Zs、EP-4 unit3

2013年1月10日 音楽
 いやー、びっくり。まったくノーマークだった対象ゆえ、その驚き、手応え、感興は大きい。あわわわわ。代官山・UNIT。

 Zsはブルックリンをベースとする現代ジャズ・トリオ。と、書いてしまっていいのか。一応、テナー・サックス、ギター、ドラムという単位なのだがそれぞれエフェクター/機材音やPC音なども介して抽象的な音を出し、重ねたりもする。で、現代的音像や音色、芒洋感や刺々しさなどを存分に持つ拮抗表現を、他にあまり例を出せる感じナシに鮮やかに提出する。なんでも彼ら、マンハッタン・スクール・オブ・ミュージック(4年制の老舗音楽大学)の生徒たちで組まれた〜そういえば、先日のジェイソン・モラン(2113年1月6日、他)もそこを出ているはず〜そう。構成員の年齢は30代前半? ギタリストはこぎれいだが、サックスは仙人のような髭を蓄えている。

 30分ぐらいのかたまりを2本。繰り返すが、我が道を行くフレッシュきわまりない、即興演奏を聞かせてくれたなあ。彼ら、きっと旧来の流れにあるフリー・ジャズ演奏もできると推測されるが、そういうクリシェを避け、装置/機材の効用や他の音楽の動向なども掌握しつつ、大胆にして鮮やかな現代狼藉表現を提出する様にはヤラれた。おお、まだまだジャズ/インプロヴィゼーション音楽の行き方/個性の出し方はあるじゃんと実感。そのさい、その反復音/フレーズの採用は新奇さを導くおおいなる要素であると思うのだが、それも昨年暮れにぼくを感激させたニック・ベルチュ(2010年12月26日、他)の使い方より、スカしたアートな感覚からは離れ、もっと感覚が大胆で新しいと思ってしまう。

 今の時代、進行形ジャズの世界において、欧州勢に比すと米国のグループは少し軽んじられるところがなくもないとぼくは思うが、彼らは間違いなく素晴らしい。もし、彼らがブッゲ・ベッセルトフト(2012年4月29日、他)のジャズランドから送り出されたら、かなりの話題を呼ぶのではないか。とはいいつつ、ぼくが聞いたCDは実演内容よりもだいぶ落ちるのだけど。ともあれ、米国人の彼らの場合、繊細さや周到さだけでなく、コイツら普段デカいステーキをわしわし食っているんだろうなと思わす、ガサツさというか骨の太さを持っているのもいい。まあ、実は彼ら、ヴェジタリアンかもしれないが、生理のカンカクとして……。

 アンコールは5分強の一発もの。その際、ギター奏者が活躍したのだが、それはもろフリー・ジャズ・ギターの大家、デレク・ベイリー流儀にあるもの。笑った。やはり、おさえるべき先達の表現を通ったうえで、彼らは自分たちの道を進んでいるんだと思う。なお、この曲ではサックス奏者はサックスを吹かず、足元のエフェクターで音を出すことに終始していた。なお、彼らは2年前に来日しているようで、固定のファンもついているような感じもあった。

 前座で、昨年30年ぶりにライヴを行った京都発のアヴァン・ファンク・バンドのEP-4のメンバーである、佐藤薫と(川島)BANANA UGの音響系ノイズ・ユニットであるEP-4 unit3がパフォーマンス。PCや鍵盤でプリ・セット音や手弾き音を投げ出し合う2人に加えて、ドラマーの千住宗臣(2012年3月21日、他)が生気を加味する。今様な、ときに暴力的な音響表現。明快なベース音が効き、1980年頭のマテリアル(2005年8月20日)/ビル・ラズウェル(2011年3月7日、他)表現を想起させるような曲も一つ披露されたが、ぼくは大昔、彼らの事を日本のマテリアルみたいな感じで聞いていたのを思い出した。構成員の二人がヤレてなく、何気に健やかそうで、良かった。

<今日の、わあい>
 両グループともに、音はデカかったな。双方、自前の映像を背後に流していたのも同様。ところで、面白かったのは、Zsのテナー・サックス奏者は有線のマイクを朝顔に突っ込んで、音を取っていたこと。そんな乱暴、いや直接的なやり方をしている人を初めて見た。そして、MCも彼がほんわか担当していたのだが、その際は朝顔からマイクを抜いて、手に持ちながらしていた。そんなことも含め、ぼくにとってZsは本当にラヴリーきわまりないグループだった。