ジャズで好きな人は? すると、セロニアス・モンク、チャールズ・ミンガス、エリック・ドルフィー、オーネット・コールマン。その4人が、まずあがるかな。

 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。ミンガス(1927〜1979年)死後、その名もミンガス・ダイナスティというミンガス・バンド在籍者たちによる継承バンドが活動したことがあったが、このビッグ・バンドは1993年以降適時アルバム・リリースをしていて、10作ほど出している。うち、2005年リリースの『ライヴ・イン・トーキョー・アット・ザ・ブルー・ノート』(サニーサイド)はこの会場で録音された会場ですね。

 2テナー、2アルト、1バリトン、2トロンボーン、1ベース・トロンボーン/チューバ、3トランペット、ピアノ、ダブル・ベース、ドラムという編成。おそらく、ミンガス存命期に関係を持っていた奏者はいないはずで、専任のコンダクターはおらず。一応、MCをしてもいたベース奏者のボリス・コズロフがリーダーをしているのかな。彼のアルバムを聞いたら、ミンガスとは所縁も何もない、粋目のことをやっている。エンディングに入る時の合図とか少しのキューだしは、アルト・サックス奏者やテナー・サックス奏者もしていた。

 かつてのミンガス表現にあった真っ黒いとぐろを巻くような情念を取り払った、でも爽快なスケール感や裏切りの感覚とか、その陰にあった詩情のようなものを、御大の往年の楽曲を借りて提出する実演と言えるか。本編最後の曲は黒人トランペッターがデカ目の声でテーマ部に歌をかぶせ、それはファンキーでなかなか良し。それが、一番黒い曲だった。その曲で、菅奏者たちは演奏しながら、楽屋に引き上げる。ジャズのビッグ・バンドでそういうことをした人たちには初めて触れた。

 その後、千代田線〜小田急線に乗って(小田急線の急行と普通の兼ね合いはなぜこうも生理的にイラっとくるのか? 急行止まらない駅には絶対住みたくない私鉄線だな)、祖師ヶ谷大蔵・カフェムリウイに行く。そして、弦楽器二つの即興デュオ演奏を途中から聞く。

 5弦ヴァイオリンを弾く勝井祐二(2000年7月29日、2000年9月14日、2002年9月7日、2002年9月14日、2003年3月6日、2003年7月29日、2004年1月16日、2004年5月28日、2004年5月31日、2004年6月2日、2004年6月3日、2004年11月19日、2005年2月15日、2005年2月19日。2005年4月11日。2005年10月30日、2006年5月30日、2006年7月7日、2006年8月27日,2006年12月3日,2006年12月28日、2007年6月29日、2008年1月30日、2008年2月18日、2012年12月23日、2013年1月7日、2013年2月11日、2013年6月6日、2014年7月8日、2014年12月26日他)と、コントラバスのパール・アレキサンダー(2014年10月11日、2015年5月6日、2016年5月22日、2016年7月26日、2017年5月7日)。勝井は電気ヴァイオリンも併用、またヴァイオリンを爪弾く場合も少しあり。

 ヴァイオリンとコントラバス、音の相性はやはりいいんだな。勝井が生ヴァイオリオンをダイナミックに弾く際、新鮮さを覚えるとともに、訴求力も感じた。アレキサンダーはヴァイオリン音に導かれてか、いつもよりアルコ弾きが多かったかもしれない。本当は歌も歌う意向を彼女は持っていたようだが、風邪ひいていて自重したとのこと。

▶過去の、勝井/ROVO
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▶過去の、パール・アレキサンダー
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<今日の、メモ>
 ミンガス・ビッグ・バンドは白人、黒人、東洋系(ピアノ奏者)、いろいろ入り、女性奏者も二人(ピアノとバリトン)。ペッパー・アダムス(バリ・サックス)やジミー・ネッパー(トロンボーン)などミンガス表現に欠かせなかった名手たちは白人もいたし、いろんな属性の人たちが入っていることに違和感はない。というか、その方が共感を持てる。ところで、その実演に触れて、忘却していたダニー・リッチモンド(1933〜1988年)の名前をふいに思い出してしまった。黄金期からずっとミンガス表現の屋台骨を支えたリッチモンド(ヤクザ格好いい風体の御仁でした)は不思議なドラマーで、1972〜1973年あたりはUKで組まれた洒脱ジャジー・ロック・ユニットのマーク=アーモンドのメンバーになってしまったことがあった。バーナード・パーディ(2012年6月19日)がジェフ・ベック(2009年2月6日、2015年9月27日)・グループ流れのハミング・バードのメンバーに1976 〜77年ごろになってしまったこともありましたね。それらは、当時のアフリカン・アメリカン奏者に英国ロックへの憧憬があったことの証左となるのだろうか?
▶︎バーナード・パーディ
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
▶︎過去の、ジェフ・ベック
http://43142.diarynote.jp/200902080200527638/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/