2021年12月11日土曜日 渋谷Li-Po
17:30開場 / 18:00開演
入場料 2500円(+ドリンクオーダー別途)
予約優先・定員30名(定員になり次第、募集締め切ります)


 中川五郎は、この秋に新しい書籍「ぼくが歌う場所 フォーク・ソングを追い求めて 50 年」(平凡社)を出版しました。同書はこれまでの彼の半生をくくる内容であるとともに、生理的にまっすぐでストロングなメッセージ・ソングの紡ぎ手としての彼の実像が明晰に記されています。フォーク興隆期の重要な担い手、しなやかな翻訳家や編集者や文筆家、全国をこれでもかと回る草の根主義の行動する音楽家……。時代とともに立ち位置を変えてきた中川五郎の現在地が、時代のドキュメントたりえる書籍を下敷きに語られます。聞き手は、佐藤英輔が務めます。リベラルであることは? 自由であることは? 人を愛することは? メッセージ・ソングのあり方や人々の前で歌う意味を了解した今だからこその弾き語りも、もちろん披露。72歳のハダカの中川五郎が、Li-Poに現れます。

 1部はトーク、2部がライヴ披露となります。そして終了後は、そのまま<五郎さんと忘年会>にはんなり移行します。ラヴリーにしてストロングな五郎さんと、どうぞ時間を共有してください。

▶︎予約フォーム  http://li-po.jp/?p=6951 よろしくねー。

 Shinya Fukumori presents 「nagalu Festival 2021」のデイ3。この日は、二つの“nagalu”所属アーティストが、入れ替えで出演した。

 まずは、ギターの藤本一馬 (2011年8月22日、2012年6月17日 、2013年4月19日、2019年7月6日、2019年12月18日、2021年11月26日)、ピアノの栗林すみれ、アルコ弾きする時間も短かくないダブル・ベースの西嶋徹(2012年11月21日、2017年6月27日、2018年12月10日、2019年12月18日)、ドラムの福盛進也 (2018年1月7日、2018年4月7日、2019年1月5日、2019年6月14日、2019年12月18日、2021年11月25日、2021年11月26日)からなる4ピースのグループであるレムボート。“nagalu”のなかでは一番常識的な編成を取っているカルテットだが、カルテットではなくグループと書きたくなるのはやはり旧来のジャズからの脱指針を抱えているからだろうな。実際、12月20日発売なものの今日先行販売されていたデビュー作『星を漕ぐもの』より、この日の実演は4人で曲にある情景を見据えて寄り添い、一つの像を結ばせるという感覚が明解に出されていたように思う。リーダーはなし、曲も皆で出し合っていて、4人対等という触れ込みなり。

 藤本の流動的な爪弾き(このグループではエレクトリック・ギターを中心に弾く)も効いていて、もし他者に明解に説明するなら、曲によってはパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日、2019年1月7日、2019年1月11日、2019年1月16日)的なストーリー/情景的提示のスタンスを取るとしたくなるか。そうしたしなやかさや広がりを、より静謐に、アコースティックに、簡潔に(ソロはあるものの、どの曲も5分ぐらいの尺に抑えられていたのではないか)、4人は送り出す。響きと間にも、留意して……。一昨日、昨日とソロを取らなかった福盛もここでは曲の始まりにさざ波のようなソロを取る。キック・ドラムは本当に控えめに。しかし、大昔には彼がヴィニー・カリウタ(2009年2月6日、2014年9月7日)に憧れていたなんて嘘みたい。当時の福盛進也が、今の彼の演奏を見たらびっくり仰天するんじゃないだろうか。経験や変化は美徳以外の何ものでもない。

 このショウでより簡潔に披露されたのは、西嶋と藤本の曲が多かったのか。1曲、栗林がブリリアントなソロを録る曲があって、その際に藤本はちらちら栗林の方向き、うれしそうに微笑んでいた。なんかブループ構成員内の力学のあり方が透けるようでもあり、ヴィジョンを共有しあえる仲間が手を差し伸べ合う集団表現っていいナとも思わせられた。

▶︎過去の、藤本一馬
https://43142.diarynote.jp/201109100857091783/
https://43142.diarynote.jp/201206210942136482/
https://43142.diarynote.jp/201304211111189539/
https://43142.diarynote.jp/201907071754237718/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
https://43142.diarynote.jp/202111270737509911/
▶︎過去の、西嶋徹
http://43142.diarynote.jp/?day=20121121
https://43142.diarynote.jp/201706281510173316/
https://43142.diarynote.jp/201812111218404525/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
▶︎過去の、福盛 進也
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/
https://43142.diarynote.jp/202111270737509911/
▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201901121341307532/
https://43142.diarynote.jp/201901180819479701/
▶過去の、ヴィニー・カリウタ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090206
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/

 そして、Shinya Fukumori presents 「nagalu Festival 2021」の最後を飾るのは、“nagalu”主宰者である福盛進也をリーダーに置く出し物だ。“nagalu”第一弾となる彼の『Another Story』のコア・メンバーにより、ヴォーカルも用いた独自世界を提示しようする。

 ドラム/作曲の福盛進也、ピアノの佐藤浩一 (2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日、2019年1月5日、2019年10月30日、2020年8月16日、2021年7月30日、2021年11月6日、2021年11月25日)、ギターの藤本一馬 、ダブル・ベースの西嶋徹、アルト・サックスの蒼波花音 (ぼくからは一番離れていた位置に立っていた彼女、アルトより大きい楽器を持っているようにも見えた。彼女の従来のサックス流儀に沿わない合いの手音は効いていたりもし、ある曲の出だしで取ったソロにぼくはヤン・ガルバレク〜2002年2月13日、2004年2月25日〜を想起した)、ヴォーカルとギターの青柳拓次(2007年1月27日、2011年5月22日、2017年9月8日、2018年6月2日)という面々がステージに上がる。

 『Another Story』はヴォーカル入り曲もうまく配置したアルバムだったが、ショウの前半は比較的ヴォーカルを入れた行き方を取る。アルバムに入っていない遠藤賢司の「カレーライス」も研ぎ澄まされた感覚で届けたか。青柳の超然とした味にも頷くな。福盛はアイデアを貯めていて、『Another Story』を三部作まで続けたいと考えている。また、その終盤にはやはり第一作に参加し個を出していたSalyu(2011年8月7日、2013年8月11日、2019年10月27日)も加わり、わりとインプロヴィゼイショナルな、歌詞なしの歌を悠々披露する。彼女と青柳が気ままに掛け合いを見せる部分もあった。

 その後は、青柳も一時は引っ込み、インストでことを進めるが、歌ものにせよ、演奏ものにせよ、それらの聞き味はマジ個性的。他に比類するものがないなと、ため息をつく。ジャズの新しい表情を獲得しようとするそうした行き方はこのフェスの他の出演者にも貫かれていることだが、とくにこの最終のショウの音楽の手触りは唯一。日本人としての侘び寂び、幽玄の感覚を通過した、余韻と情緒に富む現代ジャズ・ビヨンド表現と言うしかないし、これは世界に発信できる鋭敏な日本の音楽であると感じる。福盛は高校時代からアメリカに留学し、その後ドイツに住んでいたという歩みを持つが、ちゃんと外を知っているからこそ、この不思議でもある回路は出てきたものであるのは疑いがない。そして、そういう独自志向に添う共演者たちも有能だ。

 それから、ヴォーカル・ナンバーを聞きながら思ったのは、このユニットで飛躍を求めるヴォーカリストのレコーディングをサポートするというのはどうか。もう一歩先にある大人の歌世界を求めようとする自覚的なシンガーを、しっとり個性的に彼らが受け止め、その伸張を成就させる。かなりアリと思うけどなあ。かつてはキャラメル・ママだったら、この時代は福盛『Another Story』バンド、な〜んて。オレンジ・ペコーをやっている藤本は当然として、佐藤にせよ、林正樹にせよ、そのコア・メンバーたちはヴォーカル物にも近い立ち位置を持っている。

▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
https://43142.diarynote.jp/201910311450514339/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
https://43142.diarynote.jp/202111071551287545/
https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/
▶︎過去の、青柳拓次
http://43142.diarynote.jp/200702010112550000/
http://43142.diarynote.jp/201105230926029205/
https://43142.diarynote.jp/201709110843278416/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶︎過去の、Salyu
https://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
https://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
https://43142.diarynote.jp/201910291047462413/
▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/

<今日の、東京都の施設>
 朝起きて、空気が乾いていると感じる。そろそろ、加湿器を出さねばいけないな。15時、ライヴに行くために外に出ると、おお空気が冷たい。風もないのに。気温はまだ10度欠けぐらいでしょう。あー、真冬が思いやられる。厚手のコート類も出さなくてはいけないぞ。あ“〜面倒くせえ。地下鉄の有楽町駅から東京国際フォーラムの地下を通って会場に行く際、ホールAでキング・クリムゾン公演があることを知る。おじいちゃん、来日しているのか。そういえば、誰かがチケット代べらぼうに高いと言っていたか。
 最初のショウと次のショウの間17時ぐらいに、ちょい本屋を覗きたくなり、フォーラムの間のスペースを通ろうとすると、そこにはものすごい人、人、人。よく観察するとずっと奥のフォーラムのなかから帯状な感じで人の波が出てきていて外をぐるりと回った末にまたフォーラム内に戻るように続いている。人々はそれなりに上の年齢層で男性が多い。もしやと思い、一人のおじさんにこれは何の列ですかと尋ねると、穏やかに「キング・クルムゾンです」。え〜、なんで寒いなかこんなに不都合な入場形態を取っているんだろう。開場が遅れ、入り口に人がたまらないための対策? このおり、胸を焦がした天下の大御所バンドの実演に触れられるということだけで皆ルンルンなのかもしれないが、理不尽な行動を強いられているのにあまり大群にやさぐれた情緒なし。今、高年齢のほうがキレやすいと言われていたりもするが、そういう人はいなかったのか。長時間だろう実演を、みんな着席せずに受けたのかなー。
 ところで、“ngalu”フェス、各ショウともに複数のカメラで撮影されていた。

 林正樹 (2013年9月6日、2015年9月27日、2015年12月17日、2016年7月16日、2018年5月13日 、2019年1月7日、2019年10月6日、2019年11月19日、2019年11月21日、2019年12月18日、2020年8月28日、2020年10月29日、2020年11月14日、2021年4月19日、2021年9月26日)、すげえ。と、そのショウに触れながら頷き、唸り、感服する。

 丸の内・コットンクラブ、福盛進也(2018年1月7日、2018年4月7日、2019年1月5日、2019年6月14日、2019年12月18日、2021年11月25日)主宰、”nagalu”フェスの2日目。他は、 ヴァイオリンとヴィオラの吉田篤貴 (2016年11月10日、 2019年9月27日、2021年9月19日、2021年11月25日)、ギターの藤本一馬(2011年8月22日、2012年6月17日 、2013年4月19日、2019年7月6日、2019年12月18日)、チェロとダブル・ベースの須川崇志(2010年3月14日、2011年7月25日、2016年6月27日、2017年6月21日、2018年1月19日、2018年4月7日、2019年3月29日、2019年12月14日、2019年12月20日、2020年10月29日、2021年4月6日、2021年4月19日、2021年7月9日、 2021年9月19日)、ドラムの福盛進也 という面々だ。アンコール曲の際の吉田のヴィオラ音は少しエフェクターをかけているように聞こえ、それも魅力的だった。藤本はエレクトリック・ギターとガット・ギターを弾く。須川はチェロとベースの弾く比率はちょうど半々。チェロを扱う場合は当然、弓弾きが多くなる。福盛はいろんな叩き方をし、繊細な行き方を取るのに奔放だなーという感想を引き出す。

 そして、林は十全に、明晰にピアノに指をはわせ、サウンド総体を整え、あらぬ方向にも引っ張る。え〜えという変拍子を採用したり(今は4 拍子であるのにそうは聞こえにくいという作法に凝っているんだとか)、遊び心に富むメロディ構築をいろんな足かせを設けてするなど、彼はミュージック・サイエンティストといったような側面を持っているにも関わらず、一方では優美でロマンティックな部分を抱え続けているのがすごい。結局、オールマイティな才人という言い方に落ち着くのかもしれないけど。
 
 1曲めは結構インプロっぽく始まり、現代音楽みたいという重なりも見せつつ、さらに全員でさあーっとメロディアスな方向に流れていったりとか、構成も様式も自由自在。実はそうした林正樹グループの作品はまだ世に出されていない。いずれ“nagalu”からアルバムがリリースされる予定ではあるようだが。吉田はたゆたふ弦アンサブル作品『Echo』を吉田篤貴EMO strings meets 林正樹という名義でnagaluの兄弟レーベル“S/N Alliance”からこの秋にリリースしている。この晩は、そこに林が提供した曲「Dia dos Namorados」という曲も披露した。

▶過去の、林正樹
http://43142.diarynote.jp/201309121810294280/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201512271306411506
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201910070759405954/
https://43142.diarynote.jp/201911201705565775/
https://43142.diarynote.jp/201911230723444744/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
https://43142.diarynote.jp/202010300958115053/
https://43142.diarynote.jp/202011150954203089/
https://43142.diarynote.jp/202104211350032210/
https://43142.diarynote.jp/202109271035415011/
▶︎過去の、藤本一馬
https://43142.diarynote.jp/201109100857091783/
https://43142.diarynote.jp/201206210942136482/
https://43142.diarynote.jp/201304211111189539/
https://43142.diarynote.jp/201907071754237718/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
▶︎過去の、須川崇志
http://43142.diarynote.jp/201003191715113498/
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160627
http://43142.diarynote.jp/201706220952582448/
http://43142.diarynote.jp/201801200930278094/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201903301004154036/
https://43142.diarynote.jp/201912161052582124/
https://43142.diarynote.jp/201912220907352341/
https://43142.diarynote.jp/202010300958115053/
https://43142.diarynote.jp/202104071750586426/
https://43142.diarynote.jp/202104211350032210/
https://43142.diarynote.jp/202107100947566078/
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
▶︎過去の、福盛 進也
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/
▶︎過去の、吉田篤貴
https://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
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https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/

<今日の、おひさしぶり>
 かつてよくライヴ会場で会っていた、もしかしてジャズの趣味はかなりぼくのそれと似ているんじゃないかと思えたりもするA君に帰り際に声をかけられる。わー。こんなことでも、ライヴ状況が少し戻りつつあることを感じるか。彼は”nagalu”フェス4公演をすべて見るそう。昨日も会場にいたんだな。なるほど、このフェスは2公演以上を見る場合、割引制度が取られている。

 丸の内・コットンクラブ。今晩から3日間4ショウ行われるShinya Fukumori presents「nagalu Festival 2021」の初日の出し物となる。新型コロナ禍に入るおり日本に戻っていた福盛進也(2018年1月7日、2018年4月7日、2019年1月5日、2019年6月14日、2019年12月18日)はそのまま日本に滞在することを選び(ミュンヘンにはいまだ部屋があるらしいが、ちょうどいい機会と彼は東京に留まることを決めたよう)、日本の新しい価値観を持つミュージシャンたちと交友を持つとともに自己レーベルの“nagalu”と“S/N Alliance”の二つのレーベルを設立、意気盛んに周辺のアーティストの作品を送り出している。モノラル録音、2枚組であることを是とする“nagalu”レーベルの第一弾は福盛のセカンド作『Another Story』で、続く第2弾が佐藤浩一(2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日、2019年1月5日、2019年10月30日、2020年8月16日、2021年7月30日、2021年11月6日)の『Embryo』となる。“nagalu”にしろ“S/N Alliance”にせよ、CDパッッケージには凝りまくり(コスト、かかっているなと思わせる)で一度手にする価値ありだ。

 佐藤の『Embryo』はDisc1“Water”がソロ・ピアノ作で、Disc2“Breath”はチェロやエレクトリック・ギターとのデュオから弦カルテット入りのものまで大小の協調曲で構成されている。その両方を見せましょうというこのショウは佐藤にくわえ、電気ギターの市野元彦 (2014年10月22日、2016年7月11日)、ダブル・ベースの吉野弘志 ( 2019年7月25日)、ドラムの福盛進也 (ds) 、チェロのロビン・デュプイ、ヴァイオリンの伊藤彩と梶谷裕子、ヴィオラの吉田篤貴 (2016年11月10日、 2019年9月27日、2021年9月19日)がステージにあがる。みんな、カジュアルな格好をしている。

 デュプイとのデュオで始まり、前半は基本ギター、ベース、ドラムという陣容で演奏し、途中に入ると悠然とソロ・ピアノを3曲披露し(ピアノ美意識、あふれる。もう1曲聞きたかった)、後半は弦楽四重奏も入ったフルの陣容で、生理的にとても贅沢な演奏を聞かせる。それらに接すると、参加ミュージシャンの楽器音をうまく使っているとも頷かされよう。そして、この日初めて佐藤に触れる人だと、一体この人はどういう音楽遍歴を経てこういう静的ながらいろいろな含みや衝動を孕む表現を作るようになったのかと狐につままれる感覚を得るかもしれない。

 まずは自分の中にあるメロディやストーリーを十全に拾い上げ、それをソロという最小単位から8人によるものまで自在に、繊細に、優美に広げていく。水面下にいる悪魔がペロリと舌を出した感覚は実演のほうが透けて見えるか。なんにせよ、ジャズのあり方や考え方が変わってきていて、今日多様な表情を見せるようになっていると紛れもない事実をそれらはおおいに伝える。

 佐藤は慎ましやかに、MCは言葉少な。あれ、インタヴューするともっと喋るんだけどな。でも、語らずとも音楽で彼は雄弁に語っていたし、彼が抱える歌心と創意と野心はぞんぶんに受け取ることができたはずだ。

▶︎過去の、福盛 進也
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
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https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
https://43142.diarynote.jp/202111071551287545/
▶︎過去の、市野元彦
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
https://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
▶︎過去の、吉野弘志
https://43142.diarynote.jp/201907261128521107/
▶︎過去の、吉田篤貴
https://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
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https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/

<今日の、会場>
 1日1ショウであったため、場内は盛況。女性客も多かったかな。昨年から席の向かい合わせ配置をやめていたところ(=かなり間引きした席配置となる)、この晩は通常配置なり。お客が向かい合うテーブルには透明板が中央に置かれていたものの、なんか日常が戻ってきたと思わせられた? いや、そう思ったのはお酒をちゃんと注文できて、グビグビ飲みながらショウを楽しめたことだな。うれしい。帰り道のアフターのバーでは普段はあまり頼まないお酒を頼み、店主から驚かれる。それは、ライヴで受けた感興と無関係ではないだろう。

Crazy Ken Band

2021年11月23日 音楽
 中野サンプラザホール。CKB(2021年6月25日)、初のカヴァー・アルバム『好きなんだよ』リリースを受けてのツアー中の一つだ。場内が暗転しプリセットの音楽が流れただけで手拍子の波がわき、席を立ち始める。年齢層は高めのような気もしたが、固定客が多そうだ。曲によって出入りする3管や女性バックグウンド・ヴォーカル(リードを取る曲もある)を含む全11人に加え、二人のヴァイオリン奏者も加わる。歌謡曲っぽいのをやるのに、それは必要ですね。

 ほぼ邦楽を通っていないぼくは、知らない曲もいろいろあった。すぐに演じられて分かったのは、シュガー・ベイブとオリジナル・ラヴの曲。それらはアルバム中一番洋楽流れにある曲で、アルバムでは歌謡曲を中心に取り上げている。“パローレ、パローレ、パローレ”というリフレインで知られるアラン・ドロン&ダリダの1973年大ヒット曲「甘い囁き」(もともとはイタリア曲で、そのフランス語ヴァージョン)もねっちょり披露したが、その日本語ヴァージョンがあるの知らなかった。

 一方で、「タイガー&ドラゴン」(横山は、自分たちの将来を作った大切な曲というようなことを言っていた。その前から、ぼくは大きな評価を受けていたと感じるけど)のような自分たちの曲もやるが、ぼくはカヴァーと彼ら自作の差異をそれほど覚えず。ぼくが歌謡曲やKCBの楽曲に疎いこともあるだろうが、それは横山たちの確かな咀嚼手腕を示していたはずだ。とともに、原典アーティストに対する愛が何気に見えるよなあとも頷く。 

 そして、今回一番印象に残ったのは、横山健のぶっとい歌声。喉、強そう。やはり、5ヶ月前に見たライヴの際は喉を少し痛めていたのか。わりとずぼうっと一本調子的に歌うという感じも受けるのだが、それもなんか男っぽい風情につながっていると思った。

▶︎過去の、CKB
https://43142.diarynote.jp/202106262033486580/

<今日の、うひゃひゃ>
 終演後、一緒に見たラッパーと流れる。公演の開演は17時、でも観客は一杯で、こんな時間の開始ですごいなーと感想を出したら、今日は祭日じゃないですかと言われる。へ? 彼、長女が来年から小学生で、大学までのお嬢さん学校をお受験したという。第一希望校は、3日連続で親子面接があったらしい。かなりこぎれいにしたってサ。髭は伸びていたが、髪型はまだ落ち着いたまんま。オマエ職業はなんてしたのと問うと、さすがラッパーとはしなかったそう。いろいろなNG要件を、17歳年下のより高学歴な奥さんからきっちり学ばされたらしい。2歳の男の子のほうも、奥様はそうするつもりだそう。

 不世出のジャズ・リード奏者であるジョン・コルトレーン(1926年9月23日〜1967年7月17日)を題材に置いた2016年制作米国ドキュメンタリー映画『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン(原題:THE JOHN COLTRANE documentary / CHASING TRANE)』の試写を、ヒューマントラストシネマ渋谷で見る。12月3日より、全国ロードショー公開される。息子のラヴィ・コルトレーン(2013年8月18日、2014年5月22日、2015年9月5日、2016年5月26日)がコンサルタントとしてクレジット。なお、約43分のボーナス映像が付いたBlu-ray作品も本国では商品化されている。

 故人の残された映像や写真、そして様々な所縁の人たちの証言映像をいろいろと組み合わせるという、伝記映像の王道的手法が取られる。監督はジョン・レノン(2006年『The U.S. vs. John Lennon』)他の伝記映画を作っているというジョン・シェインフェルド。当初はまあ飛び抜けた出来のドキュメンタリー映画ではないという感じで、ゆったり見ていた。それは、ジョン・コルトレーンの独白を俳優のデンゼル・ワシントンに語らせるという、ぼくには生理的にフェアじゃないと感じさせる手法が見られたこともあったか。

 だが、やっぱり引き込まれ、100分弱の映画を見切ってしまったナ。やはり、それはひとえにコルトーレーンのすごさであり、ぼくが彼の歩みを熟知していなかったためもあっただろう。彼の生い立ち(コルトレーンって子供のころから、同じ顔つきをしていたんだな。基本、目の大きなハンサムさんではあると思う)、20代は酷いヤク中(お酒も大好きだったみたい)の極みでやはり薬好きのマイルス・デイヴィスから首を切られた(映画はマイルス・クインテットに迎えられたところから映画は始まり、その後幼少時の話に戻り、その後は時系列に語られる)こと、彼は2度結婚しているが奥さんにはともに娘がいてコルトレーンは継父となったこと(ピアノ/ハープ奏者のアリスは2番目の奥さんとなる。アリスとはラヴィとオランというサックスを吹く2人の息子にも恵まれた。前妻とも男の子にめぐまれたよう。息子だけでなく、2人の継娘も映画に登場する)など、へえっというネタもいろいろ出てくる。流される音楽は、すべてコルトレーン絡みのものだ。

 エスタブリッシュされた後のロードアイランド州のわりかし邸宅における子供たちとのやりとりを含む個人撮影映像など、珍しい映像もいろいろ。1966年に中平穂積が録ったニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでの演奏シーンも出てくる。ソニー・ロリンズ(格好いい。2005年11月13日)、マッコイ・タイナー(2003年7月9日、2008年9月10日、2011年1月12日)、ベニー・ゴルソン(2013年5月15日、2014年9月7日)、ジミー・ヒース、レジー・ワークマン、ウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)、ウィントン・マルサリス(2000年3月9日、2019年5月28日)、カマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日、2019年9月2日)らジャズ・ミュージシャンがいろいろ出てくるなか、カルロス・サンタナ(2013年3月12日)、ザ・ドアーズのドラマーのジョン・デンスモア、コモン(2004年6月11日、2005年9月15日、2015年9月23日)などジャズ好きの非ジャズ側にいる担い手も引っ張ってきているのは、さすが今の映像であると思わせる。あと、元大統領のビル・クリントンも度々発言する。それにしても、皆かっこういい、なかなかの発言をしていて、それはコルトレーンの偉大さこそとも思わせよう。

 晩年、よりスピリチュアルに崇高な姿勢のもと、あっち側の演奏を見せるようになった時期をどう描くのかと、途中からからそわそわしたが、直接的な音楽の変化には触れずに、なるほどああいう描き方をしましたか。ふむふむ。日本/日本人を巧み介している、とだけ書いておこう。

▶過去の、ラヴィ・コルトレーン
http://43142.diarynote.jp/?day=20130818
http://43142.diarynote.jp/201405231458349566/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
https://43142.diarynote.jp/201606061404591475/
▶︎過去の、マイルズ・デイヴィスを題材とする映画
https://43142.diarynote.jp/201701051022179600/
https://43142.diarynote.jp/202008062131405684/
▶過去の、ロニー・ロリンズ
http://43142.diarynote.jp/200511130413390000/
▶過去の、マッコイ・タイナー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200809111754413101/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
https://43142.diarynote.jp/202003120731162119/ 訃報
▶過去の、ベニー・ゴルソン
http://43142.diarynote.jp/201305160913534910/
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▶︎過去の、ジミー・ヒース
https://43142.diarynote.jp/202008062131405684/ 映画での証言
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
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▶︎過去の、ウィントン・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
https://43142.diarynote.jp/201905290952324516/
▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶︎過去の、シンディ・ブラックマン・サンタナ
https://43142.diarynote.jp/201303211531189619/
▶過去の、コモン
http://43142.diarynote.jp/200406130120280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509241127563839/

<今日の、どうして?>
 原稿作業で ゔぁいぶらふぉん、と打って変換したら、モデルナ と一発目に出てきた。なぜ、分からん。

 青山・月見ル君想フ。同所今回のパラシュート・セッション出演者は、ベーシストとドラマーの単位×2。さらには、そこに別の物差しで大地に立っているようなインディペンデントな音楽家であるOLAibiが絡むという出し物ナリ。リズム・コンビの1組はレピッシュのtatsuと中村達也(2003年12月18日、2005年4月26日、2005年7月30日、2007年4月21日、2008年5月21日、2010年5月19日、2011年4月1日、2015年12月14日 )。もう一つは、かわいしのぶ(2007年7月22日、2010年12月16日)と吉田達也(2006年1月21日、2013年2月11日、2019年7月16日、2020年1月13日、2020年2月19日)。男性陣はみんな“タツ”がつく(笑い)。

 1部は、この2組で演奏。まず先発を決めるのに達也どうしで、ジャンケンをするがあいこが続き、結局1曲目はドラマー二人だけの演奏となる。続く、2曲目はエレクトリック・ベースのデュオ。あらら、出演者の2組が生演奏で1曲づつバック・トゥ・バックし合うというパラシュート・セッションの趣旨なんかあっちほいという感じで、両チーム組んず解れつ……。その後、本来の単位で2曲づつ即興で演奏を交換しあう。CUPRUMはどこか含みを持たせた行き方(中村はマレットも用いて少し変則的なセットを叩いていた)を取り、忍達のほうはどちらかと言うとパワー疾走系のノリだったか。だが、その後はまたドラマー二人の一緒の演奏にベーシストがそれぞれに重なったりもし、最後のほうは4人で転がっていく。

 休憩をおいて、OOIOO(2000年2月16日、2003年10月24日、2008年5月24日)のドラマーだったこともあるOLAibi(その2003年と2008年のライヴの際にはいたのではないか)のソロ・パフォーマンス。サンプラーやパッドやエフェクトのかかったヴォイスなどからなるそのめくるめく総体は素晴らしく個性的かつ魅力的。地域や時代性をぽっかり超えた先に、彼女の今というしかないビート表現を作り上げていて、もう見いいってしまった。

 そして、そこに吉田を筆頭にぽつりぽつりと加わり、結局はOLAibiがリードするところもあった5人の怒涛セッションと相成る。その際、OLAibiは自分の持ち場から離れ、ドラマー双方のシンバルやタムを彼らと一緒に叩いたりもした。

 当初、想定していたものとは違うのものとなったのではいか。でも、ことが流れるまま臨機応変、決め事あまりなしで個と我を出し合う素の重なりが感興を生まないはずがない。月並みな言葉で言うならやはり“体験”であったかな。5人はアンコールにも答え、その際にドラマー二人は、相手のドラムを叩く。なんか、楽しいやね。それから、tatsuはまっすぐに進行MCをしていて、あらら人間できていそうとも思わせた。それ、やんちゃに振る舞う中村との対比もあるのだが。

▶過去の、中村達也
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm 映画「バレット・バレー」 11月19日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm ロザリオス
http://43142.diarynote.jp/200504301042210000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050730 ロザリオス
http://43142.diarynote.jp/200704251227010000/
http://43142.diarynote.jp/200805220853310000/
http://43142.diarynote.jp/201005211249422393/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110401
https://43142.diarynote.jp/201512151505033565/
▶︎過去の、かわいしのぶ
https://43142.diarynote.jp/200707232253550000/
https://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
▶︎過去の、吉田達也
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/
https://43142.diarynote.jp/201907180809371988/
https://43142.diarynote.jp/202001141031439634/
https://43142.diarynote.jp/202002201103277008/
▶︎過去の、OOIOO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm ステレオラブ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200805281150320000/
https://43142.diarynote.jp/200805281150320000/

<今日の、爆上がり>
 午前中に、故ロジャー・ロラウトマンの原稿を書きあげる。ぼくにしては、時間がかかったほうかな。ここんとこ、いろんな音や映像に触れていたのだが、改めてすんごいファンカー/才人であると思わずにはいられず♡。書いていて、どんどんぼくの中での評価がデカい像を結び、アドレナリンが出た。ギター・マガジン12月売り号用の原稿だ。同誌はここのところ、ファンク・ギター奏者の特集を組んでいて、ロジャーはその3回目となる。
▶過去の、ロジャー亡きあとのザップ
http://43142.diarynote.jp/201002150514277396/
http://43142.diarynote.jp/201104270528378826/
http://43142.diarynote.jp/201301211143292478/
https://43142.diarynote.jp/201508140947547631/
https://43142.diarynote.jp/201912310735138126/

KW50「KYLYNが来る」

2021年11月13日 音楽
 9月から帯で各所で行われている、かわさきジャズのメイン企画となる出し物と言っていいのかな。川崎ミューザシンフォニーホール。今年、ギタリストの渡辺香津美(2004年12月15日、2010年9月1日、2010年9月5日 、2010年11月20日、2012年3月20日、2016年6月4日、2016年9月4日、2017年9月2日、2018年4月6日、2013年8月1日、2021年7月24日)はアルバム・デビュー50周年となり<KW50>と題し、複数の公演が持たれてきた。

 公演タイトルにある『KYLYN』とは渡辺香津美とキーボーディストの坂本龍一(2011年8月7日、2012年3月21日、2012年8月12日、2013年8月11日)の交流を軸とする面白がりフュージョン・プロジェクトで周辺の奏者が参加し、矢野顕子(2004年7月20日、2008年8月3日、2008年12月14日、2009年8月19日、2009年9月4日、2009年12月13日、2010年12月12日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年8月21日、2013年8月11日、2013年11月30日、2014年8月7日、2015年8月20日、2016年9月15日、2017年12月10日、2018年8月27日、2019年4月26日、2019年4月28日)や高橋幸宏(2009年10月31日、2011年8月7日、2012年8月12日、2013年8月11日、2017年7月14日)や清水靖晃(2000年12月16日、2006年9月26日、2010年2月27日、2011年6月6日、2015年5月24日)らもそこに名を連ねていた。その流れもあり、渡辺はYMO(2011年8月7日)のサポート参加につながったとも言えるだろう。

 1979年にスタジオ録音作と2枚組ライヴ・アルバムを出したKYLYNプロジェクトについて、ジャズという足かせから跳ぶことことを後押ししたものであり、心の嵐を象徴するような存在であると渡辺は捉えており、その後の彼のしなやかな活動を促した同プロジェクトの意義を今のノリと仲間たちで蘇らせることができたなら……そんな意図を、この公演は持つ。面々はKYLYN関連曲に加え、その前後の曲をオーガニックに開いた。

 協調者は、ベースの井上陽介(2006年1月21日、2008年8月19日、2009年4月1日、2010年12月22日、2012年8月24日、2021年4月8日、2021年9月7日)とパーカッションのヤヒロトモヒロ(2007年11月14日、2009年2月8日、2009年10月12日、2010年7月22日、2011年10月26日、2012年6月13日、2014年2月9日、2014年2月22日、2014年6月16日、2015年8月31日、2019年10月19日、2019年11月21日)、ギターの井上銘(2016年6月27日、2017年6月21日、2019年1月21日、2020年1月19日、2021年6月24日、2021年8月14日)、トロンボーンの村田陽一(2005年1月7日、2006年1月21日、2010年3月9日、2011年12月20日、2012年9月8日、2014年12月14日、2015年9月27日、2016年12月11日、2017年12月5日、2018年6月8日、2018年9月2日、2019年4月26日、2019年4月27日、2019年4月28日、2020年10月5日、他)、そしてアルト/ソプラノ・サックスの本多俊之。彼らは曲により、出入りがある。

 また2部では、ピアノの大西順子(1999年10月9日、2007年9月7日、2010年9月30日、2010年12月22日、2011年2月25日、2011年8月6日、2015年9月6日、2018年2月8日、2019年2月17日、2018年2月8日、2021年4月8日、2021年9月7日)と、シンガー・ソングライター/ギタリストのReiが加わるパートもある。アルバムを聞くと現代ビート・ポップをやっているが、Reiはこんな感じの担い手なのか。彼女はスタンダードの「ストレイト・ノー・チェイサー」と「ユニコーン」を演奏したが、一時はマジにクラシック・ギターをやっていたらしいギター技量はなるほど達者だ。あと、声に存在感のある人であるとも気づかされる。アンコールは全員で、『KYLYN LIVE』にちょこっと入っていたジョー・ザヴィヌル(2003年10月8日)がキャノンボール・アダリィに書いた「ウォーク・トール」を演奏する。その際、ReiはフライングVを抱えて出てきて、もろに1970年代前半のブルースに影響を受けたUKロック・ギタリストのような演奏を聞かせた。

 本公演はKYLYNのドラマーを務めた村上秀一にもトリビュートする意図を持っていたが、ここではパーカッション奏者にしたのは、クラシック音響を第一義とするこのホールの特性に合わせたためだ。ヤヒロはいろいろな技とともに好演していたと思う。また、普段はダブル・ベースを弾く井上だが、この晩はエレクトリックを弾く方が多かった。なんか、うれしそうだった。本多はこの出演者の中で唯一のKYLYNのオリジナル・メンバーだが、何気に若々しかったな。

 ときにトリッキーな、よどみないフレイズを繰り出す渡辺香津美の“ザ・ギタリスト”の様に触れながら、ぼくは一人の故人を思い出してもいた。当時、坂本龍一のマネージャーを務め、渡辺がそのころ所属していたピットイン・ミュージックにもとても近い関係にいた、コーディネイター/プロデュサーの生田朗さん。当然、彼がいなかったらKYLYNプロジェクトはなかったし、スライ&ロビー(1999年12月6日、2003年7月25日、2009年3月7日、2011年11月4日、2014年10月10日、2018年9月18日)と、マーカス・ミラー(1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日、2018年5月16日、2018年5月24日、2019年1月3日)&オマー・ハキム(2006年4月16日、2010年9月1日、2010年9月5日、2013年3月8日)という2組のリズム・セクションを起用したニューヨーク録音作『MOBO』(ポリドール、1983年)もありえなかった。音楽に超博識で、文章家としての才能も持っていた彼とは新卒でなった雑誌編集者の頃に面識を得た。それほど親しくはしていなかったが、やめると聞いてまっさきに連絡を取ってきて、レコード会社に行きたいなら紹介できるよと言ってきたのは彼だった。その優しさに感謝するとともに、その広くもシャープな音楽観に、ぼくはどこかで影響を受け続けていると思う。

▶過去の、渡辺香津美
http://43142.diarynote.jp/200412212102130000/
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https://43142.diarynote.jp/201804071041255956/
https://43142.diarynote.jp/202107270732317945/
▶︎過去の、井上銘
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
https://43142.diarynote.jp/201706220952582448/
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
https://43142.diarynote.jp/202106251409441425/
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▶︎過去の、井上陽介
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▶︎過去の、高橋幸宏
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http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
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▶過去の、清水靖晃
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200609271445280000/
http://43142.diarynote.jp/201002280943251477/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110606
https://43142.diarynote.jp/201505260835591800/
▶︎過去の、YMO
https://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
▶︎過去の、ジョー・ザヴィヌル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
▶過去の、スライ&ロビー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200903122225149470/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111104
http://43142.diarynote.jp/201410201120545545/
https://43142.diarynote.jp/201809191422205248/
▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/
https://43142.diarynote.jp/201805201310351671/
https://43142.diarynote.jp/201805250930363191/
https://43142.diarynote.jp/201901041047462042/
▶過去の、オマー・ハキム
http://43142.diarynote.jp/200604141318090000/
http://43142.diarynote.jp/201009030955539620/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/201303110415585115/

<昨日は、久しぶりにオール>
 急遽の飲みをかねた打ち合わせのあと、一人で馴染みのバーへ。そしたら、久しぶりに仲良しさんと会う。彼女、このあと別の店に行くというので付き合う。あ、その前に誘われてビール付き深夜ラーメンしちゃったか。そんなことするの、いつ以来か。おごってくれた。その後に行ったコーヒーでも有名なお店は入ろうとすると、店主がちょっと待って、検温するまで店の外で待ってください、と言う。その指針、賛成。気が弱いので実行できないんじゃないかとは思うが、ぼくも店をやっていたらそうしたくなるか? 1時半すぎ、知人が久しぶりに開いているDJパーティをやっている代官山へ向かう。ぼくはすぐにタクシーを拾えたが、渋谷駅南口のタクシー乗り場には花金とはいえ、けっこうな列ができていた。運転手さんがそれを見て、驚いていた。ぼくも驚いた。

<Fly With The Wind>

1 Fly Away / Take 6 ‎– 『So Cool』収録(Reprise,1998年)
2 Fly With Wings Of Love / Joe Sample ‎–『 Rainbow Seeker』(ABC,1978)
3 Soft Winds / Andy Brown - 『Alone Time』(Andy Brown / Muzak,2020)
4 ジェットのサンバ/中村善郎 −『ルミノーゾ ~僕は大地に疾走する輝きを見た~』(ソニー、2001年)
5 With The Wind/渡辺貞夫− 『Sweet Deal』(ワーナー、1991)
6 Mr. Cool Breeze / Donald Harrison ‎–『Free To Be』(Impulse!, 1999)
7 The Windjammer / 小沼ようすけ ‎– 『The Three Primary Colors』(ソニー、2004年)
8 Blue Skies / Cassandra Wilson ‎– 『Blue Skies』 (Bamboo/JMT,1988年)
9 Jet Samba (Samba do Avião) / Eliane Elias – Paulistana (Blue Note,1993)
10 ビヨンド・ザ・ホライズン/椎名豊 – 『ムーヴィン・フォース』(アリオラ・ジャパン、1994)

 へえ〜、こんなん。1980年代に有数の影響力を誇ったUKバンドであるザ・スミスの音楽をふんだんに使い、ザ・スミスが生きた時代の青春群像を描く2021年米国/英国映画が、彼らの1987年ヒット曲のタイトルを掲げたこの作品だ。脚本も書き、監督もするのは1969年生まれの米国人であるスティーヴン・キジャック。彼はザ・ウォーカー・ブラザーズ、ジャコ・パストリアス、Xジャパンなどのドキュメンタリー映画を作っている人だそう。フロント・マンだったモリッシーは、この映画について肯定的な態度を取っているようだ。

 時は1987年9月、ちょうどザ・スミスの解散が報道された日。場は、コロラド州のデンヴァー。そのニュースにショックを受けて、ラジオ局(映画では、ヘヴィ・メタル局となっている)に行きDJを銃で脅してザ・スミスの曲を延々かけさせるという事件が実際に同地で起こり、映画はそのあまり知られることがなかった出来事を元に、その一夜の模様を劇化している。なお、撮影はニューヨーク州でされたようだ。

 甘酸っぱい。レコードやカセット・テープなどは出てきても、携帯は出てこない。主要な出演者は、高校を卒業した男女5人。レコード屋やスーパーで働く者、マドンナ(2005年12月7日)のワナビー、陸軍やロンドンの大学へ行くことになっている者……。そんな彼らの所作は、あのころのもやもやした記憶を引き出すか。あちらでは、映画「アメリカン・グラフィティ」のオルタナティヴ版という評も出たようだ。

 そして、時にドキュメンタリー映像的な手法で、ザ・スミスのインタヴュー映像や写真がインサートされる。それは、ある種のリアリティのようなものを加えよう。登場人物の名前やいくつかの場面設定が彼らの歌詞から取られている場合もある。また、ザ・スミスと対比させるように、メタル/ハード・ロックや産業ロックの担い手の名前がセリフに出てきたりもする。

 実のところサウンド(とくにビート)が凡庸すぎて、ぼくはザ・スミスが苦手だった。彼らを送り出したのはラフ・トレイドだったが、同レーベルのなかで一番違和感を覚えたりもした? 字幕で歌詞の訳を見て、ロックと言われるものの中ではかなり上等だろう日々の機微を綴る歌詞がつけられいる(政治的とも言われたが、その部分は感じなかった)のを認識できたが、やはりその総体はロックとしてぼくには魅力薄に映る。これが、もっとザ・スミスに入れ込む人だと感興はもっとデカいんだろうな。1980年代中期、まだIT要件が入り込む前、音楽が若者にとってトップ級の娯楽であり、教科書であった時代のおとぎ話ともいえるか。ありでしょう。

 そういえば、劇中には米国映画『プリティ・イン・ピンク』の名前がセリフで出てくる。それ、1986年2月に本国で封切られた高校の卒業プロムを大きな題材におくヒット青春映画で、そこでは当時伸長していたカレッジ・ミュージック・チャートに入るような担い手の音楽が使われていた。エコー&ザ・バニーメン、オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク、スザンヌ・ヴェガ(ちょうどデビュー作を出して少したったころ。1986年1月にぼくはNYのヴィレッジで初々しい彼女にインタヴューした。あ、ぼくも初々しかったか)ら、新潮流アーティストを揃えたサウンドトラックはA&Mから発売されたっけ。『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』でマドンナ・ワナビー役の女性はワーゲンのビートルに乗っているが、『プリティ・イン・ピンク』の主人公はワーゲンのビートル派生車種であるカルマン・ギアに乗っていた。そんなつながりから本映画は『プリティ・イン・ピンク』へのオマージュを持つと指摘できるんじゃないか。監督のキジャックも年齢的に『プリティ・イン・ピンク』にちょうどハマった世代なのではないのか。

 京橋・テアトル試写室(入っているビルの名前が変わっていた)、12月3日より、全国ロードショーとなる。

▶︎過去の、ザ・スミスにいたジョニー・マー
https://43142.diarynote.jp/200910260256339238/
▶過去の、マドンナ
http://43142.diarynote.jp/200512091117210000/

<今日の、ざんねん>
 母親のところにご機嫌伺いに行ったあと、試写場に向かったのだが、少し早く着いたので散歩する。近くになんと警察博物館というのがあって、無料だったので入ってみる。昔だったらケイサツと聞いただけで拒否感山ほどというタイプの人間であったが、物事を十把一絡げで見るのはよくないと考えるようにもなっているので、抵抗感は感じず好奇心に従う。6階建ての建物を用いるが、見る物あまりなしで5分で失礼した。税金の無駄ではないか?

 青山・月見ル君想フの名物企画、パラシュート・セッションがついに100回目になるんだそう。客席フロアに出演者2組が向かい合うように位置し、交互に曲を繰り出しあう。そして記念すべき今回の出演者は、その8年前となる1回目の組み合わせで行われた。このアイデアを出したF.I.B JOURNAL(2009年10月18日、2014年7月23日、2020年11月1日)と、活動休止中のZA FEEDO。ZA FEEDOは、今回だけのためにわざわざ再結成されたという。

 F.I.B JOURNALは語り調肉声とときにギターの山崎円城、ドラマーの沼直也(2000年9月14日、2001年2月15日,2003年3月6日、2009年10月18日、2011年6月5日、2014年7月23日、2020年11月1日)の二人の単位に、ダブル・ベースのLittle Woody(2020年11月1日)が加わる。彼はF.I.B JOURNALのヴォルアル面にも貢献しているようだ。

 一方、シンガー(少し小鍵盤や声質をいじるコントローラーも扱う)の沖メイ(2020年1月19日)とドラマーの松下マサナオ(2013年8月22日、2017年6月21日、2017年7月8日、2020年1月19日)らが組んでいたZA FEEDOは、ベース/鍵盤ベースの中西道彦(2020年1月19日)とギターの齋藤拓郎(2020年1月19日)、さらにキーボードの和久井沙良(2021年4月25日、2021年9月23日)とギターの小金丸慧(2015年7月12日)も加わる。

 客は客席フロアの後方とステージ上に位置し、曲が交換しあう様を身近に触れることが可能。けっこう切れ目なく曲は交換される。そうかと発見したのは、円城は曲によってはサンプリング音みたいなの(たとえば、トランペット音)を効果的にインサートするのだが、それはサンプラーを介してではなく、モノラルのテープ・レコーダー(に見えた)を用いて入れていた。それ、側で見ていて分かった。最もシンプルなメロトロン的なもの? 彼は10種類ほど異なる音の入ってるだろうカセット・テープを横に置き、選んでテレコに入れていた。また、彼の歌は英語と日本語の両方を用いるポエトリー・リーディング的とも言えるものだが、横にはボブ・ディラン詩集も置いてあった。御大の歌詞を語る場合もあるのだろうか。

 広がりと今っぽさを持つヴォーカルものを披露するZA FEEDOはちゃんとリハをしてきているな。うち1曲は、アース・ウィンド&ファイア(2006年1月19日、2012年5月17 日)の「セプテンバー」のカヴァーを披露。テンポ変換に凝った、らしいヴァージョンになっていた。ほんと、ワクワクできるいい曲ね。100回お祝いのキブンも、それで出したか。かつてインディ・ロック好きの米国人に、「セプテンバー」は「アメリカ人がハレを感じる最たる曲だ」と言われたことがある。なるほど、確かに映画やTVでも華やかさを出すときけっこう使われているはずだ。

 一方の、F.I.B JOURNALは渋く、ジャジーかつ少しグルーヴィに。ビートニクに対する共感もあるかと、今回初めて気づいた。とかなんとか、わきあいあいに進みつつ、両者の美点も浮き彫りとなる曲と気持ちのやりとり……。とにかく、ミュージシャン/観客の位置どり、曲を繰り出す機微など、通常の公演とは異なる感興を受けるのは間違いない。あと、ハコが普通に音楽を提供していてもつまらないと、独自企画を楽しんで提供して感じもいい。アンコールは、両者一緒のセッション曲だった。

▶過去の、F.I.B JOURNAL/山崎円城
http://43142.diarynote.jp/200910201116264673/
https://43142.diarynote.jp/201407261219061857/
https://43142.diarynote.jp/202011021241074509/
▶過去の、沼直也
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm phat (オーガニック・グルーヴ)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm phat (オーガニック・グルーヴ)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm phat
http://43142.diarynote.jp/200910201116264673/
https://43142.diarynote.jp/201106131248013805/
https://43142.diarynote.jp/201407261219061857/
https://43142.diarynote.jp/202011021241074509/
▶︎過去の、Little Woody
https://43142.diarynote.jp/202011021241074509/
▶︎過去の、沖メイ
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
▶︎過去の、松下マサナオ/Yasei Collective
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
https://43142.diarynote.jp/?day=20170621
https://43142.diarynote.jp/?day=20170708
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
https://43142.diarynote.jp/202104270842552952/
▶︎過去の、中西道彦
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
▶︎過去の、齋藤拓郎
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
▶︎過去の、和久井沙良
https://43142.diarynote.jp/202104270842552952/
https://43142.diarynote.jp/202109241712255724/
▶︎過去の、小金丸慧
https://43142.diarynote.jp/201507190815468497/
▶過去の、E.W.&.F.関連
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm フィリップ・ベイリー
http://43142.diarynote.jp/200601271855390000/ E.W.&.F.
http://43142.diarynote.jp/200803051002560000/ モーリス・プレジャー
http://43142.diarynote.jp/200804030045430000/ アル・マッケイ
http://43142.diarynote.jp/200910021138591223/ ラリー・ダン シェルドン・レイノルズ
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/ フィリップ・ベイリー モーリス・プレジャー
http://43142.diarynote.jp/201109171048385669/ アル・マッケイ
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/ モーリス・プレジャー
http://43142.diarynote.jp/201209191235365909/ アル・マッケイ
http://43142.diarynote.jp/201301051329276221/ アル・マッケイ
http://43142.diarynote.jp/201205301252113538/ E.W.&F.
http://43142.diarynote.jp/201412011305372891/ アル・マッケイ
https://43142.diarynote.jp/201602290953239524/ アル・マッケイ

<今日の、パラシュート>
 けっこう大きなパラシュートが天井にかけられ、会場を上方から覆う。セットするの、大変だろうなあと思わずにはいられない。まずこのパラーシュトは何か美術的効果の材料になるかもしれないと預かっていんだそう。そして、この生演奏のバック・トゥ・バックをやるという企画を始める際に、“パラシュート・セッション”と名付け、ディスプレイするようにしたのだとか。へえ。実はパラシュートを天井につけると、吸音材的な役割をはたして場内音が少し良くなるそうだ。同企画は、もちろん今後も続く。11月中に、103回までブッキングされている。

 今年トップ級に尊いアナログ2枚組奇特盤『円谷幸吉と人間』(レフトサイド)を出した花咲政之輔(2021年3月1日)率いる太陽肛門スパパーン、そのレコード発売をフォロウするライヴ(2度目となるよう)を見る。音部屋スクエア高田馬場。

 ステージがそれなりに広い会場で、奏者たちがずらりあがる。以下、ネットに出ている構成員をコピペする。ヴォーカル、ギター、ピアノ、ラップの花咲政之輔(2021年3月1日I)に加えて、アルト・サックスの林栄一(2004年10月10日。2005年12月20日。2009年7月19日、2011年6月23日、2016年9月27日、2018年4月8日。彼の申し出でゲスト入りしたようで、全曲で加わった)、ノイズと少し声のヘアスタイリスティックスaka中原昌也(2005年4月26日)、ドラムの藤井信雄(2001年9月21日、2004年8月12日、2011年7月31日、2014年4月3日、他)、ソプラノ・サックスとトロンボーンとラップの中尾勘二( 2005年11月28日)、エレクトリック・ベースの中條卓(2000年7月29日、2001年12月9日、2001年12月22日、2003年6月22日、2007年1月26日,2010年1月12日、2012年10月10日、2014年9月2日、2015年10月3日、2016年11月18日、2019年5月21日)、ドラムの若杉大吾、ギターの平井庸一(2021年3月1日)、ギターとコーラスと制作の安田マッスル善貴、ダブル・ベースと制作の溝辺隼巳、コーラスと鍵盤と制作のこばゆみ、トランペットとフリューゲルホーンのMr.ラマーズ、トランペットの加藤直喜(2013年2月3日、2014年1月18日)、トランペットの関口綾華、リードとフルートの旧橋壮、トロンボーンの高橋保行(2006年7月3日、2010年1月9日、2012年7月1日、2017年1月9日、2017年9月13日)、ベース・トロンボーンの小泉邦男、コーラスとヴァイオリンの門平卓也、チェロの三木哲、ヴィジュアルと制作の楫野裕、パフォーマンスと制作の野崎芳史、パフォーマンスのvoid、パフォーマンスのアラレ王、パフォーマンスの小池野豚、制作の吉田王子(制作)。

 まず、開演時間17時半ちょいに花咲政之輔が一人出てきて、何故に我は新作を作り、太陽肛門スパパーンというバンドを組んでいるかというのをまっすぐに、少しとっちらかりつつ話す。そこには、バカヤロー精神と諧謔が入る。

 彼は上尾出身で、その高校時代だかには友達とフォーク(かぐや姫の曲をやっていたという発言もあったか)をやっていて、そのときの3人(と言ったか?)、花咲、安田、門平の3人(2生ギター、ヴァイオリン)でフォーク調のものを2曲やる。朗々とした歌声、1曲はカヴァーと言っていたような気がするが、コード進行はしみったれない広がりを持つもので、フォーク嫌いのぼくでも平気だった。

 そして、大型バンド・セットに移る。出てきた6割の男性奏者たちはそのビリーフ姿(花咲をはじめ、ステージ上で服を脱ぐぬぐ者も何人もいる)。わあ、これは変というか、酔狂。肌を出さない奏者のなかでは白い割烹着と白い帽子をつけた者もいる。それ、当初は女性奏者のいでたちであったようであり、ブリーフ姿をするのはグループ結成時からの流儀のようだが。

 そして演奏が始まれば、イロものとはまったく離れる、あまりに立派な音楽ジャンル横断性〜一番ジャズ語彙は用いられるか〜や歌心や独創性を持つ鋭敏な大型集団表現が百花繚乱という感じでぐいぐいと押し出される。イエイ、にならないはずがない。いやあ、みんな立派、あっぱれ。複雑怪奇な曲が鮮やかに開かれていく。新作の中で異彩を放つファンキーきわまりないラップ曲「東京おらんピック」も十全に繰り出され、身体が揺れる。そのとき、林栄一がとてもうれしそうな笑顔を見せていたなあ。それらの集団表現において効いていたのはコーラス陣。あと、中尾の寄れたサックス・ソロや情実ラップにおける実力者ぶりも印象に残ったし、高橋だけは他の管ソロの際に合いの手音を入れていたのだが、それも良い印象を残した。藤井の演奏も何気に格好良かったなあ。あ、ブルース曲での花咲のピックを使わないギター・ソロは風情があった。

 曲によっては、ステージ前と客席の間のスペースにパフォーマーたちが出てきてふりをつけたり舞踏したり寸劇したり、パンクな所作を行ったり。わはは。こういう記載を見て、渋さ知らズ((2004年9月1日、2005年12月22日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月3日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日、2015年11月23日)のことを思い出す人もいるかもしないが(フェスとかで一緒になったことなくはなさそう)、スパパーンのほうが希少性があり、もっと吹っ切れているのは間違いない。露悪的すぎると思わなくもないが、それも表現の自由を貫く所作。しょーもねえ常識なんてあっちへほい、なのだ。

 休憩あり。その際、長野フェスから戻ってきたという中原昌也が装置(コントローラーとアナログ・シンセサイザーが並べられていたか)をセッティング。彼の10分強のソロ・パフォーマンスから2部は始まり、その後は彼も集団表現に加わる。

 最終曲は、チャールズ・ミンガスの祭祀的グルーヴィ・チューンである「ベター・ギット・イット・イン・ユア・ソウル 」。これは全員がソロ・パートを与えられ、花咲はランダムに思うまま奏者を指定して、総体をコントロールしていく。普通、これだけ人数がいて宴もたけなわになると一人ぐらいはソリスト指定を飛ばされてしまったりもするところだが、花咲はそんなことはなかった。クール! そうしたところにも、彼の秀でたリーダーとしてのあり方は出ていたはずだ。意外にサクサク進んだようだが、終演は21時を回っていた。

▶︎過去の、花咲政之輔
https://43142.diarynote.jp/202103031127296987/
https://43142.diarynote.jp/202108061030345477/
▶︎過去の、林栄一
http://43142.diarynote.jp/?day=20041010
http://43142.diarynote.jp/200512231956580000/
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201107020946473690/
http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/
https://43142.diarynote.jp/201804090916338526/
▶︎過去の、ヘアースタイリックス
https://43142.diarynote.jp/200504301042210000/
▶過去の、藤井信雄
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200408120238330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110505
https://43142.diarynote.jp/201404050818444425/
▶︎過去の、中尾勘二
https://43142.diarynote.jp/?day=20051128
▶︎過去の、中条卓
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm シアターブルック 7.29フジ・ロック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm シアターブルック+マルコス・スザーノ12/22
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm シアターブルック
http://43142.diarynote.jp/?day=20070126 OKI DUB AINU BAND
http://43142.diarynote.jp/201001131101085950/ blues.the-butcher-590213
http://43142.diarynote.jp/201210111837516874/ OKI DUB AINU BAND
http://43142.diarynote.jp/?day=20140902 blues.the-butcher-590213
http://43142.diarynote.jp/201510051403147675/ シアターブルック
http://43142.diarynote.jp/?day=20161118
https://43142.diarynote.jp/201905220902467859/
▶︎過去の、平井庸一
https://43142.diarynote.jp/202103031127296987/
▶︎過去の、加藤直喜
https://43142.diarynote.jp/201302041828146553/ コロリダス
https://43142.diarynote.jp/201401200835094139/
▶︎過去の、高橋保行
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703  藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ 藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201207031354584120/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170109 藤井オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/201701191853162223/ TNT
https://43142.diarynote.jp/201709141146381271/藤井オーケストラ東京
▶過去の、不破大輔/渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/200407290730290000/
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200512231958440000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
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http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
http://43142.diarynote.jp/201511250531202253/
http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/
http://43142.diarynote.jp/201711241828493970/
https://43142.diarynote.jp/201804290935481570/

<今日の、あらら〜>
 4日連続で、JR山手線に乗ったよー。普段JRってあまり乗らないので、こんなことはもうぼくの人生でないだろう。どうでもいいことだが、ぼくは山手線ゲームをやったことがない。

 KAKULULUセレブレイト企画、2日目は13時から。と、タイム・テーブル表示に従い池袋・東京建物 Brillia HALLに開演時間に合わせて入ったら、すでに演奏が始まっていた。あれれえ?

 1番手は、伊藤ゴロー(1999年6月3日、2014年8月3日、2018年1月7日、2018年6月4日) アンサンブル。ガット・ギターを持つ彼に加え、ピアニストがステージに向かって後方左側、また後方右側順にコントラバス、チェロ、ヴァイオリン、フルート奏者と並ぶ。普通、音の低い弦楽器が外側だが、逆であった。この6月に出た『アモローゾフィア ~アブストラクト・ジョアン~』(ユニバーサル)の録音参加者選抜隊によるもののよう。とにもかくにも、格調高く弦仕様の優美で大人のインスト表現が繰り広げられる。伊藤はソロを取るわけでもなく淡々、各奏者をギター音で指揮している感じもあったか。1年ぶりのライヴで少し戸惑っているというようなことを言っていたが、プロフェッショナルなり。

 ピアニストは佐藤浩一(2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日、2019年1月5日、2019年10月30日、2020年8月16日、2021年7月30日)だった。先週インタヴューしたばかりだが、気安くしゃべっていた人が別世界のような広いステージで粛々と演奏している姿を見ると、不思議な気持ちになる。特に、こういうとても厳かで美的感覚が強い音楽であると……。佐藤は2枚組『Embryo』(Nagalu)を11月30日に出すが、そのディスク1はピアノ・ソロ(古典調律による)で、ディスク2が弦音とギターとリズム隊をいろいろ組み合わせる内容を持つ。この日のライヴは、彼がリズム出しして始まる曲もあった。

▶過去の、伊藤ゴロー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm エスピリト
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
https://43142.diarynote.jp/201910311450514339/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/

 2番目は、ピアノと歌の寺尾紗穂(2020年3月13日)、エレクトリック・ベースの伊賀航(2021年5月26日)、ドラムのあだち麗三郎(落ち着いた音楽性ながら、キックを二つ、左側にはスネア二つ〜とはいえ、一つはスナッピー/金属線群なしのようなのでタムと言った方がいいのか〜を並べる)の3人組、冬にわかれて。今年出した『タンデム』(P-ヴァイン)からの曲を中心にやったようだが、伊賀航って女性が歌うとしっくりくるほんわか好曲を書くんだな。

▶︎過去の、寺尾紗穂
https://43142.diarynote.jp/202003141341444882/
▶︎過去の、伊賀航
https://43142.diarynote.jp/202105271048588035/

 3番目の出演者は、モノンクル(2014年2月20日、2016年8月10日、2018年5月13日、2020年1月19日)。ヴォーカルの吉田沙良とエレクトリック・ベース/サンプラーの角田隆太のお二人に加え、今回はギターとドラムによるキーボードレスの編成による。だが、鍵盤音やコーラスやビートのプリセット音が趣味良く重ねられる。とにかく、先の 冬にわかれて がスカスカのサウンドだったので、もう始まってその濃密にして達者なサウンドに耳奪われる。プリセット音なしの3人の演奏による曲もあったが、それでも十全。みんな、うまいな。とくに、ギターのサポート音には感心。腕の立つ人でも、サウンド総体からエフェクターをかけたカッティング音が微妙に浮いた感じになる場合が往々にしてあるのだが、それがない。そして、挟間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日、2017年9月3日、2019年2月6日、2020年8月16日、2021年7月30日、2021年9月19日)のオーケストラ公演(2021年7月30日)にゲスト入りした際の吉田の歌いっぷりに感心した後だと、こういうポップ&コンテンポラリーな設定での歌い口もより興味深く感じられる。やはり、難しいライン取りをしているな。彼女たちがもっと簡単で晴れやかな曲をやれば、ドリームズ・カム・トゥルー的な人気を得ることができるのか。と、3秒考えた。

▶︎過去の、ものんくる/吉田沙良
https://43142.diarynote.jp/201402210802184994/
http://43142.diarynote.jp/201608111103309626/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201902071836593799/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
 
 4番目は、ドラムの石若駿(2014年9月26日、2016年6月27日、2016年7月21日、2016年9月4日、2017年6月21日、2017年7月12日、2019年1月21日、2019年3月16日、2020年10月29日、2021年4月11日、2021年4月19日、2021年7月9日、2021年11月5日)とダブル・ベースの金澤英明(2004年7月27日)とピアノの石井彰(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年7月25日、2021年3月29日)からなる、Boys Trio。

 石若がこの顔ぶれのトリオを組んだのは中2であったそう。それ、日野皓正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日、2015年3月10日、2017年9月3日、2018年8月11日、2019年4月27日)グループ流れで結成されたのだろう。3人は日野をゲストに迎えた『Boys』(Anturtle Dede)を昨年リリースしている。まず、3人でゆったりピアノ・トリオ表現を1曲やったあとは、フロントにアルト/ソプラノ・サックスの松丸契(2021年4月6日、2021年9月23日)とエレクトリック・ギターの細井徳太郎が入る。石若流れの二人が入って以降は、けっこうアブストラクト路線に移行。スピリチュアルなところもあったか。一つは3つの曲を続けたような感じの長尺のものだったが、2番目はマイルス・デイヴィスの「オール・ブルース」のリフでシャンソンの「愛の賛歌」のメロディをぶちまけるというもの。はは。

 ここで、細井徳太郎の演奏を聞けたのはうれしい。ふふ、ジミ・ヘンドリックス型の吹っ切れた演奏をかます。マーク・デュクレなんかを想起するのも容易か。ジャズにも一度ちゃんと浸った末にもう一回りして原初的衝動に満ちた演奏をしているという風情、なり。君島大空(2020年11月19日)なんかとも親しいようで、今後もいろいろな彼を見れるといいな。

▶︎過去の、石若駿
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20170621
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180404
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https://43142.diarynote.jp/201903171331065828/
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https://43142.diarynote.jp/202107100947566078/
https://43142.diarynote.jp/202111061132061463/
▶︎過去の、金澤英明
https://43142.diarynote.jp/200407271618520000/
▶︎過去の、石井彰
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
https://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
https://43142.diarynote.jp/202103300808386569/
▶︎過去の、松丸契
https://43142.diarynote.jp/202104071750586426/
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▶過去の、日野皓正
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
http://43142.diarynote.jp/201404070654593139/
http://43142.diarynote.jp/201503110740041978/
http://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201808120917002515/
https://43142.diarynote.jp/201904271153238361/
https://43142.diarynote.jp/201904281151232549/
▶︎過去の、君島大空
https://43142.diarynote.jp/202011201047548918/

 この後は最後の出演者、キセル(2001年5月14日、2009年4月4日)が登場したはずだが、場所を移動する。ついでに、喉を少し潤し……。

▶︎過去の、キセル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
https://43142.diarynote.jp/200904120632543345/

 夜は、代官山・晴れたら空に豆まいて で、関西のブルース・シンガー/ギタリストである田中名鼓美を見る。2部制で、彼女は異なるバンドを従えた、オリジナル曲主体のパフォーマンスをそれぞれで見せた。昼間とは、がらりと音楽性が変わるナリ。

 田中の過去の3枚のアルバム曲や新録曲や近年の配信曲をまとめた『Onward and Upward』(P-ヴァイン)を6月にリリース。そのときに、ミュージック・マガジン誌記事用に彼女にインタヴューしたのだが、とっても生理的に楽しいキャリアを持っていて、応援したいなと思わせる。大人になってからの女性ミュージシャンのあり方の、ロール・モデル足り得るとも言えるかな。なお、名鼓美は本名で、「父(音楽好きで、その流れで彼女は英語曲に親しんだ)が大学生のときに下宿していたお宅に鼓があって、それを叩かせてもらった際の感激があって、打てば響くような心の持ち主になるようにと付けたようです」、とのこと。

 1部はNacomi &The Blues Templeでのライヴ。Pierre落合(ギター)、高野秀樹(ドラム)、松田エビス隆(ベース)、ゲストのNATSUKO(ハーモニカ)によるバンドでみんな赤基調の服でまとめている。田中は英語にも堪能で、海外のブルース・フェスにもいろいろ出張っているが、その際はこのバンドで行っていたりもするよう。フリなんかも楽しく決まる部分もあり、エンターテインメント感覚にも留意したうえで、華のあるブルースをやると説明できるか。オリジナルに加え、オーティス・ラッシュの「ホームワーク」なんてのもやっていた。

そして、2部はNacometersによるパフォーマンス。北田太一(ドラム)、masakimurase (キーボード)、川辺ぺっぺい(ベース)の3人がサポートする。こちらはブルース・ビヨンドの音楽性を持つ曲を披露。田中は2部ではスライド・バーを小指にはめて演奏した場合もあった。終盤2曲はセカンド・ライン調オリジナルで、最後はザ・バンドの「オフィーリア」を披露した。

<今日の、会場>
 池袋のほう、両日ともにけっこう大掛かりに映像がおさえらていた。各出演者(持ち時間40分)の合間は30分で、再入場可能なり。朝から何も食べてないので、伊藤ゴローを見たあと会場外に出るが、何かのイヴェントもやっているようですごい人出だ。昨日書いた向かいの公園はアルファルト敷で公園というよりは、広場だな。なんかいい店はないかなーとキョロキョロ歩いたら、近くになんか構えがいい感じの結構大きな居酒屋があり、昼間からちゃっんと(?)やっているので、思わずそこに入ってしまう。屋号は龍という文字が入っていたような。お酒2杯つまみ2皿をさらりと摂る。一気に落ち着く。その各休憩時にはKAKULULUの店主が出てきて、出演者たちと少しトークしたりもする。伊藤ゴローには、20年前にギターを習っていたことがあったそう。どうやら、豊島区のほうからKAKULULU側にこの1300人収容の立派なホールを使ってやりませんかという打診から、縁のアーティストたちによる2日間のイヴェントが実現したみたい。そして、同所に自分のドラムを置いていると言われる石若駿が総合キュレイター的な働きもしたようだ。通して実演に接すると、どこか時代性も持つ大人の趣味性の高い音楽と親和性の高いカフェであると了解できるか。
 代官山のほうは、全員着席仕様(テーブル出ず)ながら、フルハウス。休憩時にはトイレの列ができて、混んでいるんだなと思った。みんな名鼓美姐さんの実のある実演に接せて、にっこりではなかったかな。なぜか、奇跡的に(?)感染者数は低い数字で止まっている。なんとか、そのまま、、、。

Visca!! IKEBUKURO

2021年11月5日 音楽
 池袋・東京建物 Brillia HALLで、東池袋・KAKULULUの7.5 周年を祝うライヴ・イヴェントを見る。今日と明日行われ、この晩は「Special Session Night」と題され、ドラムの石若駿 (2014年9月26日、2016年6月27日、2016年7月21日、2016年9月4日、2017年6月21日、2017年7月12日、2019年1月21日、2019年3月16日、2020年10月29日、2021年4月11日、2021年4月19日、2021年7月9日)が出ずっぱりで仕切る。

 開演時間前に会場入りすると場内が明るいなか、響く効果音的なギター音を出しているくるりの岸田 繁(2009年6月10日)とドラムやヴァイブラフォンを叩く石若が軽い感じですでに音を出し合っている。そのうち「これはリハーサルです。このまま、本番に入ります」みたいなことを石若がちらっと言い、その2分後の19時きっかりに場内が暗くなり、本編がそのまま始まった。

 なるほど、これは岸田のギターと石若のドラム(その他)の会話と言えるか。岸田はアンビエントっぽい方向で行くのかと思えば、途中からかなりロックぽいギターもごんごん弾き、3箇所では自ら出すリフに合わせて歌う。それ、○○○○さん(石若は名前を紹介したが、詩人にうといぼくは覚えていない)という詩人の詩をもといったものらしい。ほぼ切れ目なくずうっと。両者の才や持ち味はヴィヴィッドに現れていた。

 休憩を挟んで、玉置周啓(ヴォーカル、ギター)と加藤成順(ギター、ヴォーカル)によるアコースティック・ユニットのMIZが出てくる。生ギター2本の絡みと歌の重なりを介する回路が完成している表現に、石若が繊細かつ自由にアクセント音をつけていくという感じ。二人で裏声を重ねる際は少し気持ち悪いと思ってしまったが、和のフォークにはなり得ない情緒をしっかりと獲得してるなと感心。不思議な動的な感覚も持ち、それゆえ石若が重なる意味もあると思えるか。最後の曲にはマーティ・ホロベック (2019年3月16日、2021年4月11日、2021年7月3日)がエレクトリック・ベースで入った。

 そして、そのまま石若とホロベックは残り、そこにエレクトリック・ギターを高めに抱えたHIMIが出てきて、3人でパフォーマンスする。開放的な感覚を持つコード・ワークを持つインスト曲がオープナー。なんか広がる感じがいいなと思える。2曲目だかは、ザ・インプレッションズが原典となるポップ・スタンダードの「ピープル・ゲット・レディ」をやる。堂々としたデカい声でHIMIは歌い、途中からは日本語詞になった。手垢に塗れた曲でも、ちゃんと自分の風を吹き込んでいたな。続く曲は英語で歌われるレゲエ曲で、これと前曲には石若とホロベックはコーラスも入れた。とにかく、HIMIは快活さをあっけらかんと出すことのできる人でマル。

▶︎過去の、石若駿
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170621
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180404
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/201903171331065828/
https://43142.diarynote.jp/202010300958115053/
https://43142.diarynote.jp/202104121207459452/
https://43142.diarynote.jp/202104211350032210/
https://43142.diarynote.jp/202107100947566078/
▶︎過去のくるり/岸田繁
https://43142.diarynote.jp/200906120702484467/
▶︎過去の、マーティ・ホロベック
https://43142.diarynote.jp/201903171331065828/
https://43142.diarynote.jp/202104121207459452/
https://43142.diarynote.jp/202107041453546495/

<今日の、へえ〜>
 午前中から外に出ていて、けっこうヘロって池袋へ。東京文化劇場がある西口はたまに降りるが、東口のほうはすんごく久しぶりのような。副都心線の池袋駅はかなり西口の方にあり、いっぱい歩かされて参った。帰りは、JRに乗ろう。会場は駅から5分のところにあるが、世の夜イルミネーションはもうクリスマス・モードにあるのだな。うわあ、だ。とってもド派手で今様な建物のなかにある会場で豊島区の施設であるようだが、なかなか立派なホールではあるな。クラシック用途をもろに考えていて、天井高い〜。東京建物というのは、ネーミング・ライツ獲得によりついているようだ。商業ビル/歓楽街ビルのなかにあるその区ビルの前には呑気に公園があり、その向かいにはラヴ・ホテルもあった。場所的にシラフではなかなか入りにくいだろうなと思いつつ、なんか違和感がないところは池袋っぽいと思えた?

 エストニアの4人組グループであるカーリー・ストリングス(2016年9月28日、2018年5月23日)の来日公演を、中野サンプラザで見る。過去3度来日している親日家で、ときにMCは日本語でもしたりもし、「上を向いて歩こう」や荒井由実の「優しさに包まれたら」〜この曲は前からカヴァーしているな〜も披露する。荒井の曲はちゃんと聞いたことはないのだが、それでもすぐ彼女の曲なのかなと察っされるあたり、ほんと彼女は強い個性を持っていたのだな。

 エストニアのトラッドの香りを引き継ぐ楽曲を、完全にアメリカのブルーグラス編成のもとやるという、アコースティックなグループである。本国で大きな人気を獲得しているが、2017年にインタヴューした際にエストニアでブルーグラスを取り込んだグループは他に一つしかないと彼女たちは言っていた。だから本国での支持の大きさは、当人たちの持ち味による部分も大きいのではないかと思われる。

 エーヴァ・タルシ(フォドル、ヴォーカル)、ターヴェト・ニレル(ウッド・ベース、ヴォーカル)、ヴィッル・タルシ(マンドリン、バンジョー、ヴォーカル、ベース・ドラム)、ヤーン・ヤーゴ(ギター、ヴォーカル)という面々。かつてメンバーで2016年の来日公演に入っていたヤルマル・ヴァバルナ(ギター、ヴォーカル)はトラッド・アタック(2018年10月4日)というエレクトロ色も持つ扇情性の高いトラッドのバンドを組み、やはりエストニアで人気を博している。

 トラッド・アタックには2018年にインタヴューしたことがあったが、その際ヤルマル・ヴァバルナは、「信じられないかもしれないけど、エストニアでは若い人たちの間でトラッドが人気なんだ。それは、世界的に見てもユニークだと思う。海外でその手のフェスに行くと年寄りしかいないけど、エストニアだとマジ若い人がいて、もうステージ前にやんやと詰めかける。エストニアでは、トラッドはクールな物なんだ」と言っていた。カーリー・ストリングス人気も、同国の若者の音楽嗜好とつながっている部分もあるだろう。一方では「長い歴史を持つ一方、エストニアって新しいアイデアを具現するのが容易で、テクノロジー導入にも長けている。エストニアでは全部インターネットが使われ、ペイパーレスな社会になっているんだ」(トラッド・アタックのドラマーのトヌ・デュプリ)ということで、そこでハイパーなトリオであるトラッド・アタック(もう一人は女性ヴォーカル)が支持を集めたりもするのだ。

 同国のトラッドの旋律や歌詞感覚とつながりを見せるオリジナル曲が磨かれ、数が増えて、トラッドは1曲やるに止まった。インストのダンス・ナンバーをやると、面々の腕が立つということもよく分かる。今公演の内容については、日経新聞24日夕刊のライヴ評で触れます。

▶︎過去の、カーリー・ストリングス
http://43142.diarynote.jp/201610100851107027/
http://43142.diarynote.jp/201805240836284188/
▶︎過去の、トラッド・アタック
https://43142.diarynote.jp/201810090956117025/

<今日の、思いはいろいろ>
 外国人アーティストの来日公演を見るのは、なんと昨年3月16日のルイーザ・ソブラル以来となる。うわあ〜。クラシックの担い手の来日公演はいろいろ催されていたが、ついに、だな。伝え聞くところによると、3日間の幽閉を経て、厳格な接触/宿泊/移動手段を取るにあたっての実現であるという。ALCの試合のために海外に出たサッカー・チームのようなもの(直近では先週末にルヴァン杯でウィナーになった名古屋グランパスが韓国の試合後に家に帰れぬままそうした“バブル方式”で帰国後の国内試合に臨んでいたはずだ)ですね。まあ、今回はMIN-ON主催で全国9箇所で行われるという公演数の多さ、そしてなによりカーリー・ストリングスが親日であり、無理を強いられても日本人の前でパフォーマンスしたいという気持ちを持っていたことも、この実現を推したろう。また、今年日本とエストアニアが友好100周年にあたるという事実も幸いしたのかもしれない。
 今年中にMIN-ONはウルグアイ人ギタリストのマルティン・イバラの個人ユニットであるナイール・ミラブラットの日本ツアーも行なう。そのアルバム『Juntos Ajora』(Musas,2021年)はなんとブラジルの異才アントニオ・ロウレイロ(2013年8月29日、2013年9月6日、2017年4月15日)のプロデュースであり、ウーゴ・ファトルーソ(2007年11月14日、2019年10月19日)もキーボードで参加、ジョアナ・ケイロスが入った曲もある。この晩、客は一席づつおいての着席し、ソールド・アウトであったよう。公演後は後方から2列づつぶんづつ丁寧に、時間をかけて客を退出させていた。それ、雑な客着席配置や退出策を取るサントリー・ホールとは大違いだなと思った。←6月の渡辺貞夫公演のとき、それを如実に感じました。
▶過去の、アントニオ・ロウレイロ
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
http://43142.diarynote.jp/201309121810294280/
http://43142.diarynote.jp/201704170805443358/
▶︎過去の、ウーゴ・ファトルーソ
https://43142.diarynote.jp/200711170537080000/
https://43142.diarynote.jp/201910200819159611/

 ファンク・バンド、ザ・ギャップ・バンドの長男であったロニー・ウィルソンが生まれた地であるオクラホマ州タルサで亡くなった。死因は脳卒中であるようだ。タルサをべースに天下を取ったリオン・ラッセル(2005年11月24日)/デニー・コーデルのロック系レーベルであるシェルター・レコードから、1974年にデビュー。そこには、ジェイミー・オールデイカーも1曲参加していた。後にソロとして存在感を放った弟である1953年生まれのチャーリー・ウィルソン(2007年4月24日)と弦楽器系を主に担当したロバート・ウィルソン(1956年〜2010年) の3兄弟でザ・ギャップ・バンドを結成、ロニー・ウィルソンはトランペット、キーボード、作曲、副ヴォーカルなど担当した。その兄弟主体バンドはLAに向かった1970代後期以降、ロニー・シモンズ(1944〜2019年)と知り合いマーキュリーやシモンズが起こしたザ・トータル・エキスペリエンスなどからアルバム群をリリースし、大衆的な人気を得た。

▶︎過去の、チャーリー・ウィルソン
https://43142.diarynote.jp/200704251228250000/
▶過去の、リオン・ラッセル
http://43142.diarynote.jp/200511281322500000/

 祭日。渋谷・公園通りクラシックスで、スガダイロー(2009年1月8日、2009年7月3日、2013年2月19日、2016年2月28日、2016年7月16日、2017年4月11日、2017年7月8日、2019年5月30日、2019年6月14日、2019年7月8日、2019年12月14日、2021年4月6日)と魚返明未(2021年6月24日、2021年8月12日)のピアノ・デュオによるマチネー公演を見る。女性客多いな。

 お二人、うれしそうに顔を見合わせてやっていた。1部のオープナーはスタンダードの「ムーン・リヴァー」。両者はそのムードに満ちた曲を相乗のもと、もう一つのところに持っていく。というように、基本元に楽曲を置いたものも多かったようが、インタープレイ、インプロヴィゼーションがしめる部分は多い。スガにつられて、魚坂も鮮やかに引っ掻き回し奏法も見せる。

 2部の1曲目はたぶんフリー・インプロで始まり、ひとしきりやんちゃしたあと静かなパートになったのだが、そこでスガは「ブルー・モンク」をゆったり弾き出す。その際、そのリフに安易に乗っかることを良しとしない、魚坂の閃きと瞬発力に満ちた音の入れ方にはしびれる。やはり、秀でた弾き手だな。そのセットの最後は、ラヴェルの有名曲「ボレロ」。これは主催者が提案したよう。改めて、繰り返し様式のもと得難いムードや感興に富む、不思議なクラシック曲だと思った。スガは2週間後に、2ピアノ、2ドラム、2ベース、2ギター、2サックス、2ダンサーによる公演を、対バン林正樹(2013年9月6日、2015年9月27日、2015年12月17日、2016年7月16日、2018年5月13日 、2019年1月7日、2019年10月6日、2019年11月19日、2019年11月21日、2019年12月18日、2020年8月28日、2020年10月29日、2020年11月14日、2021年4月19日、2021年9月26日)のラージ・アンサブルで目黒パーシモンホールを場とし行う。

▶過去の、スガダイロー
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/200907131158382767/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
http://43142.diarynote.jp/201603011023174338/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160716
http://43142.diarynote.jp/201704131639031673/
https://43142.diarynote.jp/201707101243147840/
https://43142.diarynote.jp/201905310800294940/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/ 取材
https://43142.diarynote.jp/201907091307078386/
https://43142.diarynote.jp/201912161052582124/
https://43142.diarynote.jp/202109241712255724/
▶︎過去の、魚返明未
https://43142.diarynote.jp/202106251409441425/
https://43142.diarynote.jp/202108131719111936/
▶過去の、林正樹
http://43142.diarynote.jp/201309121810294280/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201512271306411506
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201910070759405954/
https://43142.diarynote.jp/201911201705565775/
https://43142.diarynote.jp/201911230723444744/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
https://43142.diarynote.jp/202010300958115053/
https://43142.diarynote.jp/202011150954203089/
https://43142.diarynote.jp/202104211350032210/
https://43142.diarynote.jp/202109271035415011/

<今日は、天気が良かった>
 やばい。歩くとすぐに息が上がる。もう、これは根性なし、とかいう問題ではないような。すっかり秋だなという感じで厚着をして出かける日もあったが、今日は晴天で暖かい。だが、日中は日差しが室内に注ぐようにもなり、逆に冬場になってきているなと気づかされたりもする。ともあれ、円満な天候のためか(?)、呑気にマスクをせずに出かけちゃい慌てる。今日から4日間、ライヴ行きをする予定。かつてだったらまったくもって普通のことだったが、なんとなーくどこか構えるぼくがいる。えーん、しょうがねえやと知人を呼び飲む。飲めば海路の日和あり。という、主義は変わりがないようで。体力の衰えと繋がるように、お酒は弱くなっているか。

 ぼくは熱心に聞いてきた人ではないが、根強いファンを数多く抱えた好ジャズ・ギタリストのパット・マルティーノ(2011年11月2日、2013年7月1日)が亡くなった。深刻な健康問題のために2018年11月以来働いておらず、貯金を使ってしまったので援助を、というようなお願いがなされていたという。フォラデルフィアンで12歳からギターを弾き始め、1961年からプロとして活動。当初からオルガン奏者との活動は多かったが、独創的な奏者たらんとする活動を標榜。音楽的にも、病気を伴う人生においても、とってもドラマティックで、個性的な姿を見せてくれたはずだ。

▶︎過去の、パット・マルティーノ
https://43142.diarynote.jp/201111141212143555/
https://43142.diarynote.jp/201307031313063403/

<今日の、泣きそう>
 最初の原稿を早めにあげ、合間にユーチューブで次に手をつけるファンク・ギタリストの演奏(機材)の様をチェックしたら、それに続いてなぜかフィッシュボーン(2000年7月28日、2007年4月5日、2007年4月6日、2009年11月25日、2010年7月31日、2011年8月8日、2013年6月3日)の2020年9月19日〜わりとロックダウン明けなのではないだろうか〜の野外実演映像(けっこう民家の前でやっている)が唐突に出てくる。えーん、アンジェロアンジェロ・ムーア(2000年7月28日、2007年4月5日、2007年4月6日、2009年11月25日、2010年7月31日、2011年8月8日、2013年6月3日)は当然として、ノーウッド・フィッシャーとフィッシュというオリジナルのメンバーはいたか。最高ではないが、十二分にぼくは燃えた。1980年代中期以降、フィッシュボーンは現存する存在の中で絶対服従しちゃう唯一のバンドであるとぼくは公言してきたが、それは間違いなかったと思えきてしまい……。ジャンルや人種の壁を破る、心意気の世界一のビート・バンドの映像にぼくは心で泣いた。https://www.youtube.com/watch?v=tKEVfzb-kOY
▶︎過去の、アンジェロ/フィッシュボーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm フジ・ロック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/ 豪バイロン・ベイ
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/ 豪ベイロン・ベイ
http://43142.diarynote.jp/200911281704335025/ アンジェロ単独
http://43142.diarynote.jp/?day=20100731 フジ・ロック
http://43142.diarynote.jp/201108101638376353/
http://43142.diarynote.jp/201306060729285922/
http://43142.diarynote.jp/200911281704335025/
http://43142.diarynote.jp/201108101638376353/
http://43142.diarynote.jp/201306060729285922/

 ファンク・シティ、オハイオ州デイトン出身のキーボード奏者/ソングライター/アレンジャー/プロデューサーで、何よりソーラー・レコードで腕をふるったウィリアム・シェルビーがお亡くなりになった。突然死であったという。ザ・ウィスパース(1999年5月20日、2005年12月21日)やダイナスティ(こちらは、メンバーであった)などソーラー・レコードの表現に1970年代後半から1980年代にかけて尽力、またシャラマーやアトランティック・スター(2006年4月25日)の楽曲作りにも関わっていた。そして、兄がメンバーであったこともありデイトン拠点のレイクサイド(2007年5月16日、2011年1月31日 )のメンバーとなり、来日もしていた。

▶︎過去の、ウィリアム・シェルビー/レイクサイド
https://43142.diarynote.jp/200705181813330000/
https://43142.diarynote.jp/201102091716363238/
▶︎過去の、アトランティック・スター
https://43142.diarynote.jp/200604262332490000/

 サンテーリアを根っこに置いたりもする、プログレッシヴ・アフロ・キューバン表現を鮮やかに創出するアフロ・アーバニティ(2021年2月11日)のライヴを、DDD 青山クロスシアターで見る。キーボードで音楽監督の阿部道子、ヴォーカルの奈奈カンタリーナ、キーボードの 津垣博通、エレクトリック・ベースの小泉哲夫(ちょい見た目がいい感じのそれを弾いていた)、ドラムの加納樹麻、ティンバレスの吉羽一星、バタとコンガの関弘太。そして、ゲストのトランペットの松木理三郎、テナー・サックスとフルートの石井裕太、トロンボーンの石川智久。その面々は前回の公演とまったく同じ顔ぶれなり。

 客席フロアにメンバー向かい合うように円形で位置し、その中には二人のカメラ担当者がいる。そして、その周りを観客を囲むという体裁がとられる。次回のライヴは12月14日に青山・月見ル君想フだそうだが、あそこだったら今回と同じ設定を取ることができるナ。って、どうするかは知らないけど。

 とにかく、前回の実演を見て絶賛しているが、やはり高揚し、堪能。前回より3人の管奏者たち、アンサンブルだけでなくソロのパートが増えていたと指摘でいるはず。そのぶん(?)、ヴォーカル・パートが少し減ったような感じがあったのは少し残念。しかし、管の3人はみんな確かなソロを取るな。トランペッターの松木はエフェクターをつないだ電波系音色でソロを取ることもしたがそれはエフェクター選びを含め、阿部の指示であったよう。みんな楽しんで、我々の躍動表現を作るのダという気持ちが出ていてよろしい。今、仕事が詰まっていて、少し青息吐息なので救われた。休憩時や終演後に流されていた、関のキューバ録音のCD群の鼓動の様がまたいい感じだった。

▶︎過去の、アフロ・アーバニティ
https://43142.diarynote.jp/202102130031572793/

<今日も、いろいろ>
 終演後、ハロウィンの渋谷を少しパトロール。したんだが、ぼくが想像していた以上に結構な人出であり、あ〜こりゃこりゃと退散する。日曜なので、知っているお店もやってないしね。でも、今あららというほど感染者数が減っているし、若い人が何かにかこつけて発散したくなるのはよく分かる。ほんと、気の毒。コロナ禍になって諦めとともに感じているのは、枯れを自覚するじじいで良かったということだ。例により事前投票にしているが、今日は選挙日〜なぜ、マーク・シート方式にならないのだろう?〜。夜が更けると絶望することが分かって分かってはいたものの、政権党よりも危ういところがあるかもと思える党が支持を拡大したことについては……。ユーチューブを見たら、そこのホクロが目立つ人の顔アップの党宣伝映像が出てきて気色悪すぎて当面ユーチューブを見るのを封印したぼく、、、、。もともとそんなに見る方ではないけど、昔より広告が入る頻度が高くなっていないか?

 おー、5階の屋上から眺めがいい。この辺、そんなに高い建物がないんだな。遠くには、新宿の高層ビル群がどばあっと見れる。ふふ、ちょっとしたものだな。ちょうど日暮れどきとなる16時半から、下北沢駅近くのビルの屋上で、<平日おやすみぽろろ>と題された出し物に接する。

 ヴァイブラフォンや鉄琴の谷本麻実(2021年6月5日)ととても簡素なドラム・キットと少し鳴り物を扱う矢城純平のデュオのパフォーマンス、なり。わりとゆったりしたインプロ曲をはじめ、米国の往年の漫画曲や童謡、また面白いセリフが入るちょい反復調の機微あるオリジナルなどを演奏する。また、観客全員にいろんな種類の鳴り物を渡して一緒にならせたりとか、けっこう場を一体にしようとする、天真爛漫な方策には頷く。子供相手でも、これは受けるんじゃないか。1曲は、谷本と矢城が持ち楽器を交換した。

 なるほど、20代半ばの担い手たちによる所作だなと思えたのは、曲が短く披露されていたこと。これがもう少し上の腕に覚えのある奏者たちだと延々と即興を続けそうなところであり、お腹いっぱいになってしまう場合もあるが、2人はこれからと思わせるところでサクっと曲を終える。それはオープンな場での演奏のため大きな音が出せないという制約が働いたところもあったろうが、インプロに親しんでいない人が集まる場でのくだけた出し物としてはそれでいいと感じた。とにかく、いい場でした。

 谷本はソロでエディ・ヴァン・ヘイレンの非グループ曲も演奏した。ぼくの知らない曲。なんでもお父さんがヴァン・ヘイレンの大ファンでそれで曲を知っているそう。彼女の父親の車のナンバーは、彼らの1986年作のタイトルとなった数字4つなんだとか。

▶︎過去の、谷本麻実(https://asamiperc.themedia.jp
https://43142.diarynote.jp/?day=20210605
▶︎過去の、エディ・ヴァン・ヘイレンの訃報
https://43142.diarynote.jp/202010081306571190/

<今日の、甘酸っぱさ>
 このルーフ・トップ・セッションを2人は過去にもやっているそうだが、演奏中にビルの下に警察が来たそうな。翌日は音配慮もあり、屋上横の室内バーで演奏するそう。というのはともかく、この日の屋上ライヴに接しながら、なんかザ・ビートルズのロンドンのビル屋上でやった<ゲット・バック>ライヴを思い出した。とともに、この日の若い客層のなか、それを想起するのはばくだけなのかなあと思う。←谷本は知っていた。この中旬に同作のデラックス・エディションが発表され(興味はあるが、聞く時間を見つけることができなさそうで購入をためらっている)、来月下旬には同作の新編集映画もディズニー・プラスで公開もされる。そっち、なんとか見たいなあ……。前にこの欄で書いたことがありそうだが、ぼくのザ・ビートルズの原体験は東芝の“ボストン”という名のステレオ絡みだ。『レット・イット・ビー』(アップル、1970年)リリースの頃だったのだろう、ボストンのTV-CFに『レット・イット・ビー』のジャケット・カヴァーが大写しされ、「レット・イット・ビー」が流された。TV番組「サンダーバード」に継ぐ衝撃というか、ぼくにとっての新鮮な海外文化との出会いだったのは間違いない。

 横浜・エアジン は現在「なんでも音楽祭2021秋」というジャズ・ビヨンドの帯公演をやっていて、この出し物はその一環にあるよう。ヴォーカルとピアノの橋本眞由己(2009年11月19日、2010年9月14日、2013年2月22日、2021年8月14日)とヴァイオリン(と少し即興ヴォーカル)の太田惠資(2001年3月24日、2003年5月22日、2004年10月10日、2005年2月19日、2016年9月27日、2018年7月7日、2019年10月16日)によるデュオの公演を見る。MCは主に橋本がしたが、ときに返す太田の話がなかなかにウィットに富む。豊かな人だな。

 冒頭のほうは橋本のシンガー・ソングライター然とした、ちゃんと歌詞を持つ自作曲が披露されたのだが、それには大きく感心。もう非の打ち所のない、ジャズその他も知る機微溢れる大人のポップ・ソングというれしい味わいにあふれていたもの。いい歌書くなと、頷く。他にも姉の橋本一子のもう少し広がりのあるスキャットを入れる曲や誰かの曲を根の置くもの(説明したかもしれないが、忘れちゃった)も伸縮性に富む形で披露する。そして、それら決して簡単ではない仕様を持つ曲群に太田は合いの手演奏を入れたり、間奏部の演奏を入れたりする。実は内心、うまくつけられるかヒヤヒヤもんで演奏していたということだが、悠然悠々としたものに聞こえました。彼は基本通常のヴァイオリンを弾くが、何曲かではエフェクターをつないだ電気ヴァイオリンも手にした。

 得難い詩情や余情が舞う。音楽のもう一つの素敵がゆらゆら立ち上がる。実は、あまりに手触りが良かったので、橋本眞由己のオリジナル曲だけでまとめてもいいのではとも思えたのだが、それを伝えると、太田の個性が生きる方向で選曲を考えたとのこと。なるほど、その答えには納得ですね。2人は2018年からときに一緒にするようになったそうだが、ちゃんと息遣いを重ねるデュオ表現の美味しいあり方の一つを提示していた。

▶︎過去の、橋本眞由己
https://43142.diarynote.jp/200911241550342013/
https://43142.diarynote.jp/201009231547465891/
https://43142.diarynote.jp/201302281046506238/
https://43142.diarynote.jp/202108151200495168/
▶︎過去の、太田恵資
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm シカラムータ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm ハシケン
http://43142.diarynote.jp/?day=20041010
http://43142.diarynote.jp/200502232040290000/
http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/
https://43142.diarynote.jp/201807080932266789/
https://43142.diarynote.jp/201910170731042901/
https://43142.diarynote.jp/202001141031439634/
https://43142.diarynote.jp/202002201103277008/

<今日の、あらら>
 なんと会場内には配信用映像のために9つものカメラが固定で置かれていた。それを随時スウィッチングしていくそうだが、一般ライヴ・ヴェニューでそんなにカメラの数の多い配信体制をするのには初めて接するのような。久しぶりの馬車道、この辺は普通のホテルが多いというのに、今更ながら気づく。そういえば、この週末は、ピーター・バラカンズ・ライヴ・マジックやスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドの配信があった。

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