六本木・ビルボードライブ東京(セカンド・ショウ)、デイヴィッド・ボウイ・トリビュート企画なり。ボウイの複数期に関与した米国人ギタリストのアール・スリック(彼は、ジョン・レノン表現にも関与したミュージシャンである)がリーダーシップを取る公演で、彼が関与した 1976年作『ステイション・トゥ・ステイション』を大々的に再演しちゃいますよというもの也。ボウイ役にはビル・ラズウェル関連ブツに長年(1983年〜)関わり、2000年代に入るとストーンズ(2003年3月15日)のバックグランド・シンガーの座にもついているアフリカ系シンガーのバーナード・ファウラー(2003年3月13日、2003年3月15日、2005年7月3日)が担う。

 他に、ギター、キーボード、ベース、ドラム、サックス/パーカッション/ギター、バックグランド・シンガーがサポート。サックス+奏者は元スパンダー・バレエのスティーヴ・ノーマンで、女性コーラスは昨年のトニー・ヴィスコンティ公演(2015年7月7日)に同行したミック・ロンソンの娘のリサ・ロンソンだ。
 
 アルバム通りの列車の音のSEとともに始まったショウは、まず『ステイション・トゥ・ステイション』をアルバムのままの曲順でやる。バンド・サウンドはこんなものでしょう、問題ない。笑っちゃったのはファウラーのヴォーカル。もうボウイの歌唱にきっちり沿い、こりゃ滅茶器用。さすが、長年セッション・シンガーの第一線にいる人物の実力を思い知らされた。というわけで、意固地な聞き手じゃないかぎり(そういう人はここに来ないか)、これはふふふと接することができたのではないかな。加えて、数曲ボウイ曲をやり、最後は「ヒーローズ」なり。1952年ブルックリン生まれのスリックはけっこうロックンローラーな外見をキープ。それにしても、キース・リチャーズ以後のある傾向のギタリストは似た風情を持つ人が少なくないなあ。

▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
▶過去の、バーナード・ファウラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200507061225530000/
あと、文章では触れていないが、2004年のフジ・ロックにスティーヴィ・サラス・バンドの一員として来日。全員アフリカ系ミュージシャンで固めたそれは、ブラック・ロック志向でなかなか良かった。
http://43142.diarynote.jp/200407290730290000/
▶過去のトニー・ヴィスコンティ/リサ・ロンソン
http://43142.diarynote.jp/201507090944439091/

 その後、六本木・VARITに行く。お目当ては、アシッド・アラブ。普段はアルジェリア人のキーボードを入れたライヴ・セットでやることも多いようだが、今回は2人でのDJセットによる。ユニット名にあるように、アラブ音楽の語彙とアシッド・ハウスを重ねたようなことをやるが、それはチュニジアの島であったフェスに2人別々にが呼ばれたのがきっかけ。そのさい彼らはアラブ文化/音楽にやられ、その要素を取りこんだ DJ表現を志向するようになる。自らの文化にないものを持ってくるゆえ、ぼったくりにならないように気をつけるとともに、かような彼らのDJミュージックはワールド・ビートの発信地となったフランスならではのものであるとも、彼らは自認している。

 実際、好奇心に溢れたパリの裏道のビート表現という感じはあったか。なんか、ショウが終わる前に事故で電源が落ちてストップしてしまったのは残念。でも、そんなこともあるさと、メンバーは悠然としているように思えた。二分の一、ギド・ミニスキーは以前にルイ・ヴィトンの東京のパーティに呼ばれたことがあるという。

<今日の、体調>
 風邪で、変わらず熱っぽいでーす。鼻水がバカみたいに出てまーす。ゆえに、ずっと味覚も落ちてまーす。ところで、VARITの入り口で沼澤尚とすれ違う。彼も、変なとこ(では、ぜんぜんないが)に出入りしているなー。

 錦糸町・すみだトリフォニーホール。1日2回しで、遅い方(といっても、17時開演だが)を見る。チャールズ・チャップリン(1989〜1977年)の1936年映画『モダン・タイムス』を流し、映画で使われていたオーケストラ音楽を画面に合わせてリアルで付けるという出し物だ。ほぼ、セリフのない映画だからこそ、ありがたみが増す。と、いうことですね。

 その音楽の多くはチャップリン自身が作り、口頭で説明したものが映画のためにハリウッド系編曲者の手によりオーケストレーションがされたよう。この日の指揮は、米国生まれ英国在住のカール・デイヴィス。今年80歳で(つまり、「モダン・タイムス」発表の年に生まれた)、ポール・マッカートニーの1991年クラシック作『リヴァプール・オラトリオ』は、彼が指揮している。オケは、トリフォニーホール付きの新日本フォルハーモニー交響楽団(2012年10月2日、2012年11月30日、2015年9月26日)だ。本編が始まる前に、狂言回し役で、チャップリンを模したパフォーマー(山本光洋)が客席を回る。

 当然、名前は頭のなかに登録してある(米国からレッド・パージされた、ヒューマニズムに溢れた人とまず出てくるか)ものの、ぼくはチャップリンの映画をほとんど見たことがない。代表作の一つと言われる「モダン・タイムス」も有名な“歯車のシーン”などはスチール写真かなんかで知っているものの、ちゃんと見るのは初めてではないのか。ゆえに、普通に映画館で見るように画面に入り込み、楽しんじゃう。来る前は、肩のこらない状況で生のオーケストラ演奏の妙を楽しみたいと考えていたのだが、大きなスクリーンに映画が映し出されると、そちらに入り込んでしまい、せっかくの生の音楽はその奥にある普通の映画伴奏音になってしまった。それは、映像にきっちりズレることなく、オーケストラ音がちゃんと付けられていた証左となるものだろう。

 名曲「スマイル」(このときは、インストゥルメンタル)はヒロイン女性との微笑ましい場面で、数度使われていたのか。へえ。なかなかに、目が点。それから、映画が終わり、チャップリンの若いころの写真がスクリーンに映し出されたが、けっこう優男なハンサムさんだった。

 その後、一緒に飲みに流れたとても博識なA田君から、いろいろな情報を得る。とっても女好き&女にだらしない御仁であったそうで子供は沢山いたらしいが、うちユージン・チャップマンはかつてレコーディング・エンジニアをしていたそう。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」でフランク・ザッパが録音してたら火事になったと歌われるレマン湖ほとりのスタジオで働いたこともあったそうで(なるほど、米国追放になったチャップリンはスイスに住んだ)、確かにデイヴィッド・ボウイの『ロウ』や『ヒーローズ』にはアシスタント・エンジニオアとして、彼の名がクレジットされている。なんでも、チャップリンの音楽を司っていいと容認された指揮者は3人で、カール・デイヴィスはその一人であるらしい。

▶過去の、新日本フィルハーモニー交響楽団
http://43142.diarynote.jp/201210060944303925/
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/
http://43142.diarynote.jp/201509291629428595/

<今日の、付録>
 以下は、ぼくがライヴで過去に触れた、「スマイル」の抜粋。→→→細野晴臣(2009年10月12日,2013年8月7日)、エルヴィス・コステロ(2011年3月1日 )、アンア・サリー(2011年7月24日)、ヘイリー・ロレン(2012年2月13日)、ウィル・リー(2013年12月5日)、青葉市子と細野晴臣(2013年8月7日 )、クリス・ターナー(2014年5月28日)、渡辺貞夫(2014年7月8日)。あと、2011年12月13日 に代々木球技場第一体育館で持たれた<マイケル・ジャクソン・トリビュート・ライヴ>〜http://43142.diarynote.jp/201112201157058751/でも、誰か『スマイル』を歌ったはず。
▶過去の、細野晴臣
http://43142.diarynote.jp/?day=20091012
http://43142.diarynote.jp/?day=20130807
▶過去の、エルヴィス・コステロ
http://43142.diarynote.jp/?day=20110301
▶過去の、アン・サリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20110724
▶過去の、ヘイリー・ロレン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120213
▶過去の、ウィル・リー
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
▶過去の、クリス・ターナー
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
▶過去の、渡辺貞夫
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/
 我が道を行く、フランスの破天荒2人組バンド〜ユニットというより、バンドと言ったほうが適切だろう〜(2009年7月25日、2010年5月7日、2012年10月4日、2014年11月20日)。渋谷・クラブクアトロ。

 音楽的なことについては、過去の来日時の文章のまま。新作『ロックファーマーズ』は柔らか、しなやか目の曲が多く入っている気がしたが(て、解説担当盤なのに無責任な書き方してるなー)、ライヴにおいてはほぼ剛の方向性(それは、ファルセットのメロウ・ソウル調であっても)で攻める。見せること(おバカさんをやること)をちゃんと知っており、それゆえの娯楽性の開き方が素晴らしく良いと、改めて痛感。シニカルさが顔を出す部分も含めて、それがとってもロック的であるとも、ぼくは感じてしまう。けっこう、今のロック界でその様は貴重なものではないかとも思っちゃったなー。新作収録の親日曲「ウィ・アー・ジャパニーズ・マウンテン」は最終曲として披露。このとぼけ具合も凄いっ。

▶過去の、ザ・インスペクター・クルーゾ
http://43142.diarynote.jp/201005091451244918/
http://43142.diarynote.jp/201210061012387869/
http://43142.diarynote.jp/201411211148399707/

<今日も、好漢>
 MC、「次は最後の曲で……」。客、「え〜っ」。MC、「ウチら、1曲で30分やるんだよっ」。まあ、実際は10分ぐらいではあったけど、そういう部分も大好き。新作のタイトルも導いた、正義を貫く農場経営(有機農法追求&反モンサント社の姿勢徹底)は軌道に載っているよいうでなにより。参考映像→https://www.youtube.com/watch?v=CLfYz9dalvM

 まず、渋谷・デュオ・ミュージック・イクスチェンジで、北の手触りを持つ二組を見る。

 最初に、北イングランド生まれのトラッド/フォーク系女性シンガーのビル(ベリンダ)・ジョーンズが出て来て、短い時間パフォーマンス。アコーディオンを弾き語り。素朴に、心をこめて。

 その後は、北アイルランドとイングランドの出身者からなる、トラッド系インストゥルメンタル4人組のフルック(2001年12月11日)。ホイッスル、フルート(少し、アコーディオン)、ギター、バウロンという変則編成だが、それゆえの妙味を介して、個性豊かなケルト経由表現をときにスピード感たっぷり、ときに詩情豊かに開いていて感心する。面々がそれぞれに腕がたつのは、すぐに了解。その4人が自在に絡むと、とても現代感覚を持つというか、時空を柔らかにカっとぶ感覚が表れて、こりゃ存在意義があるナと頷いた。

 アンコールでビル・ジョーンズとフルックが一緒に1曲やり、その後、フルックはまた2曲やったか。全部で2時間半ぐらいやったかな。

▶︎過去の、フルック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm

 その後は、新宿・ピットインに行き、ECMから3作リーダー作を出しているスイス人シンガーのスザンヌ・アビュールを見る。初来日。オランダの音大(ハーグ王立音楽院)時代からの付き合いというピアニスト(オランダ人なのかな?)、まだ20代だろうフランス人クラリネット奏者、スウェーデン人ドラマーという、ワーキング・バンドによるパフォーマンスを披露。また、エンジニアも同行したよう。

 アビュールの歌唱は言葉を大切にしているためか過剰に尖らず、楚楚とした佇まいを持ちつつ、オルタナティヴなアコースティック・サウンドと同化する。アビュールはこのドラマーと最初にやってこの人しかいないと思ったらしいが、なるほどうねりはあるのに絹のような柔和な叩き方にはため息。また、クラリネット奏者も旧来のジャズ文脈から離れ、清新にしてもう一つの情緒とスペースを招く演奏を開いていて降参。いやはや、何気にすごい人たち揃えていると思った。そこには、知的で、創意のある密やかな冒険がいろいろあった。

<先だっての、アビュール>
 スイス大使館で、スザンヌ・アビュールと3人のメンバーたちと会ったのだが、皆好ましいユーロ感覚のようなものを持つ人たち。影響を受けたシンガーはと彼女に尋ねると、「楽器奏者のほうに受けてきた」とのお返事。マイルス・デイヴィスはその最たる奏者と言うので、彼のどの時期がお好みと問うと、『ビッチェズ・ブリュー』より前との答え。これ、エレクトリック期に入る前のマイルスということか。「ジャズ・シンガー然と歌う人ではなく、楽器のように歌を用いる人が、(ECM社主の)マンフレット・アイヒャーの好みなのではないか。だから、私は彼に認められたのだと思う」というような発言も、彼女はしていた。とても、自然体のいい大人、といういう印象を望外に得るとともに、同性からの支持もとても集めそう、そんな感想も得た。確か、彼女は子育ても両立しているんだっけ?
 辣腕ベースシトのジョン・パティトゥッチ(2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2006年9月3日、2012年6月13日、2014年2月12日、2014年4月14日、2015年5月27日、2015年9月6日)のリーダー・グループで、同じ顔ぶれによる昨年に続く来日公演だ。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 他の構成員は人気ドラマーのブライアン・ブレイド(2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2008年9月4日、2009年7月20日、2011年5月12日、2012年1月16日、2012年3月15日 、2012年5月22日、2014年2月12日、2014年4月14日、2015年5月27日)、そしてギタリストのアダム・ロジャース(2012年5月28日、2015年5月27日)とスティーヴ・カーディナス(2015年5月27日)。

 やはり、少し妙な編成だな。3本の電気系弦楽器(総弦数は17〜18本)とドラムという編成なんだもの。それゆえに、独自のムードは出やすいとも、しっかり感ずる。実際、統一された流麗にしてある種くすんだムードがあり。もう少し、サウンドの表情のダイナミクスがあってもいいじゃないかと思わすところもあった。

 前回公演の項で、ステォーヴ・カーディガンスがあまりソロを取っていないというようなことを書いているが、今回彼は普通にソロを取っている。そうすると、前回は指や手を痛めていたか、極度の二日酔いだったか。

 ウィルソン・ピケットやアリサ・フランクリンなどが歌っているボビー・ウォマック(2013年5月12日)の「アイム・イン・ラヴ」、ジョン・レノンの「ジェラス・ガイ」など、ポップ曲も(アンニュイに?)取り上げる。また、アンコールはウェイン・ショーター(2001年8月3~5日、2002年8月25日、2004年2月9日、2014年9月7日、2015年9月6日)の「ハウス・オブ・ジェイド」(1965年盤『ジュ・ジュ』収録)を演奏。

▶過去の、ジョン・パティトゥッチ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm 2001年8月3日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm   2002年8月25日
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201402140843255048/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201505281537538677/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶過去の、ブライアン・ブレイド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/200809071429250000/
http://43142.diarynote.jp/200908061810483865/
http://43142.diarynote.jp/201105140859559227/
http://43142.diarynote.jp/201201171011033219/
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140212
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201505281537538677/
▶過去の、アダム・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/201205301445023004/
▶過去の、ボビー・ウォマック
http://43142.diarynote.jp/201305141107016872/
▶過去の、ウェイン・ショーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
http://43142.diarynote.jp/201404161959228005/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/

<今日の、ドラマー>
 ブレイドの姿がよく見えるとこで見たので、いつにも増して彼の演奏具合をチェックする。旧来的ジャズ仕様とも言いたくなるシンプルなキット使用だが、シンバル口径がかなりデカい。で、彼は左横を向いて叩くのだが、終始ニコニコしている。彼、本当にうれしそうに叩くのだな。ときどき、声をあげてもいた。演奏自体は細心にして、やわらかく。もう、リストの使い方、ため息が出そう。それはさすが、お見事と思えた。

チャカ・カーン

2016年5月20日 音楽
 ぼくのなかではけっこう絶対的な存在である女傑R&B歌手(2003年10月10日、2008年6月5日、2012年1月10日、2014年9月6日、2014年9月10日)の、今回の東京公演の会場は六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。サポートは3人の女性コーラス、ギター(彼がミュージカル・ディレクターかな?)、キーボード2人、ベース、ドラムという陣容。これ、けっこう近年の顔ぶれとなるのかな。

 赤いスティックを持つ、元スイザイダル・テンデンシーのロナルド・ブルーナーJr.が叩き出してバンド演奏は始まったが、彼のストローク一発で、うわ音がデケえと合点し、苦笑。露骨にチューニングの異なるスネアを2つ並べ、シンバルは多いが小さい(と、それは昨日の見たブライアン・ブレイドとの比較ね)。その音量、とても大人のヴォーカル表現のサポートのそれではない。が、チャカならそれも別に疑問はないよな〜。そんなの平気よ、私はデカい声でそれを凌駕しちゃうワ、みたいな気分が彼女には大ありだから。ちょい音程が不安定に感じるところもあるけど、その歌声と流儀ゆえに、すべては正に転化する!

 しかし、ますますB型気質歌唱になっておる。バックグラウンド・シンガーを3人入れているのも皮膚感覚で納得。けっこう彼女たちが主旋律を歌い、チャカは気分の向くまま崩しまくって歌ったり、間の手ヴォーカルを入れたり。いやはや、彼女ってこれほどまでに我がままな歌い方をしていたっけ? でも、その様に触れ、これぞチャカ・カーンと感激できるし、ジャズ界を含めてもこんなに歌を自己崩しする人はそうはいないんじゃないかと思う。もちろん、ポップ・ミュージック界では唯一となりますね。

 全80分のショウ。中盤回って、15分ぐらいはチャカが下がり、バック陣だけでパフォーマンス。なんかこの少しイビツな構成を、彼女は前回来日公演時から取っている。チャカ抜きのさいバンドは前回と同じように「チュニジアの夜」を少しやったあと、ソロを回す。最後のほうは、美声のキーボード奏者が「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を歌い、出て来たチャカもそれを少し歌った。うぬ、もう1枚はジャズ・アルバム(←気のふれたような、笑い)を出してほしいな。さあ、2年後の彼女はどうなっている?

▶過去の、チャカ・カーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200806121525370000/
http://43142.diarynote.jp/201201131546344144/
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201409111424501752/

<今日の、興味>
 プリンスのカヴァーで秀逸なのは? いろいろあると思うが、チャカの「フィール・フォー・ユー」はかなり上位ではないか。プリンスもそれを気に入り、彼女とは複数かかわっている(って、プリンスのNPGから、チャカのアルバムが出されたこともあった)もんな。今回は2曲目に「フィール・フォー・ユー」はやったが、同曲は毎度やっているわけで、別に謝辞なんかいらないけど、もう1曲ぐらいプリンス絡み曲をやるかと思ったのだが……。途中でチャカが引っ込んだとき、1988年盤『CK』に入っていたプリンス作のファンク曲「Sticky Wicked」をやれば良かったのにとは思った。ソロやヴォーカルも回しやすいだろうし。死去に伴い(ああ、もう1ヶ月もたつのだなあ)いろいろ頼まれたプリンス原稿、残りはベース・マガジンの6000字の歩み原稿か。

 マリンバ奏者の山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日、2015年5月6日、2015年5月22日、2015年5月28日、2015年6月15日、2015年9月13日)とコントラスバス奏者のパール・アレキサンダー(2014年10月11日、2015年5月6日)のデュオ。四谷三丁目・茶会記、マチネー公演。

 この組み合わせでやるのは、ほぼ1年前の同じ会場でのギグ(2015年5月6日)いらいとか。木を大量に用いた楽器と対峙する女性奏者の二乗による、完全即興。でもって、ノーPA、ノー・エフェクターによる、完全生音によるパフォーマンスなり。
 
 30分と40分くらいの塊を一編づつ。大ぶりな鍵盤打楽器と弦楽器に託した、細心にして大胆な意思疎通の様々な様相が届けられる。お互いの音に入り込み、反応し新たな展開を提示しする作業の、繰り返し。それが一つの模様を描き、繋がり、ある種のストーリーとなり。それぞれの楽器は本来はモノトーン的な楽器音色を持つと書けるだろうが、そこは様々な感情を込め、多様な奏法を駆使し、素養と技量と閃きをときにお茶目にくりだす。山田はいろんな自家製マレットを使い分け、ときに鍵の端っこのほうを叩いたりもし、アレキサンダーは弦を弾く右手使いが多様にしてアルコ弾きも雄弁、さらにときにウィスパー・ヴィオスも重ねた。アレキサンダーは2部の途中で太い、どこか黒っぽい音楽の記憶を引き出す音も出した。そしたら、終演後に彼女、最近R&Bぽいのに凝っているみたいなことを言っていたな。

 現代機材や電気的エフェクトを介した音が一般的には今様という見方がされる傾向にあるが、果たしてそうなのか? そんな問いかけも、この非エレクトリックにして、両者の全感性をかけた共演に触れ、頭をもたげた。また、完全インプロヴィゼーション表現と言うと、なんか尖った攻撃的なものを想起する人も少なくないだろう。でも、即興でもこんなに柔和で、透明度の高いものもあるのだという意思表明に2人の表現はなっている。

 なお、前回共演と同様に、オノセイゲン(2000年3月12日、2009年1月17日、2011年8月4日、2012年6月7日、2013年1月30日、2014年4月20日、2014年7月28日、2014年9月23日、2014年10月8日、2014年10月11日、2015年4月17日、2015年9月13日、2015年9月24日、2015年10月9日、2016年3月14日)がマイクを2本立てて、録音。昨年のデュオ演奏と共に<Saidera Mastering & Live Recording>の名のもと、ハイレゾ配信(e-onkyo musick通し)されるという。

▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/
http://43142.diarynote.jp/201505240923518276/
http://43142.diarynote.jp/201505310957076398/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/
▶過去の、パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201505071132034325/
▶過去の、オノセイゲン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200901181343426080/
http://43142.diarynote.jp/201108101630438805/
http://43142.diarynote.jp/201206110945571082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130130
http://43142.diarynote.jp/201404251643448230/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
http://43142.diarynote.jp/201409261635077130/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/
http://43142.diarynote.jp/201603151140427186/

 その後、渋谷・クロコダイルで、カンタス村田とサンバマシーンズ(2010年12月27日、2011年2月11日、2011年5月8日、2012年6月8日、2012年10月27日、2013年2月11日、2013年8月24日、2014年5月3日、2014年6月15日)改め、カルナバケーション(2016年2月11日)のショウを見る。グループの名前を変えて、ちょうど1年。改名して以降、彼らはこまめにシングルCDを出してきていて、この1年間に7枚(14曲)がたまったということで、この晩は1周年を記念してその新曲群はすべてやる。とくに、バイリ・ファンキぽい「週末湘南ボーイ」や「リオ街スレンダー」は気に入った。あとはサンバマシーンズ時代の曲あり(4曲)、新曲もあり。

 歌(一部、ギターやパーカッションも)の村田匠に加え、ギター、キーボード/ヴォーカル、ベース、ドラム、3ブラジリアン・パーカッション、3ホーンという11人編成。11という数字だけでうれしくなるのは、ぼくだけではないはず。今年は東京と浦和の2チームがACLのグループ・リーグを突破したばかりか(先週の味の素スタジアムに行きたかったな)、トーナメントの第1戦をともに勝利していて、少しココロ弾む。

 今のカルナバケーションの裏表をけっこう出していた実演。前身バンドはサザンオールスターズ的日本の新歌謡曲回路と旬の洋楽語彙であるブラジリアン要素を噛み合わせようとしてスタートしたはずだが、豊かに実っていると実感。とっても、大パーティ感覚のもと見せ方もコナれており、初めて見るも者をトリコにする力を持つと思う。この日は、ブラジリアン・ダンサーは一人だった。

▶過去の、カンタス村田とサンバマシーンズ関連
http://43142.diarynote.jp/201101061047294455/
http://43142.diarynote.jp/201102121002078478/
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▶過去の、カルナバケイション
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<今日の、CD>
 最初のハコで、お客さんで来ていたバー・イッッシー店主から、彼が自らベーシストとして参加している『全面照射』を購入。ギターと声の山本精一、エレクトロニクスの日野繭子、エレクトリック・ベースのisshee(2010年9月11日)、ドラムのHIKOからなるTRASPARENTZとアルト主体にクラリネットや肉声の坂田明(2006年8月8日、2008年9月25日、2009年7月19日、010年4月15日、2011年4月1日、2012年10月3日、2013年1月12日、2014年9月7日、2016年1月28日)のタッグ、秋葉原のクラブグッドマンでの2015日7月12日のギグの模様を伝えるライヴ盤。激情ハードコア・ジャズ・ロックとも言うべき疾走&暴走演奏、1曲45分弱なり。坂田さん、よく倒れなかったなー。
▶過去の、山本精一
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▶過去の、isshee
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▶過去の、坂田明
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http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/
 1970年代サザン・ソウルの、(ここのところはとんと話を聞くことがなかった)大実力者の来日公演が持たれようとは。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。ハイ・サウンドのシンガー/ソング・ライター、彼の奥さんは同スターのアン・ピープルズですね。

 バック・バンドであるブラザーズ・ブラウンという4人組バンドが出て来て、まずパフォーマンス。ギター/ヴォーカル、キーボード(金ピカ気味。とっても古いロッカー風体)、ベース、ドラムという内訳で、彼らのオリジナルだろうルーツぽいと言えなくもない曲を5つほどやる。曲がけっこうつまらなく、歌もあまりうまくなく、少し聞くのがイヤだった。でも、ぬわんとベーシストはあのリトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)のケニー・グラッドニーではないか! 彼、フィートの前にはディレイニー&ボニーに関与していた。

 そして、その後に、ブライアント御大が歌いながら出てくるが、どひゃー。こりゃ、歌える。と、すぐに大感激。声質、ちょいとしたシャウトの流儀、どれもココロが潤み、発汗する。声量も十分だし、体形も太ってもおらず、動きや振りもお茶目で、とても元気。これは70代半ばという年齢よりも、若く見える。……つまりは、1日に1時間半のショウを2つやれと言われれば、彼は無理なくこなしたのではないか。ただ、今回バック・バンドを自分が出てくる前にフィーチャーしたのは、サポートをしてくれる白人たちに対する感謝の念からでは? そう思えるほど、彼からは“いい人”臭もただよう。

 なんか、良い老後を持っていそう。格好もいわゆるR&B系担い手然としたものではなく、サファリ・ルックにあいそうな帽子と『サージェント・ペッパーズ〜』のジャケでザ・ビートルズの面々が着ていたようなジャケット(ブライアントの場合は黒色)を彼は身につけている。で、それが別におかしくなく、なんかトっぽいブライアントにあっている。そして、そんな彼が変わらぬ天下一品のソウル歌唱をするのだから、これはうれしさがこみ上げてきちゃうし、万全と言えないバンドの前座パフォーマンスも完全にチャラ、ないものにしちゃえるとぼくは感じた。イエイ。

 バンドもバッキングに回ったときのほうが、うまく感じられて何より。演目はわりとテンション高めの快活曲が多く、比較的スロウ系の苦手なぼくはそれにもにんまり。JB(2000年8月5日)の「トライ・ミー」。もやったか。そして、アンコールはリトル・フィートの一番有名な曲「ディキシー・チキン」。このとき、歌の1番と2番はギタリストとドラマーが順にリード・ヴォーカルを取り、ブライアントはハモりのヴォーカルを入れる。わあ。もしかして、この曲はブライアントが言いだしてやるようにしたのではないかと思わせるほどに、彼はうれしそう。その後は彼がリードを取った。ショウでブライアントが歌ったのは正味40分ぐらいか。そりゃ、もっと歌うことにこしたことはないが、それでもぼくは大満足。まさに、黄金のR&Bヴォーカルの開示があり、尊い人間の歌に浸れることができ、なんの不満があろうか。絶対に、また来てほしいっ。

▶過去の、JB
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm サマーソニック初日
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/ 映画

<今日の、ケニーさん>
 ブライアントは妻の大ヒット曲「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」も歌う。これ、ブライアントも曲作りに関わっている。実はこの曲を、リトル・フィートの故ロウエル・ジョージも1979年ソロ『Thanks I’ll Eat It Here』(Warner Bros.)でカヴァーしていた。「ディキシー・チキン」にはメンフィスという地名も出てくるが、ブライアントは今も生まれたメンフィスに住んでいるという。そんなに老けた感じもないケニー・グラッドニーはとってもデッドな音(弦を2年間かえていないんじゃないかと思えるほど)を黙々と出していた。彼、何気にスティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日、2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日、2016年2月19日)と似ている。一緒にリズム・セクションを組んだら、笑えると思った。
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
▶過去の、スティーヴ・ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219

 ナッシュヴィル出身、プリンス(2002年11月19日)に気に入られ、その晩年にいろいろと付き合いを持った、ブルーノートからデビューするシンガー/ピアニストのショーケース・ライヴ。お茶の水・café 104.5。

 ステージに出て来て、そのこんもりした髪型もあって即エスペランサ(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日)を思い出す。同じくプリンスに可愛がられたアンディ・アロウの実演の際(2014年6月18日)も同様に感じたのを思い出し、もしかするとプリンスはこの系統のルックス好き?  プリンスはエスペランザ・スポルディングに声をかけようと思ったことはないのか、もし組んだとしたならその協調制作ブツはどういうものになったのかとか、いろんなことを考えてしまった。

 アフリカ系の、27歳。少女時代にジャズ・ピアノを習ったりし、ノラ・ジョーンズ(2002年5月30日、2002年9月14日、2007年3月21日、2010年1月20日)のヴォーカル傾向デビュー作たる『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』(ブルーノート、2002年)を聞き、アーティスト心に火がついたという。他に、ニーナ・シモン、シャーデー、ロバータ・フラック(2008年3月4日)、エラ・フィッツジェラルドらの名前を好きな人としてあげていたか。ジャズ・ヴォーカルの真骨頂を出す最たる大御所であるエラはともかく、その影響群を見ると、ブラックネスを趣味良くヴェールで包んだようなヴォーカル表現をしたがっていると理解していいのかな。

 ヤマハのエレクトリック・ピアノをニコニコと弾き語る。プリンスはその歌声にひかれたようだが、邪魔にならぬ手触りのいい歌声の持ち主。スタンダードやポップ曲カヴァーをやったが、キラキラした風情でやられると、OKとなるか。1曲ジャズっぽく鍵盤を弾くインスト曲も披露したが、ジャズ・ピアノという観点から見たら“なんちゃって”であった。ぱっと接するぶんには、いい娘。シモンにせよ、シャーデーや若い時分のフラックにせよ、滑らかさの奥にナイフを忍ばせていたところがあったが、彼女はまだそういうものは獲得していない。ブルーノートからのデビュー作は穏健アダルト派のラリー・クラインがプロデュースしている。

▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
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▶過去の、アンディ・アロウ
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▶過去の、ノラ・ジョーンズ
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▶過去の、ロバータ・フラック
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<今日の、あそうなの>
 ホーギー・カーマイケル作曲のスタンダード「ザ・ニアレス・オブ・ユー」もしっとり披露したが、ノラ・ジョーンズのカヴァー(『カム・ウィズ・ミー』に収録)と彼女は紹介。ほんと、ジョーンズ好きなんだな。ちゃんと原典にも敬意を払えよと思わなくはなかったが、レイラ・ハサウェイ(1999年7月14日、2002年5月13日、2003年8月19日、2004年5月10日、2008年5月13日、2010年7月13日、2012年1月5日、2013年1月25日)もかつて取材したとき、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」のことを、ライヴ盤で歌っているので父の曲だと思っていたと言っていたしな。ともあれ、このロマンティックなラヴ・ソング「ザ・ニアレス・オブ・ユー」をストーンズ(2003年3月15日)もライヴで取り上げていた(2004年作『ライヴ・リックス』に入っている)。ストーンズがその曲を取り上げた顛末は→http://43142.diarynote.jp/200507061225530000/
▶過去の、レイラ・ハサウェイ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/julylive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm マーカス・ミラー
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://43142.diarynote.jp/200805181145040000/
http://43142.diarynote.jp/201007141512402845/
http://43142.diarynote.jp/201201131544153279/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
 まず、南青山・ブルーノート東京で、豪州4人組(2015年9月27日)を見る。激混み。で、前回に見た野外ライヴより、もっと音が良くて、バンド・アンサンブルもより精緻に噛み合っているパフォーマンスに触れながら、ひゃははははと笑いっぱなし。

 よくもまあ、こーゆーの作るな。もうプログ・ポップというか。ポスト・ソウルというか。変な、でもクールなうねりを持つ楽器のアンサンブルやヴォーカルの絡みを考案し、実演で再現していると思う。その前によくもまあヴィジョンを同じくし、重ね合うことができる人たちが出会ったものだとも思う。

 そのパフォーマンスの様は暗号を解読していく感覚、パズルを解いて行くような醍醐味を持つ。それらは周到に作りこまれており、実は即興性は少ない。でも、見事なアンサンブル構築のため、ある種ジャジーな感触や、爽快感も出てくる。そして、それらに触れながら、たとえば枠外しな周到変態アンサンブル表現を徹底して生の場で開きまくっていたフランク・ザッパのことを一瞬想起した。まあ、ザッパたちのほうが度を超して凝ってはいるが、この豪州バンドを書き記すのにあの人間基準法違反バンドの名を出すとは思いもしなかった。でもって、ぼくはなぜハイオエイタスのスタジオ盤を聞いて、どこか閉塞感を感じたかも了解(→→20代まではザッパはぼくのアーティスト十傑に入っていたが、齢を重ねるにつれ、凝りまくった仕掛けのため聞くのが辛くなった)。今回のライヴはもっとこなれた部分も出て来て、ヘラヘラ聞ける。

 会場に、昨日見たキャンデス・スプリングスの姿も。彼女はハイエイタスを見て、何を感じたろうか。

▶過去の、ハイエイタス・カイヨーテ
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/

 次は丸の内・コットンクラブでラヴィ・コルトレーン(2013年8月18日、2014年5月22日、2015年9月5日)のカルテットを見る。巨星ジョン・コルトレーンの息子さん。40歳で亡くなったジョン・コルトレーンが亡くなる2年間にアリス・コルトレーンの間に設けた子供(次男)だが、ラヴィももう50歳なのか。見た目はその年齢よりも若く見える。フライング・ロータス(2014年12月5日)は甥となりますね。

 実は純ジャズ・マン二世で、同じジャズの道で大成した人ってかなり少ないんじゃないか。少なくても、ブラジル音楽界と比べたならその差はものすごい。なので、ラヴィは米国ジャズ界ではもっともいい感じのほうにいる二世となると思う。この晩のリーダー公演を見てそう思った。

 ジャズ正道を行こうとしつつ、ちゃんと考えぬかれプライドに満ちたグループ・コンセプトとサイド・マン選択があり。2014年にはECMからリーダー作(トーマス・モーガンとマーカス・ギルモアのリズム隊)を出してしまったキューバ出身(1983年生まれの)ピアニストのダビィ・ビレージェス(2007年10月25日)、タブル・ベースのデゥロン・ダグラス(2015年1月9日)、ドラマーのジョナサン・ブレイク(2009年9月3日、2011年5月5日)という面々がつく。ラヴィを含め皆譜面台をおいていたので、その顔ぶれはワーキング・グループと言えないのかもしれない。ぼくは譜面台を置くプロのミュージシャンが大嫌い(→それは、役者が台本を手に舞台にあがるようなもの。©加古隆)。だが、そんなのを通り越して、イケてるバンド表現が繰り広げられていると思った。

 各曲は15分ぐらいはあったか。それぞれの楽器の演奏一つ一つが生理的にイビツ、熟考した末に繰り出され、刺激的に絡み合うという感じ。だから、それは当然<テーマ→各者ソロ→テーマ>と呑気に記せないものになっているし、ダヴィ・ビレージェスは1曲目の冒頭10分ぐらいは、ピアノの前に座っていてもピアノを弾かなかった! もう、意志の塊のような、これこそは今の王道ジャズであるべきと思わせる四者の重なりがそこにはあった。ラヴィの演奏も正々堂々、感じいってしまう。父のジョンはストイックで、寡黙な人というイメージをぼくは持つが実際はどうだったんだろう? だって、ラヴィのMCを聞くとサバけた快活な人のようにも思えるから。

▶過去の、ラヴィ・コルトレーン
http://43142.diarynote.jp/?day=20130818
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▶過去の、フライング・ロータス
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▶過去の、ダビィ・ビレージェス
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▶過去の、デズロン・ダクラス
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▶過去の、ジョナサン・ブレイク
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<今日の、所感>
 忙しすぎて、なにもありません。まだ、出口は見えず(すこし、おおげさ)。。。。でも、夜は机に向かわず、遊ぶ。それ、プロの物書きの矜持なり。
 1992年生まれ、ルーツ・レゲエの若き担い手である二世ジャマイカン・シンガーの、自己バンドを率いての公演を見る。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。おう、なんかちゃんとしたレゲエの担い手の公演って、久しぶりだぞ。
 
 期待の星的存在というが、ステージに出て来た堂々見栄えのする当人を見て、けっこう納得。気心の知れた面々(2ギター、キーボード、ベース、ドラム、パーカッション。上半身裸になる愛想のいい打楽器奏者のコーラスが何気に効いていた)とともに、萎縮感ゼロの歌唱を披露して行く。マイナー・キー基調の曲の感触は似がちになってしまうが、彼の地に受け継がれている切ない歌心のまっとうな開示に頷く。終盤だけダンスホール調になったが、それも良し。当人とバンド員は皆ドレッド系の髪型であったか。

<今日までの、勘違い>
 頭の横を刈り込んいる人がいる。知人にもいる。有名人でいうなら、レッズの牧野智章みたいな感じの髪型。そう言う人たちを見て、少しでも伸びるとすぐに美容院に行かなくてはならず皆さんマメだなあと、ずっと思っていた。だが、ひょんなことから、そういうヘア・スタイルの方々は自分でバリカンを用い処理しているらしいということを知る。あ、そうなの? な〜んだ。ちょい拍子抜け。ほんのちょっと夢がこわれた? そういえば、日本でドレッド・ロックス頭にするにはお金と時間(半日はつぶれるという)がかかるが、彼の地ではどうなのだろう? 大昔、ラスタだと自然にそうなると力説するヤツがいたっけなー。

 1年とちょいという短い間を置いて来日公演を行うスコットランドのインストゥメンタル・ロック・バンド(1999年11月22日、2001年4月26日、2004年10月4日、2006年11月11日、2015年3月9日)の公演は、新作『アトミック』に沿った内容を持つ。同作は彼らが音楽を担当したBBCのドキュメンタリー番組『Atomic : Living in Dread and Promise』のサウンドトラックで、今回公演はそのTV番組映像をまんま流し、モグワイの面々(ステージ上には6人いたか)がそれに合わせて演奏した。六本木・EXシアター。

 映像は淡々と原子力と人類の関わりを記録したいろいろな映像を並べていく。うぬ、正の面も出てはくるのだが、やっぱりそのヤバい面が重く、強調されて行くよなあ。ショウはステージ背面に大写しされるその映像が主で、ステージ上の面々には光が当てられることもなく、モグワイの演奏は完全に従。音楽自体もサントラゆえ、通常の刺っぽさは控え目ではある。だが、彼らが映像にぴったりと音楽を付けて行く様は何気に感心。これまで、モグワイについて演奏能力が凄いと思ったことはなかったが、これには頷く。とともに、この核を扱ったドキュメンタリーの音楽を頼まれたことに、彼らが誉れに感じていることも痛感させられた。

 何気に、この100年は原子力/核のそれにあたるのかと思わさせられたりもした。でもって、広島(長崎)と福島とデカい複数の項目を日本のことで占められている事実にも改めて驚き、悲しくなる。そんな項目を英国も抱えていたら、このドキュメンタリーはまったく違ったものになったはずと思わずにはいられなかった。
 
 実のところ、今回の公演は賛否両論であったよう。彼らの熱心なファンはもっとモグワイが中心にいる、音楽主体のショウを求めたがるのも分らなくはないが。熱心なファンでないぼくにとっては、この複合的なショウにとっても興味深く接することができた。次に見るライヴのため、最後まで見ずに席を立ったが、ああこの人怒って中座したんだと思われなかったことを祈る。

▶過去の、モグワイ
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 南青山・ブルーノート東京で、ニューオーリンズの長寿ブラス・バンドであるリバース・ブラス・バンド(2004年9月17日、2007年2月6日)を見る。全6人。トランペット、トロンボーン、サックスが前に立ち、スーザフォン、スネア、ベース・ドラム担当の3人が後列。太鼓の2人はシンバルも少し叩く。ベース・ドラムのキース・フレイザーのみがオリジナル・メンバーであるという。

 管楽器奏者の数がもう少し欲しいとは思ったが、ニューオーリンズらしい妙味はもちろん受けられる。途中、「ドント・ストップ・ティル・ユー・ゲット・イナフ」と「ビリー・ジーン」という、マイケル・ジャクソン曲を2つ演奏。ほう、全然ボロボロにならず、サマになる。やっぱり、彼らはそれなりに上手いんだなと思わせられた次第。また本編最後には、セカンド・ラインで場内を練り歩いた。

▶過去の、リバース・ブラス・バンド
http://43142.diarynote.jp/200410071540230000/
http://43142.diarynote.jp/200702122331460000/

<今日の、事実>
 故プリンス(2002年11月19日)の追悼原稿を書くためにもろもろを掘り起こしたりしていたのだが、2000年代を回ってからの彼のライヴに顕著なのは、ブラス奏者をずらりとそろえ、ブラス・セクション咆哮のドキドキや肉感性や娯楽性を実に効果的に盛り込んでいたということ。そして、その中にはニューオーリンズ調のブラス・バンド的な凹凸も間違いなく見え隠れしていて、プリンスが同地のブラス表現をも参照していたのは間違いない。プリンスに音楽的影響を与えた父親のジョン・ネルソン(プリンスは1980年代中期に数曲お父さんの名前を作曲家クレジットに出す)はニューオーリンズ生まれだった。
▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm

エスペランサ

2016年5月31日 音楽
 エスペランサ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日、2015年9月5日)の単独ホール公演は、昨年東京ジャズ(2015年9月5日)で披露し、ええあなたってこんなにキ○ガイだったのとぼくを驚嘆(=大感心)させた<エミリーズ・D+エヴォルーション>というプロジェクトによるもの。当然、同名の新作もライヴの場で颯爽と問うていたものをまとめたものだが、生のほうがずっと興味深く接することができる。お台場・ゼップダイヴァーシティ。

 あっと驚くサポートを見せるギタリストとドラマーと男女のコーラスは昨年の東京ジャズ出演時の人たちと同じ。ほんと、飄々と複雑怪奇な路線にあわせるサポート陣も度をこしたバカ、いや実力者たち。今回はもう一人ナディア・ワシントンという『エミリーズ・D+エヴォルーション』に加わっていた女性が加わり、サポート歌手は3人になっていた。<壮絶なアイデアの積み重ねを経た、ポップ・ミュージックの極北>てな、全体の持っていき方や音楽性は昨年の東京ジャズのときに準ずる。だが、シアトリカルな見せ方の部分は変わってもいるし、今回は演奏陣3人でごんごん丁々発止する部分を存分に取るなどもしていた。

 これだけ自分の変テコな趣味を貫いたオルタナティヴ路線を追ったのは、彼女としてはポップ&保守的な路線を取った前作『ラジオ・ミュージック・ソサエティ』(ヘッズ・アップ、2012年)が望むセールスをあげることができなかった反動もあると、ぼくは考えている。本来ならこのクラスのホール公演をするなら、前作のほうがふさわしい(まあ、それも東京ジャズ=東京国際フォーラムのホールAで披露しているわけだが。2012年9月9日)。それはともかく、はたして彼女はこの次はどういう路線に出てくるのか。それは本当に推測するのが難しく、とってもワクワクする事項であります。

▶過去の、エスペランサ・スポルディング
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/

<今日の、びっくり>
 観覧車の付け根にあるゼップ東京かと思い、会場前に行ったんだが。。。。あれれ、超閑散としており、扉もかたく閉まっている。すぐに知人に電話したら(こういう場合、普通の人ならケータイでぱぱぱと調べるのだろうが、ぼくは外出中にネットを引くことをかたくなに嫌う)、同じくゼップという名前をもちいた場所が同じりんかい線の東京テレポート駅ながらだいぶ離れた場所にあるという。10分ぐらい歩いて到着。そしたら、ゼップほど大きくはないが、けっこう大きなハコ。そこがちゃんと埋まっているのだから、エスペランサもたいしたものだと思った。聞けば、冒頭はエスペランサ・スポルディングからエミリー・Dに変身する儀式があったそうだが、それは見事に見逃してしまった。ちゃんと定時に始まったんだな。全部で、75分ほどのショウ。でも、この内容だと、それは適切な尺か。おかげで、この後の飲み時間も増えました。久しぶりに、日本酒いろいろ飲んだなりぃ。そういうのって、同行者次第だな。しかし、グラスからあふれさせて注ぐという飲み屋の日本酒ルールにどうも違和感を感じると、ぼくは今晩再認識。で、最後にこじつけておくと、そうした違和感を吟味し、また磨き練って、それを執拗なほど連鎖させて新たな聴き味やステージを獲得しているのが、今のエスペランサのエミリー・Dプロジェクトではないのか。あと、彼女のコントラバス演奏に触れていたほうが、エレクトリック・ベースに専念するこれの飛躍度は実感できるとも思った。