上野東京文化会館小ホール。久しぶりに中に入ると、おお作りが立派な会場だなあ、昔の文化施設は気合とお金のかかり具合が違うなあみたいな正の所感を得る。とともに、ここはプーさん(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日、2015年7月8日、2016年6月11日)の最終作『黒いオルフェ〜東京ソロ2012』(ECM、2016年)が録られた場なんだよなあとも思い、少しじわ〜ん。

 主役は結成30周年となるコンボ、山下洋輔ニューヨーク・トリオ。70代ピアニストの山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2013年7月10日2009年7月19日、2013年7月27日、2015年7月21日、2017年7月8日、2017年9月2日)、80代ダブル・ベース奏者のセシル・マクビー(1999年11月10日)、60代ドラマーのフェローン・アクラフ(1999年11月10日。ジャズ・ドラマーとしては少し大きめのセットを使う)。その新作『30光年の浮遊』(ヴァーヴ)はそれを記念するアルバムで、もちろん不動の3人でレコーディングされている。客は先日のポール・マッカートニー公演同様に高い。もう、ぼくは若い方ではないかと思えちゃう。

 休憩を置く、2部制にてなされた。新作収録曲を中心に、遊び心に満ち満ちた山下のオリジナル曲群(実は、それこそはNYトリオの肝となる部分でもあると思う)を阿吽の呼吸を持つトライアングルで開いて行く。3人が楽しんで演奏しているのが、よく分かる。それぞれのソロはたっぷり披露され、1曲ごとに山下はピアノの横に立ち、軽妙洒脱に曲説明を行う。白いスタンド・カラーのシャツと白いパンツ、そして黒基調のベスト、彼のそうしたいつもの衣服はいつごろからつづけられているものなのか。

▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611
▶過去の、山下洋輔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201507221814047783/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170708
http://43142.diarynote.jp/201709101059289712/
▶︎過去の、セシル・マクビー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
▶︎過去の、フェローン・アクラフ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm

<今日の、トリオ>
 ぼくはこのトリオを約19年ぶりに見るのだな。そりゃ、新鮮ですね。実は、このトリオを組むきっかけになったのは、名作編曲家/バンド・リーダーであるギル・エヴァンス(1912年5月13日〜1988年3月20日)の死であった。マンハッタンのスウィート・ベイジルで毎週月曜にエヴァンスは自己オーケストラの公演を持っていたが、死去によりその月曜日代役出演の話が山下洋輔に持ちかけられた。前年だか、彼は同クラブでソロ・ピアノ公演をやり高評を受けていたことがその奥にはあり、そのアフリカ系リズム・セクションの人選は欧州での山下の演奏に触れていたコーディネイターに拠ったという。そしたら、ばっちりとはまってしまい、その後ずっと続くことになった。好奇心旺盛に軽いスタンスでいろんなものに飛びつく彼(それは、今もそう。いろんな人のライヴに入ったり、プロジェクトにとても腰軽く関わっている)には、ときどき成り行きが呼び込む必然があるのだそう。
Q:そんなNYトリオの原点には、それまで独エンヤからアルバムも出し欧州ではエスタブリッシュされていた洋輔さんが、ジャズの本場である米国で勝負できる表現をトリオでやってみたいという意図があったように思えますが。
「そうですね。本場で、本道のピアノ・トリオの編成で、自分は何ができるか。それを目指したんです。どこまで通用するんだ、どうやったら通用するんだ、という気持ちから始まっていますね」(今年、ジャズ・ジャパン誌用に5月にやったインタヴューより)
 そして、3人とも決定的な結びつきを感じ、心置きなく自分を解放できる場とこのトリオのことを認め合っている。山下洋輔は楽器が弾けるかぎり、このトリオを続けて行くことを自認もしている。