東京ジャズ

2017年9月2日 音楽
 今年の東京ジャズの場は、主催者NHKのお膝もとである、渋谷となった。それ、従来のメイン会場である東京国際フォーラム改築ゆえと説明されていたように思う(でも、昨日横を通ったら、普通に営業がなされていた)が、ぼくはこのまま渋谷開催のままでいてほしいかも。会場は駅からは距離があるものの、家から近いので生理的に楽であるから。そのメイン会場はとうぜん、NHKホール。今回の2日間はメインのやつはその昼の部だけ見て、日が暮れてからは同帯の個別会場の出し物を見た。以下、見た順に記す。

*山下洋輔 寿限無2017(NHKホール)
 山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日、2017年7月8日)が過度期にあった1981年にレコーディングした、落語の「寿限無」に題材を得た2枚の同名作をもとにする出し物。懐古焼き直しモノと断じてしまう硬派の方もいるかもしれないが、これは興味深いなあ。

 2017年版”寿限無”に参加するミュージシャンは、アコースティック・ベースの坂井紅介(2013年7月27日)、ドラムの小笠原拓海、電気ギターの渡辺香津美(2004年12月15日、2010年9月1日、2010年9月5日 、2010年11月20日、2012年3月20日、2016年6月4日、2016年9月4日)、通常の持ち楽器であるテナー・サックスではなくアルト・サックスを吹いた菊地成孔(2001年9月22日、2002年1月5日、2002年11月30日、2004年7月6日、2004年8月12日、2005年6月9日、2006年1月21日、2007年11月7日、2009年7月19日、2010年3月26日、2011年4月22日、2011年5月5日、2011年7月31日、2013年3月26日、2013年7月27日、2014年2月20日、2014年4月3日、2014年9月7日、2016年10月28日)、トランぺッターの類家心平(2011年5月5日、2014年6月13日、2014年9月25日、2014年12月28日、2016年9月7日、2016年9月27日、2016年9月27日)、ラッパーのOMSB (2013年3月26日、2014年2月20日、2016年10月28日、2016年11月10日)という面々。核にピアノ・トリオがあり、曲により他の奏者が加わる。ドラムの小笠原拓海には初めて触れると思うが、瞬発力に長けたタイトさを持ついい奏者。山下は「僕が見いだしたのに、山下達郎に取られた。おととい、彼のツアーが終わったばかり」みたいなことを紹介MCで言っていた。オリジナル録音者の留任は、渡辺のみ。原曲の肉声は坂田明(2006年8月8日、2008年9月25日、2009年7月19日、010年4月15日、2011年4月1日、2012年10月3日、2013年1月12日、2014年9月7日、2016年1月28日)が担当していた。しかし、やはり山下はMCが上手だなー。
▶過去の、山下洋輔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
▶︎過去の、坂井紅介
http://43142.diarynote.jp/?day=20130727
▶過去の、渡辺香津美
http://43142.diarynote.jp/200412212102130000/
http://43142.diarynote.jp/201009030955539620/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101120
http://43142.diarynote.jp/201203260803216950/
http://43142.diarynote.jp/201606121224129353/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
▶過去の、菊地成孔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.ht
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200407062149440000/
http://43142.diarynote.jp/200408120238330000/
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200711101236210000/
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100326
http://43142.diarynote.jp/?day=20110422
http://43142.diarynote.jp/?day=20110505
http://43142.diarynote.jp/?day=20110731
http://43142.diarynote.jp/201303290751204240/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130727
http://43142.diarynote.jp/201402210802184994/
http://43142.diarynote.jp/201404050818444425/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/ 
▶過去の、類家心平
http://43142.diarynote.jp/?day=20110505
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/
http://43142.diarynote.jp/201412301043067796/
http://43142.diarynote.jp/201609201648546159/
http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/
▶︎過去の、OMSB
http://43142.diarynote.jp/?day=20130326
http://43142.diarynote.jp/?day=20140220
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
http://43142.diarynote.jp/201611111651363466/
▶過去の、坂田明
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090719
http://43142.diarynote.jp/?day=20100415
http://43142.diarynote.jp/201104041101543361/
http://43142.diarynote.jp/201210060945309832/
http://43142.diarynote.jp/201301161544336447/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/

*ゴーゴー・ペンギン (NHKホール)
 ウッド・ベースのニック・ブラッカ、ピアノのクルス・アイリングワース、ドラムのロブ・ターナーからなる、英国マンチェスターのピアノ・トリオ。新時代ピアノ・トリオの雄と持ち上げる向きもあるが、CDを聞く分にはぼくは少し承服できず。それで、過去の単独来日公演もパスしていたわけだが……。まあ、ドラマーがドラムン・ベース以降の叩き方をときにしたり、ベースやピアノにエフェクトがかかる場合があったりと、普通のピアノ・トリオから逃れようとする意思はいろいろと感じる。ふむ。あのスウェーデンの名オルタナティヴ・ピアノ・トリオのE.S.T.(2003年6月17日、2007年1月13日)を思い出させる部分もある。だが、ゴー・ゴー・ペンギンはどうして、あんなにセンチな曲をやるのか。もうすこしドライにいったほうが格好いいと思うが。

▶過去の、E.S.T.
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/

*ザ・コリア・ガッド・バンド(NHKホール)
 ピアノとキーボードのチック・コリア(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日)と ドラムのスティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9月3日、2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9月3日、2016年2月19日、2016年12月6日、2017年6月12日)の双頭バンドで、この体裁でレコーディングもすすんでいるという。他のメンバーは、ベニン出身のギター奏者のリオーネル・ルエケ(2002年7月3日、2005年8月21日、2007年7月24日、2012年3月3日、2014年9月7日、2016年2月22日 )、キューバ出身のベーシスト(電気と縦の併用)であるカリートス・デル・プエルト(2015年3月5日)、ベネズエラ出身打楽器奏者であるルイシート・キンテーロ(2011年12月8日、2016年7月31日)、各種リードを吹くスティーヴ・ウィルソン(2013年12月17日、2017年6月7日)。

 そんな新バンドのココロは、属性の広がりを意識したうえで、今の思慮に満ちたジャズ・フュージョンをやろうということか。コリアの旧曲には拍手が湧く。しかし、コリアとガッドのコンビと言えば、なんといってもエディ・ゴメス(2014年10月17日)とジョー・ファレルという顔ぶれの1ホーンのカルットで録った『フレンズ』(ポリドール、1978年)である。コリアはそこで電気ピアノを多用したが、非フュージョンな瑞々しいジャズ盤として話題を呼んだし、中村とうようさんもほめていたものだから、ぼくもリアル・タイムで買い求めけっこう聞いた記憶がある。あのとき、あのガッドが4ビートを叩いていると話題になりました。ぼくのジャズ入門版の一つとなる? 今はゴメスの浮いた縦ベースの音がきつくて聞けないだろうけど。そのオープナーだった「ザ・ワン・ステップ」とかやらないかなあとか、ぼくは思ってしまった。まあ、編成も合わなし、ないものねだりとなるのだが。

▶過去の、チック・コリア
http://43142.diarynote.jp/?day=20060903
http://43142.diarynote.jp/200710121726160000/ 
http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
▶過去の、スティーヴ・ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
http://43142.diarynote.jp/201706130913351348/
▶過去の、リオーネル・ルエケ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm テレンス・ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/ テレンス・ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/200708051737070000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/ ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ハーボー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/201602290950397465/
▶過去の、︎カリートス・デル・プエルト
http://43142.diarynote.jp/201503060912185943/
▶︎過去の、ルイシート・キンテーロ
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201608020805158759/
▶︎過去の、スティーヴ・ウィルソン
http://43142.diarynote.jp/201312181034409673/
http://43142.diarynote.jp/201706081034584863/
▶︎過去の、エディ・ゴメス
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/

*トレメ・ブラス・バンド、デンマーク・ラジオ・ビッグ・バンド(渋谷センター街)
  ニューオーリンズの名門ブラス・バンドであるトレメ・ブラス・バンド(2003年10月15日)が渋谷のど真ん中をパレードするというので、知人たちと勇んでセンター街の飲食店に陣取り、待ち構えたのだが。ありゃ、しょっぼかった。いくら、ぼくがニューオーリンズ現地のパレードを体験してる(2007年2月3日、2007年2月4日)とはいえ。すぐに、通り過ぎてしまったし。まだ、トレメ・ブラス・バンドの後に続くデンマーク・ラジオ・ビッグ・バンドのほうが音がでかかった。この2組、実は明日のNHKホールの出演者であったことを、20時間後に現場で知る。デンマーク・ラジオ・ビッグ・バンドは東急百貨店前でも野外演奏をやることにもっていて、安い(?)ブラス・バンドなのかと思っていたら……。翌日の項に続く。
▶︎過去の、トレメ・ブラス・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
▶︎過去の、ニューオーリンズのパレード
http://43142.diarynote.jp/200702112125550000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/


*ポール・グラボウスキー・クインテット+中村仁樹&帯名久仁子(セルリアンタワー能楽堂)
 その会場が示唆するかもしれないが、ジャズと伝統和楽器が重なる公演。東急ホテルのグラッグシップとなるセルリアン・タワーに能楽堂があるは知っていたが、ほんと地下2階にぽっかり、おごそかにあった。へ〜え、という感じ。

 オーストラリ人ピアニストのポール・グラボウスキーのグループと日本人の和楽器奏者が共演する出し物。グラボウスキー側は、他にテナー・サックスのロバート・バーク、トランペットのニラン・ダシカ、ダブル・ベースのサム・アニング(2015年10月15日)、ドラムのジョー・タリア。和装の日本人側は、尺八の中村仁樹と琴の帯名久仁子。琴奏者は途中退いたときもあったが、3本のそれを使い分けていた尺八奏者はずっと豪州人たちと絡む。ソロもジャズ・マンと遜色なく取る。けっこうイケ面である彼はニコリともせずに演奏し、もう少し年長だろう琴奏者は笑顔で演奏。しかし、2人とも芸大の邦楽科を出ているんだろうなあ。

 実際のパフォーマンスには、おおいに拍手。なんの疑問もなく、両者が重なっていたもの。ときにアウトする感覚を持つ曲を含め、尺八や琴の特性をくみつつ(それ、グラボウスキー側が出した曲だろう)、ジャズ流儀のもと洋と和が交錯する。おもしろいっ。驚いたことに、グラボウスキーはピアノを一切弾かずに(というか、舞台に置いていない)すべての曲をピアニカで通す。それ、笙みたいな効果を生んでいて、けっこう合っていた。アンコールは琴が導く「桜」から、美スタンダード曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」に移行した。

▶︎過去の、サム・アニング
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/

<今日の、追記>
 能楽堂は舞台の二辺に向かうように、座席は設定されていた。そういうものであるのか。ところで、後日(2017年9月5日の項参照)、グラボウスキーから聞いたのだが、ここはピアノを入れてはいけないためにピアニカを弾いたのだという。ドラムは簡素ながら置いてもいいのに、不思議だな。重量の問題だろうか。その簡素な楽器を選んだのは、やはり笙の音と近いところがあったからだそう。やはり、彼はそれなりの準備をへて、このプロジェクトにのぞんだのだと思う。この顔ぶれで、今日明日とスタジオで録音し、そちらではエレクトリック・ピアノを弾いているそう。それをプロデュースしたアーロンさんはかつて本国でグラボウスキーにピアノを習い、7年のNY居住をへて、日本に10年住んでいる人なのだとか。