渋谷・シアターオーブで、フランキー・ヴァリ/ザ・フォー・シーズンズの歩みを追うブロードウェイ・ミュージカルの『ジャージー・ボーイズ』を見る。2006年や2007年にトニー賞やブラミー賞も受賞し(劇中には、トニー賞やグラミー賞は金で買えても、ロックの殿堂は買えない、なんて台詞も出てくるか)、クリント・イーストウッド監督により2014年に映画(2014年9月5日)化もされたわけだが、最初のほうは、その映画を見ていなかったら筋をちゃんと理解できたかと、ザ・フォー・シーズンズの愛好者ではないぼくは思った。

 基本の舞台美術設定は終始変えずマイク・スタンドや椅子やテーブルや自動車内を模す椅子等が細かくステージ上に表れては消え、それでテンポ良く、情報量豊かに、ニューシージー出身のコーラス・グループの音楽や人間関係は描かれて行く。ときには、ステージ背後のヴィジョン映像投射が控え目になされる場合も。そこらへん、ものすごく、考え抜かれ、整備されている。ビンボー臭さもない。もちろん、ステージ上にはイタリア系米国人がたくさん。イーストウッドの映画は、ミュージカルを基本まんま追ったものであるのも知らされる。

 映画より、ぐっと来た。とともに、生のミュージカルの良さを堪能。出演者の力量に不満はなし、総じての設定や流れ(休憩を入れて2時間強。結構長いが見せきる)も巧みでテンポがいいし、プロのやり口をいろいろと感じる。そして、そこから、ニュージャージの半パなチンピラ青年たちが音楽をとおして男になっていく様、売れたら売れたで出てくる障害なども絡めつつ、音楽/グループをやっていくことの様々な機微が、映画なんかと比較にならいほど濃く描き出されるのだから、これは引き込まれる。

 通常、ステージの表に出ない付属バンドはまっとう。それほど使われないがホーン・セクションもいて、10人強。うち、ドラマーは動くドラム・セットにのって、ステージのあちこちにけっこう出てくる。どうしてそうすることになったか分らないが、なんかおもしろいし、舞台に活力や動的感覚を与えるのは確か。実はドラムはツイン・ドラムであたるところもあり、舞台に出てくる人は回によっては変わるのかもしれない。ドラム・セットには音楽監督の指揮の様が写るモニターが組み込まれていた。それから、ライヴのシーンで出てくる音のでないキーボードはイタリア製ヴィンテージ・オルガンのファルフィッサ(しかも、状況に合わせて2種類でてくる)を用いていて、わーとなる人もいるかもしれない。

▶過去の、映画「ジャージー・ボーイズ」
http://43142.diarynote.jp/201409091015492136/

<今日の、会場>
 見たのは、13時半からのマチネー公演。雨天だったけど、客はちゃんと入っておりました。ザ・フォー・シーズンズ役の4人はこの日もう一回ステージに上がるとしたら、体力あるなあ。そういえば、出演者の歌やセリフはちゃんとPAから出ているが、その声を拾うシステムは不思議。マイクは用いず、頭髪のなかにシールドさせたセンサーをおいて(発信器は背中に固定)声を拾っていたような、、、。よく、分らない。この日、一番前の列で見ちゃって最初、落ち着かず。小心者であることを、認知しました。

近藤等則 

2015年6月29日 音楽
 我がまま勝手し放題、“嵐を呼ぶ”トランペッターなんてイメージもなくはない、ヴェテラン狼藉派(2006年4月28日, 2007年1月8日)のこの春リリースした旧録音スタンダード集のリリースをフォロウする(と言っていいのか)公演。渋谷・クアトロ。客は年配が多い。60歳以上の人にとっては、近藤って“文化人”なんだよなあ


 二部制にて。ともに、近藤自ら作った響くプリセット音をベースにする。1部は山木秀夫が介添え役となり、すべてメロディアスにスタンダードを演奏。二部はその2人にSUGIZO(ギター)が加わり、メロディなし、フリー・フォーム気味の演奏を展開する。打ち込み音が流行から遠く離れたところにあるため、なんかぽっかり中に浮かんでいる感じあり。それは、近藤ならではの、シブとい、自分であらんという意志も感じさせるもであった。

<今日の、淡い記憶>
 昔、コットンクラブで一緒になり、終演後にSUGIZOとイタリアンに行ったことがあった。彼とは初めて話したけど、そのとき一緒のTOKIE嬢がぼくたち2人が音楽の話があうのに驚いていた。だから、今日の重なりも奇異な感じはしません。SUGIZOさん、あのときはおごっていただき、ありがとうございました。

 ハサウェイ/スティーヴィー系の味とハンコック的指さばきを併せ持つシンガー/キーボード奏者(2004年4月15日、2004年5月10日、2006年9月3日、2006年12月7日、2007年12月28日、2011年3月4日 、2012年3月5日)の公演は、彼の日本での常会場となる丸の内・コットンクラブ。その初日、ファースト・ショウ。今回は、電気ベース奏者とドラマーを伴ってのもの。そのサイド・マンは20代前半かと思えるぐらい若い。両者とも初来日のよう。

 マッコムは電気ピアノとキーボードの前に座り悠々と指さばきを披露し出すが、音がデカい。とくに、ベースの音は大きくて、最初はツラかった。で、そのうち朗々とした歌を差し込み出すわけだが、それがまた体躯にあってデカい。わー、アメリカンな音量だア。例により、縦横に鍵盤を歌わせるインスト部は長い。

 グランド・ピアノ弾き語りも1曲。それ、ダニー・ハサウェイのヴァージョンを下敷きにしたリオン・ラッセル(2005年11月24日)作「ア・ソング・フォー・ユー」。悪いわけ、イヤな気分になるわけないじゃん。ハサウェイのライヴ・アルバム流れの曲を、日替わり/ショウ代わりでやったりしてな。この彼だけのパフォーマンスのときも、出音はとっても大きい。

 そして、リズム隊が戻ってきてやったのは、ハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日)とスティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)のマッシュ・アップ的な表現と言えそうなもの。ハンコック「アクチャル・プルーフ」のリフでスティーヴィーの「迷信」を歌い始め、リフレインが終わったときのシンセ音色はハンコックの「カメレオン」のそれ。もちろん、鍵盤ソロは『ヘッドハンターズ』〜『スラスト』流儀にある。ニヤニヤ、しちゃうよなあ。その根にあるおいしい種をより屈託なく提示した、今回のマッコムのパフォーマンスだった。

▶過去の、フランコ・マッコム
http://43142.diarynote.jp/200404150934460000/
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▶過去の、リオン・ラッセル
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▶過去の、ハービー・ハンコック
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▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
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<今日の、癖>
 鳥の鳴き声から雨音まで。それに呼応するような電気キーボードの音が聞こえる? それ、巷(ほんの一部だけど)でシャソル(2015年5月30日)愛好者に起こっていること。その回路を持ってしまうと、外に出ていても一つの感興を得ることができるとともに、端からは危ない人に見えることにつながる……。上司の小言にシャソル流鍵盤音を重ねてやり過ごした……なんて、知人も一人。シャソル症候群、密かに進行中? なお、日本ではシャソールと表記されたりもするが、彼と遠くない日仏語堪能な人に言わせると音引きはいらないんじゃないかとのこと。
▶過去の、シャソル
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 在NYのギタリストであるカーキ・キング(2004年8月3日、2005年3月26日、2007年4月6日)の久しぶりの来日公演は、過去の彼女のパフォーマンスとは一線を画す設定によるもの。“プロジェクション・マッピング”という映像/PCテクノロジーを活用し、映像効果と渾然一体となったなかでショウは遂行される。この前に見たダンス・ショウ“DOOODLIN‘”(2015年4月8日)もプロジェクション・マッピングをおおいに活用したものと言われていたが、設定がシンプルな今回のショウを見て、それがどういう技術か分った気になった。ようは、特定の場所だけに鮮やかな映像を照射する装置/技術のことをさすのではないか。

 過去、ジョン・マッキンタイア(2001年11月7日、2005年1月7日、2006年10月22日、2007年12月2日、2011年11月21日、2012年4月7日、2014年5月7日)やマルコム・バーンなどをプロデューサーに据えるなどしてバスキング乗りインスト派アコースティック・ギター奏者という姿を拡大しようとしていた、彼女のフィジカルとしては一番新しい2012年作『Glow』(Velor)は素のギタリストとしての姿を出す初期に戻ったようななアルバム。だっただけに、逆に新しい方向に出る転機にはなったのかもしれない。蛇足だが、その『Glow』のプロデュース/エンジニアをしていたD・ジェイムス・グッドウィンは、デイヴィッド・トーン(2000年8月16日)の“響く”ギター/ウード・ソロ作『Only Sky』(ECM、2015)の録音を担当している。

 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。ステージ中央に白いギターが固定して置いてある。それは椅子に座って弾くと吉と出る高さに設置されていて、ようはその白いギターが映写スクリーンとなる。脱色刈り上げ→サイバーな外見になったキングは白い衣服に身を固め、彼女自身に映像があたる場面もあった。また、ステージ背後のスクリーンには常時映像が流され、それはギターに写るものと関連する場面もある。映像のオペレートは、外国人女性が横にいて、やっていた。

 バック・トラックあり。それを基調に映像は展開され、カーキによるギター音も重ねられる。我を持つギタリストとしては、ある意味思い切った行き方と指摘できる。だって、演奏の尺はきっちり決められたなかでのパフォーマンスとなる(ようは、発展がかなり制限される)し、元々それほど押し出しの強い人ではないが、彼女のタッピング多用のギター技巧の個性を奥にしまう方向に、その設定はあるから。でも、ギタリストとしての生き残りの方策を求めるストラグルもそこには見え隠れするわけで、鮮烈さを抱えつつも平穏に流れて行くショウにはある種のドラマがあったとぼくは思う。

 ここで使われた音楽は今年i-tunesで配信されたらしいが、やはり映像込みで楽しむべきものか。彼女ホームページ冒頭に掲げられているライヴ映像を見ると、背後のスクリーン映像はなしで、白いギターに映し出される映像効果だけで彼女は勝負しており、そのほうがプロジェクション・マッピングの有り難み、そこから飛躍するパワーは強いのではないかとも思う。ただし、背後映像にはとてもおもしろいパートもあり。白いギターを擬人化して、街を歩くギター君が他のギターたちともろもろやりとりする箇所にはウフフ。その際、ちゃんと日本語の字幕も映し出された。ちゃんと日本向きに手を加えていて、偉いな。そこで、ギターは白いプラスティックのギターと紹介された。そこから、オーネット・コールマン(2006年3月27日)が一時使った白いプラスティックのアルト・サックスを想起し、プルプルとなった人もいたに違いない。

▶過去の、カーキ・キング
http://43142.diarynote.jp/200408030059330000/
http://43142.diarynote.jp/200504051427210000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070406
▶過去の、DOOODLIN’
http://43142.diarynote.jp/201504091238177478/
▶過去の、ジョン・マッケンタイア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/
http://43142.diarynote.jp/200610251742410000/
http://43142.diarynote.jp/200712031018200000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111121
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http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/
▶過去の、デイヴィッド・トーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm  16日のティム・バーン
▶過去の、オーネット・コールマン
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 その後、代官山・山羊にきく に行って、ボビー・プリヴィットらNYボーダーレス/冒険系奏者の作品にも名が見られたりもするデンマーク人冒険系ジャズ奏者が日本の和楽器系奏者たちと重なる出し物を見に行く。この前のスプラッシュガール(2015年5月8日)のときの様なものを期待して行ったのだが、かなり違った。セカンド・セットを見た。

 まず、小山豊(三線)、一噌幸弘(納管、篠笛など)、大多和正樹(和太鼓。2006年3月24日)、磯部舞子(ヴァイオリン)という面々が出て来て、構成を持つ曲を演奏。和楽器の音色や息づかいを活かしたインスト長尺曲、なり。和太鼓はいろんなものを組み込んだ大きなセットで、目を引く。ヴァイオリン奏者は中川五郎1999年8月9日、2004年2月1日、2005年6月17日)ともよくやるそうだ。この4人は2日後に、新宿ピットインにこのまま出るそう。

 そして、そこにニスル・デヴィッドセン(アコースティック・バース)とアナス・モーンセン(ドラム)が加わる。先の日本人4人の演奏/流儀に、デンマーク勢が控え目にあわせる。フリーフォームでなかったのは残念&北欧リズム隊の真価は見極めることは困難だった。

 このリズム・セクションは明日、晴れたら空に豆まいて で、ピアニストの南博(2001年10月29日、2005年6月9日、2005年9月11日、2006年10月25日、2007年4月12日、2007年10月17日、2010年3月26日、2011年3月2日、2013年2月17日)とトリオ演奏をする。その単位で、レコーディングもしているようだ。

▶過去の、スプラッシュガール
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▶過去の、大多和正樹
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▶過去の、中川五郎
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▶過去の、南博
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<今日の、買い物>
 ぼくが昔、最初に買ったプリンターはキャノンのレーザー・プリンターだった。白黒しか印刷しないから、それが適切だと判断し購入した。だが、2度目か3度目のトナー交換をするとき、トナー・カートリッジの端から黒い粉がぼろぼろ出てきてしまったことがあり、それでレーザー・プリンターがいやになり、キャノンのカラー・ブリンターに変更。その後、エプソンのカラー・プリンターに代わりずっと使っていたのだが、このたび故障。そして、なんとなく、またレーザー・プリンター(今回は、ブラザー。ころころメーカーを変えているのに他意はない)にしたのだが、これがサクサク印刷できてとっても気持ちがいい。色ごとにインクが切れたという表示が出ないと思うだけで、とても心持ちも良い。これは、いい買い物したなあ、と思うことしきり。

トム・ハレル

2015年6月23日 音楽
 ハレルは、1946年生まれの熟達白人トランペット/フュリューゲルホーン奏者。ジャズの美点がすうっと浮かび上がる(それはテーマ部の提示の仕方にもさりげなく盛られる)ような自作曲を素材に、まろやかにして、どこか発展の種を持つソロが悠々と乗せるアルバムをいろいろと発表している名士だ。今回の同行者はECM発アルバムも持つテナー・サックスのマーク・ターナー、アコースティック・ベースのウゴンナ・オケゴォ、ドラムのアダム・クルーズ(2015年4月28日)という、アフリカ系かラテン系の有色の奏者。その二管を擁するピアノレス・カルテットは、ハレルの新作『Trip』(High Note、2014 年)と同一だ。

 悠々、ひたひた。それほど凝っていないようで含みのある、淡々としているようでどこか広がりも持つ演奏が繰り広げられる。そして、その端々から、美意識や野心もこぼれ出る。言葉を超えた部分で、これは良い純ジャズのありかただと思わせられるな。ブルース崩しの曲も2曲やる(1曲はシャッフル・ビート)が、グルーヴィさはあるがブルースではないところもこの場合はなんかくすぐる。

 ターナーの吹き口は抑え気味であるのに、雄弁。なるほど、いい吹き手であると思わされる。そういえばこの前にロイ・ヘインズ(2015年5月18日)のバンドに同行して、その聞き味の良さでぼくを驚かせたアルト・サックスのジャリール・ショウもハレルの2013年作『Colors of Dream』(High Note。そのリズム隊はエスペランサ・スポルディング〜2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日〜とジョナサン・ブレイク〜2009年9月3日、2011年5月5日〜が勤めた。スポルディングは肉声も多用)に起用されていたことがあり、逆引き的にショウもまた秀でた奏者であると同業者から評価を受けていると再認識したりもする。

▶過去の、アダム・クルーズ
http://43142.diarynote.jp/201504291258084057/
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
▶過去の、ジョナサン・ブレイク
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/

<今日の、驚き>
 おお、ハレルのステージ上の様はすごい。まず、動きがとってもゆっくり。それはなんか、ザ・バンドのガース・ハドソン(2013年8月2日)のステージ上でのスピード感と重ねたくなるかも。そして、譜面をめくるスピードも遅い。ただし、ハレルの場合はハドソン同様に立派な白い髭は蓄えているものの、頭髪は青年のようにフサフサで、太ってもいないわけであるが。そして、ここからが真骨頂なのだが、彼はずっとうつむいてステージ上に立ち、顔をあげて客のことは一切見ない。だけでなく、メンバーと顔を見合わせることもない! アンコール曲以外は曲目も決まっていたのだろう、曲を一切伝えることもなく、控え目にテンポを出し、それにバンド員が戸惑うこともなくついてくる。MCも本編最後に、サンキューと言って、簡素にメンバー紹介をしただけ。こんな人は初めてだあ。彼はビートとともに身体を揺らすこともないし、顔は見えないが表情も一切変わることはなかったのではないか。でも、クルーズは先のカルデラッツォ公演のときよりうれしそうに演奏していた。
▶過去の、ガース・ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/

新垣隆+吉田隆一

2015年6月21日 音楽
 函館・カフェベルラ。観光名所で有名なケーブルカー乗り場の横にある、ステージ背面は大きくガラス張りになっている展望性抜群の会場。夕方から始まり、日が暮れ、夜景が広がっていくなか、ピアノとバリトン・サックスのデュオは2部制でなされた。空港に着陸する飛行機も見えたな。

 新垣隆(2015年2月8日)と吉田隆一(2004年8月20日、2004年10月10日、2006年7月3 日、2012年12月11日、2014年7月22日、2015年2月8日、2015年4月14日)のデュオ作『N/Y』をフォロウするツアーの一環。と言いつつ、2部のほうは函館入りする時に出来た新曲とか、アルバムに入っていない曲も演奏。それはこのデュオが成長していることを示唆するだろう。アルバム収録曲も阿吽の呼吸のもと、いろんな創意やウィットの交換が盛り込まれて披露される。部分部分を抽出すればけっこう難しい部分もあるデュオ演奏だが、それを普通に両手を広げるように聞かせてしまう2人の振る舞いはプロにして、人徳のなせるワザと見た。

▶過去の、新垣隆
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
▶過去の、吉田隆一
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http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
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http://43142.diarynote.jp/201504151353356530/

<今日の、バス>
 初、函館。札幌バスはデザインや色使いが、もろに渋谷拠点の東急バスだった。最初みたとき、東急バスのお下がりが走っているのかと思ったほど……。完全に日が暮れるのは20時ごろ。おお、北に来たのだなと思わせられる。これがもっと北に行くと白夜になるのか。トラムが走る、街の風情はどこも良い。

 代官山・ユニットで、フランスと米国と英国の、それぞれ女性が入ったバンドを見る。<ダムダムパーティ2015>というイヴェント、なり。

 まず、パブロ・パドヴァーニという26歳の青年(彼は、メロディーズ・エコー・チェンバーというユニットでギターを弾いていた)が率いるムードイド。バンド名はふわふわして形のないものといった意味合いの造語で、それはバンドの捉えどころのない音楽性から来る。簡潔に言えば、サイケかつ幻想的なロックを標榜し、それがなんとも暖簾に腕おし的な風情で多様に繰り広げられる。パドヴァーニは映像を作る仕事に最初ついたそうで、自分たちのヴィデオ・クリップは自ら作っている。

 12弦と9弦のエレクトリック・ギターを弾きながらリード・ヴォーカルをとるパドヴァーニに加え、キーボード、ベース、ドラムは女性。女性の奏者を見つけるのは大変だったそうだが、なるほど腕はちゃんとしている。ドラム音はしっかりしていて、CDよりバンド音は線が太く聞こえるゾ。また、ときに入る女性声も魅力的。4人は皆、デイヴィッド・ボウイ『アラジン・セイン』を思い出させるようなラメのメイクを顔にしている。それと似たものは、ヴィデオ・クリップでも確認できますね。妙にクセになる聞き味を持つデビュー作『Le Monde Moo』は、仏ソニーからのリリース。テンプルズ(2014年5月12日)の横に置いてもいいのかなという感じもあるが、彼らはテンプルズとは何度も一緒にショウをやっているという。

▶過去の、テンプルズ
http://43142.diarynote.jp/201405131310541050/

 次は、ラ・セラ。ブルックリン拠点のガールズ・バンドであったヴィヴィアン・ガールズのケイティ・グッドマンがバンド在籍中から持っていたソロ・プロジェクト。ベースを単純に弾きながら歌うグッドマン嬢に加え、男性のギター(少し、響く系の弾き方)とドラム(平板なビートしか叩かない)が付いてのパフォーマンス。彼女、後から見るぶんには可愛い感じで、キャット・パワー(2003年1月9日、2010年1月17日)を想起させる? 曲は、ぼくにとっては興味ひくものではなかった。

▶過去の、キャット・パワー
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http://43142.diarynote.jp/201001181042244374/

 そして、その後に出て来たのは、ザ・スリッツとともに英国ニュー・ウェイヴの自由なスタンスや閃きを体現したガールズ・バンドであるザ・レインコーツ。ステージには、太目の、くだけた雰囲気たっぷりの、若い時分にはそれなりにモテたろうとも思わすおあばさんが3人。で、リード・ヴォーカルや楽器を3人のなかで代えたりもするのだが、基本はギター、ベース、フィドルという編成で、ドラムレス。『The Kitchen Tapes』(Roir、1983年)のジャケで仲良しそうに写っている3人と、今日のもろなおばさんたちは同じなのかな。あのアルバムでも、フィドル音は入っていたしにゃ(男性によるドラム音も入っていた)。なんにせよ、3人はわきあいあいと、とても脱力感のあるストレンジ・ポップ・ロック曲を、ときに杜撰さを伴いつつ開いていく。

 コレデイイノダ観、満載。気負わず、偉そぶらず(もう一つの公演の会場は、下北沢のシェルター)。私たちが良しとすることを自分たちなりにやればいい、という気持ちが横溢。で、そこからは我が道を行く感覚、野放し感覚、自分を無邪気に出すことの素敵が表われる。基本の曲がいろんな示唆に富むことも大きいのだそうが、いいなー、おばさんたち。20年後もこのメンバーでしょぼしょぼやっていそうなところもいいい。こういうポップ・ミュージックがあってもいいと、深く頷かされました。

<今日の、好青年>
 ムードイドのパブロ君には、ライヴ前にインタヴューしたのだが、ステージの化粧や格好、クリップでの変てこさとは距離を置く、物静かな好青年。彼の父親、ジャン・マーク・パヴァドーニははみだす方向も知っているジャズ・サックス奏者。実はデビュー作にはイケているサックス音がいっぱい入っていると思っていたのだが、それは父親に吹いてもらったのだそう(デビューCDはデザインと色の使い方で、クレジットが読めなかった)。おお、素晴らしい親子協調だあ。ゆえに、当人もジャズはいろいろ聞いていたそうで、好きな人はと聞けば、「エリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、オーネット・コールマン。(今月11日の)コールマンの死去の報を聞いて、ヘコんだ」とのお答え。お父さんは民俗音楽の方にも興味を持つ活動もしており、バブロもいろんな民俗音楽にも親しんで来ているそう。アルバムには東南アジアっぽいと思わせる部分もある。

TOYONO

2015年6月17日 音楽
「TOYONOアクースチコ」と表題付けされたショウで、ヴォーカルのTOYONO (1999年6月3日、2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日)、ギターの竹中俊二(2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日)、ピアノと歌の光田健一、エレクトリック・ベースの竹下欣伸、パーカッションの岡部洋一(2000年7月29日、2000年9月14日、2004年5月28日、2004年6月2~3日、2004年6月9日、2004年11月19日、2005年2月19日、2006年7月7日、2006年8月27日、2006年12月3日、2008年1月31日、2011年2月10日、2010年12月28日、2011年8月22日、2013年2月11日、2013年2月19日、2014年2月9日、2015年4月24日)、ヴァイオリンのmaiko、チェロの柏木広樹という面々で、パーフォーマンスをする。

 渋谷・JZ-brat。セカンド・ショウから見る。すげえ、混んでいる。アコースティック傾向サウンド主体で、2弦音が入ると、そのサウンド設定は説明できるか。とともに、普段は歌わない曲をポルトガル語で提供したいという意図もあったようで、椎名林檎の「月夜の肖像」や、チック・コリアの「スペイン」なども歌う。白のドレスを身につけたTOYONOはポル語で歌うにせよ日本語で歌うにせよ、余裕の歌い口。前者は椎名自身から頼まれて、彼女がポルトガル語歌詞を提供したものとか。パっと聞く分には、メランコリックなしっとり曲。後者の有名曲は、ブラジル人がポル語詞をつけたものを偶然見つけ、歌詞をおこして、歌ってみたそう。なぜ、スペインがポルトガル語にというツっこみはともかく、それらはポルトガル語の不思議な味わい、ワープする効用を伝えるものでなかったか。そうしたことに、彼女は長けている。自分が出来ないことをする人をぼくは素直に敬うが、ポルトガル語ができることって、本当に素敵なことだなと思わされたかな。ま、サッカー好きだと余計にそうはなるか。

 1曲ごとに、丁寧にMCが入る。それ、達者でいやらしかったりトホホではないけど、時に奏者たちも加わるそれは長い。お客さんは、喜んでお話に接していたと見受けられた。だが、洋楽ライヴで価値観を作った人間にとっては、それらは長過ぎる。終演後、Aurora Keep Coolerという名称のブラジル産ワイン・クーラーの小瓶を配っていた。へえ、こういう飲み物もあるのか。場内にはブラジル産ワインのチラシも置いてあったが、チリやアルゼンチン産ワインには親しんできているが、ブラジルのワインは飲んだことあるかな。プラッサ・オンゼであるか?

▶過去の、TOYONO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm エスピリト
http://43142.diarynote.jp/200708270314500000/
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http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
http://43142.diarynote.jp/201001051624161036/
http://43142.diarynote.jp/201002280940361567/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
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▶過去の、竹中俊二
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▶過去の、岡部洋一
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm 29日ROVO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040608
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http://43142.diarynote.jp/?day=20130211
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
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http://43142.diarynote.jp/201504271015006453/

<今日の、コンヴェンション>
 昼間、飯田橋・アンスティチェ・ブランスで持たれた、東京フランス音楽産業コンヴェンというものに参加。ナイーヴ、ノー・フォーマ他、パリ周辺の10社の面々が来日し、自己宣伝。コースの食事つき(途中から、ワインもサーヴ)というのは、フランスらしい? メイカーやイヴェンターなどは明日、明後日と個別商談も重ねるよう。また、金曜と土曜はその参加レーベルに所属する3グループが代官山ユニットとアンティスチェ・フランス(野外のフリー・ライヴ)で公演を行う。
 2つの会場で、ピアニスト/キーボーディスト、三者を見る。

 まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、ベルギー人ピアニスト(1977年生まれ)であるジェフ・ニーヴ(2010年11月11日、2014年3月11日)のソロ・パフォーマンス。彼の新作『One』(Universal Belgium、2014年)は英国アビー・ロード・スタジオ録音主体のソロ・ピアノ作で、今回のパフォーマンスはそれに準ずる。クラシック流れの高尚さとジャズ経験で磨いただろう閃きや揺れが共存……。その幅あるピアノ作は好き嫌いは別としても(クラシック流れの指裁きは気取りや衒学を聞き手に与える部分はあるかもしれない)、個を求める達者なピアニストがいるとは了解させられるだろう。

 かなり情緒が改変されたとも書ける、ビリー・ストレイホーン「ラッシュ・ライフ」(新作にも収録)がオープナー。近年ピアノ・コンチェルト作も出すなどクラシックのほうにも進んでいる彼だが、やはり弾き口はクラシック素養をいかんなく出す。実は彼、そんなに手のひらが大きな人ではなく、すらすらと弾く様の奥には相当な研鑽があったと思わされる。その一方で、彼は新作には入っていないセロニアス・モンク曲(「ストレイト、ノー・チェイサー」だったかな)を披露したりもしたのだが、モンクは自分にとってとても重要なジャズ・ピアニトだか作曲者みたいな発言もあり。そういえば、彼はMC/曲説明を丁寧に行う御仁であるのだが、ジョニ・ミッチェル「ア・クロース・オブ・ユー」を演奏するさいは得々とその歌詞を空で言ってみせたりもする。前日に彼にインタヴューしたとき、ジョニ・ミッチェルはまず歌詞が大好きなんだと言っていたが、なるほど事前に歌詞を延々と説かれると、この曲は歌詞を本当に丁寧に追っていると思わせられるな。

 ジャズ・ピアニストとしていずれは出したくはあったが、「ピアノ・ソロ作を録音するのは本当に清水から飛び降りる思い」(もちろん、意訳ですね)であったそう。裸になる気持ちもあったそうで、『One』の裏ジャケにはニーヴの横に裸の男性が立っている。ペダルも多用する彼だが、ショウが終わると、すぐに調律師が出て来てセカンド・ショウに向けて作業を始めた。

▶過去の、ジェフ・ニーヴ
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201403131302543532/

 そして、南青山・ブルーノート東京に行く。LAとNY、それぞれをベースとするアフリカ系鍵盤奏者のそれぞれのトリオが実演をシェアするという内容のショウ。マネージメントが同じだったりして、この変則的な興行が組まれたのかな? 電気ベース奏者は両トリオとも、ラシャーン・カーター(2014年5月25日。前見たときほど、今回はグツグツ無骨には弾かず。いい奏者であるのは間違いないが)が務める。

 ダニエル・クロウフォードはけっこうアーバン(R&B〜ヒップホップ)系セッション参加が多い奏者で、ネットでファレル・ウィリアムスやデイヴィッド・ボウイ他の有名曲のヴォーカル・トラックを抜き出したものに自らのエレクトリック・ピアノ音が活きたトラックをさしかえたものを発表していたりもする。この晩は、レッド・ツェッペリン「カシミール」やプリンス「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」のカヴァーもあり。

 まず、ドラマーのステイシー・ラモント・シドナーの演奏に驚く。ボンゴやコンガなどラテン・パーカッションをドラム・キットのなかに組み込んでいて、ときに左手のほうはそれらパーカッションを手で叩いて、まさにドラマーとパーカッション奏者が2人いるような音を出す。おお。主役はコルグの同機種二段重ねで、下はエレピ音限定。だったら、もっと鍵数を持つキーボードを使えばいいのに(リクエストを出せば、いくらでも応じてもらえるはず)、彼はそれでことを成す。両手でジャカジャカ複音を面ねていくような奏法は演奏の幅が広いと言えないが、現代マナーとしてはあり。ヴォコーダー使用曲もあったりして、やはりロバート・グラスパーぽいと思わせ、またグラスパーのファンにすすめるに足るとも思わせる。

 40分ほどやって、マーク・キャリー(2008年8月6日)のエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)のトリオと交代。ほう、対比的にこちらのほうが奏者間のインタープレイが密で成熟していると思わされる。とともに、キャリーはやはりジャズの人、指さばきが流麗達者。なるほどこのトリオはピアノ・トリオの方法論を柱に置きつつ、音色やビートを非純ジャズのほうに持ってこようとする指針を持つグループなのだと納得させられる。キャリーは部分的に単音系シンセサイザーも弾く。自作曲にまじえ、ジャッキー・マクリーン「マイナー・マーチ」とカーティス・メイフィールド「ステアー・アンド・ステアー」を弾いたりもしたが、そこらあたりの選曲にも彼の奥にあるものは透けて見えるか。そういえば、彼の2013年作は、なんとアビー・リンカーン曲集(! そんなの作った人を、ぼくは他に知らない)なんだよな。

▶過去の、ラシャーン・カーター
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079
▶過去の、マーク・キャリー
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/

<今日の、はじめて>
 ジェフ・ニーヴは、ある欧州ブランドから衣服の提供を受けていて、生地と仕立てのよいシャツ、ベスト、ジャケット、パンツをいつもきちっと身につけている。で、それは色男のマネージャーも同様。オフにインタヴューを受けるときも同じような格好をしていて、こんなにステージとオフの出で立ちが変わらない人も珍しい。思わず、いつもこういう格好をしているの?と彼に聞いてしまった。飛行機から降りて来たときもまた同様の決め具合であると、お付きの日本人が言っていたナ。ぼくはかつてニーヴのピアノ表現の響きの奥にレディオヘッドを見ると書いたことがあるが。『One』にはレディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)曲リフから触発され書いた曲もあるそう。それ、4曲目デス。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/

渋さ知らズ

2015年6月15日 音楽
 わー。オレ、もしかして、渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日)って、野外フェスか大きめのホールにおける公演しか見た事がないのかー。新宿・ピットインでの公演を見ながら、そう思った。

 約30人のミュージシャン、ダンサーがステージにあがる。場内、満員。お客はなにげに中年以上の男性が多い。休憩なしで、切れ目を入れず伸縮性に富みつつ2時間強をパフォーマンス。曲は、どれも耳馴染みの渋さ曲なり。

 小さな場でのその公演を見ていて、はっきりと分ったことが一つ。大きな会場で見ていたこれまでは、視覚的にもスペクタクルなショウを俯瞰するかのように“面”で接していたところ、今回は“点”、もしくは“線”を追うように実演を見る感じになるということ。その違いにより、よりジャズ〜即興表現として渋さ知らズの実演に接するスタンスが強くなったのは間違いない。そして、そうすると、代わり映えのしないレパートリーだからこそ、その場のもろもろで演奏がどうにでも動いていく(本当に、そう!)様が手に取るように分るわけで……。総体やソロを自在にコントロールする不破(2005年12月22日、2007年6月3日)のダンドリスト手腕と無頼漢的な佇まいの中からにじみ出る“いい人”っぽさもリアルに感じることができた。

 笑えたのは、なんかの曲で引っ張っているとき、不破がケルトっぽく行きたいみたいなデイレクションを発したのだが、演奏陣が誰も対応できず、仕切り直しになってしまったところ。そういうのも含め、超臨機応変なジャズ・ビッグ ・バンドとしての渋さ知らズ表現を堪能したナ。そうした部分を楽しむためには楽曲が固定されるのもまるでスタンダードを独創的に料理しているかのようになり、マイナスにならないと思った。実は渋さは、こことかエアジンとかジャズ・クラブでも公演も持っているが、そいうときに集まる客はこういう部分に着目する人が多いんだろうなとも思えた。

 驚いたのは、肉声担当者は渡部真一の参加はなし(彼は大会場限定なのかな?)で、器楽的歌唱〜自在インプロヴィゼーション性に富む女性シンガー2人で事にあたり、大活躍していたこと。玉井夕海と、なんと蜂谷真紀((2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日、2015年5月20日)。2人は掛け合いの、じゃれ合いのようなパートもぐいぐい持った。ずっとやっているように入っていた蜂谷、近年ピットインみたいなところでやるときはたまに参加しているらしい。それから、肝硬変で入院し冥土の土産のつもり(?)で快ソロ作『HAPPY HOPUR』(パンク・ジャズ的な行き方をする曲もあり)を出したテナー・サックスの片山広明(2004年8月20日、2004年10月10日、2005年7月29日、2008年11月14日)はやはりとてもやせていた。彼は飲んでいなかったかもしれないが、パフォーマンスの最中にカウンターにお酒を買いに行ったり、トイレに行くメンバーは散見されました。って、そんなライヴ、滅多にねえ。

▶過去の、渋さ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
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http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
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http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
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http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
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http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
▶過去の、不破大輔
http://43142.diarynote.jp/200512231
http://43142.diarynote.jp/200706061351450000/
▶過去の、蜂谷真紀
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/
http://43142.diarynote.jp/201410310931316189/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
▶過去の、片山広明(渋さ以外)
http://43142.diarynote.jp/?day=20040820
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081114

<今日の、新譜>
 何でもアリの渋さ知らズは、市民ワークショップをやることもある。それをもとにしたいわき公演はhttp://43142.diarynote.jp60923241736//2013052 で、触れているが、それに端を発する、いわき市の市民グループである十中八九のデビュー作が8月20日に、渋さ関連作リリースでお馴染みの地底レコードからリリースされる。全てオリジナル曲だが、渋さの好奇心や混沌を受け継ぐような楽曲の質の高さにはびっくり。もちろん、不破大輔が制作/段取りしていて、彼の愛の人ぶりも明解に伝わる。
 いやあ。なんかほんわか、ほっこりしていたなあ。

 今日〜明日と、南青山・ブルーノート東京で、アート・リンジー(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日)のグループ公演。今日は小山田圭吾(2009年1月21日、2009年10月31日、2011年8月7日、2012年8月12日、2013年8月7日、2013年8月11日、2014年3月31日、2014年10月26日)がゲスト・ギタリストで、翌日は じむお(2000年3月25日、2001年2月21日、2006年4月18日、2006年10月22日、2007年4月20日、2008年8月24日、2010年4月15日、2010年11月17日、2011年1月8日、2013年4月21日、2013年5月24日、2014年10月11日、2015年4月9日)君。小山田入りのリンゼイの実演は昨年に見ているので、旧NYと旧シカゴの冒険ギタリストの邂逅を見たいと思ったが、故あり小山田出演日(セカンド・ショウ)を見る。そしたら、知り合いといろいろ会い、目が回りそう。かつて日本盤がぽんぽん出ていた頃より、ある意味、今のほうが注目度が高い? たまたまだろうけど、リンジーもなんかそう感じ、もっとばりばり音楽活動に邁進しないかなー。

 レストレス・サンバと名乗り、ブラジル人ギタリストと打楽器奏者を連れて来ている。7弦アコースティック・ギターを淡々もくもくと弾くルイス・フィリップ・ヂ・マリは新旧の名のあるブラジル人と絡んでいる名手。パーカッションのマリヴァウド・パイム(2014年10月26日)は昨年のリンジー公演にも同行したバイーアの達人。昨年はヤケになって(?)スルドをずらり並べていたが、今回はわりと常識的な楽器並べで、的をいた余裕のサポートぶり。

 中盤までは、その3人によるパフォーマンス。とうぜん、グループ名にもあるように、多大にブラジル音楽に負った流れ(ブラジル曲もいくつか披露)で、リンジーの味は開かれる。アコースティック・ギターと打楽器が形作るもろなブラジル系空間のなかで、リンジーはゆったりと歌い、調子外れなノー・チューニングのギターの刻みを入れる。とくに、その歌の優しく、テンダーな味にはウフフとなる。こんなに、包容力があったっけ? 歌が良かった。

 そして、途中からは小山田とベースを弾くバッファロー・ドーターの大野由美子(2002年1月13日、2003年11月8日、2004年12月12日、2006年6月22日、2011年9月16日、2012年6月1日)が加わり、柔和なアンビシャス・ラヴァーズ、もしくはグート・レーベル時代のリンジー表現となる。ここでの小山田役をジム・オルークが務めるのなら、オルークもそんなに飛躍したギター演奏はしなかったと推測される。

 やっぱり、リンジーは年を取った。あっち側を提出するのではなく、あっち側を知っているこっち側の自分をより出すようになった、とも書けるか。でも、そんな、歌心に満ちた、穏健なリンジー表現が心地よい。無理して狼藉しなくなった(そういう設定のギグが組まれたら、まだまだ行けるとは思うが。この晩も少し、そういう方向のソロ・パフォーマンスも披露)ためもあるかもしれないが、とても表現全体が隙間を伴う整合感がある。それは、小さな時から高校生までブラジルで親しんだ種を無理なく活用しているからこそとも言えるかもれないが、今の時勢には合っているし、正解ではないか。DNA、ザ・ラウンジ・リザーズ時代から彼の素っ頓狂な振る舞いに胸を焦がし、見守ってきた(つもりの)人間としては、そう思う。そして、そういう大人な(ある意味、成熟した)行き方のなかから、現代越境ポップ・ミュージックのヒントや新たなサウダーヂの感覚が出てくるのではないか。それは、皮膚感覚で、彼のプロデューサー能力、ある種の人材把握能力は衰えていないと思わされるからだ。

▶過去の、アート・リンジー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
▶過去の、マリヴァウド・パイム
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
▶過去の、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
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http://43142.diarynote.jp/201504131107563912/
▶過去の、小山田圭吾
http://43142.diarynote.jp/?day=20090121
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110807
http://43142.diarynote.jp/?day=20120812
http://43142.diarynote.jp/?day=20130807
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
http://43142.diarynote.jp/201404031700136483/
http://43142.diarynote.jp/?page=2&month=201410
▶過去の、バッファロー・ドーター/大野由美子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200606270001320000/
http://43142.diarynote.jp/200412212058580000/
http://43142.diarynote.jp/201109171049342536/
http://43142.diarynote.jp/?month=201206

<今日の、表記>
 これまで、アート・リンゼイと表記してきたが、本人が間違いなくリンジーと言っているので、今回はそう書きまーす。

 なんと、グラスパーのグループがクラッシックのオーケストラと共演する公演。池袋・東京芸術劇場コンサートホール。なんでも、昨年ノース・シー・ジャズでグラスパーとオーケストラとが一緒にやるプログラムがあったことが引き金になっているよう。

 クラシックには全面的にうといもので、西本智美という指揮者のことはまったく知らなかった。クラシックを知る人によると、海外での指揮者活動歴も長い人で、宝塚の男優みたいな感じで人気を得ている人なんだそう。写真を見ると、YOSHIKIみたいだ。なるほど、グラスパーのファンととももに、彼女のファンも客席にはけっこういたように見受けられた。ぼくは女性の指揮者に初めて触れる。

 西本が芸術監督兼首席指揮者を務める2012年設立のイルミナートフィルハーモニーオーケストラを用いてのもので、壇上には70人ぐらいいたか。コンサート・ミストレス、ようはオーケストランのリーダーも女性が務める。最初の曲はグラスパー抜きのオーケストラ演奏。ロシア人作曲家リムスキー・コサルコフの「スペイン奇想曲」というものをやったが、何人かのソロ演奏をフィーチャーする曲だった。その際のコンミスのヴァイオリン演奏は少しジプシー調と言えた? 

 20分弱のオーケストラ演奏後、まったく普段着のグラスパー(サングラス付き)が出て来て、『ブラック・レイディオ2』(2013年)収録のレイラ・ハサウェイが歌っていた「ジーザス・チルドレン」を一緒に演奏する。グラスパーのピアノは生音にて。作曲者を迎えての、イルミナートフィル・プレイズ・グラスパーといった塩梅のもの。15分ぐらいやり、その後休憩。西本は分りやすい指揮をする人だと思った。

 そして、以下はわりと通常のバンド演奏(4人の音はすべてアンプリファイドされる。ベースのバーニス・トラヴィス〜2013年2月8日、2013年3月19日、2014年5月11日、2014年8月20日、2015年6月4日〜は1曲以外エレクトリック・ベースを使用)とオーケストラが一緒に重なるパフォーマンスに入る。エキスペリメントの面々は皆ラフな格好だが、前のほうで見ている人によると、けっこう緊張している感じもあったそうな。また、グラスパーと西本のアイ・コンタクトや、マーク・コレンバーグ(2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2005年6月4日)が指揮棒を注視していたりとか、いろいろ指揮者とグループの間には共有されるものがあったようだ。また、かなり歌ったという印象を受けたケイシー・ベンジャミン(2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月4日)はそうでもなかったように見えたけど、他の奏者はけっこう譜面と向き合ってもいたな。それは、通常の公演ではない。

 オーケストレイションは、山下康介、萩森英明、石川洋光、岩城直也という4人がやっている。昨年のオランダでの実演はヴィンス・メンドーサがやっていたというので、書き下ろしアレンジをやったのだと思う。1部の共演曲1曲はオーケストラが主でグラスパーが従気味という感じだったが、ハービー・ハンコックの「処女航海」で始まった1時間ちょいの2部は、エクスペリエンスの演奏のもと、そこここにオーケストラ音がいろいろと差し込まれるといいうもの。そこらへんの噛み合いは編曲も実践もうまくやっていて、おそらく演奏の小節数はちゃんと定まったなかでの協調ではなかったかと思われる。おもしろいのは、オーケストラ音のサンプリング音が入るような聞き味を持つ箇所もあったこと。うーん、そこらへんはなかなかグラスパー表現らしいと言えると思う。

 明日に、グラスパーにはインタヴュー。今日のことをどう言うだろう?

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、バーニス・トラヴィス
http://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201405121521477969/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、ケイシー・ベンジャミン
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
▶過去の、マーク・コレンバーグ
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/

<今日の、まとめ>
 編成のデカいクラシックのオーケストラの表現はやはりいろいろと興味を喚起される。いろいろ進歩改善しているところもあるのだろうけど、大昔からこういう様式が確立されちゃっていたのはすごい、すごすぎる。まあ、変なことをやろうとして潰されたり、黙殺されたりした人もいろいろいたと思う。そして、人との繋がりという部分において、かなり気の遠くなるロマンを覚えたりも。
以下のものは、過去見ている、クラシックのオーケストラがついた非クラシック公演……。

http://43142.diarynote.jp/200606101341360000/ コステロ
http://43142.diarynote.jp/200807041128510000/ シスモンチ
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/ エルダー
http://43142.diarynote.jp/201001051626133581/ MONO
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/ ミラー
http://43142.diarynote.jp/201210060944303925/ ルグラン
http://43142.diarynote.jp/?day=20121130 チーフタンズ
http://43142.diarynote.jp/201310280755386500/ 小曽根、デリベラ
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/ 狭間

 快活きわまりないキャラクターであるギタリストのマイク・スターン(2009年3月23日、2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日)のリーダー・グループの公演。彼にくわえて構成員は、ドラムのウィル・カルホーン(2008年8月6日)、エレクトリック・ベースのヴィクター・ウッテン(2000年8月12日、2004年3月24日、2008年9月8日)、テナー・サックスのボブ・フランチェスチーニ。ソロは各人しっかり、取る。丸の内・コットンクラブ。ファースト・ショウ。観客の歓声がとってもデカかった。

 20分ほどの尺だった1曲目は、ヴァイタルなビートのジャンプ曲ながら、ブレイクした後は4ビートになり、その後は倍テンポに移行し、また立ったビートに戻ったりという、ビートや曲種がいろいろと変わる、聞いていて興味ひかれる曲。それに続く曲群はオープナーほどに身体が揺れるものはなかったが、ヌルくないがちんこフュージョンという質は持っていたはず。

 ひえ〜と驚いてしまったのは、4弦のショート・スケールのモデルを手に質量感ありの演奏に終始したヴィクター・ウッテン。ええ、こんなにいい感じの電気ベーシストだったの? もっとペラペラ弾き倒す空虚な奏者だと思っていたが、これは考えを改めなくてはならない。最後のほうの長いベース・ソロにもびっくり。途中までは多彩な弾き方のもと多様で雄弁な演奏を披露し、途中からはサンプラーを駆使してのものになったのだが、こんな豊かな多重音ソロが聞けるとは思わなかった。才、あるな。

 一世を風靡したブラック・ロック・バンドのリヴィング・カラーのドラマーとしてまず知られるカルホーンは、バスドラを2つ置いたセッッティングで演奏。レギュラーとマッチド・グリップ併用にて、けっこう場合によっては叩きまくる。彼の近作『Life in This World』(Motema、2013年)はタックヘッド/リヴィング・カラーのダグ・ウィンブッシュ(2000年4月9日)とロン・カーター(2001年6月7日、2004年1月14日、2010年5月6日、2011年1月30日、2012年3月3日、2012年12月11日、2014年1月19日、2014年9月7日)をベース奏者に据えた、”私の考えるジャズ”・アルバムだ。

 スターンやウッテンのアルバムに参加しているフランチェスチーニ(NYサルサ大御所のウィリー・コロンのアレンジャーも務めているとか)は、へえこんな奏者なの? スタジオ仕事では各種リードを吹くようだが、ここではテナー・サックスを吹く。で、近年の奏者だとカマシ・ワシントン(2014年5月28日)を思わせるような濁った質感のブっとびブレイズを連発したりもし、また一方では時々ブレッカー兄弟(2000年3月2日;弟、2004年2月13日;弟、2009年6月18日;兄、2010年6月6日;兄、2012年6月13日;兄)の作法を思い出させるような電気エフェクトを吹き音にかましたりもする。

 主役のスターンは、もうやんちゃかつ小僧的音楽愛好ココロ剥き出しに(それが、彼の美点なり)ロックぽくある流動的ギター演奏を繰り出す。それに触れつつ、1980年代初頭に音楽界に復帰した際のマイルス・デイヴィスにスターンが抜擢された理由の一つが分ったような気にもなった。

▶過去の、スターン
http://43142.diarynote.jp/200903260425159549/
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196
▶過去の、ヴィクター・ウッテン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm バークシャー・フェスティヴァル 8/12
http://43142.diarynote.jp/200403241554160000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
▶過去の、ウィル・カルホーン
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/
▶過去の、ダグ・ウィンブッシュ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-4.htm ポーラ・コール・バンド
▶過去の、ロン・カーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200401140000000000/
http://43142.diarynote.jp/201005071023536171/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201212141028575543/ 
http://43142.diarynote.jp/201401221302405299/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
▶過去の、ランディ・ブレッカー
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
▶過去の、マイケル ・ブレッカー
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/

 その後は、南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)で、ボブ・ドロウ(2013年6月28日)とネリー・マッケイのショウを見る。ドロウの方には前回と同じ、ギターのスティーヴ・バーガーとウッド・ベースのパット・オリアリーが付く。その内容は、
http://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2015/06/04/bob-dorough-nellie-mckay.html

▶過去の、ドロウ
http://43142.diarynote.jp/201307010908249319/

<今日の、雨>
 17時ごろ。家を出る少し前に、どっひゃーという豪雨。やだなあ。だが、家を出るときには小降りに。雀も、鳴いていた。今年、最初のゲリラ豪雨? 夏が亜熱帯化しつつある日本の近年、部分的な雨無茶降りが決して珍しいことではなくなったが、今夏はどうだろう。それに会わない幸運を願いたい。夜半の返り道も、降雨量はそれなり。雨の日用の、なかなか中まで濡れてこない靴を梅雨前に用意したほうがいいかもなあ。大雨で外出し、靴の内側まで濡れるのってほんとヤ。ニュー・バランスのとっても防水するようなヘヴィー仕様のスニーカーを今日は履いたが、それ以外にも長靴じゃないものを用意しておきたい。

 代官山・晴れたら空に豆まいて で、同店の新しいPAスピーカーやピアノ入れ替えをお披露目するイヴェントをまず覗く。ライヴを見せてくれたのは、ジョアン・リラ&ジョアン・カマレーロというブラジルのアコースティック・ギターのデュオ。一時日本にも住んでいたこともあるというリラはエリゼッチ・カルドーゾやシヴーカ他、そうそうたるブラジル人アーティストとやってきた人のようだが、一発聞いてこりゃ質の高いギタリストと納得。きっちりと正統な音楽教育を受けている人であるのもすぐに分る端正さと、ブラジル北東部出身ゆえの癖や揺れの隠し味的在り処がおいしい。見かけは大分若いもう一人のギタリストであるカマレーロも精緻な演奏をする人で、ちゃんと音楽教育を修めているのが分る人。確かな技量と意志統一から来る、無駄のないギター音の重なり、静かな相乗がおもしろくてしょうかない。この後、彼らは11公演を日本各所でやるようだ。

 その後、しばらしくして、ミキサカタ(2014年9月30日)がピアノ・ソロを披露する。音の粒が上品に舞い上がっていると、思わせる演奏。指の鍵盤との向かい方の様や、背筋がピんと立っている弾き姿の綺麗さを、その演奏する様を見ながら再確認。多くはオリジナルをやったと思われるが、さりげない演奏のなかに聞き手の記憶にある何かをノックするような物語性を抱えていたか。彼女、秋吉敏子(2013年4月30日)やマリアリー・パチェーコ(2013年5月13日)なども出しているティートック・レコードからアルバムを出すそう。

▶過去の、ミキサカタ
http://43142.diarynote.jp/201410011259136103/
▶過去の、秋吉敏子
http://43142.diarynote.jp/201305071422511328/
▶過去の、マリアリー・パチェーコ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130513

 そして、六本木・ビルボードライブ 東京で、少し太ったロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日)のショウを見る。

 2009 年以降ずっと維持しているワーキング・バンド、エキスペリメントによるパフォーマンス。リード楽器やエレクトロニクス/ヴォコーダーのケイシー・ベンジャミン(2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月4日)、ベースのバーニス・アール・トラヴィス二世(2013年2月8日、2013年3月19日、2014年5月11日、2014年8月20日)、ドラムのマーク・コレンバーグ(2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日)というサイドの面々。

 編集を介したヴォーカル入り現代R&B作が2枚続いた反動か、グラスパーの2015年新作『カヴァード』(ブルーノート)はアコースティック・ピアノを用いたトリオによるスタジオ・ライヴ作品(リズム・セクションは今回奏者と重ならない。2007年ピアノ・トリオ傑作『イン・マイ・エレメント』ほどピアノを鳴らしたりはせず、基本ピアノに対する考えを変えたと思わせる仕上がり)であったが、今回も旧来のエクスペリメントのライヴ内容を引き継ぐ。グラスパーは両手で両方を弾く場合もあるが、やはりピアノより電気キーボードを弾く時間のほうが長かったろう。

 場内は満場にして、大受け。最後のほう、ベンジャミンが勢いつけてソプラノ・サックスのソロを取ったが、そこからはジョン・コルトレーン愛好の様が透けた? なんてことはないが、彼はヤンキーな髪型以外にも、一筋縄で行かない変な人だよな。ベーシストのトラヴィスはソロのとき、手癖だけで流れる演奏を披露してげんなり。他の場面ではいい感じで演奏していたし、いい奏者なはずなんだけど。

▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
▶過去の、バーニス・トラヴィス
http://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201405121521477969/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
▶過去の、ケイシーベンジャミン
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
▶過去の、マーク・コレンバーグ
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/

<今日の、嫌いなもの>
 嫌いなものは? かつて、そう聞かれると、<待たされること、タバコ、格闘技>の3つ挙げていた。<帽子、指輪、ネックレス&ブレスレッド>という、身につける類のものも嫌いだナ。

 アルゼンチンの肉声と打楽器が一緒になった個性派アーティスト(2010年8月24日、2013年8月29日)の2年弱ぶりの来日公演。ピカピカの新作『バジスタ〜谷に住む女』をフォロウするもので、それは数年前にブエノスアイレスから北西部のサルタに引っ越したことでもたらされたものが投影されていると言えそう。そのサルタはフォルクローレが盛んな土地で、今回の彼女はアルゼンチンの深層とより繋がったところで、自らの“鼓動を持つ肉声表現”を作ろうとしている。そこには、アルゼンチンにある男性優位主義に対するアンチの意志も投影されているが、今回ほぼ一人で音を作り上げているのはその意志と繋がるものか。

 2部に分けて持たれたショウを見て、あらと思ったのは、けっこうサンプラー機器を用いていたこと。歌や打楽器音を組み上げ、そのうえにまた肉声を投げ出す。機械使いは少しぎこちない所はあるものの、前はほんの一部でしか機材を使っていなかったことを考えると、健闘していたのではないか。また、チャランガを弾く比率も上がっていた。凛とした女性が瑞々しさとともに、立っているという佇まいは、まさに彼女なり。

 1部も2部も、部分的に奄美のシンガー、里アンナが加わる。民謡だけでなく、ミュージカルにも主演していたりする人のようだが、何気に声が通り、デカい。いや、それに関しては、バラフを凌駕していた? 彼女は三味線や竪琴もこなしつつ、無理なくバラフとお互いの曲で重なる。また、2部のほうでは9年間日本に住んでいるというペルー人女性も加わり、ケチュア語でルーツと繋がる喉と旋律を1曲披露。なるほど、イスマ・オルノ(2014年5月24日)と共通するものがあるな。それもまた、うれしい共演だった。

 里アンナと一緒にやっていた2部の終わりと、その後のアンコールの終了時、バラフはともにボロボロと涙を流す。えっ。過去の公演でそんなことはなかったはずで、今回のパフォーマンスはそんなに本人にとってこみ上げてくるものがあったのか。それは、美しい自然な涙だった。

▶過去の、マリアナ・バラフ
http://43142.diarynote.jp/201008270911539087/
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
▶過去の、イスマ・オルノ
http://43142.diarynote.jp/201405271717357738/

<月曜の、バラフ>
 2日前にインタヴューした。竹を割ったような気っ風のいい女性という印象を持っていたが、情熱的ながら、実は女の子っぽい部分も持つ人ではないかと、接して思えました。マネージャーを務める年下の旦那さんには結構めろめろで、かなり彼に頼っているが分る。実は近年居住しているサルタは、彼の故郷であるという。その私生活を含めた記事は7月売り号のソトコト誌に出る予定。ところで、今回バラフのツアーは21公演も組まれているのだとか(東京公演が1つ目)。でも、頼れる旦那さんが横でサポートするなら、ストレスをそれほど感じることなくこなしていけるのではないか。今回、彼女は紙片に書かれたものを見ながら英語MCをするようにしていたが、それも英語ができる彼が横にいるから可能になったはず。

 自由の、枠越えギタリスト(2010年1月9日、2010年4月23日、2013年4月13日、2014年8月14日)のワーキング・バンドの公演、インストゥメンタルのバンドであるのに、”シンガーズ”と名乗っているのは洒落か、俺たちは歌うように演奏しているんだという意思表示か。南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)。長身で、飄々とした人。俗事から解き放たれている、というか、音楽と真っすぐ向き合い続けているからこそだろう、澱がついている感じがしない人だなあ。彼は最小限だが、日本語でMCをする。奥様(2009年1月21日、2014年3月31日、2014年8月14日)に、習ったのか。

 おもしろい顔ぶれを集めたもので、コントラバスとエレクトリック・ベース両方をちゃんと演奏するトレヴァー・ダン(2005年9月5日)、ドラムのスコット・アルメンデラ(2015年2月18日)、打楽器奏者のシロ・パティスタ(2000年3月14日、2004年9月5日、2004年9月16日、2004年11月6日)という面々を擁する。

 最初の曲は、いくつかの曲をくっつけたものを40分切れ目なしに演奏。その後、4、5曲やって、全部で85分ものパフォーマンス。本編最後でクラインはギターを弾きながら少し詠唱し、その後に顔の前にギターを持って行った。それ、ギターのピックアップで声を拾わせていたのか、歯で弦を弾こうとしたのかは不明。ちょうどトイレに行ったときにそれをやり始めたようで、戻って来た途端、その仕草をやめたのでなんとも判断がつかない。彼は足元にエフェクターを置くほかに、手元にも置き、そっちをいじりいろいろと音を作っていた。チューニングはどうであったのか。

 1曲すごいジョン・スコフィールド(1999年5月11日、2001年1月11日、2002年1月24日、2004年3月11日、2006年3月1日、2007年5月10日、2008年10月8日、2009年9月5日、2012年10月10日、2013年10月21日、2015年5月26日)みたいな曲調で、彼みたいなソロを取る曲もあり。それを聞くと、いかにスコフィールドが歌心と昇天感覚を併せ持つエモーショナルな演奏ができるかが良くわかる。まあ、スコが強い色調の画材でダイナミックに具象画を描くとしたら、クラインは淡い画材で抽象画を描いていることが多いわけで、比較するのは無理があるかもしれないが。アンコールがカーラ・ブレイ(1999年4月13日、2000年3月25日)の初期曲「A.I.R」。なんか、渋いな。

 バティスタ(スペルだと、バプティスタと読みたくなり、ぼくは過去そう記してきたが、バティスタなのか)はブラジル人らしく、ビリンバウやパンデイロも扱う。また、肉声も出す→ほんと、この前のサム・ベネット(2015年4月17日)の演奏はバティスタと近いスタンスがあったと思わずにはいられず。あ、ルックスも似ていると、ぼくは思う。スコーンと抜けたバティスタがいるためどんな曲調のものをやっても、わりと統一感が出て、笑顔のライヴ・ミュージックになる部分はあったはずだ。

▶過去の、ネルス・クライン
http://43142.diarynote.jp/?day=20100109
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
▶過去の、本田ゆか
http://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140331
http://43142.diarynote.jp/201408161131356136/
▶過去の、トレヴァー・ダン
http://43142.diarynote.jp/200509061252060000/
▶過去の。スコット・アルメンデラ
http://43142.diarynote.jp/201502230940316504/
▶過去の、シロ・バティスタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/200409050916440000/
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
http://43142.diarynote.jp/200411071407550000/
▶過去の、カーラ・ブレイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
▶過去の、ジョン・スコフィールド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live2.htm 5.11
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-1.htm 1.11
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm 1.24
http://43142.diarynote.jp/200403111821250000/
http://43142.diarynote.jp/200603011148430000/
http://43142.diarynote.jp/200705181809270000/
http://43142.diarynote.jp/200810111558046727/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/201210111837516874/
http://43142.diarynote.jp/201310210730403296/
http://43142.diarynote.jp/201505271549266046/
▶過去の、サム・ベネット
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/

<今日の、目線>
 ずっと天気のいい日が続いていて、昼間はけっこう暑い。夜はそれなりに涼しく、寒暖差はあり。ぼくの周りで風邪をひいている人が散見されるが、それはかような気候のためもあるか。今朝起きたら、とても身体の冷えを感じて、ヤバっと思った。でも、風邪はひいてなかった。なんか今日、街中を歩いていて、歩道が混んでいないときはけっこう上を見上げながらゆっくり歩いた。新鮮、それ間違いなく新たな都市の表情を見させてくれる。でも、端からだと、ぼくは危ない人に見えるのかもしれない。

 スフィアズという名前を持つトリオは、ピアニストの山中千尋(2005年8月21日、2009年6月7日、2010年3月14日、2011年8月6日、2013年3月3日)と、NY在住のイスラエル人リズム・セクションが組んだ女性バンドだ。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 山中とドラマーのカレン・テバーバーグ(写真より、ずっと綺麗なルックスでした)はバークリー音大時代の友達だそうで、22歳というベーシスト(エレクトリックのみを弾く)のダナ・ロスはテバーバーグの推挙によるもののよう。ロスの演奏は、なかなかしっかり。今回ベースは電気だから、鍵盤もアコースティックに限るのはやめようと、山中は思ったのではないか。

 山中は、前半はずっと電気ピアノを弾く。師匠のジョージ・ラッセルの曲と言ってやった「リヴィング・タイム(イヴェント5)」は、原曲ともどもとっちらかった様相の曲。ビル・エヴァンスとジョージ・ラッセル・オーケストラの双頭名義で出された1972年同名盤(コロムビア)は何気な奇盤だったよなあ。ああいうレコードを好きな人に悪い人はいない、か。とともに、あのころの米コロムビアのジャズ部門は気張っていたよナと思う。

 中盤からは、アコースティック・ピアノの巻。MCによれば、7月に出る新作はラグタイム巨人のスコット・ジョプリン曲集だそうで、そのなかからと言ってお馴染みの旋律曲「ザ・エンターテイナー」を、相当に現代的に移行させる方向で披露。それ、アルバム様に録ったものとも離れていると、当人はMCでコメント。その次の曲も、ジョプリン曲だったのかな?

 そして終盤のセロニアス・モンク曲「エヴィデンス」はなんとショルダー・シンセサイザーを肩にかけ、最初から終わりまでエフェクターをかけた単音でごにょごにょやる。意外に、合っていた。あ、スフィアズというグループ名はモンクのミドル・ネームからきているの? テーバーグは手数多く、だが重くならず叩く人で、ドラムンベース系のビートを叩かせると上手そうと思わせる? 本編最後は、山中がよくやっている故郷曲「八木節」だったが、この曲をバークリー音大時代に最初にやったときのドラマーが彼女であったのだとか。そりゃ、今回感無量だろうな。なんか、この曲の前半部のピアノのソロがもろにケニー・カークランドみたいだった。

▶過去の、山中千尋
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
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http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130303

 その次は、代官山・晴れたら空に豆まいて で、ポーランドの男女エレクトリック・ポップのユニットを見る。女性シンガーのユスティナ・シフェンスとサウンド担当のクバ・カラシが、その構成員。2011年にドイツに近い都市のザブジュで結成され、2014年に同国のワーナー・ミュージックから『No Bad Days』を出した。同国のグラミー賞みたいなアウォードで、新人賞も受けているという。

 ステージに立った2人を見て、誰もが若いっ〜まだ子供じゃねえか、思うのではないか。なんと、男性は19歳、女性はまだ高校生で18歳だそう。つまり民主化後に、2人は生まれたということになるではないか。

 カラシが出音を扱うなか、シフェンスがベール系の音を出すキーボードを弾きながら歌う。ちょっと懐かしい部分も持つエレクトリック・ポップ表現にプラスして、今様なダンス・ビート/音像が付く場合もある。今、ポーランドではエレクトリック・ポップが流行っていて、そこで自分たちもやろうとなったそうだが、かなりまっとう。同国のインターナショナルなポップ・カルチャー水準は、やはり高いと思わせる。シフェンスの歌は上手く、訴求力もあり。カラシはギターやベースを弾く場合もあり、彼女がベースを弾いた曲も1曲あった。

 先に書いたように、まだ2人ともティーンエイジャー。こりゃ、今後どうにでもいいように回るナ、と思わずにはいられず。歌詞は英語を中心に、ときにポーランド語でも歌う。本人たちにとっては、英語のほうが自然に歌えるという気持ちがあるようだ。そんなザ・ダンプリングスは、これまでフランス他いくつかの外の国でパフォーマンスしている。
 
<今日の、10代> 
 ライヴ終了後に、ザ・ダンプリングスの2人にインタヴュー。あなたたちは、同年代の友達と比べて普通なのー、と思わず聞いてしまったな。普通ではないそうデス。彼の地では18歳から選挙権が与えられ、お酒も飲める。すぐ前に大統領の選挙があり野党候補が当選したが、シフェンスはそれが初の選挙投票であったという。すらりとしていて綺麗な彼女は純すっぴんで、歯の矯正のワイヤーをまだ入れている。そういう様に触れると幼さまだ感じてしまうが、腕に小さくはない魚の刺青を入れている。カラシ君のほうは、彫り無しとのこと。彼の父親はぼくより年長だそうで、それに少し安堵?

 初来日で多大な個を持つ、欧州のアーティストの公演をハシゴする。両方ともかなりすごい。うひょ〜。

 まず、吉祥寺・スター・パインズ・カフェでアイルランドのシンガー・ソングライターのウォリス・バードを見る。1982年生まれ、アイランドやコロムビアからアルバムを出したこともある人。ロンドンやベルリンに住んでいるという話だが、皆アイルランドに遊びに来てよと言っていたので、今はまた母国に戻っているのだろうか。まず、真っすぐに弾ける、眩しい個体アリ。それで、もうOK。やんちゃというか。酒付きと思わせるところも、たいそうよろしい。

 アコースティック・ギターを持っての弾き語り。左利きの彼女は、右利きのギター(弦の張り方はそのままと、言われる)逆さに持って弾いているそうだが、時にオープン・チューニングぽく聞こえるところもあった。なんにせよ、個性的ね。また、エフェクターを少し使ってギター音を広げるときもあったし、ストンプ音を出すときもあった。でも、そんなことは、些細な問題だろう。だって、きっちりと声の大きな歌唱や揺れるメロディを他者にがっつ〜んと問うことができる、気っ風のいい、竹を割ったような実演者の様こそが、彼女の最たる魅力である(と、思えた)から。ああ、この人は“持っている”、と思わずにはいられないものなあ。ギターをおいて、無伴奏で歌う曲もあり。一つは、一週間前のアイルランドの国民投票による同性愛合法化を受けてのもののよう。瑞々しくも、気持ちがいやになるほど通じる。

 腹をくくったというか、はっちゃけたギターを介する個性的表現ということで(さらには、元が綺麗目ということで?)、アーニー・ディフランコ(2000年1月28日、2001年7月29日、2004年3月8日)と比較する向きもあるようだが、グルーヴやメロディに対するが感覚が相当に離れていて、ぼくは比べる気になれないな。ウォリスはウォリス、ディフラコはディフランコでいいちゃない? ああ、久しぶりに、ディフランコのことも見てみたい。どうして、日本には呼ばれなくなってしまったんだろう?

 終盤、彼女はギターの弦を弾きながら、すべての弦を切る。おおっ。そんなことをする人は初めて見た。力いるだろうし、ケガしかねないし。でも、それは一連の彼女の所作にあっていて、マル。とにもかくにも、まっとうな才を持つ、秀でたパフォーマー。バンドでやってもいろいろと広がりや妙味を出せる人のはずで、次々回ぐらいでそれを望めはしないだろうか。

 あと、本当に日本が気に入ってしまった。絶対にまた来る! という気持ちが随所から透けて見えるのが、よろしい。ほんとうに、受け手も幸せな気持ちになれる。

▶過去の、アーニー・ディフランコ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm フジ・ロック3日目
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200403081053300000/

 21時過ぎからは、飯田橋・アンティスチュ・フランスのエスパス・イマージュ(ホールの名前)で、マルチニークをルーツとするフランス人特殊鍵盤←→映像クリエイターの(クリストフ・)シャソルのショウを見る。

 音楽と映像/PC編集、現在その掛け合わせ表現を求めるクリエイターはいろいろといるだろう。熱心にその手のアーティストを追っているわけではないが、この40歳手前のブランス人の表現を知ったときにはホントびっくりしちゃった。ジャイルズ・ピーターソン(1999年5月21日、2002年11月7日、2004年1月16日、2008年9月18日、2012年9月13日)も彼の才に注目していて、いろいろ応援している。

 過去、シャソルはニューオーリンズやインド(彼、インドの血もちょい入っているとか)で自らフィールドワークした映像を大胆に抽出編集したものを元に、そこに自らのメロディやビートを加えて、新たな世界を提出。と、書くと、彼の地の音を消費したものではないかと危惧を覚える人もいるかもしれないが、驚愕の創造性のテンコもりの作業を否定すると表現の自由と発展が阻害されてしまうと、シャソルの我が道を行く音楽所作は思わせる。とともに、その総体は、新たなワールド・ミュージックなるものではないかという所感も持たせもする。彼の映像音と自らの音楽器量のセッションといった作品は沢山YouTubeにもいろいろのっているので、見る事をおすすめする。Chassolで出てくるはず。

 しかも、その才気走ったプロダクツ群は洒落たメロディや響きを持ち、チル・アウトというか、基本的に聞き手に満たされた楽園情緒を与えるのが素晴らしい。なんか、記憶の底にある何かをノックされる感じもあるよな。おそらく、彼はただピアノを弾いても、きっと聞き手の耳をひく音楽を作ることができるだろう。だが、YouTubeやPCがある時代の特権を行使して、彼は新しい大地を獲得せんとする。書き遅れたが、映像を伴う彼のCDはDVD がついていたり、映像が見ることができるコードが添付されている。

 ステージには、フェンダーのローズ(CDを聞いても感心するが、いい音出します)、ヤマハのグランド型電気ピアノ(もしかして、ヴィンテージのCP-80か?)、ベース・ラインなどの単音を弾いたシンセサイザーの3台が並ぶ。そして、彼は映し出される映像と同軌するように、それらを自在に弾いて行く。また、そこにやはり肌の黒いドラマーも加わる。ぼくはもう少しタイトで軽い叩き口を持つ人のほうが合うように思えたが、そのドラマーは最後に振られたMCで、米国居住経験のあるシャソルより、英語が自然だった。彼、何人?

 シャソルの2015 年新作『Big Sun』(Tricatel)はマルチニークに出向いて撮影した映像を元にするアルバム。そして、この1時間強のショウは、そのマテリアルに全面的に負う。一つ意外だったのは、流される映像を彼はオペレートすることなく、決まったものがまんま流されていたこと。また、映像に合わせて弾く鍵盤の演奏もそれ自体はほとんど即興性のないものであった。生ではもっとスポンテイニアスに事をすすめるのかと、思った。だが、即興性が彼の表現の生命線ではなく、築いた方法論とその実践が気が遠くなるほどすごいので、それをなぞるだけでも多大な価値があると、ぼくは思う。最後、アンコールに応えて、映像抜きでソロ演奏。やはり、即興性に富むとはそれほど感じなかったが、パッションと迸りはあり。彼が好きなジャズ・ピアニストは、チック・コリア、ハービー・ハンコック、キース・ジャレットだそう。

 この月曜日(6月1日)には、20時からモーションブルー・ヨコハマでノー・チャージの公演が持たれることにもなっているが、かなり推奨します。あ、ぼくは彼に、エルメート・パスコアール(2004年11月6日)的な何かを感じたりもするかな。

▶過去の、エルメート・パスコアール
http://43142.diarynote.jp/200411071407550000/

<金曜の、シャソル>
 この才人には話をぜひきかなきゃ。というわけで、インタヴューをする。ラティーナ誌にて。パフォーマンス中、声をあげたりするなど、相当に陽性なところを見せていたシャソルだが、素も人懐こいナイス・ガイ。父親はサックス奏者で、家ではやはりマルチニークの音楽が流れていたという。小さいころからピアノを習い、大学や音楽学校を出た後は、映像に音楽を付ける仕事に就く。その後、奨学金を得て1年間米国バークリー音楽大学に通い、またロック・バンドのフェニックスのツアーに鍵盤奏者として関与したあと、2005 年にはLAに住んだ。LAの生活は大好きだったそう。
 そんな彼が上で触れた映像を下敷きに沸き上がる音楽表現の回路を築いたのは、2008年ごろのこと。「もののけ姫」(だったかな? アニメにはうとくて…)の映像の女性登場者の日本語のセリフに電気ピアノ音を重ねたものを彼は試作していて、取材中にそれを見せてくれたりもする。フィールドワークの楽器音や歌から、鳥の鳴き声まで。彼はいろんな事象に、自分の指さばきをヴィヴィッドに重ねる。その敏感さ、瞬発力の高さはすごい。新作『ビッグ・サン』には、世の黒人に対する負のイメージを逆手にとったテーマを重ねているとか。それを聞いて、”俺たちはヴォランティアで奴隷をやってあげているんだよ”という気持ちをこめた、ローランド・カークの『ヴォランティアード・スレイヴリー』のことを思い出したが、彼はカークのことも知っていた。
 この日が、なんとタクシー・サウダージ(2014年9月16日)の61歳の誕生日であったのだとか。秩父のタクシー運転手が60歳にしてデビュー! という話とともにけっこうな話題を呼んだ日本語で歌うボサノヴァ歌手/ギタリストの公演、渋谷・サラヴァ東京。

 現在、彼は2作目となるアルバムを、秩父でレコーディング中。アルト・サックスの宮野祐司、ドラムの服部正美、エレクトリック・ベースの木幡昌敏、キーボードの新井正輝、ヴァイブラフォンとコーラスの山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日)という面々は、その録音に参加している面々とのこと。

 二部制で持たれたショウは1作目収録曲と2作目に収録予定の曲がほぼ半々づつ。ボサノヴァ有名曲も自作曲もともに、たっぷりとした情緒を持つ歌声のもと、日本語の歌詞で歌われるというのは同じ。ボサノヴァという洋楽語彙の粋にあるものが日本人の機微のもと、書き換えられていく様はある種のえも言われぬ情緒と示唆をおおいに聞き手に与える。そこらあたりの考察も含めて、日経新聞電子版に書きます。

▶過去の、タクシーサウダージ
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/

<今日の、オープニング・アクト>
 薩摩琵琶の大久保旭夏が、ソロでパフォーマンス。楽器は4弦だったかな。丁寧に演目の説明をしたあと、20分ほど、古典を素材に弾き語りを聞かせる。歌と演奏の関係は、ぼくの乱暴な感想に従うなら、三味線の弾き語りのそれを思い出させたか。先日スプラッシュガール(2015年5月8日)で共演し、ぼくを驚かせた久保田晶子のそれとはけっこう受ける味は異なる。あっちは、何琵琶なんだろ? この日、大久保が前座として出たのは、2014年暮れに山田あずさとポルトガルで公演をしたことが縁となっているよう。その山田は翌日、渋さ知らズの公演のため、イタリアに飛ぶという。ところで、薩摩琵琶と聞いて、なんか既知感を覚えたが、それはアイリッシュ・ハープ奏者のトリーナ・マーシャル(2007年6月1日、2007年6月18日、2012年11月22日、2012年11月30日)のお兄さんが日本に住んで、それを学んでおり、妹の単独公演(2007年6月18日)のときに、ちょい演奏したからだった。
▶過去の、久保田晶子
http://43142.diarynote.jp/201505091418013376/
▶過去の、トリーナ・マーシャル
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/
http://43142.diarynote.jp/200706232040450000/
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/

 1959年生まれのベーシスト(2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2006年9月3日、2012年6月13日、2014年2月12日、2014年4月14日)のリーダー公演を見る。1980年代下半期以降ずっとフュージョン/ジャズ界の第一線にいつづけ、いろいろなリーダー作を発表するとともに、ウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年4月14日)ら様々な人から声をかけられ続けている御仁。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 アダム・ロジャース(2012年5月28日)とスティーヴ・カーディナスという2人のエレクトリック・ギター奏者、ショーター・バンドのリズム・セクションの合い方でもあるドラムのブライアン・ブレイド(2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2008年9月4日、2009年7月20日、2011年5月12日、2012年1月16日、2012年3月15日 、2012年5月22日、2014年2月12日、2014年4月14日)というカルテットにてパフォーマンス。アコースティック/エレクトリック両刀の奏者であるパティトゥッチだが、ここでは6弦と5弦のフレットレスの電気ベースを弾いた。

 ギター系楽器3本とドラムという変則編成をとっているわけだが、それは2015年新作『ブルックリン』と同じ編成による。迷宮曲、ポップ・ファンク曲(それ、2ギターでやるためか、スタッフを思い出せると思った)、B.B.キング追悼と言ってやったシンプルなブルージィ曲などのオリジナルを中心に、セロニアス・モンク 曲やマリの名歌手であるオウモウ・サンガレ曲のカヴァー(後者は、ベース・ソロを弾き倒す様を含め、マーカス・ミラー〜1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日〜的と思えた)など、いろんな曲をやる。パティトゥッチはブルックリン育ち(大学は西海岸)、アルバム・タイトルはいろんな音楽に嬉々として接した多感な時期への幸せな追想を重ねるものか。だとするなら、かつて彼はギター好きでもあったのか。彼の2作目のリーダー作『オン・ザ・コーナー』(ジャケには綺麗な奥さんも写っていた)もブルックリン讃歌を重ねていなかったっけ?

 絡み合う弦楽器と、土台を流麗に固めるドラム。唯一意外だったのは、2人のギタリストが泉が湧くがごとくソロを重ね合うのかと持ったら、多くの曲では、アダム・ロジャースが主で、スティーヴ・カーディガンスが従の立場で演奏していたこと。なんにせよ、旧来のアコースティック・ジャズやフュージョンからどこか離れようとするものを標榜していたのは間違いない。今、創意あるジャズ熟練者は往々にして、そういう意志のもと、自己のジャズ的表現の成就を求めんとしているんだろうなあ。4ビートにはちと飽きた、そう言うジャズの才人を何人もぼくは知っている

▶過去の、ジョン・パティトゥッチ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm 2001年8月3日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm   2002年8月25日
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201402140843255048/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
▶過去の、アダム・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
▶過去の、ブライアン・ブレイド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm 2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200809071429250000/
http://43142.diarynote.jp/200908061810483865/
http://43142.diarynote.jp/201105140859559227/
http://43142.diarynote.jp/201201171011033219/
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
http://43142.diarynote.jp/201402140843255048/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
▶過去の、マーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/

 その後は、六本木・ビルボードライブで、セルジオ・メンデス(2003年9月2日、2005年8月9日、2006年9月29日、2008年2月7日、2012年5月1日)のショウを見る。ブラジル’66時代の曲満載の、既知感のある内容。なのに、どうして、ぼくはアガり、最高だぁとニコニコ見れてしまったのか。もう素晴らしい手触りありまくりの楽曲群(それらは、カチっとコンパクトにまとめられ、即興性はあまりない。メンデスのキーボード裁きも決まったフレーズしか弾いていないはずだ)に触れながら、ぼくが彼らのことをちゃんと聞くようにになったのは1990年代を回ってからのはずなのに、ブラジル’66時代の曲はぼくの人生のサウンドトラックだあ、と思わせるような親密な心持ちを与えられたことに驚く。

 分りきったことしかやっていないからこそ、明解な輝き、生理的な線の太さはより強調される方向性にあったか。メンデスの、時にとるヴォーカルも前よりよく聞こえる。現在のバンドはブラジル人とアメリカ人の混合で、奥さんを含む3人の女性ヴォーカル(若い2人はお近づきになれたら、わーいとなれるルックス)、サックス類やキーボード、ギター、ベース、ドラム、パーカッション(ソロ・パフォーマンスのパートも与えられる)という9人編成。2014年作『マジック』でジョン・レジェンド(2005年5月8日)が作曲/ヴォーカル参加していた「ドント・セイ・グッドバイ」もやったが、その際はサックスや鍵盤を担当するスコット・メイヨが前に出て来て、それほど上手じゃない歌を披露。彼はその曲の共作者であり、『マジック』では演奏だけでなく、アレンジも担当していた。米国西海岸のスタジオ奏者であるメイヨはE.W.&F. (2006年1月19日、2012年5月17 日)の来日公演に同行したこともあったのではないかな? ニール・ヤングの2014年新作『ストーリー・トーン』にも、彼はホーン・セクション参加していた。

 過去、セルジオ・メンデスを見たなかで、一番満足してしまったナ。

▶過去の、セルジオ・メンデス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20050809
http://43142.diarynote.jp/200610020643550000/
http://43142.diarynote.jp/200802101517380000/
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/
▶過去の、ジョン・レジェンド
http://43142.diarynote.jp/200505141714260000/
▶過去の、E.W.&.F.
http://43142.diarynote.jp/200601271855390000/
http://43142.diarynote.jp/201205301252113538/
▶過去の、ニール・ヤング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm フジ・ロック

<今日の、昼間>
 ずっとまあいい天気が続き、日中は暑さも感じる。とともに、けっこう湿度も感じる。←それだけで、ちょい梅雨以降の過ごしづらさを想像し、すこし暗くなる。昼間、ちょいでかけたとき、宅急便屋の手押し車みたいな長方形の乳母車に何人もの小さな子供たちを入れて散歩している様を見る。保育所だか託児所だか知らないが、今はああいうのをガキんちょを外出させるときに用いるのか。なんかほのぼのとした、光景。それを押してみたい、ちょいそう思いました。

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