ノルウェー人シンガーの公演を、外苑前・HEAVEN青山で見る。そのルンデ嬢は本国やオランダの音楽学校で学んだ後、現在はドイツに居住して活動しているとのこと。確かな音程のもと風情に満ちる歌唱を繊細にエコーをかけつつ披露していたが、清楚ぽくもとても性格良さそうな感じが出ていたなあ。

 エフェクト派ドイツ人ギタリストのフロリアン・ゼンカー(卓上に置いたコントローラーのつまみをいじるだけでなく、ヴァイオリンのボウや筆で弾いたり、スライド・バーも用いる。足元にもいろいろエフェクターを置いていたのだろうか? 最後の方で取った割と素直な音色のソロはジャズ流儀だった)、ECMから3枚のリーダー・アルバムを出しているオランダ人ピアニストのヴォルファート・ブレーデローデ(2016年5月14日。基本抑制の効いた歌伴演奏だが、時に取るソロはさすが)、ファーマーズ・マーケット(2001年6月16日、2008年5月24日、2012年11月15日 )で何度も日本に来ているノルウェー人ドラアマーのヤーレ・ヴェスぺシュタという面々が同行。うち、ゼンカーとブレーデローデは、彼女の2014年作『Hjemklang” (Ozella Music) に参加してますね。ピアノ、そしてギターとのデュオも1曲づつやった。

 なるほどの、質の高さ。ルンデが歌っていたのはオリジナル(英語による)と、トラッドが少しだったか。ジャズとも繋がる自由と自在を元に置くイマジネーションの先にある思慮に富んだパフォーマンスは、<北ヨーロッパの幽玄>なんて言いいたくなるもの。彼女たちが細やかに披露していたものは厳密に言えばジャズでもないしポップでもないが、その粋を知っているなら、必ずや体内にするりと入ってきて意義深く覚醒するものと思う。そこには、個性と審美眼を持つ、確かなボーダーレスなヴォーカル主体表現があった。しいて例を挙げるなら、例えばかつてのべッカ・スティーヴンス(2015年1月29日、2017年7月21日)とかの回路のようなものをもっとアブストラクトかつオルタナティヴかつメロウに欧州人の感性に沿って思うまま開いているというか。示唆を受けたし、とても贅沢な時間だった。

▶︎過去の、ヴォルファート・ブレーデローデ
http://43142.diarynote.jp/201605240830291122/ スザンヌ・アビュール
▶︎過去の、ファーマーズ・マーケット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200805281150320000/
http://43142.diarynote.jp/201211170929436724/
▶︎過去の、ベッカ・スティーヴンス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
http://43142.diarynote.jp/201707231016025846/

<今日の、場>
 会場は、初めて行くハコ。ピアノも置いているようで、店の名前より落ち着いている感じがあった。外苑前駅から神宮球場に向かって行く途中にあり、その一階にはヤクルト・スワロウズのグッズ・ショップみたいなあのがあった。もう野球のシーズンが終わっているため閉まっていて、実際のところはよく分からぬが。この晩のアーティスト招聘は、Office Ohsawa。ここで出てくる北欧系ジャズ、同ジャズ・ビヨンドの担い手公演は同社が関与しているものが多いが、この晩の公演に触れて、地道に呼んでいてくれてありがたいなと改めて思った。