*JAZZ100年プロジェクト directed by 挾間美帆 with デンマーク・ラジオ・ビッグバンド(NHKホール)
全然内容をチェックしていなくて、挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日)が自分のビッグ・バンドで、いろんな有名人をゲストを入れたことをやるのかと安易に考えていたら、ぜんぜん違った。もっと大風呂敷な独自規格の出し物で、つっこみ所は少なくなかったけど、よくぞやったなとまずはほめたい。独自を目指す事はいいことだ。
ジャズの歴史の流れをいくつかの様式に分けて、挾間が編曲した大所帯サウンド+ゲストで繰り広げるという企画ナリ。<ニューオーリンズ・ジャズ ゲスト:場内練り歩きのトレメ・ブラス・バンド(2003年10月15日、2017年9月2日)>→<スウィング・ジャズ ゲスト:アモーレ&ルル(日本人の男女ダンサー)>→<ビ・バップ ゲスト:日野晧正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日、2015年3月10日)>→<クール・ジャズ ゲスト:メロメロだったが少し歌ったりもしてジャズ的にチャーミングだったリー・コニッツ(2013年9月7日)>→<フリー・ジャズ ゲスト:山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日、2017年7月8日、2017年9月2日)>→<フュージョン ゲスト:リー・リトナー(2005年6月20日、2009年9月5日、2015年11月4日)>→<今のジャズ ゲスト:スナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)のコーリー・ヘンリー)というような流れだったかな。
どうして、いわゆるモダン・ジャズのひな形となった<ハード・バップ>という項目がないんだァとは、いの一番に言いたくはなる。時間の制約があるとはいえ、それはまずい。ビ・バップの項目にハード・バップ要素も少し加えました、という説明はなされる? その区分けやゲスト設定は主催者側がやったようで、また自分のバンドではなく不慣れなデンマーク・ラジオ・ビッグバンドを使うということで、狭間はよく受けたよなあ。いや、デカいプロジェクト、そりゃ意気に燃えて受けるか。
<フリー・ジャズ>の項は、駄目ダメ。フリー・ジャズ要素に欠ける陳腐なアンサンブルが取られ、奏者の自由度やハプニング性が持ち込まれておらず、悲しくなった。挾間はあまりフリー・ジャズは聞いていないのか? ヒューマン・アーツ・アンサブルとかラズウェル・ラッドの大所帯ものとか本国でも昔からあるし、ICPオーケストラ(2014年9月6日。そういえば、今年の東京ジャズにもハン・ベニンクは別のプロジェクトでやってきていた)をはじめ欧州にはフリー系オーケストラはいろいろと存在し、日本には藤井郷子(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日、2017年1月9日)オーケストラがいる。歯がゆくてしょうがなかった。山下洋輔のマージャン牌かき回し奏法も言わば往年のフリー・ジャズの記号にすぎないわけで、予定調和な聴感しか与えない。それを逆手に取りサンプリング音のように、挾間がキューを頻繁に出して山下に3〜10秒ほどの突風的ピアノ演奏を随時加えれたりしたならおもしろいのにと思った。
<フュージョン>の項では、ジャコ・パストリス・ビッグ・バンドの「チキン」を取り上げる。それ、編成の違いによる手直しはあるものの、パストリアスのヴァージョンをひねらず流用。やっぱ、元アレンジがいいよなあ(よくスティール・パンやハーモニカを編成にくみこんだな)、→いまだ作曲者のピー・ウィ・エリス(2005年9月24日、2007年9月13日、2008年4月1日、2012年4月9日、2012年11月21日、2013年7月4日、2016年2月3日)には印税がけっこう入っているのかなあと、思いはとんだ。
最後の項は挾間の本領発揮といった仕上がりで、とっても良かった。まず、真っ黒いマッド・サイエンティストてな感じのコーリー・ヘンリーの“電波系”キーボード群のソロ(エリントン「キャヴァン」のデフォルメ演奏だったっけ?)から始まり、そこに精気に満ちたビッグ・バンド音が重なっていき、表情がグルーヴィに変化していく。それ、見事に”ジャズは伝統をふまえつつこれからも飛翔する”というテーマを具現していたはずだ。拍手。
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
▶︎過去の、トレメ・ブラス・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶過去の、日野皓正
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
http://43142.diarynote.jp/201404070654593139/
http://43142.diarynote.jp/201503110740041978/
▶︎過去の、リー・コニッツ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907
▶過去の、山下洋輔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
▶︎過去の、ICPオーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
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▶過去の、リー・リトナー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/?day=20050620
http://43142.diarynote.jp/201511060854338289/
▶過去の、藤井郷子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703 藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201008261616172628/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120701
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
http://43142.diarynote.jp/201701101136544400/ いろいろ
▶過去の、ピー・ウィー・エリス
http://43142.diarynote.jp/?day=20050924
http://43142.diarynote.jp/200709171112310000/
http://43142.diarynote.jp/200804030050390000/
http://43142.diarynote.jp/201204150858456025/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121121
http://43142.diarynote.jp/201307071319405650/
http://43142.diarynote.jp/201602040957261258/
▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
*シャイ・マエストロ・トリオ +カミラ・メサ(NHKホール)
いま個人的にトップ級に好きなジャズ・ピアニストであるシャイ・マエストロ(2012年3月12日、2016年1月4日、2016年6月11日、2016年6月11日)のワーキング・トリオの公演は、現在彼が住むNYのご近所さんでもあるチリ人シンガー/ギタリストであるカミラ・ミザをゲストにむかえてのもの。リズムはコントラバスのホルヘ・ローデル(2011年7月20日、2016年6月11日、2017年2月1日)と、ドラムのジヴ・ラヴィッツ(2016年6月11日)。順に、イスラエル人、チリ人、ペルー人、イスラエル人、ですね。昨年9月に、マエストロとメサはデュオの来日ツアーをやっていたりもして、2人はほんと距離が近い。
あたまのほうは、トリオによる公演。なんか、去年に見たときよりもおおらかで、分かりやすい演奏をやっていると感じる。それ、フェスであることを考慮にいれたか、それとも半分以上に加わり歌ったメサの持ち味との落差をなくそうとしたのか。
NYの今の技アリジャズ・マンたちから支持を受けもするメサはギタリストとしても個性を持つと思うが、サニーサイド発の2015年『Traces』は完全に歌もの作として勝負したアルバムで、今回でも陰影を持つ超然とした歌を全面的に聞かせる。それらは彼女のオリジナルであったのか? ”どこかに南米属性が活きた、今の流動性にも富むNYのシンガー・ソングライター表現”をシャイ・マエストロ・トリオをバックに開くというものを、4人は悠々と聞かせてくれた。
▶︎過去の、シャイ・マエストロ
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201601050914043127/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
▶︎過去の、ホルヘ・ローデル
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
▶︎過去の、ジヴ・ラヴィッツ
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
*チック・コリア&ゴンサロ・ルバルカバ(NHKホール)
フルの大きさのグラウンド・ピアノが互い違いに向き合う。その図には、なんか畏怖(と書くと、すこし違うかも知れないが)を感じるなあ。米国人ピアニスト(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日、2017年9月2日)とキューバ人ピアニスト(2005年3月16日、2007年11月21日、2010年8月22日、2014年1月10日、2014年1月12日、2015年4月7日)の、デュオ演奏。きっちり曲を素材においてやるのではなく、フリーフォーム〜お互いの反応により流れていくようなパフォーマンスが示された。ゆえに、分かりづらさを感じる聞き手もいたかな。だから、最後に著名コリア曲「スペイン」の旋律になった際には拍手がおきますね。ともに実力者ではあるものの個性は離れるかと思っていたら、両者の指さばきや流儀が意外なほど似ていると感じる。サッカーで両チームのフォーメイションが同じでガチなせめぎ合いとなることを“ミラー”と言ったりするが、静的な部分を持つもののミラーなピアノ・デュオであるとも、ぼくは感じた。
▶過去の、チック・コリア
http://43142.diarynote.jp/?day=20060903
http://43142.diarynote.jp/200710121726160000/
http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶過去の、ゴンサロ・ルバルカバ
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201401171004104264/
http://43142.diarynote.jp/201504081451142675/
*コーリー・ヘンリー & ザ・ファンク・アポストルズ(WWW)
スナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)のキーボード奏者であり、一時はザ・ルーツ(2002年12月29日、 2003年12月2日、2004年9月19日、2007年1月15日、2013年12月19日)なんかとも近い関係にいた御仁のリーダー・バンドはこんな感じだったのか。彼のリーダー作『ザ・リヴァイヴァル』(グラウンドアップ、2106年)は“教会”きわまりないゴスペル・オルガン盤で、それに準ずるゴスペル調のパフォーマンスを披露するのかと思いきやさにあらず。彼は、もっといろんなことができる、総花的なブラック表現を聞かせるクリエイターだった。ショウの冒頭の方はそんな先入観を持っていたので、なんかぬるいなー、フュージョンぽいなーと思っていたのだが、本人や女性コーラスが歌うようになってからは、弾んだブラック・ポップ表現が歓びとともに溢れ出るという感じで高揚。まあ、NHKホールとWWWの間に時間がありしこたま飲んで、酔っ払っていたんだけどね。
しかし、その自由自在でしややかなキーボード扱い/指さばきは、P-ファンクのバーニー・ウォーレル(2007年8月7日、2011年8月12日、2012年7月27日、2013年1月30日、2014年10月28日)を思い出させるところがあるかも。なお、彼の場合はギャラクティック(2000年8月13日、2000年12月7日、2001年10月13日、2002年7月28日、2004年2月5日、2007年12月11日、2010年3月29日)やザ・リバース・ブラス・バンド(2007年2月6日)などにも関与するニューオーリンズの辣腕トロンボーン奏者と同じ名前なので、間違いやすい。
▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、ザ・ルーツ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040919
http://43142.diarynote.jp/200701201415300000/
http://43142.diarynote.jp/201312200917503345/
▶過去の、バーニー・ウォレル
http://43142.diarynote.jp/200708051740450000/
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
http://43142.diarynote.jp/201208091303253665/
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
http://43142.diarynote.jp/?day=20141028
▶過去の、ギャラクティック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm (バーク・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm (パークタワー・ブルース・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm (朝霧ジャム)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm (フジ・ロック)触れていないが、ジョージ・クリントンが飛び入り
http://43142.diarynote.jp/?day=20040205
http://43142.diarynote.jp/200712161021270000/
http://43142.diarynote.jp/201004080749482839/
▶過去の、ザ・リバース・ブラス・バンド
http://43142.diarynote.jp/200702122331460000/
<今日の、会場>
NHKホールで、ステージ前のオーケストラ・ピットをそのまま残してショウをやっていたのには、2階席から見ていておおいに違和感を感じた。それ、そのなかでスタッフが自由に動けて撮影しやすいことを考慮に入れてのことだろうが、なんとかならないのか。サッカーの試合を専用のスタジアムでなく、陸上トラック付きの会場で見ているようなキブンを持った。また、ぼくは一切そういう場面には遭遇しなかったが、知人たちが座った席は客席を照らす正面からの光が直接あたり、眩しくてしょうがなかったこと。それもテレビ番組用撮影を考慮してのものだろうが、それについては非難囂々でしたよ。それから、東京国際フォーラム時代からの伝統(?)であるのだが、休憩時にトイレがものすごく長蛇の列。ただし、メイン会場と野外無料ステージは、前より少し行き来しやすい。
マイナスに感じるところはあっても、前日の冒頭に書いたように、ぼくは今後も渋谷でやってほしい。東京国際フォーラムのホールAはジャズをやるには、デカすぎると思う。渋谷きっての地元企業(?)である東急も駅内や百貨店渋谷本店前に無料ステージを作るなど、協力的であるようであるし。しょぼかったが、センター街でブラス・バンドのパレードが実現するなど、地元の商店街も協力的であるのかな?
今年の野外の無料ステージは出演者がぼくにとってはいまいちで見たいと思わせる出演者があまりいなかったが、ちらりとのぞくと結構な人だかり。すぐ先にある代々木公園の野外ステージを用いたらいいのにと思う。ついでに、この前ブラジル・フェスティヴァル(2017年7月16日)に来たときは暑かったなあと思い出しつつ、そのステージ付きの広いスペースに行ったら、防災関連のイヴェントをやっていて、自衛隊の車両も止まっていた。そういえば、こんなに暑くない気候の東京ジャズは初めてのような……。
それから、今のフェスってどこのものでも時間通りに進むという所感を持っているが、こと東京ジャズはなぜかそうではないという印象がある。この日のNHKホールの昼の部の最後の出し物(コリアとルバルカバ)は、40分押しで始まった。
全然内容をチェックしていなくて、挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日)が自分のビッグ・バンドで、いろんな有名人をゲストを入れたことをやるのかと安易に考えていたら、ぜんぜん違った。もっと大風呂敷な独自規格の出し物で、つっこみ所は少なくなかったけど、よくぞやったなとまずはほめたい。独自を目指す事はいいことだ。
ジャズの歴史の流れをいくつかの様式に分けて、挾間が編曲した大所帯サウンド+ゲストで繰り広げるという企画ナリ。<ニューオーリンズ・ジャズ ゲスト:場内練り歩きのトレメ・ブラス・バンド(2003年10月15日、2017年9月2日)>→<スウィング・ジャズ ゲスト:アモーレ&ルル(日本人の男女ダンサー)>→<ビ・バップ ゲスト:日野晧正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日、2015年3月10日)>→<クール・ジャズ ゲスト:メロメロだったが少し歌ったりもしてジャズ的にチャーミングだったリー・コニッツ(2013年9月7日)>→<フリー・ジャズ ゲスト:山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日、2017年7月8日、2017年9月2日)>→<フュージョン ゲスト:リー・リトナー(2005年6月20日、2009年9月5日、2015年11月4日)>→<今のジャズ ゲスト:スナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)のコーリー・ヘンリー)というような流れだったかな。
どうして、いわゆるモダン・ジャズのひな形となった<ハード・バップ>という項目がないんだァとは、いの一番に言いたくはなる。時間の制約があるとはいえ、それはまずい。ビ・バップの項目にハード・バップ要素も少し加えました、という説明はなされる? その区分けやゲスト設定は主催者側がやったようで、また自分のバンドではなく不慣れなデンマーク・ラジオ・ビッグバンドを使うということで、狭間はよく受けたよなあ。いや、デカいプロジェクト、そりゃ意気に燃えて受けるか。
<フリー・ジャズ>の項は、駄目ダメ。フリー・ジャズ要素に欠ける陳腐なアンサンブルが取られ、奏者の自由度やハプニング性が持ち込まれておらず、悲しくなった。挾間はあまりフリー・ジャズは聞いていないのか? ヒューマン・アーツ・アンサブルとかラズウェル・ラッドの大所帯ものとか本国でも昔からあるし、ICPオーケストラ(2014年9月6日。そういえば、今年の東京ジャズにもハン・ベニンクは別のプロジェクトでやってきていた)をはじめ欧州にはフリー系オーケストラはいろいろと存在し、日本には藤井郷子(1999年8月16日、2000年6月2日、2000年10月1日、2002年8月5日、2003年1月21日、2003年4月7日、2004年7月27日、2005年2月10日、2005年11月28日、2005年12月11日、2006年7月3日、2008年8月24日、2008年12月17日、2010年1月9日、2010年6月7日、2010年8月6日、2012年7月1日、2016年1月28日、2017年1月9日)オーケストラがいる。歯がゆくてしょうがなかった。山下洋輔のマージャン牌かき回し奏法も言わば往年のフリー・ジャズの記号にすぎないわけで、予定調和な聴感しか与えない。それを逆手に取りサンプリング音のように、挾間がキューを頻繁に出して山下に3〜10秒ほどの突風的ピアノ演奏を随時加えれたりしたならおもしろいのにと思った。
<フュージョン>の項では、ジャコ・パストリス・ビッグ・バンドの「チキン」を取り上げる。それ、編成の違いによる手直しはあるものの、パストリアスのヴァージョンをひねらず流用。やっぱ、元アレンジがいいよなあ(よくスティール・パンやハーモニカを編成にくみこんだな)、→いまだ作曲者のピー・ウィ・エリス(2005年9月24日、2007年9月13日、2008年4月1日、2012年4月9日、2012年11月21日、2013年7月4日、2016年2月3日)には印税がけっこう入っているのかなあと、思いはとんだ。
最後の項は挾間の本領発揮といった仕上がりで、とっても良かった。まず、真っ黒いマッド・サイエンティストてな感じのコーリー・ヘンリーの“電波系”キーボード群のソロ(エリントン「キャヴァン」のデフォルメ演奏だったっけ?)から始まり、そこに精気に満ちたビッグ・バンド音が重なっていき、表情がグルーヴィに変化していく。それ、見事に”ジャズは伝統をふまえつつこれからも飛翔する”というテーマを具現していたはずだ。拍手。
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
▶︎過去の、トレメ・ブラス・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
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▶過去の、日野皓正
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http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
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http://43142.diarynote.jp/201503110740041978/
▶︎過去の、リー・コニッツ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907
▶過去の、山下洋輔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
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http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
▶︎過去の、ICPオーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶過去の、リー・リトナー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/?day=20050620
http://43142.diarynote.jp/201511060854338289/
▶過去の、藤井郷子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-6.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm 藤井カルテット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 藤井3+1
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm 藤井4
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200407271618520000/ 藤井3+1
http://43142.diarynote.jp/?day=20050210 田村カルテット
http://43142.diarynote.jp/200512020244540000/ ザ・レイモンド・マクドナルド・トウキョウ・インプロヴァイザーズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200512140951100000/ エリオット・シャープ
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703 藤井オーケストラ名古屋/同東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824 レイモンド・マクドナルド・インターナショナル・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/200812281445103402/ 藤井4
http://43142.diarynote.jp/201001101203088126/ ガトー・リブレ、ファースト・ミーティング、ma-do、オーケストラ東京
http://43142.diarynote.jp/?day=20100607 ファースト・ミーティング
http://43142.diarynote.jp/201008261616172628/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120701
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/ KAZE
http://43142.diarynote.jp/201701101136544400/ いろいろ
▶過去の、ピー・ウィー・エリス
http://43142.diarynote.jp/?day=20050924
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▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
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http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
*シャイ・マエストロ・トリオ +カミラ・メサ(NHKホール)
いま個人的にトップ級に好きなジャズ・ピアニストであるシャイ・マエストロ(2012年3月12日、2016年1月4日、2016年6月11日、2016年6月11日)のワーキング・トリオの公演は、現在彼が住むNYのご近所さんでもあるチリ人シンガー/ギタリストであるカミラ・ミザをゲストにむかえてのもの。リズムはコントラバスのホルヘ・ローデル(2011年7月20日、2016年6月11日、2017年2月1日)と、ドラムのジヴ・ラヴィッツ(2016年6月11日)。順に、イスラエル人、チリ人、ペルー人、イスラエル人、ですね。昨年9月に、マエストロとメサはデュオの来日ツアーをやっていたりもして、2人はほんと距離が近い。
あたまのほうは、トリオによる公演。なんか、去年に見たときよりもおおらかで、分かりやすい演奏をやっていると感じる。それ、フェスであることを考慮にいれたか、それとも半分以上に加わり歌ったメサの持ち味との落差をなくそうとしたのか。
NYの今の技アリジャズ・マンたちから支持を受けもするメサはギタリストとしても個性を持つと思うが、サニーサイド発の2015年『Traces』は完全に歌もの作として勝負したアルバムで、今回でも陰影を持つ超然とした歌を全面的に聞かせる。それらは彼女のオリジナルであったのか? ”どこかに南米属性が活きた、今の流動性にも富むNYのシンガー・ソングライター表現”をシャイ・マエストロ・トリオをバックに開くというものを、4人は悠々と聞かせてくれた。
▶︎過去の、シャイ・マエストロ
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201601050914043127/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
▶︎過去の、ホルヘ・ローデル
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
▶︎過去の、ジヴ・ラヴィッツ
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
*チック・コリア&ゴンサロ・ルバルカバ(NHKホール)
フルの大きさのグラウンド・ピアノが互い違いに向き合う。その図には、なんか畏怖(と書くと、すこし違うかも知れないが)を感じるなあ。米国人ピアニスト(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日、2017年9月2日)とキューバ人ピアニスト(2005年3月16日、2007年11月21日、2010年8月22日、2014年1月10日、2014年1月12日、2015年4月7日)の、デュオ演奏。きっちり曲を素材においてやるのではなく、フリーフォーム〜お互いの反応により流れていくようなパフォーマンスが示された。ゆえに、分かりづらさを感じる聞き手もいたかな。だから、最後に著名コリア曲「スペイン」の旋律になった際には拍手がおきますね。ともに実力者ではあるものの個性は離れるかと思っていたら、両者の指さばきや流儀が意外なほど似ていると感じる。サッカーで両チームのフォーメイションが同じでガチなせめぎ合いとなることを“ミラー”と言ったりするが、静的な部分を持つもののミラーなピアノ・デュオであるとも、ぼくは感じた。
▶過去の、チック・コリア
http://43142.diarynote.jp/?day=20060903
http://43142.diarynote.jp/200710121726160000/
http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶過去の、ゴンサロ・ルバルカバ
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201401171004104264/
http://43142.diarynote.jp/201504081451142675/
*コーリー・ヘンリー & ザ・ファンク・アポストルズ(WWW)
スナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)のキーボード奏者であり、一時はザ・ルーツ(2002年12月29日、 2003年12月2日、2004年9月19日、2007年1月15日、2013年12月19日)なんかとも近い関係にいた御仁のリーダー・バンドはこんな感じだったのか。彼のリーダー作『ザ・リヴァイヴァル』(グラウンドアップ、2106年)は“教会”きわまりないゴスペル・オルガン盤で、それに準ずるゴスペル調のパフォーマンスを披露するのかと思いきやさにあらず。彼は、もっといろんなことができる、総花的なブラック表現を聞かせるクリエイターだった。ショウの冒頭の方はそんな先入観を持っていたので、なんかぬるいなー、フュージョンぽいなーと思っていたのだが、本人や女性コーラスが歌うようになってからは、弾んだブラック・ポップ表現が歓びとともに溢れ出るという感じで高揚。まあ、NHKホールとWWWの間に時間がありしこたま飲んで、酔っ払っていたんだけどね。
しかし、その自由自在でしややかなキーボード扱い/指さばきは、P-ファンクのバーニー・ウォーレル(2007年8月7日、2011年8月12日、2012年7月27日、2013年1月30日、2014年10月28日)を思い出させるところがあるかも。なお、彼の場合はギャラクティック(2000年8月13日、2000年12月7日、2001年10月13日、2002年7月28日、2004年2月5日、2007年12月11日、2010年3月29日)やザ・リバース・ブラス・バンド(2007年2月6日)などにも関与するニューオーリンズの辣腕トロンボーン奏者と同じ名前なので、間違いやすい。
▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、ザ・ルーツ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040919
http://43142.diarynote.jp/200701201415300000/
http://43142.diarynote.jp/201312200917503345/
▶過去の、バーニー・ウォレル
http://43142.diarynote.jp/200708051740450000/
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
http://43142.diarynote.jp/201208091303253665/
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
http://43142.diarynote.jp/?day=20141028
▶過去の、ギャラクティック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm (バーク・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm (パークタワー・ブルース・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm (朝霧ジャム)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm (フジ・ロック)触れていないが、ジョージ・クリントンが飛び入り
http://43142.diarynote.jp/?day=20040205
http://43142.diarynote.jp/200712161021270000/
http://43142.diarynote.jp/201004080749482839/
▶過去の、ザ・リバース・ブラス・バンド
http://43142.diarynote.jp/200702122331460000/
<今日の、会場>
NHKホールで、ステージ前のオーケストラ・ピットをそのまま残してショウをやっていたのには、2階席から見ていておおいに違和感を感じた。それ、そのなかでスタッフが自由に動けて撮影しやすいことを考慮に入れてのことだろうが、なんとかならないのか。サッカーの試合を専用のスタジアムでなく、陸上トラック付きの会場で見ているようなキブンを持った。また、ぼくは一切そういう場面には遭遇しなかったが、知人たちが座った席は客席を照らす正面からの光が直接あたり、眩しくてしょうがなかったこと。それもテレビ番組用撮影を考慮してのものだろうが、それについては非難囂々でしたよ。それから、東京国際フォーラム時代からの伝統(?)であるのだが、休憩時にトイレがものすごく長蛇の列。ただし、メイン会場と野外無料ステージは、前より少し行き来しやすい。
マイナスに感じるところはあっても、前日の冒頭に書いたように、ぼくは今後も渋谷でやってほしい。東京国際フォーラムのホールAはジャズをやるには、デカすぎると思う。渋谷きっての地元企業(?)である東急も駅内や百貨店渋谷本店前に無料ステージを作るなど、協力的であるようであるし。しょぼかったが、センター街でブラス・バンドのパレードが実現するなど、地元の商店街も協力的であるのかな?
今年の野外の無料ステージは出演者がぼくにとってはいまいちで見たいと思わせる出演者があまりいなかったが、ちらりとのぞくと結構な人だかり。すぐ先にある代々木公園の野外ステージを用いたらいいのにと思う。ついでに、この前ブラジル・フェスティヴァル(2017年7月16日)に来たときは暑かったなあと思い出しつつ、そのステージ付きの広いスペースに行ったら、防災関連のイヴェントをやっていて、自衛隊の車両も止まっていた。そういえば、こんなに暑くない気候の東京ジャズは初めてのような……。
それから、今のフェスってどこのものでも時間通りに進むという所感を持っているが、こと東京ジャズはなぜかそうではないという印象がある。この日のNHKホールの昼の部の最後の出し物(コリアとルバルカバ)は、40分押しで始まった。