有楽町・コットンクラブ(ファースト・ショウ)→南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)。

 まず、ピアノとキーボード(それなりに弾いた。ピッチ・ベンドもけっこう用いた)のゴンサロ・ルバルカバ(2005年3月16日、2007年11月21日、2010年8月22日)、6弦エレクトリック・ベース(1曲は同フレットレスを弾く)のアルマンド・ゴラ、ドラムのオラシオ“エル・ネグロ”エルネンデス(2000年1月12日、2001年5月15日、2002年10月3日、2003年8月9日、2004年4月5日、2009年11月12日、2011年12月8日)、パーカッションのジョバンニ・イダルゴ(2012年5月11日)からなるカルテットのヴァルカンを見る。

 技巧、即興、構成、ラテンの記憶といったようないろんな項目が螺旋状に交錯し合うようなインストゥメンタルを聞かせるブループ。スペイン語圏のアーティストの場合、“v”がついていても発音にしたがいウ濁点を使わず、バビブベボ表記にここのところはしていたが、彼らは在NYラティーノなので、今回はボルカンでなくヴォルカンと表記しておこうか。それは、やはり今のNYの環境ありきと思わせるところが、どこかにあったからか。

 ともあれ、ルバルカバについてぼくは一つの見解を取っていて、それはウッド・ベースを用いるときはとてもうれしい奏者ながら、エレクトリック・ベース奏者を起用する際はトホホ奏者になっちゃう、というもの。もともと、ジャズという分野にて電気ベースを使われるのが好きくないというワタクシなのであるが、ルバルカバの場合はびっくりするぐらい駄目表現にこれまでなっていて、ある意味、それはお見事? いやいや、音楽ではなく、一切のコクを払拭した只の曲芸と言いたくなる、そうとうヒサンなアルバムも過去にはありました。

 ま、そんなわけなので、電気ベース付きの編成でコトにあたる今公演には過剰に期待しないで行ったのだが、けっこう釘付けになって見ちゃったよな。それは、エル・ネグロとイダルゴの素晴らしさゆえ。特にエル・ネグロなんて過去何度も接しているはずなのに、いやーびっくりした。左手でラテンのクラーヴェを叩き出し、右手と両足は普通のドラム流儀にある叩き方をしているみたいな、そうしたドラミングはまさに化け物。それをニコニコ飄々とやっている様に唖然としちゃう。彼だけ譜面を置いていなかったが、仕掛けのある曲もすんなり覚えちゃっているのかな? あんな奏法できちゃう人なら、そういう才もアリと思えてくる。

 そして、エル・ネグロと自在に絡むイダルゴもすばらしい。ほとんどはコンガを呑気に叩くという感じなのだが、それだけでなんか人生バンザイと思えてくるもの。で、たまにスティックを持ち1発だけティンバレスを一撃するのだが、その間(ま)と音色の絶妙なこと。ああ、オレはこのアクセント音が生み出す至高の一瞬を味わうために、この日に会場に来たのだと思ってしまった。少し、誇張して書いていますが。

 その次は、2000年代になるころからアーバン(R&B/ヒップホップの、米国での総称)とジャズの両方のアルバムに参加しているベーシスト(1979年、フィラデルフィア生まれ)、デリック・ホッジ((2002年7月3日。2005年8月21日、2009年3月26日、2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日)のリーダー・グループのショウ。彼は昨年ブルーノートから清新ジャジー・アーバン・ポップ作(『リヴ・トゥデイ』)を出すとともに、テレンス・ブランチャード(2005年8月21日、2009年3月26日、2013年8月18日)・バンドの同僚であるケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日)の新作をプロデュースするなど、その道の制作者としてもエスタブリッシュされんとしている。言わば、アーバンとジャズがくっついたNYのサークルの重要人物ですね。

 4弦フレッテッドのエレクトリックを主に演奏するホッジとリズム・セクションを組むのは、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日)・バンドの同僚マーク・コレンバーグ(2012年6月12日、2013年1月25日)。彼、グラスパーのときより自由に叩いているように思えた。その核になる2人にトランペット奏者と2人のキーボード奏者がつくが、これは当初アナウンスされている顔ぶれから3人とも変更になった。が、やってきたトランペッターのキーヨン・ハロルドは『リヴ・トゥデイ』でも吹いていて、ビヨンセ(2001年6月25日、2006年9月4日)やジェイ・Z作に名前が見られる一方、2009年にクリス・クロスからストレート・アヘッドなジャズ・アルバムを出している御仁。また、キーボード奏者のフェデリコ・ゴンザレス・ペナ(2002年6月18日、2008年9月8日、2009年3月18日、2009年9月15日)やマイケル・アーバーグ(2012年1月5日)も実績を持つ人たちだ。

 披露した多くは『リヴ・トゥデイ』からの曲だったが、ポップ・ミュージック的なところをもう少しジャズ・フュージョン側に開いて提供するという感じだったか。少しラフな部分もあったが、ホッジの歌心の在処、その行方が漂う様が興味深かった。そして、ショウに接しながら思ったのは、他の周辺の人たちとともに、彼はポップ・ミュージックとジャズを同じノリで親しんで来ていて(ま、それはぼくもまったくもってそうなのだけど)、それをナチュラルに自分の音楽として出そうとしている、ということ。そう思うと、彼のアルバムやケンドリック・スコット作で歌っていて、グレッチェン・パーラト(2009年2月3日、2012年2月22日、2013年3月19日)やアンドリュー・バード(2010年2月3日)とも親しい白人シンガー・ソングライターのアラン・ハンプトンを同行させてほしかったなあとも、少し思う。でも、今回みたいな行き方だと、浮いちゃうかな。でも、想像できる以上にロック好きかもと思える部分も、ホッジにはあった。

▶過去の、ルバルカバ
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
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▶過去の、エルナンデス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm キップ・ハンラハン
http://43142.diarynote.jp/200404050925340000/
http://43142.diarynote.jp/200911141111322146/
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
▶過去の、イダルゴ
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/

▶過去の、ホッジ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050821
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▶過去の、ブランチャード
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▶過去の、スコット
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▶過去の、グラスパー
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▶過去の、コレンバーグ
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▶過去の、ビヨンセ
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▶過去の、ペナ
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▶過去の、アーバーグ
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▶過去の、バード
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<今日の、通信>
 無知はときとして、美徳である。ずっと同じガラケーを使っているが、外でネットを引く習慣がないので、まったく不便を感じたことはない。画面を見るのに気をとられて、第三者に失礼になることもないし←←逆に言うと、ぼくは相手の失礼を感じるときがある。そんなぼくは当然、携帯電話についている機能も9割は用いていない。だが、昨年のいつごろからか、ショート・メールというのがあるのを知り、主にそっちのほうを使うようになった。もともと打つのが面倒なので、最低限のことしかぼくは打たないし、それで十分。それに、普通のメールより、もっと軽い感じが出るのがいい(かも)。