俊英という形容をいまだ持ち続けているようにも思える、アフリカンとジューイッシュの血を引くテナー・サックス奏者(2003年1月16日、2009年4月21日、2010年9月5日、2012年5月31日)のカルテットでのショウ。ところで、ジャズは<アフリカ系とユダヤ系移民による米国発の混血音楽>という側面も濃く持つので、彼は鉄壁の血筋にあるジャズ・マンとも言えるのか。与える醍醐味以上に彼が長年エリート奏者視されてきている(少なくても、ぼくにはそう感じられる)のには、そういう側面があるためか。いや、それはないだろうな。

 近く出るノンサッチ発の新作は、前作の周到に練られたストリング付き盤から通常路線にあるシンプルなトリオでの録音盤のようだが、今回のショウはピアニストを入れてのもので、それについては興味がひかれる。で、そのサイドマン内訳は、意気のいいNY若手を起用することにかけて定評のある渡辺貞夫のサポートほかでお馴染みのアーロン・ゴールドバーグ(2011年7月4日、2012年6月8日、2013年4月1日)、チャールズ・ロイドやダイアン・リーヴスなどのサポートで日本に来るとともにレッドマンの信任も厚いルーベン・ロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2013年1月6日)、そしてロイ・ヘインズ(2009年6月1日、2011年11月29日)の孫でもあるというマーカス・ギルモア(2007年11月21日、2010年7月24日、2010年8月22日)。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 まず、思ったのは、ジョシュアってこんなに、やせていたっけ? ということ。手の指が長く綺麗であるのも認知。で、息遣いがよく分るような距離で見ることができると、彼の技術の高さが良くわかる。それゆえ、知性と言い換えても50%は嘘にならないだろう抑制の取り方も手に取るように理解でき、そうした部分がぼくに、ジョシュア・レッドマンってはみ出さない、熱量が高くないと感じさせることに繋がっているとも思った。

 スタンダードもロック曲も自作もクラシック曲(バッハ曲を静謐に披露)も適度に構成に凝った施しを介して、提出する。各奏者の音鳴りのバランスがいいこともあり、均整がとられているとも、それは感じさせるか。なんかなあと思わせるのは、親分以下、ゴールドバーグを除いて(たぶん)は、譜面を置いていたこと。それには、少し興ざめします。

 純ジャズ界ではトップ級に話題を集めるドラマーであるマーカス・ギルモアを一番見たくてぼくは足を運んだが、この行き方だとばっちり個性発揮という感じではなかったか。他の奏者から見れば、彼のソロ・パートもほんのオマケみたいな感じだった。マッチド・グリップ中心で叩く彼、ジャズ・マナーに則るのに、あんなにバスドラの足数が多い人は珍しいかも。なんか、彼の演奏に接し、人力ダブ・ドラミングをやらせたら上手そうとも感じた。

▶過去の、レッドマン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100905
http://43142.diarynote.jp/201206011834355756/
▶過去の、ゴールドバーグ
http://43142.diarynote.jp/?day=20110704
http://43142.diarynote.jp/?day=20120608
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
▶過去の、ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
▶過去の、ギルモア
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
▶過去の、ヘインズ
http://43142.diarynote.jp/?month=200906
http://43142.diarynote.jp/201112041055284606/

<今日の、アフター>
 その後、ライヴを見た人たちと流れるが、お行儀のいいレッドマンが何かと掛け声を出したり、見えを切るようなポーズを今回見せていたことが話題にのぼる。優等生、ちょい無理目に陽性に振る舞う、の図。いい奴、なんだろうな。また、一人はベースとドラムの個性が乖離しすぎ、なぜリーダーはあのドラムを雇っているのかとのたまう。持ち味があっているとは思わなかったが、雑なぼくはそんなに気にはならなかったが。でも、なにかにつけて、このリーダーだからこそ生まれてくる聴後感はあったわけで、そう意味ではジョシュアイズムに満ち満ちていた? で、また”朝まで(飲み)コース”になってしまう……。って、それはレッドマンとはなんら関係がないが。