『アヤクーチョの雨』(2013年、チチブ/ビーンズ)は、昨年ぼくがトップ級に衝撃を受けたアルバムと躊躇なく言える。ペルー南部山岳地帯の女性歌手であるイルマ・オスノと、ペルーでの刮目すべき活動歴も持つ現代フォークロア・ギターの名手である笹久保伸の双頭名義作なのだが、現地伝統文化をたっぷり受け継いだオスノの喉力〜声質/抑揚〜メロディ感覚が無条件に凄すぎるっ! とともに、ペルーに育まれるギター流儀を抑えつつも、笹久保があっと驚くコンテンポラリーなサウンド・クリエイターであることをそこで示していることも、ぼくにはうれしい驚きだった。ああ、ここには全く異なる文化や環境があり、一方では今の風を受けてもいる……。そう、実感できるのって、なんと素敵なことなんだろう! ぼくは、パット・メセニーに取材したとき、今の彼なら絶対に刺激を受けるハズと、『アヤクーチョの雨』を渡した。

 下北沢・Com. Cafe音倉、2部制にて。ともに、1曲目は笹久保のソロ演奏。ストロークするほうの右手は優美な動きをしているのに、左手も介して出てくる音はとっても複雑でひっかかりもあり、うわあ。その魔法のような様に、彼の実力者ぶりを再認識。そして以下は、バンド(?)にてパフォーマンス。オスノ(ヴォーカル)、笹久保(ギター。けっこう、曲ごとにチューニングを変えていた)、木村美保(ヴォーカル)、高木大輔(ギター)、横澤龍太郎(パーカッション)という面々。

 けっこう、アルバムで提示されていた世界をなぞる形で、実演はすすめられる。スタジオ技術も駆使しただろうあの世界を実際に浮かび上がらせるのは、容易なことではないだろう。とくにコーラスをつけていた木村美保の存在にはびっくり。譜面を見っぱなしではあったが、彼女はあの独特なメロディ流れや発声の感じ〜アルバムにおけるオスノの歌のダブル・トラックの片方のほう〜を見事に担当する。木村さん、あなたすごいっ。ギターの高橋と一緒にユニットを組んだり、在日ファンク(2010年9月25日)他の人たちが集ったビッグ・バンドに入ったりしているようだが、名前を頭に刻んでおこう。イルマと彼女は、無伴奏でも1曲やったか。日本に7年間住んでいるというオスノは日本語でMCをしていた。

▶過去の、在日ファンク
http://43142.diarynote.jp/201009261258386231/

<今日の、あいーん>
 笹久保伸&イルマ・オスノの公演の終わりのほう、後ろ髪を引かれる思いで会場を出る。そして、渋谷に。次のライヴの出演者とある人の間をつなぐため……。次のショウは10時半までやっていると思っていたら、9時半に会場についたら、ちょうど終わってしまった。ええっ。某氏があげた同公演のフェイスブック記事にはぼくの名前ものせられていますが、ほぼ見てませんからっ。かなしいなあ。