肉声が入る。アルト・サックスとギターの前にマイクが立てられ、その二人が担う。終盤のオリジナルの1曲は英語詞による完全な歌曲で、それはギターリストが歌う。彼も二人のサックス奏者とともに多くのソロ・パートを与えられたが、なかなか勘所を掴む演奏をする。一番最後に披露された彼らの代表曲らしい「オー・ザッツ・ファンキー!」という曲はアヴェレイジ・ホワイト・バンド( 2007年11月26日。2014年01月29日 )の「ピック・アップ・ザ・ピーセス」を下敷きにした曲だった。

▶︎過去の、ブイカ
https://43142.diarynote.jp/201703091111186566/
▶過去の、ロイ・ハーグローヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm 18日、ディレクションズ・イン・ミュージック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm 21日
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
http://43142.diarynote.jp/201703081443314613/
https://43142.diarynote.jp/201803031242579295/
▶過去の、SOIL & “PIMP” SESSIONS
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/
http://43142.diarynote.jp/200705181805330000/
http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
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http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
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https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、メイシオ・パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130313320000/
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http://43142.diarynote.jp/201607191314481207/
https://43142.diarynote.jp/201806130948515941/
▶過去の、ヴィクター・ウッテン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm バークシャー・フェスティヴァル 8/12
http://43142.diarynote.jp/200403241554160000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
https://43142.diarynote.jp/?day=20150605
▶過去の、トロンボーン・ショーティ
http://43142.diarynote.jp/201012150816313582/
http://43142.diarynote.jp/201202090942324966/
▶︎過去の、アヴェレージ・ホワイト・バンド関連
http://43142.diarynote.jp/200711290931440000/ AWB
http://43142.diarynote.jp/200603100921150000/ ハーミッシュ・スチュアート
https://43142.diarynote.jp/201401301533407584/ AWB
https://43142.diarynote.jp/201804181343243905/ スティーヴ・フェローニ

<来月に日本盤が出る、カタルーニャの人たち>
 そういえば、ライナーノーツを書いたのだが、来月にはバルセロナを拠点に置く3人の女性ヴォーカリスト付き大所帯バンドのザ・グラモフォン・オールスターズ・ビッグ・バンドの『マラカ・ソウル』がP-ヴァインから出る。元々はジャマイカン・ミュージック愛好バンドとしてスタートし、スティーヴィ・ワンダー曲ほかをイナセに取り上げるなどしながらソウル/ファンク度数を強める方に出て開花したビッグ・バンド。そちらは英語のもと、ファンキー度とエンタテインメント性と南国感覚が爆発していて笑顔になれる。映像を見ると、ライヴも超期待できそう。
 アコースティック・ギターとフィドルからなる在独オーストラリア人男女デュオ(2018年9月29日)、昨年に続いての来日。新宿・ACBホール。今回はちゃんと日本のロック系音楽事務所の仕切りのもと全国7箇所のツアーが持たれ、これは最終日となる。

 二人の歌を伴うフォーキーなアコースティック表現から本来は両者のルーツにないはずの(あったりして?)アイリッシュ・ミュージック形態を借りたものまで、また一方ではメタルやヒップホップねたも入れ、音楽要素横断精神とサーヴィス精神を存分に持つ手作り表現を披露。そのいろんな要素が組み込まれたフォーミュラに触れながら、その構造は何気にプログ・ロック的であると思わされたか。二人なりの、イエス『危機』の部分カヴァーとかやったらウケる?

 もうマインドが最高の二人、それが自然に出てくるのはやはり強み。MCを担当するマクミランは随所に日本語を織り交ぜ、受け手と送り手の距離を十全に縮める。彼らは翌日にドイツに帰り、4月に入るとドイツ、スイス、イタリアなどを回るツアーに入るそう。スノウも入っているマクミランの5作目のCD『Hiraeth』は日本の会社からも配信されている。
 
▶︎過去の、ティム・マクミラン&レイチェル・スノウ
https://43142.diarynote.jp/201809300634456583/

<今日の、わあ>
 歌舞伎町に足を踏み込むのはいつ以来か? 夜中拉致されて新宿三丁目の文壇バーやゴールデン街にまれに行くことはあっても、こっちの方には足を踏み込まないものな。そしたら、コマ劇場跡には上階にホテルが入っているでっかいビルがどっかーんと立っていて驚いた。そのすぐ裏に、ACB(アシベと読ませる)ホールが入っているACBの持ちビルがある。ジャズ喫茶に端を発するこのビルは50年の歴史をもつよう。80年代に一度行ったことがあったが、そのときのホールはビルの上階にありけっこう小さくなかった印象がある。地下2階にある現ヴェニューはそれが移転したもののよう。ここ、飲み物は600円。ただし、3杯だと1000円となり、2杯ぶんより安い。

 話題のNetflix配給の映画を、アップリンク渋谷で見る。お、二日続けてモノクロ映画を見るのだな。いや、昨日の映画「COLD WAR あの歌、2つの心」に首を垂れ、またすぐにモノクロームの作品を見たくなったんだけど。

 実のところ、昔はモノクロ映画が好きではなかった。カラーよりなんかぼやっとしている感じでインパクト薄、だからトム・ウェイツやジョン・ルーリーが主演し、ルーリーが音楽を担当したジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロウ』(1986年)も入り込めなかった。感性がコドモだったんですね……。あと、スペイン語作品(一部、ネイティヴな言葉も出てくるよう)なのにアカデミー本賞を席巻したというのも、やはり興味をひかれちゃう。

 ハリウッドでも力を持つメキシコ人映画監督/プロデューサーであるアルフォンソ・クアロン・オロスコの2時間越えの映画だが、さすがの出来。いろんなアイデアや工夫も散りばめられていて、渋いなあ。その最たるものは、音楽の使い方。作品中に出てくる音楽はすべて、ラジオかプレイヤーか店内で流されている曲。つまり登場曲群は“あり曲”で、それらはそういう設定ゆえ少しボヤっとした音質で出てくるのだが、それは映画の日常性を高めはしまいか。過去にもかような音楽の使い方をする映画があっても不思議はないが、ぼくは初めて接する。

 メキシコ・シティの高級住宅街のローマ地区に住むブルジョア家庭(父と母、おぼあちゃん、4人の子供に、家政婦二人。また、運転手も雇っているよう)を題材に起き、アルフォンソ・クアロン・オロスコ監督の自叙伝的内容と言われる。時期は1968年のオリンピック開催を経ての、1970年からの1年ちょっと(かな)。

 モノクロームなためもありゆったりと時間が流れ、淡々とした家族模様を描いていく。……のだが、徐々にいろんなことが起き、映画はどんどんドラマティックになり、また緊張を帯びもする。こりゃ、引き込まれる。最初と最後(途中にも出てくる)の飛行機の隠喩的な使い方をはじめ、いろんな設定や撮り方がうますぎる。もう一度見ると、あーそうだったのと思わさられるところは多そう。

 映画館の場面は2回あっても、テレビはこの作品には一切出てこない。監督、したたかですね。ネットによるヴィデオ・レンタルで屋台骨を築いたNetflix社の作品ゆえの指針だったりして……。

 その後、南青山・ブルーノート東京へ。テナー・サックス奏者(2曲では、ソプラノも吹く)のビル・エヴァンス(2003年9月16日、2016年9月29日)の豪華陣容によるカルテット公演のファースト・ショウを見る。ギターのロビン・フォード(1999年8月28日、2004年4月21日、2004年10月22日、2004年12月17日、2008年8月31日、2013年5月10日、2014年4月23日、2016年12月11日、2017年11月17日)、エレクトリック・ベースのジェイムス・ジナス(2012年1月13日、2012年3月3日 、2013年9月3日、2014年9月7日、2015年3月3日、2017年9月12日、2018年9月1日)、ドラムのキース・カーロック(2010年2月19日)という陣容なり。エヴァンスとフォードは譜面を追いてないが、リズムのお二人は置いていた。

 この4人でエヴァンスの新作『Sun Room』をとったばかり、そりゃまとまっていますよね。エヴァンスとフォードは対等にソロをとえり、一見双頭リーダー・バンドのように思えるか。フォードのソロは他者リーダー・バンドの気軽さからか、けっこうフラッシィに弾きまくる。カーロックは完全レギュラー・グリップで叩くのだが、あんなにスティックの端を持って叩く人は初めて見るかも。彼は1曲でソロとったが、そのときはスネアをロールぽく叩くなどしニューオーリンズ・セカンド・ラインと言えなくもない情緒のものを披露。比較的小さめなセットを叩く彼だが、スネアは二つ置き。とはいえ、ザブのほうはけっこう離して置いていて、ほとんど使っていなかった。ジナスは黙々演奏、あれ彼のソロ披露のパートはあったけ?

 キーボードレスの編成。だが、ステージにはピアノも置いてあり???と思っていたら、フォードのソロの際、彼はピアノを弾いた曲もあった。ほぼ、聞こえなかったが。また、1曲はエヴァンスのピアノのソロ演奏から始まり、彼がリード・ヴォーカルをとった。へえ、意外と歌えるんだ。アンコールはフォードがリード・ヴォーカルを取る曲で、彼はギターをカッティングするのみでエヴァンスがソロを取る。さすが、ヴォーカル・アルバムを連発している彼だけに歌に存在感がありましたね。

▶︎過去の、ビル・エヴァンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
https://43142.diarynote.jp/201610100852199252/
▶過去の、ロビン・フォード
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
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https://43142.diarynote.jp/201711181233058487/
▶過去の、ジャイムス・ジナス
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http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/ ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/
http://43142.diarynote.jp/201709130923483891/
https://43142.diarynote.jp/201809051532324111/
▶過去の、キース・カーロック
http://43142.diarynote.jp/201002211122268480/

<今日の、会場模様>
 最初の映画館(上映は少し小さめな2階のほう)で、上品そうなおばあさんから声をかけられ、少し話す。やはり、話題作ということで来たのか。強烈な映画エンスージアストだったりして。確かここ、かつてはいろんな椅子やカウチが無造作に置いてあったはずだが、生地はしょぼいもののちゃんとしたカップ・ホルダー付きの椅子が並べられていた。
 ライヴ会場のほうも、年配向けの出演者と音楽性ではないが、ぼくの横の方には老人のお一人様が男女3人。そんな風景、普段はない。なぜ? ビル・エヴァンスがマイルズ・デイヴィスのバンドに入っていたからなのかと、ふと思った。デイヴィスのご威光って、やはりすごいから。ロビン・フォードも一瞬、デイヴィス・バンドにいたことがあったっけ。
 ところで、今日の出来のいいNetflix映画を見ながら、ちょい考える。なぜ、アップル・ミュージックは出来合いのものを安く買い叩いてコンテンツ入りさせるだけ(まさに搾取だと思う。とともに、クレジット/データー排除は著しい音楽軽視にほかならない。それは音楽を考えるきっかけを摘み、音楽愛好の広がりを妨げる)で、独自に音楽制作/支援を行ったりはしないのか。まあ、まずは分配率を高めるのが先ではあるだろうけど。

 イケ面の1957年生まれの名ポーランド人監督のパヴェウ・パヴリコフスキの2018年ポーランド/イギリス/フランス映画を、六本木・キノフィルムズ試写室で見る。よく出来た映画で、感服。切なくも、ロマンティックな作品だなあ。母親に連れられ14才で共産圏を出て英国中心に西欧で暮らしてきた彼の、くっついたり離れたりしていた両親へのオマージュがそこにはあるという。

 ポーランドの民族音楽舞踏団の設立時にそこの音楽監督を勤めていたピアニストのヴィクトル(当時は禁止されていたものの、ジャズの造詣も持つ)と、スカウトされて入団したシンガーのズーラのすれ違いつつ、熱烈な情愛の模様を、東西冷戦が始まっていた1949年から約15年にわたり追う。舞台は本国、東ベルリン、パリ,ユーゴスラヴィアなどで、ポーランド語、仏語、独語、ロシア語が会話に使われる。落ち着いた色調の、モノクロの映画。時間は90分に満たないが、駆け足な感じもまったくなく、十全に物語を描く。その手腕にも、舌を巻いた。

 そして、重要なのは、その二人の複雑な愛の物語が、史実にしっかり添って描かれていること。それが、ストーリーや展開に妙なリアリティや深みをもたらす。主役の二人が出会うマズレク民族合唱舞踏団は、同時期に設立され今も健在しているマゾフシェ民族合唱舞踏団の存在を借りたもの。おお、アンナ・マリア・ヨペック(2015年9月5日、2016年12月25日 、2018年3月19日)の両親はマゾフシェの花形団員だった。

 それにしても、主役が音楽家だけに、音楽は本当にいろいろと使われる。民族音楽舞踏団の構成員をスカウトするために地方を回る冒頭のシーンはなんか音楽フィールド・ワークのドキュメンタリーの如し。その後も音楽はバカみたいに重要な役割を与えられ、これは音楽映画と紹介されても不思議はない。音楽面を司っているのは、ジャズを中心にいろんな音楽にコミットしている1982年生まれのポーランド人ピアニストのマルチン・マセツキだ。

 秀でた映像美や構成を持つ。たとえば、二人が久しぶりにパリで会う夜道のシーン。ズーラが泊まるホテルの途中まで一緒に歩き、送るのはここでいいわと軽くキスし、すたすたと歩いていく彼女の後ろ姿をカメラは捉える。かと思ったら、ズーラは再びヴィクトルの元に駆け寄り二人は熱烈にキスしあう。そして、彼女は再びホテルに戻るのだが、カメラはヴィクトルの姿を捉え、駆け足で場を離れるズーラの足音だけが響く。すごいなあ、詩情や含みがあるなあ。先に触れたように音楽をするシーンは多く、その場合飽きちゃいもう少し短めでもいいのにと思わせられる場合も少なくないが、この映画は音楽シーンを絶妙のカメラ・ワークで描くので、それらに必然性を感じてしまい、退屈することがない。撮影はパヴリコフスキ監督の前作『イーダ』のそれも担当した、1982年生まれのポーランド人のウカシュ・ジャルが担当している。

 最後の終わり方だけどう解釈したらいいの分からなく(というか、ぼくが感じたのではイヤなので……)、帰り際に宣伝担当者に思わず訊ねてしまう。……いろいろな取り方があっていいんじゃないですか。だよね。無粋な反応をしてしまった。

▶︎過去の、アンナ・マリア・ヨペック
http://43142.diarynote.jp/?day=20150905
http://43142.diarynote.jp/201612270940364817/
https://43142.diarynote.jp/201803201235152920/

<今日の、知識>
 試写室は、六本木のポール・スミス店舗が入ったビルの上にあった。夜、流れた先で、博学くんからキノフィルムズって木下工務店傘下にあり、その名前はそこから来ているんだよと聞く。ぼくの中ではだいぶ前に潰れた建設会社というイメージがあったのだが、経営が変わりエンターテインメント各種をはじめ、とても多角的に商行為をしているらしい。やっぱ、株をやっている人は物知りだよね。そういえば、先週行った店(開花中の桜の盆栽がおいてあって驚く)では店主から、今大学生の就職人気企業の上位に音楽関連企業が入っていると聞いてびっくり。1位は商社だそうだが、ベスト10にソニー・ミュージックとエイベックスが入っていると教えられる。ホント? わりと新聞は読んでいるつもりだが、それは初耳だった。

 午前中、スイス大使館公邸で、同国の3人組エレクトロ・ポップ・ユニットの面々とスイス大使館公邸で会う。ソフィーたちはアコースティック・ライヴを披露したが、それだともっと面々の豊かなバックグラウンドが見えて、へえ。キーボード担当者のシモンはピアノを弾くわけだが、2曲では生ギターを手にしたり、ハーモニカを吹いた曲もあり。コーラスも、巧みに入れる。その際、ベース音をループさせ、ビート的な音と電気的装飾音も出すベーシストのティムはピアノを弾く。彼らは学校でジャズを学んだあとに、今がある。子供の頃から日本好きだったシモンはバスティアン・ベイカー(2014年11月14日)のサポートなどでも来ていて、訪日は5回目となるという。

 面々はインドやシンガポールを経て日本に来たようだが、この後は中国に行くそうで、それはソフィー嬢のコネクションもあるのだろう。聞けば、シンガポールや中国には住んだことがあり、インドにも団体活動かなんかで何度も行っていると言うから。英語や仏語で歌われている彼女らの2018年作『Drop The Mask』(Suisa)には中国曲のカヴァーも入っている。ソフィーは10代のときにはNYに4年間住んでいたこともあるそうで、そういう広い見聞は音楽に還元されているんだろう。

▶︎過去の、バスティアン・ベイカー
https://43142.diarynote.jp/201411151118294897/

 夜は、あの伝説の(と、書いても誇張じゃないよね?)モリイクエを、今さらながらやっと見ることができた。新宿・ピットイン。←追記:2003年10月24日に、クム・ゴードンので来日しているのを見ていた。http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm

 1977年に、レック(2008年5月2日、2010年5月19日、2011年4月1日 )と一緒にNYに渡り、以後ずっと同地で音楽/アート(CDのアート・ワークを山ほど手がけたりもしている)活動をし続けている人。最初は、ドラマー。渡米してしばらくしてアート・リンゼイ((1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2015年6月9日、2016年9月1日、2017年6月23日、2018年10月21日、2018年10月23日)に声をかけられ、彼のDNAに入り(彼女も作曲者クレジットされている彼らの映画用に作った「ディタッチド」はカエターノ・ヴェローゾ:2005年5月23日、2016年10月9日の2004年作『A Foreign Sound(異国の香り〜アメリカン・ソングス)』でカヴァーされている)、それがすぐにブライアン・イーノの目に留まり、彼が制作した『ノー・ニューヨーク』(アンティルズ)に参画し、知名度を得る。その後、持ち楽器はドラムからPCに変わり、主となるシーンはアヴァンギャルド/フリー・ミュージックへと変わったが、今もとても懇意にしているジョン・ゾーンのレーベル“ツァデック”を中心に20作以上のリーダー作を出してもいますね。

 そんな彼女、2月は欧州を周り、香港でのギグのあと、日本に来たよう。過去、何度も来日し公演を行なっているはずで、直近では昨年もそう。その際、イクエモリ、リードのロッテ・アンカー、田村夏樹、藤井郷子の4人で、『Mahobin / Live at Big Apple in Kobe』(リブラ)を作品化しており、そのお手合わせを踏み台においた、整合感を持つともなんか書きたくなる澄んだ生理が付帯する即興演奏が持たれた。自由に出される音群の重なりに気持ちの良い誘いがあり、その無理のなさは墨絵のごときという形容も一部もちだしたくもなったか。

 エレクトロニクス担当の彼女に加え、トランペット(少し鳴り物も)の田村夏樹(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2010年8月6日、2012年7月1日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2016年1月28日、2017年1月9日、2017年9月13日、2018年1月8日、2019年1月13日) とクラリネット(アルト・クラリネット〜たぶん〜も多用。実力者でした)の北田学(2015年4月24日)、ピアノの藤井郷子((1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日、2017年1月9日、2017年9月13日、2018年1月8日、2019年1月13日)という陣容。その4人によるインプロヴィゼイションが、前半2曲(ともに、20分ちょい)と後半2曲(30分と10分)+アンコールという内訳で披露された。

 管楽器の男性二人を、両端に座る女性陣が挟む。イクエモリは右手でラップトップ、左手で小さい箱型の装置を操り、自在に音を出す。キラキラした音、漂う音、蠢く音など、それらは多彩で、完全に意のまま操っていると感じる。ニコニコという感じの生理的な自然体さを感じさせる風情も、それにあっている。管の二人は、北田が前に出ることが多く、カップも多用する田村が従というか、合いの手/テンションつけ役に回る場合が多かったか。そして、藤井はその総体を敏感に俯瞰しながら、いろんな方向性を照らすピアノ音を出していた。

▶︎過去の、レック/フリクション
https://43142.diarynote.jp/200701131418140000/
https://43142.diarynote.jp/201005211249422393/
https://43142.diarynote.jp/201104041101543361/
▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
https://43142.diarynote.jp/201810240904066739/
▶︎過去の、カエターノ・ヴェローゾ
http://43142.diarynote.jp/200506021846130000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161009
▶過去の田村夏樹
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820 板橋オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
http://43142.diarynote.jp/201701101136544400/ Quartet Maho。Maho、 Satoko Fujii Orchestra Tokyo、Tobira―one、Satoko Fujii Quartet
http://43142.diarynote.jp/201709141146381271/ 藤井オーケストラ東京
https://43142.diarynote.jp/201801100512178732/ あれもこれも

https://43142.diarynote.jp/201901141236416025/ あれもこれも
▶︎過去の、北田学
https://43142.diarynote.jp/201504271015006453/
▶過去の、藤井郷子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201008261616172628/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120701
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
http://43142.diarynote.jp/201701101136544400/  Quartet Maho。Maho、 Satoko Fujii Orchestra Tokyo、Tobira―one、Satoko Fujii Quartet
http://43142.diarynote.jp/201709141146381271/ 藤井オーケストラ東京
https://43142.diarynote.jp/201801100512178732/ あれもこれも
https://43142.diarynote.jp/201901141236416025/ あれもこれも

<今日の、スイス人>
 暖かい1日で、ライヴ披露のあと、庭(1本、花が咲いている桜の木もあった)に出て懇談会。その際、フォンガー・フードとともに、午前中ながらシャンパンやワインもサーヴされる。ぼくは13時からフランス人打楽器奏者のグザヴィエ・デサンドル・ナヴァルとのデュオ実況作『カンヴァセーションズ・イン・パリ』(ユニバーサル。完全即興でやったそうだが、生理的に優しくメロディアスでもあり、かなりいい出来だと思う)をリリースするハクエイ・キム(2010年11月26日、2011年2月19日、2011年4月10日、2011年8月6日、2013年9月13日)の取材があったので一人中座したが、懇談会はいつまでつづいていたのか? メンバーの3人とは楽しく話したが、本当にいい人たちでスイスに対する興味がまたわく。←そんなこと、ばっかだな。やっぱ、基本は人なり? シモンが好きなピアニストはティグラン・ハマシアン(2014年9月26日、2018年9月1日)だそうで、ジャコ・パストリアス他が好きなティムはすぐに楽器の元にぼくを連れて行き、ベース+デヴァイスの演奏をいろいろと見せてくれる。そんな彼らのライヴは、
3月23日(土):アンスティチュ・フランセ東京(東京)
3月25日(月):Kyoto Live House MOJO (京都)
3月26日(火):ライブハウス ガタカ(京都)
3月27日(水):浅草ゴールドサウンズ(東京)
 また、アジアに来る仕事があるようで、もしかすると9月に再び訪日する可能性もありそう。
▶︎過去の、ハクエイ・キム
http://43142.diarynote.jp/201012051849242327/
http://43142.diarynote.jp/201102190813437159/
http://43142.diarynote.jp/201104142208096884/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/201309161512043853/
▶過去の、ティグラン・ハマシアン
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
https://43142.diarynote.jp/201809051532324111/

第657回いーぐる講演 2019年3月23日(土)、15時半から@四谷いーぐる
解説者:高地明、佐藤英輔、濱田廣也(BSR編集長)


▶︎a) イントロダクション 「初めてブラック・ミュージックのメッセージを強く感じた曲」
1.The Persuasions / Buffalo Soldier(1972年) (Capitol ST-872) ★高地
 バッファロー・ソルジャーとは19世紀にアリゾナとメキシコ国境地帯で任務についた黒人兵隊で、その姿を誇り高く歌う。このアルバムが東芝EMIから国内盤発表された72年に、中村とうようがニューミュージック・マガジンのレコード評で大絶賛し、ストリート・カルチャーとしてのアカペラに大きな注目が集まった。オリジナルは名門ドゥーワップ・グループのザ・フラミンゴス70年作品。
2.Howlin’ Wolf / Watergate Blues (1973年) 『The Back Door Wolf』(Chess PLP-844) ★佐藤
 “歌詞なんかどうでもいい”派のスタンスをずっととっておりました。が、この時事ネタ曲には、後追いで聞いておやと思わせられた。“皆、ホワイト・ハウスの奴らの話を聞いたかい?/世界中が知っているよ”と歌われるこの曲を聞いて、半径1キロ外のことを歌うブルースもあるんだと頷いた記憶あり。作者はウルフの曲をいろいろ書いている(BSR誌本特集では、彼の「Coon on the Moon」が紹介されている)サックス奏者のエディ・ショウ。彼はウルフのバンド・リーダーとマネージャーを務めていた。この米国を揺るがす政治スキャンダルはこれを題材とする映画をいくつも生んだのに、カントリー歌手のトム・T・ホールの同名曲(1973年)やフレッド・ウェズリー&ザ・JBズの「Rockin’Funk Watergate」(1974年)などはあるものの、この事件を扱った曲をぼくはあまり知らない。本曲は、ニクソンが辞任して10日以内に即録音された。
3.SYL JOHNSON / Is It Because I’m Black (1969年) 『Complete Mythology』(Numero 032)★濱田
「初めてメッセージを意識した曲」ではないかもしれませんが、タイトルから強い衝撃を受けた曲です。法の上では差別は解消されても現実は全く変わらず、貧困に苦しむ人々。「俺が黒人だからなのか」との問いは「俺はひとりの人間だ」という不屈の宣言でもあります。69年暮れから70年初頭にシングルヒットした曲ですが、今回は7分超のLPヴァージョンを聴いていただきます。

▶︎ b) 1920〜40年代 ブルース、ジャズ等、公民権運動が盛んになる前の曲
4.Charley Patton : Tom Rushen Blues (1929年) ( Paramount 12877 / Yazzo LP 1020) ★高地
 ミシシッピ・デルタ・ブルース最重要人物による、農園で働く黒人に対して実際に起こった白人保安官による不当な扱いを歌ったもので、怒りを持って訴えるというよりも、物語として淡々と伝えていく。ブルースが同胞への情報伝達、そして喚起の手段となった最初期の名曲だ。
5.Billie Holiday / Strange Fruit(1939年) 『Billie Holiday』(Commodore UCCC-3008)★佐藤
 米国音楽史上もっとも直裁かつ生理的に辛辣に南部の黒人差別の風景を切り取ったプロテスト・ソング。こんなに悲痛なメッセージを抱えた曲がどれほどあるというのだ。ルイス・アレンという名前でスタンダード系曲も書いた、在NYのユダヤ人牧師にして共産党員だったエイベル・ミーアポルが30年代初頭に新聞記事に載った写真に衝撃を受けて書いた。その後、アフリカン・アメリカンの苦難を背負いまくったような“暗黒の声”を持つホリデイの喉力もあり、広く知られるようになった。ここでかけるのは、“テイク2”ヴァージョン。
6.BIG BILL BROONZY / Black, Brown And White Blues (1947年) 『Blues In The Mississippi Night』(Rounder CD 82161-1860-2) ★濱田
 1920年代から録音のあるビッグ・ビル・ブルーンジーは1930〜40年代に人気の絶頂を迎えたブルース・シンガー/ギタリスト。この曲は2003年に初めて世に出た録音で、人種差別をあからさまに歌った内容から発表を見送られたことが想像できる。タイトルの「ブラック」「ブラウン」「ホワイト」は肌の色を意味し、「ブラック」であることで不当な扱いを受けることを歌っている。

▶︎ c) 1950年代〜60年代前半 フリーダム・ソング〜フォークの影響も受けた時代
7.Lightnin’ Hopkins : War Is Starting Again (1961 年)『Lightnin’ Strikes』(Ivory 91272 / Vee Jay LP 1044、1961 年) ★高地
 1950年代の朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争を題材として多くの黒人シンガーが徴兵されていく時事を歌い、テキサス・ブルースの大物ライトニンも世を嘆き訴えた。本作はシングル盤発売され、ブルースがまだまだ黒人底辺社会で声を大きく上げていた実例となる一曲。
8.Little Richard / Tutti Frutti (1955年) 『Here’s Little Richard』(Specialty SP-100)。★佐藤
 主旨から離れるかもしれないが、胸を張ってこの曲を選曲。リトル・リチャード、チャック・ベリー、ボー・ディッドリーのロックロール3傑はまさに音楽性は当然のこと、歌詞や物腰においてもコペルニクス的展開的にして規格外。この時代のすっこーんと抜けた彼らの表現は、当時の困難な黒人を取り巻く状況が生んだ最良の生理的反発の裏返しであり(一部、逃避もあるか)、アフリカン・アメリカンの創造性の見事な発露であると考える。そして、そんな表現は白人への訴求力も抜群であった。彼らのR&Rは同胞の地位向上に貢献したとも思う。
9.Go Tell It On The Mountain(1963年) 『Movement Soul』(ESP 1056)★濱田
 1960年代前半の黒人教会や集会場での模様を収めたアルバムからの1曲。いわゆるフィールド・レコーディングで、生々しさがすごい。当時の公民権運動の様子を伝えるものとして選んだ。国を動かすのは民衆の力であることが伝わってくる。このLPは南部各地で録った音源をつないでおり、これはLPのA面の冒頭の部分になる。

▶︎ d)1960年代後半 「ソウル勃興」から「ブラック・パワー」の時代
10.J.B. LENOIR / Alabama Blues (1965年) 『Alabama Blues』(CBS 62593)★濱田
 J.B.ルノアーは、社会的な題材を歌詞に込めたブルース・シンガー/ギタリストとして知られる。1965年5月5日に録音されたこの曲は、同年2月アラバマ州セルマでの公民権を求めるデモ行進で警察の暴力によって多数の犠牲者が出たことに対する怒りを歌ったものであろう。その内容からかこのアルバムは当初本国アメリカでは発売されなかった。
11.Little Milton / We’re Gonna Make It (1965 年) (Checker 1105 / LP 2995) ★高地
 仕事を見つけるのも難しく、配給の列に並ばざるを得ない生活。そこで「みんなで力を合わせれば乗り越えらえる」なんて、現実問題として軟な意識かもしれないが、モダン・ブルースの王者ミルトンの歌の並外れた訴求力で1965年にR&Bチャート連続三週トップという大きな共感を得た。ドラムスはモーリス・ホワイト、ベースはルイス・サタフィールドという後のEWFの中心人物となる二人が支える賛同ビートも快感。
12.JAMES BROWN / Say It Loud, I’m Black And I’m Proud (1968年) 『Say It Live And Loud: Live In Dallas 08.26.68』(Polydor 31455 7668-2) ★濱田
 1960年代後半に高まった「ブラック・パワー運動」は、黒人であることを誇りとし、黒人の独立自尊を訴えた運動だった。ジェイムズ・ブラウンのこの曲は「ブラック・パワー」を象徴するメッセージ・ソングとして知られている。今回聴いていただくのは1968年8月26日、テキサス州ダラスでのライヴ録音。
13.Roebuck Pops Staples / Black Boy (1969年) (Stax STA-0064) ★高地 
 メッセージ・ソウルの代表的家族グループ、ザ・ステイプル・シンガーズのリーダーであり家長であるポップス・ステイプルズによるソロ作品で、その学校にとって初めての黒人生徒となる少年の初登校日に起こった出来事とその心情を綴っていく。ポップスを師と仰ぐダニー・ハサウェイのエレピも煽りまくり、コーラスに加わる娘メイヴィスの声援の熱さもすごい。
14.Gil Scott-Heron / Evolution(And Flashback) (1970年) 『Small Talk 125th and Lenox』(Flying Dutchman BVCJ-1015) ★佐藤
 ジャズ・ポエットとして世に出たヘロンのファースト作から。レーベルのフライング・ダッチマンはジャズ重要レーベル“インパルス!”のプロデューサーだったボブ・シールは起こしたレーベルだ。ハーレムの中心地の住所である『Small Talk 125th and Lenox』と名付けた詩集を材料にリーディングする模様を収めた、素の実況盤。マルコムXやキング牧師の名前を出しつつ、黒人の自立意識をビターに説いている。こういうライヴの場が当時は有効であったのか。
15.Donny Hathaway / Magnificent Sanctuary Band (1971年)『Donny Hathaway』(Atlantic SD33-360) ★佐藤
 頭のドラム音から胸高鳴り、肯定的な気分に満ちる。平等を求める行進を祝福するこの曲は、まだ黒人社会やダニーに希望があったことを伝える。オリジナルはロカビリー歌手のドーシー・バーネットが1970年に発表。なお、ドラマーのハーヴィー・メイソンの1975年曲「マーチング・イン・ザ・ストリート」(アリスタ)はこれへの返歌だ。

▶︎ e)1970年代 公民権法成立後の困難〜ゲットー、ベトナム帰還兵といった問題を扱う
16.Roland Kirk/ What’s Goin’ On ~ Mercy Mercy Me (The Ecology) (1971年) 『Blacknus 』 Atlantic SD1601) ★高地
 マーヴィン・ゲイの71年の大ヒットとなったモータウンの二曲は世を動かし、それにブラック・ミュージックのもう一つの大レーベルであるアトランティックも応えた。ブラック・ジャズの権化となるローランド・カークとアトランティックが誇るスタジオ・ミュージシャンが総出で暴れまくった痛快ファンク。
17.ROY C / Open Letter To The President (1971年) (Alaga AL-1006) ★濱田
 ハニードリッパーズ名義での “Impeach The President”他、メッセージ・ソングが多数あるロイ・Cは、1960年代から活躍するシンガー/ソングライター。この「大統領への公開状」ではベトナム戦争からの撤退や貧困家庭の問題を訴え、さらには当時の南アフリカの人種差別にも言及している。歌い出しはインプレッションズの“People Get Ready”を受けており、60年代からのつながりを感じさせる。
18.BOBBY PATTERSON / This Whole Funky World Is A Ghetto (1972年) 『It’s Just A Matter Of Time』(Paula LPS 2215)★濱田
 テキサス州ダラス出身のボビー・パタースンは1960年代後半にデビュー、これは彼にとって初のアルバムからの1曲。黒人の貧困層が住む「ゲットー」の問題は70年代に入っても改善は見られず、多くのシンガーやミュージシャンが作品の中で訴えている。この曲では犯罪に溢れるゲットーの現状を描きながら、改善の道を探ろうと歌う。
19.Sly & The Family Stone / Let Me Have It All (1973年) 『Fresh』(Epic MHCP-1307)★佐藤
 スライ・ストーンは魔法のような混合サウンド作りとともに、言葉使いの天才でもあり、それゆえ秀でたメッセージを持つ曲をたくさん発表している。彼が素晴らしいのは同胞に向けて“スタンド”を促す際に、ポジティヴでリベラルな視点をしっかりと携えていたこと。だが、この1973年作になると、その塩梅がだいぶ変わり、絶望の情が前に出てくる。“僕に全てをください”と懇願する内容のこの曲も、音楽的に洗練されたコーラスや管音とあいまって諦観の念が大きく横たわっていると感じてならない。“なんかとなるさ=どうでもいいや”と歌われる「ケ・セラ・セラ」の名カヴァーもこのアルバムに収録。
20.Taj Mahal/ West Indian Revelation(1975年) 『 Music Keeps Me Together (Columbia PC 33801)★高地
 70年代に入ってようやく我々も気づいた、カリブ/アフリカでの闘争行動そのものとなった音楽の勃興、それにアメリカン・ルーツ・ミュージックを探っていたタジも目覚め、サード・ワールドへと拡がるアメリカ黒人意識を表わした傑作。
21.Swamp Dogg / Call Me Nigger (1976年)『Swamp Dogg’s Greatest Hits?』(Stone Dogg RVP-6164) ★佐藤
 知性もどこか感じさせる変調ソウル・シンガー/ソングライターとして知られるスワンプ・ドッグの面目躍如な1曲。ニガーだろうとブラックだろうと、おまえらの好きなように呼べ。おいらは気にしねえ。ただし、前に進むおいらの邪魔をするんじゃねえ。といった文言から始まる歌は、もう白人への罵詈雑言が7分にわたって鬼のように綴られる。今や対決あるのみ。単語の数の多さは、その思いを伝えよう。収録作はもちろんオリジナル・アルバムで、アルバム表題は洒落。

(f)年代順[5]1980年代以降 
22.Chuck Brown & the Soul Searchers / We Need Some Money(1984年) 『Go Go Crankin’』(T.T.E.D./Island DCLP 100) ★佐藤
 “チョコレート・シティたる”ワシントンD.C.のファンク/ゴー・ゴー界のヴェテランのシンガー/ギタリストの当たり曲。現金ばんざいという率直さとともに、クレジット・カード=白人のシステムなんか俺たちには関係ねえという反骨精神が爽快に爆発。我々には俺たちの流儀がある! こういうガラっぱちなヴァイタリティこそ、ぼくが米国黒人音楽に求める最たる美点であるのだ。
23.SHERWOOD FLEMING / History (2015年) 『Blues Blues Blues』(KTI KTIC-1016)★濱田
 1960年代後半からいくつかシングルを発表していたシャーウッド・フレミングが2015年に78歳で発表した衝撃のアルバムからの1曲。その年齢から「枯れた味わいのブルース」を想像したら痛い目にあう。これは1992年の「ロサンゼルス暴動」に発展する「ロドニー・キング事件」に対しての怒りが生んだポエトリーで、タイトルの「歴史」とは黒人が歩んできた苦難の道であり、語り継いでいかなければならないものだ。
24.Robert Cray & Hi Rhythm : Just How Low (2017年) (Jay-Vee Records JV2017LP) ★高地
 イントロで”Hail To The Chief”(大統領万歳)をギターで奏で、マーチのようにそれを煽るドラムスが、まるで監獄で鎖に繋がれた人間の行進のようなビートとなってくる、異様なファンク・ブルースである。トランプ大統領による乱政へ抗議であり、呪いをかけるかのようなサウンドとビート自体が凄まじい。 (ブルース&ソウル・レコード136号CD評より)



 虎ノ門のソニー・ピクチャーズ試写室で、6月公開の2018年米国映画を見た。のだが、これがびっくりするほどの音楽=ロックを扱う映画で驚いた。レコード屋の場面や曲を作ったり、楽器を演奏するシーンの割合は意外に高い。ブレット・ヒリー監督作品。

 舞台はブルックリン。かつてバンドをやっており今はアナログ専門のレコード店を17年間(だったか?)持っているおっさんと、その娘が主人公。音楽仲間だったアフリカ系の奥さんは事故死して、シングル・ファーザーとして育て、ミックスで同性愛傾向にある娘は秋からUCLAの医学部に進むことになっている。ときに父娘は自宅でセッションし、そうして出来上がった曲をスポティファイに登録したところ……。

 主人公のレコード店はかなり立派。それ、わざわざしつらえたのか? 店は赤字で主人公は貧乏人となっているが、タバコはスパスパすうし、自宅スタジオも持ち、楽器や機材も揃っていて、側から見るとそれなりに豊か。アナログ店ということで時代遅れなおっさんかと思えば、いろんな機器も使えるようだし、お店の大家である中年女性にアニマル・コレクティヴ(2008 年3月18日)の2009年作をこれはいいよと勧めたりもする。

 なんか劇的にストーリーが動いていくのかと思わせれば、それはなく(やろうと思えば、いくらでもできたろうに)、映画は淡々としたペースのもと流れる。が、それも悪くなく、それゆえに、本作は音楽映画でなく、音楽好きの父と娘のつながりを描いた映画という位置を得るのではないか。

 ただ、とても残念だと思えたのは、ブレット・ヒリー映画に過去にも関与しているらしいキーガン・デウィットという音楽家が作る父娘合作曲群がいまいちなこと。娘役のカーシー・クレモンズの歌声はいいのに、それが映画の感興を削ぐ。個人として何枚もリーダー作を出し、現在ワイルド・キャブというバンドをデウィットは組んでいるが、それらをちょい聞きしたらやっぱりぼくの耳には魅力薄だった。ソニーではなく、ミランというインディ発の本映画のサントラはデウィットの曲で占められているが、1曲だけミツキ(2017年11月24日)の曲「ユア・ベスト・アメリカン・ガール」が入れられている。

▶︎過去の、アニマル・コレクティヴ
https://43142.diarynote.jp/200803201208590000/
▶︎過去の、ミツキ
https://43142.diarynote.jp/201711251506243645/

 続いて(移動手段に使った銀座線が激混み〜1つパスしたものの〜で超辟易。各駅で人が乗りすぎでドアの開閉が何度も行われ、そのため倍近い時間がかかった)、南青山・ブルーノート東京で、マデリン・ペルー(2005年5月10日、2006年8月24日、2009年5月18日、2015年9月15日)を見る。ところで、

 神話性。かつて、彼女はそれを纏わされたシンガーだった。ちょっとブルージーな渋味を持ち、またどこかレトロさを持つためであったか。“現代のビリー・ホリディ”なんてあまりにホリデイの暗黒をないがしろにしたキャッチが一人歩きしたこともあった。また1996年にアトランティックから大々的にデビューしたあと、アンコントロールな人らしく、次にちゃんと正規作が出るまで8年を要したという事実も、彼女にある種の神話性〜浮世離れした存在感〜を付与したかもしれない。だが、その後は比較的順調にアルバム・リリースをずっとユニヴァーサル・ミュージック系列からしていて、当初どこかに抱えていた虚無感はなくなり、真っ当な健全さや体重をどんどん増している。

 曲によりギターや6弦ウクレレを手にしつつ歌うペルーを、キーボードのアンディ・エズリン(2017年12月7日)、エレクトリック・ギターのジョン・ヘリントン(2009年5月18日、2015年9月15日)、エレクトリック・ベースのポール・フレイザー(左利きの彼のみ、アフリカ系)、レギュラー・グリップで丁寧に叩くドラマーのグラハム・ホーソーンがサポート。皆さりげなく達者で、主役との信頼関係もばっちり取れている。ときに見せるバンド員のコーラスもいい感じ。で、これまで見たなかで、彼女は一番シンガー・ソングライター的なパフォーマンスを披露していると思えたか。実際、新作はオリジナル主体であったわけだが。

 気負いゼロで鼻唄キブン(ながら、歌の存在感あり)でショウを繰り広げる様は刺々しいものは皆無、彼女が普段着感覚のもと自然体で気分よく表現に当たっていると痛感させる。そして、その奥から、アメリカン・ミュージックの襞のようなものがうっすら浮き上がるのも当然のことのように思えた。そういえば、アラン・トゥーサン曲「エブリデイ・アイ・ドゥ・ゴンー・ビー・ファンキー(・フロム・ナウ・オン)」もやったな。また。仏語やスペイン語で歌うものもあった。

 途中3曲だったか、サポート陣が下がり、単独でアコースティック・ギターの弾き語りを披露。なるほど、このようなソロのバスキングを様々な人が見初め、予算のかけられるレコーディング・アーティストへと彼女を導いたのだな。

▶過去の、マデリン・ペルー
http://43142.diarynote.jp/200608271342350000/
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/200505141715430000/
https://43142.diarynote.jp/201509231113323904/
▶︎過去の、アンディ・エズリン
https://43142.diarynote.jp/201712081715389473/
▶︎過去の、ジョー・ヘリントン
https://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
https://43142.diarynote.jp/201509231113323904/

<今日の、和食屋>
 ソニー・ピクチャーズ試写室の入ったビルの1階には、ロバート・デ・ニーロ出資で知られるレストランのノブ・トーキョーがあった。南青山の六本木通りぞいにかつてあったときもそうだが、駅から遠いところに作るんだな。それ、あちら流儀? あ、こっちはオークラ宿泊客ねらいか。おれ、昔NYで連れてかれたことがあり、不思議な感じを覚えた。今、本当に世界中にあるんだよなー。

Alternative Tokyo

2019年3月16日 音楽
 昼下がりからやっているイヴェントで、日暮れ以降のものを見る。渋谷・WWW XとWWW。

 近田春夫+DJ OMBは彼が昨年出した新作『超冗談だから』楽曲(他人曲主)を披露するものか。お元気そう。おじさんのDJが出すカラオケ音に乗り、一人マイクを持って、ときに品を作り、歌い上げる。見事になりきった歌謡ポップ・ショウだった。なんか、その姿を見ながら1975年に後楽園球場でやったワールド・ロック・フェスティヴァルで見た彼の若き日の雄姿をふと思い出した。彼はフェリックス・パパラルディ&ジョーのステージの鍵盤奏者として出演。演奏後、場所柄メンバーたちは観客に向かいバットでボールをノックしたのだが、彼のノックは全然ボールが飛ばず、文化系の人なんだと思ったっけ。
▶︎過去の、近田春夫
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm ロニー・リストン・スミス公演のお客さん
 
 続く、SONGBOOK PROJECTは俊英ドラマーの石若駿(2014年9月26日、2016年6月27日、2016年7月21日、2016年9月4日、2017年6月21日、2017年7月12日、2019年1月21日)が数年前からたまにやっているプロジェクトの拡大版。彼の楽曲を披露するもので、エレクトリック・ピアノを弾く彼に加え、歌詞も書いているというシンガーの角銅真実(ときに、生ギターも手にする)、エレクトリック・ギターの西田修大(効果音的な音使いがいい感じ)という面々が、散文調の歌もの表現を奏でる。そして、途中から、東京在住の豪州人ベーシストのマーティ・ホロベック とcero(2016年6月16日)で叩いているというドラマーの光永渉も入る。もっとポップな曲をやるのかと思ったら、流動性を抱えた、もう一つのヴォーカル曲というものを淡々と浮かび上がらせていた。

▶︎過去の、石若駿
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170621
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180404
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
▶︎過去の、cero
https://43142.diarynote.jp/201606171730294884/

 トリは、自在のスタンスで今の音楽界を泳いでいるという印象を与える蓮沼執太の大所帯プロジェクトである蓮沼執太フィル。鍵盤と歌の当人に加え、ベースとギターの石塚周太、ドラムとシンセサイザーのイトケン、サックスの大谷能生(2012年12月8日)、PAの 葛西敏彦、コーラスの木下美紗都、マリンバのK-Ta、スティール・パンの小林うてな、ユーフォニウムのゴンドウトモヒコ(2012年8月12日、2013年8月11日、2016年8月21日 )、ギターの斉藤亮輔、ドラムのJimanica、ラップの環ROY、ヴァイオリンとコントラバスの千葉広樹(2014年10月22日、2016年7月11日) 、ヴィオラの手島絵里子、フルートの宮地夏海、フリューゲル・ホーンとグロッケンシュピールの三浦千明という面々。
 
 まずは、小編成バンドで、韓国人シンガー・ソングライターのイ・ランが歌うものを1曲。蓮沼が作った曲に彼女が韓国語の歌詞をつけたとのことだが、MCでは日本語がペラペラだった。その後は、全員によるパフォーマンス。大きめのアンサンブルのもと、歌やコーラスやラップが乗せられたり。おしゃれなコード進行や決めを持つ、今様洒脱シティ・ポップ豊穣表現という感想を持った。

▶︎過去の、大谷能生
https://43142.diarynote.jp/201212131649061802/
▶︎過去の、ゴンドウトモヒコ
http://43142.diarynote.jp/201208201258419318/
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
https://43142.diarynote.jp/201608241301049887/
▶︎千葉広樹
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
https://43142.diarynote.jp/201607121045394372/

<今日の、別室ギグ>
 WWWの小ルーム(とはいえ、バー・カウンターはちゃんとあった)では、
【BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE in Alternative Tokyo】と題するセッションもあり。ぼくはかつて同名のセッション企画(2012年3月21日)を後楽園ホールで見たことがあったなあ。二つ持たれたうち、松下敦、大垣翔、林頼我の3人のドラマーによるセッションを、途中から見る。結構、人が入っていたし、終わった後の声援も大きかった。そしたら、知人が寄って来て、私(3人のドラマーのなかの)赤いシャツ来ている人と結婚するんです。あら。おめでとう!
▶︎過去の、BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE
https://43142.diarynote.jp/201203260805006088/

 UKロック史に残るロック・ギタリストであるミック・ロンソンを扱う2017年ドキュメンタリー映画(監督をしているは同国エンターテインメント界で力を持つ、1950年生まれのジョン・ブリューワー)を、渋谷・シネクイントで見る。去年サッカーW杯TV観戦流れで行った知人宅で酩酊見したDVDは、これだったのか。

 ハンサム君。ロンソンを見た女性は誰でも彼とやりたがるという話が映画中に出てきたが、かもねと頷ける。

 1946〜1993年、肝臓ガンで死去。なにより、デイヴィッド・ボウイの躍進期である1970〜1973年に彼の側近だった御仁だ。ロッカーへの夢破れ故郷のハル(サッカー・ファンにはおなじみの地名ですね)で庭師をしていたときに、ボウイ・バンドのドラマーをしていた旧友の紹介で道が開けたという話にはあらら。その頃、トニー・ヴィスコンティ(2015年7月7日)はボウイと一緒に住んでいたり、成人後に楽譜を独学したロンソンがボウイ表現の弦アレンジを担当、ステージでのアトラクティヴさを支えるとともに、バンド表現の屋台骨を背負っていたとは、知らなかった。

 中盤までは、ロンソンの存在を借りたボウイのサイド・ストーリーという観もある。英国のボウイのマネージメント会社が一瞬スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)と契約をしかかった(が、破れ、ボウイ売出しに力を注いだ)とか、彼のロックロール曲「ジーン・ジニー」のリフはチェスのブルース・マンみたいだろとロンソンが発言する場面もある。

 ボウイから離れた前後から、イアン・ハンターやルー・リード(ハル訛りがきつくて何を言っているか分からなかった、と彼は発言)、1970年代中期のボブ・ディラン(彼のレコーディングやローリング・サンダー・レヴューに関与するくだりの話がもっとほしかったなー)、モリッシーなどの表現にロンソンが関与することも紹介。というわけで、その才能や格好よさをちゃんと伝えるつつ、(その才能に比すなら)不遇のロッカーであることも映画は伝えようとしているか。ボウイ、彼の昔の奥さんだったアンジー・ボウイ、ロンソンの妹、ヴィスコンティ、同時期にボウイ作に録音参加していた鍵盤奏者のリック・ウェイクマン、ロンソンの後釜ギタリストのアール・スリック(2016年5月5日)、写真家のミック・ロック、クィーンのロジャー・テイラーらいろんな人々の証言映像が出て来て、過去の映像や画像はよく集めているのではないだろうか。

 そういえば、ロンソンのボウイ・バンド在籍期のあたり日本ではグラム・ロックと呼ばれるが、その単語は出てこなかったような。また、あまり私生活のことは語られていないが、彼の娘リサ・ロンソン(2015年7月7日、2016年5月5日)は少なくても2度は日本にシンガーとして来ている。

 頭と終わりは、1992年ウェンブリーのサッカー・スタジアムでのフレディ・マーキュリー追悼コンサートでボウイと共演している映像だ。

▶︎過去の、トニー・ヴィスコンティ
https://43142.diarynote.jp/201507090944439091/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶︎過去の、アール・スリック
https://43142.diarynote.jp/201605170941039984/
▶︎過去の、リサ・ロンソン
https://43142.diarynote.jp/201507090944439091/
https://43142.diarynote.jp/201605170941039984/

<その後の、パーティ>
 虎ノ門・ホテルオークラで持たれた、アイルランド大使館主催の“セント・パトリックス・デイ”を祝うレセプションに行く。ジャケットには、緑色のポケット・チーフを入れたナリ……。普段大使公邸でやるパーティの大きめのやつかと思ったら、もっと格式高くて、すんごい広いところでものすごい人がいてびっくり。各国の大使館関係者も多いようで、外国人比率もかなり高い。入場時に、大使夫妻、そしてちょうど来日中の文化大臣(女性。ダブリン生まれで、政治家家系ながら放送畑出身とか)がいて、丁寧に来場者と言葉を交わす。大使とは一言ジャズの話をし、初めて会う大臣に自己紹介すると、すかさず好きなアイルランドの音楽はと問われる。答えを考えていたら、すぐに「U2(2006年12月4日)?」と言ってくる。いや、今はトラッド音楽のほうを聞く機会が多いですねと模範的な(?)答えをしておいた。
 会場前方にはアイルランド、日本、EUの旗が置かれ、冒頭にはフィドルとかの演奏で、君が代、アイルランド国家、知らない曲(EUの曲なんてあるの?)の3つが演奏される。それに続く、大使挨拶ではまずニュージーランドで起きた死者多数のテロ事件への言及がまずあり、黙祷がなされた。
▶︎過去の、ポール・ガヴァナ大使
https://43142.diarynote.jp/201812091225184437/
▶︎過去の、U2
https://43142.diarynote.jp/200612070141170000/

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