nouon

2018年6月7日 音楽
 メンバーの4分の1であり、存在感を持つ楽器であるコントラバス・クラリネットを吹いていたヒュー・ロイドが抜けたnouon(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日、2016年3月14日、2017年2月17日、2017年8月23日) だが、新たなメンバーとしてギター奏者の加藤一平(2013年9月22日、2015年6月15日、2018年3月15日他)が入った。すでに2度ほどnouonウィズ加藤一平としてライヴをやっているそうで、この日から正メンバーとなったという。話すととても物静かな人なんだが、もう全面的にバンド表現に干渉していて、プロだなあと思う。新宿・ピットイン、昼の部。前にここでやったときの方が埋まっていたような気もするが、十分と思える入り。日中ひまな人けっこういるんだなー。この日も、オノセイゲンがレコーディングしていた。

 とにもかくにも、音楽性が大幅に変わった。それは加藤のエフェクター類を駆使する演奏が導く面も当然あるのだが、変化していきたい、新たなnouon表現を求めたいという従来メンバーの意思がもたらすものだろう。それで、加藤に白羽の矢を立てたと考えたほうが自然だ。
 
 ほとんどが新曲だし、彼らの人気曲「アヴェレイジ」もまだ未整理な部分は感じたが、大きく改変。シンプルに言ってしまえば、音響系、ポスト・ロック側に位置する音に大きく動いていた。以前の<いろんな要素をタペストリー状に重ね合わせた、多大な含みを持つ変則編成によるしなやかオルタナ・ジャズ>もそりゃ我が道を行かんとする創造性や野心や審美眼に溢れたものであったが、新ラインアップによるこの4人組は大胆に焦点を絞り、モダン・ミュージック側に飛び込んだ! いやあ、短期間にこれだけ鮮やかに舵を取ったバンドをぼくはそうは知らない。低音担当楽器がいなくなったぶん。ケビン・マキュー(米国人である彼は自らの日本語表記について、”ヴ”でなく”ビ”を希望しているよう)は電気ピアノ音色のノード・エレクトロを扱うだけでけでなく、左手で新たに用意する鍵盤ベースを弾いたりもしていた。それも、何気に好変化の要素になっていたか。

 ヴィニシウス・カントゥアリア(2015年9月10日)曲のカヴァーなどもやっていたが、生理的にキレキレ。かつてはまず進歩的なジャズ系の聞き手に紹介すべきところはあったが、今の音なら、ロック〜モダン・ミュージックの分脈で語られるインストゥメンタル・バンドであると実演にふれながら確信した。もちろん、メンバーたちの核にはジャズ素養もあるわけで、複雑な構成/アンサンブルから浮き上がるソロやメロウネスもぐんぐん聞き手をノックする。間違いなく、nouonは今日本でもっとも秀でた音響系ポスト・ロック・バンドだ! 7月1日に渋谷・公園通りクラシックスでライヴをやったあと、4人は新作用にスタジオに入るという。

▶過去の、nouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
http://43142.diarynote.jp/201702211431013289/
http://43142.diarynote.jp/201708240028435013/
▶︎過去の、加藤一平
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
http://43142.diarynote.jp/?day=20180315
▶︎過去の、ヴィニシウス・カントゥアリア
http://43142.diarynote.jp/201509231110566930/

<今日の、早朝>
 5時前にうなされるように、起きる。なんかトラで、まじジャズをやるトリオに入ることになった夢をみた。わりとセッションぽいゆるいライヴのためで、事前打ち合わせでこんなんやるのはどうですかと提案した、少しひねりを入れたブルースと、ワルツの美メロ曲の旋律が、頭のなかで起きてもしばらく回っている。でも、ぼくが担当しようとしたのはコントラバスだったような気もするし、ピアノだった気もするし、記憶が曖昧だ。どっちにしろ、現実はどっちもちゃんと弾けねえ。うへっ。3年に一度ぐらい、ミュージシャンとしてステージに立つ(そして、喝采を浴びる)夢は見るが、それはロックで、ジャズを演奏しようとしたのは初めて。昨日見たオコンネルの実演の残像もあったのかな。とにかく、げんざい多忙につき、早起きは大歓迎であるのだが(実際、明々後日だそうと思っていた原稿をさくっと書いてしまった。無理な発注をしてきたM君、感謝しなさい)。3時間ちょいの睡眠時間につき、お酒片手のnouon観覧時は寝ちゃうかもなあーと思ったら、あまりに変化がおもしろすぎて、凛凛とがっつり見ちゃったよー。