渋谷・アックス。音楽的なことの前に、まずティナリウェンの見てくれに
大いにニッコリとなったりして。アフリカのマリに属する砂漠に住む人達だ
が、皆さんいかにも砂漠を思い出させるようなほんわかした布を体にまとう
(また、頭と顔の下も布でおおう人も)。また、左利きのベースは右利きの
それを逆さにして弾いている。俺、学生だったら、皆でああいう格好し、全
員左利き用のギターやベースを逆さに持ち替えてステージやろうと間違いな
くバンドのメンバーに提案したろうな。

 異文化にある音楽に触れるのは非常にドキドキできることだが、上記の部
分でもフフフとなれた連中。まず、アフロな頭の一人(なんか、彼は70年代
のスピリチュアルなソウル・グループの人のように見えたりも)が出てきて
、ジョン・リー・フッカーをもろに思い出させるうよなギターの弾き語り。
その後、他の人達がぞろぞろ出てくる。全員で7人。うち、男性陣はベース
奏者とパーカッション奏者が専任。あとの4人はギターを持ったり、持たな
かったり。ただ、余白の効用(?)をちゃんと認知してか全員でギターを持
つようなことはせず、大半の曲では二人がギターを弾く。で、ヴォーカルは
全員がとる。女性はサポート・ヴォール専任。で、リフの繰り返し曲を中心
に、すべてマイナー・キーの楽曲。そこから、じわじわと砂漠で育まれたひ
っかかりのあるブルージィな表現を送りだす。その音は無条件にいろんな繋
がりを想起させるもの。最後のほうには、確実にラップを意識したようなシ
ング・トークを採用した曲をやった。また、河内音頭みたいだなと思わせる
曲もあった。

 1時間30分ぴったりの演奏時間。そして、アンコール2曲。通常は50分
のステージをやっているそうだが、もう少し短くてもいいかもしれない。さ
すが客はそれなりに年齢層は高めだが、サラリーマン風スーツ姿の人や、こ
ぎれいにまとめたOLっぽい人はほとんどいず。皆さん、ふだん何をしてい
るのか。しかし、まるっきり別の環境にありいろんな面でワケが分からない
人達ながら、なんとなく部分的には分かった気分にもなれるところも持つな
かなかに不可解さが魅力的な連中でした。

 このあと、同じく渋谷のJZブラットに流れる。ヴェロア・レコードが送
りだした(アルバムは日本先行発売。アメリカではEPのみ出ている)、倍
ぐらいの年齢じゃないととても出来なようなことをやる16歳の女性シンガー
ソングライター。10時から。彼女は生ギターを手にしながら歌う(曲はピア
ノでも書くそう)。普段のライヴはピアノ、縦ベース、ドラムのバンドを率
いるそうだが、この日はピアノとのデュオ。20歳だという伴奏ピアニスト(
楽譜を見てないので、いつもやっているのだと思う)は、少し離れた所から
はキッチェルよりも若く見える。ともあれ、いつもより簡素な設定でやった
ぶんだけジャズっぽくなった(スタンダード曲も歌った)ところがあるかも
、とは本人の弁。なんにせよ、ジャズ的な襞もいろいろ通った物凄く早熟で
、相当に質の高い自作自演派表現を聞かせるタレントであるのは間違いない。

 昨日もコンサート帰りの飲みの席で話題となったが、キッチェル公演後の
後の飲みでも、やはりニューオリンズのハリケーン被害の話になる。被災後
のもろもろが酷すぎる。当然、同地ミュージシャンのことにも話は飛ぶわけ
だが、同地にある音楽マスター・テープの多くは駄目になってしまったんで
はないか。なんかいてもたってもたまらなくなり山岸潤史(1999年8月5日、
2000年12月7日、2001年7月16日、2004年3月30日、2005年7月30、31日)の安否を知人に確認、ニューオリンズに戻っていたらしいが
ぜんぜん無事みたい。深夜、セウ・ジェルジュの打ち上げに乱入。若い白人
の可愛い嫁さんと一緒の彼、真っ赤なスーツにわざわざ着替えていた(そう
だ)。