アート・リンゼイ

2014年10月26日 音楽
 あれれ。毎度のごとくチューニングしていない12弦ギターを打楽器的に音程無視で刻むだけなんだけど、なんかメロディ性というか、曲種に沿う音を出す度合いは増していたのではないか。←実はそれは彼の音楽が持つパンクな部分を取り去る方向にもあるのだが、一方では確かな成熟を感じさせたりもする。歌も長年ヘタウマを地で行くものであったが、いい意味で根無し草的風情を持ちつつ、堂々と書くとちょい違うだろうが、歌心はより増しているように感じた。

 そんな彼は、やれたジーンズ姿に、それに合わない白色の靴。1985年だかのアンビシャス・ラヴァーズでの初来日のとき(そのときの宿泊していたのは、渋谷の東急インだった。なんか、明治通沿いの歩道橋の下にとめてあった屋体の前で写真を撮ったのを思い出した)から数度、彼にはインタヴューしているが、もっとお洒落だったような。まあ、小さいこと(?)にこだわらず、カリオカらしいと言えなくもないけど。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 父が牧師で、彼が任地したブラジルで育つ。とはいえ米国国籍ゆえ当時はまだあった徴兵のくじ引きに引っかかってしまい、それを逃れるためにNYの大学に入学。1953年生まれの彼にとって、ハイティーンのときの米国の徴兵はくじ引きによってなされており(と、リンゼイは言う)、大学進学者は徴兵が免除されたわけですね。徴兵にあたっていなかったら、大学に入るためにNYに行っていないので、ミュージシャンになっていなかったんじゃないかとも、彼はかつて言っていた。ともあれ、NYに行き、お上りさん同様の彼は同地のアンダーグラウンド若者文化の様に圧倒魅了され、“素人100%”の感覚一発ギターを武器に同シーンに身を投じ、1970年代後期のNYのニュー・ウェイヴ(ノー・ウェイヴ)・シーンで注目を集めるわけだ。DNAやザ・ラウンジ・リザーズを経て、1984年にソロ作(彼の名とアンビシャス・ラヴァーズというグループ名が併記されていた)に『エンヴィ』(エディションズ・EG。当時の日本盤ディレクターは現日本のユニバーサル・ミュージックの会長だァ)を発表。そして、以後、NYの胸騒ぎ感や飛躍の奥にブラジルの記憶/素敵を差し込んだハイブリット表現をいろいろとリリースするとともに、プロデューサーとしてもカエターノ・ヴェローゾ(2005年5月23日)からデイヴィッド・バーン(2009年1月27日)まで様々な人たちと絡んでいる。まあ、リンゼイはブラジル育ちの種はDNA時代から出していたと、言っていたこともあるが。10年ぐらい前だったか、彼はブラジルに戻り、サルヴァドール(結婚〜離婚を)を経て、現在はリオに居住している。

 3年ぶりとなるリンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日)の来日公演は、アメリカ人とブラジル人と日本人の混合バンドにてなされる。今年はこれに準じる顔ぶれでいろんな場所でやっているようで、そこにマーク・リーボウ(2001年1月19日、2008年8月3日、2008年12月14日、2009年12月13日、2010年12月12日、2011年8月4日、2014年7月28日)が加わった映像もネットで認めることができますね。

 ベースのメルヴィン・ギブス(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日)はロナルド・シャノン・ジャクソン(2013年10月21日の本編外を参照。http://43142.diarynote.jp/201310210730403296/)のザ・デコーディング・ソサエティやディーファンク(デファンクト)やジャン・ポール・ブレリー・バンドを経て、1990年代は人気オルタナ・ロック・バンドのロリンズ・バンドのメンバーとして活躍。リンゼイとは1980年代からの付き合いであり、側近奏者としてリンゼイ作への参加も多数。そんな彼はその近い関係からサルヴァードール参りもしていて、そのカーニヴァルにも笑顔で加わっているという話もあった。そういえば、(シンガーである嫁のD.K.ダイソンとのMGやアイ&アイというグループ作を除けば)初リーダー作となる『Ancients Speak』(Livewired、2009年)はリンゼイのプロデュース作だが、そこにはサルヴァドールのブロコ・アフロの“コルテージョ・アフロ”が参加してもいた。

 今回同行のマリヴァウド・パイムはバイーアきっての打楽器奏者/チーム・リーダーであるとか。彼そんなに派手に演奏するわけではないが、彼の回りにはずらりと10個ぐらいパーカッション(スルド)が並べられていた(マイクも1個づつ立てられていた)。見えなかったが、カホーンを扱うときもあったか。鍵盤のポール・ウィルソンはNYにいる人だろう。そして、ドラマーは海外ではヴィジェイ・アイヤー(2014年6月17日、2014年6月19日、2014年6月20日)とマイク・ラッドの2013年双頭作で叩いていたカッサ・オヴァラルが叩くことが多かったようだが、予定していたドラマーが駄目になったのか、日本は現地調達にて。前日は千住宗臣(2007年4月20日、2009年10月31日、2010年9月11日、2011年5月22日、2012年3月21日、2013年1月10日、2014年7月8日)が加わり、この晩は山木秀夫(2008年8月19日、2012年8月24日、2012年9月8日)が叩いた。当日に1曲づつ一緒にやったようだが、その適応力はすごいな。また、後半に入ると小山田圭吾(2009年1月21日、2009年10月31日、2011年8月7日、2012年8月12日、2013年8月7日、2013年8月11日、2014年3月31日)が出てきて、サイド・ギターを担当する。より表現に骨格を与える楽器が増えたことで、表現総体のポップ度が少しあがったような。

 彼については1970年代後期から胸を焦がした存在であり、ずっと注視し続けている存在ゆえ、かなり厳しい目で接してしまい、この晩のパフォーマンスはまあまあかなとぼくは感じた。まわりは、皆絶賛であったけど。米国冒険流儀とブラジル味の行き来の回路に慣れてしまい、ぼくはクリシェと思えるところがある? もっと過剰にポップか、もっと切れ切れアヴァンギャルドなものを、ぼくは望んでいた? いや、ドキドキできる瞬間、甘酸っぱくなる瞬間はいろいろあったし、今後も来日したときは見に行くはずだが。

 間違いなく言える事は、先端だったり、横のほうにあるポップ/ビート・ミュージックのあり方において、アート・リンゼイ的態度/視点は途方もなく貴重であるということ。リンゼイが登場して以降、彼の真似をする人は(ぼくの知る限り)いない。でも、当然と言えば当然か。彼のギター奏法をマルセル・デシャンの便器に例えたのは故 生田朗さんだったが、デュシャンの後に便器を展示したらそりゃ顰蹙だよな。それにしても、ステォーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)は目が見えるという話はでてきても、アート・リンゼイは実はギターが弾けるという話が出てこないのが、なんかすごい。

▶過去の、リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
▶過去の、ヴェローゾ
http://43142.diarynote.jp/200506021846130000/
▶過去の、バーン
http://43142.diarynote.jp/200901281359552953/
▶過去の、リーボウ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200808090220110000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/201001051622194305/
http://43142.diarynote.jp/201012131714372906/
http://43142.diarynote.jp/201108101630438805/
http://43142.diarynote.jp/201408051026553769/
▶過去の、ギブス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
▶過去の、アイヤー
http://43142.diarynote.jp/201406180853065508/
http://43142.diarynote.jp/201406201008164250/
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
▶過去の、千住
http://43142.diarynote.jp/200704251225580000/
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201105230926029205/
http://43142.diarynote.jp/201203260805006088/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130110
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
▶過去の、山木秀夫
http://43142.diarynote.jp/200808221745590000/
http://43142.diarynote.jp/201209181226141636/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120908 ベン・E・キング
▶過去の、小山田
http://43142.diarynote.jp/?day=20090121
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110807
http://43142.diarynote.jp/?day=20120812
http://43142.diarynote.jp/?day=20130807
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
http://43142.diarynote.jp/201404031700136483/
▶過去の、ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/

<今日の、えええっ>
 朋友たるメルヴィン・ギブスは、ステージでリンゼイのことを“アート・リンジー”と紹介していた。どひゃー、そう言うのが本当なの?

 わー、今度のジューサ(2005年11月4日、2011年10月3日、2012年6月27日、2013年7月16日)も面白い。素晴らしい。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 ドラマーが女性。そのジィシー・ガルシアちゃん(と、なんか ちゃん を付けたくなる)が、リーラ・ジェイムズ(2010年6月28日)を小さく、若くした感じで可愛い。目を引く。けっこう叩き口は軽くなく、カウベル使いなどはキューバ人であることを差し出すか。彼女は一部パッドも扱う。なんにせよ、その佇まいにふれ、女性奏者好きのプリンス(2002年11月19日)が彼女を起用しても全然驚かないと強く思わせる。最初はガルシアとギター弾き語りのジューサとのデュオ。そして、そこに過去3度のジューサ公演に同行しているアルゼンチン人ベーシストのキケ・フェラーリ(2011年10月3日、2012年6月27日、2013年7月16日)が阿吽の呼吸で加わる。本編最後の曲だけ、彼はウッド・ベースを弾いた。

 ガットとスティール弦のアコースティック・ギターを弾くジューサだが、本当に達者。なんで、当初はベーシストとして世に出たのか。今回、グランド・ピアノをまっとうに弾きながら歌う曲もあった! それ、スペイン語だったが、曲調はスタンダードぽかったな。一方、喉のほうは、今回万全ではなかったようで、少し枯れ、濁っていた。それは、本人も認知するところのよう。喉をなるべく使わない方がいいはずなのに、彼女はアンコールにもこたえ、90分パフォーマンスする。才能と人間味を山ほど持つ人の、心をこめた“生”のパフォーマンスにはほんと頭を垂れる。あ、ガルシアと二人でやったアンコールでは、ジューサはエレクトリック・ベースをぶりぶり弾いた。そして、それも聞く者をノックした。

▶過去の、ジューサ
http://43142.diarynote.jp/200511130412510000/
http://43142.diarynote.jp/201110091257135964/
http://43142.diarynote.jp/201207031324148473/
http://43142.diarynote.jp/201307210746577102/
▶過去の、ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/201007061026239509/
▶過去のプリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm 
▶過去の、フェラーリ
http://43142.diarynote.jp/201110091257135964/
http://43142.diarynote.jp/201207031324148473/
http://43142.diarynote.jp/201307210746577102/
▶前回の、ザ・ミーターズ・エキスペリエンス
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/

 続いて、ザ・ミーターズ+P-ファンク+JBズという図式も少しは持つ、ファンク大御所奏者が集ったグループのライヴを、六本木・ビルボードライブ東京で見る。

 前回公演(2013年1月30日)から、脇役キーボード奏者とパーカッション奏者が外れ、名のある奏者が残ったと書けるか。進行役もするギターのリオ・ノセンテリ(2012年9月12日、2013年1月30日)、キーボードのバーニー・ウォレル(2007年8月7日、2011年8月12日、2012年7月27日、2013年1月30日)、トロンボーンのフレッド・ウィズリー(1999年10月25日、2007年2月2日、2007年2月4日、2007年4月18日、2007年9月13日)2008年4月1日)、ベースのビル・ディケンズ(2013年1月30日)、ドラマーのスタントン・ムーア(2000年8月13日、2000年12月7日、2001年10月13日、2002年7月28日、2004年2月5日、2007年12月11日、2010年3月29日、2012年7月27日、2012年7月30日、2013年1月30日)という面々。

 やる曲はけっこう前回と重なるが、今回は、ノセンテリが前に出るザ・ミーターズ曲、ウォーレルがリーダーシップをとるP-ファンク系、エリスが引っ張ったザ・JBズ調という流れで、大雑把ぎみに80分。ノセンテリはよりロックっぽい演奏を聞かせるとともにどこかジャジーと思わせるコード弾きもをし、ウォーレルはハモンドとアナログ・シンセサイザーを弾くだけでなく結構陽気に歌い、ウェズリーはうれしそうに盛り上げ役として振る舞い(もう少しトロンボーン・ソロをとってほしかった)、ギャラクティック(2000年8月13日、2000年12月7日、2001年10月13日、2002年7月28日、2004年2月5日、2007年12月11日、2010年3月29日)のムーアはときに小さなタンバリンを持ちハイハットを叩く。すると、どこかカーニヴァル臭が顕われる。ムーアは来月に自らがリーダーのピアノ・トリオでまた来日する。

▶過去の、ザ・ミーターズ・エキスペリエンス
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
▶過去の、ノセンテリ
http://43142.diarynote.jp/201209191235365909/
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
▶過去の、ウォレル
http://43142.diarynote.jp/200708051740450000/
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
http://43142.diarynote.jp/201208091303253665/
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
▶過去の、ウェズリー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200704251224130000/
http://43142.diarynote.jp/200709171112310000/
http://43142.diarynote.jp/200804030050390000/ 
▶過去の、ムーア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm ギャラクティック(バーク・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm ギャラクティック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm ギャラクティック(朝霧ジャム)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm  触れていないが、ギャラクティックで出演し、ジョージ・クリントンが飛び入り
http://43142.diarynote.jp/?day=20040205
http://43142.diarynote.jp/200712161021270000/
http://43142.diarynote.jp/201004080749482839/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120730
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/

<今日の、疑問>
 今、メインで使っているマック・ブック・プロは今年の4月に購入したものだが、ようやく分ったことが一つ。送付資料がエクセルで送られてきてそれを開いたままにしておくと。極端に反応が鈍くなる。。。。ワードも一気に遅くなり、イライラして原稿が書けない! エクセルはめったに開かないけど、これでいいの? 皆もそうなの?

 真実のヴォイス・インプロヴァイザー(2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日)が、来日が偶然重なった(のかな?)欧州人の知己2組とがっつり、リッチな出し物。新宿・ピットイン。彼女は各ユニットともに、それぞれ各所でギグをやったよう。

 まずは、ユーロ(内訳はスイス人2人、ドイツ人1人のよう)・クラリネット・トリオのポルタ・キウーザと重なるの巻。リーダー格の普段はレバノンのベイルートに居住しているらしいパエド・コンカが書いた45分の曲を悠然と4人で奏でる。ヴォーカルのパートも含め、全部譜面になっている(!)らしいが、この微妙な変化が連なる一部始終をなんと説明していいものか。クリネット音は音質も微妙に変えるが、それも譜面での指示か、それとも個人の裁量に委ねられているのか。その繊細にしてどこか素っ頓狂な部分も持つクラリネット音群はなんか雅楽の笙の音をもっと幽玄にしたようなというか、禅という言葉を用いたくなる手触りも持つ。そして、それらは見事に即興を孕む感覚をも持つわけで、そこに涼しい顔して重なる蜂谷もすごい。その様に触れると、根っこにある蓄積が多大と思わされる。いやはや。

 休憩を挟んで、次の約40分は、フランス人チェロ奏者のユーグ・ヴァンサンと蜂谷のデュオ。二人は共演作『メビウスの鳥』(Airplane)を出したばかり。で、こっちはイケイケの丁々発止。二人ともエフェクトをかけて対峙するが、音色はいじってもサンプリングの類いは用いず、実際に出す声と楽器音のみで勝負する。それにしても、ヴァンサンの種々様々な腕の立つ演奏には笑っちゃう。高尚な感じからエフェクト全開の“チェロ・ヘンドリックス”と言いたくなる狼藉演奏まで、自然な動きで技と発想を繰り出す。コード弾きもするし、はてはギターのように横に抱えて演奏しちゃう。イエイっ。終盤は蜂谷が弾くピアノとチェロのデュオ演奏となったが、その際はとても美しいサウンド・スケイプを描いた。

 そして、3つ目は、以上の5人による、一発ものセッション。ポルタ・キウーザ(イタリア語で、密室という意味のよう)の音だしで始まったため、大人っぽい手触りのもと、五者の創意は交錯した。もう1曲、やってほしかったなー。

 全3曲が、演じられた一夜。皆豊かにして、澄んでいる。実際はどうか知らぬが、音楽上ではとても健全高潔で、耳や生理の洗濯ができたとも思えた。この後、蜂谷は渡欧。今日の二組と、それぞれの楽旅を持つそうだ。

▶過去の、蜂谷
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/

<今日の、BGM>
 前に、この老舗ジャズ・クラブにはちゃんとDJセットが設置されているのを記したことがあったが、それを用いアナログ・レコードで場内音楽を出している事実に、この日初めて気付く。マイルス・デイヴィスの『ブルー・ヘイズ』(プレスティッジ、1954年)やソニー・クラーク・トリオの同名作(タイム、1960年)がライヴ前や休憩時にかかる。おお、両方ともそれなりに有名盤で、すんげえ久しぶりに耳にする。そりゃ悪いわけはないが、ずいぶん生真面目な選盤をするのだなと思ったら、2番目の休憩とギグ終了後にスピンされたのは、カーティス・メイフィールドの『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』(カートム、1975年)。ま、こちらもシカゴ派巨匠の著名盤ではありますね。一瞬ゆるい“シカゴ縛り”でかけているのかと思ったが、クラークはニューヨーカーだった。ともあれ、そのファルセットを聞きながら、やっぱりプリンスのそれって、メイフィールドから来ているところも大だよなあと思う。
 まず、南青山・ブルーノート東京。ショーン・レノン(2009年1月21日)がここではベースを弾くシャーロット・ケンプ・ミュール(彼女も2009年1月21日のとき、同行していたっけ?)と組んでいる少しレトロなサイケ・ポップ・ロック・バンドを見る。その二人に加え、ギタリスト(かなり上手。1曲わりとリフがはっきりした曲でのレノンとのギター音の重なりは相当カッコよかった)、キーボード奏者、ドラマー、打楽器奏者。

 おおおと即思ったのは、レノンの風体。髭を目一杯伸ばし、無造作に伸びた髪もとっても長い。1960年代後期の父親をこれは思い出させるなあ。ステージ背景にはサイケ気味映像がずっと流される。

 で、レノンの考える、サイケ傾向を通った臭みや浮遊感のようなものを露にしていく。けっこう、宙ぶらりんというか、行きそうで行かない〜それは、ミステリアスな所感も引き出すか〜、どこかシアトリカルでもある曲が多い。彼のキメラ・ミュージック発の『ミッドナイト・サン』からのものが大半であったのかな。で、ときに「ビコーズ」とか「カム・トゥゲザー」とかザ・ビートルズ時代のジョン・レノン曲の欠片を味合わせる部分があるのも、隠れたポイントと言えるだろう。

▶過去の、ショーン・レノン
http://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
http://43142.diarynote.jp/201105282358273180/ インタヴュー抜粋

 その後は、米国の<美は変調にあり>を地で行くジャズ・ピアノ・トリオのザ・バッド・プラス(2003年8月1〜2日、2004年5月13日、2005年8月29日、2008年2月20日、2011年3月9日、2013年11月20日)を丸の内・コットンクラブで見る。セカンド・ショウ。

 中西部のはみ出しジャズ・マンたち2000年に結成、ソニーからアルバムを出すとことで一躍ブライクした彼らは、その後ユニヴァーサル、E1からアルバムをリリースしてきたが、再びソニー/オーケイと契約し、すでに今年2枚のアルバム(ストラヴィンスキーの「春の祭典」のカヴァー・アルバム『The Rite of Spring』)と全オリジナルの通常作『Inevitable Western』)を発表している。そして、4ヶ月に渡る米国や欧州のツアーの合間に、1年ぶりにまたぽっこり来日公演を行った。そんな彼らは、この夏の米ダウンビート誌の批評家投票の<ジャズ・グループ>部門で2位になっている。

 疲弊した感じはなく、好調。2曲目に演奏した「キープス・ザ・バッグス・オフ・ユア・グラス・アンド・ザ・ビアーズ・オフ・ユア・アス」(彼らの通算2作目/ソニー発1作目『ジーズ・アー・ザ・ヴィスタス』収録)はセロニアス・モンクぽいところも持つブルージィ曲でグっと来る。この曲はドラマーのキングの作だが、新作『Inevitable Western』でも彼が作った曲が1番がイケているような。テーマ部で巧みに手拍子が取り入れられた「エピストラリー・エコーズ」も彼の曲であるし、なんだかんだキングは働いているなあ。近2作ソニー盤のジャケット・カヴァーも、彼が作っていたりする。実はかつての「キープス・ザ・バッグス・オフ・ユア・グラス・アンド・ザ・ビアーズ・オフ・ユア・アス」と今日の生演奏を比べると大幅に異なっていると感じさせるのはキングのドラミング。かつてはもっとイビツでとっちらかった種をばらまいていた。それはそれでザ・バッド・プラスの大きな要点となっていたのだが、表面上はもう少し抑えたドラミングを取ることで、三者のインタープレイの美点やオトナな諧謔はより見えやすくなっている。曲によっては、リズム・フィギュアが騙し絵的に自在に交錯したりもし、それにはしびれた。

 なお、彼らはかつて<史上最轟音のジャズ・トリオ>みたいな言い方をされたが、先に書いたようにキングが少し落ち着いた演奏をするようになったこともあり、その呼び名は返上だろう。また、彼らは悪意とともにポップ曲を解体するヴァージョンをアルバムに入れることでティピカルな存在になっていたが、そっちのほうへの注目が過剰なような気がして、彼らは近年はそちらも基本封印しているという。

▶過去の、ザ・バッド・プラス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://43142.diarynote.jp/200509011126570000/
http://43142.diarynote.jp/200802212249200000/
http://43142.diarynote.jp/201103171347055826/
http://43142.diarynote.jp/201311230757159421/

<今日の、MC>
 今晩見た二組ともに、ハピー・ハロウィーンと、ステージから言う。レノンは先の尖った長い帽子とマントを付けていたが、それはハロウィーンとは関係ないか。アーティスト写真にも、そういうのがあるし。例により、ザ・バッド・プラスは一番年長のリード・アンダーソンがMCを担当するが、なんか今回は日本語を交えて“ソニー、(また契約してくれて)ありがとう”みたいな歌も、イーサン・アイヴァーソンの伴奏のもと情けなく歌った。新しい2作品、日本盤は出ていないのだけど。今回、彼らには久しぶりにインタヴューもしたが、各人のリーダー作の話になったときに、デイヴィッド・キングがアンダーソンに「君は出すとしたら、ヴォーカル・アルバムだよな」とツっこみを入れる。今、ショウでアンダーソンはけっこうMCやりながら歌ったりしているらしい。ザ・バッド・プラスは時々ジョシュア・レッドマン(2003年1月16日、2009年4月21日、2010年9月5日、2012年5月31日、2014年5月15日)と一緒にショウをやっているが、次作はレッドマンとの共演盤になるそう。発売はレッドマンが契約するノンサッチ発となる。
 ともあれ、近年ジャズに見切りをつけたかのように新譜制作を辞めていた米国ソニーがオーケイの名を復活させて昨年から大々的にジャズ・アーティストを抱えているのは喜ばしいかぎり。今、それを舵取りしているのはユニヴァーサル・ミュージックやE1のジャズのプロダクツに関わっていたウルフ・ミュラーやチャック・ミッチェルのようだが、現在ソニー/オーケイにはジョン・メデスキ(1999年8月5日、2000年8月13日、2001年2月15日、2002年9月7日、2004年1月24日、2004年9月5日、2004年9月19日、2007年5月10日、2008年12月16日、2012年3月2日)、ビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日)、ブランフォード・マルサリス(2001年10月24日、2010年3月8日、2010年10月21日)他が続々集められている。もともと、オーケイは1910年代後期に活動を始めたレイス・ミュージックのレーベルで、1920年代にコロムビアに吸収された。再興されるのは今回2度目で、ソニー社員A&Rのマイケル・キャプランのダイレクションで1994年に新時代のブルージィ・レーベルとして大車輪したことがあった。そのときの中核アーティストはG・ラヴ&ザ・スペシャル・ソース(2000年1月25日、2004年11月17日、2005年5月25日、2005年6月2日、2006年10月23日、2008年10月9日、2011年11月4日、2014年10月13日)でしたね。
 それから、菊地雅章(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日)シンパのアイヴァーソンに、プーさんのアルバムのなかで何が好きと問うたら、ライヴは沢山見ているけど、アルバムはそんなに聞いていないと返事。そして、好きなアルバムとして彼が言及したのは、菊地も入っているポール・モーシャンの『On Broadway,Vol.4 or the Paradox of Continuity』(Winter & Winter,2006年)。え、これはないんではないの? それ、クリス・ポッター(2012年5月28日、2013年5月21日)が入り、ぼくが生で聞いて音程不安定でびっくりしたレベッカ・マーティン(2009年3月1日)も歌っている。でも、プーさんのことを、“ハーモニー・ジニアス”とアイヴァーソンは言っていました。
▶過去の、ザ・バッド・プラス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://43142.diarynote.jp/200509011126570000/
http://43142.diarynote.jp/200802212249200000/
http://43142.diarynote.jp/201103171347055826/
http://43142.diarynote.jp/201311230757159421/
▶過去の、レッドマン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100905
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
▶過去の、メデスキ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200401240000000000/
http://43142.diarynote.jp/200409050916440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20040919
http://43142.diarynote.jp/200705181809270000/
http://43142.diarynote.jp/200812281442184528/
http://43142.diarynote.jp/201203062004221304/
▶過去の、フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
▶過去の、ブランフォード・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201003101340038868/
http://43142.diarynote.jp/201010221631583852/
▶過去の、G・ラヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200411191620390000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050525
http://43142.diarynote.jp/200506021851060000/
http://43142.diarynote.jp/200610251744090000/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20111104
http://43142.diarynote.jp/201410210816075554/
▶過去の、ポッター
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
▶過去の、マーティン
http://www.allmusic.com/album/inevitable-western-mw0002702271

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