De La FANTASIA

2009年11月1日 音楽
 この日は、<Voices of Females>と題されていて、3カ国の女性ヴォーカリストがパフォーマンスを行った。恵比寿・リキッドルーム。

 まず、出てきたのは、米ポートランド在住の個性派シンガー・ソングライターのローラ・ギブソン。乱暴に言ってしまえば、先端ロック音像感覚のなかで訥々としたフォーク・ミュージックを広げているような人(日本盤は、ヘッズから出されている)で、今回の来日は何作もリーダー作を出している同郷のエレクトロニカ系クリエイターのイーサン・ローズを伴ってのもの。ともに弦楽器や装置を扱って淡い漂う音を出し、そこにギブソンはふわーとウィスパーな歌声を載せる。一部はなぜか、ビュークの影響を感じるときがあったが、それは不可解な現代性を持つゆえか。その総体は記憶の底にある断片を拾い上げて反芻しているような感触を持つかも。立って聞くにはもう少し動の部分も欲したくなる(二人も座ってパフォーマンスしていた)が、十分にその美意識と個性は感じることができた。

 次はエゴ・ラッピン(2004年2月5日、2005年7月31日、2006年12月13日、2006年11月17日、2006年11月17日、2009年8月8日)の中納良恵が出てきて、ピアノを弾き始める。彼女のピアノの弾き語りには初めて接するような気がするが、これにはびっくり。まっすぐ楽器と向かいあい、自分の音楽を出すのだという純真に溢れまくっていて。ピアノのタッチが強く、それに乗る歌声もとってもふくよかにして太い。力のある、ピアノ弾き語り表現! ぼくはえらく感じいってしまった。曲もいい感じだったが、それはエゴ・ラッピンでは歌っていない曲なのだろうか。途中には、エゴ・ラッピン・バンドのドラマーの菅沼雄太(2009年8月3日のYOSSY〜でも叩いているのかな)も加わる。また、声や効果音をサンプリングするときもあった。とにかく、味と誘いが力とともにたっぷり。ぼくが感じている以上に、中納は才能と広がりを持つ人だった。

 続いては、クラムボン(2007年9月24日)の原田郁子の番で、やはりピアノの弾き語り。こちらは、柔和で、こまやかで、微笑みがあり、また別の手触り、ポップ・ミュージックとしての輝きを持つ。2曲で、おおはた雄一(2009年4月4日)がギターで協調。プロの弾き味と思わせる熟達味アリ。うち、1曲は原田とおおはたの共作の曲と言っていたな。実は、中納もおおはたの曲を1曲歌っていたりもしていて、おおはたはモテモテだなあ。

 そして、最後に出てきたのは、フィンランドからやってきた金髪のハンネ・ヒュッケルバーク。ギター/効果音担当者とドラム/効果音担当者を二人同行させてのもので、ギターを手にしながら歌う。刺々しい襞を持つ現代的性と透明感を合わせるロック曲から結構あっけらかんとしたニュー・ウェイヴ調曲まで、いろんなタイプの曲を披露。ファジーな電気的効果のもと妖しい個性を迷宮乗りで出すという印象を彼女に持っていたが、生の所感はもっと生理的にストレート。それは、彼女がアルバムの印象を覆すようにけっこう朗々と歌っていたからかもしれない。このパフォーマンスに合わせて、“De La FANTASIA”の初日(金曜)に出演した細野晴臣(2009年10月12日)さんも会場内にやってきていました。

 あっさりと、いろんな才に触れられてにっこり。なんか、ありがたやーとなりました。

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