1986 年から1988年にかけて、アーロン・ネヴィル(2012年5月14日、他)を父に持つニューオーリンズ生まれのキーボード奏者はボニー・レイット、ザ・ローリング・ストーンズ、ロビー・ロバートソン、キーズ・リチャーズのアルバムに次々に参加する。そして、1988年に自らもポリドールから、スケールの大きなロック盤『If My Ancestors Could See Me Now』(当時はもちろん日本盤も出た)をリリース。それはニューオーリンズぽくはなかったものの、この後の剛毅なロック表現の20年はこの男が牛耳るという手応えを横溢させていて、ぼくはシビレまくった。その後もいろんな大物ロック・ミュージシャンにアイヴァン・ネヴィルは可愛がられ、リーダー作も出して来たが、残念ながら大きく抜きん出た存在となることはなかった。だが、ニューオーリンズ音楽界での存在感や重要度は増して行ったのは間違いなく、同音楽シーンの顔役的な人物という印象を持つ方もいるかもしれない。

 ダンプスタファンクは、そんなアイヴァン・ネヴィル(キーボード、歌。一部、ギターも)を中心に、同地恒例大フェスであるジャズ&ヘリティッジ・フェスティヴァルのために最初組まれたんだっけ? ともあれ、毎年そのニューオーリンズの有名フェスにでているようでもあるし、そのライヴ盤だけではなく、スタジオ録音作も出している。で、今回はフジ・ロックにお呼ばれし、ついでに東京公演もやった。渋谷・クラブクアトロ。

 まず、前座のブラック・ボトム・ブラス・バンド(2002年10月16日、他)が会場後ろから演奏しながら練り歩いて、ステージにあがる。そして、そこにアタマから加わるドラマーはなんとギャラクティック(やはり、今年フジに出演)のスタントン・ムーア。←本当にうれしそうに、叩く。わーい。両者の重なりはばっちり。やっぱ、BBBBっていいなー。アルト奏者がとったバリトン・サックスのソロはかなり良かった。若い小さな女性がトラペットで加わっていたが、新メンバーなのだろうか?

 そして、アイヴァン・ネヴィル、トニー・ホール(ベース、ギター、歌)、ニック・ダニエルズ(ベース、歌)、イアン・ネヴィル(ギター。2009年7月25日)、ニッキー・グラスビー(ドラム)という布陣〜基本、2ベース編成〜のダンプスタファンクの実演。過去、ドラマーはザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンドやパパ・グロウズ・ファンクにいたレイモンド・ウェバー(2012年2月15日、他)が叩いていたはずだが、今は若い女性に変わっている。

 そのパフォーマンスは完全なジャム。荒々しく、ごんごんとリフを重ねて行くという感じ。ロック度もCDで聞く以上に高い感じもあったが、それは新ドラマーの叩き口がもたらす部分も大きかったかもしれない。あまり溜めのないそれはソウライヴ(2012年5月25日、他)のアラン・エヴァンス的な感じ(彼も、溜めをもたずロックっぽいと言われる)あり、また更に力づくなドカスカ感を彼女は相当に持つ。彼女のドラミングを見ながら、上原ひろみ(2012年7月25日、他。彼女もフジ・ロックに出演。熱い声援を受けていた)はロック的なドラマーを雇いたいなら、どこか不毛な部分をぼくは感じてしまうサイモン・フィリップスなぞを雇わずに彼女を雇えばいいのにと思わずにはいられず。

 インスト部中心、非ニューオーリンズなカヴァー曲多し。歌はアイヴァンが一番歌うが、ホールやグラスビーのほうがうまい。ザ・ミーターズの「アフリカ」はその地名を連呼する部分を「ニューオーリンズ」と代えて披露(「アフリカ」を「ハリウッド」としカヴァーしたのは、ザ・レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)。スタントン・ムーアが出て来て叩いたのは、この曲だっけか。デイヴィッド・ボウイの「フェイム」(2011年6月22日、参照)も屈託なく披露していたな。あと、ファンカデリックの「ワン・ネイション・アンダー・ア・ブルーヴ」もやった。最後に、BBBBも加わるかなーと思って見ていたら、それはなし。残念っ。

<今日の、CD>
 会場で知人に、ダンプスタファンクのマネージャーを紹介してもらう。LA(ルイジアナではなく、ロス・アンジェルスの略ね)のシルヴァーバックという会社のお兄ちゃんで、現在フィッシュボーンも同社に所属とか。わーい。そのジョンさん、同社所属アーティストのCD群を裏から持って来てくれる。ダンプスタファンク以外のブツ群は、皆レゲエをやるバンドだった。