アナログ・レコードをかける場面から始まる映画。とはいえ、音楽映画ではまったくない。でも、英国ロックをそうたらしめる、ある種の気取りというか、ブリティッシュ流儀が流れる映画で、これはUKロック好きは見てもいいかもと思った。

 英国人SF作家、J・G・バラード(1930〜2009年)が1975年に書いた同名小説を、1972年生まれ英国人監督のベン・ウィートリーが監督。資料を見たら、いろいろ撮っている人のようだが、彼はBBCのタイムスリップ・ドラマ「ドクター・フー」のファンで、そのシーズン8の1、2話を担当したのだという。2015年英国映画で、8月初旬から公開となる。

 ロンドン郊外の高層マンションを舞台とする映画。悠然としているようでしっちゃかめっちゃかな展開(途中からはかなりマッド。「時計じかけのオレンジ」を比較に出す声があるのも分かるか)の底には、テクノロジー席巻の弊害という現代的問題や階級社会という英国が抱えてきた構造を下敷きにする。出てくるモノの造形や映像構成は、スタイリッシュ。広大な駐車場に駐められた車は1970年代のものっぽい(よくぞ、集めたな)ので、小説が書かれた時代の物語として描かれているはずだが、どこか捉えどころのない近未来感を付帯させるあたりは、「未来世紀ブラジル」を生んだ国の映画であるとも思わせられたか。

 クラシック的な音楽が主に使われるが、それを作っているのは1990年前後に英国ダンス・ロックの先鋒バンドとして気を吐いたボップ・ウィル・イート・イットセルフのオリジナル歌手で、1990 年代後期以降映画音楽家として大車輪しているクリント・マンセル。そして、ときどきロック曲も使われていて、ドイツのカンの曲もあった。また、1曲はポーティスヘッドがアバの曲をリメイクしている曲も使われる。なお、主人公のトム・ヒドルストンは次の007ボンド役候補の一人に挙げられているようだ。

<今日の、憂い>
 映画を見たのは、渋谷の映画美学校試写室。席はほぼ埋まっていたな。ここだと、家から徒歩で行けるのでありがたい。曇天だったので傘を持って行ったのだが、映画を見終わり外に出たら晴天。今年は、本当に雨が少ない。猛暑であるととともに、今夏は関東圏で大幅な取水制限が行われると言われている。ぼくは多分四国地方に行かずに死んじゃうと思われるが、今年は四国の人たちの夏の焦燥が分かるかも……。