まず、六本木・ビルボードライブ東京で、ニュージャージーの直球型ヴェテラン・ロッカーとそのバンドを見る。エピックやマーキュリー他から、なんだかんだ30作ぐらいは出している、顔役とも言っていい御仁かな。同じニュージャージーの担い手であるブルース・スプリングスティーンやボン・ジョヴィとの関係を重視する人もいるかもしれないが、双方ともぼくにとっては興味を持つことができない人たちなので、それについてはどうでもいい。

 ヴォーカルのサウスサイド・ジョニー(少し、ハーモニカも吹いた)、キーボードのジェフリー・カージ(コーラスをつけるだけでなく、前に出てきてジョニーとデュエットもした)、ギターのグレン・アレクサンダー(いかにもギタリスト的風情あり)、ベースのジョン・コンテ、ドラムのトーマス・セグゥソ、テナー・サックス(一部、バリトン・サックスも吹いた)のジョン・アイズレー、トランペットのクリストファー・アンダーソン、トロンボーンのニール・ポーリーという面々。ときに皆でフリをつけたりもする3人のホーン隊がいるように、基本はどすこいロックだがソウルっぽい部分も面々は持つ。

 現在68歳のサウスサイド・ジョニーは公演告知の写真を見るとじじむさかったが、生だと太ってもおらず髪の毛もあるし、年齢よりは若く感じられるか。その歌声はそれなりに濁りを含むものだが、いい感じ。だみ声というと、たとえばジョー・コッカーのそれは苦手なのだが、彼の場合は伸びや弾みがあって、ぼくの好み。バンド音もこなれていて(当然、譜面を置く者もいず)これはバンドの音だと思わせるものあり、その総体は“オレは変わらなくてもいい実直なロックンロールを聞いている!”という気持ちにしっかりさせた。面々、ナイス・ガイそうだったのもマル。

 その後は、南青山・ブルーノート東京に移動して、キューバ人ピニストのロベルト・フォンセカ(2003年10月14日、2010年1月26日、2013年1月12日、2014年3月19日)のショウを見る。

 ドラムのラムセス・ロドリゲス、ベース(ダブル・ベースが中心)のジャンディ・マルティネスは前回のトリオ公演と同じで、今回は曲によりパーカッションのアデル・ゴンザレスが加わる。ゴンザレスはコンガとバタ・ドラム、つまり素手で叩く打楽器を扱い、スティックを持つロドリゲスはドラム・キットの横にティンバレスとカウベルも置き、そちらもときに扱う。フォンセカは昨年秋に米インパルス!からトロンボーン・ショーティ他いろんなゲストを迎えた新作『ABUC』をリリース、ベースとドラムはそこに参加していたが、コンガ奏者は未参加だった。

 そんなキューバン・ミュージックとつながる腕の立つ面々を従え、フォンセカは楽に指をはわす。一部は詠唱もしたり、キーボードも弾き、またPC経由で肉声を流す曲もあった。かつてはハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日)がラテン・ジャズをやったらこうなるといったようなパフォーマンスを聞かせたこともあった彼だが、今はいろいろな経験や見聞を積み重ねて、伸び伸びと自らの今のラテン・ジャズを求めていると痛感。そこにあるのは、クラーヴェと隣り合わせの、豊かな歌心だ。

▶過去の、ロベルト・フォンセカ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201001291746252351/
http://43142.diarynote.jp/201301161544336447/
http://43142.diarynote.jp/201403240917556171/
http://43142.diarynote.jp/201509291629428595/ (最後のほう、ロベルト・フォンセカへのインタヴュー)
http://43142.diarynote.jp/201510070854114699/
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903

<今日の、変化の認知>
 ビルボードに向かう際、地下鉄千代田線と乗り入れしている小田急ロマンスカー(下り方面いき)が、表参道駅にとまる。けっこう、ここから乗る人がいるんだな。なんか、その普通と異なる車両を見るだけでうれしい。そういえば、昨日は東京駅から新幹線に乗ったんだけど、そのときはちょい乗車時間まで余裕があったので(割とそういう慎重な部分もあるのです)、ホームを行き来してキョロキョロしちゃった。たとえば、新函館駅行きが出ていったので、終点には何時に着くんですかと駅員に尋ねたり、向かいにとまっていた上越新幹線は2階建て車両でおおっとなったり。今、新幹線の2階建て車両は空気抵抗の問題とかもあってすでに作っていないというのは新聞かなんかで読んだことはあって、たしかにホームに待機しているそれは古そうだった。そういえば、大昔東海道新幹線にも2階建て車両が走っており、下フロアのほうは個室になっていて、ぼくはそれに乗った記憶がある。子供のころは自動車/バス派で、鉄道はそれほど好きじゃなかった。今、こんなに(一瞬ではあるけど)鉄道に興味を持つとは自分で意外なりィ。