マイク・スターン(2009年3月23日、2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日、2015年6月5日)のトリオはテイマー・フェルというアゼルバイジャン出身というエレクトリック・ベーシストと辣腕ドラマーのデニス・チェンバース(2008年12月7日、2013年3月12日)を擁する。で、渡辺香津美(2004年12月15日、2010年9月1日、2010年9月5日 、2010年11月20日、2012年3月20日)は途中から出てくるのかと思ったら最初から出っぱなし。曲はどれもスターンの曲であったと思われるが、これはキーボードレスの2ギター+リズム・セクションという編成の丁々発止グループの出し物であるとしていい。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 テーマ(2曲のテーマ提示部でスターンは歌った)→スターンのソロ→渡辺のソロ→(リズム隊のソロが入るときもある)→テーマと言う構成で、6曲ぐらいやったか。芸はまったくないが、おもしろすぎ。名手のもう子供に帰ったようなギター・ソロがこれでもかと繰り広げられ、この2人が並ぶからこその相乗、飛躍もある。演奏自体はリズムの甘さを感じさせる場合もあるが、語彙の豊富さや技量の深さで渡辺が勝っていた。でも、天真爛漫なスターンの渡辺の演奏を受けての反応が◎。やっぱ彼、いいよね。

 フェルは6弦を黙々と、根暗気味に演奏。チェンバースは何年か前に倒れたというニュースがあったはずだが、全快のよう。P—ファンクに参加というのがプロの出発点にある彼、何気にレギュラー・グリップ多用のドラマーなのだな。彼がテンポの変化を出して、曲種を活性化させる場合もあり。一時、その達者具合から窮屈な感じを受けて彼のことを敬遠していたが、次の来日時にも見てみたいと思えたか。

 この電気ギター2本、非4弦電気ベース、ドラムという編成は、この前見たジョン・パティトゥッチ公演とまったく同じ。ある種のモードを維持しようとするパティトゥッチ公演と枠なんかもうけずイケイケのスターン公演、まあ比べるものではないが、どっちを取ると聞かれたら、ぼくはこっち。だって、力づくで技量や音楽をする喜びをぶつけあえることって素敵だと思えたもの。とともに、参加ギタリストの持っているものが違う。やはり、ジャズ(/フュージョン)は個人能力が勝負の音楽であるとも、ぼくには思えた。

▶過去の、マイク・スターン
http://43142.diarynote.jp/200903260425159549/
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196
http://43142.diarynote.jp/201506070920231979/
▶過去の、デニス・チェンバース
http://43142.diarynote.jp/200812150312308154/
http://43142.diarynote.jp/201303211531189619/
▶過去の、渡辺香津美
http://43142.diarynote.jp/200412212102130000/
http://43142.diarynote.jp/201009030955539620/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101120
http://43142.diarynote.jp/201203260803216950/

 その後は、丸の内・コットンクラブで、現ジャズ・オルガンのトップ奏者と言っていいかもしれない、ラリー・ゴールディングス(1999年4月13日、2000年3月2日、。2012年11月12日。2013年5月10日)のトリオ公演を見る。ギタリストのピーター・バーンスタイン(2014年1月19日)とドラマーのビル・スチュワート(2012年10月10日)を擁する。2011年作『Live at Smalls』(Smallslive)は、その三者によるものですね。足で操るベース音の確かさが売りの彼、もともとはメイシオ・パーカー(1999年8月6~8日、1999年10月28日、2001年4月17日、2002年11月19日、2005年9月6日、2007年9月13日、2009年1月21日、2010年2月16日、2010年9月3日、2013年2月2日、2015年7月27日)のバンドに入ってオルガンを弾くことで、多大な注目を浴びることになった。だが、彼はピアニストとして活動したいという未練も持つとも伝えられるし、事実ピアノを弾くアルバムも出している。彼の2014年作『Music from the Front Room』(Sticky Mack)はピアノ作でリズム・セクションはT・ボーン・バーネット〜ジョー・ヘンリー直系のジェイ・ベラーローズ(2008年12月14日、2009年12月13日、2010年12月12日)とデイヴィッド・ピルチ(2010年4月2日、4月4日、2013年5月10日)だ! 個人的にはアメリカーナ視点も持つそちらの編成で今回はやってきてほしかった、かも。実際、この3月にも本国ではそのトリオでギグをやっているしね。

 別に保守的なオルガン・トリオ編成にこだわらなくてもいいのにと思いつつ見始めたら、1曲目がまた旧態依然なオルガン・ジャズ曲で、なんの進歩も工夫もないとげんなり。そしたら、スチュアートの曲だという2曲目はかなり毛色の違った組み立てを持つ曲で興味を持ち直す。マッチド・グリップにて結構生理的に暴れた叩き方を見せるスチュアートって、おもしろい人だな。バーンスタインもどこか蛸の糸が切れたような弾き方をする人であり、なるほどこれは一言ある白人3人が集まったギグと思わせられた。自分の新曲と言った「フェイゲン」は昔ジャズとして聞いた(ゴールディングスは1968年生まれ)スティーリー・ダン(2000年5月15日)を題材にしたものとか。曲調はスティーリー・ダンぽいとはぼくは思わなかったが、まあそれもまたフツーのオルガン・トリオ表現からは離れるものであった。

▶過去の、ラリー・ゴールディングス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live1.htm 1999年4月13日
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/201211170928285333/
http://43142.diarynote.jp/201305131335092387/
▶過去の、メイシオ・パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130313320000/
http://43142.diarynote.jp/200709171112310000/
http://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
http://43142.diarynote.jp/201002171552164447/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201508050852067247/
▶過去の、ピーター・バーンスタイン
http://43142.diarynote.jp/201401221302405299/
▶過去の、ビル・スチュワート
http://43142.diarynote.jp/201210111837516874/
▶過去の、デイヴィッド・ピルチ
http://43142.diarynote.jp/201305131335092387/
▶過去の、ジェイ・ベラーローズ
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/201001051622194305/
http://43142.diarynote.jp/201012131714372906/
▶過去の、スティーリー・ダン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm

<今日の、ガアーン>
 なんと、ぼくの大好きなイタリアの自作派どすこいロッカーであるスッケロが先週(5月28日)に来日公演を行ったことを、遅ればせながら知った。まちがいなく、一頃は日本で一番彼にくわしい人間だったはずなのに。スッケロのこと、好きなんだよお。六本木ヒルズ・アリーナでの開催というから、フリー・コンサートだったのか。布袋寅泰がゲストに入ったらしい。オレ、あの夜、六本木にいたんぢゃん。こんなに悲しい気持ちになるのはいついらい? ワタクシにとってかなり痛恨の極みであります。