東京JAZZ

2006年9月3日
 毎年やっている、ジャズ・フェスティヴァル。今年は有楽町・東京国際フ
ォーラムのホールAで開かれた。この日は二日間やるうちの、二日目。

 ぼくはブルーノート東京が仕切っている昼の部の最後の出演者であるイン
コグニート(2002年12月20日)から見る。メンバー紹介のとき一人一人
、ちゃんと出身国を言う。へえ、名UKドラマーのリチャード・ベイリーは
なんとトリニダード・トバゴ出身なのか。シンガー陣はスリランカとジャ
マイカとセントルシアの出。かつては、歌手だけは積み重ねと上手さでア
メリカ人を雇うとブルーイは明言していたが、ライヴ・メンバーの場合はそ
うじゃなくなったのね。最後に、「肌の色なんか、関係ない。我々は、ワン
・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ。そして、ワン・ラヴ」みたいなM
Cで締めくくり、メンバーはボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」が流れるなか
引っ込んだ。臭いけど、本当にリーダーのブルーイってそういう人なんだよ
なあ。なお、場内かなり音が響いていて、音質は悪かった。

 夜の部は、マーカス・ミラー(2001年6月14日、2003年8月19日、
2005年8月21日、他)のバンドから。プージー・ベル他、お馴染みの面
子に加え、今回はカサンドラ・ウィルソンで来日もしているNYで一番のハ
ーモニカ売れっ子のグレゴア・マレ(2004年9月7日)が同行してい
るのが目新しい。前にマイケル・ケイン(2003年11月18日、23日)も
あいつはいいよねと言っていたことがあったけど、なるほど情緒を持ちつつ
吹ける人。MCで欧州のどこかの国出身と言っていた。ミラーは祭りだから
という気分はあったか。リズム隊だけでずんずん進んでいくような美味しい
ラフさを見せるときもあったし、やった曲は自作はなしにしてスティーヴィ
、マイルス、ザ・ビートルズの曲カヴァーだけを披露(自分のアルバムで
も披露済の曲だけど)。お馴染みのバスクラも吹かず、持ってきてなかった
んだろうけど、今回のライヴ内容じゃ確かに必要はない。それから、今回は
なんとフランク・マッコム(2004年4月15日)がフィーチャード・アーテ
ィストとして登場するのが売り。ミラーとマッコム、意外な組み合わせだが
、これはミラーのリクエストであるという。マッコムは3曲目から加わり、
自作曲とハサウェイ曲を歌う。フェスの出し物らしい、軽さと広がりが悪く
なかった。

 続いて、チック・コリアと上原ひろみ(2004年11月25日、2005年
7月31日)のデュオ。グランド・ピアノを互い違いにおいて、二人は顔を見
合わせながら演奏する。まだ上原が静岡県の高校生のときに、彼女を認めた
チックの来日コンサートでデュオ演奏したことがあったという。ステージ背
後のヴィジョン(それにしても、どうしてあんなに粒子の粗い、鬼のように
解像度の低いものを使用していたのか。見づらくてしょうがない。NHKが
オーガナイズするイヴェントなのに嘘みたい)を見ると、本当に二人は嬉し
そうに弾いている。受け手も大方大喜びだったようだが、ぼくにはなんかや
りとりが軽いと思えた。

 最後は、ザ・グレイト・ジャズ・トリオに渡辺貞夫(2002年12月14日、2
004年12月17日、他)が加わるという出し物。名手ハンク・ジョーンズ(
なんと、現在88歳)が下の世代の立ったリズム感を持つリズム・セクション
と組むことで溌剌としたピアノ・トリオ表現を実現しようと大昔に企画され
た人気グループで、今回はジョン・パティトゥッチ(ベース)と普段はシッ
ク(2003年4月15日、2003年8月24日、2006年4月11日)で来日してい
るオルー・ハキム(ドラム)が協調者となっている。3曲目から渡辺貞夫が
加わったが、旧ザ・グレイト・ジャズ・トリオ(リズム隊はロン・カーター
:2001年6月7日、2004年1月14日と故トニー・ウィリアムズ)と渡辺
は76年と77年に一緒に共演作を作っている。この顔ぶれで、翌日にレコーデ
ィングすることになっているとか。最後はビル・エヴンスの「いつか王子様
」がやるが、このときチック・コリアと上原ひろみとまだ15歳の米国人ジャ
ズ・ピアニストのオースティン・ベラルタ(前日に出演した)も登場し、そ
れぞれにピアノを弾く。破綻していたが、上原が一番アトラクティヴだった
。そしてアンコールではまた皆で登場、はしばし相談(ブールスで行くか。
じゃテーマはなんにする、キーは……というようなことを話していたのだと
思う)し、なんとセロニアス・モンクの「ブルー・モンク」を始める。この
とき、ピアノは2台置かれており、最初はコリアが一人弾いていたが、その
あとはコリアとジョーンズ、上原とリベルタが仲良く一つのピアノに向かい
連弾、つまりは4人一緒にピアノを弾く。なんか、ひねくれ者のワタシもそ
の図はいいナと感じた。

 なぜか成り行きで会場内で開かれた打ち上げに顔を出したのだが(11時ぐ
らいだったかな)、最初に出たマーカスたちもみんな帰らずにいるんだよな
あ。おおぜい。昼の部のロベン・フォード(2004年4月21日、10月22日
、他)とかもいたなあ。そのとき、ジョーンズとベラルタがじっくり話し込
んでいたりとか、いろいろ興味深い図が見られました。