東京ジャズ

2019年9月2日 音楽
 2日めの日曜日、NHKホール。(上の日付は9月2日になっているが、1日です)

*チャールス・ロイド "Kindred Spirits"
 名実ともに大テナー奏者のチャールズ・ロイド(2005年5月11日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日)の公演は、新グループであるキンドレッド・スピリッツを伴ってのもの。それ、ずっと起用しているベースのルーベン・ロジャース (2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日、2016年2月18日、2017年1月12日、2017年1月13日)とドラムのエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日)のリズム隊は留任。そして、直近のワーキング・バンドはピアノレスだったが、今回はピアノのジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日、2018年9月2日、2019年5月30日。彼はロイドの2015年ブルーノート移籍初作に入っていた)を擁し、さらにビル・フリゼール(2000年7月21日、2006年5月14日、2009年5月8日、2011年1月30日、2017年1月12日、2017年1月13日、2017年6月19日、2019年6月10日)と入れ替わる形でエレクトリック・ギターのジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日)、2017年11月13日、2018年12月11日)が入ったという顔ぶれなり。

 実はこの編成によるライヴ・レコーディングを、ブルーノート発の新作としてロイドは終えていて、もう重なりの妙はかなり開発されていると言えそう。同作収録曲は4曲で、一番長い曲は21分で、短い曲は9分代。ペダル・スティール奏者や一部シンガーを起用して“アメリカーナ”調路線に臨んだザ・マーヴェルズと比すなら、もっとジャズにフォーカスしていて旧路線にまた戻ったという印象を持たせるか。だから、フリゼールに次ぐアメリカーナ・ジャズのギター路線をとると書けなくもないラージももういろんな弾き方のもと、ここではソロの際ごんごん攻める。うわー、近年の彼の音しか聞いていないと、それにはちょっと驚くのではないか。また、クレイトンもぼくが触れた演奏の中では、一番才気走った指さばきを出していた。リーダーにより、人は変わる。そういえば、ザ・マーヴェルズではエレクトリック・ベースも手にしていたロジャースだが、ここではすべてダブル・ベースを弾く。と、書くと、すごい切れたジャズに思われるかもしれないが、(そういう面もあるものの)しっとり目のバラードがあったり、ロイド調演歌と言いたくなるようなメロディ使いの曲があったりして、一概にそうは言えないのは面白いところ。この木曜日にロイドにインタヴューした際には、いろんなことを聞けそうだ。

 それから、長身のロイドは遠目にも目を引き、格好良かった。

▶︎過去の、チャールス・ロイド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170118
http://43142.diarynote.jp/201706081034584863/
https://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
https://43142.diarynote.jp/201905310800294940/
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
https://43142.diarynote.jp/201711141337544172/
https://43142.diarynote.jp/201812121252088734/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201602191120219620/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
https://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、ビル・フリゼール
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200605160543260000/
http://43142.diarynote.jp/200905101005501321/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
https://43142.diarynote.jp/201706190940184750/
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/

*カマシ・ワシントン
 おお、リズム隊の3人は後ろの高い段に位置し、広いステージにおいて見栄えがするなあ。

 テナー・サックスのカマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)のショウは、お父さんであるフルートとソプラノ・サックスのリッキー・ワシントン(2016年12月6日)、トロンボーンのライアン・ポーター(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、キーボードのBIGYUKI(2016年11月20日、2019年1月19日、2019年7月24日)、ベースのマイルス・モズレー(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、ドラムのロナルド・ブルーナー・ジュニア(2009年9月15日、2014年9月10日、2015年9月30日、2015年10月31日、2016年4月5日、2016年5月20日、2016年12月6日、2018年8月19日)とトニー・オースティン(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)、ヴォーカルのパトリス・クイン(2015年10月31日、2016年12月6日、2018年8月19日)の計8人がステージに立つ。新加入のBIGYUKI以外はずっと同じ顔ぶれで続いているのだな。ワシントンたちと違いNY在住の彼はどういう経緯で加わったのか。この1月に彼にインタヴューしたときに、LAで作られる音楽はつまらないものが多いがブレインフィーダー系は気になる、と言ってもいたけど。

 まず、改めて思ったのは、ツイン・ドラムでことにあたるのがうれしい。それに、やはり笑顔の定石超えを抱えるモズレーのベースが入ると、耳を引く。それに比するとフロントに立つ菅や歌声は少しフツーなのがもどかしいが、ジャズの形を取りつつもソロを純粋に披露すればいいという思考からは少し離れた温故知新総花的活劇表現を送り出すことをワシントンは目標としているとぼくには思えるので、過剰に弱点とは思わないが。BIGYUKIの参加は大正解、音色も与える異化作用的刺激も広がっていい感じだった。

▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、リッキー・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
▶︎過去の、ライアン・ポーター
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、BIGYUKI
https://43142.diarynote.jp/201611211717002386/
https://43142.diarynote.jp/201901221615346185/
https://43142.diarynote.jp/201907250901144536/
▶︎過去の、のマイルス・モズレー
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
https://43142.diarynote.jp/201604060850393487/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶過去の、ロナルド・ブルーナーJr.
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201409111424501752/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160520
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、トニー・オースティン
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/
▶︎過去の、パトリス・クイン
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
https://43142.diarynote.jp/201808211635045064/

*スナーキー・パピー
 フュージョンという傾向にある表現のなか今もっとも思慮深いことをやっているスナーキー・パピー(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日)の今回の来日メンバーは、ベースのマイケル・リーグ(2016年6月16日、2016年6月17日、2017年4月18日、2018年10月10日)、テナー・サックスとフルートのクリス・ブロック、トランペットのジャスティン・スタントン、キーボードとトランペットのマイク"Maz"マーハー、キーボードのビル・ローレンスとボビー・スパークス、ギターのボブ・ランゼッティ、ドラムのジェイムソン・ロス、パーカッションのマルセロ・ウォロースキ(アルゼンチン出身)という顔ぶれ。リーグは何人も重複するメンバーを抱えていて、ローテーション性のもとライヴやツアーにあたる。だから、日本人とはいえ小川慶太(2014年8月3日、2016年1月19日、2017年4月18日、2017年12月11日、2018年4月4日、2018年10月10日)は今回の東京ジャズ公演には同行していない。とはいえ、来週にはチリ出身のシンガー・ソングライター/ギタリストの公演で同行するが。

 ともあれ、この顔ぶれゆえに、この曲/この構成というのを、マイケル・リーグが周到に考え実演にあたっているのがよくわかるライヴだった。ときにだまし絵ぽく巧みに曲の流れのなかに各奏者の質の高いソロを散らしていく。結構、彼のPCには映画の絵コンテのような構成表がきっちりと置かれているはずだ。ビル・ローレンス(2016年6月16日、2017年6月12日)に比べるとボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日、2016年10月11日、2017年4月18日、2018年12月5日)、は地味だなあと思っていたら、クローザーでスパークスはソロで大フィーチャーされた。そのキーボード音はまるでギターだった。

▶︎過去の、スナーキー・パピー
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶︎過去の、マイケル・リーグ
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
http://43142.diarynote.jp/201606201007017702/
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
https://43142.diarynote.jp/?day=20181010
▶︎過去の、スナーキー・パピー/マイケル・リーグ
http://43142.diarynote.jp/201606171730294884/
https://43142.diarynote.jp/201706130913351348/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161011
https://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、小川慶太
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160119
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
http://43142.diarynote.jp/201712121324481276/
http://43142.diarynote.jp/201804051207119119/
https://43142.diarynote.jp/201810170924585002/
https://43142.diarynote.jp/?day=20181117
https://43142.diarynote.jp/201812081039071230/

<翌日の、ナイス・ガイ>
 蒸し暑いが雨の心配もなく、NHKホール前の公園の大通りも盛況。昼の部と夜の部の間にあった、ポーランドから来たヴォイテク・マゾレフスキ・クインテット(2016年9月19日 )の野外ステージ公演を見に行ったら、ものすごい人が集まっていてびっくり。3年の時間をかけてメンバーをあつめ、2011年から不動の2管編成のカルテットで続けられているが、メンバーは不動。ただし、今回テナー・サックス奏者は代役らしい。それ、その事実を聞かないとわからないが。エネルギーある、今のジャズ・コンボを率いるベーシストのヴォイテク・マゾレフスキには翌日インタヴューしたが、すごい好漢(格好もよく、若いときのスティング〜2000年10月16日〜とも重なるかも)で意気投合? →明日のチャールズ・ロイド公演を一緒に見にいくことになった。彼らの4作めとなる、今年12月に出る予定の『When Angles Fall』は同国の先鋭ジャズ・ピアニストであり、ロマン・ポランスキーの「ローズマリーの赤ちゃん」他数々の映画音楽を担当しているクシシュトフ・コメダ(1931〜69年)の楽曲集。通常はオリジナル曲をやっていきたいところ、やはり偉大な先達の才を掲げたアルバムを作らなきゃとなったという。それ、スラブ民族的な哀愁感やペーソスを持つメロディと今を生きるジャズ・マンの技と矜持が噛み合った好盤だ。
▶︎過去の、ヴォイテク・マゾレフスキ・クインテット
https://43142.diarynote.jp/201609211101391997/
▶︎過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm