過去何度もこの素晴らしいハコには出ているけど、リーダーとしては初めてでとっても光栄。みたいなMCをする、ピアノのジョン・ビーズリー(2011年12月8日、2014年5月28日、2015年3月3日、2015年3月10日)は本当にうれしそう。

 アルト・サックスのボブ・シェパード(メインはテナーなはずだが、今回はそちらを吹く。ときにソプラノやフルートも吹いた。2004年2月13日、2014年11月22日、2014年11月22日、2015年2月8日)、テナー・サックスとクラリネットのグレゴリー・ターディー(テナー・サックス、クラリネット)、トランペットのラシャウン・ロス、トロンボーンのフランシスコ・トーレス、ニュージーランド出身でLAのカル・アーツを出ているベンジャミン・シェパード(6弦フレッテッドの電気ベースが主。2曲ではダブル・ベースも弾いた)、おそらく今回はスネアは一つ置きであったと思われるドラマーのテリオン・ガリー(2006年9月17日、2010年3月23日、2010年5月30日、2012年6月19日、2017年5月29日)という面々を擁した今回の公演は、生誕100年となるセロニアス・モンクの楽曲を取り上げようとするもの。当然、通り一遍のものではなく、これはまさに“上級者設定”のモンク・プロジェクトと言えるのではないか。

 だまし絵のように楽器音やリズムを交錯させ、曲もときに他のモンク曲をさらりとインサートさせたり。それの様は自然、これ見よがしにそれをやればDJミュージック/サンプリング的と言いたくなるのかもしれないが、流麗なのでそういう形容とは繋がらず、その総体はモンク表現の大人な伸長のさせ方をちゃんとビーズリーなりにしているゾと痛感。ただ、ぼくはモンクの流儀を米国黒人表現の精華と取っているので、ドス黒さが希薄なのは少し不満。でも、ビーズリーはアフリカ系ではないし、それは当然のこととも言える。モンクの漆黒の世界を、より広いフィールドに解き放つ意味を持っていたという指摘もできなくはないし。

 過剰にソロを取らないビーズリーはアレンジャー/リーダーとしての姿をまっとう。一部はシンセサイザーも用いたが、それは明瞭にジョー・ザヴィヌル((2003年10月8日)的な押さえ方と思わせる。その方法論はジャズだが、やはりリズム音は立ちを持つもので、それはガリオン・テリーを採用していることでも示唆されるが、ビーズリーが意図したところだろう。

▶過去の、ジョン・ビーズリー
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201405291806044863/
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/
http://43142.diarynote.jp/201503110740041978/
▶過去の、ボブ・シェパード
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/
http://43142.diarynote.jp/201411251049018018/
http://43142.diarynote.jp/201411251049018018/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150208
▶︎過去の、テリオン・ガリー
http://43142.diarynote.jp/200609190457510000/
http://43142.diarynote.jp/201006071814015815/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100323
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
http://43142.diarynote.jp/201705301638029304/ ダイアン・リーヴス
▶過去の、ジョー・ザヴィヌル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm

<今日の、追憶>
 モンクは変テコゆえ〜その変がいかにアフリカン・アメリカンの凸凹や美学が昇華したものであるかを知り震えるのは後だが〜、高校生の頃から親しみやすいジャズとして聞いた。あ、ハル・ウィルナー制作の2枚組1984年作『That’s The Way I Feel Now: A Tribute to Thelonious Monk (A&M)はぼくがモンクに耽溺するきっかけになったアルバムかな。あの内袋には、ちゃんとオリジナル出展のソースも克明に印刷されていたと記憶する。ウィルナーは各界の担い手が特定アーティスト曲をそれぞれにカヴァーする“コンポーサー・シリーズ”と呼ばれるアルバムを何枚も送り出してるが、モンク曲集はその一連のなかベストとなるものだと思う。ウィルナーには一度インタヴューしたことがあるが、前夜にU2(2006年12月4日)のボーノと深酒をしてしまったとかで、二日酔いで情けないほどヘロヘロだった。ボーノは途方もない大酒飲みで、飲んでも変わらないことで知られますね。
▶過去の、U2
http://43142.diarynote.jp/200612070141170000/

 恵比寿・ガーデンホール。トップに登場した、アカ・セカ・トリオ(2016年8月31日)のピアニストでもあるアルゼンチン人のアンドレス・ベエウサエルトのショウは弾き語りにて。電気ピアノ(あまりいい音とは思えなかったが、純ピアノは好みじゃないのかな)を弾きながら軽くハミングする曲を含め、ちゃんと歌を聞かせる。広がり、たゆたふ調べのもと歌心が溢れ出る。思ったほど、歌が魅力的ではないと感じはしたのだが、知人から紹介された彼(意外に小柄で、メガネをかけていたので、最初ベエウサエルトであると気づかず。かつてブラジルにいたこともあるそうで、最近ブラジルに行ったばかりの知人とはポル語で会話していた)はナイス・ガイであったし、ぼくも人間、感想は少し甘くなる。自分の曲だけでなく、ウルグアイ人のウーゴ・ファトルーソ(2007年11月14日)やチリ人(名前、認知できず)ら、他の南米の担い手の曲もいろいろやっていたよう。汎南米的視点に立つ、ともそれは説明できるものか。

 休憩時にお腹が空いたので、ホールの外に出る。商業施設にある会場だと、そういう事が気ままにできるのはありがたい。その間、ラウンジでは中原仁(2014年12月1日、2015年2月11日、2016年9月29日、2017年8月24日 )の音出しで、仏人歌手のクレモンティーヌがカラオケ歌唱をしたらしい。なかなかレアな図であったと、それに接した知り合いが言っていた。

 アンドレス・ベエウサエルトの他のこの日のホール出演者は、三宅純(2012年6月30日、2016年11月10日)だけ。彼は休憩を挟んで2つのショウを持った。三宅のパフォーマンスの休憩時にはラウンジで熊谷和徳(2010年9月3日、2012年5月14日、2014年3月10日、2016年7月15日、2016年7月16日)のお弟子さんたちらしい、KAZ TAP COMPANYと名乗る日本人3人のタップ・ダンサーが無伴奏で足さばきを聞かせた。

 ピアノ、電気ピアノ、フュルゲルホーンを扱う三宅とともに、15人のシンガーや演奏者がステージに立つ。おお、このぐらいの人数がいるとホールの広いステージにも映えるな。顔ぶれは、1年前のブルーノート公演とほぼ同じ。日本人女性シンガーが外国人男性歌手に、外国人女性歌手が別の外国人女性シンガーに、いろんなリード楽器を吹くプレイヤーが別の管楽器奏者に代わっていた程度か。

 クリックを下敷にする演奏は、一糸乱れず。様々なジャンル、地域基軸、情処などが渾然一体となる、独自にして美意識に長けたモタン・ミュージックが展開される。先のアンドレス・ベエウサエルトも、ミヤケはいいなあと申しておりました。2部の途中で中座し、次の会場に向かう。

▶︎過去の、アカ・セカ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201609201856257822/
▶︎過去の、中原仁
http://43142.diarynote.jp/201412031621332692/
http://43142.diarynote.jp/201502140823232703/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160929
http://43142.diarynote.jp/?day=20170824
▶過去の、熊谷和徳
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20120514
http://43142.diarynote.jp/201403131302032810/
http://43142.diarynote.jp/201607191309581526/
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
▶︎過去の、三宅純
http://43142.diarynote.jp/201207031354181031/
http://43142.diarynote.jp/201611111651363466/

 六本木・ビルボードライブで、スクリッティ・ポリッティ(2006年8月12日)こと、グリーン・ガートサイドとそのバンドを見る。セカンド・ショウ。キーボード(部分的に鍵盤でベース音も出した彼は、ときにベース・ギターも持った)のロードリ・マースデン、ギターのリチャード・ムーア、ドラムのロバート・スモートンという、中年の奏者をようしてのもの。2曲ほどギター奏者と鍵盤奏者がコーラスをつける曲があったが、それはけっこういい感じでハモっていた。

 まずは、もっと静的で閉じた印象を持っていたのだが、快活かつ気さくで(MCも曲ごとに悠々とかます)、身長も小さくないこともあり、とても堂々とした印象をガートサイドから受ける。かつてステージ恐怖症だったなんて、嘘のよう。あ、立派な髭をたくわえていて、パブ・ロッカーみたいという感想は生まれるか。まあ、かつての美青年的な面影はまるでないが、その様だけでもぼくはホっとできた。ここで実演ができる喜びも、率直に出していたしね。

 そういえば、彼は冒頭でまず笑いを誘う。モニター用イアフォンを耳に差し込んでおらず、歌い始めてから一度バンドを止めて、オープナーの「ザ・スウィーテスト・ガール」をやり直す。だが、モニター音なしで歌っても彼の歌の音程は確かだった。実は、佇まいの印象の変化とともに今回のショウで一番印象に残ったのは、彼の歌の良さだった。そして、ずっとアルバムを出していない彼だが、それが現役感を導いていた。ただし、譜面台に歌詞シートを堂々と置いてはいたが。1曲歌い終わるごとに、彼はシートを後ろにポンポンと捨てていく(笑い)。

 ちょい初期XYC的な雰囲気を持つアルバム未収録の最初期の曲もやり、隠匿前のNY期末期の1999年作に入っていたラップ使用曲もやったり。いろんな曲をやったが、セカンドの『キューピッド&サイケ85』(ヴァージン)からの曲が多かった。バンド音をおぎなうように、彼はプリセット音も流す。そんなことをしたって、オリジナルの半分も輝きは出せないのだが、発売当時胸を焦がしまくったぼくはそれでもOK。彼の場合は、そういうファン心に立てる。同じぐらい大好きな英国時代のラフ・トレード発の1作目『ソングス・トゥ・リメンバー』(ラフ・トレイド、1982年)からの曲をもっと聞きたかったけれど。まあ。身もふたもないが、初期の2枚は別格だ。ただし、『キューピッド&サイケ85』の焼き直し的な3作目の『プロヴィション』よりは、次の99年リリースの『アノミー&ボンホミー』の方が好きだな。

 ともあれ、ソウルをはじめレゲエやヒップホップなどへの憧れを英国人的なソング・ライティング力を通して、オリジナルなビート・ポップとして昇華させてきたガートサイドのロック界に燦然と輝く功績は、それなりに示唆されていたはず。当然、前回公演よりも印象は良い。

 そういえば、アリサ・フランクリンの新譜(?)『ブラン・ニュー・ミー』(ライノ/アトランティック)はアトランティックの名曲の彼女の歌声を残し、そこに英国フィル・ハーモニック・オーケストラの音やパティ・オースティン率いるゴスペル・クエワイアを重ねるというディレクションを持つ作品(彼女の絶対的な歌力を示すとともに、崇高さが増していて、意外に良い)だが、それにガートサイドを噛ませたかったな。いや、別のフランクリン変容企画で彼が絡むというのはどうだろう?  なんせ彼はアリサ・フランクリンを制作していたということで、アリサ愛を綴った曲を含む『キューピッド&サイケ85』のプロデュースをアリフ・マーディンに頼んだ御仁であるから。

 英国に戻って作った2006年『ホワイト・ブレッド・ブラック・ビアー』(ラフ・トレード)以降、新作の発表はなし。トレイシー・ソーンの2012年作や大人のUKエレクトロ・ダンス・ポップ・バンドのホット・チップの2015年作には部分関与もしている彼だが、これはまた新作を期待できるし、それほど間をおかずに来日も望めるのではないか。80分ぐらいの、パフォーマンスでした。

▶︎過去の、スクリッティ・ポリッティ
http://43142.diarynote.jp/200608141735120000/

<今日の、出演者の智>
 三宅純は2部の方で、「主催者は怒るかもしれませんが、前の高い席が空いているので、もう移動していいんじゃないか」みたいな発言をする。それを受けてけっこう人が移動したのか、彼は「積極的なのはいいこと」というような言葉も発した。 一方の、グリーン・ガートサイドは終盤曲で写真を撮っていいことを伝える。徐々に、皆んな携帯を構える。ふと、場が和んだ? なるほど、どの実演でも1〜2曲は写メOKとすればいいのでは? http://43142.diarynote.jp/201703161155052571/ のようなこと(一番下)を書いているぼくとしては、そう思ったりもする。そういえば、クリッシー・ハインドが観客の写メ撮影に激怒して罵声を浴びせて即ステージから去ったという話が伝えられて間もないが。ステージを降りるさい、スクリッティ・ポリッティのキーボード奏者は客に携帯を渡して、ステージ前方に並ぶ4人の写真を撮らせていた。去り際、ガートサイドは気さくに握手やサインにも応じておりました。
 合衆国が生んだ新旧の鬼才、デトロイト・テクノの巨匠(今はパリ在住?)とミニマル・ミュージックのリジェンドの顔合わせがなされた公演。渋谷・www X。各々単独公演も組まれているが、よくぞ一緒のやつも組んだよなあ。今回、そこにファナ・モリーナ(2002年9月7日、9月15日。2003年7月29日、2011年8月1日、2013年12月3日、2015年2月6日、2016年3月17日、2017年8月18日)も入り三つ巴のブッキングがなされているが、前回見てからあまり経っていないので、彼女絡みは今回はパス。共演があるかどうか、判別しなかったし。

 先発は、ジェフ・ミルズ。スタンディングであり、お酒を買いに行きたいので後方に立ったが、ステージの様はまったく見えない。音はいい感じ。響く音やノイズが魅惑的に連鎖、一つの世界を形作っていく。それ、詩的と言ってもいいかな。ダンス性は低めだが、それはその後に出てくるライリーの出し物との兼ね合いを考慮した部分はあったか。彼に、ぼくは知的というか思慮深いイメージを持つ。

 そして、機材とともにドラムが置いてあるのか、電気音に生音ぽいシンバル音やバスドラ音が入る場合もあり。ステージ後ろには映像が流れるが、あれは必要であったか? それを流すのだったら、彼のオペレートをおさえた映像を見せて欲しかった。だって、彼がどんなことをやっているか一切見えないのは、それ自体は臨機応変な流れを持っていたとしても、PC音を流されているのと変わらないから。オペレーションの様をまっすぐに収めたDVD商品も出している彼ゆえ、リアルタイムな所作をヴィジョンに映すのを嫌がるとも思えない。同年代の知人と話したら、あのブラックボックスの様にはフラストレーションを感じたと言っていたが、若い聞き手は何も疑問を持たないのだろうか。演奏が終わり、彼が立ち上げりやっと姿を確認。善人そうだな。

 休憩を挟んでのライリー実演は、エレクトリック・ギター奏者(息子らしい。なら、ギャン・ライリー。二人は2000年代にけっこうデュオ・ライヴをやっているようで、それらを集めた『Terry Riley and Gyan Riley Live』を2011年に出している)を伴ってのもの。で、グランド・ピアノに座った彼はそれをなでつつ、歌い始めてびっくり。それ、知る人ぞ知る中近東のスッコーンと抜けた弾き語りの担い手、なんて言われたら信じそう? 基本は少し反復フレイズも少し出しつつ、気ままにたゆたふ手癖ピアノを弾くインスト表現というもの。ギター奏者はそれに寄り添い、ときには御大をリードするようなところもあって善戦。ミルズはときに電気キーボードも弾き、ぼくはそちらの方がいいゾ、らしいぢゃんと思えた。携帯アプリもお茶目に使おうとしたみたいだが、それは不発、ピアニカも弾いた。その天真爛漫にいろんなことをやっていく様は昔のエルメート・パスコアール(2004年11月6日、2017年1月8日)的とも思えたかも? 82歳、自然体で矍鑠としていました。まあ、根気もなくなっていてもいるのだろうが、過去の財産に寄りかかっていないのにも共感が持てた。

 最後に、一緒にやるとは。拍手。ミルズのビートにライリーが乗る。

▶過去の、ファナ・モリーナ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm トゥルー・ピープルズ・セレブレーション(7日)、モリーナ&カブサッキ(15日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20110801 コンゴトロニクスvs.ロッカーズ
http://43142.diarynote.jp/201312171240301597/
http://43142.diarynote.jp/201502071011467530/
http://43142.diarynote.jp/201603221010109346/
http://43142.diarynote.jp/201708191803252111/

<今日の、ありゃ>
 会場のカウンターに、クレジット会社のマークが。一杯購入でも使えるようで、外国人客の不満から、そうするようになったそう。オリンピックに向けて、こういうことはより進むか。この件はいいと思うが、海外のダメ慣習への迎合もなされたりしたらやだなあ。しかし、今日の出し物、ジェフ・ミルズとテディ・ライリー(1980年代後期のUSソウルのメインストリーム的な動き“ニュー・ジャック・スウィング”の立役者)のダブル・ビル公演だと思っていた知り合いがいた。妙な組み合わせとは感じつつ、テリー・ライリーのことを知らないと、米国ブラック・ダンス音楽の一時代をともに築いいたということでそちらの方を想起するのか。でも、やったら意外にソツなく重なったりしてなあ。それが、米国ブラック・ミュージックの底力というものです。
 まず、六本木・ビルボードライブ東京で、新鋭ブラック・ミュージック・クリエイターのマセーゴを見る。ジャマイカ生まれ、米国東海岸育ちという御仁だが、痩身で、ちょい変な髪型をしていて愛嬌たっぷり。アンソニー・アルストンという音出し担当者兼ときにラッパーとともに、かなり好感度の高いパフォーマンスを見せてくれた。両者はときに一緒に揃って踊ったりもする。

 R&Bやヒップホップを繋いだことを巧みに開く。スタジオ・テイクほどジャジーな部分は感じなかったが、俯瞰やリンクの感覚を持つ今様ブラック・ポップを送り出しているという手応えは相当なもん。彼は1940年頃の米国の頂上にいた人気黒人エンターテイナーであるキャブ・キャロウェイが見せた<ハリハリホウ〜〜>というコール&レスポンスを引用した曲を発表しているが、ステージでも3度ほどそれを見せる。それにも、グっとこないはずがないではないか。

 ニコニコ、見まくり。時に小さなシンセを弾いたりもし、マイーペースで歌うマセーゴはマルチ・プレイヤーという触れ込みであったが、ほんの少しアルト・サックスも吹く。音程も正確で、ちゃんと吹けるぢゃん。英国人と一緒に見ていたのだが、MCや歌われる内容にクスクスしっぱなし。お笑い芸人みたい、だそう。音楽性も見せ方も堂にいっていて大満足でした。

 その後は、南青山・ブルーノート東京でマシュー・ハーバートのビッグ・バンド(2003年9月15日)を見る。おお、このUKエレクトロニカ鬼才のビッグ・バンド来日公演があったのは、14年も前になるなのか。もう少し近いと思っていた、時の流れは本当に早い……。あの時は向こうからビッグ・バンド員を連れてきていたが、今回はエリック・ミヤシロ(2010年5月11日、2011年3月10日、2011年3月28日、2011年4月21日、2011年8月6日 、2014年9月7日、2015年9月27日、2016年1月7日、2017年7月28日)率いるブルノート東京・オールスター・ジャズ・オーケストラの面々を従えてのもの。指揮をするピート・ライト(2003年9月15日)は前回来日時も同行した人物。ハバートも彼もちゃんとスーツを着用。なんでもバンド名に冠された”ブレグジット”とは2019年の英国のEU離脱を意味するそうで、それにあわせてアルバムも出す予定のよう。

 サックス・セクションは本田雅人と鈴木圭と黒葛野敦司と小池修と渡辺恭一、トランペット・セクションはエリック・ミヤシロと奥村晶と小澤篤士と二井田ひとみ、トロンボーン・セクションは中川英二郎と半田信英と笹栗良太と山城純子、ピアノの青柳誠、ダブル・ベースの川村竜、ドラムの北井誉人という演奏者たちはあまりソロ・パートはなく(でも、それで良かったんじゃないかなあ?)、重厚なアンサンブル音を十全に供給する。それに、ハーバートはノイズや効果音をほのかに加えるわけだが、ダンスしている方が長かったか。前回公演と同じように新聞を破く音をサンプリングして使ったり、観客の歌声やザワザワをその場でサンプリングして用いたりという方策もあり。また、入場時に紙とペンを<ドナルド・トランプへのメッセージを書いて、それを紙飛行機に折ってステージに飛ばす準備をしてください>という自筆メッセージが印刷されたカードとともに渡す。それを飛ばす曲になった際、ハーバードはトランプの仮面をつけた。

 驚いたのは、ほとんどの曲でラエルという野太い声を持つアフリカ系女性歌手(https://soundcloud.com/hai_rahel)が歌ったこと。最後の方の曲はハーバートと彼女のデュエット曲もあった。

▶︎過去の、マシュー・ハーバート・ビッグ・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
▶過去のエリック・ミヤシロ/ブルーノート東京・オールスターズ・ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/?day=20100511
http://43142.diarynote.jp/?day=20110310
http://43142.diarynote.jp/201104041100266528/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110421
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/ ノー・ネーム・ホー^セズ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201601090750252990/
http://43142.diarynote.jp/201708081429085086/ B.B.STATION

<今日の、移動時>
 電車の先頭車両に乗った。この日は新聞を持って出るのを忘れ、また携帯を見る趣味もないので、運転席横のガラスにしがみつき(?)、ガキのように線路の正面風景に見入る。やはり、楽しいというか、興味深い。駅に入って行く際、ホーム・ドアつきとなしじゃ安心感が違うなあと、切に感じた。実際の運転手はどうなんだろう。

 自身3作目のアルバムとなる『Bossa‐Chichibu』を出した、日本人個性派ボサノヴァ歌手/ギタリストのタクシーサウダージ(2014年9月16日、2015年5月28日、2015年11月11日)のライヴを、渋谷・サラヴァ東京で見る。

 ドラムの服部 正美(2013年7月10日、2015年5月28日、2015年11月11日)、パーカッションの宮沢 摩周(2013年8月24日、2014年5月3日、2014年6月15日、2016年2月11日、2016年5月22日、2017年7月8日)、エレクトリック・ベースの五十川 博、アルト・サックスとオカリナの宮野 裕司(2015年5月28日、2015年11月11日)、バンドリンの秋岡 欧(2002年3月24日、2014年8月27日、2015年11月11日、2017年7月8日 )、ハーモニカとトロンボーンの佐野 聡(2008年1月31日、2015年1月9日、2015年9月27日、2015年11月11日)、キーボードとトランペットの新井政輝(2015年5月28日、2015年11月11日)という面々がサポートする。こんなにバンドの人員いらないでしょ(逆に贅沢とも思わせる)という隙間を抱えた余裕のもと、タクシーサウダージの悠然とした個性が開かれる。新作曲はユーモラスだったり、新鮮な奥行きを持っていたりと、彼の見地がもう一つ広がりを得ているのがよく分かった。しかし、ほんと良いオーヴァー60越えの人生ではないでしょうか。会場には、タクシーサウダージが世にでるきっかけを作った同じ秩父在住の笹久保伸(2013年8月29日、2014年5月24日、2014年12月12日、2017年2月4日、2017年10月5日)もいた。なお、この8日には、日経電子版にこんん記事がアップされました。→https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22932640R31C17A0000000

▶過去の、タクシーサウダージ
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/
▶過去の、服部正美
http://43142.diarynote.jp/201307121511031149/
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/
▶︎過去の。宮沢摩周
http://43142.diarynote.jp/201308281519499994/
http://43142.diarynote.jp/201405051105329639/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160211
http://43142.diarynote.jp/201605240833401202/
▶過去の、宮野裕司
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/
▶過去の、秋岡欧
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20140827
http://43142.diarynote.jp/?day=20151111
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
▶過去の、新井 政輝
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/
▶過去の、佐野聡
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150109
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201511120722274234/
▶過去の、笹久保伸
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
http://43142.diarynote.jp/201405271717357738/
http://43142.diarynote.jp/201412281015581474/
http://43142.diarynote.jp/201702081153548285/
http://43142.diarynote.jp/201710061415044353/

<今日の、アフター>
 例によって、ライヴの後は飲み屋に流れるわけだが、この晩も面白い邂逅あり。ぼくの後に入ってきたのは、在日ドイツ人と日本人女性。パンクが実は好きという(サッカーは嫌いだそう)外資系IT企業勤務のヤンさんは日本人の奥さんと普通の幼稚園に通う子供がいるそうだが、べらぼうに日本語がうまい。ドイツの薬草酒を一杯奢ってくれた。女性の方は堅いアイテムを扱う営業をしているそうだが、なんとオフォスはなく、車を会社から与えられ自宅近所に経費で駐車場をかり、家から都内の営業先を周り、まっすぐ帰宅する日々であるのだそう。報告書とかは出すのだろうけど。へえ、日本の企業のあり方もいろいろ多様になってきているんですね。

ジェフ・ミルズ

2017年11月10日 音楽
 代官山・晴れたら空に豆まいて で、異才(2017年11月7日)の単独公演を見る。2回まわしの、1回目のほう。会場内畳敷き仕様の公演でみんな畳の上にしゃがんで見るので、実にステージ、そして本人を見やすい。ステージ中央にオペレーション用のコンソールみたいのが位置し、その両側にはCDJ(たぶん)が置かれ、さらにその両端にはデカいオープン・リールのテープ・レコーダーが鎮座する。おお、視覚的効果はなかなか。そして、ヘッドフォンをつけたミルズは客側に背を向けて座る。その光景はかなり格好いいい。パフォーマンス的視点を十分に考慮に入れているとも思わせる。なお、今回はヴィジョン映像はなし。その方が、ずっといい。

 この晩は、フランツ・カフカの「変身」にインスパイアされた「メタモルフォーゼ」なるものをやるそうで、それは世界初演とか。それ、ノンストップで悠々2時間を超えるものだった。

 いろいろと変化していくピコピコ感も少し持つ基調下敷き音〜ビートの元、いろんな音が加えられ、聞き手にいろんな思いを抱かせるだろうストーリーを綴っていく。例によってダンス性は低いが、個を持ち、耳を引くサウンド・スケープの提示はあり。ミュージック・コンクレートのような、という形容もありか。美術館とかアート・ギャラリーでやると吉、という説明もできよう。レコーダーのオープン・リールのテープはときどき換えられた。

 開始1時間あたりで、客としてすわっていた男女二人づつ4人の日本人が立ち上がり突然舞踏をはじめ、奇声をあげる。それ、ミルズも織り込みづみの所作であったろう。最後は回っているオープン・リールのテープをもう一つのリールにつなげず、垂れ流し的にテープをどんどん床に落とす。そのテープの山は向かって左側に置かれた大きな枯れ木といったオブジェに(第3者によって)て垂らされる。テープの花ということ? どってことないけど、それも良かったな。終演後、客席側に向かう彼は、本当に控えめな感じがあって、照れ屋さん度数100%だった。

▶︎過去の、ジェフ・ミルズ
http://43142.diarynote.jp/201711080729053828/

<今日の、残念>
 ミルズのショウの後、六本木・スーパーデラックスに向かう。着いたのは、21時50分ぐらい。階段を降りて行くと、ぞろぞろと逆に登ってくる人々あり。案内に22時30分までと記してあったので、向かったのであったのだが。この晩にここであったのは、<クラシック・アンダーグラウンド・イン・東京>という出し物。マジなクラシックをクラブでカジュアルに楽しんじゃえという趣旨のドイツ派生のイヴェントの東京編とのことで、出演者はちょうど来日中のドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と米国のボストン交響楽団(7日の公演を、皇太子夫妻も見に行ったらしい)の、選抜隊。というより、ナンパな人たちと書いた方がいいのかな。それにしても、よく東京のオフ日があったものだな。ヴィオリン、ヴィオラ、チェロ、ホルンら6人の外国人奏者が、ショスタコーヴィッチやベイトーヴェン曲をやったよう。主催者が外国人であったためもあってか、客は外国人比率が高いと思えた。あー、少しでも見たかった。近くの権八でやる打ち上げに行く?と誘われたが、明日は明日で昼間からパーティがあったりとか、いろいろあるので、笑顔で遠慮した。
 ジャズで好きな人は? すると、セロニアス・モンク、チャールズ・ミンガス、エリック・ドルフィー、オーネット・コールマン。その4人が、まずあがるかな。

 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。ミンガス(1927〜1979年)死後、その名もミンガス・ダイナスティというミンガス・バンド在籍者たちによる継承バンドが活動したことがあったが、このビッグ・バンドは1993年以降適時アルバム・リリースをしていて、10作ほど出している。うち、2005年リリースの『ライヴ・イン・トーキョー・アット・ザ・ブルー・ノート』(サニーサイド)はこの会場で録音された会場ですね。

 2テナー、2アルト、1バリトン、2トロンボーン、1ベース・トロンボーン/チューバ、3トランペット、ピアノ、ダブル・ベース、ドラムという編成。おそらく、ミンガス存命期に関係を持っていた奏者はいないはずで、専任のコンダクターはおらず。一応、MCをしてもいたベース奏者のボリス・コズロフがリーダーをしているのかな。彼のアルバムを聞いたら、ミンガスとは所縁も何もない、粋目のことをやっている。エンディングに入る時の合図とか少しのキューだしは、アルト・サックス奏者やテナー・サックス奏者もしていた。

 かつてのミンガス表現にあった真っ黒いとぐろを巻くような情念を取り払った、でも爽快なスケール感や裏切りの感覚とか、その陰にあった詩情のようなものを、御大の往年の楽曲を借りて提出する実演と言えるか。本編最後の曲は黒人トランペッターがデカ目の声でテーマ部に歌をかぶせ、それはファンキーでなかなか良し。それが、一番黒い曲だった。その曲で、菅奏者たちは演奏しながら、楽屋に引き上げる。ジャズのビッグ・バンドでそういうことをした人たちには初めて触れた。

 その後、千代田線〜小田急線に乗って(小田急線の急行と普通の兼ね合いはなぜこうも生理的にイラっとくるのか? 急行止まらない駅には絶対住みたくない私鉄線だな)、祖師ヶ谷大蔵・カフェムリウイに行く。そして、弦楽器二つの即興デュオ演奏を途中から聞く。

 5弦ヴァイオリンを弾く勝井祐二(2000年7月29日、2000年9月14日、2002年9月7日、2002年9月14日、2003年3月6日、2003年7月29日、2004年1月16日、2004年5月28日、2004年5月31日、2004年6月2日、2004年6月3日、2004年11月19日、2005年2月15日、2005年2月19日。2005年4月11日。2005年10月30日、2006年5月30日、2006年7月7日、2006年8月27日,2006年12月3日,2006年12月28日、2007年6月29日、2008年1月30日、2008年2月18日、2012年12月23日、2013年1月7日、2013年2月11日、2013年6月6日、2014年7月8日、2014年12月26日他)と、コントラバスのパール・アレキサンダー(2014年10月11日、2015年5月6日、2016年5月22日、2016年7月26日、2017年5月7日)。勝井は電気ヴァイオリンも併用、またヴァイオリンを爪弾く場合も少しあり。

 ヴァイオリンとコントラバス、音の相性はやはりいいんだな。勝井が生ヴァイオリオンをダイナミックに弾く際、新鮮さを覚えるとともに、訴求力も感じた。アレキサンダーはヴァイオリン音に導かれてか、いつもよりアルコ弾きが多かったかもしれない。本当は歌も歌う意向を彼女は持っていたようだが、風邪ひいていて自重したとのこと。

▶過去の、勝井/ROVO
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/
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▶過去の、パール・アレキサンダー
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<今日の、メモ>
 ミンガス・ビッグ・バンドは白人、黒人、東洋系(ピアノ奏者)、いろいろ入り、女性奏者も二人(ピアノとバリトン)。ペッパー・アダムス(バリ・サックス)やジミー・ネッパー(トロンボーン)などミンガス表現に欠かせなかった名手たちは白人もいたし、いろんな属性の人たちが入っていることに違和感はない。というか、その方が共感を持てる。ところで、その実演に触れて、忘却していたダニー・リッチモンド(1933〜1988年)の名前をふいに思い出してしまった。黄金期からずっとミンガス表現の屋台骨を支えたリッチモンド(ヤクザ格好いい風体の御仁でした)は不思議なドラマーで、1972〜1973年あたりはUKで組まれた洒脱ジャジー・ロック・ユニットのマーク=アーモンドのメンバーになってしまったことがあった。バーナード・パーディ(2012年6月19日)がジェフ・ベック(2009年2月6日、2015年9月27日)・グループ流れのハミング・バードのメンバーに1976 〜77年ごろになってしまったこともありましたね。それらは、当時のアフリカン・アメリカン奏者に英国ロックへの憧憬があったことの証左となるのだろうか?
▶︎バーナード・パーディ
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
▶︎過去の、ジェフ・ベック
http://43142.diarynote.jp/200902080200527638/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
 異色(と言っていいかな?)ジャズ・ギタリストのジェリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日)と革新ブルーグラス・グループのパンチ・ブラザース(2016年8月4日)のギタリストであるクリス・エルドリッチ(2016年8月4日)のデュオ公演を、丸の内・コットンクラブで見る。最終日の最終セット(セカンド・ショウ)で、満場、盛況。二人はこの2月に双頭デュオ作『Mount Royal』(Free Dirt。基本曲は持ち寄り。共作曲やトラッド、カート・コヴェイン曲などもやっている)を出している。

 昨年のパンチ・ブラザース公演と同様にノー・PA/ノー・エフェクター、完全生音で勝負の公演。エルドリッッチはときにキレイ綺麗したヴォーカルも取っていたが(つまり、ぼくの趣味ではない)、一応ヴォーカル用のマイクは置かれていたもののそこそこ離れて歌っており、それもけっこう生ヴォーカルが我々には聞こえていたのではないか。両者和気藹々に歩み寄り(少し、エルドリット寄りと指摘できた?)、アメリカの何かとも繋がるアコースティック・ギター音楽が紡がれる。とにかく、生音だと二人のギター演奏音の音量コントロールが素晴らしいことに大きく頷いてしまうが、それは接する者みんなが感じたことだろう。あ、それとチューナーを使わず、ビーンビーンと弦チューニングをしており(相手から、音をもらったりもしていた)、その素朴さもらしかった。

▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
▶︎過去の、クリス・エルドリッチ/パンチ・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/201608100931466329/

<今日の、アーティストの連鎖>
 この初夏に出たジョン・ゾーン(1999年9月24日、2006年1月21日)の曲をやる『Midsummer Moons』(Tzadik)は、ジュリアン・ラージと1週間前に来日したばかりのギタリストであるギャン・ライリー〜2017年11月7日と〜とゾーンの三者連名によるアコーデスティック作だ。そこで二人はギター・デュオを繰り広げ、ゾーンは激励役に回っている。そういえば、ラージの2016作『Arclight』をプロデュースしたジェシー・ハリス(2002年12 月21日、2005年9月7日、2006年1月23日、2006年4月22日、2007年3月11日、2009年3月31日、2010年10月10日、2011年8月6日、2012年7月16日、2013年5月26日、2016年4月27日、2016年9月8日、2017年6月10日)もジョン・ゾーンの2014年ヴォーカル使用作『Song Project』(Tzadik)に参加し、ツアーを一緒にしていましたね。
 この晩のショウは、野中丈太郎aka野中英紀と一緒に見た。彼、今はある芸術財団のトップにいて、世界を飛び回っている。そんな彼と最初に会ったのは1984年か。高校の頃はサンパウロ育ち、バークリー音楽院卒のギタリストである彼は細野晴臣(2009年10月12日、2010年4月15日、2010年11月21日、2011年8月7日ち2012年8月12日、2012年9月5日、2013年1月29日、2013年8月7日、2013年8月11日、2014年10月25日)のプロデュースで、インテリアというインストゥメンタルのバンドでアルファのYENレーベルからデビューし、その後に細野とはフレンズ・オブ・アースというユニットを組んでいたこともある。また、彼はフォノグラムから『A-key』というリーダー作を出したこともあった。実はそのインテリアの音を気に入ったのが、1980年代半ばに飛ぶ鳥を落とす勢いを持つウィンダム・ヒルを運営していた、アコースティック・ギター奏者でもあるウィル・アッカーマン。そして、彼らはインテリアズという名義にて、ウィンダム・ヒルからYEN盤を元にするアルバムをリリース。それは同社初の、エレクトリック傾向作だった。
 ライヴ終了後も、会場で野中と延々飲んでいて(彼と細野が一緒にルイジアン州バトンルージュにジェイムズ・ブラウン〜2000年8月5日〜に会いに行った話とか、面白かったなあ)、ほぼ最後の客としてホワィエに出たら、ラージとエルドリッジはまだ客対応をしていた。で、我々も少し立話。野中がギタリスト然とした感想を言ったりしたので、彼がギタリストであることを伝えると、野中はウィル・アッカーマンとの絡みを自己紹介的に言う。すると、二人がえっと身を乗り出す。へ〜え、アッカーマンって 一目置かれているんだー。アッカーマンは近々、新しいレーベルを起こすよう。あー、評判のいい細野晴臣の新作2枚組を聞かなかきゃ。

▶︎過去の、ジョン・ゾーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
▶︎過去の、ギャン・ライリー
http://43142.diarynote.jp/201711080729053828/
▶過去の、ジェシー・ハリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130315380000/
http://43142.diarynote.jp/200601271859050000/
http://43142.diarynote.jp/200604251252010000/
http://43142.diarynote.jp/200703130418360000/
http://43142.diarynote.jp/200904040640421651/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201305280925006733/
http://43142.diarynote.jp/201605141103337291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160908
http://43142.diarynote.jp/201706111121479426/
▶過去の、細野晴臣
http://43142.diarynote.jp/200910141731349364/
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201011250550109951/
http://43142.diarynote.jp/201208201258419318/
http://43142.diarynote.jp/201209181238434594/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130129
http://43142.diarynote.jp/?day=20130807
http://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
http://43142.diarynote.jp/201410301511243448/
▶過去の、JB
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm サマーソニック初日

 恵比寿・リキッドルーム。JHONBULLという岡山本社のアパレル・メイカーの原宿進出20周年を祝うイヴェントでスペシャル・バンドとかいろいろでたようだが、うち二つを見る。

 CHAIは4人組の弾けたガールズ・バンドで、お揃いの色の服を着ていて、歌/少し鍵盤、ギター/歌、ベース、ドラムという編成。ニュー・ウェイヴ期のちょい素っ頓狂なビート・ポップに日本的ラップ情緒を加味したようなことをやると書くと、その音楽性の6割ほどは語れるか。最初PVを見て、これはいかにも今のすっこーんと抜けたおきゃん女の子バンドだと感心し、一度ちゃんと生を見たかった。甲高いヴォーカルの絡みはとても個性を持つが、双子であるのか。マドンナの「マテリアル・ガール」の旋律/替え歌で、物販宣伝をしていたりもしていた。

 休憩時には、50年代東海岸ハード・バップがかかる。DJは須永辰緒(2010年12月22日)、なり。

 その後、急遽出る事になったというエゴ・ラッピンが歌の中納良恵とギターの森雅樹の2人でパフォーマンス。なんでも、ここの社長がいなかったら、2人は出会っていなかったそう。森はディストーションをかけ、ジャジーというよりけっこうブルージィ。ストンプ音を出していたためもあるか。また、中納はハーモニカ、カズー、タンバリン、ピアニカなども、歌うとともに扱った。歌の随所にお祝いの言葉をちりばめていましたね。

▶︎過去の、須永辰緒
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
▶︎過去の、中納良恵/エゴ・ラッピン
http://43142.diarynote.jp/200402052323250000/
http://43142.diarynote.jp/200508060622480000/
http://43142.diarynote.jp/200508230542360000/
http://43142.diarynote.jp/200611190321510000/
http://43142.diarynote.jp/200612151848180000/
http://43142.diarynote.jp/200908181435528052/
http://43142.diarynote.jp/?day=20091101
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<今日の、悲しみ>
 JRの渋谷駅から隣の恵比寿駅に行くと、プラットホームが広々としていて、いいなと毎度思わせられちゃう。東急もJRもホント渋谷駅は駄目駄目。あ“あ”。

 まず、丸の内・コットンクラブで、ロビン・フォード(1999年8月28日、2004年4月21日、2004年10月22日、2004年12月17日、2008年8月31日、2013年5月10日、2014年4月23日、2016年12月11日)のバンドを見る。レスポール(予備に置いていたギターもレスポール。彼、そんなにレスポール愛好家であったか?)を弾きながら朗々と歌う彼に加え、サイド・ギター、エレクトリック・ベース、ドラム、そして、日本調達のテナー・サックス2本(小池修と かわ島崇文)入った。その2人、けっこうセクション音を入れるだけでなく、ときにソロのパートも与えられた。既にブルーノート東京でも2日間やっているだけに、危なげなし。そんな面々がやったのは、ジャジーな部分もある、ブルース・ロック。もうオイラの進む道はこれっきゃないてな確信に満ちた演目が繰り広げられた。

 次は、南青山・ブルーノート東京で、テネシー出身のアーシー系パフォーマー(35歳で、アルバム数は4枚)の初来日公演を見る。まず、ドレッドをラフにまとめた見てくれがアトラクティヴ。そんな彼女はバンジョーや生ギター(途中で、弾き語りのパートもあり)やエレクトリック・ギターを弾きながら歌ったり、歌うことに専念したり。やっているのは、ブルースやフォークやカントリーといったルーツ・ミュージックを鷲掴みにしたような事。そして、何より、KYというか生理的に傍若無人な甲高いヴォーカルがポイント。それ、アフリカのどこかの歌唱とばっちっとつながる感じがあって、それが聞く者をいい意味でむずむずさせちゃう。そういえば、彼女のビートの効いた曲はティナリウェン(2005年9月2日)らの<砂漠のブルース>をもろに想起させてグッと来ちゃう。最初は期待していたほどではないと思った部分もあったのだが、徐々にぼくは引き込まれた。

▶過去の、ロベン・フォード
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http://43142.diarynote.jp/200404212355490000/
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http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
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http://43142.diarynote.jp/201612171245154424/
▶︎過去の、ティナリウェン
http://43142.diarynote.jp/?day=20050902

<今日の、バンド員>
 ロビン・フォードのバンドのベーシストは小柄。ネルシャツとジーンズという格好だったし、性別が判別しかねたが、女性のよう。色男フォードはかつて女性ドラマーを同行させたこともあったっけ。このバンドでアフリカ系はドラマーのデレク・フィリップスだけ。的をいた叩き口を見せていた彼はエリン・ボーディ(2009年3月26日)やヴァネッサ・ウィリアムス(2014年6月18日)他、いろんなアルバムに入っているが、近年とても懇意にしているのがルーツ系ロッカーのセス・ウォーカー。彼の2016年作は昨年、一瞬年間ベスト10にいれようかと思った。
 ヴァレリー・ジューンの2017年作はクロスビートのムックの年間ベスト10選に入れたが、彼女のバンドは全員非アフリカ系。ギターはもろにカウボーイ調で、リズム隊は立派な髭をたくわえていてジューイッシュぽく見える。そして、7・3調の髪型をしたキーボード奏者は60年代のサーフ・ロックのグループの一員みたい? 
▶︎過去の、エリン・ボーディ
http://43142.diarynote.jp/200903271727246000/
▶︎過去の、ヴァネッサ・ウィリアムス
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 ノルウェー人シンガーの公演を、外苑前・HEAVEN青山で見る。そのルンデ嬢は本国やオランダの音楽学校で学んだ後、現在はドイツに居住して活動しているとのこと。確かな音程のもと風情に満ちる歌唱を繊細にエコーをかけつつ披露していたが、清楚ぽくもとても性格良さそうな感じが出ていたなあ。

 エフェクト派ドイツ人ギタリストのフロリアン・ゼンカー(卓上に置いたコントローラーのつまみをいじるだけでなく、ヴァイオリンのボウや筆で弾いたり、スライド・バーも用いる。足元にもいろいろエフェクターを置いていたのだろうか? 最後の方で取った割と素直な音色のソロはジャズ流儀だった)、ECMから3枚のリーダー・アルバムを出しているオランダ人ピアニストのヴォルファート・ブレーデローデ(2016年5月14日。基本抑制の効いた歌伴演奏だが、時に取るソロはさすが)、ファーマーズ・マーケット(2001年6月16日、2008年5月24日、2012年11月15日 )で何度も日本に来ているノルウェー人ドラアマーのヤーレ・ヴェスぺシュタという面々が同行。うち、ゼンカーとブレーデローデは、彼女の2014年作『Hjemklang” (Ozella Music) に参加してますね。ピアノ、そしてギターとのデュオも1曲づつやった。

 なるほどの、質の高さ。ルンデが歌っていたのはオリジナル(英語による)と、トラッドが少しだったか。ジャズとも繋がる自由と自在を元に置くイマジネーションの先にある思慮に富んだパフォーマンスは、<北ヨーロッパの幽玄>なんて言いいたくなるもの。彼女たちが細やかに披露していたものは厳密に言えばジャズでもないしポップでもないが、その粋を知っているなら、必ずや体内にするりと入ってきて意義深く覚醒するものと思う。そこには、個性と審美眼を持つ、確かなボーダーレスなヴォーカル主体表現があった。しいて例を挙げるなら、例えばかつてのべッカ・スティーヴンス(2015年1月29日、2017年7月21日)とかの回路のようなものをもっとアブストラクトかつオルタナティヴかつメロウに欧州人の感性に沿って思うまま開いているというか。示唆を受けたし、とても贅沢な時間だった。

▶︎過去の、ヴォルファート・ブレーデローデ
http://43142.diarynote.jp/201605240830291122/ スザンヌ・アビュール
▶︎過去の、ファーマーズ・マーケット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200805281150320000/
http://43142.diarynote.jp/201211170929436724/
▶︎過去の、ベッカ・スティーヴンス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
http://43142.diarynote.jp/201707231016025846/

<今日の、場>
 会場は、初めて行くハコ。ピアノも置いているようで、店の名前より落ち着いている感じがあった。外苑前駅から神宮球場に向かって行く途中にあり、その一階にはヤクルト・スワロウズのグッズ・ショップみたいなあのがあった。もう野球のシーズンが終わっているため閉まっていて、実際のところはよく分からぬが。この晩のアーティスト招聘は、Office Ohsawa。ここで出てくる北欧系ジャズ、同ジャズ・ビヨンドの担い手公演は同社が関与しているものが多いが、この晩の公演に触れて、地道に呼んでいてくれてありがたいなと改めて思った。

十中八九

2017年11月23日 音楽
 いわきの市民大所帯グループである十中八九(2013年5月19日、2015年11月23日、2016年4月30日)の単独公演を、いわき市石炭・化石館ほるる で見る。2作目『十中八九 貳』(アンモナイト)リリース記念公演となるもの。で、実際、会場がスペシャル。市立の立派な展示/学習館のような施設のメインの広い吹き抜けの場に閉館後ステージが持たれ、その周りや上部には常設展示物であるバカでかい恐竜の骨模型がいろいろとあるという生理的にナイスなシチュエイションのもと、パフォーマンスは繰り広げられた。

 歌とギター、女性ヴォーカル、ギター、トランペット3、クラリネット、アルト・サックス2、バリトン・サックス、キーボード、ベース2、ドラム、パーカッションという編成だったか。さらに女性ダンサー4人(弁護士や高校教諭もいるという)や男性ダンサーが加わり、ステージ設営には十中八九の美術班が縁の下の力持ちになっているはずだ。

 そして、そこにダンドリスト(ディレクション担当)として渋さ知らズ(2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日)の不破大輔(2005年12月22日、2007年6月3日、2015年11月23日、2016年4月30日)が入る。十中八九はもともと不破主宰の市民向けワークショップを起点とし、その後もワークショップが定期的に持たれることで結成されたバンド。ながら、不破はファースト作リリース記念公演(2015年11月23日)の打ち上げの席で、ワークショップを終了し、彼自身が他の構成員と対等の一員となることを宣言したのだという!!!

 とか、いろいろいいストーリーを持つ集団ではあるのだが、ぼくが何度も見たくなるのは純粋に音楽性として輝くものを、さらには音楽をやる歓びや瑞々しさを存分に発しているから。ジャズの発展性やインプロヴィゼイションをかかえるとともに様々なポップ・ミュージック要素をガンボしちゃっているとその音楽性は説明できるだろうが、十中八九の場合、なにより曲がそれぞれに良く作られている。そして、歌詞は地元の事象にねざしたものが多く(ゆえに、化石がいろいろ発見されている恐竜や石炭を題材にした曲もあり、ほるるで公演を持つ意味も生まれる)、地に足をつけた地方のバンドという美点も仁王立ちする。

 2枚のアルバムからいろいろやったが、けっこう各人ソロを取っていたなと実感。実は事前にはどの曲で誰がソロ取るとは決まっておらず、その場の不破の思いつきでふられるのだそう。しっかり、ハプニングに満ちたバンドだなあ。

 そんな彼らは2018年4月28日に、吉祥寺・スターパインズ・カフェで単独公演を行うことが決定している。

▶過去の、十中八九
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/ 起点
http://43142.diarynote.jp/201511250531202253/
http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/
▶過去の、渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
http://43142.diarynote.jp/200612060135390000/
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
http://43142.diarynote.jp/200706162321180000/
http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/
http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
▶過去の、渋さ以外の不破大輔
http://43142.diarynote.jp/200512231
http://43142.diarynote.jp/200706061351450000/
http://43142.diarynote.jp/201511250531202253/
http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/

<今日の、アフター>
 会場に近い、湯本温泉にとまった。うわ、露天風呂なんて久しぶりのような。明日みんな仕事あるのに(不破は国立で、渋さ女子部の公演とのこと)、打ち上げのあとメンバー10人ほども同じ宿に泊まり、チームワーク良く(?)夜半まで飲み会。そういう集団に、悪いバンドはいない。

MITSKI

2017年11月24日 音楽
 おお、これは才能あるゾ、説得力あるな。

日米ミックスでいろんな土地で暮らし、大学以降はNYで暮らすシンガー・ソングライターのショウを恵比寿・リキッドルームで見る。1990年生まれで、出したアルバムは4枚。昨年の初来日時は生ギターの弾き語りだったようだが、今回はトリオのバンド編成にてパフォーマンスをする。。

 白人のギタリストとドラマーを従え、なんと本人はベースをピック弾きしながら、しっかり歌う。今をきりきりとひっかく感覚を持つかと思えば、悠々と漂流するような質感を受けるときもある。でもって、吹っ切れたアングラ臭を持つかと思わせる一方、妙なメジャー感を覚えさせられもする。それは彼女の歌がとても説得力があり、この表現は多くの人の心を捉えるかもと思わせもするからだ。

 サイドの二人はラフなようでいて、けっこう秀逸。ギターはエフェクターを巧みに使い、ドラマーは力づくタイプのようでプログラムっぽい音も出すなどし、それらはちゃんと嵐と風を持つ。そして、彼女を含めたトリオの総体は、かなり良質なパンク感覚やグランジ感覚も出す。すごいな。

 ミツキがまれにするMCは、達者な日本語にて。「歌詞が英語でごめんね」と言っていたな。そんな彼女は終盤、ギタリストが弾いていたエレクトリック・ギターを手にし、弾き語りも見せる。個人能力、高し。ぼくはバンド表現の方が好きだが、完全弾き語りの方が好みという人がいても不思議とは思わない。観客の反応もなかなか熱かった。

<今日の、軽い驚き>
 今まで気にも留めなかったのだが、家のすぐ近くの時間ぎめ駐車場の案内看板を見たら、15分300円だった。それでも、昼間は埋まっている。
 メロディ作りのセンスが光る米国のロック・バンドのザ・シンズ(2007年11月13日)を、渋谷・クラブクアトロで見る。

 あれ、ここの卓の位置がより後方中央に変わっていた。ずっとそうなったのか、この日だけなのか? 次に、ここに来たときにはっきりするナ。初春にアルバムを出して、ずっとツアー中のようで、この後はオセアニアに行き、そこそこの公演回数を彼らは持つ。なるほど、だから日本公演は東京一回だけでもOKとなるのか。外国人客比率、高し(しかも、大きめの人が多かった)。で、疲弊を感じさせず、瑞々しく90分強をパフォーマンス。なんだかんだ、ぼくが今年見たロック系公演では1番と言えるものだったかもしれない。

 ギターを弾きながら歌うジェイムズ・マーサーを、ギター2、ベース、ドラム、キーボード(ときにフィドルも弾いて女性。リチャード・スウィフトは去っていました)が手堅くサポート。やっぱり、良いなあ。もともと持っているもの(アルバムで出しているものとも言えるか)を生の場でちゃんと開く能力に長けているというか。マーサーはプロデューサーとしても活躍するデンジャー・マウス/ブライアン・バートンとブロークン・ベルズというユニットも組んだりしたわけで、本当に才能があるな。ポップなことをやってもまったく少女趣味にならず、米国ロックとしてあるべきじっくり感や渋みをこれだけ出せるのはほんと驚異的と言うしかない。

▶過去の、ザ・シンズ
http://43142.diarynote.jp/200711141503340000/

 その後、下北沢に行き、ガーデンでアムネスティ絡みの映像を流すフィルム・コンサートを途中から見る。すでに5回持たれているようで、今回は6回目となるよう。へえ、アムネスティって自らヒューマンな音楽映像クリップを作ったりしているのか。

 1986年から1998年にかけてニュージャージー、パリ、サンティアゴ、ブエノスアイレスのスタジアム(どれも、巨大!)で持たれた、スティング&ブルース・スプリングスティーン、シニード・オコナー、マイルズ・デイヴィス、ルー・リード、U2、ピーター・ゲイブリエル、レイディオヘッドらのパフォーマンスを流すパートは全部見れた。やはり、それぞれに見所あり。それに触れてイエイとか、声を出しちゃうよー。もしかすると、それらの映像はYouTubeで探すことが出来るのかもしれないが、やっぱり大きな画面&デカい音で聞くのはうれしすぎる。情報がびんびん体内に伝わる。映画がすたれない理由もそこにあるだろうし、やはり音楽もPCやイアフォンで聞いてちゃ真価は伝わりにくいと思った。劣悪な音でもアピールしてこそ真のポップ・ミュージックという言い方も出来るだろうが、開かれた環境で良い音で聞かないのは音楽の重要な楽しみ方を一つ放棄することであると思う。

<今日の、感激>
 ファンカデリックのウェストバウンド/在デトロイト時代のリミックス2枚組『リワークド・バイ・デトロイターズ』にうきうき。アンプ・フィドラー(2004年9月25日、2005年7月30日、2012年12月9日、2016年11月29日、2017年2月9日)が鍵盤音を入れているものがあるのも納得であるし、なんと「スーパー・スチューピッド」はザ・ダートボムズ(2004年2月4日)が録音し直している!
▶過去の、ジョージ・クリントン/P−ファンク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm 触れていないが、フジ・ロック
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/201102081256005311/
http://43142.diarynote.jp/201304150853287353/
http://43142.diarynote.jp/201504131109395934/
http://43142.diarynote.jp/201612011925201175/
▶︎過去の、アンプ・フィドラー
http://43142.diarynote.jp/200409280745560000/
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161129
http://43142.diarynote.jp/201702100924466798/
▶︎過去の、ザ・ダートボムズ
http://43142.diarynote.jp/200402041452570000/
 リーダーが80歳と、79歳。ともに、お元気きわまりない。そんな公演をハシゴした。

 まず、南青山・ブルーノート東京で、ロン・カーター(2001年6月7日、2004年1月14日、2010年5月6日、2011年1月30日、2012年3月3日、2012年12月11日、2014年1月19日、2014年9月7日)の興味深い編成のショウに触れる。カーターさん、もうジャズ界、最重鎮の一人と言っていいか。

 御大に加え、ピアノのケニー・バロン(2001年11月20日、2009年1月7日、2003年10月10日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年11月15日)、アルト・サックスのドナルド・ハリソン(2014年8月25日、2015年8月22日)とアントニオ・ハート(2004年12月2日)、ドラムのビリー・ドラモンド(2006年11月2日)という面々がつく。ほう、アルトが2本という編成か。カーターののりに沿いつつ気張ったソロを取るハリソンとハートの2人を見ながら、張り合う感じは皆無であったものの、やはり同じ持ち楽器であると自ずと個性を出さんとする演奏によりなるよなあと頷く。総体はじじむさくなく、ジャズの威厳を出していたと書けるだろう

 終盤にカーターは生音にて、ソロをそれなりの長さで披露。米国トラッドの「峠の我が家」や著名クラシック曲(名前までは知りません)も、その際に織り込む。また、アンコールはバロンとのデュオでしっとりとしめた。ピッチをきっちりと合わせたチェロ奏者4人を擁した前回のカーターの来日公演の項でベースの音程が悪くてトホホというようなことをぼくは書いているはずだが、純コンボによるこの日は疑問を得ず。そっかー、一般的なジャズは微妙なピッチの差を乗り越えるムードやパッションを山ほど抱えた音楽フォームでもあるのだなと、思った次第……。

▶過去の、ロン・カーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200401140000000000/
http://43142.diarynote.jp/201005071023536171/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201212141028575543/ 
http://43142.diarynote.jp/201401221302405299/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201611161214257431/
▶過去の、ケニー・バロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200901080850146753/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090607
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
▶︎過去の、ドナルド・ハリソン
http://43142.diarynote.jp/201408260930269988/
http://43142.diarynote.jp/201508231007506736/
▶過去の、アントニオ・ハート
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
▶︎過去の、ビリー・ドラモンド
http://43142.diarynote.jp/200611071308560000/

 その後、渋谷・オーチャードホール。途中からとはなったが、ザ・チーフタンズ(1999年5月29日、2001年5月20日、2007年6月1日、2012年11月22日、2012年11月30日)の公演を見る。
 
 結成55周年を祝うという名目がついたもので、とうぜん鬼籍入りした人もいて、現在のオリジナル・メンバーはパディ・モローニ(イーリアンパイプ、ホイッスル。2012年8月28日)とマット・モロイ(フルート)とケヴィン・コネフ(ボーラン、ヴォーカル)の3人。そこに、トリーナ・マーシャル(ハープ、キーボード。2007年6月1日、2007年6月18日、2012年11月22日、2012年11月30日)、タラ・ブレーン(フィドル、アルト・サックス)、ジョン・ピラツキ(ステップ・ダンス、フィドル。2011年12月3日、2012年11月22、2015年12月5日)、ネイサン・ピラツキ(ステップ・ダンス。2011年12月3日、2012年11月22、2015年12月5日)、キャラ・バトラー(アイリッシュ・ダンス。2012年11月30日)、 アリス・マコーマック(ヴォーカル。2011年12月3日)、 ティム・エディ(ギター)という総勢10人にてパフォーマンス。その構成員が前に出たりひっこんだりして、今も輝くアイリッシュ伝統芸能のヴァリエーションや訴求力や伝搬力を、生理的に鮮やかに見せつける。

 そして、さらにそこに太鼓の林英哲(2007年6月1日、2012年8月28日、2012年11月22日)、歌と三線の古謝美佐子(2012年10月6日)、歌の上間綾乃(2014年12月10日)、東京パイプバンド(2007年6月1日)、タカ・ハヤシ・アイリッシュ・ダンス・カンパニー、アヌーナをカヴァーするコーラス・グループというANONA、イーリアン・パイプの内野貴文ら、J-トラッド系からケルティック系音楽のフォロワーたちまで日本人の担い手もいろいろと加わる。最後のほうは、一体何人がステージにいたろう。だが、悠々笑顔で中央に位置するパディ・モローニはゲスト参加者たちを仕切り、最後は各人にそれぞれソロのパートを与えた。さすが。好奇心旺盛に各ジャンルの実力者たちと渡り合うアルバムを出し続けてきているだけはあるなとも痛感。

▶過去のザ・チーフタンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/
http://43142.diarynote.jp/201209181228508895/
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/
▶過去の、トリーナ・マーシャル
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/
http://43142.diarynote.jp/200706232040450000/
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/
▶過去の、ピラツキ兄弟。
http://43142.diarynote.jp/201112091411311547/
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
http://43142.diarynote.jp/201512091352434769/
▶︎過去の、キャラ・バトラー
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/
▶︎過去の、アリス・マコーミック
http://43142.diarynote.jp/201112091411311547/
▶過去の、林英哲
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120828
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
▶過去の、古謝美佐子
http://43142.diarynote.jp/201210111833163436/
▶過去の、上間綾乃
http://43142.diarynote.jp/201412241025308207/
▶︎過去の、東京パイプバンド
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/

<今日の、もろもろ>
 二つの会場はともに盛況であったが、渋谷のほうには皇后陛下がいらっしゃる。クラシックの公演には行かないし、皇室が来場するコンサートと重なるのは、絶対に初めてだよな。ハープに興味を持つ事から実現したという話を耳にしたかも。そういえば大昔に、全国植樹祭という天皇陛下が毎年各県を回って苗木を植える行事があって、小学生のときそれに出て、昭和天皇のことを見た事があった。ザ・チーフタンズの公演は、日本とアイルランドの国交樹立60周年を祝うものでもあるようで、きっとアイルランド大使も来ていたろう。先月20日ごろにザ・チーフタンズ一座を迎えたパーティがアイルランド大使公邸で持たれて、そのときに挨拶して現大使が女性であることを知った。今、日本の在外の大使で女性は何人いるのだろう?