六本木・ピットイン(昼の部)でフィンランドからやってきたピアノ・トリオを見る。ピアノのカーリ・イコネン、ダブル・ベースのオーリ・ランタラ、ドラムのマルク・オウナスカーリという陣容。いやはや、フィンランドのジャズ水準もこれは高いなと素直に頷く。もう、身を乗り出して傾聴しちゃいました。

 カーリ・オコネンの指さばきに触れてまず感じたのは、切れ味のなかに強靭さを持っていること。彼なりの創意に満ちた風景を描きつつ、実は米国的に黒っぽい演奏を弾かせたら相当にやるんじゃないかと思わせるものをそれは持つ。ひゃは、達者にして個性的。そんな彼はときに弦をミュートし、そのままミュートした右手音や少しエレクトロぽい音を出したときもあったのだが、あれはどうやっていたのだろう。なんも装置っぽいのは見当たらなかったんだよなあ。なるほど、ボブ・モーゼズ(2000年8月13日)なども入っていた『Iknostasis』(Ozella,2017)ではミニ・モーグや電気ピアノも弾いているのも了解。現代のジャズであるためにフレイジングにも音色にもとても自覚的な才人だった。

 そんな彼を受け止めるリズム・セクションもとても優秀。ダブル・ベースのランタラは忠実にリフを送り出す一方ときにわあと耳を引くフレイズや弓弾き音を繰り出すし、ドラムのオウナスカーリもちゃんとジャズでありつつ見事に“立った”ビートを繰り出す。実はオウナスカーリはベン・モンダー(名前は出ていないが、2005年7月3日公演に同行)作他、ECM発のアルバムにいろいろ参加している御仁でもあるが、なるほどお。その三者の重なりは確実に今を宿すもの、終わり方が少しもったいぶったところをぼくに感じさせる以外は本当に花丸のトリオ演奏だった。

▶︎過去の、ボブ・モーゼズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm バーク・フェス最終日
▶過去の、ベン・モンダー
http://43142.diarynote.jp/200507061225530000/

 南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)では、キューバ出身のコスモポリタン型ピアニストであるオマール・ソーサ(2001年8月24日、2002年7月22日2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日2010年8月3日、2013年9月17日、2014年3月10日、2016年7月15日、2016年7月16日、2017年10月22日)の実演を見るキューバ人ヴァイオリンとヴォーカルのジiリアン・カニサーレスとベネズエラ人パーカッションのグスターボ・オバージェス(2017年10月22日)を擁するトリオによるものだ。

 ソーサの新作はジィリアン・カニサーレスとの双頭名義作であるのだが、なるほどこのショウ接してこれはカニサーレスありきの出しものであると痛感。ヴァイオリンを弾きちゃんと歌を歌うカニサーレスのフィーチャーを第一義に置くもので、ソーサのかっ飛び度数はこれまでで一番抑え気味だったのではないか。キューバで打楽器を学んだこともあるオアバージェスは打楽器を座って扱うとともに、数曲では立ってバタ・ドラムだけを叩いた。

 いやはや、カニサーレス嬢は可愛い。その外見は髪型もあり、エスペランサ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日、2016年5月31日、2017年3月27日)かキャンデス・スプリングス(2016年5月25日、2016年9月8日 )かといった塩梅。スプリングスよりは本格的であり、エスペランサほどは創造的ではないが、彼女を見たなら多くの者はファンになるのではないか。なんかスプリングスには失礼なことを書いたかも知れないが、カリーム・リギンス(2005年9月15日、2015年9月6日)主制作の新作『インディゴ』(ブルーノート)はまぎれもない好盤だ。これなら推すにたる。

 終盤、ソーサとカニサーレスが一緒に似たようなフリで踊る場面とか最高。そういう意味では、広スケールを持つやんちゃ無礼講アーティストであるソーサの妙味は効果的に出されていたのかもしれない。彼は半数近くの曲で、右手はピアノを弾きつつ、左手は電気キーボードでベース音を弾くという作法を取っていた。

▶過去の、ソーサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200408021925240000/
http://43142.diarynote.jp/200510030021170000/
http://43142.diarynote.jp/200611020835550000/
http://43142.diarynote.jp/200803201207150000/
http://43142.diarynote.jp/200905131200576485/
http://43142.diarynote.jp/201008251432447574/
http://43142.diarynote.jp/201309201840164499/
http://43142.diarynote.jp/201403131302032810/
http://43142.diarynote.jp/201607191309581526/
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
http://43142.diarynote.jp/201710240958114009/
▶︎過去の、グスターボ・オバージェス
http://43142.diarynote.jp/201710240958114009/
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
http://43142.diarynote.jp/201606101027587993/
http://43142.diarynote.jp/201703281829079078/
▶︎過去の、キャンディス・スプリングス
http://43142.diarynote.jp/201605260923093422/
http://43142.diarynote.jp/201609201655127640/
▶過去の、カリーム・リギンズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/

 そのあとは丸の内・コットンクラブで、渡辺貞夫(2002年12月14日、2003年5月6日、2004年12月17日、2005年12月18日、2006年8月8日、2006年9月3日、2006年10月4日、2007年12月16日、2008年12月14日、2009年7月22日、2009年9月3日、2011年7月4日、2012年6月29日、2012年12月15日、2013年4月1日、2013年7月27日、2013年9月29日、2014年7月8日、2014年10月5日、2014年12月14日、2015年12月12日、2016年7月3日、2016年12月11日、2017年10月8日、2017年12月16日、2018年5月28日、2018年9月2日)のショウを見る。

 2013年にリオデジャネイロで録音した『オウトラ・ヴェス ふたたび』の参加メンバーを呼んでのもの。ピアノのファビオ・トーレス (2013年7月10日)、7弦ギターのスワミJr. (2013年7月10日)、ドラムとパーカッションのセルソ・ヂ・アルメイダ (2013年7月10日)、そこに渡辺貞夫の日本人バンドでベースを弾き、ブラジル音楽に造詣の深いコモブチキイチロウ (2011年1月21日、2012年4月10日、2012年11月10日、2012年11月25日、2013年7月10日、2013年7月27日 )が加わる。彼はこの晩、ダブル・ベースだけを弾いた。

 ジョビン曲はやったが、例により渡辺貞夫のオリジナル曲を基本演奏する。しかも2013年作の曲以外の様々なオリジナルをブラジル音楽諸要素をいろいろと取り入れた感じで披露。面々、早めにきて、ちゃんとリハをやっていたのも納得ですね。本人もサポート陣もとにかくうれしそう。弾んだ曲調が多めで、アルト音もいい音色でなっていると思った。

▶過去の、渡辺貞夫
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm  6日
http://43142.diarynote.jp/20041221210502000
http://43142.diarynote.jp/200512231955480000/
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200610080946310000/
http://43142.diarynote.jp/200712171350530000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200907310048137248/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201107111008176019/
http://43142.diarynote.jp/201207031353196616/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201310050701201281/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
http://43142.diarynote.jp/201410061850124929/
http://43142.diarynote.jp/201412281017371613/
http://43142.diarynote.jp/201512151504068292/
http://43142.diarynote.jp/201607100827363436/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
http://43142.diarynote.jp/201612171245154424/
http://43142.diarynote.jp/201710121700178187/
http://43142.diarynote.jp/201712181015052794/
http://43142.diarynote.jp/201805290906425481/
http://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
http://43142.diarynote.jp/201806130948515941/
http://43142.diarynote.jp/201809071509481583/
▶︎過去の、トーレス、スワミ・ジュニオール、ヂ・アルメイダ
http://43142.diarynote.jp/201307121511031149/
▶︎過去の、コモブチキイチロウ
http://43142.diarynote.jp/201101231224498510/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120410
http://43142.diarynote.jp/?day=20121110
http://43142.diarynote.jp/?day=20121125
http://43142.diarynote.jp/?day=20130710
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/

<今日は、ヘロヘロ>
 11時から、某ホテルでスワミ・ジュニオールにインタヴュー(なんと、ラティーナ誌の今月20日売り号に掲載!)。彼とはアララな共通点も発覚し、盛り上がる。ブラジル音楽界でトップ級にキューバの音楽界に近い関係にもいる彼は、コロンビアやスペイン人歌手の作品など現在プロデュース業が増えている。もうすぐ公演がある、キューバ人ピアニストのアロルド・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、2016年9月3日)の2018年作もまた彼のプロデュース盤。一方、自分のアルバムも来年3月に発売予定だ。ちなみに、バジェットや政治も取っ払ったとして制作したい人はと問うと、最初はうーんと悩みつつ、「ポール・マッカートニー。そして、スティング」。ほう。スティングは2010年代初頭に、マルコス・スザーノ(1999年8月11日、2001年12月19日、2002年7月21日、2005年2月15日、2005年10月30日、2006年8月11日、2006年8月24日、2006年12月28日、2007年8月11日、2007年8月23日、2008年10月10日、2009年9月25日、2009年9月26日、2013年1月7日、2015年1月10日)を自己バンドのツアーに呼んだことがあるが、もしそのタッグが実現したらスティング(2000年10月16日)の新生面を開くものになると確信する。
 その後は14時に新宿・ピットイン、17時に南青山・ブルーノート東京、19時に丸の内・コットンクラブと次々に移動。例により貞夫さんは2部制のもとたっぷり2時間越えのパフォーマンス。そこで、ギターを弾くスワミ・ジュオールは一時ジョイスが愛用していたのと同様な空洞ボディのギターを弾いていた。といった感じで、普段昼間は家にいる人間にとって、ずうっと外に出っ放しをやるとけっこうヘロる。各会場でも過剰に飲み物摂取していないのに、ライヴ後は1、2軒回るのが常のぼくが疲れ果てて飲み屋に寄らず帰宅してしまいましたとサ。うれCと感じつつも、困憊の1日でありました。
▶過去の、マルコス・スザーノ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200502161844550000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20051030
http://43142.diarynote.jp/200608141732470000/
http://43142.diarynote.jp/200608271342350000/
http://43142.diarynote.jp/200612291257400000/
http://43142.diarynote.jp/200708161531410000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20070823
http://43142.diarynote.jp/?day=20081010
http://43142.diarynote.jp/200909291503456026/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/ 
http://43142.diarynote.jp/201301151819527787/
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
▶︎過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
▶︎過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/