東京ジャズ

2019年9月2日 音楽
 2日めの日曜日、NHKホール。(上の日付は9月2日になっているが、1日です)

*チャールス・ロイド "Kindred Spirits"
 名実ともに大テナー奏者のチャールズ・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日)の公演は、新グループであるキンドレッド・スピリッツを伴ってのもの。それ、ずっと起用しているベースのルーベン・ロジャース (2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日、2017年1月12日、2017年1月13日)とドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日)のリズム隊は留任。そして、直近のワーキング・バンドはピアノレスだったが、今回はピアノのジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日、2018年9月2日、2019年5月30日。彼はロイドの2015年ブルーノート移籍初作に入っていた)を擁し、さらにビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日、2017年1月12日、2017年1月13日、2017年6月19日、2019年6月10日)と入れ替わる形でエレクトリック・ギターのジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日)、2017年11月13日、2018年12月11日)が入ったという顔ぶれなり。

 実はこの編成によるライヴ・レコーディングを、ブルーノート発の新作としてロイドは終えていて、もう重なりの妙はかなり開発されていると言えそう。同作収録曲は4曲で、一番長い曲は21分で、短い曲は9分代。ペダル・スティール奏者や一部シンガーを起用して“アメリカーナ”調路線に臨んだザ・マーヴェルズと比すなら、もっとジャズにフォーカスしていて旧路線にまた戻ったという印象を持たせるか。だから、フリゼールに次ぐアメリカーナ・ジャズのギター路線をとると書けなくもないラージももういろんな弾き方のもと、ここではソロの際ごんごん攻める。うわー、近年の彼の音しか聞いていないと、それにはちょっと驚くのではないか。また、クレイトンもぼくが触れた演奏の中では、一番才気走った指さばきを出していた。リーダーにより、人は変わる。そういえば、ザ・マーヴェルズではエレクトリック・ベースも手にしていたロジャースだが、ここではすべてダブル・ベースを弾く。と、書くと、すごい切れたジャズに思われるかもしれないが、(そういう面もあるものの)しっとり目のバラードがあったり、ロイド調演歌と言いたくなるようなメロディ使いの曲があったりして、一概にそうは言えないのは面白いところ。この木曜日にロイドにインタヴューした際には、いろんなことを聞けそうだ。

 それから、長身のロイドは遠目にも目を引き、格好良かった。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170118
http://43142.diarynote.jp/201706081034584863/
https://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
https://43142.diarynote.jp/201905310800294940/
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
https://43142.diarynote.jp/201711141337544172/
https://43142.diarynote.jp/201812121252088734/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201706190940184750/
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/

*カマシ・ワシントン
 おお、リズム隊の3人は後ろの高い段に位置し、広いステージにおいて見栄えがするなあ。

 テナー・サックスのカマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)のショウは、お父さんであるフルートとソプラノ・サックスのリッキー・ワシントン(2016年12月6日)、トロンボーンのライアン・ポーター(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、キーボードのBIGYUKI(2016年11月20日、2019年1月19日、2019年7月24日)、ベースのマイルス・モズレー(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、ドラムのロナルド・ブルーナー・ジュニア(2009年9月15日、2014年9月10日、2015年9月30日、2015年10月31日、2016年4月5日、2016年5月20日、2016年12月6日、2018年8月19日)とトニー・オースティン(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、ヴォーカルのパトリス・クイン(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)の計8人がステージに立つ。新加入のBIGYUKI以外はずっと同じ顔ぶれで続いているのだな。ワシントンたちと違いNY在住の彼はどういう経緯で加わったのか。この1月に彼にインタヴューしたときに、LAで作られる音楽はつまらないものが多いがブレインフィーダー系は気になる、と言ってもいたけど。

 まず、改めて思ったのは、ツイン・ドラムでことにあたるのがうれしい。それに、やはり笑顔の定石超えを抱えるモズレーのベースが入ると、耳を引く。それに比するとフロントに立つ菅や歌声は少しフツーなのがもどかしいが、ジャズの形を取りつつもソロを純粋に披露すればいいという思考からは少し離れた温故知新総花的活劇表現を送り出すことをワシントンは目標としているとぼくには思えるので、過剰に弱点とは思わないが。BIGYUKIの参加は大正解、音色も与える異化作用的刺激も広がっていい感じだった。

▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、リッキー・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
▶︎過去の、ライアン・ポーター
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、BIGYUKI
https://43142.diarynote.jp/201611211717002386/
https://43142.diarynote.jp/201901221615346185/
https://43142.diarynote.jp/201907250901144536/
▶︎過去の、のマイルス・モズレー
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
https://43142.diarynote.jp/201604060850393487/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶過去の、ロナルド・ブルーナーJr.
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201409111424501752/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160520
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、トニー・オースティン
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、パトリス・クイン
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/

*スナーキー・パピー
 フュージョンという傾向にある表現のなか今もっとも思慮深いことをやっているスナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)の今回の来日メンバーは、ベースのマイケル・リーグ(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日、2018年10月10日)、テナー・サックスとフルートのクリス・ブロック、トランペットのジャスティン・スタントン、キーボードとトランペットのマイク"Maz"マーハー、キーボードのビル・ローレンスとボビー・スパークス、ギターのボブ・ランゼッティ、ドラムのジェイムソン・ロス、パーカッションのマルセロ・ウォロースキ(アルゼンチン出身)という顔ぶれ。リーグは何人も重複するメンバーを抱えていて、ローテーション性のもとライヴやツアーにあたる。だから、日本人とはいえ小川慶太(2014年8月3日、2016年1月19日、2017年4月18日、2017年12月11日、2018年4月4日、2018年10月10日)は今回の東京ジャズ公演には同行していない。とはいえ、来週にはチリ出身のシンガー・ソングライター/ギタリストの公演で同行するが。

 ともあれ、この顔ぶれゆえに、この曲/この構成というのを、マイケル・リーグが周到に考え実演にあたっているのがよくわかるライヴだった。ときにだまし絵ぽく巧みに曲の流れのなかに各奏者の質の高いソロを散らしていく。結構、彼のPCには映画の絵コンテのような構成表がきっちりと置かれているはずだ。ビル・ローレンス(2016年6月16日、2017年6月12日)に比べるとボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日、2016年10月11日、2017年4月18日、2018年12月5日)、は地味だなあと思っていたら、クローザーでスパークスはソロで大フィーチャーされた。そのキーボード音はまるでギターだった。

▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶︎過去の、マイケル・リーグ
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
https://43142.diarynote.jp/?day=20181010
▶︎過去の、スナーキー・パピー/マイケル・リーグ
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
https://43142.diarynote.jp/201706130913351348/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161011
https://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、小川慶太
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160119
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
http://43142.diarynote.jp/201712121324481276/
http://43142.diarynote.jp/201804051207119119/
https://43142.diarynote.jp/201810170924585002/
https://43142.diarynote.jp/?day=20181117
https://43142.diarynote.jp/201812081039071230/

<翌日の、ナイス・ガイ>
 蒸し暑いが雨の心配もなく、NHKホール前の公園の大通りも盛況。昼の部と夜の部の間にあった、ポーランドから来たヴォイテク・マゾレフスキ・クインテット(2016年9月19日 )の野外ステージ公演を見に行ったら、ものすごい人が集まっていてびっくり。3年の時間をかけてメンバーをあつめ、2011年から不動の2管編成のカルテットで続けられているが、メンバーは不動。ただし、今回テナー・サックス奏者は代役らしい。それ、その事実を聞かないとわからないが。エネルギーある、今のジャズ・コンボを率いるベーシストのヴォイテク・マゾレフスキには翌日インタヴューしたが、すごい好漢(格好もよく、若いときのスティング〜2000年10月16日〜とも重なるかも)で意気投合? →明日のチャールズ・ロイド公演を一緒に見にいくことになった。彼らの4作めとなる、今年12月に出る予定の『When Angles Fall』は同国の先鋭ジャズ・ピアニストであり、ロマン・ポランスキーの「ローズマリーの赤ちゃん」他数々の映画音楽を担当しているクシシュトフ・コメダ(1931〜69年)の楽曲集。通常はオリジナル曲をやっていきたいところ、やはり偉大な先達の才を掲げたアルバムを作らなきゃとなったという。それ、スラブ民族的な哀愁感やペーソスを持つメロディと今を生きるジャズ・マンの技と矜持が噛み合った好盤だ。
▶︎過去の、ヴォイテク・マゾレフスキ・クインテット
https://43142.diarynote.jp/201609211101391997/
▶︎過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
 南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。チャールズ・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日、2019年9月2日)。ピアノのジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日、2018年9月2日、2019年5月30日、2019年9月2日)。エレクトリック・ギターのジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日)、2017年11月13日、2018年12月11日、2019年9月2日)。ベースのルーベン・ロジャース (2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日、2017年1月12日、2017年1月13日、2019年9月2日)。ドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日、2019年9月2日)。なお、そのグループ名は親密な博愛関係を示す。

 しかし、近くで見ると、やっぱり行われていることに対する理解度が飛躍するなあ。いやあ、リズム・セクション音も微細に機微をつかめ、いいなあと頷くことしきり。そして、このセットはあんまりまったり行かず、基本的に軽やかというか羽を持つ“開放形”の曲が多かった。アンコールには2回応え、2時間近くやったんじゃないか。後日、当人はやはり気分が乗る乗らないはあると言っていた。実はアンコールをやらなかったショウもあったらしい。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170118
http://43142.diarynote.jp/201706081034584863/
https://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
https://43142.diarynote.jp/201905310800294940/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
https://43142.diarynote.jp/201711141337544172/
https://43142.diarynote.jp/201812121252088734/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201706190940184750/
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/

<今日の、好漢>
 ロイドのライヴは、ポーランド人ベーシストのヴォイテク・マゾレフスキ(2016年9月19日、2019年9月2日)と一緒に見る。飲むの好きと聞くと、「もちろん。だって、ミュージシャンだもん」と胸に手を添えた彼は、日本酒派。とってもパフォーマンスに示唆を受けたよう。終わったあと、同行のヴォイテクの彼女が行きたがったバー〜もといクラブ仕様がとられていた〜に一緒に流れる。店では中古アナログが売られていて、そのなかにあったドン・チェリーの『Symphony for Improvisers』(Blue Note、1966年)とザ・アート・アンサブブル・オブ・シカゴの『Bap-Tizum』(Atlantic,1972年)を見つけ、その2枚を差し出し、どっち好きと問うたら、マゾレフスキは迷わずチェリー作を取る。と、思ったら、7000円の値付けがされていたそれを即買う。おお。後日、日本を離れるマゾレフスキからぼくあてのCDと靴下のプレゼントを託されたという連絡を大使館の方から受ける。うれしいなあ。また、ソウル・メイトができた。
▶︎過去の、ヴォイテク・マゾレフスキ
https://43142.diarynote.jp/201609211101391997/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
 丸の内・コットンクラブで、今っぽい豪州出身の在英シンガー・ソングライター(2017年3月14日)のショウを見る。セカンド・ショウ。まず、ステージを見ておお。スカスカな感じでやった初来日時と異なり、いろんな楽器が置かれており、プロっぽい体制を整えてきているなと思えた。

 キーボードを弾きながら歌うジョーダン・ラカイに加え、サポートは南ア出身のイムラーン・パレカー(左利きで、効いたコーラスもときにつける)、ベースのジョン・ハーヴェイ、ドラムのジム・マクレー、パーカッションのエルネスト・マリシャレスという陣容。サポート陣、けっこういける。ラカイのキーボード音も何気に達者で、バンド・サウンドは噛み合いよく、ときにファンキー。これは、インストでやっても、いい感じのUKジャズ・ファンクとして楽しめると思った。都会的なサウンドに、ラカイはほのかなソウルネスもはらむ歌をのせる訳だが、前回よりリヴァーヴはかけずに、等身大の自分を出しているように思えた。

▶︎過去の、ジョーダン・ラカイ
https://43142.diarynote.jp/201703161148366918/

<今日の、”エルボウ”様>
 午前中に宿泊しているホテルで、チャールス・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日、2019年9月1日、2019年9月3日)にインタヴュー。イントキシケイト誌用、来年の新作リリースに合わせて露出されるので、記事が出るのはまだだいぶ先になるどろうけど。
 ロビーにいたら、NYへ戻るジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日)、2017年11月13日、2018年12月11日、2019年9月1日、2019年9月3日)が荷物を持って単身降りてきたので、言葉を交わす。彼とやることで自分の演奏がすごいことになっている、というのは本人も自覚するところ。聞けば、ちゃんと一緒にやるのは初めてながら、ロイドとは15歳ごろから顔見知りだそうな。次の彼の来日リーダー・ライヴは来年の3月で、その際は新作『Love Hurts』(Mack Avenue)に入っていたザ・バッド・プラス(2003年8月1〜2日、2004年5月13日、2005年8月29日、2008年2月20日、2011年3月9日、2013年11月20日、2014年10月31日)のドラマーのデイヴィッド・キングを同行させるそう。やったー。別れ際に、チャールズにいろいろ聞いてねとウィンク。彼もいいやつだなあ。
 で、御大。奥さん(マネージャーもしているのかな)を伴って登場。うわあ、捌けた愛の人。もう興味深い話がたくさん聞けるとともに、金言だらけ。参りましたァ。話が面白すぎて、身を乗り出してインタヴューしたわけだが、これだけ生理的に直立不動な感じで取材をしたのはほんと久しぶり。B.B.キング、ボビー・ブルー・ブランド、サン・レコード、ザ・ビーチ・ボーイズとマイク・ラヴ(2014年3月28日)、ロビー・ロバートソン、デュエイン“ブラックバード”マックナイト(2002年7月28日、2009年9月5日、2011年1月22日、2013年4月12日、2015年4月12日、2016年11月29日、2017年4月8日、2019年4月30日)、ボブ・ディラン、ザキール・フセイン(2004年9月5日、2005年1月31日)、ミシェル・ペトルチアーニ(2012年8月7日、2016年4月10日、参照)、キース・ジャレット(2001年4月30日、2007年5月8日)、児山紀芳、中平穂積、ビリー・ホリデイ、ジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日、2017年4月11日、2018年1月24日)、ビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日、2017年1月12日、2017年1月13日、2017年6月19日)、そしてジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日、2018年9月2日、2019年5月30日、2019年9月1日)やジュリアン・ラージら。これらは彼の話に出てきた名前(の抜粋)だが、それ以外の話もいろいろ出て、本当に広がりある、豊穣な言葉のやりとりができたと思う。至福。
 それにしても、81歳の御大はほんとうに元気。オーケストラ使用をはじめやることになっているプロジェクトはいろいろ、先のフリー・スピリッツもニュー・カルテットも解散したわけではなく、続けて持っているとのこと。ヨガをしており、たまに魚を食べるもののベジタリアンだそう。本当は歌手になりたかった、とも彼は言っていたな。サンタ・バーバラとNYの両方に家を持ち、自由にやらせてくれるECMに25年いたものの、ブルーノートに移った決め手は、アプローチしてきたドン・ワズ(2013年2月15日、2019年6月12日、2019年6月13日、2019年6月14日)に原盤権が欲しいと言ったらあっさり認めたから。インタヴューが終わると、一緒に写真を撮ろうと言われ、光栄っす。もっともっと、好きになっちゃったよー。これ、今年のぼくの活動のハイライトとなる? テープ起こしって消耗するので、(原稿料との差し引きで)赤字になろうともぼくはそれを外注に出しているが、これは自分で起こそうかな。
 ところで、ロイドは握手を避ける。彼は握手を求めると、いやいやこうするんだよと、肘を横に出す。そして、お互いの肘同士を当てる。それを両肘でやるとサークルになり、握手なんかより強いつながりとなるというようなことを、彼は言っていた。帰りにも、彼は肘を突き出してきた。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
https://43142.diarynote.jp/201909071014576603/
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
https://43142.diarynote.jp/201711141337544172/
https://43142.diarynote.jp/201812121252088734/
https://43142.diarynote.jp/201909031830055314/
https://43142.diarynote.jp/201909071014576603/
▶過去の、ザ・バッド・プラス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://43142.diarynote.jp/200509011126570000/
http://43142.diarynote.jp/200802212249200000/
http://43142.diarynote.jp/201103171347055826/
http://43142.diarynote.jp/201311230757159421/
http://43142.diarynote.jp/201411101736494912/
▶︎過去の、マイク・ラヴ/ザ・ビーチ・ボーイズ 
http://43142.diarynote.jp/201403291149242320/
▶過去の、ブラックバード・マックナイト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm 触れていないが、フジ・ロック
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/201102081256005311/
http://43142.diarynote.jp/201304150853287353/
http://43142.diarynote.jp/201504131109395934/
http://43142.diarynote.jp/201612011925201175/
https://43142.diarynote.jp/201704130838405526/
▶︎過去の、ザキール・フセイン
https://43142.diarynote.jp/200409050916440000/
https://43142.diarynote.jp/200502041825460000/
▶過去の、ミシェル・ペトルチアーニ
http://43142.diarynote.jp/201208091509447159/ 映画
https://43142.diarynote.jp/201604190912403018/ 追悼公演
▶過去の、キース・ジャレット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://43142.diarynote.jp/200705181807060000/
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
http://43142.diarynote.jp/201704131639031673/
https://43142.diarynote.jp/201801251404591913/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201706190940184750/
▶︎過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
https://43142.diarynote.jp/201906151230594715/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/

 アルト・サックス奏者の篠田昌已(1958〜1992年)が間を取り持つ、2人のクラリネット奏者によるイヴェントを渋谷・Lo-Poで見る。近藤は篠田が率いたコンポステラでの大熊の演奏を聞き、クラリネットを手にした。そして、近藤は自らのリーダー・バンドであるof Tropique のCDブック『La Palma - Another Day in Paraiso』(Newtone、2018年。オタニじゅん、イラスト)を作り、それをなんの面識もない大熊が偶然耳にし、とても他人事とは思えず……という顛末から、この企画は生まれたという。

 まず、前半は大熊ワタル(2001年3月24日、2010年12月13日、2012年7月1日)と近藤哲平(2016年2月28日、2017年9月24日、2017年12月17日、2019年3月14日)のトーク。まず、お互いの持ち楽器であるクラリネットという楽器について語られる。へえ〜、クラリネットといってもいろんな様式を持つものがあるのだな。そして、二つ目のブロックから、コンポステラのメンバーでもあったチューバの関島岳郎 (2001年3月24日、2005年12月20日、2009年7月29日、2011年12月28日)が加わり、篠田昌已について語られる。入場者には篠田の歩みを伝える資料も配られた。3つ目のパートはクレツマーからギリシャの音楽まで、個性的なクラリネット奏者が奏でる様々な演奏を映像を交えながら紹介。話は尽きないという感じで、トークは1時間強持たれた。

 その後はライヴの巻で、自らの曲やコンポステラの曲を演奏する<近藤+ギターの八木橋恒治(2017年12月17日、2019年3月14日)>とクレズマー曲などもいくつも繰り出す<大熊+関島withこぐれみわぞう>、そして<全員>という3つの仕立ての実演が次々に披露される。それらは1時間半は超えていたはずだが、端折った曲もあるよう。いや密度的にも時間的にもとっても濃い出し物というしかない。そして、そこには広い音楽的視野、多大なクラリネット愛や篠田に対する敬愛も付帯していたのだから、これは胸がいっぱいになるではないか。ここには自在に音楽を享受できる歓び、胸を張って我が道を進む音楽家の素敵があった。

▶︎大熊ワタル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
https://43142.diarynote.jp/201012150816313582/
https://43142.diarynote.jp/?day=20120701
▶︎過去の、近藤哲平
http://43142.diarynote.jp/201603011023174338/
http://43142.diarynote.jp/201709261222472364/
https://43142.diarynote.jp/?day=20171217
https://43142.diarynote.jp/201903151046159191/
▶︎過去の、関島岳郎
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-3.htm
https://43142.diarynote.jp/200512231956580000/
https://43142.diarynote.jp/200908072230463452/
https://43142.diarynote.jp/201201061201449522/
▶︎過去の、八木橋恒治
https://43142.diarynote.jp/?day=20171217
https://43142.diarynote.jp/201903151046159191/

<今日の、楽器など>
 実は、管楽器のなかでクラリネットという管楽器はぼくにとってそれほど興味を持てる楽器ではない。なめらか軽やかだとは滅法感じるのだが(この日、2人によって紹介されたクラリネット奏者はそうじゃない人が多かった)、テナー・サックスとかトロンボーンなんかに慣れた耳には音がぼくには軽すぎると思っていたのだ。だが、この晩の2人のクラリネット演奏に触れて、身軽に持ちながら吹けるクラリネットは身体の細い日本人にとってはより一体となって扱える楽器であり、場の空気と同化して泳げる感覚が強い楽器であると感じてしまった。それは、2人の演奏に好ましい哀愁やペーソスがあったためかも知らない。いっぽう、関島のチューバ音は“鉄板”。音色にいろいろな配慮があるように思える。フェンダーの古い箱モノを弾く八木橋は、最後の5人演奏の際もちゃんとギター音を入れていて感心。だって、リハなんてあってないようなものだろうに。その最後で弾いたソロもしかと耳に入ってきた。それから、こぐれみわぞうによるチンドン太鼓の音には耳惹かれた。いい音しているので、カスタム・メイドであるのかと聞いてみたら、自分で組んでいるものの、それぞれのブツ(平たく言えばシンバル系2、スネア系2)は販売されているものであるという。そのキット、10キロぐらいだそうで、それには驚く。もっと、軽いのかと思った。チンドン太鼓って金物系は右手で叩き、皮物系は左手で叩く。それ、ドラムと同じ。異なる文化圏や系統のもと形となった楽器であっても、変なところで共通点は出てくるものなのだなあと頷く。

 チリ出身で在NYのシンガー・ソングライター/ジャズ・ギタリストであるカメラ・ミザ(2017年9月3日)のリーダー・グループ公演を、南青山・ブルーノート東京で見る。ファースト・ショウ。

 イスラエル出身ピアニストのシャイ・マエストロ(2012年3月12日、2016年1月4日、2016年6月11日、2016年6月11日、2017年9月3日、2017年9月6日、2018年11月12日)と日本に複数回来ているメサだが、今回の同行奏者の2人はやはり在NYのイスラエル人。それはキーボードとピアノのエデン・ラディン(2018年6月19日)と、ダブル・ベースのノーム・ウィーゼンバーグ(2018年11月12日)という辣腕奏者たち。さらに、ドラマーはやはりNYで活躍する小川慶太(2014年8月3日、2016年1月19日、2017年4月18日、2017年12月11日、2018年4月4日、2018年10月10日)で、そんな3人はメサの新作『アンバー』録音サポート者と同一。その新作が弦楽四重奏団付きであったように、そのカルテットに日本調達の4人の弦楽器奏者がつく。ヴァイオリンの松本裕香(2018年8月26日)と鈴木絵由子、ヴォオラの惠藤あゆ(ヴィオラ)、チェロの橋本歩(2019年6月29日)が、その面々。

 素敵な実演だった。オリジナルに混じったミルトン・ナシメント(2003年9月23日)曲カヴァーをはじめ、多くは新作に入っていた曲で、スペイン語中心で歌われる。そして、自ら弾くギター・ソロも今様で確か。ギター弾き語りで歌われた曲は、メキシコ人のトマス・メンデスの1954年有名曲「ククルクク・パロマ」。あのカエターノ・ヴェローゾ(2005年5月23日)も昔取り上げていた。

 弦アレンジはウィーゼンバーグがしているそうだが、その曲趣を底上げする才気ある編曲を日本人女性たちもよくこなしていた。合わせるのは大変だったろうに、ファースト・ショウとセカンド・ショウはけっこう違う曲をやったらしい(彼女の2016年作『Traces』で取り上げていた、ヴィクトル・ハラの「ルチアン」もやったと聞いた)。ジャズを知らなくては現れえない浮遊感や広がりと随所に息づく透明感ある南米滋養に、ほんとうに頷く。でもって、みんなで心を持っていいものを作り上げたいという気持ちが、確かな実を結んでいたと思う。書き留めたいことは、山ほど。日経新聞電子版でこの晩のことを書くので、これぐらいにしておく。

▶︎過去の、シャイ・マエストロ
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201601050914043127/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
https://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
http://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201709110842026988/
https://43142.diarynote.jp/201811141355524842/
▶︎過去の、カメラ・ミザ
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
▶︎過去の、エデン・ラディン
https://43142.diarynote.jp/201806201223491195/
▶︎過去の、ノーム・ウィーゼンバーグ
https://43142.diarynote.jp/201811141355524842/
▶過去の、小川慶太
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160119
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
http://43142.diarynote.jp/201712121324481276/
http://43142.diarynote.jp/201804051207119119/
https://43142.diarynote.jp/201810170924585002/
https://43142.diarynote.jp/?day=20181117
https://43142.diarynote.jp/201812081039071230/
▶︎過去の、松本裕香
https://43142.diarynote.jp/201808290950074198/
▶︎過去の橋本歩
https://43142.diarynote.jp/201906301115529387/
▶︎過去の、カエターノ・ヴェローゾ
http://43142.diarynote.jp/200506021846130000/
▶過去の、ミルトン・ナシメント
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京に。特殊才能アリのフランス人キーボード奏者である(2015年5月30日、2016年8月29日)のセカンド・ショウを見る。例により、当人とドラマー2人によるパフォーマンスなり。

 まずは、映像ありきの人。自ら撮ったり、ネットなどで拾った映像を自在に編集し、その映像に元々ある肉声や鳥の鳴き声や情景音などを下敷きに、彼はそこにメロディやキーボード/ビート音を加えて、絵巻的サウンドを作ってしまってきている。つまり、彼の音楽の基には映像があり、アルバムはその映像のサウンドトラックという感じものとなる。ゆえに、彼のライヴ・パフォーマンスにおいては、いつも映像(プリセットの音楽付き)が流され、それに合わせるように生の演奏音がつけられる。

 さすが、前回から3年近くたつため、4つのパートに分けられた映像はすべて新しい。その映像は人間にまつわるゲームを題材とするもので、横のほうに座っていたので今いちそれをちゃんと把握することはできなかったが、日本で言うならずいずいずっころばし〜のようなフランスの子供の遊びの様からTVゲームの画面まで、“絵”のマテリアルは様々。けっこう長々と使われていたエレヴェイターのシーンの女性はクリスタル・ケイ(2011年8月6日 )だった?

 そんな映像に沿う音楽はヴォーカル・パートが多くなり、フルート音も結構使われているのはポイント。そのシンガーやフルート奏者も画像に現れ、それは過去はなかったこと。そして、痛感させられるのは、まあワン・パータンという感想も生まれなくはないのだが、本当にシャソールの作るメロディとキーボード音は温もりや潤いがあり、天衣無縫さや満たされた情緒を抱えているという事実。ほんと、それは唯一無二の個性。一部、米国のR&Bの作り手が彼の才に着目しているというのもさもありなん。彼のそうした手腕って、飛躍して言えばたとえばデイヴィッド・T・ウォーカーやバーニー・ウォレルの個性ある楽器音のようなものだから……。ただし、そういう彼の演奏をジャズっぽいという人もいるが、ぼくはその説には与しない。よく映像に臨機応変に合わせるとは思うが、基本は決まったフレイズをまんま弾いているので、インプロ度は低い。とはいえ、その指さばきやメロディがあまりに有機的かつメロウであるから、そういう言い方が出てくるのも分からなくもない。

 ドラムを叩くのは、マテュー・エデュアール 。彼、過去の来日時の人と同じなのかな? もう、強力にしてシャープ。わりと画像に合わせて歌うように叩くときは本当に腕が立つと思わされる。だが、ステディな8ビートをキープする際だと、その上手さが災いし、つまんなく感じられてしまうという不幸な人ですね。なんにせよ、彼も完成度の高いショウには欠かせぬ人であるのは間違いない。アンコールは2曲、最初は昔の印度材料のやつで、2曲目は映像なしでデュオった。90分ぐらい、2人は演奏した。

▶︎過去の、シャソール
http://43142.diarynote.jp/201505310957591440/
https://43142.diarynote.jp/201609200921301045/
▶︎過去の、クリスタル・ケイ
https://43142.diarynote.jp/201108101632022013/

<2015年の、ナイス・ガイ>
 以下の質疑応答は、1976年にパリに生まれたシャソールの2015年初来日時に取ったインタヴューだ。その抜粋は、ラティーナ誌に掲載された。

——ご両親がマルチニークの生まれで、あなたはパリ生まれなんですよね。
「そう。音楽学校に通って、ピアノを学んだり音楽分析をするようになった。オーケストラにも所属したよ。ピアノという楽器はオケのなかで1名しか存在しないから、その地位を得るまでが大変だった」
——子供の頃から音楽が一番の存在で、大きくなったらミュージシャンになると思っていたわけですか。
「もちろん、小さなときからそう思っていた。音楽家になることはハードルが高いというのは、自分でも自覚していた。父がサックスとクラリネットをやっていたので、父はやはり音楽の道に進んでほしいという希望を持っていたんだ。父は(出身地の)アンティル諸島の音楽やジャズやラテンを演奏していたけど、パリに移住したとき、オーケアストラに所属しようと努力した。そして、オーケアストラに入ってからはクラリネットを吹いていた」
——では、子供の頃から、マルチニークの音楽も流れていたわけですか?
「そりゃ、もちろん。島の民族音楽、ビギン、ジャズ、カリプソ、クラシックのレコードを沢山あって、小さなころから父と演奏し、それがクラシックを真面目にやるきっっかとなった」
——アメリカのバークリー音楽大学にも通ったことがあるんですよね?
「パリの大学では哲学を専攻して、と同時にオーケストラにも所属していて、また同時にジャズの音楽学校にも通っていた。一方、個人的にはミュージック・ヴィデオを作る事もしていて、26歳になったときにバークリー音大の奨学金を得た。作曲の勉強をちゃんとしたい、アメリカに行きたいという気持ちがあったからね。1年間、そこで学んだよ」
——その後は、映像に音楽を付ける仕事についたのですか?
「いや、その前からパリではプロとしてそういう仕事をしていたよ。帰国後にフェニックスの世界ツアーに同行して、そのツアーの終わりがLA公演だったので、そのままそこに1年間滞在したんだ。そのとき、アーティスト・イン・レジデンスに所属していた。ロサンゼルスはとても好きな街で、そこでの生活はいろんなことが試すことが出来て、僕のキャリアにおいて大切な時期だと感じている。それが2005年なんだけど、ちょうどその時にYouTubeという画期的なものが表れて、何万というヴィデオを自由に見る事が出来て、自分の好きなように弄ったり、編集したりできて、それに夢中になった。そして、そんな時に、ヴィデオで使われている音を使えるんじゃないかというアイデアに行き着いた」
——では、LAでの自由な日々がなかったら、今のようなことはやっていない?
「LAに行く前から広告の仕事をしていたんだ。その手の職業はとても報酬がいいので、そのころから半年仕事をして、半年は自分の創作活動に励むという生活をしていたので、LAに行ってなくても今のようになっていたのではないかと思う。まあ、一番のきっかけは、YouTubeの登場だね」
——YouTubeの登場を引き金とする、クリエイティヴな音楽の冒険。……そんな行き方を確立したのはいつごろですか?
「LA滞在を終えて、パリに帰ったんだけど、そのときに両親が飛行機事故で亡くなってしまったんだ。パリにいて、なんか落ち着かない日々で、その時にすごく自分の創作に没頭して、仕事をし、2006年に”ロシアの子供”というタイトルのヴィデオを作ってのが分岐点となるかな。そこらあたりが、今の自分の音楽性に繋がった。そして、2008年ごろに、自分自身で映像も作りたいと思うようになったんだ。いろんな映画の予告版から“もののけ姫”の映像まで、なんでも僕は使い、音楽をつけるよ」
——僕はインドで撮った映像を基にした『Indiamore』(Tricatel、2013年)を知って、こんな才人がいるのかと仰天しました。ときに、なぜインドだったのでしょう?
「マルチーニークとインドってかけ離れた国のように思うだろ? でも、意外と繋がりがあって、僕の母もインド系の血が入っていたということもある。それに、マルチニークは、西インドとも呼ばれるでしょ? まずインドにひかれたのは、ん〜という、そこにある低音にひかれた。そこにいろんな音が加わり、最終的に音楽が低音に収束する。低音と高音の間に余っている空間があって、そこに西洋音楽を入れる余地があって、僕はそこにひかれた。」
——西洋と東洋の出会い、みたいなところはかなり意識したのでしょうか?
「それもなくはなかったけど、そういうのは1960年代ぐらいから他の有名な人がやってたからね。まず、僕が思ったのは、周りのフランス人の友達がインド音楽を理解してくれない。寝てしまったり、聞こうともしないという状況をどうやって、彼らに聞かせることができるかというのが目的だった」
——新作の『Big Sun』(Tricatel、2015年)。そのジャケット・カヴァーにあるマスクは映像の材料地となったマルチニークのものですか?
「これはカーニヴァルで使われるマスクなんだ。僕自身も最初見た時に奇抜で、驚いた。いろんなものを子供たちがつけて、車をとめたりして、何かをもらったりする。そういうハロウィン的なカーニヴァルがあるんだ。今回このマスクを選んだのは、フランスの大臣のなかに黒人女性がいるんだけど、フランス国内における黒人差別の動向を取り上げてすごく白人たちからバッシングを受けていたこと。僕は当然それを黒人の立場で見ていて、今の白人の黒人に対する態度というのは14世紀となんら変わらない。ならば、そんなことを笑い飛ばしてやれという気持ちで、黒人が猿のお面を被って笑っているというメッセージをこめた。それと、僕が映画「猿の惑星」の大ファンだということもある」
——音楽的に求めたところは?
「音楽的には、何度も聞きたくなるものにしたかった。たとえば、ノスタルジー的な要素だったり美的な要素であったり、自分の熱意であったり、そういうのを糸と針で繋いで行く。そういう作業しながら、一つの音楽にまとめていったんだ」

 入谷・なってるハウスにすんごく久しぶりに行く。そんなに、迷わずお店につけてよかったァ。

 まず、ヴォイス〜ときに、自分で装置を用い自在に声色を換える〜とときにピアノの蜂谷真紀(2008年8月24日、2009年1月8日、2010年9月11日、2014年7月22日、2014年9月25日、2015年5月20日、2015年6月15日、2016年11月2日、2018年1月19日、2019年3月29日)とラジオの直江実樹(2014年7月25日)がパフォーマンス。蜂谷の冴えは何度も見て知っているゾという一方、直江のラジオ扱いを間近に見ておおいにうなづいた。古いラジカセ(42年前のものを使っているとか)を用い、断片的にはまんまAMやFM放送を流し、また局を探す際の流動音や発信音を鋭敏なノイズに変換した音も、彼は自在に断続的に差し出す。その音総体のノリは、臨機応変なノイズ&アクセント音発生装置として機能していたかつてのアート・リンゼイ(1999年12月18日、2002年9月9日、2004年11月21日、2011年6月8日、2014年10月26日、2015年6月9日、2016年9月1日、2017年6月23日、2018年10月21日、2018年10月23日)のギター音と同質と説明できる。達者であると感じさせるともに、この晩はラジオ放送を使う利点もほどほど感じた。冒頭とか複数の箇所で、彼はニュース放送を拾って流したのだが、それは千葉県の台風によるライフライン断絶を受けての給水所やシャワー施設設置の情報で、実にタイムリー。一方で、オペラっぽい音楽も拾い鮮やかに入れたりとかもした。

 続いては、変てこ装置やラップトップや小鍵盤のラエド・ヤシンとクラリネットとラップトップのパエド・コンカ(2014年10月30日)からなる、レバノンのベイルートのユニットであるプラエド(PRAED)がステージに立つ。おお、こんなん。下敷きされるバック・トラックは四つ打ちで、エスニック。そこに、2人は思うまま楽器/装置音を乗せていく。というわけで、バックトラックが鍵。中東というよりも北アフリカっぽいなと感じさせたプリセット音は、なんでもエジプトのミュージシャンのものを活用しているという。マイクで拾ったクラリネット音がPC経由で少し変な音で出てきたり、電波音が気ままにインサートされたり。ラエド・ヤシンは終盤、コブシの入った歌も歌い出す。チャラい蛮行の奥に、諧謔や思慮があるのは間違いない。

 そして、そのあとは出演する4者がフリーフォームに重なり合う。この1発モノ、結構な時間をかけて披露される。で、プラエドのお二人は実験的な奏者としての下敷きがあることを十全に知らせる。かなり、興味深く接することができたなー。

 会場には日本を旅行中である、英国ケンブリッジ在住の青年トーマスもいた。ノイズ/フリー・ミュージックの愛好者である彼(自分でもやると言っていたな)はバー・イッシーにも行ったし、明日は江古田のフライング・ティー・ポットに出向くと言っていた。ぼく、フライング・ティー・ポットって、行ったことなよー。かつて海外に行った際に現地の人によくそんなとこ行くねーとか言われたりもしたが、そういうもんなんだろうなー。その話が横に伝わり、ぐうぜん直江は明日フライング・ティー・ポットに出演することになっており、また本来プログ・ロック喫茶であった同所で一番最初にライヴをやったのは、それを申し出た蜂谷であったんだとか。なんか、いろいろ授受つなぎ。を、感じもした晩でした。

▶過去の、蜂谷真紀
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100911
http://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
http://43142.diarynote.jp/201409261635554506/
http://43142.diarynote.jp/201410310931316189/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161102
http://43142.diarynote.jp/201707111737453393/
https://43142.diarynote.jp/201801200930278094/
https://43142.diarynote.jp/201903301004154036/
▶︎過去の、直江実樹
https://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
▶過去の、アート・リンゼイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200411231722390000/
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201410301512336095/
http://43142.diarynote.jp/201506111719463390/
http://43142.diarynote.jp/201609200958472477/
http://43142.diarynote.jp/201706240934237865/
http://43142.diarynote.jp/201810221139492314/
https://43142.diarynote.jp/201810240904066739/
▶︎過去の、パエド・コンカ
https://43142.diarynote.jp/201410310931316189/

<最近の、R.I.P>
 個性派シンガー・ソングライター/ペインターのダニエル・ジョンストン(2010年2月9日)の訃報がはいってきた。ざっと向こうの記事をいくつか見ると、この火曜夜にテキサス州ヒューストン郊外の自宅でなくなったようだ。近年はとくに健康問題がヘヴィなことになり、2017年には最後のツアーを謳うものも行った。晩年はテキサス州オースティンに住んでいたようで、昨年の誕生日には同市でトリビュート・コンサートも持たれもしたらしい。1961〜2019年、どうそ安らかに。
▶︎過去の、ダニエル・ジョンストン
https://43142.diarynote.jp/201002150513388369/

 南青山・ブルーノート東京で、毎年やってくるブラジル人偉才(2004年7月15日、2005年7月13日、2007年7月24日、2008年9月7日、2009年9月29日、2010年7月29日、2011年8月3日、2012年8月15日、2013年7月30日、2014年7月15日、2015年8月3日、2017年9月8日、2018年10月5日)のショウを見る。“シングス・ボサノヴァ・ソングブック”と名付けられた今回は、ジョイス・モレーノ(ヴォーカル、ギター)、トゥチ・モレーノ(ドラムス)、エリオ・アルヴェス(ピアノ)、ロドルフォ・ストロエテール(ベース。縦と電気の両使い)というお馴染みの陣容に、ゲストとしてヴォーカルとギターのゼ・ヘナートを迎える。

 設定されたテーマもあり今回は柔和で洒脱に行くのかと思ったら、オープナーのジョニ・アルフの「空と海」でまた一段とジャジー&難しい行き方をとっているなーと思わせる。また、終盤に披露した十八番オリジナル「フェミニーナ」もスキャットもぽんぽんと飛びだし長めの尺でやるなど、やはりブラジル滋養歌モノとジャズ的な何かを交錯させたことをやらせら、ジョイスは間違いなくピカ一であると再認識。しかし、ジョニ・ミッチェル的清新さがジョイスに憑依したような「フェミニーナ」は来日時には毎度披露していて、彼女にとっても本当に自信曲なんだろうな。

 他はボサノヴァ重要曲を中心に趣向を凝らして披露されたのは間違いなく、誘いと潤いある歌モノ表現を求めた受け手も皆にっこりであったろう。ジョイスと旧知のゼ・ヘナートは途中に出てきてジョイスとのデュエットや、単独歌唱曲を披露する。そちらでは、2人の共作曲や彼のオリジナルもあり。ミナスっぽいと言われもする彼だが(彼を有名にしたヴォーカル・グループのポカ・リヴリはほぼほぼ聞いてない。遺憾デス)、そんなこと以前に、心優しそでダンディな佇まいにブラジル的機微を感じさせられ、うれしくなった。あ、そういえば、ジョイスは外見が少し若返ったような。

▶過去の、ジョイス・モレーノ
http://43142.diarynote.jp/200407151608250000/
http://43142.diarynote.jp/200507161357340000/
http://43142.diarynote.jp/200708051737070000/
http://43142.diarynote.jp/200809081534510000/
http://43142.diarynote.jp/200910021138591223/
http://43142.diarynote.jp/201008111723131487/
http://43142.diarynote.jp/201108101628235325/
http://43142.diarynote.jp/201208201259398163/
http://43142.diarynote.jp/201308021400578638/
http://43142.diarynote.jp/201407161154441780/
http://43142.diarynote.jp/201508091203108498/
http://43142.diarynote.jp/201608291403509244/
http://43142.diarynote.jp/201709110843278416/
https://43142.diarynote.jp/201810090956533250/

 移動し、丸の内・コットンクラブで、NY在住のイスラエル人ギタリストのカルテットを見る。ブラジル出身であるピアノとキーボードとアコーディオン担当のヴィートル・ゴンサルヴェス(彼の2017年サニーサイド発のリーダー作は、トッド・ニューフェルドとトーマス・モーガンという晩年のプーさん〜1999年11月3日、2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日〜絡みのミュージシャンを起用していた!)、カナダ人のダブル・ベースのリック・ロサト(2019年6月9日)、そしてイスラエル出身ドラマーのダニエル・ドー(2014年1月21日、2015年5月14日)という面々が同行。

 現代ジャズ・ギターの作法をしっかり会得しつつ、ブラジル音楽などのもやもやも介したりもするギタリストという印象をぼくはヨタム・シルバースタインに持っているが、終盤にヴィートル・ゴンサルヴェスとのデュオを2曲だかじっくり聞かせたりもし、ブラジル人をバンドに擁しているのにかなり意義を感じているのはありあり。ハコ物ギターを手にする彼(イフェクター・ボードを組んではいるが、それほどは頼らない)の要点は、一部でギターを弾きながら詠唱を重ねること。やっぱり、肉声は偉大だ。ジャズ的なキットながらスネア2つ置きのダニエル・ドーのドラミングは接していて本当に面白い。ちゃんとサウンドに芯を与えていたリック・ロサトはソロを取らなかった。

▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/ インタヴュー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611 遺作について
▶︎過去の、リック・ロサト
https://43142.diarynote.jp/201906100932238360/
▶︎過去の、ダニエル・ドー
http://43142.diarynote.jp/201401221432209419/
https://43142.diarynote.jp/201505150911423384/

<今日の、ホっ>
 昨日から急に涼しくなった。湿度も低めか。今日は、昼間もエアコン使用せず。このまま、秋になるかな? いや、来週アメリカの砂漠の街に行くので、日焼けしちゃうか。

 イエメン・ブルースは、イスラエル人シンガーのラヴィッド・カハラーニが2010年に結成した多国籍ユニットだ。そのカラハーニは同国人気者のイダン・ライヒェル(2014年10月7日)のグループに在籍したこともあるそうで、イエメン・ブルースの日本盤も出た2015年作『インサニヤ ~人間性』(Inzima Publishing)はビル・ラズウェル(2004年9月5日、2005年7月30日、2005年8 月20日、2005年8月21日、2006年1月21日、2006年11月26日、2007年8月3日、2011年3月7日)がプロデュースしていた。2度目となる今回の来日は、電気ベース/ウード奏者のシャニア・ブルメンクランツを伴ってのもとなる。NY在住のブルメンクランツのお母さんはエジプト人だそう。代官山・晴れたら空に豆まいて。

 1曲め、ゲンブリみたいな楽器を弾きながらカハラーニは歌い、ブルメンクランツはアンプリファイドしたウードを弾く。それ以降、カハラーニはスネアとタムと金物を並べたキットを叩きながら、歌う。自ら専門家じゃないと言っていたが、足を使わぬドラム的な演奏はパッションあり。一方、ブルメンクランツはファズ系エフェクトが効いたベースをぶりぶりギター風に弾いたり(その際は、ベース流儀の2フィンガーにて演奏)、ウードを手にしたり。何気にインスト部も長く、その場合、簡素ライトニング・ボルト(2009年11月15日)みたいな感じになるときもあった。

 そして、肝心のカハラーニの歌だが、かなり訴求力あり。高めの声や裏声は存在感があり、かの地の風土を認識させよう。オルタナティヴな部分もあるが、ぼくが2人のパーフォーマンスに触れて感じたのは、トラッドを受け継いだ底力のようなもの。伝承曲を今様な楽器を用いふっきれてやっていると聞いても、ぼくは信じちゃうな。1時間50分ぐらいやった。日本人ベリー・ダンサーのミラも加わる局面もあったが、後から出てきたとき、彼女は衣装をかえ、髪に毛を新たに編んでいた。パフォーマンスを終えた際の、カハラーニの最後の言葉は、「飲もうぜ!」。

▶過去の、ビル・ラズウェル
http://43142.diarynote.jp/200409050916440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050730
http://43142.diarynote.jp/200508230544440000/
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20060121
http://43142.diarynote.jp/200611271213510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070803
http://43142.diarynote.jp/201103101345364557/
▶︎過去の、ザ・イダン・ライヒェル・プロジェクト
https://43142.diarynote.jp/201410141139176172/
▶︎過去の、ライトニング・ボルト
https://43142.diarynote.jp/200911161707238141/

<先日の、切手>
 在米マリンバ奏者のミカ・ストルツマン(2014年10月17日)から2枚の新作CDが送られてきた。夫君のリチャード・ストルツマン(2014年10月17日)とバッハ、ラヴェル、ウィリアム・トーマス・マッキンリー、ジョン・ゾーン(1999年9月24日、2006年1月21日)、アストル・ピアソラ曲を瀟洒に演奏している『Palimpzsst』(Avie/東京エンプラス)。そして、スティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9月3日、2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9月3日、2016年2月19日、2016年12月6日、2017年6月12日、2019年8月6日)の渾身の助力のもと続けられているミカのリーダー・グループであるミカリンバの『Tapereba』(Biground)の2作品。前者は2人のデュオ表現の集大成的な内容。また、ダンサブルなサウンドを標榜していた後者の新作はゆったり傾向で、かなり大人っぽい綾や襞を新たに獲得している。ガッドがオリジナルで叩いていたポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」はアメリカーナ的な仕上がりになった。で、その2枚のCDを包んだパッケージにはなんと、昨年USポストが発行したジョン・レノンの切手が貼ってある。その情報は得ていたが、これが現物か。うれしいっ。その切手の下に日本郵便の印刷切手が確認用に追加で貼られていたが、250円。欧州もそうだが、米国も郵便料は安価だなあ。
▶︎過去の、ミカ・ストルツマン
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
https://43142.diarynote.jp/201706281510173316/
▶︎過去の、リチャード・ストルツマン
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
https://43142.diarynote.jp/201706281510173316/
▶︎過去の、ジョン・ゾーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
▶過去の、スティーヴ・ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
http://43142.diarynote.jp/201706130913351348/
https://43142.diarynote.jp/201908071557182844/

「Purple Reign」

2019年9月19日 音楽
 ラスヴェガスに来ている。ギャンブルとともに、もちろんエンターテインメントの街であり、非音楽系ショウだけでなく、音楽ライヴも多々やっていて、音楽目当てだけで行っても損はないのではないか。レコード店の類はないとしても。追記:メイン・ストリートから離れたところにはいろいろあるという話を後から識者に聞きました。

 トロピカーナ(カジノ&ホテル)の左右にかなり長いシアターで、<Purple Reign>というレギュラーの出し物を見る。売れ行きいまいちで、ディカウントあり。当日に行くことに決めた。その字面が想起させるように、プリンス(2002年11月19日)のトリビュート・バンドのショウだ。プリンスのそっくりさんのパフォーマンスのショウというよりは、それなりに達者なコピー・バンドのコンサートという感じか。あ、似てなくはないですよ。

 プリンス役の人(立って歌う場合もあるが、ギターを弾かせるとうまい)に加え、グラマラスさを意識しているはずのギター、ベース、キーボード、ドラムが付く。演目は、「キッス」などもやったが、『1999』から『パープル・レイン』にかけての曲が多し。つまりレコーディングは1人でやっていたとしても、ライヴにおいてはザ・レヴォルーションがサポートしていた時代を彷彿させるノリでやっている。だとすると、ギターと鍵盤はウェンディ&リサをならって女性にしてほしいとぼくは思った。ベースはブラウン・マークっぽいかといえばそうではなく、バンドが与える聞き手の襞を広げるような効果については無頓着と言える。

 そのぶん、アポロミア6を意識する3人の女性ダンサーが出てきたり、モーリス・デイ(2019年6月23日)役の人が出てきたりして、華を添える部分もあり。感動したとかいう部分はないが、ワクワクはできました。前のほうのスツール席のほうの客はやんやでワッショイしていたなー。そういえば、各カジノで流れる音楽は様々ながらEDM系が多いとは感じ、あとプリンスとザ・ポリスはなにげに耳についたような。

▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶︎過去の、モーリス・デイ
https://43142.diarynote.jp/201906240933026811/

<今日の所感>
 NY、LA、サンフランシスコ、シンシナティ、ワシントンD.C.、ニューオーリンズ、メンフィス、マイアミ、グレイト・バーリントン、オースティン、サンアントニオ、ヒューストンなどなどの米国都市には行ったことがあったが、ラスヴェガスには初めて行く。実は21世紀に入る切れ目に、全財産持って運試ししようかとマジ思いラスヴェガスの研究をしたことがあった。あれ、なんでそうするのやめたのかな。そんなこともあってか、過去のラスヴェガスで撮影された映画を見た印象もあるためか、どこか既知感をえたのは確か。ではあるのだが、めちゃくちゃ楽しい。特に、ネオン技術を駆使した夜景はああコレかと、最初の晩に息を飲んだ。想像通りに一つ一つの規模がデカいが、施設が基本一本の道(ザ・ストリップ)に沿って有名どころは点在し、公共バス(その急行で、サクっと南北にあるアウトレット・モールにも行ける)がちゃんと走っているので車を運転せずにことたりる。サンタモニカあたりの海岸沿いの快楽/快適性を除けば、LAより断然こっちだな。完全に観光の街ゆえ、ここにいる人は遊びに来た人とそれに奉仕する人の二つだけであるのが、ストレスから解放する。ホテルのプールではここはどこ?的な気分も味わえるし。あと、ダウンタウンが想像を超えていい感じだった。

 なんと、スモーキー・ロビンソンのご尊顔を拝むことができようとは! 現在、79歳。モータウンの契約第一号アーティストであり、長年モータウンの副社長を務め、なんといってもスウィート&メロウな歌声の持ち主にして、極上のソングライターである、まさにミスター・モータウンたる人物を見ることが、今回のヴェガス行きの第一の目的だった。彼が最後にアルバムを出したのは、ジョン・レジェンド(2005年5月8日)やレデシー(2002年6月12日、2007年11月12日、2009年1月25日、2010年1月8日 、エルトン・ジョン他いろんな人と絡んだ特別製と言える2014年作『スモーキー&フレンズ』(ヴァーヴ)だ。

 会場は、高級ホテルとして知られるウィン・ラスヴェガス&アンコール。カジノを通って、そのアンコール・シアターまで行く間に、なるほどこれは格式高いホテルなのだなと実感。チケッティングするところに至る通路とか、入口を入ってからの風情もなにかときらびやかにして落ち着きあり。トイレももちろんきれい。

 会場内はすり鉢状になっていて、感じとしては1500人ぐらい入る会場と思った。チケットは過剰に高くなく130ドルぐらいだったか(税が高く、込みで180ドル)、知人に取ってもらったんだが、横ではない前目の席(全体の1/3より前)だったのでびっくり。これじゃ、表情もろ見えぢゃん。座っていて、どんどん高揚してきちゃう。もちろん、満場だ。

 20時開演を約10分押しで始まったショウは、まずバック・バンドの前奏から始まる。キーボード2人(うち、1人がミュージカル・ディレクターをする)、ギター、ベース、ドラム、コーラス3人というサポート編成なり。それほどはうまくない。最初はアレっと思っちゃった。

 そして、ステージ中央のドアから御大は登場する。万感の拍手の嵐。黒基調に深紅色のキラキラなジャケットを着用し、華あり。そんなにお腹は出ておらず、顔も一頃より細くなった? 肌はテカテカで皺なし。前より快活で、若返ったという所感は接した観客は皆んな得たのではないか。

 そして、ショウはスモーキーの1982年全米2位の自作曲「ビーイング・ウィズ・ユー」から始まる。ワウ、ちゃんと歌える。そりゃ、かつての様からみれば、艶や精気が減じているところはあるかもしれない。だが、ぼくの耳にはとっても現役感ある歌声に聞こえた。

 ボブ・ディランやジョン・レノンも最敬礼したスモーキーの歌声や佇まいに触れられればOKと思ってラスヴェガスに飛んだわけだが、思った以上元気に歌い、彼は動く。いや、あっぱれ。

 そう、彼の身のこなしには大きく頷いた。これが、けっこう左右に動き、ステップを踏んだりするのだ。終盤にはちょいセクシーな仕草も見せ、女性客が湧く。もう、過去のソウルのマナーの積み重ね、観客の反応のツボを知り尽くしていると言わんばかりに、彼はパフォーマンスをまっとうする。ああ、これがスモーキーか。これが米国大衆ソウルを支えた最たる御仁か。ぼくは、ソウル・オブ・エイジズをいやがおうにも感じてしまい、胸が熱くなった。でも、ちゃんと質量感を持ちつつ、彼の振る舞いは軽々としていて、それが和みを誘う。それが、どんなに素敵なことか分かるかい?

 曲は、もちろん有名曲が中心。「ウー・ベイビー・ベイビー」や「ザ・ティアーズ・オブ・ア・クラウン」など、5分の3はザ・ミラクルズ時代の曲。また、珠玉の自作曲に加え(彼が書いたテンプス〜2009年11月8日、2013年8月18日、2017年3月20日〜曲も披露)、スタンダードの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」も少しスウィギンに歌う。死ぬほど他の人のヴァージョンも聞いてきている曲だが、だからこそまろやか&ダンディなスモーキーの歌い口に触れると、彼のありがたみを実感できちゃう。スモーキーって裏声歌唱の人という印象を持っていたが、それなりに地声で歌ってもいて、やはりその際も甲高い声ですね。

クローザーはディアンジェロ(2015年8月18日)もデビュー作で取り上げていた1979年曲「クルージン」をアップめ、ゴスペル色を強めて披露。この際、前に座っていた女性2人をステージに上げ、彼女たちを使って左右に分けて観客にリフレインを歌わせたりもしたのだが、その際の観客の歌声のデカさはオレの経験のなかでも間違いなくトップ級のものだった。やっほー、アメリカで御大を見るありがたさを感じた。

 約15曲、1時間45分ほど。アタマのほうにご尊顔と書いたが、勇姿と書いた方が適切なショウ。でもって、皆んなといい音楽、いい場を共有したいというスモーキーの思いのようなものが横溢。ボクはもう稼がなくてもいいんだ、山ほどの名誉も得ているし。てな、彼の所感も伝わってくるような気がして、すこぶる気持ちよし。書き遅れたが、観客は中年以上が多く、綺麗な格好をしている人も少なくなかった。ぼくの隣に座っていたのは普段カントリーを聞いていそうな老夫婦だった。

 なお、これはラスヴェガス特化プログラムではなく、スモーキーはただいま米国ツアー中。断続的、ゆるいペースながら、来年2月まで日程が出されている。あ、物販はありませんでした。

▶過去の、ジョン・レジェンド
http://43142.diarynote.jp/200505141714260000/
▶︎過去の、レデシー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
https://43142.diarynote.jp/200711131002450000/
https://43142.diarynote.jp/200901270025408952/
https://43142.diarynote.jp/201001091312302526/
▶︎過去の、ザ・テンプテーションズ・レヴュー
http://43142.diarynote.jp/200911101136006646/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201703211232135720/
▶︎過去の、ディアンジェロ
https://43142.diarynote.jp/201508200741137207/

<今日の、現場>
 ヴェガス滞在期間中に、見た公演は3つ。それ以上宿泊したが、売り切れになっていたり(普通の都市であればこういう場合でも会場前に行けばダフ屋がいるものだが、どうなんだろう? まあ、そこまでして見たい出演者はなし)、公演が休みの日であったり。シルク・ド・ソレイユの「マイケル・ジャクソン・ワン」や「ザ・ビートルズ・ラヴ」(それを提供するミラージュ・ホテルの上面にでっかくディスプレイされたザ・ビートルズの4人の顔にはほんの少し萌える)はせっかくここに来たのだから、見てもいいなと思ったんだが、両方とも見事に休演日だった。ま、そのぶん、各ホテルの工夫を凝らした建物設定やアトラクションをいろいろと探索し楽しんだり、その度にそれぞれのカジノでスロットをしたり。今はドル札をそのままマシーンに入れて始めることができるので、ほんと気軽にやってしまう。そうした腰の軽いつまみ食い移動に、フジ・ロックに行っていたときの我が様を思い出す。ハハ。
 過去にこの欄に書いたことがあるように、ぼくは博才がないためもあり、まったくギャンブルに興味が持てない。だが、行った先にカジノがあった場合は別で、郷に入れば郷に従えとなる。イエ〜。少しでもお金を落としたカジノは今回、10を超えている。それなりにクレジットが増えたときもあったが、どこでもとうぜんすった。それ、納得済みのこと。と言いつつ、帰国後は少し節制せねば。しかし、カジノほかすべてが巨大。とくにMGMグランドはまさにグランドで方向感覚を失い、見事に迷子になった。ファッション・ショーというモールも同じく。
 そう言えば、日本ではラグビーのワールドカップが始まったのだなー。NBCスポーツだかで、試合を放映していて驚いた。へえ、W 杯には米国も出ているのか。日本の会場、きれいに映っているなー。なんか、日本/韓国のサッカーW杯の開会式を出張先のローマで見たことを思い出す(2002年6月1日)。ゲームとして率直に判断するなら、サッカーよりもラグビーのほうが面白いと、サッカーが大好きなぼくは思います。
▶︎過去の、日本でのワールド・カップ開会式の中継イン・ローマ(6月1日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
 明日は何を見ましょうかという感じで選んだのは、クリステォーナ・アギレラのショウ。“ザ・エクスペリエンス”と名付けられたパッケージで、これはヴェガス特化の出し物。この5月から来年3月にかけて持たれ、場所はプラネット・ハリウッド・リゾート&カジノのザッポス・シアター。劇場に入ったら、めちゃデカい会場でびっくり。7000人収容とかで、ホテル併設のスポーツをやらない純シアターとしてはザ・ストリップで一番デカいらしい。入場時に厳重な、空港に入るときのようなセキュリティ・チェックを受けた。それは、今回行った会場のなかではここだけ。21時開演のはずが1時間押しで始まる。40分すぎたころから開演を促す拍手が時に起こったりもするが、大きな波にはならない。

 ショウは当然ことながら、米国エンターテインメントの粋を集約したと言えるものだった。大きなアーチが作られたステージ上に、10人のダンサーとアギレラが現れ、ショウは始まる。ステージ前にX型のとその外に半円の出道が作られ、それも場合によっては作われる。大まかにみれば、スペイシーな効果が施されているか。映像とライティングは最大限に用いるが、冒頭はもしかすると音楽トラックはプリセットのものを使うのかと思う。

 ショウは2〜3曲ごとに幕が閉まり間奏が入り、ステージ・デザインやアギレラ達の衣装が変えられるという設定。そして、最初の幕間の後からは、鍵盤、ギター、ベース、ドラム、3人のコーラスがアーチの上に位置し、プリセット音も用いつつ生音を加える。ギタリストとベーシストはステージ前面に降りてきて演奏する場合もあった。

 わあ、アギレラって歌がうまい。過剰な喉への負担のかけ方をせずにがっちり確かな歌唱を彼女は聞かせる。それ、感心。もし、口パクだとしても、その巧妙さに脱帽するしかない。で、ラベルの「レディ・マーマレード」の映画絡みの2001年カヴァーを含む、オールタイムの有名曲が披露されるわけだが、その映像を含む構成がお上手。その総体は、<痛みを知る、自立する女性像>をきっちり結晶させていた。見て何気に達成感を覚えさせる出し物、ナリ。

 会場を出ると、カジノのあちこちに露出度の高い女性がお立ち台に立ち、踊っている。それ、プラネット・ハリウッドの夜の売りのよう。

▶︎過去の、ノーナ・ヘンドリックス/ラベル
https://43142.diarynote.jp/201009151537076176/

<今日の、もうけ>
 今回、渡米中に再認識したのは、自分の冷房に対する弱さ。もう、行きの飛行機の中から冷房はギンギン、ぼくはT-シャツとトレイナーの重ね着にジャケットを羽織り、首にはストゥールを巻き、それでOK。おいおい。なのに、T-シャツだけでいる人もいるものなあ。ヴェガスは確かに気温は高い。が、湿度がとっても低い。ぼくは鼻の粘膜が弱く乾燥する冬場にはただれてしまうのだが、ラスヴェガス滞在の前半でそうなったのには驚いた。とうぜん、ホテルやカジノやモールも冷房は絶賛大効き。重ね着するシャツと上着は欠かせなかった。就寝時はエアコンを切って、ちょうどよかった。
 今回エアーはUAを使い、行きはサンフランシスコ経由で、帰りはデンヴァー経由。行き帰りで異なる経路にしたのは、同じじゃつまらない。ところで、行きも帰りも、米国国内便の離陸が定刻より3〜4時間は遅れたのにはビックリ。運がとっても悪いとしか言いようがない。行きはUA社員が罪滅ぼしのため、水とお菓子を配った。帰り便は余裕たっぷりであったはずの乗り換え時間がギリとなり(機内に入ってからもグズグズして飛ばなかったなあ。性格がちゃんとしてそうな男性乗務員に確認を取ると大丈夫、まかせろと言うので、まあ平常心でいたが)デンヴァーに降りると、成田便ゲートに向かう客を乗せるカートが待機していた。おお、空港内カートに乗るというのは初体験じゃ。なんか、それについてはうれしかった。そこそこ離れてはいたが、国際便のゲートも同じターミナルだった。しかし、ラスヴェガスには日本との直行便がないのに、デンヴァー直行便があるというのはちょい謎(→デンヴァーはUAのハブ空港らしい)。これで、ヴェガス直行便があれば、ぼくはまた行く(かも)。帰国便、フルでした。
 行き帰りの国際便では、映画「ボヘミアン・ラプソディ」と「ロケットマン」をしっかり見る。へえ、後者は少しミュージカル仕立てっぽい箇所もあるのか。両主人公ともそんなに似ていないと、ぼくには思えた。特に、フレディ・マーキュリーのほうはそう。クイーンは他のメンバーのほうがしっくり来る。なんて、リアルタイム経験組ながらファンじゃないぼくが言うのもなんだが。ぼくはマーキュリーの爬虫類的なルックスに昔からひいていました。エルトン・ジョンの場合は1974年シングルの「ベニー&ザ・ジェッツ」(実は米国黒人ラジオ局に認められたもっとも初期の白人曲となる)までは好きでよく聞き、その後はほぼ聞いていない。それは彼の作曲能力の減衰に伴うわけだが、加齢とともに作曲能力が下がるのはポール・マッカートニー(2018年10月31日)やトッド・ラングレン(2001年11月9日、2002年9月19日、2002年9月28日、2008年4月7日、2010年10月10日)らメロディ・メイカーと言われる人にすべからく当てはまる事実だ。
 話はそれたが、ともに音楽や楽曲にある襞を描かんとしているのは了解。となにげに冷静に書いているのは、アリサ・フランクリンの1971年1月13日と14日にLAのザ・ニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で持たれたゴスペル・コンサートの模様を伝える映画「Amezing Grace」を機内で見ることができたからだ。今年に入って大々的に本国では公開され、音楽DVDのチャートで1位にもなっているが、日本では未発表だ。
 1972年に同名の2枚組アルバムが出されたこのゴスペル公演は当初からスペシャルなものとして映画化することも決められ、役者としても知られるロシア系米国人のシドニー・ポラックが監督にあたった。だが、音楽と映像の同期がうまくいかずお蔵入り。ワーナー・ブラザースの倉庫に眠っていた20時間のテープの権利が2007年に他者に渡り、今の技術を介して同期させた87分の映画として、2011年に完成。しかし、当のフランクリンがOKを出さず(緊張している様も描かれ、当人にとってはいまいちいい印象をもっていないのかもしれない)、彼女の死後にすぐに遺族が公開を許諾したという経緯を持つ。
 映像美などはあまり考えていないような、そっけないマテリアルゆえ、その場の出来事の模様は素直に伝えられるという部分はあるか。ああ、そうだったのかと合点がいく部分もある。当人に加え、ピアノと歌のジェイムズ・クリーヴランド牧師、サザン・カリフォルニア・コミュニティ・クワイアー、オルガンのケネス・ルッパー(全盛期のビリー・プレストンのバンドにいた人だが、顔も彼に似ている)、ギターのコーネル・デュプリー(2002年6月25日、2010年8月31日)、ベースのチャック・レイニー(2011年6月21日、2018年11月22日)、ドラムのバーナード・パーディ(2006年7月26日、2012年6月19日)らがサポートをする。あまり映らないのは残念だが。父親のC.L.フランクリンもいるし、2日目に観覧したストーンズ(2019年4月19日)のミック・ジャガーとチャリー・ワッツも映る。いやあ、これを見れるとはうれしい。
 実は飛行機内の音楽プログラムはしょぼいが、映像プログラムは豊富で、他にも音楽ものはいくつかあった。ジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー「リトル・ガール・ブルー」(2016年6月20日)もリストにあったが、そちらはTV番組のプログラムに入っていた。それ、劇場公開映画ではなく、TV放映用の映像作品であったのか。
▶︎過去の、ポール・マッカートニー
https://43142.diarynote.jp/201811011655349966/
▶過去の、トッド・ラングレン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200804081929500000/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
▶過去の、コーネル・デュプリー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-6.htm
http://43142.diarynote.jp/201009010955348098/
▶︎過去の、チャック・レイニー
https://43142.diarynote.jp/201106270438075311/
https://43142.diarynote.jp/201811251043143983/
▶︎過去の、バーナード・パーディ
https://43142.diarynote.jp/200607281034380000/
https://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 3月13日(バック・バンド)。15日
https://43142.diarynote.jp/201904200941516964/ ストーンズ展
▶︎過去の、「リトル・ガール・ブルー」
https://43142.diarynote.jp/201606231719464677/
 六本木・ビルボードライブ東京で、メッセージに富んだ詩作と秀でた同時代的ブラック・ミュージック語彙を見事に噛み合わせたギル・スコット・ヘロン(全盛期に彼はアリスタのハイ・プライオリティの契約者であったが、それは社長のクライヴ・デイヴィスが当時人気のボブ・ディランとスライ・ストーンの間をつなぐ存在として、スコット・ヘロンのことを高く評価したからだった)の音楽面を大々的に支えたブライアン・ジョンソンのショウを見る。スコット・ヘロンとジャクソンはペンシルヴァニア州のリンカーン大学で知り合い、スタラタ・イーストやアリスタ時代のアルバムは2人の連名でアルバムがリリースされた。なお、ジャクソンは少しリーダー作を出すとともに、クール&ザ・ギャング(2014年12月26日、2016年2月23日、2017年10月10日)やウィル・ダウニングからジャズ・ベーシストのチャーネット・モフェットの2019年作『Bright New Day』(Motema)まで、何人ものレコーディング・セッションに参加している。

 フェンダー・ローズを弾きながら歌うジャクソンをサポートするのは在LAのミュージシャンたちか。キーボードとコーラスのレックス・キャメロン(ロンドン出身と紹介された)、ギターでNY出身のクラーレンス・ブライス(テレキャスターを持ち、カーティス・メイフィールド的な指さばきを披露)、フランス出身ベーシストのアントアーヌ・カッツ、ドラムのマーク・ホイットフィールド Jr. (有名ギタリストである父親と来日している彼、ジャクソンともやっているのか)とパーカッションのアラコイ・"ミック ホールデン"・ピートという陣容による。

 スコット・ヘロンとのことを語り、彼と作った曲を生理的に悠然と披露していく。ジャクソンは決定的な味にはかなり欠けるが、何気に声量はあり、音程はスコット・ヘロンよりはくっきりしている。なんか、テリー・キャリア(2002年5月21日、2004年4月19日、2005年2月17日、2007年3月8日、2009年9月15日)の持ち味を鍵盤主体表現で開いているという所感も得たか。

 90分のパフォーマンス。ジャクソンは1曲で、グラウンド・ピアノに移りソロをとったが、かなり達者。ちゃんとジャズもできる人ですね。また、1曲はスロウ持ち曲をピアノ弾き語りもする。2曲ではフルートも手にしたりもし、やはり音楽的な才能に恵まれていることを伝える。1952年生まれだから、まだまだこれからがありそうとも思えた。

▶過去の、クール&ザ・ギャング/J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/200611281428510000/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
http://43142.diarynote.jp/201508051544452721/  J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201602290953239524/
https://43142.diarynote.jp/201710121703595237/
▶︎過去の、テリー・キャリア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232039250000/
http://43142.diarynote.jp/200703101608130000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/200404190049350000/

 その後、丸の内・コットンクラブで、ミンディ・エイベア (2009年9月20日)& ザ・ボーンシェイカーズのライヴを見る。見ることが叶わなかった前回来日公演時に、ぼくはこんなことを書いていますね。→https://43142.diarynote.jp/201510251330372218/ 下のほう

 今回、スウィートピー・アトキンソンの同行はなかったが、しっかりギタリストのランディ・ジェイコブズ(2017年5月5日)はザ・ボーンシェイカーズの要の奏者として来ている。他にメンバーはキーボードのランディ・リー、ベースのベン・ホワイト、ドラムのサード・リチャードソンという面々でアフリカ系奏者が多い。ベン・ホワイト以外はミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズのここ数作品に参加しているミュージシャンたちだ。

 おお彼女、今はこうなっているんだよな。スムース・ジャズ系のアルト・サックス奏者として世に出た彼女だったが、歌うことに力を入れ、ソウル/ファンク調やアーシー系表現に移行し(2017年作には、故グレッグ・オールマンが歌っている曲もあった)、2019年新作『No GoodDead』(Pretty Good For a Girl )ではまったく明快なロック/ロックンロール傾向のなかで、彼女は歌い、アルト・サックスを吹いている。ソウル/ダンス傾向で行くキャンディ・ダルファー(2009年5月11日、2010年2月16日、2012年2月13日、2018年11月19日)に対し、ロック/アーシー傾向で行くミンディ・エイベアという説明は間違いなくできよう。

 そして、この晩もそんな路線に則った生き方で、ストレートにロッキッシュに迫る。もう竹を割ったようなわかりやすい華や娯楽性の持ち方に、ラスヴェガスから帰ってきたばかりのぼくはわあアメリカっぽい、どこかヴェガスっぽいと思ってしまった。実際、金髪(に染めた?)綺麗目で太ってもいないミンディはラスヴェガスで颯爽と働く女性のタイプと重なる?

 その彼女の歌にしろアルトにしろ、実にまっとう。実力者だ。それはバンドのメンバーも同じで、きっちりバンド表現(皆んな、コーラスも取る)で攻め、ちゃんとバンド名を名乗っていることにも納得。途中でドラマーがいい声で歌い始めた曲はなんとジェイムズ・ブラウン(2000年8月5日)の「コールド・スウェット」。おお、こんなロックぽいJB曲は初めて聞いた。また、途中でジェイコブズはカスタム・メイドのバンジョーを手にし、ドラマーはカホーンを叩き、キーボード奏者はカズーを担当する曲があったのだが、それはジミ・ヘンドリックスの「ヴードゥ・チャイル」。おお、いい味。それに触れながら、アメリカーナと呼ばれる表現は、米国の音楽史の襞として登録されている曲や情緒の引き出しをあけ、それを今という時間に解き放つ行為であるのだと思わせられた。ミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズの音、フランクでチャラいようで実は深いところあります。馬鹿にしちゃいけないよ。あ、皆んなで歌ったアンコールは、ロバート・パーマーの大ヒット曲「アデイクテット・トゥ・ラヴ」でした。イエイ。

 そして、ぼくのお目当てのランディ・ジェイコブズだが、さすがの演奏。デトロイト育ちの彼はスウィートピー・アトキンソンと同じくドン・ワズ(2013年2月15日、2019年6月12日、2019年6月13日、2019年6月14日)とは昵懇の間柄となるが、ピックを使わずいろんな演奏を繰り出すそのマスターぶり(数曲ではスライド・バーも用いる。エフェクターにはあまり頼らない)は、真のギター好きは彼だけ目当に行っても損はないと思える。MCによれば、ワズ(・ノット・ワズ)だけでなく、彼はギタリストでもあるボニー・レイット(2007年4月6日)のバンドにいたこともあるのか。でも、さもありなんという感じですね。

▶︎過去の、ミンディ・エイベア
https://43142.diarynote.jp/200909271554269289/
▶︎過去の、ランディ・ジェイコブズ
https://43142.diarynote.jp/201705081217396490/
▶︎過去の、キャンディ・ダルファー
https://43142.diarynote.jp/200905121053358452/
https://43142.diarynote.jp/201002171552164447/
https://43142.diarynote.jp/201202141303117620/
https://43142.diarynote.jp/201811201615047405/
▶過去の、JB
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm サマーソニック初日
▶︎過去の、JBの映画2種
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/
http://43142.diarynote.jp/201606281735457440/
▶過去の、ダニー・レイ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ 小曽根真ノー・ネーム・ホーセズvs.クリスチャン・マクブライド・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/201412310727087161/
▶︎過去の、ザ・オリジナル・ジェイムズ・ブラウン・バンド/シンシア・ムーア。フレッド・トーマス 、トニー・クック 、ジョージ"スパイク"ニーリー
http://43142.diarynote.jp/201412310727087161/
https://43142.diarynote.jp/201806040807198626/
▶過去の、ボニー・レイット
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶︎過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
https://43142.diarynote.jp/201906151230594715/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/

<今日の、貴さ>
 実は、両公演とも入りはなぜかいまいちであった。前者は2日間公演の最終日で、後者は初日で日曜日まであと3日間ショウが持たれる。だが、それぞれのリーダーとバンド員たちはそんなことを気にするそぶりも出さず、誠心誠意パフォーマンスにあたり、東京でギグをできる感謝をあらわす。プロなら当然のことなのだが、一点の曇りもなくそれを清々しく出す面々に、ぼくは頭を垂れる。

 トニーニョ・オルタ(2010年10月7日、2016年10月27日)の姪となる女性シンガー・ソングライターのヂアナ・オルタ・ポポフを青山・プラッサオンゼで見る。ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンチ生まれでリオ育ち、そして現在はパリに居住。そんな“移動”を抱えるキーボードを弾きながら歌う彼女を、夫であるフランス人のマチアス・アラマンが電気ベース(一部はアコースティック・ギターも弾く)でサポートする。

 愛らしい感じを持ちつつも、難しいライン取りの歌をごんごん歌うなと、すぐに思う。一緒に歌うのは無理。でも、奥行きにも繋がるそのもやもやはブラジル音楽の素敵の尻尾を顕すものに他ならない。とっても曖昧な言い方になるが、そうしたとらえどころのないものからいろんな木漏れ日のようなものが見えて、ぼくは誘われた。また、フルートを吹いたインストもあり、それにはショーロを思い出す。ファースト・セットを見て、移動。後ろ髪引かれた。
 
▶過去の、トニーニョ・オルタ
http://43142.diarynote.jp/201010110934082197/
https://43142.diarynote.jp/201610310943306583/


 次は、六本木・ビルボードライブ東京で、元ジャパンのスティーヴ・ジャンセン(2004年4月24日)とスウェーデン人のミュージシャンたちが協調したユニットを見る。

 ヴォーカルのトーマス・フェイナー、ピアノのウルフ・ヤンソン、ギターやシンセサイザーのチャールス・ストーム 、ドラムのスティーヴ・ジャンセンに、ダブル・ベースのスヴェン・リンドヴァル。さらに、チェロの徳澤青弦、ヴァイオリンの吉田篤貴と地行美穂、ヴィオラの須原杏のストリングスが加わる。その日本人たち、墨絵のようなという形容もできるサウンドによく弦音をつけていた。

 ベーシストが全面的に縦を用いていたのには驚いたが、その事実に現れてもいるように、実にオトナ志向の美意識を抱えた悠然としたロックが繰り広げられる。低いフェイナーの歌はなにげにデイヴィッド・シルヴィアン(2004年4月24日)的とも言えるだろう。ドアの先にある北の佇まいを抱えたその表現は、響きと密かな蠢きに満ちた情緒ロックとしてアドヴァンテージを持つものと思う。演奏時間は長めだった。

▶︎過去の、スティーヴ・ジャンセン
https://43142.diarynote.jp/200404271931000000/
▶︎過去の、デイヴィッド・シルヴィアン
https://43142.diarynote.jp/200404271931000000/

<今日の、追記>
 イグジット・ノースのセルフ・リリース作『Book of Romance and Dust』(2018年)は、オノ セイゲン(2000年3月12日、2009年1月17日、2011年8月4日、2012年6月7日、2013年1月30日、2014年4月20日、2014年7月28日、2014年9月23日、2014年10月8日、2014年10月11日、2015年4月17日、2015年9月13日、2015年9月24日、2015年10月9日、2016年3月14日、2016年5月22日、2016年7月26日、2017年5月7日、2018年6月7日、2018年11月12日)の音楽をサンプリング使用し、マスタリングを当のオノが担当している。今回の来日時、メンバーは彼が持つ神宮前のサイデラ・マスタリングのスタジオ詣もしているようだ。そんなこともあり、会場で出会ったセイゲンに誘われ、楽屋に行く。その静謐な音楽性と離れ、みんな愛想がいい。ジャンセン、けっこう顔デカいんだな。兄のデイヴィッド・シルヴィアンにはデレク・ベイリーが参加した『プレミッシュ』(2003年)を出した際にインタヴューしたことがあったが、そうは思わなかった。とっても大人のわびさび溢れる『プレミッシュ』を前に、シルヴィアンにジャパン時代のことを聞いたら、「若気のいたり。でも、若い時分にはそういう放蕩も必要」といったことを静かに言っておった。早々に引き上げると、楽屋の外には高橋幸宏(2009年10月31日、2011年8月7日、2012年8月12日、2013年8月11日、2017年7月14日)、土屋昌巳、SUGIZO(2015年6月29日)らミュージシャンがいらっしゃった。
「僕はいつも遠くからセイゲンのキャリアをフォローしてきたので、彼は録音とマスタリング、特にアコースティック録音に素晴らしい耳を持っていることを知っていた。だから、僕たちのレコードのマスタリングをやってもらうのは素晴らしい選択肢のように思えたんだ。
 マスタリングはとても重要な仕事であるのに、見落とされがち。個人的には、マスタリングについての複雑な技術的知識は持ち合わせていないが、よくマスターされた録音は肝要と思う。イグジット・ノースの録音はポスト・マスタリングされることで、ダイナミクスと暖かさを保持しつつ、さらに多くの存在感、重厚さ、および“色”を獲得したんだ。もちろん、英国にも多くの優れたマスタリング・エンジニアがいるけど、セイゲンが関与することはノース・イグジットに適していた」(スティーヴ・ジャンセン)
▶過去の、オノセイゲン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200901181343426080/
http://43142.diarynote.jp/201108101630438805/
http://43142.diarynote.jp/201206110945571082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130130
http://43142.diarynote.jp/201404251643448230/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
http://43142.diarynote.jp/201409261635077130/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160522
http://43142.diarynote.jp/201608020801362894/
http://43142.diarynote.jp/201705081232023349/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180607
https://43142.diarynote.jp/201811141355524842/
▶︎過去の、高橋幸宏
http://43142.diarynote.jp/200911010931589797/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110807
http://43142.diarynote.jp/?day=20120812
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
https://43142.diarynote.jp/201707151654245284/
▶︎過去の、SUGIZO
https://43142.diarynote.jp/201507021227231770/

 ポーランド人ヴァイオリン奏者とピアニストのデュオを、神保町・楽屋で見る。バウディは現在ドイツのアクトからアルバムを出していて、その最新作『sacrum profanum』はクシュストフ・ディスらピアノ・トリオとのカルテットで録音されている。

 ウェットな情緒を持つニュー・エイジ・ミュージック調のものから、キース・ジャレット(2001年4月30日、2007年5月8日)的なピアノ演奏を介するフリー・フォーム的な演奏まで、ヴァイオリンとピアノの二つの楽器による、イマジネイティヴな旅が80分にわたって披露された。両者ともにまず技量が立つというのはすぐに了解できることで、ポーランドのジャズ水準の高さを思い知らされよう。そして、そこにスラブ民族らしいと言いたくなるペーソスや誘いが付加されるのだから、耳を引く。1曲、アダム・バウディヒはルネッサンス・ヴァイオリンと紹介するもう少し無骨な形をした古いヴァイオリンも弾いた。

▶過去の、キース・ジャレット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://43142.diarynote.jp/200705181807060000/

<今日の、主役>
 先に触れた『sacrum profanum』は自作とクラシック音楽家の曲が混在し、それを自身のアレンジのもと違和感なく聞かせる。いろんな曲調や仕掛けのもととても雄弁でエモーショナル。ジャズの今様な息吹きも横溢し、これは勧めるにたる。何気に、プログ・ロック・ファンに受けそうなところも多々あるかな。今回が2度目の来日となる彼、次は詩情と才気が呼応するカルテットでやってきてほしい。
 国営テレビ局の合唱団が前身という、1952年結成のブルガリアのポリフォニー合唱団の公演は、錦糸町・すみだトリフォニーホールにて。

 その不可思議にして、魔法を感じさせる同国の女性ヴォーカル・アンサンブルが広く知らされるようになってだいぶたつなあと、ステージ上にずらりならんだ女性陣のパフォーマンスに触れながらふと思う。彼女たちは1995年に来日しているそうだが、それぞれ微妙に異なるカラフルな衣装を身につけた面々はパっと見、何気に若く見える人が多い。なるほど、代替わりしながら、活動を続けているんだろうな。

 18人のシンガーに、女性指揮者が1人。四声や六声を基本に、不可思議にして魅惑的な重なりを見せる歌を超然と送り出す。面々はときどき立ち位置フォーメーションを変えたりもし、一部トラッドな弦楽器をメンバーが弾いたり、鳴りものが手にされる場合もある。が、とうぜん、基本はアカペラ、肉声のみ。フレイズの語尾を嬌声的にクイっとあげる場合もある。トラッドが披露されるなか、日本のソーラン節もブルガリアン・ヴォイス調にて、披露。“どっこいしょ”という掛け声が可愛くもユーモラス。

 2部構成。2部の頭にはなんと雅楽の笙の女性3人〜“笙アンサンブル 星筐”と名乗っているよう〜が平安時代を想起させるような装束のもとでてきて、2曲だったか共演する。へえ〜。興味深くも見事に融合、発案者に拍手。ブルガリアン・ヴォイスの面々も興味深くてしょうがなかったろうなあ。リハ〜楽屋での、日本勢とのやり取りが知りたい。2部では、同様の「ふるさと」も披露された。

 アンコールもたっぷり。その際、笙の女性たちはアヌーナ(2007年12月15日、2009年12月12日、2011年12月7日、2011年12月10日、2014年12月4日、2014年12月6日、2017年2月16日)のように、会場後方から演奏しながら移動し、ステージに上がる。肉声、生の人間の重なりの妙は色々とあるし、世界にはいろんな音楽表現が培われている。当たり前ちゃあ当たり前なのだが、そんなことを目の当たりにできて満足感を味合わないはずがない。

▶過去の、アヌーナ
http://43142.diarynote.jp/200712161423560000/
http://43142.diarynote.jp/201001051620426983/
http://43142.diarynote.jp/201112171633334584/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111210
http://43142.diarynote.jp/201412151250144917/
http://43142.diarynote.jp/201412221527313725/
https://43142.diarynote.jp/201702211429132450/

<今日の、過ち>
 某売れっ子作曲家からいろんな所のお土産をいただき(本当に頻繁に行っているんだなー)恐縮。ラスヴェガスに行ったばかりなのに、ぼくは手ぶらだよー。ほろ酔い気分で帰宅後、某アナログ・サイトを見てしまい、思わず発注。音は悪くなるだろうが、コドモなのでカラー・レコードにはひかれる。ついでに、価格が高くないこともあり、ビューク((2001年12月5日、2008年2月22日)のカセット・テープ再発も興味本位で一つ購入。ぜったい、カセット向きの音じゃないよなー。いかん、気持ちが緩くなる。それより、そろそろカートリッジを変えたいなあ。
▶過去の、ビョーク
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200802230934310000/

 京橋・テアトル試写室で、ジャズ史にきっちりと名を刻むトランペッター/シンガーであるチェット・ベイカー(1929〜88年)を題材に置くオランダ映画を見る。

 ヤク中〜コワれたダメ男を貫き通したベイカー(その裏返しとは言わないが、受け手の想像性を喚起する珠玉のジャズ表現を会得した。まあ、昔のジャズなんてロックやクラブ・ミュージック以上にドラッグゆえの名演みたいのはべらぼうに多い)は、1988年5月13日夜にアムステルダムのホテルで転落死した。そして、1983年オランダ生まれのロン・ヴァン・アイクの初長編映画となるこの映画は、その転落の原因が不明となっている死に焦点を合わせ、事実とフィクションを交錯させつつ、不世出のジャズマンの晩年の姿〜ベイカーのモヤモヤしたキャクターや人生を浮き彫りにせんとしている。ストーリー性に満ちる音楽性と人生を持つベイカーについては、ドキュメンタリー映画「レッツ・ゲスト・ロスト」(ブルース・ウェーバー監督、1988年)とイーサン・ホウクがベイカー役を務めた伝記映画「Born to Be Blue」(ロバート・バドロー監督、2015年)があるので、変化球と言いたくなるベイカー映画を作ろうとしたのはよく理解できる。ヴァン・アイクはベイカーが晩年に住んだアムステルダムの関係者に取材し、3年がかりで脚本を作ったという。

 ベイカーよりゴツそうとは思わせるがさほど違和感なく役を演じているのは、アイルランドのロッカー/役者のスティーヴ・ウォール(https://www.facebook.com/stevewall.musician.actor/。ぼくは知りませんでした)。彼はトランペットの指使いも覚えたそうで、劇中で歌われる歌も彼が歌っているのだろうか。ベイカーの演奏/録音シーンで流れる音楽はオランダ人ジャズ・マンが作っているようで(エンド・ロールの曲クレジットがぼけていて解読不能だった)、トランペット音は欧州ビッグ・バンド畑で知られるルード・ブレールス(1962年生まれ)が提供している。

 ベイカーと重なる闇を抱えるオランダ人の刑事が死の真相を追っていく流れのなかで、ベイカーの晩年の姿をいろいろと交錯させる作法は興味深い。言語は刑事が出てくるシーンはオランダ語が中心で、ベイカーが出てくるシーンは英語が使われる。ヴァン・アイクが覚えるところのジャズの美学は随所に投影されてもいるこの映画は、11月上旬からロードショー公開される。

<今日の、なんとなく>
 街に、外国人男性グループが目につくような。それ、ラグビーのワールド・カップのため訪日している人たちなのだろうか? あー、やっぱ1試合ぐらいみたいーーー。