銀座ジャズ(ステファノ・ボラーニ、他)。レ・ポム・ドゥ・マ・ドゥーシュ
2006年11月3日 祝日の銀座は人が気持ち悪いぐらいにいっぱい。正式名称、銀座インター
ナショナル・ジャズ・フェスティヴル2006。去年から秋に二日間行われてい
るジャズ・フェス。百貨店の屋上からホールまで、いくつも組まれているラ
イヴの場はどれも無料なのが売り(ホール公演は事前に応募することが必要
となるようだが)。ブランド店たちがお金を出し合っているらしいが、さす
が銀座は景気がいいのだナ。
時事通信ホールに行く。新しい立派な通信社のビル内にあるホールで、向
かいは日産の本社ビル。昔はモダンな建物だったのだろうが、妙に煤けて見
える。なるほど、横浜に移転するまでの辛抱ということか。ここでまず、カ
イル・イーストウッドのグループを見る。クリント・イーストウッドの息子
(親父の作った映画の音楽に、彼は毎度係わっている)で現在はパリ在住。
フランス人主体で2管、ピアノ兼キーボード、ギター兼プリセット音担当者
、そして電気/アップライト両刀の彼という内訳。そんな編成にあらわれて
いるように、ジャズ〜フュージョン〜ポップを重ねたような表現を志向する
。本人もカッコいいし、ジャズの入門版としては大ありでしょう。数曲ゲス
ト・ヴォーカルが出てきて、それなてりにポップなヴォーカル曲もやる。そ
のゲストはジェイミー・カラム(2004年6月13日、2006年6月13日)の兄の
ベン・カラム。友達だそうで、新譜にも参加している。実は最新CDではや
はり仲良しらしいマヌ・カチェが叩いていて本人も日本に来たがったそうだ
が、現在彼はフランスのTV番組の素人タレント発掘番組の審査員を毎週し
ており、そのため来ることができなかったらしい。
その後、同じホールでイタリアのジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラ
ーニのグループを見る。最新CDとなるECM発のソロ・ピアノ作(やっぱ
、優れたソロ作が同社から出ているのでビビったそう)はまあまあだが、そ
の前作の仏ラベル・ブリュから出たグループ作『ヴィジョンズ』は相当いい
コンテンポラリー・ジャズ盤で勧める。そんな彼はジャズだけでなく、ロッ
ク(かつては、ジョヴァノッティ〜2002年6月1日〜のバッキングもやって
いたそう。彼は歌うのも好き)やクラシックなどいろんな音楽を別け隔てな
く愛好している人で、それは彼の『ヴィジョンズ』を聞けば自然に納得でき
る。で、この日のライヴはリード二人とベースとドラムを率いて、そのノリ
の演奏を繰り広げる。
やっぱり、素晴らしい。腕も十分たつが、コンセプトも相当にいけてる。
ちょっと切れ気味のグループ表現を基調にいろんな曲が出てくるのだが、と
きにユーモアたっぷりにシアトリカル。ベース奏者以外みんな引っ込んでベ
ース単独演奏が始まり、少しするとリード奏者が左右から出てきて吹きはじ
め、最後にはグループ演奏に戻ったり……。全員で歌い出す局面もあったし
、演奏中に発せられるボラーニのイタリア語をリード奏者の一人が片言の日
本語で言いなおしたり……。アーティスティックなのに、一方でユーモアや
娯楽精神もたんまり持っている。それ、カーラ・ブレイの「歌うのなんか好
きじゃない」のころのあり方とも似ているか。隣の隣の席にはこのフェスの
出演者であるオースティン・ベラルタ(2006年9月3日)が。非常に喜ん
で聞いていたよーだが、ボラーニのような人にたくさん触れさらに視野を
広げて、立派なプロのピアニストになってネと切に思う。それにしても、ボ
ラーニ(サイドマンたちも)は見かけはカッコ悪い。服装もほとんど気にして
いる感じがないし。だが、その冴えに触れると、彼はすべての興味を音楽
に注ぎ込んでいるんだろうなと思わずにはいられないナ。実は彼、文章を
書くことも好きで本国では小説を上程したそうだが。今、若いまっとうな耳
を持つ人が聞くべきジャズ・ピアニストはブラッド・メルドーではない、ボラー
ニだ! と、ブチ上げておく。
続いて、バーバリーのショップ・ビル(階段に張られていた絨毯も、バー
バリー柄)のホールで、日野晧正(2005年6月5日)のクインテット。100
人ぐらいの会場で、リズム隊はマイクで音を拾っているが、トランベットと
アルトは生音にての実演。こんな小さな所でやるのとムクれてもおかしくな
い規模の会場だが、“スター日野”は嬉しそうに誠心誠意全力投球。かつての
銀座の思い出話も飛び出す。新作からの曲を中心に、客層のことも考えてか
、少し前のアルバムでやっていたミーシャの「エヴリシング」も披露。CD
のときは非常にどんくさいステディなビートを採用していたが、この日はブ
ラシを使ってスモーキィなヴァージョンになっていて良かった。なんにせよ
、非常に重みとストロングさのあるジャズを聞かせていた。
どの出演者もちゃんとメンバーを揃え、十分な尺を持つ演奏時間で、実に
まっとうな演奏をする。いろんな出演者がいるフェスだし、無料でもあるか
ら多少は簡素版演奏になるのかと思ったら、そうであらず。人が出入り自由
でガサつくだろうオープンな会場(ショップ内ステージとか)の場合はどう
なんだろうか。へえ、と感心した次第。
そして、その銀座ジャズの出演者でもあったフランスのレ・ポム・ドゥ・
マ・ドゥーシュのシークレット・ギグを見に、池袋のブルードラッグという
店に行く。デカいジャンゴの写真とかが飾ってあって、ジプシー(マヌーシ
ュ)・スウィング系を聞かせるお店らしい。5人組のレ・ポム・ドゥ・マ・
ドゥーシュは非マヌーシュながら、飄々とヌーシュ・スウィングをやるグル
ープ。ただし、アコーディンオン奏者とヴァイオリン奏者がいてミューゼッ
トやシャンソン系のナンバー、ジャズ・スタンダード等もそれ風に洒脱にや
るのがポイントか。日本人奏者も出入りしての、開かれたパフォーマンス。
アフターアワーズではとキヨシ小林(2004年2月1日、2005年2月4日)周
辺にいる人達のグループ演奏にメンバーが混ざったり、尺八奏者(で、スタ
ンダードを吹く。けっこう、上手かった)とアコーディオン奏者の場当たり
セッションがあったり。その様子は、日常と隣り合わせで伝承されてきたマ
ヌーシュ・スウィングの現場の楽しまれ方を彷彿とさせるところがありまし
た。
ナショナル・ジャズ・フェスティヴル2006。去年から秋に二日間行われてい
るジャズ・フェス。百貨店の屋上からホールまで、いくつも組まれているラ
イヴの場はどれも無料なのが売り(ホール公演は事前に応募することが必要
となるようだが)。ブランド店たちがお金を出し合っているらしいが、さす
が銀座は景気がいいのだナ。
時事通信ホールに行く。新しい立派な通信社のビル内にあるホールで、向
かいは日産の本社ビル。昔はモダンな建物だったのだろうが、妙に煤けて見
える。なるほど、横浜に移転するまでの辛抱ということか。ここでまず、カ
イル・イーストウッドのグループを見る。クリント・イーストウッドの息子
(親父の作った映画の音楽に、彼は毎度係わっている)で現在はパリ在住。
フランス人主体で2管、ピアノ兼キーボード、ギター兼プリセット音担当者
、そして電気/アップライト両刀の彼という内訳。そんな編成にあらわれて
いるように、ジャズ〜フュージョン〜ポップを重ねたような表現を志向する
。本人もカッコいいし、ジャズの入門版としては大ありでしょう。数曲ゲス
ト・ヴォーカルが出てきて、それなてりにポップなヴォーカル曲もやる。そ
のゲストはジェイミー・カラム(2004年6月13日、2006年6月13日)の兄の
ベン・カラム。友達だそうで、新譜にも参加している。実は最新CDではや
はり仲良しらしいマヌ・カチェが叩いていて本人も日本に来たがったそうだ
が、現在彼はフランスのTV番組の素人タレント発掘番組の審査員を毎週し
ており、そのため来ることができなかったらしい。
その後、同じホールでイタリアのジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラ
ーニのグループを見る。最新CDとなるECM発のソロ・ピアノ作(やっぱ
、優れたソロ作が同社から出ているのでビビったそう)はまあまあだが、そ
の前作の仏ラベル・ブリュから出たグループ作『ヴィジョンズ』は相当いい
コンテンポラリー・ジャズ盤で勧める。そんな彼はジャズだけでなく、ロッ
ク(かつては、ジョヴァノッティ〜2002年6月1日〜のバッキングもやって
いたそう。彼は歌うのも好き)やクラシックなどいろんな音楽を別け隔てな
く愛好している人で、それは彼の『ヴィジョンズ』を聞けば自然に納得でき
る。で、この日のライヴはリード二人とベースとドラムを率いて、そのノリ
の演奏を繰り広げる。
やっぱり、素晴らしい。腕も十分たつが、コンセプトも相当にいけてる。
ちょっと切れ気味のグループ表現を基調にいろんな曲が出てくるのだが、と
きにユーモアたっぷりにシアトリカル。ベース奏者以外みんな引っ込んでベ
ース単独演奏が始まり、少しするとリード奏者が左右から出てきて吹きはじ
め、最後にはグループ演奏に戻ったり……。全員で歌い出す局面もあったし
、演奏中に発せられるボラーニのイタリア語をリード奏者の一人が片言の日
本語で言いなおしたり……。アーティスティックなのに、一方でユーモアや
娯楽精神もたんまり持っている。それ、カーラ・ブレイの「歌うのなんか好
きじゃない」のころのあり方とも似ているか。隣の隣の席にはこのフェスの
出演者であるオースティン・ベラルタ(2006年9月3日)が。非常に喜ん
で聞いていたよーだが、ボラーニのような人にたくさん触れさらに視野を
広げて、立派なプロのピアニストになってネと切に思う。それにしても、ボ
ラーニ(サイドマンたちも)は見かけはカッコ悪い。服装もほとんど気にして
いる感じがないし。だが、その冴えに触れると、彼はすべての興味を音楽
に注ぎ込んでいるんだろうなと思わずにはいられないナ。実は彼、文章を
書くことも好きで本国では小説を上程したそうだが。今、若いまっとうな耳
を持つ人が聞くべきジャズ・ピアニストはブラッド・メルドーではない、ボラー
ニだ! と、ブチ上げておく。
続いて、バーバリーのショップ・ビル(階段に張られていた絨毯も、バー
バリー柄)のホールで、日野晧正(2005年6月5日)のクインテット。100
人ぐらいの会場で、リズム隊はマイクで音を拾っているが、トランベットと
アルトは生音にての実演。こんな小さな所でやるのとムクれてもおかしくな
い規模の会場だが、“スター日野”は嬉しそうに誠心誠意全力投球。かつての
銀座の思い出話も飛び出す。新作からの曲を中心に、客層のことも考えてか
、少し前のアルバムでやっていたミーシャの「エヴリシング」も披露。CD
のときは非常にどんくさいステディなビートを採用していたが、この日はブ
ラシを使ってスモーキィなヴァージョンになっていて良かった。なんにせよ
、非常に重みとストロングさのあるジャズを聞かせていた。
どの出演者もちゃんとメンバーを揃え、十分な尺を持つ演奏時間で、実に
まっとうな演奏をする。いろんな出演者がいるフェスだし、無料でもあるか
ら多少は簡素版演奏になるのかと思ったら、そうであらず。人が出入り自由
でガサつくだろうオープンな会場(ショップ内ステージとか)の場合はどう
なんだろうか。へえ、と感心した次第。
そして、その銀座ジャズの出演者でもあったフランスのレ・ポム・ドゥ・
マ・ドゥーシュのシークレット・ギグを見に、池袋のブルードラッグという
店に行く。デカいジャンゴの写真とかが飾ってあって、ジプシー(マヌーシ
ュ)・スウィング系を聞かせるお店らしい。5人組のレ・ポム・ドゥ・マ・
ドゥーシュは非マヌーシュながら、飄々とヌーシュ・スウィングをやるグル
ープ。ただし、アコーディンオン奏者とヴァイオリン奏者がいてミューゼッ
トやシャンソン系のナンバー、ジャズ・スタンダード等もそれ風に洒脱にや
るのがポイントか。日本人奏者も出入りしての、開かれたパフォーマンス。
アフターアワーズではとキヨシ小林(2004年2月1日、2005年2月4日)周
辺にいる人達のグループ演奏にメンバーが混ざったり、尺八奏者(で、スタ
ンダードを吹く。けっこう、上手かった)とアコーディオン奏者の場当たり
セッションがあったり。その様子は、日常と隣り合わせで伝承されてきたマ
ヌーシュ・スウィングの現場の楽しまれ方を彷彿とさせるところがありまし
た。