この日だけ、7人チームで苗場行き。少し前のおおまかな天気予報では結構天候には恵まれそうという話もあったが、やはりフジと雨は切っても切れませんね。やっぱ、いろいろ降った。とくに激しい雨は2度はあったナ。昼二のときのほうは屋内でトロンボーン・ショーティのインタヴュー中であり、夜のほうはレッド・マーキー(テント会場)のフィッシュボーンのギグを夢中で見ていたので、両方ともくらっていない。超ラッキー。

 86年生まれのニューオーリンズのトロンボーンの若大将インタヴューを終えて、グリーンのクーラ・シェイカー(2008年1月16日)を横目に奥にすすむ。彼ら、野外モノとしては音質のクオリティはそれなりにいいナと感じたか。あれなら、一見(いちげん。いや、一聞か)の人でも彼らのやろうとする所はつかみやすかったのではないか。活動再開となったシアター・ブルック(2003年6月22日、他)はちゃんと聞きたかったが(でも、これからまた機会はあるでしょ)、これまた音を横にずずいと進んでモリアーティ(2009年5月31日)@オレンジ・コート。昨年の公演を見て、感服させられまくりだったので、ぜひともフジ・ロックでの実演の模様もきっちり見ておきたかった。前日も雨が降ったというわりには、移動通路はそんなにぬかるんでいないし、すぐにドロドロになりがちなオレンジ・コートもそれほど足場は荒れてはいない。これだったら、長靴をはかなくても、良かったな。
 
 フランスからやってきたモリアーティは、サポート・ドラマー(実は、プロデューサーとして実績のある人みたい)も含めて、不動の顔ぶれにてパフォーマンス。前回より舞台美術は少し簡素だったが、それ以上に、心意気や才気やキャラの立ち具合が勝つ。新曲もけっこうやったよう。ハデな曲をやるわけでなし、ドブロやハープ(ハーモニカ)や縦ベースを上手く用いた手作りサウンドも含蓄豊かながら派手さからは離れる方向にあるのに、本人たちの五感を刺激する愛らしい所作もあり、とっても引き付けられちゃうのは、まこと愉快。で、結果、人間って本当にいいナと笑顔とともになんか思わせられる。こんなに言葉を超えた、サムシングあふれるバンドもそうはいないと再確認。6人はフジで4つのステージに次々出たらしいが、ほんと意気と創意工夫にあふれる、尊いという言葉を使いたくなる連中だ。ライヴ終了後に裏に行ったら、メンバーが次々ぼくの名を呼んで、握手を求めくる。去年インタヴューしただけ(まあ、盛り上がりましたが)なのに、よくもまあ、名前を覚えてるな。やっぱ、クレヴァーな連中だと思フ(半数は日程終了後、そのまま日本観光で居残ったらしい)。

 その後は、フィールド・オブ・ヘヴンでキティ・デイジー・ルイス。ほんと、酔狂。ニュー・ウェイヴ期の好奇心豊かであけらかんとしたガールズ・バンドであったレインコーツのメンバーを母親に持つ姉妹+弟からなる3人組だが、サポートのおっさんギター奏者を地味にサポートに加えつつ、見事に枯れててルーツィな世界を実演でも確かな形で表出。いや、ライヴにおいては姉弟妹たちは自在に楽器(ドラム、ウッド・ベース、ギター、ピアノなど)を持ち替え、リード・ヴォーカルもかわりばんこに取ったりし、より洒脱でアトラクティヴ。腕も確かなように思えたし、やっぱり、イケてて愛らしい担い手だな。

 途中グリーン奥に一緒に行った人たちが作ったベース・キャンプに行き、ホッと一息。その後、レッド・マーキーまで出向いて、再結成されたUK4人組の20-22s。後ろのほうでぼうっと見たが、あれれこんなだっけか……。あんましブルージーでもないし、かっとんでもいないし。味はなくなかったが、なんか釈然としねー。で、トロンボーン・ショーティを見にフィールド・オブ・ヘヴンに行かなきゃとも思ったが、ホワイト・ステージの元CCRのジョン・フォガティとかぶっている。その後も、見たいアーティストはレッド・マーキーとグリーン・ステージ。取材やっておきながらナンだが、ぼくは奥地ヘヴンに行くのをあきらめた。だって、30年強ぶりに来日したフォガティを見逃したら、次に機会があるかどうか判らない。が、伸び盛りトロンボーン・ショーティはまだ24歳、これからも見る機会はいろいろありそうだから。その実演は間違いなくいいはずという確信も、あきらめるほうを促した? 実際、かなり良かったよう。一つだけ、彼の発言(記事からもれたもの)を紹介しておこう。「俺は、トレメ地区(cf.2003年10月15日:トレメ・ブラス・バンド)地区で育った。(音楽で自立できた)12歳のときから、俺はフレンチ・クォーターの外れのほうに住んでいるけど、家族はずっとそこに住んでいる。そこは見事に音楽に満ちあふれる場所だったが、ハリケーン後はそうではなくなってしまった。避難した皆が戻ってこようとしたとき、家賃が高騰して戻ってこれなくなってしまったんだ。結果、トレメの文化的継承は切れてしまった」。

 フォガティはCCR のヒット曲も連発。アーシーな、どこかキャッチーでもあるどすこいR&Rの素敵を忌憚なく広げる。声、良く出ていたな。ドラムは、70年代末から米国ロック界で大車輪している有名奏者のケニー・アロノフだあ。実は、フォガティにもこっちで取材をする話もあったのだが、それは叶わなかった。側で見ると、どんなじじいだったんだろ?

 そして、フォガティの終盤にフィッシュボーン(2007年4月5、6日。他)を見にレッド・マーキーに。うわ、人が溢れている。うれしい。で、きっちり、フィッシュボーンたる、力と侠気と持ち味を出したはず。うれしい。ファン、冥利につきる。7人編成、あれれ、アンジェロ(2009年11月25日)とノーウッドの二人がオリジナル・メンバーだと思ったら、ウォルター・キルビーⅡが戻ったのォ?

 その後、グリーンに戻り、ロキシー・ミュージックを見る。というよりは、ヴィジョンを見る。雨もそこそこあり、後ろの木の下でちんたら見てました。ロキシーというとぼくは2作目の『フォー・ユア・プレジャー』を真っ先に出す者だが、そこからの曲が多く演奏されていて、とってもうれしかった。ブライアン・フェリー、フィル・マンザネラ、アンディ・マッケイ、ポール・トンプソンの4人のオリジナル・メンバー+数人によるパフォーマンス。フォガティにしてもそうだが、大御所の熟練の実演はホントぬかりがないな。